2022年04月15日
スパークス・ブラザーズ(原題:The Sparks Brothers)
監督:エドガー・ライト
出演:スパークス(ロン・メイル、ラッセル・メイル)、ベック、アレックス・カプラノス、トッド・ラングレン、フリー、ビョーク(声)、エドガー・ライト
兄ロンと弟ラッセルのメイル兄弟からなる「スパークス」は、デビュー以来、謎に包まれた唯一無二のバンド。レオス・カラックス監督最新作『アネット』で原案・音楽を務めたことでも話題沸騰中!そんな彼らの半世紀にもわたる活動を、貴重なアーカイブ映像やバンドが影響を与えた豪華アーティストたちのインタビューと共に振り返る。スパークスの魅力を語るのは、グラミー賞アーティストのベックをはじめ、フリー(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)、アレックス・カプラノス(フランツ・フェルディナンド)、トッド・ラングレン、デュラン・デュラン、ニュー・オーダー、ビョーク(声の出演)など 80 組にのぼる。音楽界の“異端児”と呼ばれ、時代と共に革命を起こし続ける<スパークス兄弟>は、なぜこれほどまでに愛され続けるのかー。挑戦的かつ独創的な楽曲、遊び心溢れる映像、さらには彼らの等身大の姿までを捉え、その理由を探る。
本作ではデビューから現在に至るまでのふたりの50年の軌跡が、スパークスの大ファンであるライト監督によって1つずつ丁寧に紐解かれる。『アネット』でスパークスを知ったばかりの者にはうってつけの作品である。エドガー・ライト監督は過去の映像に、音楽に疎い私でも知っているような有名アーティストの証言、アニメーションと様々な手法を組み合わせて表現するので、2時間21分と長尺だが、まったく飽きが来ない。仏頂面の兄は昔とあまり変わらないが、かつてはバリバリのアイドルだった弟は大分落ち着いた感じ。50年の時を感じてしまう。
来日したシーンも登場したので調べてみたら、フジロックで何度も来日していたのには驚いた。(堀)
2021年/イギリス・アメリカ/141分
配給:パルコ ユニバーサル映画
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公式サイト:https://www.universalpictures.jp/micro/sparks-brothers
★2022年4月8日(金)より全国公開
ベルイマン島にて(原題:BERGMAN ISLAND)
監督・脚本:ミア・ハンセン=ラブ
出演:ヴィッキー・クリープス、ティム・ロス、ミア・ワシコウスカ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー
映画監督カップルのクリス(ヴィッキー・クリープス)とトニー(ティム・ロス)は、アメリカからスウェーデンのフォーレ島へとやって来た。創作活動にも互いの関係にも停滞感を抱いていた二人は、敬愛するベルイマンが数々の傑作を撮ったこの島でひと夏暮らし、インスピレーションを得ようと考えたのだ。やがて島の魔力がクリスに作用し、彼女は自身の“1度目の出会いは早すぎて2度目は遅すぎた”ために実らなかった初恋を投影した脚本を書き始めるのだが──。
作品の舞台はイングマール・ベルイマンが晩年を過ごしたスウェーデンの孤島、フォーレ島。映画監督夫婦が娘を親に預けて滞在し、創作活動に勤しんでいる。夫は自分の名前でトークイベントの客が集まり、サインを求められるくらい名の知れた監督で、作品の構想に行き詰まった年下の妻に
「子どもじゃないんだから書けるだろ」
「書けないなら休んでみてもいいんじゃないか」と優しくアドバイスをする。
本人にはそのつもりはないのだけれど、歳上のできる男性にありがちな対応。愚痴を聞いてほしいだけの妻には上から目線の指示に聞こえてしまう。夫婦あるあるの話に共感する方は多いのでは。
フォーレ島ということで、前半はベルイマンの私生活や『ある結婚の風景』や『鏡の中にある如く』の撮影秘話などが語られる。ファンには垂涎ものだろう。
ちなみに夫婦が滞在した家の主寝室はベルイマンが『ある結婚の風景』を撮影した場所。この作品を見て離婚が激増したとか。主人公夫婦も気持ちのすれ違いが次第に大きくなっていく。ベルイマンの呪縛なのか、そう思うから離れていってしまうのか。ミア・ハンセン=ラブ監督のかつてのパートナーがオリビエ・アサイヤス監督で、2人は2009年に結婚し、娘が誕生したものの、2016年に離婚している。主人公は監督自身のことだとしたら…(堀)
2021年/フランス・ベルギー・ドイツ・スウェーデン/英語/113分/カラー/スコープ/5.1ch
配給:キノフィルムズ
© 2020 CG Cinéma - Neue Bioskop Film - Scope Pictures - Plattform Produktion - Arte France Cinéma
公式サイト:https://bergman-island.jp/
★2022年4月22日(金)より公開
ハッチング―孵化―(原題:Pahanhautoja/英題:HATCHING)
監督:ハンナ・ベルイホルム
出演:シーリ・ソラリンナ ソフィア・ヘイッキラ ヤニ・ヴォラネン レイノ・ノルディン
北欧フィンランド。
12歳の少女ティンヤ(シーリ・ソラリンナ)は、完璧で幸せな自身の家族の動画を世界へ発信することに夢中な母親(ソフィア・ヘイッキラ)を喜ばすために全てを我慢し自分を抑え、新体操の大会優勝を目指す日々を送っていた。
ある夜、ティンヤは森で奇妙な卵を見つける。家族に秘密にしながら、その卵を自分のベッドで温めるティンヤ。やがて卵は大きくなりはじめ、遂には孵化する。卵から生まれた‘それ’は、幸福な家族の仮面を剥ぎ取っていく・・・。
子どもには幸せになってほしい。母親なら誰しもが思うこと。自分に諦めざるを得なかったことがあれば、子どもにはそんな思いをさせたくありません。しかし、それと自分の夢を託すのは大分違う…。
この物語に登場するのは北欧フィンランドに暮らす裕福な一家。前途有望なフィギュアスケート選手としてのキャリアを事故で断念した母親の夢を押し付けられている娘が主人公です。美人でスタイルばっちりな母は富と成功を手に入れた建築家と結婚。抜群のインテリアセンスで整えた家の中で営まれる、幸せで完璧な生活をアップするYouTuberとしてチャンネル登録者数を増やすことに余念がありません。娘とは何でも話せる親友のような関係で、秘密の恋心も隠さずに共有します。
これって母親側から見ればとても幸せな状況に見えますが、果たして娘にとっても幸せなのでしょうか。
母にとって体操選手として大会を目指す娘は希望や幸せの象徴。自分の思いを押し付けるだけで、娘の辛い思いに気づく余裕がありません。娘は辛くても隠すしかない。どんどん大きくなっていくカラスの卵は娘が持つことを許されない”負の感情”の代替なのです。それが限界点に達したときに卵は孵化して外に出て、とんでもないことを引き起こしていく。
娘のいる母親にとって、本作はけっして他人事ではありません。「映画の母娘と共通する部分はない?」という恐怖が半端ないホラー作品です。(堀)
配給:ギャガ
2022年/フィンランド/カラー/ビスタ/5.1chデジタル/91分/PG12
© 2021 Silva Mysterium, Hobab, Film i Väst
公式サイト:https://gaga.ne.jp/hatching/
★2022年4月15日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほか全国にて順次公開