2022年02月06日

国境の夜想曲   原題:NOTTURNO

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(C)21 UNO FILM / STEMAL ENTERTAINMENT / LES FILMS D’ICI / ARTE FRANCE CINEMA / Notturno NATION FILMS GMBH / MIZZI STOCK ENTERTAINMENT GBR

監督・撮影・音響:ジャンフランコ・ロージ (『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』)

それでも、そこで暮らす人々・・・

夜明け、整列し掛け声を発しながら走る兵士たち。

荒涼とした地に建つキャラバンサライのような建物。スカーフ姿の女性たちが嘆く。ここに投獄され拷問を受け亡くなった息子たち。「神がお前のいない人生を生きることをお決めになった」と言いつつ、トルコ政府を恨む母親。

暗い中、バイクに乗る男。油田のやぐらに火が見える。
湿地帯。ボートで湖に漕ぎだす。遠くから銃声が聞こえる。

夕闇の町を見下ろす屋上にたたずむカップル。水煙草をふかす女性。遠くからアザーンが聴こえてくる。男は正装して、白い帽子を被り、太鼓を叩きながら歌い、古い町並みを行く。

荒野を装甲車が行く。
女性兵士たちが兵舎に入り、ストーブを囲む。
外では銃を構え荒野を見張る女性兵士。

精神病院。選ばれた患者たちが舞台で政治風刺劇の練習に勤しむ。(アラビア語)
軍事クーデター、アルカーイダ、ISIS・・・すべてを入れ込んだ台本。
スクリーンに映し出される映像。町をいく戦車。爆破されるモスク。博物館で叩き壊される古代の遺物・・・

夜明け前から家族のために、海で魚を釣り、草原で猟をする少年。時には猟師のガイドをして日銭も稼ぐ。父親はいない。幼い5人の兄弟たちと朝食を済ませると、少年はやっとソファで眠りにつく。

幼いヤズィーディー教の子どもたち。描いた絵の説明をする。ISISが家を爆発。拷問して人々を殺した・・・  子どもたちのおぞましい記憶。

オレンジ色の囚人服の男たち。
刑務所の中庭から、前の人の肩に手を乗せ、連なって中に入っていく。

大きな川。橋が途中で途切れている。筏のような“渡し”で車もミニバスも運ぶ。
水の溜まった道を行く車。

破壊し尽された町。娘からのVOICEメールを聴く母親。「500ドル送って」という娘。そばで男が監視しているようだ。シリアにいる。連絡が取れなくなっても心配しないでという娘。

再び、演劇。「尊厳のある国で暮らしたい」

冒頭、「オスマン帝国の没落と第二次世界大戦後、あらたな宗主国が国境線を引いた」と掲げられます。
かつては、メソポタミア文明の発祥した地。
民族や宗教の異なる人たちが、お互いに切磋琢磨して豊かな文化を育んできた地。
今は残念ながら紛争地域のイメージが植え付けられてしまったイラク、シリア、レバノン、クルディスタンの国境地帯。
監督が捉えるのは、その地で、自分の運命を受け入れ、懸命に生きる人たちの姿。
そこがどこで、なぜそのような境遇にあっているのかなど、一切の解説を廃した映像。
だからこそ、ちょっとしたヒントから、そこはどこと詮索してしまいますが、それは監督の意図するところではないでしょう。
あるがままを観て、感じて、想像を掻き立てて、そこで暮らす人たちの気持ちに寄りそうことができれば、それだけでいいのだと。

それでもヒントを得たい方は、公式サイト
『国境の夜想曲』を読み解くためのキーワードをどうぞ!
https://bitters.co.jp/yasokyoku/background.php

ジャンフランコ・ロージ監督は、1964年、エリトリア国アスマラ生まれ。エリトリア独立戦争中、13歳の時に家族と離れてイタリアへ避難。このご経歴が紛争地区で暮らす人々への静かな眼差しに繋がっているのだと感じました。 そして、私たちもまた、いつ歴史に翻弄されるかもしれないことを心しなければと感じさせてくれました。(咲)



受賞ノミネート
第77回ヴェネチア国際映画祭 ユニセフ賞/ヤング・シネマ賞
最優秀イタリア映画賞/ソッリーゾ・ディベルソ賞 最優秀イタリア映画賞 受賞
第33回東京国際映画祭 正式出品
山形国際ドキュメンタリー映画祭2021 コンペティション部門 正式出品


2020年/イタリア・フランス・ドイツ/アラビア語・クルド語/104分
配給:ビターズ・エンド
公式サイト:https://www.bitters.co.jp/yasokyoku/
★2022年2月11日(金・祝)Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー



posted by sakiko at 16:38| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

北風アウトサイダー

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監督・脚本・プロデューサー:崔哲浩
出演:崔哲浩  櫂作真帆  伊藤航  上田和光
浦川奈津子 遠藤綱幸 佐野いずみ 新宮里奈 梅津翔 田中あいみ 秋宮はるか
千賀多佳乃 福本翔 玉木惣一郎 松田俊大 杉浦豪 大原広基 許秀哲 及川欽之典 森本姫愛 丹春乃 菊地玲緒 岡部浬功 黒田焦子 藤代麻美 永田もえ
永倉大輔  松浦健城  竜崎祐優識  並樹史朗  岡崎二朗

大阪・生野区にある在日朝鮮人の町。
オモニ食堂を切り盛りしていたオモニ(お母さん)が亡くなり、自宅の座敷で身内だけの葬儀が行われていた。次男・チョロと妻・朱美、三男のガンホと彼女のユナ、長女のミョンヒと彼氏の透。そして、食堂で働く和希。15年前に失踪した長男・ヨンギは葬儀にも現れない。僧侶の読経に、皆がオモニに思いを馳せている最中、オモニに世話になったという祥子が焼香させてくださいと現れる。僧侶の配慮で座敷にあがる祥子。
オモニが店のためにした借金を残していて、途方に暮れる兄弟たち。ヨンギの親友で、オモニと食堂を愛するヤクザの清田も、なんとか店を残そうと尽力してくれる。
そんなある日、15年ぶりに長男・ヨンギが帰ってくる。変わり果てた姿に当惑する兄弟たち。家族の絆は取り戻せるのか、そしてオモニ食堂を守れるのか・・・

「朝鮮人も日本人もみんな人間だから、仲良くできる時代が必ず来る」というオモニ(母)の言葉を胸に、4人兄妹が、オモニ食堂で一緒に働く仲間や、日本のヤクザの組に入った旧友らと協力し、店の借金返済や一方的な価値観を押し付ける在日朝鮮統一連合会などの難題に挑む群像劇。

長男・ヨンギを崔哲浩監督自身が演じた以外、在日コリアンを演じた方たちは日本人の役者でしたが、しっかり在日に見えました。在日も日本人も変わりはないという証でしょう。
それでも、在日の方たちが差別や偏見を受けている実情があります。この映画の物語の8割ほどは、崔監督自身の経験や、周りの在日の実話とのこと。

次男・チョロが日本人の朱美と結婚したいとオモニに告げた時、オモニは「こんな出来損ないと結婚してくれるなんて」と大歓迎。なのですが、朱美は不妊症と判明。泣いて謝る朱美にオモニは優しく接します。その後、長男・ヨンギの妻が生まれたばかりの娘を残して逝ってしまい、娘ナミをチョロ夫妻の養女に。そのナミが大学進学にあたって、日本の大学よりも朝鮮大学に進学したいと願うのですが、日本で認可されていないので学費が高い上に、卒業しても朝鮮銀行など狭い選択肢しかないことで親が心配します。
葬儀で始まった本作、在日であることの悩みや問題を織り込み、三男ガンホとユナの結婚式で華やかにフィナーレを迎えます。日本の生活様式に馴染みながらも、どこかにコリアンであることも感じさせてくれる在日の人たちの暮らしを垣間見せてくれました。 登場人物が多くて、関係性をのみこむのにくらくらするのですが、それもまた楽し♪(咲)


2021年/日本/5.1ch/DCP/150分
配給:渋谷プロダクション 
©2021 ワールドムービーアソシエーション
公式サイト:https://www.kitakaze-movie.com
★2022年2月11日(金)〜 シネマート新宿ほか、全国順次ロードショー!



posted by sakiko at 12:28| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

標的

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監督:西嶋真司
法律監修:武蔵小杉合同法律事務所・神原元、北海道合同法律事務所・小野寺信勝
監修:佐藤和雄
プロデューサー:川井田博幸
撮影:油谷良清、西嶋真司
音楽:竹口美紀
出演:植村隆

1991年8月、朝日新聞大阪社会部記者の植村隆氏が、元「慰安婦」だったと名乗り出た韓国人女性の証言を伝える記事を書いた。日本政府は国や軍部が関与したことを否定していた。記事が書かれてから何年も経った2014年以降、一部から「捏造記者」として植村氏への執拗なバッシングが始まる。SNSでの誹謗中傷ばかりか、自宅への電話、当時の勤め先だった大学や家族への脅迫や嫌がらせを受けた。同じような記事を書いた別の記者や新聞社には関与せず、なぜ植村記者がバッシングの「標的」とされたのか? 植村氏と彼を支える人々は、理不尽なバッシングに屈することなく、裁判に訴えて真正面から闘い続ける。

元RKB毎日放送(福岡)ディレクターの映像作家、西嶋真司監督が製作したドキュメンタリー映画。西嶋監督は、ジャーナリストが萎縮することなく真実を報道しなければ社会は衰退する、と危機感が募りました。勤めていたテレビ局へ企画を出しますが、実現しません。この映画は退職して作るほかない、とテレビ局を辞めて植村さんの行動に密着します。多くのジャーナリストや歴史学者、元記者、支える人たちに取材します。札幌や旭川、韓国のナヌムの家を訪ねる植村さんを追います。
バッシングの元になったものが明らかになるにつれ、日本を覆っている戦前戦中のような空気が形を持って見えてきます。これは植村さんに限ったことではなく、いつ誰が「標的」になってもおかしくないとわかります。では、どうしたらいいのか?それを観客の一人一人が考え、見つけ出すこと。そのためには「相手」を知らねば。知ることがいつも最初の一歩です。
「恐怖」で人は支配されやすいです。本人が強靭であればその周りが攻撃されます。まだ高校生だった植村さんの娘さんが、SNSに素顔や学校をさらされ、どんなに怖い思いをしたことか。どんなにご両親が辛かったか、想像するだけで苦しくなります。父と娘の会話を映す監督の胸の内も同じだったはず。
札幌と東京で行われた裁判をたくさんの市民が見守り、支えているのが心強いです。一人の力は、砂一粒かもしれません。でもゼロと1では大違い。劇場のないところでも上映会ができますよ。(白)


●2021年 JCJ賞(日本ジャーナリスト会議)を受賞!

2021 年/日本/カラー/99 分
配給:グループ現代
(C)ドキュメントアジア
https://target2021.jimdofree.com/

★2022年2月12日(土)よりシネマリン、シネ・ヌーヴォほか全国順次公開
posted by shiraishi at 10:41| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

西成ゴローの四億円 死闘篇

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©上西雄大

監督・脚本:上西雄大
製作総指揮:奥山和由
主題歌 「西成 TOWN」 唄:西成の神様(作詞・作曲:せきこ〜ぢ 添詞:西成の神様)
挿入歌 「飛びます」唄:山崎ハコ (作詞・作曲:山崎ハコ)
劇中歌 「川向うのラストデイ」 唄:原田喧太 (作詞:松田優作 作曲:荒木一郎)
出演:上西雄大 津田寛治 山崎真実 徳竹未夏 古川藍 笹野高史 木下ほうか 阿部祐二 加藤雅也(友情出演) 松原智恵子(友情出演) 石橋蓮司(特別出演) 奥田瑛二

『西成ゴローの四億円』(前篇)の続き
大阪・西成で日雇い労働をしながら暮らす土師晤郎(上西雄大)。元妻・片桐真理子(山崎真実)から、娘の心臓移植のために4億円が必要だと聞かされ、何がなんでも4億円つくると闇仕事に勤しむ日々。記憶が少しずつ蘇り、記憶喪失の原因を作ったのはゴルゴダ(加藤雅也)だったことを思い出す。とある教会を根城に表向きは信仰団体を装う秘密結社テンキングス。ゴルゴダは、最高位幹部の百鬼万里生(木下ほうか)の元、邪魔な人間を始末していた。ゴローと縁が出来た闇金姉妹の松子(徳竹未夏)と梅子(古川藍)は暴力団たちと西成の利権争いをしていたが、姉妹のバックにいる韓国眞劉会会長のウー・ソンクー(石橋蓮司)により守られていた。
ある時、世の中に新型ウイルスが蔓延する。西成の仲間たちもウイルスに感染し、倒れていった。ゴローが心を許していたカネやんこと金本康治(笹野高史)もウイルスに侵されてしまう。カネやんは、息子が一緒に暮らそうと声をかけてくれたが、手ぶらではいけないと目と腎臓を売って金を手にしたばかりだった。このウイルスを故意に国外から持ち込んだのがゴローだとニュースが流れる。それはゴルゴダたちと手を組んだゴローの元同僚・日向誠也(津田寛治)が影で糸を引き流したデマ報道だった・・・

残忍なゴルゴダを演じている加藤雅也さん。バタ臭い雰囲気で一見カッコいいのですが、変な髪形に円形ハゲで笑わせてくれます。そして、カネやんを演じた笹野高史さんが、緩衝材のようないい味出してます。カネやんの息子役で実の息子ささの友間さんが出演していて、一緒に出てくるシーンはないのですが、親子共演となっています。松原智恵子さんや石橋蓮司さんも凄味のある役どころなのですが、全編を通じて、「死闘編」と言いながら、どこかほんわかしているのは、大阪弁だからでしょうか。西成を舞台にした人情物語の様相が強かったです。(咲)

記憶が戻ってきたゴロー、アクションの見せ場も多くなります。上西監督は香港映画ファンでしょうか?なんだか昔懐かしい動きが見受けられました。それに加えて、中国資本に翻弄されるとか、ウィルスの蔓延とか、フィクションの中に真実味があり、笑いの中にぴりりと辛みも効いています。
ちょっと面白いシーンは、こわもてのウー会長が相手の目の中に真実を見るところ。いつもテンションMAX!闇金姉妹のお姉ちゃん松子が恋する乙女になって、妹の梅子は面白くありません。それを見透かすのもこの会長です。その眼力羨ましい。(白)


2021 年/日本/カラー/124 分/PG12
企画・製作・制作:10ANTS
配給:吉本興業 チームオクヤマ シネメディア
©上西雄大
公式サイト:https://goro-movie.com
★2022年2月5日(土)より大阪先行上映、2月19日(土)より新宿K'sシネマほか全国順次ロードショー




posted by sakiko at 03:29| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

西成ゴローの四億円

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©上西雄大

監督・脚本:上西雄大
製作総指揮:奥山和由
挿入歌 「寂(レクイエム)唄」「西成 TOWN」唄:西成の神様
出演:上西雄大、津田寛治、山崎真実、波岡一喜、徳竹未夏、古川藍、奥田瑛二

大阪の西成に住む、日雇い労働者・土師晤郎(上西雄大)は、「人殺しのゴロー」と呼ばれて、皆から頼られる存在だ。本人は記憶を失っていて、なぜここ釜ヶ崎で暮らしているのかわからない。ある日、いざこざから頭に大怪我をして手術し、一部記憶が戻る。元妻・片桐真理子(山崎真実)と再会し、かつて元政府諜報機関ヒューミントの工作員だったと聞かされる。娘が難病で心臓移植する以外に助かる方法が無いが、4億円の費用の援助を受けようにも、父親が殺人犯であることが障害になっていると言われる。妻が大学教授を辞め、SM の風俗嬢をしながら娘の延命費を稼いでいることを知り、どんなことをしてでも4億円稼ぐと、ゴローは奔走する・・・

上西雄大監督自身が演じるゴローは、記憶喪失のせいか、上西雄大ご本人の人柄のせいか、人殺しをするような強面に見えません。
とてつもない力をもつフィクサー・莫炉脩吉役の奥田瑛二は、さすがの迫力。諜報機関ヒューミントの同僚だった日向誠也役の津田寛治も、負けず劣らずの迫力。
登場する人ごとに、所持金、貯金、借金の額などが囲みで表示されます。貯金3億や4億の人たちが、所持金も貯金もない輩から、借金を取り立てるという構造。金のある者は、さらに蓄財し、金のない者は、雪だるま式に借金が増える・・・ 世の常とはいえ悲しい現実。ゴローは娘のために、どうやって4億円を作るのでしょう。本作は前編。まだ4億には程遠いのです。顛末は、後編『西成ゴローの四億円 死闘篇』でどうぞ! (咲)


ねばぎば 新世界』を観て以来、上西雄大監督の次作が気になっていました。ほんとに諜報機関があるのかどうか知りませんが、出張の多すぎる公務員の妻がいたらちょっと疑ってみましょう(笑)。音と一緒に表示される金額を思わずしげしげと見てしまいました。あるところにはきっとあるんでしょう。心臓手術と費用の話で『五億円のじんせい』(2019)を思い出しました。善意の募金で命が助かった男の子が生き方に悩むのです。
この映画では一人娘のために、両親が身体を張ってお金を作ります。ゴローは妻子に負い目があり、娘のためなら命も惜しみません。手始めに身体の一部で金策。その値段は高いか安いか?自分の金銭感覚も試されます。(白)


2021 年/日本/カラー/104 分/G
企画・製作:10ANTS
配給:吉本興業 チームオクヤマ シネメディア
©上西雄大
公式サイト:https://goro-movie.com
★2022年1月29日(土)より大阪先行上映、2月12日(土)より新宿K'sシネマほか全国順次ロードショー

posted by sakiko at 03:25| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

オーストリアからオーストラリアへ ふたりの自転車大冒険  原題:Austria2Australia

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(C)Aichholzer Film / Dominik Bochis / Andreas Buciuman

監督・脚本・撮影・編集:アンドレアス・ブチウマンとドミニク・ボヒス
監修 :マルティナ・アイヒホルン
最終編集:イネス・ヴェーバー
プロデューサー:ヨーゼフ・アイヒホルツァー

オーストリアでIT企業に勤める青年アンドレアス・ブチウマンとドミニク・ボヒスは、大学時代からの友人。二人はオーストリアからオーストラリアまで自転車で走破する旅に出る。海路を除いてその距離 18,000km、訪問国 19 か国、期間にして 11 か月!
ふたりを突き動かしたのは「限界に挑戦したい」というシンプルな情熱と好奇心。
本作は、自転車に積み込んだ小型カメラ2台と、GoPro(ゴープロ)のカメラにドローンで撮った旅の記録。

自転車で冒険旅行に出ると決めた二人。地図を手に取り、いちばん下の右端にあるオーストラリアを目的地に決め、ビザ発行があまり面倒でなさそうな国を通る計画を立てたとのこと。
オーストリアのリンツを出て、東欧などを経由してロシアに入るまでは、毎日、寝場所を探し、食料や水の調達をするのに精一杯であまり映像がありません。ようやく余裕が出来たのかモスクワの赤の広場が映し出されますが、ロシアではビザの有効期間 30 日の間に2500 キロを走破しなくてはならず、地元の人と交流する時間もなかった模様。
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ロシアからカザフスタンに入ったとたん、知り合った運転手さんの家に招かれ、ご馳走を振舞われ、さらに結婚式にも参加と、イスラーム世界あるあるのおもてなしがさっそく展開。キルギスや中国のカシュガルでも中央アジア風のムスリムのおもてなし。
カシュガルには、1990年代に行ったことがあるのですが、すでに漢民族がじわじわと入ってきていました。ここ数年、ウィグルの人たちの文化が蹂躙されている報道が続いていますが、この映画にはウィグルの人たちの活気ある姿が映し出されていて、もしかしたら貴重な記録になるのではと思ってしまいました。
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次に入ったパキスタンでは、パトカーがすぐ後ろに密着してついてきて、ウザイし怖いと、なんとかまくのですが、また警官たちが現れて、実は心配して見守ってくれていたのだとわかります。その夜は、警官たちはじめ大勢の男の人たちと太鼓と手拍子で踊るというお酒抜きの宴が続きました。私もパキスタンでは町を散策していた時に、好奇心いっぱいの人たちに取り囲まれた経験があるので、これまたあるあるの世界だなぁ~と。
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(C)Aichholzer Film / Dominik Bochis / Andreas Buciuman
インドに入り、アムリトサルにあるシク教の黄金寺院で、振舞い料理をいただく場面が出てきました。『聖者たちの食卓』(2011年/ベルギー 監督:フィリップ・ウィチュス、ヴァレリー・ベルト)を思い出しました。
ネパールにも行き、その後、ミャンマーのビザが取れず仕方なく飛行機でタイへ。マレーシア経由シンガポールまで走り、飛行機でオーストラリアのパースへ。そこで旅は終わらず、さらに東のブリスベーンまで。 後半は(暁)さんに詳細は譲りますが、途中でやめたくなる苦労もあった自転車の旅。やり遂げた時の爽快感(と脱力感も?)が観ている私たちにも伝わってきました。そも、自転車に乗れないので、とても真似はできませんが、見知らぬ土地の人たちと交流しながらの旅に、いつかまた出たくなりました。コロナがうらめしいです・・・ (咲)


恐らくアンドレアスとドミニクは自転車での旅がここまでハードなものになるとは思っていなかったのではないだろうか。作品の前半は軽口をたたく余裕もあったけれど、次第に自分の決断に迷いが生じてくる。そんな姿もしっかり映し出しているので、2人に感情移入し、他人事には思えなくなってしまう。旅行中にすでにFacebookを通じて発信していたことから、旅先で声を掛けられる場面があり、リアルタイムで知らなかった自分が残念に思えてきた。この旅をやり遂げたアンドレアスとドミニクは今、どんな生活をしているのだろう。もし、また自転車でどこかに行くようなことがあったら、Facebookで追いかけてみたい。(堀)

本当はスタッフ日記のほうに書く予定だったのだけど、もう公開が始まってしまうので、こちらの作品紹介に映画を観ての感想や思ったことを記します。
まずタイトルに惹かれました(笑)。「オーストリア」と「オーストラリア」、昔から紛らわしいと思っていました。オーストリアとオーストラリア、どっちなの?ということ、何度もありました。このオーストリア在住の若者たちがオーストラリアに向けて自転車で旅をする、これは面白そうと思いました。

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カザフスタンの草原

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チベット

ヨーロッパからロシアに向けての最初は雨が多かったようですが、ロシアを通り抜けカザフスタンに入ってからのからっとした草原の景色を見てほっとしました。11か月にも渡る旅の間、いろいろな人と出会い、二人の関係もぎくしゃくした時もあったようだし、アクシデントも何回も。自転車が壊れたこともありました。でも目標のオーストラリアに向かって走り続けました。その姿がすがすがしかった。パキスタンの部分の詳細は(咲)さんのところに詳しく書かれているけど、最後警官の人たちとの宴会では、思わず大笑いしてしまいました。喧噪のインド、ヒマラヤやカラコルムの山々を眺めながら走り、そしてネパール、マレーシア、シンガポールへ。このアジアの景色は、けっこう映画などで観て来た景色ではあるものの、思わず懐かしくてほっこりしてしまいました。

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カラコルム越え?

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オーストラリア1長い146,6㎞直線道路

シンガポールからオーストラリアには飛行機で入国し、オーストラリアの西から東へ横断したものの、入り口の「パース」という地名は語られず。HPの地図にも載っていません。とても残念。なぜこだわるかというと、私が初めて海外旅行に行ったのは1990年でパースでした。そこに移住した友人を訪ねて、友人3人で訪ねました。なのでパースからのこの二人の自転車の旅は、その時のことを思い出させてくれました。舗装された道路の横は大地の赤い土の色がずっと続いていたのですが、同じようにそれが映されていました。まっかな大地の色にびっくりしたことを覚えています。そして二人が通った砂漠の砂の色が真っ白でびっくりしました。映画を観終わってから、ふと数日前にTVで見た「NHK ブラタモリ」の「南紀白浜」の回で、「白浜の白い砂はオーストラリアから輸入したものがある」と言っていたのを思いだしました。もしかしたら、この砂漠の砂かもと思って調べてみたら、たぶんそのようでした。それほど印象的な真っ白な砂漠が続いていました。そしてたどりついた最終目的地ビリズベン。ちなみにそのパースに移住した友人はオーストラリアに帰るオーストラリア人と一緒に行ったのですが、この二人とは逆に、東のシドニーからパースへ(つまり東から西へ)車で約6000㎞移動したそうです。途中たくさんの野生のカンガルーにも会ったと言っていました。

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道路の脇は赤い大地

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真っ白な砂漠を行く

それにしても自転車でこの旅を続けるという、難しいけど素晴らしい冒険旅行。そしてそれを記録し映画にしたということは、撮影機材が小型化したこの時代だからできたことだし、この新型コロナが広がる前だからできたこと。絶妙なタイミングだったということですね。映画公開という意味ではこのくらいの長さがいいのかもしれませんが、通った土地の映像がもう少しある長いバージョンも観てみたいな(暁)。
 写真クレジット © Aichholzer Film 2020

2020 年/オーストリア/ドイツ語/カラー/デジタル/16:9/88 分
日本版字幕:吉川美奈子
© Aichholzer Film 2020
日本公開後援:オーストリア大使館/オーストリア文化フォーラム
公益財団法人日本サイクリング協会
提供・配給:パンドラ
公式サイト:http://www.pan-dora.co.jp/austria2australia/
★2022年2月11日(金祝)ヒューマントラストシネマ有楽町&アップリンク吉祥寺他全国順次公開‼


posted by sakiko at 01:50| Comment(0) | オーストリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする