2022年02月04日

ブルー・バイユー  原題:Blue Bayou

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(C)2021 Focus Features, LLC.

監督・脚本:ジャスティン・チョン
出演:ジャスティン・チョン、アリシア・ヴィキャンデル、マーク・オブライエン、リン・ダン・ファム、エモリー・コーエン

ルイジアナ州ニューオリンズ郊外のバイユー(デルタ地帯)で暮らすアントニオは、韓国で生まれ3歳の時に養子としてアメリカにやってきた。シングルマザーのキャシーと結婚し、娘のジェシーを実の子のように可愛がって幸せに暮らしている。もうすぐ生まれるキャシーとの子どものためにも、仕事を増やしたいが、アジア系であることなどからなかなかうまくいかない。おまけに、ジェシーの実の父親で結婚もせずキャシーたちを捨てた警官のエースが今になって娘に会わせろと執拗に迫ってくる。あげく、些細なトラブルを口実にアントニオはエースに逮捕され、さらに30年以上前の養父母による手続きの不備で市民権がないことが判明し、移民局へと連⾏され、国外追放命令を受けてしまう。弁護士から、出国して海外で在留資格を取るか、留まって国外追放命令に対し控訴するかの二つに一つだと告げられる・・・

海外から迎え入れられた養子に市民権を与える法案が可決されたのは、2000年。アントニオはそれ以前にやって来て、養父母がきちんと市民権の手続きをしていなかった為の不幸。韓国に強制送還されても、3歳の時に養子に出された身、頼る家族もいないのに、米国移民局の容赦ない厳しさを感じました。結婚もしているし、生まれてくる子どももいるのに・・・
韓国では、朝鮮戦争後、孤児を養子として海外に出したことに端を発し、その後も2005年頃まで毎年2000人以上が海外に渡っています。ドラマでも時々出てきますが、映画では、まず『冬の小鳥』が思い浮かびました。こちらはフランスに養子に出されたケースでしたが、『ファイティン!』では、マ・ドンソクさん演じる主人公が生まれてすぐアメリカへの養子に出されたという役どころでした。
ジャスティン・チョン監督ご自身は、南カリフォルニア出身で養子ではありませんが、少年時代、韓国系アメリカ人の養子が大勢いて、自分とは違う経験をしていると感じたとのこと。本作は、数年前に読んだ国外退去になる韓国生まれでアメリカ育ちの養子たちについての記事に触発されて作ったもの。 幸せに暮らしたいだけなのに、立ちはだかる壁について考えさせられました。
また、本作では、アントニオの営むタトゥー店に顧客として訪れたベトナム女性との友情が描かれています。難民としてアメリカにやって来た彼女と接し、韓国もベトナムも共に戦争に翻弄された国であることや、アジアの文化についてアントニオは考えさせられるのです。ニューオリンズ付近には、ベトナム人の住む広大な居留地があって、共通点のあるアジアの2つの民族性を一本の映画のなかで描くことも、監督は本作の目標にしていたとのことです。(咲)


ジェシー役の女の子が少しも演技を感じさせず、どう演出したのだろうと感心しました。キャシー役のアリシア・ヴィキャンデルも好演。作中で歌う「ブルー・バイユー」(字幕は「青い沼」)の歌が少し物憂げで切なくて心に残りました。60年代にロイ・オービソンが発表し、70年代にリンダ・ロンシュタットがカバー。両方日本でも発売された曲なので、なんだか懐かしい気がしたのは聞いていたのかも。
エンドロールに顔写真と名前が次々と出てきました。戦後から98年くらいまでにアメリカへ養子として渡った子どもたちのうち、数万人が市民権を得られずにいるそうです。救済措置はないのでしょうか。(白)


国境を越えて行われる養子縁組は日本ではあまり馴染みがありませんが、アメリカではかなり頻繁に行われていたことをこの作品で知りました。専修大学法科大学院の早川眞一郎教授によると、統計上、韓国は1953年から2010年までで総計16万人余りの国際養子を送り出し、特に1970年頃からその数が急増し、1985年頃には年間8,000人を超えていたそう。あまりの多さに驚きます。
しかも、この作品が描いているのは養子縁組の問題だけではありません。子どものときの経済格差が学歴格差になり、結果として職業選択において圧倒的に不利な状況になってしまうことも伝わってきます。これって今の日本にもいえること。本来、本人の努力次第で人生を切り開いていけるべきなのに、そうはならない不条理に多くの人が苦しんでいます。どうしたらいいのか、簡単には答えは出ませんが、みんながそのことに意識を向ければ少しずつは変わっていくでしょうか。
安直なハッピーエンドにはせず、突き放したようなラストは辛いものの、様々な立場で互いに相手を思う気持ちが感じられ、希望は感じられました。(堀)


1960年代から1970年代にかけて韓国から養子縁組で外国に行った子供たちは約20万人いるそうですが、そのことを知ったのは『冬の小鳥』(2009)でした。その後2012年に日本公開された『はちみつ色のユン』で描かれた主人公が養子縁組で行ったのはベルギ―でした。でも韓国から養子に行ったのは、きっとアメリカが一番多いのではないかなと思っていました。そして、この映画はアメリカに養子に行った青年が出てきました。それなのに制度が変わった時に両親が手続きしていなかったばかりに韓国に強制送還されることになってしまったという話でした。
日本の行政も杓子定規だけど、移民の国というアメリカでも、手続きがしていなかったということは本人のせいじゃないのに、法律だからと情け容赦もなく強制送還なんだと思いました。最後のシーンの個人ではどうにもならない場面では泣けました。(暁)。

2021年/アメリカ/118分
配給: パルコ=ユニバーサル映画
公式サイト: https://www.universalpictures.jp/micro/blue-bayou
★2022年2月11日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、渋谷シネクイントほか全国ロードショー



posted by sakiko at 02:49| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする