2022年01月30日

再会の奈良 原題:又見奈良

12022.2/4(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開 / 1/28(金)より奈良県にて先行上映 劇場情報
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©2020“再会の奈良”Beijing Hengye Herdsman Pictures Co.,Ltd,Nara International Film Festival, Xstream Pictures (Beijing)

中国残留孤児の娘と母の60年にわたる「絆」 
中国と日本の戦争の歴史を今に伝え、問いかける


スタッフ・キャスト
監督・脚本:鵬飛(ポンフェイ)
エグゼクティブプロデューサー:河瀬直美、賈樟柯(ジャ・ジャンクー)
出演:國村隼、吴彦姝(ウー・イエンシュー)、英澤(イン・ズー)、秋山真太郎、永瀬正敏
撮影:廖本榕(リャオ・ペンロン)
音楽:鈴木慶一  編集:陳博文(チェン・ボーウェン)
照明:斎藤徹 録音:森英司 美術:塩川節子
共同製作:21インコーポレーション 
後援:奈良県御所市 

『再会の奈良』は、河瀬直美監督がエグゼクティブディレクターを務める「なら国際映画祭」が、今後の活躍を期待する若手の映画監督を招き、奈良を舞台に映画を制作する、“今と未来、奈良と世界を繋ぐ”映画製作プロジェクト、「NARAtive2020」から生まれた日中合作映画。

奈良・御所市を舞台に、日中の国境を越えた中国残留孤児の家族の絆を描き、日中の魅力あふれる演技人が出演。歴史に翻弄された「中国残留孤児」とその家族がたどる運命、互いを思い合う気持ちを、2005年秋の奈良を舞台に切なくもユーモア豊かに紡いでいます。監督・脚本は、中国の鵬飛(ポンフェイ)。フランスの映画学校を卒業後、蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督の現場で助監督・共同脚本などを務め、ホン・サンス監督のアシスタントプロデューサーも務めています。本作は3本目の長編。2作目の『ライスフラワーの香り(米花之味)』が、2018年の「なら国際映画祭」で観客賞を受賞し、“今と未来、奈良と世界を繋ぐ”映画製作プロジェクト「NARAtive2020」の監督に選出され、奈良を舞台にした本作『再会の奈良』を製作。エグゼクティブプロデューサーは奈良出身で「なら国際映画祭」のエグゼクティブ・ディレクターでもある河瀬直美監督(自らの境遇から製作された『につつまれて』『かたつもり』を始め、『萌の朱雀』『殯の森』など奈良を舞台にした映画を多数作ってきた)と中国映画「第六世代」のジャ・ジャンクー監督(『一瞬の夢』『山河ノスタルジア』『長江哀歌』など)が務めている。

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©2020“再会の奈良”Beijing Hengye Herdsman Pictures Co.,Ltd,Nara International Film Festival, Xstream Pictures (Beijing)

1994年に日本に帰国させた中国残留孤児の養女麗華と数年前から連絡が途絶えたのを心配して、中国から陳ばあちゃんが、孫娘のような存在の小澤(シャオザー)を頼って一人奈良にやって来た。手掛かりは麗華の写真と日本から届いた十数通の手紙だけ。麗華の日本名も分からない。麗華を捜し始めた2人は一雄という男性と知り合い、元警察官だったという一雄と麗華捜しを始める。紅葉最中の奈良・御所を舞台に言葉の壁を越えて不思議な縁で結ばれた3人のおかしくも心温まる旅が始まる。異国の地での新たな出会いを通して、陳ばあちゃんは愛する娘との再会を果たせるのか。
麗華探しを手伝う元警察官の一雄を演じるのは、河瀬直美監督の『萌の朱雀』(97)で映画初主演し、『男たちの挽歌』(92)、『哭声/コクソン』(16)、『マンハント』(18)、『MINAMATA-ミナマタ-』(21)など海外作品の出演も多い國村隼。養女探しに来日した養母役には『妻の愛、娘の時(相愛相親)』『花椒(ホアジャオ)の味(花椒之味)』などの日本公開作がある、1938年生まれ83歳のウー・イエンシュー。シャオザー役にはポンフェイ監督の長編デビュー作『 地下香(Underground Fragrance)』で女優デビューを果たし、同監督の長編2作目『ライスフラワーの香り』では主演を演じ、共同脚本も務めた中国の若手女優イン・ズー。物語の鍵を握る寺の管理人を演じるのは『あん』(15)、『光』(17)、『Vision(18)』で河瀨監督と過去3度組んできた永瀬正敏が友情出演。そういえば永瀬正敏も『ミステリー・トレイン』『KANO 1931海の向こうの甲子園』など海外の監督作品、海外を舞台にした作品への出演が多い。シャオザーの元恋人役は劇団EXILEの秋山真太郎と、豪華な出演人。撮影は『河』(97)、『Hole-洞』(98)、『楽日』(03)、『西瓜』(05)、『郊遊<ピクニック>』(13)など多くのツァイ・ミンリャン作品を撮ってきたリャオ・ペンロン。ポンフェイ監督作品は2作目の『ライスフラワーの香り』と本作で撮影を担当している。音楽を担当したのは、はちみつぱい、ムーンライダーズなどで活躍し、PANTAや高田渡ともユニットを組んだこともある鈴木慶一。映画音楽の分野では北野武監督作品の音楽を多数手がけている。

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©2020“再会の奈良”Beijing Hengye Herdsman Pictures Co.,Ltd,Nara International Film Festival, Xstream Pictures (Beijing)

連絡が取れなくなってしまった中国残留孤児の娘を探す陳おばあちゃんと、協力するシャオザーと元警察官の一雄。3人の珍道中的ロードムービーではあるけど切ない。そして日本語ができない陳ばあちゃんのユーモアたっぷりな肉屋でのジェスチャーが面白い。これだけでも心休まる。さすが83歳のベテラン俳優。
そして紅葉の奈良の景色が素晴らしい。奈良には3回くらいしか行ったことがないけど、中学校の修学旅行で行った興福寺や法隆寺なども出てきて懐かしかった。こういう奈良の定番観光地だけでなく、山里の柿の出荷工場や日本酒の酒蔵などの光景も出てきて、古都奈良の魅力とともに、人々の人情、中国から日本に来た人たちも出演し、残留孤児の実情と現在日本に来ている中国人の実情も垣間見える。
中国残留孤児や中国残留婦人など中国残留邦人たちは、戦後の引き揚げ事業の時に日本に帰れず、そのあと中国の内戦、国交の断絶のため、1972年の国交回復まで帰れなくなり、日本にやっと帰れることになったのは1981年頃。1945年の終戦から36年もたっていた。日本に帰国しても肉親が見つからなかったり、日本語が話せなかったりして、日本社会で生きていくのに大変な苦労をしている人が多い。日本の国策で満州に行ったのに、帰国した人たちへの国の支援は充分とは言えない。しかも、もう戦後77年。中国残留邦人のことを知らない若者たちも増えた。せめて、そういう人たちがいるということを忘れないためにも、こういう映画は大きな役目をしているのではないかと思う。1972年に日中国交正常化され、50周年の節目となる2022年。たくさんの人にこの作品を観てほしい(暁)。


今と未来、奈良と世界をつなぐ映画制作プロジェクト「NARAtive(ナラティブ)」では、これまでなら国際映画祭で受賞した世界各地の監督たちが、奈良県の各地を舞台にそれぞれの「奈良」を描いてきました。
「NARAtive(ナラティブ)」公式サイト https://narative.jp/
NARAtive2010 『光男の栗』 監督:趙曄(チャオ・イェ)/中国  橿原市
NARAtive2010 『びおん』 監督:山崎都世子/日本 奈良市田原地区
NARAtive2012 『祈/Inori』 監督:ペドロ・ゴンザレス・ルビオ/メキシコ  十津川村
NARAtive2014 『ひと夏のファンタジア』監督:チャン・ゴンジェ/韓国  五條市
NARAtive2016 『東の狼』 監督:カルロス・M・キンテラ/キューバ  東吉野村
NARAtive2018 『二階堂家物語』 監督 : アイダ・パナハンデ/イラン 天理市


私がこれまでに観たのは、『東の狼』 『二階堂家物語』 の2作品ですが、監督の出身国との繋がりは特になく、監督たちが奈良に思いを巡らして描いたものでした。今回の『再会の奈良』は、ポンフェイ監督が自身の出身国である中国と日本を繋いで紡いだ作品で、NARAtive作品として素敵な着地をしていると思いました。何より、1982年生まれで残留孤児が話題になった頃を知らない若い監督が作ったことに意義を感じました。 本作を通じて、日本や中国の若い世代に残留孤児という悲しい歴史を知っていただければと願います。(咲)



『再会の奈良』公式サイト 
2020年製作/99分/G/中国・日本合作
原題:又見奈良 Tracing Her Shadow
配給:ミモザフィルムズ

*シネマジャーナルHP記事
・特別記事
再会の奈良』ポンフェイ監督インタビュー
・スタッフ日記
『再会の奈良』に出演の女優吴彦姝(ウー・イエンシュー)さん

*参考資料
・「満蒙平和記念館」長野県阿智村に2013年(平成25年)4月オープン
満蒙開拓のミニ知識
posted by akemi at 19:32| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ギャング・オブ・アメリカ  原題:LANSKY

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© 2021 MLI HOLDINGS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.


監督・脚本:エタン・ロッカウェイ
出演:ハーヴェイ・カイテル(『ピアノ・レッスン』『レザボア・ドッグス』『タクシードライバー』)、サム・ワーシントン(『アバター』『ターミネーター4』『タイタンの戦い』、ジョン・マガロ(『オーヴァーロード』)、アナソフィア・ロブ(『チャーリーとチョコレート工場』)、ミンカ・ケリー(『大統領の執事の涙』)、デヴィッド・ジェームズ・エリオット(『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』)、ダニー・A・アベケイザー(『THE ICEMAN 氷の処刑人』)、デビッド・ケイド、シェーン・マクレア、ワス・スティーブンス、ジェームズ・モーゼズ・ブラック、アーロン・アバウトボール、ジョエル・ミカエリー

マイヤー・ランスキー。禁酒法時代から戦後まで、アメリカの暗黒街を牛耳った伝説のギャング。
1981年、マイアミ。作家のデヴィッド・ストーンが、老いたマイヤー・ランスキーを訪ねる。伝記を書きたいというデヴィッドに、「俺が死ぬまで誰にも見せるな」と条件をつけて、語り始める。

1902年、ユダヤ系ロシア人として生まれたランスキー。1912年、10歳の時、ニューヨークにやって来た。貧しい移民の子がのし上がるには、危ない橋を渡るしかない。不良グループのボスだったラッキー・ルチアーノが運び屋を探していると悪の世界に誘われる。
1920年代初期は、酒の密輸ビジネスや地下賭博場に関わり、組織の規模を拡大。1931年、ルチアーノがニューヨーク・マフィアを制すると、殺し屋集団《マーダー・インク》の設立に関わった。1934年に全米犯罪シンジケートを立ち上げ、ニューヨーク外に進出し、全米各地に次々とヤミ賭博の拠点を作ってゆく。第2次大戦中は、米国内でのドイツのスパイ工作に対抗する作戦に関与。戦後、キューバに進出したランスキーは、カジノ経営で巨万の富を築く。FBIの追及で《マーダー・インク》の殺し屋たちは次々と逮捕されるが、ランスキーの悪事が暴かれることはなかった。
イスラエルのメイア首相の代理人と称するヤリーフ氏が援助を求めてくる。多額の寄付に「イスラエルの民を代表して感謝します」とヤリーフ氏。1970年に脱税容疑を受けてイスラエルに逃亡する。祖父のお墓のあるイスラエルで余生を送りたいと思うも、メイア首相がニクソン大統領に武器を要求し、その見返りにランスキーを米国に送還してほしいと主張。強制送還されるも起訴は免れた。その後、マイアミの閑静な隠れ家で暮らしている。
数奇な人生を語り終え、「家族のもとに帰りなさい」とデヴィッドに語るランスキー・・・

デヴィッドが最初にランスキーに会ったとき、「歴史は人によって見方が違うのが面白い」と言われます。ランスキーの長い人生の物語を聞き終えたデヴィッドが、「愛する人の目にどう映るか・・・評価は一つとランスキーは教えてくれた」と語っていたのが心に残りました。
そして、マイヤー・ランスキーという伝説のギャング王。デヴィッドの取材中、「ユダヤ人のジョーク」が飛び出します。ルチアーノが、「出会った時、少年マイヤーは彷徨うユダヤ人だった」と語っています。ランスキー自身も、あれだけ多額の寄付をして尽くしたイスラエルから追い出され「彷徨うユダヤ人」と自嘲しています。老いて静かに暮らすランスキーが、アメリカのモダンなシナゴーグで祈る姿に、どこまでもユダヤ人なのだと感じさせられました。
1983年1月、肺癌で死去。3億ドル以上の資産を残したと言われていますが、スイスの銀行口座も札束も発見されず、「失われた資産」は、いまだに見つかっていないとのこと。どこかで有効利用されているといいのですが・・・ (咲)


2021年/アメリカ映画/英語/119分/シネマスコープ
字幕:草刈かおり
提供:ニューセレクト/配給:アルバトロス・フィルム
★2022年2月4日(金) 新宿バルト9ほか全国公開


posted by sakiko at 00:27| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

パイプライン  原題:파이프라인 英題:PIPELINE

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©2021 [CJ ENM, GOM PICTURES, M.o.vera Pictures] All Rights Reserved.

監督:ユ・ハ( 『マルチュク青春通り』『卑劣な街』『霜花店(サンファジョム)運命、その愛』『江南ブルース』)
脚本:ユ・ハ、キム・ギョンチャン
出演:ソ・イングク(『君に泳げ!』)、イ・スヒョク、ウム・ムンソク、ユ・スンモク、テ・ハンホ、ペ・ダビン

石油を盗め!
送油管に穴を開けて石油を盗み、転売する特殊犯罪「盗油」。
カン・セドル(ソ・イングク)は、3分あればパイプに的確に穴をあけることができる敏腕の穿孔技術者。盗油業界で“ピンドリ”の名で知られる彼に、大企業の後継者ゴヌ(イ・スヒョク)が数千億ウォンの盗油作戦を持ちかける。湖南ラインと京釜ラインの二つの油送管が接近している地で、山の上の廃工場の貯水槽に高圧ホースで石油を流せというのだ。10億ウォンで請け負い、町はずれのキャピタル観光ホテルに、ピンドリを頭に、プロ溶接工のチョプセ(ウム・ムンソク)、建築公務員を30年務めたナ課長(ユ・スンモク)、怪力の人間掘削機ビッグショベル(テ・ハンホ)、そして紅一点、ホテルの受付で監視役を務める“カウンター”(ペ・ダビン)が集結する。さっそく夜中に地下で岩盤の掘削を始めるが、付近を見回るチョ警察官がやってくる。作業音を隠すため、カラオケで大音量で歌っていたチョプセが、さらに絶叫する・・・

赤いスポーツカーで現場に赴き、プラダのスーツ姿で華麗にパイプに穴をあけるピンドリを演じたのは、本作が『君に泳げ!』以来、8年ぶりの映画出演となるソ・イングク。ちょうど今、テレビで観ているドラマ「空から降る一億の星」で主役を演じていて、捉えどころのない不思議な魅力のある青年。
盗油作戦を仕掛けた大企業の後継者ゴヌを演じたのは、モデル出身のイ・スヒョク。冷徹な金の亡者を体現しています。ペ・ダビン演じる“カウンター”は、工具や建設機械を器用にこなすリケジョ。これはという場面で大活躍です。 お巡りから出世できないでいるチョ警察官が、要所要所で出没していい味出しているのですが、この人物に関してはプレス資料に記載なく、詳しく知りたいところです。
エンドロールで流れる出演者たちの楽しい動画は、チョプセ役のウム・ムンソクが制作したもの。本作では、ずる賢い役どころで笑いを誘っています。5人が集結し、本名は?と聞かれ、「チョン・ウソン」と答えるチョプセ。(もちろん似てません) ピンドリは、「じゃ僕はウォンビンだ」。
皆それぞれ悪に手を染めるようになったのにはワケがあって、笑えて泣けるアクション・エンターテイメントです。それにしても、ほんとに油送管から油を盗む犯罪はあるのでしょうか・・・ (咲)


「パイプライン」といえばザ・ベンチャーズの曲(64年にシャンテイズのオリジナル曲をカバーして大ヒット)です。当時のギター男子はこの曲をエレキギターで弾きたくて猛練習していました。あちこちの文化祭で生徒を熱狂させていたはずです。なんと半世紀も昔のこと。そんな懐かしい曲が冒頭に流れてびっくり!!
(咲)さんが思い当たらなかったチョ警察官はけっこう大事な役ですよね。『チャンシルさんには福が多いね』(2020)でフランス語の先生役だったペ・ユラム。前野朋哉さんにちょっと似た感じの人です。
泣きボクロが印象に残るソ・イングクはテレビドラマの出演が続いて、映画は久しぶり。ドラマではラブシーンが美しくて特に「キス職人」と呼ばれているようです。本作では女性と絡まないのでそんなシーンはございません。ちょっと残念。その代わり短時間で困難なミッションをこなす男前な姿が観られます。(白)


2021年/韓国/108分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/映倫【G】区分
日本語字幕:福留 友子
配給:クロックワークス
公式サイト:klockworx-asia.com/pipeline/
★2022年2月4日(金) シネマート新宿ほか全国ロードショー

posted by sakiko at 00:11| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする