2022年01月28日
鈴木さん
監督・脚本:佐々木想(ささきおもい)
撮影:岸健太朗
出演:いとうあさこ(よしこ)、佃典彦(鈴木さん)、大方斐紗子(すみこ)、保永奈緒(のりこ)、宍戸開(ホンダ)
現人神である「カミサマ」を国家元首にいただき、清く、美しく輝ける とある国のとある街。少子化にあえぐこの街では、45歳以上の未婚者は市民権を失うという条例が制定されており、市民権を剥奪されると、街を出て行くかあるいは、軍に入隊し、強制的にお国の為に働く道を選ばなければならない。 この街で介護施設を営んでいる未婚のよしこは、45歳を目前に控え、この街から排除される不安を抱えながら、日々暮らしていた。市民権を得ることを諦め、街を出るという選択もあるが、彼女は施設に入居している老人たちを見捨てることはできない。そんな中、老後施設に一人の身元不明の中年男性が突如として迷い込んでくるのであった・・・。
2020年の東京国際映画祭で上映した際、観た人におおいにうけていて、観そびれた私はすごく残念でした。今回やっと試写を観て「ああ、こういう映画だったのか、いとうあさこさんの笑顔が出ないわけだよね」と納得。舞台挨拶を思い出しました。
日本には珍しいディストピアの物語。いや、佐々木監督は日本ではなく「とある国」と言っています。とある国は限りなく最近の我が国を思い起こさせます。そんな法律があるわけではないけれど(ないよね)、少数派への視線の冷たさ、異分子への疑いなどあるある。そりゃみんなと一緒は安心です。1人になるのは不安なので固まりたくなります。でもそこで「違ってる」と言えないのって、違ってません?「よしこ頑張れ~」と応援しつつ、頑張るのは自分だろ、と突っ込みながら見終えました。ラストのその先が見たいような、見たくないような…。こういう映画が作られて上映できる世の中で良かった!と思ったことです。「カミサマ」のお姿が、香港女優の呉君如(サンドラ・ン)に見えてしまうのは私だけ?(白)
●『鈴木さん』TIFF舞台挨拶レポはこちら。
2020年/日本/カラー/シネスコ/90分
配給:Incline
(C)映画「鈴木さん」製作委員会
https://suzukisan-movie.com/
★2022年2月4日(金)K2、池袋シネマ・ロサにてロードショー
夢みる小学校
監督・撮影・編集:オオタヴィン
ナレーション:吉岡秀隆
出演:堀真一郎、茂木健一郎、高橋源一郎、尾木直樹
「きのくに子どもの村学園」そこにはテストや宿題がありません。先生もいません。
子どもたちは「プロジェクト」とよばれる体験学習の授業を通じて、自分たちでプロジェクトを運営し自らの頭で考えます。
大人のスタッフは口や手を出さず、子どもから尋ねられたときに一緒に考えます。1人ひとりの個性が尊重されます。教えられ書き写す授業ではなく、実際の暮らしや体験から学びます。そして子どもが自由で幸せであることを一番大切にしています。
この学校は堀真一郎学園長の教育理念のもと、1992年に和歌山県橋本市の山中に誕生しました。今全国に6校あり、自称38歳の堀先生は毎日のように車で回っています。
子どもたちは底抜けに明るくて元気です。学校ってこんなに楽しいの?こんな学校に行きたかった!と思う子どもや大人がたくさんいるはずです。じゃあほかの学校と何が違うのでしょうか?ほかではなぜこういうことができないの?と「?」がたくさん出てきて、観ていくと「!」だらけになります。とかく学校の先生や親たちは「静かに」とか、「~してはいけません」と指図したり、禁止したりします。自分がそうやって育ってきたからです。
こんなに自由にできるのは、私立の学校だからでしょ、と思うでしょう?それが、公立の学校だってできるのです。実践している学校を紹介しています。通知表って、校則ってなくてもよかったんだと知って驚いたのなんの。管理したい大人の都合でできたものだったんですね。
これはまっさきに文科省のお役人と、学校の先生たちに観てほしいです。子どもの個性を伸ばし、自分で考え、意見をはっきりと言う、そして他者を尊重する…そんな大人に育ったら世の中変わるのに(変わっては困る人がいるんだよね、きっと)。目からうろこがポロポロ落ちることうけあい。(白)
本作を観て、学校というのは、学問を教える場ではなく、学びたいという心を育むところであるべきなのだとつくづく思いました。文科省の教育指針に沿いながらも、学校や教師の裁量で、こんなにも伸び伸びとした教育の場が作れるのですね。
自分自身を振り返ると、小中高、さらに大学と、それぞれで素晴らしい先生に出会うことができ、それはとても幸せなことと先生たちに感謝です。特に、小学校5・6年の担任だったK先生は、まさに自由な心を育ててくださいました。お天気がいいと「缶蹴り行こか」と皆を外に連れ出し、授業中には脱線してご自身の経験談をよくしてくださいました。勉強を教わった記憶がない・・・ でも、勉強が大好きでした。妹からお姉ちゃんの趣味は勉強と言われるほど! 探求心を自然に植え付けてくださったのだと思います。
「2020年度から教育指導要領の主題が「アクティブラーニング(自主的探求)」に大きく舵を切りました」とこの映画の公式サイトにありました。え~? 今ごろ?と、ちょっとびっくりです。 詰め込み式でない教育を皆が受けられますように!(咲)
2021年/日本/カラー/91分
配給:きろくびと
(C)まほろばスタジオ
https://www.dreaming-school.com/
https://twitter.com/dreaming_school
★2022年2月4日(金)シネスイッチ銀座・アップリンク吉祥寺
2月18日(金)から、名古屋 名演小劇場
3月4日(金)から、大阪 シネマート心斎橋にてロードショー!
●きのくに子どもの村学園のHPはこちら