2022年01月07日
決戦は日曜日
監督・脚本:坂下雄一郎
撮影:月永雄太
音楽:渡邊崇
出演:窪田正孝(谷村勉)、宮沢りえ(川島有美)、赤楚衛二(岩渕)、内田慈(田中菜々)、小市慢太郎(濱口)、音尾琢真(向井)
とある地方都市。
谷村勉はこの地に強い地盤を持ち当選を続ける衆議院議員・川島昌平の私設秘書。秘書として経験も積み中堅となり、仕事に特別熱い思いはないが暮らしていくには満足な仕事と思っていた。
ところがある日、川島が病に倒れてしまう。そんなタイミングで衆議院が解散。後継候補として白羽の矢が立ったのは、川島の娘・有美(ゆみ)。谷村は有美の補佐役として業務にあたることになったが、自由奔放、世間知らず、だけど謎の熱意だけはある有美に振り回される日々…。
父・川島の地盤は盤石。よほどのことがない限り当選は確実…だったのだが、政界に蔓延る古くからの慣習に納得できない有美はある行動を起こす――それは選挙に落ちること!前代未聞の選挙戦の行方は?
『東京ウインドオーケストラ』(2017)『ピンカートンに会いに行く』(2018)で笑わせてもらった坂下雄一郎監督の最新作。コメディで政治を描きたいと2016年の企画から5年をかけて完成したオリジナル脚本です。調査・取材を重ね、時事ネタを拾い、願ってもないキャストが終結し、15日間で撮り終えたという作品。議員秘書たちは選挙で議員が落選すればたちまち無職。そんな秘書から見た選挙の裏側を、坂下監督は熱すぎず重すぎず品よく描いています。
それを担った俳優陣は演技巧者ばかり。真っ赤なスーツが似合う宮沢りえさん扮する2世候補は、無駄に熱い正義感で秘書たちを振り回します。海千山千の政治家に仕えてきたベテラン秘書たちは、新人のなだめ方、危機の対処も上手。ニュースやSNSで見聞きしたあれこれも絶妙に配されて、実在の誰かさんを思い出しました。窪田正孝くんの谷村秘書の力の抜け具合もよく、当選&落選のための運動もへー!ということばかり。政界・選挙に限らず、どの世界でも裏側とはこうなのでしょうか。笑いながら「社会勉強」もできます。(白)
宮沢りえの第一声がいかにも政治家の口調で、「いるいる、こういう人」と笑ってしまいます。世間を知らないお嬢さま育ちの有美を見事に体現しています。
個別訪問しているときに思いっきり失礼なことを言ってしまいますが、演じる人によっては嫌味に見えるでしょうけれど、お嬢さま育ちだから仕方ないと思えてしまうのは宮沢りえが持っている内面の気品によるものかも。
考えなく投降したSNSが炎上するなどあるあるな話だけでなく、やっぱりこういうことってしているのね話まで、坂下監督はしっかりリサーチして書きあげた脚本はコメディタッチな展開でもリアリティを感じます。
12月24日に東京で先行上映が始まった『香川1区』とセットで見るとその落差に驚くものの、もしかすると『香川1区』の三世議員の平井卓也さんには有美的な部分があるのかもしれないと思ってしまいました。
それにしても選挙ってやっぱりこんな感じなんだろうか。。。(堀)
2022年/日本/カラー/ビスタ/105分
配給:クロックワークス
(C)2021「決戦は日曜日」製作委員会
https://kessen-movie.com/
★2022年1月7日(金)より新宿バルト9ほか絶賛公開中!!
マークスマン(原題:The Marksman)
監督:ロバート・ローレンツ
脚本:クリス・チャールズ ダニー・クラビッツ ロバート・ローレンツ
撮影:マーク・パッテン
音楽:ショーン・キャラリー
出演:リーアム・ニーソン(ジム・ハンソン)、キャサリン・ウィニック(サラ)、フアン・パブロ・ラバ(マウリシオ)、テレサ・ルイス(ローサ)、ジェイコブ・ペレス(ミゲル)
元海兵隊員で狙撃兵だったジムは愛妻に先立たれ、メキシコ国境付近の町で愛犬と暮らしている。細々と続けてきた牧場は左前になっているが娘に頼りたくはない。ある日、国境を越えて逃げて来た母子に出逢う。2人を追っていたのはメキシコの麻薬カルテル。撃たれた母親は彼に11歳の息子ミゲルを託して絶命した。ジムは行きがかり上、1人残されたミゲルをシカゴに住む親せきの元へ送り届けることになってしまった。カルテルの追撃をかわしながらシカゴにたどり着くことができるのか?
娘や愛する人を守って闘う男の役が続いていたリーアム・ニーソン。スーパーマンではなく、一芸に秀でてどこか陰のある人物がはまります。今回は頑固な元狙撃兵(=マークスマン)。初めて会った母子が狙われていたため、つい迎え撃った麻薬カルテルから追われ続けます。一緒に1400㎞を旅するこの11歳のミゲルがしっかりしていて、ジムもたじたじ。緊張した場面が続く中で、2人のぎこちない会話に思わず頬が緩みます。
百発百中の狙撃シーンに思わずガッツポーズしたくなります。一番の見どころではありますが、執拗な追手との修羅場をくぐり抜けるうちに、ミゲルとジムが互いをリスペクトしていく心の動きも見逃さないでください。子役賞をあげたいくらいです。
このほど公開されたリーアム・ニーソンのインタビュー動画はこちら(白)
国に尽くし、税金も払ってきたにも関わらず、病気になった妻の医療費を払うために借金をしたことで、妻との思い出の詰まった家を手放さなくてはいけない状況に陥った初老のジム。リーアム・ニーソンにぴったりの役どころですね。何より、守らなくてはいけない存在(妻)を失ったことで途方に暮れていたジムにとってミゲルとの出会いは望んでいたことではなかったし、彼本人は気づいていなかったけれど、守るべき存在ができたことは生きる張り合いになったはず。ミゲルに生きる術の1つとして銃の撃ち方を教えるシーンは本当の親子のよう。
ラストの解釈は見る人によって違うかもしれないけれど、夕暮れのバスに揺られていた、あの時間は幸せだったはずだと思います。(堀)
2021年/アメリカ/カラー/シネスコ/108分
配給:キノフィルムズ
(C)2020 AZIL Films, LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:http://marksman-movie.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/Marksman_JP
★2022年1月7日(金)よりロードショー