2021年11月28日

天才ヴァイオリニストと消えた旋律   原題:The Song of Names

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© 2019 SPF (Songs) Productions Inc., LF (Songs) Productions Inc., and Proton Cinema Kft

監督:フランソワ・ジラール
製作総指揮:ロバート・ラントス 
音楽:ハワード・ショア 
ヴァイオリン演奏:レイ・チェン
原作:ノーマン・レブレヒト著「The Song of Names」
出演:ティム・ロス、クライヴ・オーウェン、ルーク・ドイル、ミシャ・ハンドリー、キャサリン・マコーマック

1951年、ロンドン。21歳のユダヤ人の天才ヴァイオリニスト、ドヴィドル・ラパポートの初演奏を待ち構える貴族や国会議員、タイムズ紙の批評家たち。開演時間が間近に迫る。ドヴィドルをサポートし初舞台を企画したギルバード・シモンズ(スタンリー・タウンゼント)と、その息子マーティンがやきもきして待つが、ドヴィドルはとうとう現れなかった。
35年後、マーティン(ティム・ロス)は、妻のヘレン(キャサリン・マコーマック)と二人で暮らしていた。忽然と消えたドヴィドルのことを、マーティンは片時も忘れたことがなかった。第二次世界大戦下、ヴァイオリンの指導者を探してポーランドから父親に連れられてやってきたユダヤ人の少年ドヴィドル。その才能を見抜いて父が家に引き取った時、マーティンは同い年の9歳だった。自信満々で生意気なドヴィドルを嫌っていたマーティンだったが、ナチスドイツがポーランドに侵攻したニュースに、家族の写真を見ながら涙するドヴィドルを励ましたことをきっかけに、二人は兄弟のような絆を結んでいたのだ。
ある日、コンクールの審査員をしていたマーティンは、あるヴァイオリニストが演奏前にドヴィドルと同じ仕草をしたのを見て、ドヴィドルが生きていることを確信。探し出す旅に出る・・・

ポーランドにいたドヴィドルの両親や姉妹は、終戦後、行方不明になってしまい、マーティンの父がポーランドに赴いて探すのですが、トレブリンカ収容所に移送されたという記録だけが残っていました。このことが、初演奏にドヴィドルが戻ってこなかったことと深く関わっていたのです。
原作では、ドヴィドルを引き取ったロンドンの家族もユダヤ人だったのを、映画ではキリスト教の家庭に変更。マーティンは、「ドヴィドルのせいでベーコンも食べられない」と文句を言っていて、ユダヤの食習慣に配慮していたことが伺えます。13歳の時に行うユダヤの成人式「バル・ミツバ」にもマーティンは臨席するのですが、その後、ドヴィドルはシナゴーグでマーティンを立ち会わせて、タリス(お祈りの時のショール)やキッパ(帽子)を切り刻み、ユダヤであることを捨てます。そんな彼が、またユダヤであることを自ら選んだのが、この映画の肝。いったい何があったのか、どうぞ劇場でご確認ください。
映画の原題にもなっている「The Song of Names(名前たちの歌)」は、ホロコーストで犠牲になった人たちの名前を美しい旋律で記憶に留めたもの。犠牲になった人たちの名前を後世に伝えて、魂を悼むものなのです。
ユダヤ人が「記憶の民」であることを思い起こさせてくれる物語でしたが、ユダヤでない監督が、よく丹念に調べて作られたと感心しました。 堀木さんによる監督インタビューをぜひお読みください。(咲)


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『天才ヴァイオリニストと消えた旋律』フランソワ・ジラール監督インタビュー


2019年/イギリス・カナダ・ハンガリー・ドイツ/英語・ポーランド語・ヘブライ語・イタリア語/DCP/スコープサイズ/5.1ch/113分
字幕翻訳:櫻田美樹
配給:キノフィルムズ 提供:木下グループ
公式サイト:https://songofnames.jp/
★2021年12月3日(金) 新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町他全国公開



posted by sakiko at 19:28| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド(原題︓SHOPLIFTERS OF THE WORLD)

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監督・脚本︓スティーヴン・キジャック
出演︓ヘレナ・ハワード(クレオ)、エラー・コルトレーン(ディーン)、エレナ・カンプーリス(シーラ)、ニック・クラウス(ビリー)、ジェームズ・ブルーア(パトリック)、ジョー・マンガニエロ(DJフルメタル・ミッキー)

1987年9月、ザ・スミス解散のニュースが駆け巡った。コロラド州デンバー。スーパーで働くクレオは、大好きなザ・スミスが解散したというのに、何も変わらない日常に傷つく。行きつけのレコードショップの店員ディーンに怒りをぶちまけ、「この町の連中に一大事だと分からせたい」と訴える。クレオに恋しているディーンは、地元のヘビメタ専門のラジオ局に向かい、「ザ・スミスの曲をかけろ」とDJに銃を突きつける。その頃、クレオは明日入隊するビリー、友達のシーラ、パトリックの仲良し4人組でバカ騒ぎをしていた。ラジオからディーンが強要したザ・スミスの曲が流れてくる。

スティーヴン・キジャック監督はウォーカー・ブラザーズの伝記映画やローリング・ストーンズ、Xジャパンのドキュメンタリーを撮った監督。本作はザ・スミスの解散のニュースに端を発した電波ジャック事件を主軸に、将来に悩む若者たちを描いています。クレオには心の拠り所だったザ・スミス。大人にはその存在の大切さが理解できません。自分の若いころだって形は違えど、何かしらあったはずですが、日常に追われるうちにどこかへ埋もれてしまってるんでしょう。
ディーンがありったけの勇気をふりしぼったに違いない行動は、DJを動かして、ラジオを聴いている若者たちに届きます。DJも傾倒しているものがあるからこそ、彼らの気持ちがわかるんですね。バカだなぁと思いつつ、若いゆえの純粋さにうるっとしました。
ディーン役のエラー・コルトレーンはリチャード・リンクレイター監督の『6才のボクが、大人になるまで。』(2014)で、実際に12年かけて主人公のメイソンを6歳から18歳まで演じています。とっても可愛い男の子でしたが、今27歳になっていました。(白)


2021 年/アメリカ=イギリス/カラー/シネスコ/91分/
配給:パルコ
©2018 SOTW Ltd. All rights reserved
https://sotw-movie.com/#modal
★2021年12月3日(金)TOHOシネマズシャンテ、渋谷シネクイントほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 18:32| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

彼女が好きなものは

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監督・脚本:草野翔吾
原作:浅原ナオト「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」(角川文庫)
撮影:月永雄太
出演:神尾楓珠(安藤純)、山田杏奈(三浦紗枝)、前田旺志郎(高岡亮平)、三浦獠太(小野雄介)、池田朱那(今宮くるみ)、三浦透子(佐倉奈緒)、渡辺大知(近藤隼人)、山口紗弥加(安藤みづき)、磯村勇斗(Mr.ファーレンハイト)、今井翼(佐々木誠)

⾼校⽣の安藤純は⾃分がゲイであることを隠している。ある日、書店でクラスメイトの三浦紗枝が、男性同⼠の恋愛をテーマとした、いわゆるBLマンガを購⼊しているところに遭遇。BL好きを隠している紗枝から「誰にも⾔わないで」と口止めされ、そこから2人は急接近。しばらしくて、純は紗枝から告白される。「⾃分も“ふつう”に⼥性と付き合い、“ふつう”の人生を歩めるのではないか?」。
一縷の望みをかけ、純は紗枝の告⽩を受け⼊れ、付き合うことになったのだが…。

高校生の恋愛ものにひとひねり。最近あちこちで見かける神尾楓珠くん(濃いイケメンなので目にとまる)がゲイであることで悩む男子高校生。映画初主演。今ドラマ「顔だけ先生」主演でも注目されています。『ミスミソウ』(2018)で仰天させられた山田杏奈さん溌剌としていて制服姿も可愛いです。純の親友亮平役に前田旺志郎くん、ついこの前『うみべの女の子』でも見たばかりで、転校してきたの?と思ってしまうくらい、高校生役がはまります。それもこんな友達がいてほしいというタイプ。つっかかる隼人も正直。
”ふつう”でいたい純が悩むのを母親が必死で支えようとしていて、つい母親の気持ちになって自分ならどうするかと考えてしまいます。紗枝も一時引いてしまいますが、なんとか立ち直ります。今井翼さん演じる佐々木誠には、もっと大人なりの対処の仕方があったのでは、と不満。それもストーリーのうちですが、ハリセンで叩いてやりたいと思ってしまうのは私だけ?(白)


2021年/日本/カラー/シネスコ/121分
配給:バンダイナムコアーツ、アニモプロデュース
(C)2021「彼女が好きなものは」製作委員会
https://kanosuki.jp/
★2021年12月3日(金)ロードショー

posted by shiraishi at 17:38| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

スティール・レイン  原題:강철비2: 정상회담(鋼鉄の雨2:頂上会談) 英題:Steel Rain 2:Summit 

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© 2020 YWORKS ENTERTAINMENT & LOTTE ENTERTAINMENT & STUDIO GENIUS WOOJEUNG All Rights Reserved.

監督/脚本:ヤン・ウソク(『弁護人』)
撮影:キム・テソン
照明:ソン・ジェホ
美術:ヤン・ホンサム
音楽:キム・テソン
出演:チョン・ウソン、クァク・ドウォン、ユ・ヨンソク、アンガス・マクファーデン、白竜

長らく分断が続く韓国と北朝鮮。「平和協定締結」に向け、韓国のハン・キョンジェ大統領(チョン・ウソン)、北朝鮮の若き最高指導者チョ・ソンサ委員長(ユ・ヨンソク)、そしてアメリカのスムート大統領(アンガス・マクファーデン)による首脳会談が北朝鮮のウォンサン(元山)で開催された。北朝鮮と米国の間で意見が割れ膠着状態が続く中、風速90メートルを超える大型台風「鋼鉄の雨<スティール・レイン>」が接近していた。そんな折、北朝鮮の護衛司令部パク・ジヌ総局長(クァク・ドウォン)が、核兵器を放棄してアメリカと外交関係を結べば北朝鮮は破滅するとして、軍事クーデターを起こし、三首脳を弾道ミサイル搭載の原子力潜水艦「白頭号」に拉致監禁する・・・

冒頭、アメリカが日本と結託して、中国を政治的にも軍事的にも壊滅させる影武者作戦が語られます。実はそれは、北朝鮮が核を放棄すれば軍備の必要性がなくなってしまうため、なんとしてでも日本と中国を戦わせるよう仕向けたいアメリカの戦略だと、のちに明かされます。南北和平を取り持つフリをして、裏では次に儲ける方法を考えているという、いかにもありそうな話に唸ります。
緊迫感溢れる中で、チョン・ウソン演じるハン大統領が、バランス感覚のある対応で和ませてくれます。家では、数学教師の妻にいつも押され気味の大統領ですが、「(1953年に締結した朝鮮戦争の)休戦協定に、韓国は署名していない」という言葉には、妻もはっとさせられています。国連軍と中朝連合軍が署名し、韓国は署名していないのです。え?そうなの?と、私も知らなかった。
先日、文在寅大統領が国連総会の演説の中で、休戦状態の朝鮮戦争について終戦を宣言するよう北朝鮮、中国、米国に呼びかけましたが、韓国自体が休戦協定に署名していないという背景を知ると、複雑です。(咲)


朝鮮半島と日本、複雑な関係を理解していないと、けっこう難しい作品。
1953年の朝鮮戦争休戦協定に、韓国は同意していないということは思ってもいなかった。日本語の正式名称は「朝鮮における軍事休戦に関する一方国際連合軍司令部総司令官と他方朝鮮人民軍最高司令官および中国人民志願軍司令員との間の協定」というのだそう。だから北と南はいまだ分断されたままということなのですね。改めて思った。そして、1965年に締結された「日韓基本条約」は「日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約」が正式名称。日本と韓国との条約であって、北朝鮮とは締結していないということを、この作品を観て、改めて思った。それにしても潜水艦のなかでの攻防、ヒヤヒヤハラハラの連続でした。こんなことが実際起こったらどうなることやらです。領土問題をめぐって、こういうことになりかねない状況が出てきそうな世界情勢。人間の機知をあわせ世界平和を維持したいものですが、どうなることやら(暁)。


すぐお隣の国なのに、実はよく知らないような感じがします。学校の授業で学ぶことも少ないうえ、日本はアジアの隣人より欧米のほうを見がち。韓流、韓ドラの人気が高いのですから、もっと理解が進めばいいのにと思います。
この作品もそうですが、日本よりも韓国の映画人の方々が難しい題材を果敢に扱っています。自分の国の批判も忘れていません。ソウルを一度訪ねただけですが、いい思い出しかありません。コロナが収まったら再訪したい国です。次は映画を観たいものです。(白)

2020年/韓国/韓国語/132分/スコープサイズ/5.1ch
配給:ハーク 配給協力:イーチタイム
公式サイト:https://www.hark3.com/steelrain/
★2021年12月3日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開

posted by sakiko at 16:54| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ベロゴリア戦記 第2章:劣等勇者と暗黒の魔術師(原題:The Last Warrior: Root of Evil)

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監督:ドミトリー・ディアチェンコ
脚本:ヴィタリー・シュリャッポ、ドミトリー・ジャン、ワシリー・クツェンコ、パヴェル・ダニロフ、イゴール・トゥドヴァセフ
撮影:パベル・カピノス
音楽:ジョージ・カリス
出演:ヴィクトル・ホリニャック(イワン)、ミラ・シヴァツカヤ(ヴァシリーサ)、エカテリーナ・ヴィルコワ(ヴァルヴァラ)、コンスタンチン・ラヴロネンコ(コシチェイ)、イェーレナ・ヤコブレワ(バーバ・ヤーガ)、セルゲイ・ブルノフ(ヴォジャノーイ)

ベロゴリアにようやく平和が訪れ、イワンはヴァシリーサと共に暮らしていた。たびたび人間界に戻って最新機器を持ち帰り便利さを自慢しているが、ヴァシリーサはそんな文明の利器が好きではない。イワンは結婚して人間界へ行こうと誘うが気が乗らずにいた。一方闇に潜んでいた強大な敵が目覚めるときが近づいていた。そうとは知らず、力比べの大会を前にいまだ戦士の能力が覚醒しないイワンは、恋敵の出現に心穏やかではない。ヴァルヴァラも復活し、イワンの剣を狙っている。そして意外な人物がそこに…。

第1章の続きのこの第2章も本国で大ヒット。前作よりさらにダイナミックなアドベンチャー+アクション色が濃くなっています。イワンは相変わらずお調子者で、バーバ・ヤーガのベリーを盗んだり嘘をついたり懲りない男です。スマイルマーク立体版のようなコロボークや巨人も登場。コロボークとお話に登場するジャガイモ団子(バスケットボール大)が、イワンが優しくしてくれたと旅の友になります。自分で「イワンの馬鹿」と言うやつですが、いいところもありました。テーマがなかなか深いのですよ。
ラストに明かされる過去におおっとびっくりします。第3章も控えているようですが、どんな未来になるのでしょう?お楽しみに。(白)


2021年/ロシア、アメリカ/カラー/シネスコ/121分
配給:アルバトロス・フィルム
(C)Disney 2020 (C)YBW Group 2020
https://belogorie.jp/
★2021年12月3日(金)よりロードショー
posted by shiraishi at 02:22| Comment(0) | ロシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする