2021年11月07日

我が心の香港 映画監督アン・ホイ 原題/好好拍電影 英題/Keep Rolling

11月6日(土) 新宿K’s cinemaにてロードショー!! 上映劇場

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2020©A.M. Associates Limited

監督:文念中(マン・リムチョン) 
音楽:大友良英
主な登場人物:許鞍華(アン・ホイ)、施南生(ナンサン・シー)、徐克(ツイ・ハーク)、陳果(フルーツ・チャン)、田壮壮(ティエン・チュアンチュアン)・侯孝賢(ホウ・シャオシェン)、劉徳華(アンディ・ラウ)、賈樟柯(ジャ・ジャンクー)、張艾嘉(シルヴィア・チャン)、蕭芳芳(ジョセフィン・シャオ)

ただ 香港と映画を愛した
人生は映画とともに――
これまでも これからも香港のために映画を撮り続ける


ヴェネチア国際映画祭で「生涯功労賞」を受賞した香港の映画監督許鞍華(アン・ホイ)。『客途秋恨』(1990年)、『女人、四十。』(1995年)、『桃さんのしあわせ』(2011)、『黄金時代』(2014)などの作品で、香港電影金像奨の最優秀監督賞に6度、台湾金馬奨では3回の監督賞に輝くなど、世界的に知られ、今年74歳になる香港の映画監督アン・ホイ。1980年代以降、ツイ・ハークやイム・ホー、パトリック・タムらと共に、<香港ニューウェーブ>の旗手として香港映画の発展に大きく貢献した40年に及ぶ映画人生。
激動の香港の歴史と時間の流れに沿いながら、アジアの女性監督のトップランナーとしての歩み続けた。香港の文化を重んじ、ロンドンで映画を学んだ彼女は、まさに“東洋と西洋の出会い”と“香港魂”を体現する存在でもあった。今日に至る香港映画の発展に大きな貢献を果たしてきた彼女の実像に迫る。中華映画界の活躍する監督や俳優たちが語るアン・ホイ監督の実像とは!
日本人の母と暮らす慎ましやかな日常生活、香港への思い、女性としての生き様、エネルギッシュな撮影風景を映し出し、ひとりの映画監督のこれまで歩んできた道を探る。シルヴィア・チャン、アンディ・ラウ、ツイ・ハーク、ホウ・シャオシェン、フルーツ・チャン、ティエン・チュアンチュアン、ジャ・ジャンクーなど香港・台湾・中国映画界の映画人たちが、彼女の作品と交遊、人柄について語る。

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2020©A.M. Associates Limited

公式サイトより
マン・リムチョン監督は本作で2021年香港電影監督会新人監督賞受賞!
監督のマン・リムチョンは、美術監督・衣装デザイナーを務めた『君のいた永遠(とき)』(1999年/シルヴィア・チャン監督)で香港電影金像奨芸術監督賞を受賞。『花様年華』(2000年/ウォン・カーウァイ監督/カンヌ国際映画祭2000年最優秀男優賞[トニー・レオン]他多数)のアート・ディレクターも務めた実力派。初監督となる本作で見事、2021年香港電影監督会新人監督賞を射止めた。アン・ホイ監督作では『男人四十』(2002年)の芸術監督、『黄金時代』(2014年)の衣装デザインなども担う。

「あまちゃん」「いだてん」の大友良英が奏でる、香港と映画への想い
音楽はNHK連続テレビ小説「あまちゃん」の音楽で日本レコード大賞作曲賞等、数多くの映画やテレビの音楽を手がける大友良英。大友は『女人、四十。』でもアン・ホイ監督の音楽を手がけ、本作は2度目のタッグとなる。

社会派ドラマからアクション映画、ホラー、コメディ、ラブストーリーまで幅広いジャンルで数々の作品を手がけてきた許鞍華監督。彼女の活躍はとても心強く思ってきました。シネマジャーナルでは、第13回東京国際映画祭(2000)で『千言萬語』(1999)が上映された時に許鞍華監督にインタビューしたことがあります(2000年発行のシネマジャーナル50号に掲載)。実は、その時のアン・ホイ監督の印象はあまりよくはなかったのです。しかも、その後、自分の作品の日本公開があっても監督は日本に来ていないし、日本が嫌いなのかなと思っていました。でも、この作品を観て、あの時の監督の態度の原因がわかりました(笑)。夕方のインタビューで、監督は疲れきっていたのでしょう。同じ質問にうんざりしていたし、煙草も吸いたかったのでしょう。そして、母親は日本人でも、日本に対して、やはり距離を置く思いがあったのかもしれません。でも、『極道追踪』(1991年)や『客途秋恨』 (1990年)は日本で撮影しているし、若い頃あったという反日感情は今はないのではないかと思います。15,6歳頃、母が日本人だと知ってからの母に対する反感とかわだかまりは、だんだなくなって今は二人でつつましく暮らしている様子が描かれていて、ほっとしました。中華圏の名だたる監督たちや俳優たちへのインタビューが出てきましたが、アンディファンの私としては彼のデビュー作『望郷』での若々しい姿を久しぶりに観て、今の活躍ぶりはアン・ホイ監督あってのものだったのだなと感慨深く思いました(暁)。

第12回香港電影金像奨2012にて(撮影 宮崎暁美)
桃姐一行(左 原作者李恩霖)_R.jpg

『桃さんのしあわせ(桃姐)』一行 左から原作者でプロデューサーの李恩霖(ロジャー・リー)、許鞍華(アン・ホイ)監督、桃姐役の葉德嫻(デニー・イップ)、ロジャー役の劉徳華(アンディ・ラウ)

最優秀監督賞 許鞍華(アン・ホイ)/桃姐 _R_R.jpg
『桃さんのしあわせ』で4度目の監督賞受賞となったアン・ホイ監督


香港/2020年/119分/DCP/日本版字幕:鈴木真理子 
協力:大阪アジアン映画祭/鮑智行/柳川由加里
提供・配給:パンドラ
posted by akemi at 08:28| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

記憶の戦争 原題 기억의 전쟁 英題:Untold

2021年11月6日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開!
劇場情報
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(C)2018 Whale Film

監督:イギル・ボラ
製作:ソ・セロム チョ・ソナ
製作総指揮:イギル・ボラ
撮影:クァク・ソジン
美術:クァク・ソジン
編集:パトリック・ミンクス イギル・ボラ キム・ナリ キム・ヒョンナム
音楽:イ・ミンフィ

ベトナム戦争時の韓国軍による民間人虐殺を検証

ダナンから車で20分ほどの場所にあるフォンニィ村。ベトナム戦争時、延べ30万人もの韓国軍が参戦していたが、その軍事行動での痛ましい民間人虐殺事件を取り上げたドキュメンタリー。イギル・ボラ監督の祖父がベトナム戦争に参加し枯葉剤の後遺症でなくなっていたり、18歳でアジア各地を放浪したことがこの作品を作るきっかけになったという。
2018年4月、ソウルで開かれた市民平和法廷で、1968年にあった「フォンニィ・フォンニャットの虐殺事件」の生存者であるベトナム人女性、グエン・ティ・タンは法廷にたった。8歳の時に韓国軍に家族を殺され孤児となった彼女は、その記憶を思い出しあの日見たことを語る。あの日、一体何が起こったのか…。
あの日の出来事を目撃したディン・コムは身振り手振りを交えて当時を再現する。あの日の後遺症で視力を失ったグエン・ラップはこれまで語ることのなかった記憶を絞り出すように語る。一方で、“参戦勇士”と称された韓国軍人たちは、「我々は、良民は殺していない」と主張する…。
 監督のイギル・ボラは女性の製作陣とともに「ベトナム民間人虐殺」の記憶について当事者たちの生々しい証言を記録し、衝撃的で、勇敢で、優しい傑作ドキュメンタリーを誕生させた。

リアルタイムでベトナム戦争のニュースを聞き、TVで映像を見たり、あるいは現地の戦場写真を見てきた世代としては、韓国からこんなにもたくさんの兵士たちが従軍し、それを誇りとして生きているということを知りショックだった。しかも韓国の枯葉剤の被害者団体の会員が14万人と知り、さらにびっくり。兵士自身がそんなに被害を受けていたのにベトナム戦争そのものに疑問はなかったのだろうか。この作品の中に出てくる市民法廷が行われた会場に、そのメンバーによる妨害が出てきて、さらに重い気持ちになった。
イギル・ボラ監督は、そういう中で、このドキュメンタリーを撮った。とても勇気のいることだっただろう。ストレスも多かったのかもしれない。ボラ監督は、「若い女に、この戦争のことがわかるもんか」という言葉も兵士から言われて、かなりめげたらしい。2015年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で前作『きらめく拍手の音』がアジア特別賞を受賞し、台上に出てきた時、坊主頭だったのでびっくりしたことを思いだし、そのことを聴いたら、あの頃はいろいろむしゃくしゃするこがたくさんあって坊主頭にしたと語っていたので、ちょうど山形に来た頃が、この作品にとりかかった頃ということでストレスを感じていたのかもしれない。この作品は全員女性ばかりのチームで作ったとのことだったけど、それは良かったことかもしれない。女性ばかりのチームだからこそ作り上げることができ、自信にもつながっていると思う(暁)。


イギル・ボラ監督インタビュー記事
インタビューの時のイギルボラ監督
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製作:Whale Film
2018年|韓国|韓国語・ベトナム語|カラー| 79 分| DCP
宣伝美術:李潤希
配給・宣伝:スモモ、マンシーズエンターテインメント
2018年製作/79分/韓国
posted by akemi at 07:46| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

これは君の闘争だ 原題:Espero tua (Re)volta

11月6日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
監督・脚本:エリザ・カパイ 
撮影:エリザ・カパイ、ブルーノ・ミランダ 
編集:エリザ・カパイ、ユリ・アマラウ 
音楽:Décio 7  
ナレーション:ルーカス・“コカ”・ペンチアド、マルセラ・ジェズス、ナヤラ・スーザ 
音響:Confraria de Sons & Cigars 
プロデューサー:アリアナ・ジェネスカ

ブラジルの高校生たちの闘争を描く

2013年6月、ブラジル・サンパウロの路上学生たちが繰り広げる、公共交通機関の値上げ反対デモや、公立高校再編案に反対する学校占拠など、活発な政治運動がおこった。初めはバス料金20セントに対する要求だったが、次第に政治に対するものになり、物価上昇や重税、LGBTQ+や女性の権利、人種差別など、様々な問題に対する抗議へと広がっていった。
そして、2015年10月サンパウロの高校生たちが公立学校の予算削減案、公立学校再編案に抗して自らの学校を占拠することになった。運動はブラジル全土を巻き込み、翌月には200以上の学校が占領されるまでになった。ブラジル社会で高校生たちによる大きな変革が起きようとしていた。若者たち学校を、そして街頭を次々と占拠し、自らの主張を政治家たちに認めせていくが、しだいに警察は暴力的なものになり、学校占拠から3年後、ブラジル初の極右政権が成立するとともに裏切られることになった。14年間続いた左派政権は、たび重なる汚職や治安悪化により民衆の支持を失い、「ブラジルのトランプ」と称されるジャイル・ボルソナロにその座を奪取されてしまった。
当事者である3人の高校生が当時の運動を振り返りながら、そんな激動の2010年代のブラジル社会を学生たちの視点から描いた。それぞれの意見をヒップホップ・ミュージックに乗せラップバトルのように展開させる。進歩的な公共政策の下で育った世代の彼らが混迷化し、急速に右傾化していくブラジル社会を糾弾していく過程で、学生たちの社会に対する希望と不安とが浮き彫りになっていく。
山形国際ドキュメンタリー映画祭2019インターナショナル・コンペティション部門優秀賞受賞。
*参照記事 シネマジャーナルHP 映画祭報告
山形国際ドキュメンタリー映画祭2019 授賞式レポート
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エリザ・カパイ監督 2019山形授賞式にて(撮影 宮崎暁美)

ELIZA CAPAI(エリザ・カパイ) 公式HPより
エリザ・カパイは社会問題に焦点を当てたインディペンデントのドキュメンタリー映画監督である。サンパウロ大学でジャーナリズムを専攻し、近年までマサチューセッツ工科大学(MIT)のオープン・ドキュメンタリー・ラボに特別研究員(fellow)として所属していた。
初長編作品Here Is So Faro (2013)は、7ヵ月間のアフリカ横断旅行での女性との出会いに基づいている。このドキュメンタリーは、リオ国際映画祭のニュートレンド部門でプレミア上映され、最優秀長編映画賞を受賞したほか、ブラジル国内外で複数の賞を受賞した。
長編2作目The Tortoise and the Tapir (2016)は、ブラジルで起きた数十年に一度の大干ばつの期間にアマゾンの熱帯雨林の真ん中に建設・計画された巨大な水力発電所を調査した作品である。
長編3作目『これは君の闘争だ』(2019)は、ブラジルの教育予算削減に対抗して学生たちが学校を占拠する様子を描いた作品である。2019年のベルリン国際映画祭でプレミア上映され、アムネスティ・インターナショナル映画賞と平和映画賞を受賞した。本作はその後、100以上の映画祭で上映され、20以上の賞を受賞している。
最新作『エリーゼ・マツナガ: 殺人犯が抱える心の闇』(2021) は、実在の殺人事件を追った作品であり、2021年9月現在、Netflixで視聴可能である。このドキュメンタリーシリーズでカパイは、ブラジルで最も有名な殺人事件の被告であるエリーゼ・マツナガに事件後初のインタビューを試みた。本シリーズは2021年7月に世界190ヶ国のVODプラットフォームで同時公開された。

新型コロナウィルスの流行下、ボルソナロ大統領はパンデミックが始まってから、新型ウイルス対策において、ロックダウンやマスク着用、ワクチンなどに否定的な発言を繰り返し、その対応によってブラジルでは大量の感染者を出したが、そんな今こそ、振り返るべき“闘争の記録”がここにある(暁)。

配給:太秦  
2019年/93分/HD/16:9/ブラジル/ドキュメンタリー
公式HP
posted by akemi at 07:00| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする