2021年09月27日

カナルタ 螺旋状の夢 原題:Kanarta

2021年10月2日公開
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(C)Akimi Ota

シュアールの人々は、あなたが安らかな睡眠、良い夢、そしてあなたが本当に何であるかのヴィジョンを持つことを望むとき「KANARTA」と言います

監督・撮影・録音・編集:太田光海
サウンドデザイン:マーティン・サロモンセン
カラーグレーディング:アリーヌ・ビズ
出演:セバスティアン・ツァマライン、パストーラ・タンチーマ
制作協力:マンチェスター大学グラナダ映像人類学センター

セバスティアンとパストーラは、エクアドル南部アマゾン河流域の熱帯雨林に住むシュアール族。かつて首狩り族として恐れられたシュアール族は、スペインによる植民地化後も武力制圧されたことがない民族らしい。セバスティアンは尊敬されるヒーラー(霊能力者)であり、森にある未知の植物の効能に詳しい薬用植物学者でもある。彼の知識の継承も描かれる。アマゾン奥地でも環境汚染が問題になり、村長でもあるパストラは、村の代表として上の機関と交渉にあたる女性リーダー。
村人たちは日々森に分け入り生活の糧を得、共同でいろいろな作業をし、助け合いながら暮らしている。そして仕事の間の休憩時間や一仕事終わると口噛み酒を飲み交わす。ある種の覚醒植物なのかもしれない。泥酔することもある。文明が迫る中、原始的な生活を続けているが、今はその間で暮らしている。そんな原住民の文化と暮らしを描いている。

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(C)Akimi Ota

監督でもある太田光海さんは、東京都出身で、現在はイギリスに住む「映像人類学」の博士号を持つ研究者。自らこのシュアール村に長期滞在し、この村の人々の生活を記録し映画にした。それにしても原住民の人たちの、植物の知識の豊富さにはびっくりした。すべて体験や先祖からの伝承の賜物だと思うけど、ジャングルには、たくさんの人間に有用な植物があるのだというのが伝わってきた。この作品は熱帯雨林へのラブレターであり、ここでの体験と友情を記録した。新しい文化人類学の試みだと思った(暁)。

シュアール族の人々が、代々受け継いできた自然の恵みを生かした暮らしを大事にしていることに、科学技術が進み過ぎた世界はいつか行き詰るのではないかと感じさせられた。
太田光海さんが映し出した彼らの人生からは学ぶことが実に多い。
「医者の売りつける薬はとりあえず治してくれるが再発する」と、薬草の知識が豊富なセバスティアン。
「市場で買わなくても、ここにあるもので食事できる」と料理上手なパストーラ。
「ヴィジョンを持てば実現できる」が彼らのエネルギーの源泉。
竹を割って水を飲むセバスティアンの姿は圧巻! (咲)


『カナルタ 螺旋状の夢』公式HP
2020年製作/121分/イギリス・日本合作
配給:トケスタジオ
posted by akemi at 05:36| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月26日

コレクティブ 国家の嘘   原題:Colectiv  英題:Collective

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監督・撮影:アレクサンダー・ナナウ
出演: カタリン・トロンタン、カメリア・ロイウ、テディ・ウルスレァヌ、ヴラド・ヴォイクレスク、ナルチス・ホジャ

2015年10月、ルーマニア・ブカレストのクラブ「コレクティブ」でライブ中に火災が発生。27名の死者と180名の負傷者を出す大惨事となった。一命を取り留め病院に運ばれた負傷者が、その後、次々に亡くなり、最終的にこの火災での死者は64名まで膨れ上がった。このことを不審に思い調べ始めたスポーツ紙「ガゼタ・スポルトゥリロル」の編集長は、内部告発者からの情報提供により衝撃の事実に行き着く。莫大な利益を手にする製薬会社、彼らと黒いつながりを持った病院経営者、そして政府関係者との巨大な癒着・・・

クラブ「コレクティブ」の悲惨な火災事件を発端に、当初は、病院での負傷者の相次ぐ死亡を不審に思った「ガゼタ・スポルトゥリロル」誌に密着する形で撮影を始めた本作。 監督は、生存者や火災後に病院で親族を失った家族の思いにも寄り添います。ドイツへ搬送して救命するはずだったのに移送手続きが滞って間に合わず息子を失い悲嘆に暮れる父親もいました。内部告発者が次々に現れ、長年にわたる医療現場の国家権力との癒着も明らかにされていきます。そして、利益優先の病院経営。消毒液を本来より10倍もの水で薄めていた事実も。重度の火傷を負った患者が感染症で相次いで亡くなったのも、そのせいでした。恐ろしや~
報道を目にした市民たちの怒りは、内閣を辞職に追い込み、正義感溢れるヴラド・ヴォイクレスクが保健省大臣に就任。新大臣から保健省オフィス内での撮影を許され、州政府の内部事情にも踏み込みます。それは、メディアや市民の監視なしには、国家機関は脆弱であるという残念な真実を映し出すことになってしまいます。
本作を観て、これはルーマニアだけの問題でないことを強く感じました。国家権力との癒着や、国家が国民に都合のいいようにしか報道しないのはどこにでもある話。新型コロナがなかなか収まらない今、私たちは何を知らされないでいるのでしょう・・・ (咲)


2019年/ルーマニア・ルクセンブルク・ドイツ/ルーマニア語・英語/109分/ビスタ/カラー/5.1ch
配給:トランスフォーマー
公式サイト:https://transformer.co.jp/m/colectiv/
★2021年10月2日(土) シアター・イメージフォーラム、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー.
posted by sakiko at 18:25| Comment(0) | ルーマニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

恐るべき子供たち4Kレストア版   原題:Les Enfants Terribles

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監督・脚本: ジャン=ピエール・メルヴィル 
脚本: ジャン・コクトー/ ジャン=ピエール・メルヴィル 
撮影: アンリ・ドカエ
衣装デザイン:クリスチャン・ディオール 
出演:ニコール・ステファーヌ/エドゥアール・デルミット

ある雪の日の夕方、学校の授業を終えた少年たちは雪合戦を繰り広げる。ポールは密かに想いを寄せていた美しい級友ダルジュロスの姿を探し名前を呼ぶ。そんなポールに向かって、ダルジュロスは意地悪く石を交えた雪玉を命中させ、ポールは倒れてしまう。親友のジェラールはポールを介抱し、自宅に送り届ける。ポールは自宅で療養することになる。見舞いに来たジェラールから、ダルジュロスが雪合戦の一件で放校処分になったと聞かされる。一方、ポールの部屋は姉エリザベートと二人で過ごす秘密の子供部屋。ジェラールがその部屋に入ることにエリザベートは怒りを覚える。やがて、重い病だった母親が亡くなる。ポールの反対を押し切ってブティックのモデルとして働き始めたエリザベートが、ある日、モデル仲間のアガットを家に連れてくる。アガットはポールがかつて思いを寄せていたダルジュロスに瓜二つで、ポールは激しく動揺する。やがて、エリザベートはアメリカ人の富豪マイケルと結婚するが、謎の自動車事故でマイケルが亡くなり、遺産として大きな屋敷を相続する。その屋敷で、エリザベート、ポール、ジェラール、アガットの4人の奇妙な共同生活が始まる・・・

「母を亡くし2人きりになったエリザベートとポールの姉弟を軸に描いた、子供たちの危険な愛と戯れの世界」と紹介されていますが、「子供」という言葉に騙されました。子供たちが大人になってからも続く危うい世界でした。 愛とは、執着なのか・・・ フランス人は、愛に生きる人たちなのを再確認させられました。

今回公開されるのは、詩人ジャン・コクトーの同名小説を原作に、コクトー自ら脚本を執筆し、1950年に製作された映画の4Kレストア版。日本語字幕は今回の公開にあたり一新。『燃ゆる女の肖像』の横井和子氏が翻訳を担当し、小説版「恐るべき子供たち」の翻訳者でもあるフランス文学者・映画評論家の中条省平氏が監修。
横井和子氏は、新訳にあたり、「新しすぎない」ことを意識。また、コクトーの言葉の魔法を保ったまま、「映像をしっかり観ながら読み切れる量」に調整することに気を使われたとのこと。コクトーが原作に書いた言葉や、コクトー自身のナレーションで繰り広げられるコクトーのくらくらする世界を、素晴らしい字幕で存分に味わってください。(咲)


1950年/フランス/107分/フランス語/モノクロ/スタンダード4Kデジタルリマスター版/DCP・Blu-ray
日本語字幕:横井和子 監修:中条省平
配給:リアリーライクフィルムズ、Cinemago /シネマエンジェル(提供)
公式サイト:https://www.reallylikefilms.com/osorubeki
★2021年10月2日(土)より、シアター・イメージフォーラム他にて全国公開
posted by sakiko at 18:21| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

人生の運転手(ドライバー) 明るい未来に進む路 原題:『阿索的故事』/英題:『The Calling Of A Bus Driver』

10月1日(金)よりシネマカリテほか全国順次公開 劇場情報
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©2020 Media Asia Film Production Limited. All Rights Reserved.

監督:葉念琛(パトリック・コン)
出演
ソック役 王菀之(イヴァナ・ウォン)
レイ・ザンマン役 姜皓文(フィリップ・キョン)
チャン・ジーコウ役 梁漢文(エドモンド・リョン)
ケイケイ役 蔡潔(ジャッキー・ツァイ)
ソックの父親役 夏韶聲(ダニー・サマー)

人生はバスに乗ることと似ている。
乗り間違えても正しいバスに乗ればいい。
心配ない。必ず目的地に着く


ソックは恋人のジーコウと共にチリソース店「陳三益」を切り盛りしていたが、ふたりの前にケイケイという女性が現れ、ソックとジーコウはすれ違い始める。ジーコウとケイケイの浮気現場に遭遇し、ソックはジーコウの元を離れる。恋人に裏切られ仕事も失ったソックが、失意の中、心機一転。幼いころからの夢であったバス運転手になり、人生を挽回していく姿を描いた香港発ヒューマンドラマ。
バス運転手として新たな生活をスタートしたソックは、徐々に穏やかな日常を取り戻し始めるが、ある日、突然現れたケイケイの元カレというレイ・ザンマンから“復讐話”を持ち掛けられる。

主人公ソックを演じるのはシンガーソングライターとして活躍するイヴァナ・ウォン。女優としても活躍。今回、役作りのため実際にバス運転の免許を取得し、バスの運転にも挑戦。復讐に燃えるレイ・ザンマンを演じるのはフィリップ・キョン。ハードな役からコミカルな役まで演じる香港映画にかかせない俳優。気弱で浮気者のジーコウを演じるのは1990年代から歌手として活躍するエドモンド・リョン。ソックの運命を狂わせる悪女ケイケイを演じるのはジャッキー・ツァイ。たかぴーな役を演じる。また、ソックの父親役を演じたのは香港ロック界の大御所ダニー・サマー。監督・脚本は、香港に生きる男女のラブストーリーを多く手がけてきたパトリック・コン。ユーモアとスパイスのきいたラブコメに心温まる物語をプラスし、俯きがちになった心をそっと、さりげなく前向きにさせる作品を紡ぎあげた。

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©2020 Media Asia Film Production Limited. All Rights Reserved.

失意のソックが幼いころからの夢だったバス運転手になるという物語だけど、私には、このコロナ禍、香港に行けない状況なので、香港の街中の景色がたくさん出てくる嬉しい映画だった。しかも香港のバスには何十回も乗っているので、とても懐かしい。いつになったら香港に行けるだろうと思いながら観た。それにしても香港のバスの運転手で女性というのはほとんど見たことがない気がする。もっとも、あの道ギリギリに走るバスの運転手というのは相当神経を使うだろうし、渋滞や運転の荒いミニバスの運転手のような人も多い。あんな道を走るのはとても大変そう。それでも、この映画の主人公はバスの運転手を目指し、夢をかなえていくことで人生の心機一転をはかる。そんな物語に、今の私たちのなんとかしたいなという思いが重なり、勇気を与えてくれる。
主人公を演じているイヴァナ・ウォンを始め、恋人役のエドモンド・リョンも、主人公の父親役のダニー・サマーと、香港映画界では相変わらず歌手兼俳優という人が多い。私はダニー・サマーのCDを2,3枚持っているけど、彼がロック歌手というイメージがなかったので、今回、姿をお見受けし、やっぱりロッカーぽいと思った。
6月に公開された『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』の何韻詩(デニス・ホー)も歌手であり俳優でもある。そして11月に公開される『花椒の味』の主人公を演じる鄭秀文(サミー・チェン)も長く活躍する歌手であり俳優である。さらにこの作品に出演している鍾鎮濤(ケニー・ビー)、任賢齊(リッチー・レン)、劉徳華(アンディ・ラウ)も歌手兼俳優である。そしてアンホイ監督を描いたドキュメンタリー『我が心の香港 映画監督アン・ホイ』も11月に公開される。香港映画の日本公開が続き、香港映画ファンとしてはうれしい限り。でも香港の今の社会状況を考えると喜んでばかりはいられない。香港はどうなっていくのだろうと不安である(暁)。


乗り物天国の香港に行けば、おのぼりさんよろしく2階建てトラムや2階建てバスの最前列に座って高みの見物をするのが大好きな私。久しぶりの香港らしい香港映画にわくわくしました。車間距離1メートルもなさそうなところに、きっちり止めるバスの運転手さんの技能にはいつも驚くばかり。横転事故の凄まじい写真も何度か見たことがありますが、やっぱりやめられない2階建てバスの最前列。そんな香港にいつまた行けるでしょう・・・
ソックの恋路を邪魔するケイケイは、大陸から来た美人。商売の話をうまく持ちかけ、ジーコウと結婚までしてしまいます。ケイケイは前にも男をだましていて、うがった見方をすれば、中国と香港の関係のよう! 
本作で、なにより目が釘付けになったのは、父のレコード店での場面。ソックと父が語るちょうど真ん中にレスリー・チャン(張國榮)の「為妳鍾情」のレコード! 顔がどアップです。隣は女性歌手のレコード。アニタ・ムイだったかも。(要確認!) 映画の最後の方で、父が「レスリー・チャンのレコードを入手した。聴いてみよう」と語ります。古き良き時代の香港への思いを感じてしまいます。
あと、懐かしかったのが、最後にバスの乗客として登場する方力申(アレックス・フォン)。2000年のシドニーオリンピックに香港代表ともなった水泳選手。水泳王子として芸能界にも進出し始めた頃に、香港の置地廣場(ランドマーク)でのチャリティー・イベントに出ていて、たまたま脇の出口から帰るところに出くわして一緒に写真を撮ったことがあります。あれから20年超。もう40過ぎなのに、変わらず若々しくて素敵です。
思えば、2000年初頭の頃は、中国に返還された後も、まだまだ香港らしさがありました。こんなにも早く大陸化するとは・・・  (咲)


『人生の運転手(ドライバー)』公式HP 
2020年/香港/105分/DCP/広東語・北京語/日本語字幕:最上麻衣子
配給:武蔵野エンタテインメント株式会社
posted by akemi at 12:10| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

護られなかった者たちへ

10月1日(金)全国ロードショー  劇場情報
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©2021映画「護られなかった者たちへ」製作委員会

衝撃と感動のヒューマンミステリー

原作:中山七里「護られなかった者たちへ」(NHK出版)  
監督:瀬々敬久『64-ロクヨン-前編/後編』 
脚本:林民夫『永遠の0』・瀬々敬久  
音楽:村松崇継『思い出のマーニー』  
主題歌:桑田佳祐「月光の聖者達(ミスター・ムーンライト)」(タイシタレーベル/ビクターエンタテインメント) 
出演
利根泰久:佐藤健 笘篠誠一郎:阿部寛 円山幹子:清原果耶 蓮田智彦:林遣都 三雲忠勝:永山瑛太 城之内猛:緒形直人 上崎岳大:吉岡秀隆 遠島けい:倍賞美津子 カンちゃん:石井心咲

2018年に発行された、作家中山七里のミステリー小説「護られなかった者たちへ」を原作に、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』の主演・佐藤健&瀬々敬久監督のコンビ、そして阿部寛の共演で映画化。
東日本大震災(2011)から9年後。舞台は復興が進む宮城県仙台市内。老朽化したアパートで、手足を縛られたまま放置され餓死させられるという凄惨な連続殺人事件が発生。被害者は人格者と言われていた男たちだった。2つの事件の共通点から、捜査線上に利根泰久が容疑者として浮かび、宮城県警捜査一課の刑事、笘篠(とましの)誠一郎が捜査を続ける。被害者の一人は、仙台市の職員で生活保護に関する相談業務を担当していた。もう一人は県議会議員だったが、彼もまた以前は仙台市の職員として生活保護の相談員をしていた。
利根は知り合いのおばあさんへの思いから放火、傷害事件を起こして服役。刑期を終えて出所したばかりの元模範囚だった。笘篠刑事は2つの事件を調べるうち、この傷害事件を起こした発端が、この事件の背景にあるのではないかという思いから、利根が容疑者ではないかと思い捜査を続けていたが、決定的な証拠がない中、第3の事件が起こる。
佐藤健が容疑者の利根役、阿部寛が利根を追う刑事の笘篠役を演じ、要となるカンちゃんの役を清原果耶、利根とカンちゃんを見守るおばあさんの役を倍賞美津子、そして永山瑛太、緒形直人、吉岡秀隆、林遣都らが出演。監督は『感染列島』(09)、『ヘヴンズストーリー』(10)、『64 ロクヨン』2部作(16)、『糸』(20)の瀬々敬久。

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(C)2021 映画「護られなかった者たちへ」製作委員会

東日本大震災と生活保護をめぐる状況を伏線にした話。震災で家族を亡くしたもの同士が助け合い、疑似家族のような関係を築く。生活保護の現状と苦悩を描くことで、日本の社会保障の問題を暴き出す社会派ミステリー。現代社会にある貧困や格差社会が浮き上がってくる。震災から9年。復興が進んでいるというがそうだろうか。街の形は外見上は戻っていても、住んでる者たちの心はなかなか元にはもどりません。喪失感がなくならないまま生きています。
そして死活保護は、苦しい生活を続けている人たち、生活保護を必要とする人たちに届いているのか。憲法第二十五条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とあるが、それは実践されているのか。そうでないから起こってしまった事件。生活に困り、生活保護を求めても、福祉事務所の窓口でなかなか許可されない現状。切り捨てられた「権力の圧力により護られなかった者たち」。大切な人を護ることが出来なかった後悔が語られる(暁)。


『護られなかった者たちへ』 公式サイト
2021年製作/134分/G/日本
配給:松竹 企画:アミューズ
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2021年09月23日

屋根の上に吹く風は

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監督・撮影:浅田さかえ
音楽:原摩利彦
ナレーション:玉川砂記子

鳥取県智頭町の新田地区にある”新田サドベリースクール”では、
授業がない! テストがない! 先生がいない!
今の学校とは真逆の新たな教育のカタチ。
自由とは何か。自分で考え決断することの大切さとは。
生まれ持った子どものチカラを引きだす学びとは。
試行錯誤しながら、新しい教育のカタチを
模索する子どもと大人の挑戦を描いた
ドキュメンタリー映画。

スクールの子どもたちは、毎日の予定を自分で決めます。登下校の時間は決まっていますが、その間は自由です。時間割もなければ教科書もありません。大人は危険のないよう子どもたちを見守って、質問されたら答えます。年齢別のクラス分けもありません。私が子どもだったらこんな学校に行ってみたかったなあ。何でもみんな一緒の学校が苦手な子も、ここなら大丈夫。好きなことを好きなだけ学びたい子にもここが良さそう。あの屋根の上で良い風に吹かれてほしいです。
大人は子どもの自発を待つことが必要で、つい口を出したくなる人は我慢。大人も勉強会を続けて一緒に育ちます。(白)


2021年/日本/カラー/108分
配給:グループ現代
(C)SAKAE ASADA
https://www.yane-ue.com/
★2021年10月2日(金)ポレポレ東中野ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 17:31| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

僕と彼女とラリーと

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監督・脚本:塚本連平
主題歌:加藤ミリヤ
出演:森崎ウィン(北村大河)、深川麻衣(上地美帆)、西村まさ彦(北村登志雄)、佐藤隆太(北村宏之)、竹内力(宮本武蔵)、田中俊介(水野一秀)、小林きな子(長谷川浩美)、有福正志(中条信介)、

北村大河28歳。大学入学を機に上京し、そのまま東京で役者を目指しているが夢にはまだ遠い。父からの電話に冷淡な対応をした数日後、幼なじみの美帆から父が急死と知らせが来た。大河は高校生で母と死別して以来、家庭を顧みなかった父が許せずにいた。エリート銀行員の兄は、父の遺した自動車整備の”北村ワークス”を家ごと処分するという。遺品整理をするうち、語られなかった父と母の心に気づく。弔問に訪れた父とラリー仲間だった宮本からも、ラリーにかけた父の想いを知らされた。頑なだった大河は、従業員たちと店を立て直すため、11月のラリーに参加することにした。

チームのメカニックとして有能だった父は、ラリーカーを保管していました。ラリーは6,7人がチームとなり、ドライバーやメカニックが力を合わせるものです。ほかの車と並んでスピードを競うレースではありません。父の言葉が美帆の撮ったビデオの中に残っていました。「ラリーは行ってまた戻ってくる、どんなにボロボロになっても」。避けていた故郷で、自分のやりたいこと、大切な人を見つける大河を、活躍著しい森崎ウィン。シングルマザーの美帆を深川麻衣。いくつかの困難に見舞われながらも、ラリーのように戻る場所と仲間を手に入れる大河。里山の風景が美しく、ラストも爽やかです。
自然豊かなロケ地は愛知県豊田市と岐阜県恵那市。「FIA世界ラリー選手権(WRC)第12戦フォーラムエイトラリージャパン2021」開催地です。無事に開催されますように。(白)


2021年/日本/カラー/シネスコ/105分
配給:イオンエンターテイメント、スターキャット
(C)2021「僕と彼女とラリーと」製作委員会
https://bokukano-rally.com/
★2021年10月1日(金)ロードショー、愛知・岐阜一部劇場で24日から先行公開

posted by shiraishi at 16:56| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月19日

チョコリエッタ

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監督:風間志織
原作:大島真寿美
脚本:風間志織、及川章太郎
撮影:石井勲
音楽:鈴木治行
出演:森川葵(宮永知世子)、菅田将暉(正岡正宗)、岡山天音、三浦透子、市川実和子、村上淳、中村敦夫

知世子が5歳のとき、母親が交通事故で亡くなった。それ以来、兄弟のように育った愛犬ジュリエッタを心の支えに生きてきたが16歳の時に死んでしまう。短く髪を切り、犬になろうとした知世子。進路調査に“犬になりたい”と書いて担任から呼び出された日、映画研究部の部室を訪れる。母が好きだったフェデリコ・フェリーニ監督の映画『道』を見れば、ジュリエッタに会えるような気がしたのだ。しかし、そのビデオテープは卒業した先輩・正岡正宗のもので既に部室にはなかった。訪ねていった家で映像を編集していた正宗は「俺の映画に出ないか」と誘う。まるで、『道』のザンパノとジェルソミーナのように、バイクに乗って2人の撮影旅行が始まる。街を走り、山を走り、海に出る。喧嘩、事故、初めてのホテル。旅は2人に何をもたらすのか……。

2014年制作ですが、映画の舞台は原発事故の10年後の2021年。その2021年の今年は風間詩織監督が十代でデビューして40年。リバイバル上映が決まりました。撮影当時十代だった森川葵、菅田将暉を始め、岡山天音、三浦透子ら今若手として映画界を牽引する俳優が登場しています。初々しいなぁ。
公開を前に風間志織監督にお話を伺いました。ただ今絶賛まとめ中。しばらくお待ちくださいませ。(白)


2014年/日本/カラー/シネスコ/159分

同時上映
『火星のカノン』2001/121分/初公開:2002年9月
チケットショップで働く絹子(久野真紀子)は恋人公平と火曜日にしか会えない。妻子がいると知っていて別れられない。元バイト仲間の聖(中村麻美)は再会した絹子の隣に引っ越してきて、何かと世話を焼く。聖は公平と別れるよう説得したうえ、絹子が好きだと告白する。
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『せかいのおわり』2004/112分/初公開:2005年9月
慎之介(渋川清彦)は盆栽ショップ「苔 MOSS」で働いている。住まいは店の2階で三沢店長(長塚圭史)と一緒。そこへ彼氏に追い出された幼なじみのはる子が転がり込んできた。慎之介は、はる子に想いを寄せているが気づかれない。そのはる子は店長の慎之介への気持ちに気づいてしまった。
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配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト
配給協力:ミカタ・エンタテインメント
(C)寿々福堂/アン・エンタテインメント
★2021年9月24日(金)よりアップリンク吉祥寺にて上映。名古屋シネマテーク、アップリンク京都他、全国順次ロードショー

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HHH:侯孝賢 デジタルリマスター版 原題:HHH:A portrait of Hou Hsiao Hsien

2021年9月25日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開
上映情報
オリヴィエ・アサイヤス監督とホウ・シャオシェン監督

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(C)TRIGRAM FILMS, All rights reserved

監督:オリヴィエ・アサイヤス
撮影監督:エリック・ゴーティエ
編集:マリー・ルクール
出演:ホウ・シャオシェン(侯孝賢)、チュウ・ティェンウェン(朱天文)、
ウー・ニェンチェン(呉念真)、チェン・グオフー(陳国富)、ドゥー・ドゥージー(杜篤之)、ガオ・ジエ(高捷)、リン・チャン(林強)
フランス・台湾/1997年/DCP/ステレオ/ヴィスタ/92分

オリヴィエ・アサイヤス監督が素顔のホウ・シャオシェンに迫る!

世界の巨匠たちに映画監督がインタビューを行うフランスのTVシリーズ「われらの時代の映画」。この番組で台湾ニューシネマをフランスに紹介してきたオリヴィエ・アサイヤス監督が台湾を訪れ、素顔の侯孝賢監督に迫った。取材当時、侯孝賢監督は『フラワーズ・オブ・シャンハイ』(98)の脚本を執筆中だったというが、ゆかりの地を訪ねたり、関わりのある映画人とのインタビューにも一緒に参加し、監督の足跡をたどる。
侯孝賢監督が子供時代に住んだ鳳山を来訪したり、『童年往事 時の流れ』(85)、『冬冬の夏休み』(84)、『恋恋風塵』(87)、『悲情城市』(89)、『戯夢人生』(93)、『憂鬱な楽園』(96)の映像と共に侯孝賢監督とアサイヤス監督が作品にゆかりのある九份、十分、金瓜石、平渓、台北などをめぐり、侯孝賢監督と共に台湾ニューシネマを牽引した朱天文(脚本家)、呉念真(脚本家・監督)ら、映画人たちへのインタビューもあり、貴重な映像、懐かしい映像の数々が続く。
侯孝賢監督は、広東省から台湾に移住したこと、少年期の思い出、そして映画に対する思い、自身の映画製作のプロセスについて語る。最後にはカラオケで熱唱する侯孝賢監督の姿が流れる。さて歌っているのは…。
本作はINA (L'Institut National de l'Audiovisuel)により、オリヴィエ・アサイヤス監督の監修のもと、そしてアンスティチュ・フランセの協力を得て、デジタル修復された。

24年前に製作された作品。侯孝賢監督も、脚本家たちも俳優も若い!!
監督が青少年時代を過ごした鳳山を訪れ、家族のこと、博打に明け暮れた青春時代、兵役を経て映画界を志した日々を語りだした部分は貴重。その頃の悪ガキ仲間が集まってきた。『悲情城市』で侯孝賢作品にハマり、たぶん日本で公開された作品は全部観ていると思う。そして2008年に初めて台湾に行って以来、5回台湾に行ったけど、侯孝賢作品のロケ地、基隆、九份、十分、金瓜石、平渓線を訪ねて回った。特に九份と十分は5回とも行っている。そのくらいハマってしまった。HPにもロケ地探訪としてアップしている。
そしてこの『HHH:侯孝賢』は、2019年の東京フィルメックスで上映され、オリヴィエ・アサイヤス監督も来日した。


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2019年東京フィルメックスでのオリヴィエ・アサイヤス監督


参照
* 『悲情城市』は基隆、九份、金瓜石が舞台。『恋恋風塵』は十分が舞台。
* 台湾ロケ地めぐり 平渓線沿線『台北に舞う雪』公開記念
*作品紹介記事
『親愛なる君へ』(原題:親愛的房客 )
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/482498596.html
*特別記事
『恋恋豆花』今関あきよし監督インタビュー
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/473658095.html
『トロッコ』川口浩史監督インタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2010/torokko/index.html
『さいはてにて~やさしい香りと待ちながら~』
姜秀瓊(チアン・ショウチョン)監督インタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2015/saihatenite/index.html

本当は侯孝賢監督に関する「参照」に掲載したい記事はまだまだあるのだけど、このへんでやめておきます。興味ある方はシネマジャーナルHPトップページにある検索で「侯孝賢監督」と入れてみてください(暁)。

オリヴィエ・アサイヤス監督が本作の為に台湾を訪れたのは、1997年頃。侯孝賢監督の初期の作品のロケ地も、まだ撮影当時の面影をかなり残していて、それぞれの映画を思い出しながら懐かしく拝見しました。それでも台北の町には、高架を走る電車が見えて、私が訪れた1990年代前半とは違う風景。
自分は何人か?と問われ、中国人であり、台湾人であり、そして台湾の監督と答える侯孝賢。1947年、中国広東省梅県で生まれ、1歳の時に家族と共に台湾にやってきた侯孝賢にとって、中国の記憶はないから、このような意識なのでしょう。でも、侯孝賢のお祖母さんは、いつも中国の故郷に帰りたいと荷物をまとめていたそうです。両親にとってもお墓のない台湾は故郷とは思えなかったようです。国民党が共産党軍に敗れ、台湾に移動した1949年より前に大陸から台湾に来た人たちの中には、台湾は終の棲家ではなく、いつかは大陸に戻るという意識の人も多かったことがわかる言葉でした。
『童年往事 時の流れ』(85)は、大陸からやってきた父を幼かった侯孝賢少年の目線で語った作品。『風櫃の少年』(83)は侯孝賢自身の体験をもとに描いた作品。その他、『冬冬の夏休み』(84)、『恋恋風塵』(87)、『悲情城市』(89)、『戯夢人生』(93)、『憂鬱な楽園』(96)の撮影秘話も知ることができて、嬉しい一作です。(咲)



『HHH:侯孝賢』 デジタルリマスター版 公式HP 
提供・配給:オリオフィルムズ 配給協力:トラヴィス 宣伝:大福


『HHH:侯孝賢』公開記念トークイベント開催決定!

〇9/25(土) 宇田川幸洋さん(映画評論家)
〇10/1(金) 田村志津枝さん(ノンフィクション作家)※オンライン登壇
〇10/2(土)① 行定勲さん(映画監督) ② 市山尚三さん(映画プロデューサー、東京国際映画祭プログラミングディレクター)
〇10/3(日) 半野喜弘さん(音楽家・映画監督)
〇10/9(土) 阿部悦明さん、中村謙介さん(IMAGICAエンタテイメントメディアサービス)
〇10/10(日) 青井哲人さん(明治大学教授 建築史・建築論)
〇10/16(土) 秋山珠子さん(神奈川大学准教授・「侯孝賢の映画講義」翻訳者)/韓燕麗さん(東京大学教授・映画研究者)
〇10/17(日) 明田川聡士さん(台湾文学研究/獨協大学専任講師)

新宿K’sシネマにて同時開催!!
ホウ・シャオシェン&オリヴィエ・アサイヤス監督作品を特別上映
※『冬冬の夏休み』は本特別上映が日本最終上映となります※
※詳細は劇場HPをご覧ください。


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2021年09月18日

MINAMATA―ミナマタ―  原題:MINAMATA

9月23日(木・祝)TOHOシネマズ 日比谷他全国公開
劇場情報
●『MINAMATAーミナマター』チラシ_R_R.jpg
© 2020 MINAMATA FILM, LLC

監督:アンドリュー・レヴィタス 脚本:デヴィッド・ケスラー
原案:写真集「MINAMATA」W.ユージン・スミス、アイリーンM.スミス(著)
出演:ジョニー・デップ、真田広之、國村隼、美波、加瀬亮、浅野忠信、岩瀬晶子、ビル・ナイ
音楽:坂本龍一
製作:ジョニー・デップ
日本語字幕:髙内朝子

写真家ユージン・スミスと水俣の実話から生まれたハリウッド映画

水俣病は日本での「公害の原点」ともいわれ、1956年5月に公式発見された。熊本県水俣市の新日本窒素肥料(現・チッソ)水俣工場の工場排水にメチル水銀が混じって海に排出され、これを取り込んだ魚や貝を人が摂取したことで多くの方が水俣病に罹患した。第二水俣病、四日市喘息、イタイイタイ病と並び日本における4大公害病のひとつといわれている。しかしメチル水銀が原因と判明し、環境に配慮した対策がとられたのは1968年。
水俣病について日本では、桑原史成などの写真家、土本典昭監督のドキュメンタリー映画によって記録されてきたし、石牟礼道子の「苦海浄土」などの本によっても描かれてきたが、世界に発信したのが、写真雑誌「ライフ」などで活躍していたアメリカ人写真家のユージン・スミスと言われている。1971年~74年の3年間水俣に滞在、水俣病の患者たち、胎児性水俣病患者と家族、抗議運動などを撮影した。この作品は水俣病の存在を世界に知らしめようと、ジョニー・デップが製作。写真家ユージン・スミスを演じ、妻アイリーン・美緒子・スミスととともに水俣に生活し、撮影の日々が描かれる。
1971年、ニューヨーク。ユージン・スミスは第二次世界大戦や、戦後は労働運動など、人の命、ケア、人権などの社会問題を描く「フォト・エッセイ」などで、かつてはアメリカを代表する写真家として称えられていたが、酒に溺れる日々を送っていた。そんなある日、アイリーン・美緒子という日系人の女性から、水俣病に苦しんでいる人たちの写真を撮ってほしいと頼まれる。最初は断ったが、有機水銀に侵された人々の姿や、抗議運動の人たちとそれを弾圧するチッソの姿を見て、日本に来る決心をする。そしてアイリーンと共に水俣病と向き合った。人々の暮らしに寄り添ったユージンの瞳とカメラを通して私たちが見るのは、闇に包まれた苦難の瞬間にも、光として浮かび上がる人間の命の輝きと美しい絆。それらを捉えた写真に警告と希望を焼き付けた。写真集は1975年に完成し、世界に「MINAMATA」を知らしめた。
ユージン・スミスを演じたジョニー・デップ。「ライフ」の編集長役を演じたビル・ナイ。日本からは真田広之、國村隼、美波、加瀬亮、浅野忠信らが参加。また坂本龍一が音楽を手がけた。ジョニーは今もまだ続く水俣病にスポットをあて、各国で同じ環境被害に苦しむ多くの人々をも照らし出そうと、主演し、自らプロデューサーにも名乗り出た。

ユージン・スミスの写真展は何度か行ったことがあるし、水俣をテーマにしたドキュメンタリー映画もけっこう観てきましたが、ユージン・スミスが日本に来るまでの栄光は知っていても苦悩は知りませんでした。この映画ではそれが描かれていて、あらためてユージン・スミスの人生、生き方を考えました。
あの当時(1970年初め)、報道写真に興味があり、ユージン・スミスやロバート・キャパ、日本人では桑原史成などの影響を受け、私も報道写真を目指しベトナムやカンボジアなどに写真を撮りに行きたいと考えていました。
そういう思いを持って生きてきたので、ハリウッド映画は、水俣の公害問題、日本でのユージン・スミスをどのように描くのかとても興味がありました。とてもまじめにユージン・スミスを描いていたと思うし、水俣のこともこれまでいろいろな作品に出てきたエピソードをおおむね参考にしているのではないかと思いました。なによりもジョニー・デップが、ほんとにユージン・スミスの風貌そっくりになっていたことが驚きでした。そしてあの有名な「母親が胎児性水俣疾患者の娘を抱いて入浴している姿」は歴史に残る写真だと思うけど、その撮影シーンが出てきた時には、心臓がバクバクするほど心が揺り動かされました。また、患者の会の活動家を演じた真田広之さんが机の上に座りこみチッソの社長に迫るシーンは、患者の会の会長だった川本輝夫さんが実際にした行動でしたが、それも描かれていてびっくりしました。
もうひとつびっくりしたのは、写真をプリントするとき、この映画では手を現像液や停止液、定着液に浸していましたが、ほんとにそのようにやっていたのだとしたらと驚きです。私は化学薬品に手をつけたくないので、水洗まではトングを使ってプリントする紙をつかんでいましたが、この映画に描かれていたように、この暗室では実際そうやっていたんだろうか?とも思いました。このチッソの抗議運動は水銀中毒に対する被害を訴える運動だったわけだから、現像に使う化学薬品に手を浸すというのは、ちょっと考えられないとも思いました(暁)。


私が水俣病を知ったのは、小学生5~6年生の頃。少女漫画雑誌の「少女フレンド」か「マーガレット」に掲載されていた1枚の写真。寝たきりの少女の目はキラリと光っているのに、動くことができず、母親が食べさせてあげている写真でした。そこには、水俣で水銀の混じった工場排水で育った魚を食べたのが原因と書かれていて、体温計を割ったら大変と頭に叩き込んだのでした。今でも覚えているほど写真から受けた衝撃は大きかったです。
その水俣病が何年経っても損害賠償がきちんとされないことを知ったのは、大人になってからです。ユージン・スミスの写真によって、水俣病は世界に知らしめられましたが、それでも訴訟がすんなりとは進まない歯がゆさ。
ユージン・スミスを水俣に誘ったアイリーン・美緒子さんは、ユージン・スミスが1978年に亡くなられた後も、1983年にはコロンビア大学で環境科学の博士号取得、1991年には環境市民団体グリーン・アクションを設立し活動を続けています。アイリーンさんのその後の物語をもっと知りたいと思いました。
公式サイトの「ORIJINAL]のコーナーにアイリーンさんとユージン・スミスご本人の写真があります。素敵なアイリーンさんと、いかにジョニデがユージンそっくりに扮しているかをご確認ください。
追記:9月20日夜9時からのNHKニュースで『MINAMATAーミナマター』を特集していて、今もアイリーンさんが水俣に寄り添って活動されている姿を拝見することができました。笑顔がとても素敵でした。(咲)


『MINAMATA ―ミナマタ―』公式サイト 
提供:ニューセレクト株式会社、カルチュア・パブリッシャーズ、ロングライド
配給:ロングライド、アルバトロス・フィルム
2020年/アメリカ/英語・日本語/115分/1.85ビスタ/カラー/5.1ch/

☆お知らせ
『MINAMATA ―ミナマタ―』公開記念の写真展が開催されています。「シネマジャーナルHP スタッフ日記」に詳細を記しています。興味ある方はこちらにアクセスしてみてください。

『MINAMATA ―ミナマタ―』公開記念 桑原史成写真展、ユージン・スミスとアイリーンが写した「MINAMATA」作品展&ユージン・スミス集大成写真展のお知らせ
http://cinemajournal.seesaa.net/article/483705121.html?1633906001




posted by akemi at 14:55| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月17日

ディナー・イン・アメリカ(原題:Dinner in America)

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監督・脚本・編集:アダム・レーマイヤー
撮影:ジャン=フィリップ・ベルニエ
音楽:ジョン・スウィハート
出演:エミリー・スケッグス(パティ)、カイル・ガルナー(サイモン)、グリフィン・グラック(弟ケビン)、パット・ヒーリー(父)、メアリー・リン・ライスカブ(母)、リー・トンプソン(ベティ)

孤独な少女が家に匿ったのは、覆面バンドの推しメンだった…!?
過保護な両親に育てられた臆病な少女パティは、孤独で単調な毎日を送っていた。そんな彼女にとって、パンクロックを聴くことだけが、平凡な人生から逃避できる唯一の楽しみだった。ある日、パティはひょんなことから、警察に追われる男サイモンを家に匿うことに。なんと彼の正体は、パティが大好きなバンド「サイオプス」の覆面リーダーであるジョンQだった。

アメリカ国旗柄の服を着ているパティは確かに地味、学校でも小さくなって目立たない。でも(だから?)パンクロックが大好き。この落差に笑えて共感もします。ライブに行けなくて落ち込んでいるところに、当のバンドのリーダーが現れるという漫画のようなサプライズ。なにせ覆面リーダーなので、パティは長いこと彼だと気づきません。そのズレがまたおかしいのと、サイモンの意外に繊細(?)なところにグッときます。
エミリー・スケッグスは舞台女優、カイル・ガルナーはスリラー映画に出演しているそうで、お初でした。ほかの出演者を見ても、娘の彼氏に色目を使う(笑)リー・トンプソン以外知った俳優さんはいませんでした。低予算映画ながらパンク精神が隅々まで詰め込まれたラブ・ストーリー。若者とパンクロックのファンにおおいに受けたそうです。俳優ベン・スティラーがプロデューサーに名を連ねていて、そこかしこからにじみ出るユーモアは彼からでしょうか?(白)


2020年/アメリカ/カラー/シネスコ/106分
原題:Dinner in America
配給:ハーク
(C)2020 Dinner in America, LLC. All Rights Reserved
https://hark3.com/dinner/
★2021年9月24日(金)より全国順次公開

posted by shiraishi at 21:17| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

殺人鬼から逃げる夜(原題:Midnight)

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監督・脚本:クォン・オスン
撮影:チャ・テキュン
出演:チン・ギジュ(ギョンミ)、ウィ・ハジュン(ドシク)、パク・フン(ジョンタク)、キム・ヘユン(ソジュン)、キル・ヘヨン(母)

ギョンミと母は聴覚に障害があり、二人暮らし。母は裁縫師として働き、ギョンミはお客様センターで手話部門を担当している。2人の目下の楽しみは済州島へ旅行に行くこと。ある晩、仕事帰りに母と待ち合わせたギョンミは、若い女性が路地に倒れて血を流しているのに気づく。慌てて助けを呼ぼうとしたが、すぐ近くに潜んでいた犯人に捕まってしまう。辛くも逃げ出し、全速力で走って非常ベルを押すが、管制センターの声は聞こえず、ギョンミも話すことができない。スーツ姿の男が現れて応答するうち、パトカーもやってくる。心配していた母と合流したが、路地に倒れていた女性は消えていた。警察署で事情を説明していると、帰宅の遅い妹を探して、ジョンタクが駆け込んできた。妹の写真を見ると、倒れていた被害者だった。警官が席を外したとたん、スーツ姿の男がナイフを向ける。彼こそ凶悪な連続殺人犯のドシクだった。

聴覚障害の女の子が殺人鬼から一晩中逃げ回るという展開に、追いかけられるのコワイので、ドキドキしっぱなしでした。警察が頼りにならないのをはじめ、いろいろつっこみどころあり(笑)。
知らなかったこと→韓国には街角に警察に繋がる非常ベルがあるんですね。でもギョンミがせっかく連絡しても声は聞こえず説明もできません。スマホも持っていたのに、文字での通報はできないんでしょうか?とにかく走るギョンミ役は、チン・ギジュ。『リトル・フォレスト 春夏秋冬』でヒロインのヘウォンの親友役でした。2人で辛いトッポギを食べて、ヒーハー言ってたのがおかしくて忘れられません(そこ?)。
不気味な連続殺人鬼ドシクを演じたのは、ウィ・ハジュン。ドラマ「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」(2018)で、ジナ(ソン・イェジン)の弟スンホ、親友のソ・ジュニ(チョ・ヘイン)が姉に恋するのに戸惑う役。スンホを溺愛し、ジナとジュニの恋愛に大反対する母が、この映画ではギョンミの母役のキル・ヘヨンです。そちらではすっごい憎まれ役でしたが、こちらでは良き母。母と娘の手話には字幕がつきますが、身振り手振りは国を越えて理解できますね。もうひとつの言語なんだと再確認しました。(白)


2021年/韓国/カラー/シネスコ/104分
配給:ギャガ
(C)2021 peppermint&company & CJ ENM All Rights Reserved.
https://gaga.ne.jp/satujinki/
★2021年9月24日(金)ロードショー

posted by shiraishi at 20:08| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

素晴らしき、きのこの世界(原題:Fantastic Fungi)

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監督:撮影:ルイ・シュワルツバーグ
脚本:マーク・モンロー
音楽:アダム・ピーターズ
ナレーション:ブリー・ラーソン
出演:ポール・スタメッツ(菌類学者)、マイケル・ポーラン(ジャーナリスト)、ユージニア・ボーン(フードライター)ほか

菌類は150万種。植物の6倍以上。菌類の中の2万種がキノコを作る。地下に張り巡らされた菌糸網の実のようなもの。カビや麹も菌類。動物や植物が死ぬと、菌類が分解し、養分に変え土に返していく。油も吸収し分解するので、原油が流出した海も救うことができる。菌類は45億年前に地球に現れ、地球上の生き物が死に絶えたときも生き延び、あらゆる生命体の母となった。70億の人間は菌類なくしては存在しえない。

ポール・スタメッツは子どものころ吃音がひどくて人と話せず、いつも下を向いて歩き、見つけたのが化石とキノコだったそうです。キノコに魅せられ興味は尽きず、現在も菌類を研究し、実験、栽培を続けています。
原生林のあちこちに生息しているキノコが成長するようすが高速度カメラで撮影され、一つ一つが愛らしく、美しく不思議です。原生林は菌類の宝庫なので、そこを守ることは人間を守ることに繋がると映画は知らせています。菌類のアオカビからペニシリンが発見されたように、菌類からは様々な病気、感染症に効果のある薬が作られています。そしてまだまだ未発見の物質があるのだとか。また学習して、そのネットワークで知識を共有する生物なのだそうで、学習しても今後に生かせない人間よりずっと賢くないですか?人間は菌類に学ぶべき。キノコ愛好家が多いのも納得でした。(白)


キノコを食べるのも好き、生えているのを見るのも好き。時には採集もするキノコ大好きな私にとっては、キノコや菌類の秘めたる魅力を堪能できた作品だった。
山に登ったり、山里を歩くと地面に生えていたり、倒れた木からキノコが出ているし、上を見れば、樹の幹にキノコがニョキニョキ、あるいはサルノコシカケのように幹の脇に皿がささったように突き出ていたりする。とにかくいろいろな色や形のキノコがある。山歩きを始めた頃は、「ああ、キノコが生えてるな。あのキノコは食べられるのかな?」と思いながら眺めているだけだったけど、後にはキノコの採集の講座にもでかけ、食べられるキノコを採集するのも楽しみになった。春から秋までいろいろなキノコを見かけるけど、もちろん秋が一番キノコが多い。そんなキノコを見ながら山歩きをするのも楽しかった。実際綺麗なキノコがたくさんある。この作品は、そんなキノコの世界を多彩な映像技術を使って、キノコの世界を楽しくみせてくれる。
そして、きのこ・菌類の秘めたる力も教えてくれる。食物としての魅力だけでなく、木や植物などを腐らせ分解し生きた土壌に蘇らせる力をもつ生態の可能性も探る。そして、キノコの魅力にハマった人たちの物語が面白い。それにしても、生命の再生や環境汚染の浄化、アルツハイマーや癌の治療にまで役立つって出てきて、さらにびっくり。これからいよいよキノコのシーズンだけど、今年もキノコが生えているところには行けそうもないので街でみるしかない。どんな天然キノコが店に並ぶか楽しみ(暁)。


◆予告編(1分30秒) https://www.youtube.com/watch?v=z_ncBhl3qS4

2019年/アメリカ/カラー/アメリカンビスタ/81分
配給・宣伝:アンプラグド
(C)2018, Fantastic Fungi, LLC
https://kinoko-movie.com/
★2021年9月24日(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

posted by shiraishi at 15:02| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

カラミティ(原題:Calamity, une enfance de Martha Jane Cannary)

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監督:脚本:レミ・シャイエ
音楽:フロレンシア・ディ・コンシリオ
出演:サロメ・ブルバン、アレクサンドラ・ラミー、アレクシ・トマシアン
日本語版:福山あさき、松永あかね、木野日菜、木戸衣吹、畠山航輔、杉田智和、上田燿司

アメリカ西部開拓時代。12歳のマーサ・ジェーンは家族とともに大規模な幌馬車隊で西に向けて旅を続けていた。旅の途中、父親が暴れ馬で負傷し、マーサが家長として幼い弟妹の面倒を見、家族を守らなければならない立場になってしまった。女は女らしくと期待されていた時代、長いスカート姿では父親代わりはできない。マーサは家族のために少年のように髪を短く切り、男性だけのものだったジーンズをはいた。
マーサを危機から救ってくれたサムソン少尉を幌馬車隊に引き合わせたたことから、よそ者を嫌う旅団の中でさらなる軋轢を生む。馬に乗り、銃も扱えるようになったマーサはいつしか「カラミティ・ジェーン」と呼ばれるようになる。

『ロングウェイ・ノース 地球のてっぺん』のスタッフが再集結して製作したアニメーション。2020年春に完成し、アヌシー国際アニメーション映画祭にてワールド・プレミア上映され、見事クリスタル賞(グランプリ)を受賞。日本ではフランス映画祭でフランス語版、翌年3月開催の東京アニメアワードフェスティバルでは、日本語吹替え版がプレミア上映されました。
本作も輪郭線はなし、綺麗な色彩の絵(水彩風でなく、切り絵風)が横長の画面に拡がり、どこを切り取って額にいれても映えそうです。
ストーリーは実在した女性ガンマン、マーサ・ジェーン・キャナリー(1856~1903年)の子ども時代のお話。カラミティとは「厄介者」「疫病神」の意味。西部へ移動中に母親が亡くなり、この映画の中で落馬した父親も入植して数年後には亡くなっています。アニメのキャラでは眉の太い凛々しい顔だちのマーサ・ジョーン、弟妹たちの親代わりであり、男勝りになって(ならざるを得ず)奮闘したようです。名前のとおりトラブル・メーカーであったのか、後の伝聞では諸説あるようです。男装した勇敢な少女だったのは間違いなさそう。(白)


淡いトーンで描かれたお転婆なカラミティ・ジェーンの物語。大人相手に勇敢に立ち向かう姿に引き込まれます。ふと気が付くと、アメリカ西部開拓の物語なのに、フランス語?と、ちょっと違和感があったのですが、思えばヨーロッパ各地から新天地を求めて人々がやってきた時代。何語を話していたかは、逆にわからないですね。お互い、言葉が通じないこともあったのだと思います。何事も恐れないジェーンのような人物だからこそ、生き抜けたのだと! この映画を観た子どもたちが勇気をもらえますように! (咲)

2020年/フランス・デンマーク合作/カラー/シネスコ/82 分
配給:リスキット
(C)2020 Maybe Movies ,Norlum ,2 Minutes ,France 3 Cinema
https://calamity.info/
★2021年9月23日(木)より新宿バルト9ほか全国順次公開

posted by shiraishi at 14:21| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

クーリエ 最高機密の運び屋(原題:The Courier)

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監督:ドミニク・クック
脚本/製作総指揮:トム・オコナー
撮影:ショーン・ボビットBSC
音楽:アベル・コジェニオウスキ
出演:ベネディクト・カンバーバッチ(グレヴィル・ウィン)、メラーブ・ニニッゼ(オレグ・ペンコフスキー/アレックス)、レイチェル・ブロズナハン(エミリー・ドノヴァン/ヘレン)、ジェシー・バックリー(シーラ)、アンガス・ライト(ディッキー・フランクス/ジェームス)

1962年10月、アメリカとソ連の対立は頂点に達し、キューバ危機が勃発。アメリカの目と鼻の先にあるキューバに、ソ連がミサイル基地を作っているという情報が入ってきたのだった。もし実際にミサイルが発射されたなら、アメリカはすぐに報復し、世界中を巻き込んだ核戦争が起きてしまう。なんとしても正確な情報を手に入れなければならない。
英国人のグレヴィル・ウィンは、東欧へ機械や部品を売るセールスマン。彼ならば疑われることなく、商用だとソ連の往復ができる。英国の情報組織MI6に見込まれ、スパイの経験など一切ないにも関わらず「クーリエ(運び屋)」をすることになってしまった。モスクワへと飛んだ彼は、国に背いたGRU(ソ連軍参謀本部情報総局)の高官オレグ・ペンコフスキーとの接触を重ね、機密情報を西側へと運び続けるが……。

スパイ活動など縁のないセールスマンに「国家機密」を運ばせたというのが史実だとは!声をかけられたウィンは固辞するのだが、”核戦争になったら妻や息子のアンドリューがどうなるか。これを止められる機会があったのに、とあなたは後悔する”と諭されます。彼の情報を全て知ったうえで具体的に数字もあげて未来の話をします。これを断れる人はいないでしょう。
冒頭にソ連でスパイ活動が露見した男が銃殺されるシーンがありました。ペンコフスキー大佐もそれを見ています。裏切者の運命はわかっています。それでも祖国の機密をアメリカへ渡し続けた心中はいかばかり。
互いに信頼し合い、命がけの任務を遂行し、国や立場を越えた友情を築いたアレックスとウィンの2人。説得力を持った俳優の好演が真実味を倍加させました。ウィンの前半後半の体型や表情の激変を身を挺して演じきったカンバーバッチに驚くこと必至です。当時を再現した美術や衣裳、カメラワーク、温かみを配した色調、すみずみまで注意を払って作られた本作は緊張感を最後まで持続させます。
中にアレックスとウィンがモスクワでボリショイバレエ「シンデレラ」を鑑賞、お返しにとウィンがロンドンで接待するシーンがあります。映画館にはプレスリーの『ガール!ガール!ガール!』の看板があがっています。チャビー・チェッカーの「Let's Twist Again 」(世界中でカバーされたヒット曲)が流れ、アレックスとウィンが笑顔でツイストを踊っていました。ウィンの家での食事シーンでは、子どもの率直な質問にアレックスが答えます。どうぞ聞き逃さないで。
日本は1956年の経済白書では「もはや戦後ではない」と戦後復興の先を突き進み、東西冷戦当時の池田内閣は「所得倍層計画」を掲げていました。大人も冷戦を心底心配していたのかどうか、私の記憶にはほとんどありません。庶民は毎日を送るだけでいっぱいだったのではないでしょうか。東西だけでなく、世界中で起こる対立は政治の上でのこと、文化や人の交流は可能です。個人に目覚めてほしくないのは誰でしょう?(白)


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映画の中でケネディ大統領が演説するテレビ映像が映し出されて、小学生だった当時、ケネディ大統領に憧れたのを思い出しました。ケネディとフルシチョフが握手して、これで戦争にならないのねと子ども心に単純に思ったものでした。それが、1962年のキューバ危機回避の時のものだったかどうかはわからないのですが。
あの米ソ対立の時代に、こんな史実があったとは!と驚きました。 最後に映し出された本物のグレヴィル・ウィンの解放された時の姿に、国家にうまく利用された人の良さを感じました。カンバーバッチがまさに体現していて素晴らしいです。また、ソ連の高官がどんな気持ちで機密情報を流したのかと思いを馳せました。旧ソ連グルジア(現ジョージア)出身の俳優メラーブ・ニニッゼが好演でした。
それぞれの家族の姿も丁寧に描いていて、いずれもまさか夫がスパイ活動をしているとは思いもせず、平穏な暮らしを望んでいることに涙です。(咲)


2020年/イギリス、アメリカ合作/カラー/112分
配給:キノフィルムズ
(C)2020 IRONBARK, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
https://www.courier-movie.jp/
公式Twitter(@courierjp)https://twitter.com/courierjp
★2021年9月23日(木・祝)ロードショー

posted by shiraishi at 13:16| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

空白

kuhaku.jpg

監督・脚本:𠮷田恵輔
企画・製作・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸
撮影:志田貴之
音楽:世武裕子
出演:古田新太(添田充)、松坂桃李(青柳直人)、田畑智子(松本翔子)、藤原季節(野木龍馬)、趣里(今井若菜)、伊東蒼(添田花音)、片岡礼子(中山緑)、寺島しのぶ(草加部麻子)

中学生の添田花音が車に轢かれて死んでしまった。スーパーで化粧品を万引きしようとしたところを店長の青柳直人に見つかり、追いかけられて逃げた挙句道路に飛び出してしまったのだ。妻と離婚後、いつも花音を放たらかしだった父親の充は、突然の娘の死が信じられない。いじめではないかと学校へ乗り込み、自分の娘が万引きなどするはずがないと主張し、店長の直人を激しく追及し続ける。先代の店長のころからスーパーで働いている麻子は、直人をかばって応援する。充の怒りは収まらず、テレビの取材ではコメントを切り取られ、直人の心は折れていく。

これまでの𠮷田監督の作品を観続けています。他人や友人、兄弟姉妹などの関係、その中での加害や被害、善や悪を描いてきました。『ヒメアノ~ル』での狂気の森田剛さんに震えましたが、この突然娘を亡くした父親役の古田新太さんも怖い。いくら謝っても許してもらえません。毎日のように追いかけまわされ、罵倒されたら病んで心が壊れてしまいます。スーパーを継いだごく普通の青年を松坂桃李。しばしばスターのオーラを消して市井の一人になる俳優さんですが、今回も添田に攻撃されっぱなしの直人を演じて違和感ありません。あまりに儚げなので、つい心が動いてしまう麻子の気持ちもわかろうというもの。
娘のことを知らないというのは、添田自身が一番よくわかっているので、自分に怒り、学校へ乗り込み、目の前にいる青柳直人に怒りを集中させてしまいます。そんな添田に元妻は前には飲み込んだことを言い、若い漁師・龍馬は八つ当たりされながらも憎むことはしません。藤原季節さんは柳に風のような役がよく似合います。
𠮷田監督の作品のどの人間にも光と影があり、どん底へ落ちようと、這い上がるとっかかりがあります。観るほうも追い詰められますが息をさせてもらえます。
10月28日から始まる第34回東京国際映画祭にて、Nippon Cinema Now部門「𠮷田恵輔監督」特集が決定しました。こちらです。この『空白』のほか、旧作が上映され監督も登壇する予定。ぜひお楽しみに。(白)


私は、(白)さんと違って、𠮷田恵輔監督作品を観たのは、今年4月9日に公開された『BLUE/ブルー』が初めてでした。
登場人物それぞれの心情を丁寧に描いていて、じんわりと心に染み込む映画でした。
この『空白』も、突然、娘を失った父親の行き場のない思い、万引きに悩まされていた店主にとっては、自分が追いかけたせいだという自責の念、そして言われなき周りからの罵倒・・・ それぞれの押しつぶされそうな気持ちが、ずっしり伝わってきました。
本作の企画・製作に当たった河村光庸氏は、英語タイトルを『Intolerance(不寛容)』としたけれど、果たして、今のこの時代を「不寛容」という言葉で言い表せるのでしょうか?とも自問されています。“生きづらさ”や“閉塞感”とも違う「空っぽ=空白」な時代を生きているのではないでしょうか?と。 生きていれば、必ずいつか、空白を埋めることができると信じて前を向いていきたいものです。(咲)



2021年/日本/カラー/ビスタ/107分
配給:スターサンズ/KADOKAWA
(C)2021「空白」製作委員会
https://kuhaku-movie.com/
★2021年9月23日(木・祝)全国公開

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明日をへぐる

2021年9月11日 ポレポレ東中野を皮切りに全国ロードショー

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楮(こうぞ)をめぐる山里の人々の暮らし

監督・編集:今井友樹
企画・製作:山上 徹二郎 
企画協力:田岡重雄 
撮影:今井 友樹 / 伊東 尚輝
航空撮影:辻 智彦 
ドローン撮影:佐藤 千春 
録音:今井 友樹 / 川上 拓也
音楽:山村 誠一(スティールパン他)
音楽編集:山田やーそ裕(7 弦ギター)
ナレーション:原田 美枝子  
音声ガイドナレーション:笠井信輔 
ポスター画:田島征三
パラブラ第一回配給作品 

高知県いの町吾北地区周辺で、土佐和紙の原料・楮をめぐる山里の人びとの暮らしを四季を通して撮影。日本が誇る和紙の文化を通して私たちの日常を見直してみたいとの思いから製作したドキュメンタリー作品。

土佐和紙の原料となる楮(こうぞ)をめぐる山里の人々の暮らしを記録したドキュメンタリー。高知県のローカルな方言である「へぐる」は、特殊な包丁で土佐楮の皮から表皮部分を削ぎ取る作業のことを指す。高知県の山あいの町で楮を丁寧にへぐっていく90代の女性たち。楮の外皮を何度も削り落とし、繊維だけを残していく。そのようにすると、楮は1000年以上の耐久性を持つといわれる和紙へと生まれ変わっていく。その手わざや佇まいから、世代を越えて受け継がれてきた山里の暮らしが見えてくる。手間もかかり大量生産もできず、継承者もいないことからやがて失われてしまうのではないかと言われている「へぐりの作業」をはじめ、楮を栽培し、紙を漉いてきた人たちの暮らし。そして和紙の文化を通して、効率性や利便性を求め余裕が失われてしまった現代社会の日常を見つめ直す。
今井友樹監督は 2014 年公開の『鳥の道を超えて』を始め、数多くのドキュメンタリー作品に携わっている。

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和紙を作る体験工房で紙漉きの体験をしたことがある。「綿のような白い繊維」が水に浮いていて、それを巻きすを大きくしたような簀桁(すけた)というものを何度もくぐらせ、その白いものが積み重なり厚みが出たところで乾燥し、それが和紙になった。その「綿のような白い繊維」が楮(こうぞ)だったのだろう。和紙になる原料には楮、みつまた、雁皮(ガンピ)などがあるそうだけど、この吾北地区周辺では楮を植え、それを収穫してきた。その収穫した楮を蒸し、皮を剥ぐ作業を、この地区の人たちは共同でしている。綿のような繊維になるまでの工程がこんなに大変ということを、この作品で知った。楮は90年も100年も樹齢があるのだということも。そして毎年枝を切って、木そのものは丸坊主になってしまい、また春になると枝が出て来て、冬になると枝を切る。
この作品では、村の衆が出てくるけど、楮の枝を刈ったり、蒸したり、へぐったり、川で洗ったり、干したり、それぞれの作業に来る人達は15,6人くらい。ほとんどが60代以上? 中には90歳を超えた方もいて、元気に作業をしている姿が心強かったけど、将来のことを考えると、もっと若い世代が参加しなくては将来にわたって継続していくのは厳しいかも。もっともこの山村の地区に住んでいる人たちの中に若い人はほとんどいないのかもしれない。
和紙は障子や表具用などに使われてきたが、これらの需要は減ってきているので、最近は版画用、公文書修復用などに使われることが多い。ここの楮で作られた和紙は高品質で、版画用などに使われていて好評らしい。
そして、これまでずっと謎だったことが解けた。山里や山村に行くと、低木でゴツゴツした木が並んで生えていて、春から夏にかけて2mくらいに枝が伸びる木があって、これは何だろうなと思っていたのだけど、それが楮だった。日本全国、あちこち行ったけど、この「木」はあちこちにあった。ということは、楮の生産地というのは、かなりあったということなのでしょう。今井友樹監督は 『鳥の道を超えて』でも、地方に伝わるカスミ網を使った猟を描いていましたが、貴重な地方文化の記録を続けているということに敬意を表さずにいられない(暁)。
(暁)。


『明日をへぐる』公式HP
2021年製作/73分/日本
配給:Palabra、シグロ
posted by akemi at 08:55| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月11日

アイダよ、何処へ?  原題:Quo Vadis, Aida?

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(C)2020 Deblokada / coop99 filmproduktion / Digital Cube / N279 / Razor Film / ExtremeEmotions / Indie Prod / Tordenfilm / TRT / ZDF arte

監督・脚本:ヤスミラ・ジュバニッチ(『サラエボの花』『サラエボ、希望の街角』)
出演:ヤスナ・ジュリチッチ、イズディン・バイロヴィッチ

ボスニア「スレブレニツァの虐殺」を忘れないで!

ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争末期の1995年7月11日。ボスニア東部、イスラーム教徒であるボシュニャク人の街スレブレニツァがセルビア人勢力の侵攻によって陥落する。スレブレニツァは国連によって攻撃してはならない安全地帯に指定されており、国連保護軍のオランダ部隊によって防護されていた。国連保護軍の通訳として働くボシュニャク人の元教師アイダは、国連施設の周囲を埋め尽くす避難民を見て驚く。なんとか施設内に入れて貰おうと押し寄せる人々。アイダは、夫と二人の息子を探し出し、強引に施設内に招き入れる。町を支配したムラディッチ将軍率いるセルビア人勢力は、避難民を男女に分け、移送した男たちの処刑を開始する・・・

多民族国家ユーゴスラビアが、絶大なカリスマ性のあったチトー大統領亡きあと、民族主義の台頭により1991年ついに紛争勃発。スロベニア、マケドニア、クロアチアと次々に独立していき、ボスニア・ヘルツェゴヴィナも1992年に独立しましたが、内戦は1995年末まで続きました。
本作は、内戦末期に起こったおぞましい「スレブレニツァの虐殺」を描いた物語。
ボスニア紛争当時、モスタールの石橋が破壊されたのに続き、ショックを受けたのが、この「スレブレニツァの虐殺」でした。
2020年1月12-13日に立教大学で開催されたシンポジウム「25年目のスレブレニツァ - ジェノサイド後の社会の相克と余波、集合的記憶」に参加させていただき、事件の凄まじさをあらためて知りました。
事件の概要を、シンポジウムの成果をもとに編んだ論文集『スレブレニツァ・ジェノサイド:25年目の教訓と課題』のはしがきより抜粋します。

ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争末期の1995年7月、国際連合の安全地帯に指定され、国連防護軍(UNPROFOR)のオランダ部隊によって防御されていた、ボスニア東部の人口4万あまりのムスリム人の飛び地スレブレニツァは、ボスニアのセルビア軍の攻撃により陥落した。続く約10日間で、自力でスレブレニツァを脱出し、ムスリム政府軍支配地を目指した総勢約15,000人のムスリム男性の内、7,000~8,000人が行方不明となった。このスレブレニツァ事件は、「第二次世界大戦以来の欧州で最悪の虐殺」と称され、旧ユーゴスラヴィア国際刑事裁判所(ICTY)で唯一「ジェノサイド(集団殺害)」と認定された象徴的な事件である。
https://osayukie.com/archives/4512


戦争が終わって、アイダがある家を訪れます。靴を脱ごうとして、十字架を胸にぶらさげた女性に「靴のままどうぞ」と通されたところで、かつてアイダたちが家族と共に暮らしていた家だと気づきました。土足であがることのなかった家・・・ 写真など、わずかな家族の私物は保存されていたものの、この地を占領した異教徒の家族が勝手に住みついているのです。それは、かつて、ヨーロッパではユダヤ人を追い出したあとの家、イスラエルとなったパレスチナでは、パレスチナ人を追い出したあとの家が辿った運命と同じ。人間は、なんと無神経で残酷なのでしょう。
アイダは、自分の家に住み着いている女性を追い出すこともできるのに、ただただ微笑むだけ。赦すことが平穏をもたらすこともちゃんと心得ているのです。

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© 2020 Deblokada / coop99 filmproduktion /Digital Cube / N279 / Razor Film / Extreme Emotions / Indie Prod / Tordenfilm / TRT / ZDF arte
ヤスミラ・ジュバニッチ監督(写真上)は、長編デビュー作『サラエボの花』(2006年)で、民族浄化の名のもとに、セルビア人がモスレム人女性に無理矢理子供を生ませたことを背景に母と娘の物語を紡ぎました。
また、『サラエボ、希望の街角』(2010年)では、結婚を前提に同棲中の恋人が過激な解釈をするイスラーム組織に傾倒してしまい戸惑うモスレム女性を描いています。
いずれも、普通の人々が、歴史のうねりの中で翻弄される姿を丁寧に語っています。
『アイダよ、何処へ?』公式サイトの監督インタビューを是非お読みください。
原題『Quo Vadis, Aida?』に込めた思いも語っています。
悲劇が繰り返されないことを願って映画を作った監督の気持ちが、世の権力者に伝わることを祈るばかりです。(咲)


第93回アカデミー賞 国際長編映画賞 ノミネート
第77回ヴェネチア国際映画祭 コンペティション部門 正式出品
第45回トロント国際映画祭 正式出品
第50回ロッテルダム国際映画祭 観客賞受賞

2020年/ボスニア・ヘルツェゴヴィナ・オーストリア・ルーマニア・オランダ・ドイツ・ポーランド・フランス・ノルウェー・トルコ合作映画/ボスニア語・セルビア語・英語他/101分
配給:アルバトロス・フィルム
公式サイト:https://aida-movie.com/
★2021年9月17日(金)Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他にて全国順次公開




posted by sakiko at 02:30| Comment(0) | ボスニア・ヘルツェゴヴィナ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月09日

君は永遠にそいつらより若い

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監督・脚本:吉野竜平
原作:津村記久子「君は永遠にそいつらより若い」
撮影:平井英二郎
音楽:加藤久貴
出演:佐久間由衣(ホリガイ/堀貝 佐世)、奈緒(イノギ/猪乃木 楠子)、小日向星一(ヨシザキ)、笠松将(ホミネ)、葵揚(ヤスダ)、森田想(オカノ)、宇野祥平(エトウ)、馬渕英里何(スギタ)、坂田聡(ヤギ)

ホリガイこと堀貝 佐世22歳。長身で処女、いや女の童貞といいたいホリガイ。変わった女の子と思われているが、それほど自覚はない。卒業が近づき就職先も決まって、バイトと学校に行くほかすることもなくぐだぐだ過ごしている。同じ大学なのにそれまで関わることのなかったイノギとひょんなことで話すようになった。一つ年下で一人住まいのイノギの家をときどき訪ねている。ある晩ゼミの友達と飲んだ後、ヨシザキ、ホミネと一緒に帰った。しばらくしてホミネが亡くなったことをヨシザキから知らされる。

器用に世の中を渡ったり、折り合いをつけたりするのが難しい…とほとんどの人がそう思っているかもしれません。時間は待ってくれないので、いやおうなく年だけ増えていってしまうんです。はあ。
福祉の仕事を選んだホリガイの動機にうっと胸をつかれました。世の中には大小の悪意が潜んでいます。そんなものに当たらずに人生歩き通せたら、よかったねと思います。残念なことに当たってしまうこともあります。自分は選んでいないのに。ホリガイは見なかったことにせず、自分がやれることをやります。なんだかあぶなっかしいし、自分も傷つきそうなのに。
原作の旧題は「マンイーター」でしたが、単行本化するときに変えたのだそうです。人を喰らおうと大口を開けている何かを連想するより「君は永遠にそいつらより若い」と言ってもらえるほうがいいよね。佐久間由衣さん、奈緒さん綺麗です。すれ違ったら絶対二度見しそう。(白)


2020年/日本/カラー/118分
配給:atemo
(C)「君は永遠にそいつらより若い」製作委員会
https://www.kimiwaka.com/
★2021年9月17日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 14:53| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

由宇子の天秤

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脚本・監督・編集:春本雄二郎
プロデューサー:春本雄二郎、松島哲也、片渕須直
撮影:野口健司 照明:根本伸一
出演:瀧内公美(木下由宇子)、河合優実(小畑萌)、梅田誠弘(小畑哲也)、松浦祐也(長谷部仁)、和田光沙(矢野志帆)、池田良(小林医師)、木村知貴(池田)、前原滉、永瀬未留、河野宏紀、根矢涼香、川瀬陽太(富山宏紀)、丘みつ子(矢野登志子)、光石研(木下政志)

ドキュメンタリーディレクターの由宇子は、3年前の女子高生いじめ自殺事件を追っていた。テレビ局と衝突を繰り返しながらも、真相に迫っている手ごたえを感じていた。その傍ら、父の経営している学習塾を手伝い、生徒の相談役としても信頼されている。
ある日父の隠された事実を知り、大きな衝撃を受ける。真実を追い続けてきた由宇子がその仕事と、一人の人間としての自分との間で揺れ、迷い苦しむことになった。

2018年『かぞくへ』の春本雄二郎監督、3年ぶりの新作です。前作の何倍ものキャストが登場、由宇子を中心にメディアと個人、先生と生徒、父と娘、母と息子など、何家族ものエピソードが展開していきます。複雑な人間関係が次々と影響を及ぼしていき、物語は思わぬ方向へ進んでいきます。緻密な構成の脚本を作りあげるのは、さぞ大変だったことでしょう。登場人物の謎も物語の余白、観た人が想像で膨らませることができます。
由宇子に限らず人生は選択の連続で、あれかこれか迷い、選び抜いたところで後々まで結果が出ないこともあります。正しかったのかどうかも、時と場合で違ってしまいます。それでも生きていかねばならず、せめて身軽でいたいと思うこのごろ。
コロナ禍で一般公開が遅れましたが、第71回ベルリン国際映画祭パノラマ部門出品ほか、国内外の映画祭ですでに上映&受賞多数。(白)


☆春本雄二郎監督にお話を伺いました。こちらです。

ドキュメンタリーディレクターとして女子高生いじめ自殺事件の真相を追う由宇子は、マスコミの役割など、世に問う問題に光を当てることに信念を持ち、テレビ局の方針と衝突することもいとわずに仕事をしている。一体何が真実なのか。正しさとは何なのか。情報化社会が抱える問題や矛盾を真正面からあぶり出そうとすればするほど、制作サイドとぶつかってしまう。
社会においての矛盾を解き明かすことが正義と思いつつ、自分の大切なものを守りぬくことで、自分の在り方の矛盾を生み、選択をせまられる。ラストの思わぬ展開に、観客は驚くだろう。正義感溢れる女性ディレクターが思わぬ窮地に追い込まれていく様子を見事に演じきったのは瀧内公美。圧倒的存在感を感じた(暁)。


第21回東京フィルメックス2020
学生審査員賞:『由宇子の天秤』春本雄二郎

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春本雄二郎監督 第21回東京フィルメックス授賞式にて 撮影:宮崎暁美


*シネマジャーナルHP 映画祭報告
第21回東京フィルメックス2020 授賞式
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/478502965.html

2020/日本/カラー/5.1ch/1:2.35/DCP/152分
配給:ビターズ・エンド
(c)2020 映画工房春組 合同会社
https://bitters.co.jp/tenbin/
★2021年9月17日(金)渋谷ユーロスペースほか全国順次ロードショー!
posted by shiraishi at 01:42| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月07日

偽りの隣人 ある諜報員の告白(英語題:BEST FRIEND)

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監督:イ・ファンギョン(『角砂糖』『7番房の奇跡』
出演:チョン・ウ(デグォン)、オ・ダルス(イ・ウィシク)、キム・ヒウォン(キム室長)、キム・ビョンチョル(ドンシク)、チョ・ヒョンチョル(ヨンチョル)、イ・ユビ(娘ウンジン)、チ・スンヒョン(ドンヒョク)、ヨム・ヘラン(家政婦)、キム・ソンギョン(ウィシク妻)

1985年8月 軍事独裁政権下の韓国。次期大統領選を控え、民主化運動が激しさを増す中、野党総裁イ・ウィシクが3年ぶりに帰国した。空港に到着した直後、国家安全政策部のキム室長の指示でウィシクが拉致される。キム室長はウィシクを共産主義者に仕立て、国外追放する計画だった。野党の面々と会えないまま、ウィシクは自宅に家族とともに軟禁、その動向は隣家の盗聴チームにより監視されている。愛国心の強いデグォンが新たにチーム長として送り込まれた。デグォンは愚直に盗聴に励んでいたが、屋上でウィシクと顔を合わせてしまう。取り繕うデグォンは、隣人として暮らしながら盗聴を続けるうちに、ウィシクの人となりに感銘を受けていく。

国民を第一に考えるウィシク総裁にオ・ダルス、良き家庭人でもあるトップを演じて適役です。3バカのような盗聴チームはコメディ寄りなので、韓国の政治モノにしては親しみやすくなっています。ほのぼのホームドラマ的な部分もあり、ヨム・ヘランの家政婦さん(『野球少女』でのきついお母さん)との攻防もおかしい。
それもキム・ヒウォン演じる室長がキレるまでですが、そこからは容赦ありません。韓国の俳優さん憎まれ役もうまいですよね。緊張が高まる後半のカーチェイスにドキドキ、韓国の歴史に寄せつつ(同じではありません)、喜怒哀楽全部盛りのエンタメに仕上げています。愛国心が人一倍強く、直情男だったデグォンがウィシクに良い影響を受けていきます。それがちょっとした台詞に現れて胸が温まりました。(白)


こんな国民思いの政治家がいたらいいなという言葉がいくつも出てきました。ほのぼのとしたオ・ダルスが演じてこそでしょうか。韓国で銭湯といえばバナナミルクですが、これも笑えて泣ける場面になっています。
そして、隣家に住み込む諜報員デグォン。チョン・ウが諜報員らしくない人情溢れる人物を体現しています。変態男を装っての活劇には大爆笑。主役を張れるようになったチョン・ウの姿を嬉しく拝見。
2013年の第26回東京国際映画祭で出演作の『レッド・ファミリー』が上映されて来日しました。幸せな家族を装って暮らす北朝鮮の工作員という役どころでした。これもコメディー仕立て。
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記者会見にて 右からキム・ギドク(脚本・製作)、イ・ジュヒョン監督、女優キム・ユミ、男優チョン・ウ、女優パク・ソヨン
この時の共演が縁でチョン・ウはキム・ユミとご結婚♪

ちょうどこの頃観ていたドラマ「最高です! スンシンちゃん」(2013年)で、ムショ帰りのパン屋さんを演じて好感度大だったチョン・ウ。記者会見から退場する時にそばを通られたので、思わず「イ・スンシン!」と声をかけたら、にっこり笑って握手してくださいました。懐かしい思い出です。(咲)



2020年/韓国/カラー/シネスコ/130分
配給:アルバトロス・フィルム
提供:ニューセレクト
c 2020 LittleBig Pictures All Rights Reserved.  
itsuwari-rinjin.com
★2021年9月17日(金)シネマート新宿ほか全国公開!
posted by shiraishi at 19:43| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月04日

浜の朝日の嘘つきどもと

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監督・脚本:タナダユキ
撮影:増田優治
音楽:加藤久貴
主題歌:Hakubi
出演:高畑充希(茂木莉子/浜野あさひ)、柳家喬太郎(森田保造)、大久保佳代子(田中茉莉子)、甲本雅裕(岡本貞雄)、佐野弘樹(チャン・グォッ・バオ)、神尾佑(市川和雄)、竹原ピストル(川島健二)、光石研(浜野巳喜男)、吉行和子(松山秀子)

福島県南相馬の古い映画館 朝日座。住民たちに長い間親しまれてきたが、経営が傾き閉館することになった。支配人の森田が解体前に残ったフィルムを焼却処分している。急に現れた女性は水をかけて火を消し、朝日座がなくなるのは困ると言う。女性は茂木莉子(もぎりこ)と名乗り、どうしても映画館を立て直したいと訴える。莉子はこの町に住み始め、住民を巻き込んで映画館の存続のために奔走し、森田も熱意に動かされていく。
莉子が朝日座にこだわるのにはわけがあった。高校生だった浜野あさひ(莉子)に映画の楽しさを教えてくれたのは、数学教師の田中茉莉子先生。居場所のなかったあさひを受け入れ、見守ってくれた大切な先生との約束を果たしにきたのだった。

福島中央テレビ開局50周年記念作品として、2020年10月に放映されたテレビドラマ版の前日譚。タナダユキ監督のオリジナル脚本。
実在の老舗の映画館を舞台に「映画愛」と「映画館愛」に人情をたっぷり盛り込んだ作品となりました。高畑充希さんが孤独な高校生役から、キャリアウーマンまで演じています。田中先生があさひに映画の蘊蓄を語り、いっしょに映画を観ては涙し、あさひは田中先生の想いを受け継ごうとします。コロナ禍で映画配給の仕事がなくなったという説明があり、映画館の窮状と同じくリアルな「今」を感じました。
朝日座の森田支配人を、監督がぜひにと口説き落とした柳家喬太郎師匠。震災、コロナと続く辛い状況の中でも生き抜く庶民代表のような人物です。あさひの恩師・惚れっぽくて涙もろい田中先生と外国人実習生のバオくん、不動産屋の岡本らとともに、人間味を加えて映画を温かくしています。古今東西の映画の名作も挿入されていますので、どの映画の1シーンか考えるのも一興。
2020年7~8月に南相馬で撮影され、ひとあし早くご当地で公開されています。(白)


2021年/日本/カラー/シネスコ/114分
配給:ポニーキャニオン
(C)2021「浜の朝日と嘘つきどもと」製作委員会
https://hamano-asahi.jp/
★2021年9月10日(金)ロードショー

posted by shiraishi at 00:45| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月03日

先生、私の隣に座っていただけませんか?

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監督・脚本:堀江貴大
撮影:平野礼
音楽:渡邊琢磨
劇中漫画:アラタアキ、鳥飼茜
主題歌:eill「プラスティック・ラブ」
出演:黒木華(早川佐和子)、柄本佑(早川俊夫)、金子大地(新谷歩)、奈緒(桜田千佳)、風吹ジュン(下條真由美)

漫画家夫婦の早川俊夫と佐和子。休筆して何年にもなる俊夫は、妻の佐和子の作品のペン入れを手伝っている。結婚5年目の夏、佐和子は担当編集者の桜田千佳と俊夫の不倫に気づいてしまった。
佐和子の母が交通事故で怪我をしたため、佐和子と俊夫はしばらく実家で暮らすことにした。俊夫に勧められて運転免許を取るために自動車教習所に通うことになった。送り迎えの車中で、佐和子の新作のテーマが「不倫」と聞いて慌てた俊夫は、佐和子が書き始めた漫画のネームを盗み見る。そこには自分たちそっくりの夫婦が登場し、俊夫と千佳の不倫シーンまである。そして佐和子と教習所の若い教官・新谷との出逢いも逐一描かれていた。この漫画は真実なのか?創作なのか?

実生活と佐和子の描く漫画のネーム(ざっと描かれた原稿)が交互に出てきます。それぞれの登場人物の虚々実々のかけひきが面白く、中でも原稿を盗み見する俊夫のあせりっぷりがなんともおかしい。自分の不倫はあまり自覚せず、佐和子への疑いは膨らんでうろたえるばかり。対する佐和子は視線の動きや表情で、強い意志を感じさせます。新谷に出逢って心惹かれていく佐和子が日に日にお洒落になっていくのにも注目を。演じる黒木華さん、柄本佑さんのこまやかな演技。見守る母の風吹ジュンさんの懐の深さ、奈緒さんの千佳はあっけらかんと面白がり、真面目な顔を崩さない金子大地さんの新谷、とそれぞれに振られたキャラクターが生き生きしています。ラストはそうきたか、と納得。笑えて、共感して、謎も楽しめる作品でした。
白い紙にサラサラと線が引かれ、漫画が生まれていくシーンがたくさん挟み込まれていて、釘付けになりました。今の子供たちがyoutuberに憧れるように、昔は漫画家になりたかったんです~。早々に諦めましたが。現役の漫画家のアラタアキさん、鳥飼茜さんが劇中の漫画を描いています。
オリジナル作品の企画コンテスト「TSUTAYACREATORS' PROGRAM FILM」2018年の準グランプリ作品。(白)


『先生、私の隣に座っていただけませんか?』というタイトルに、先生は、てっきり教習所の控え目で素敵な先生のことねと思って観ていたら、それだけではなかったことがわかって、そういうことだったのね!と、唸りました。そう来たか~というラストも素敵です♪ (咲)

2021年/日本/カラー/シネスコ/119分
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2021「先生、私の隣に座っていただけませんか?」製作委員会
https://www.phantom-film.com/watatona/
★2021年9月10日(金)ロードショー

posted by shiraishi at 23:18| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ミッドナイト・トラベラー  原題:Midnight Traveler

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監督:ハッサン・ファジリ
出演:ナルギス・ファジリ、ザフラ・ファジリ、ファティマ・フサイニ、ハッサン・ファジリ
プロデューサー:エムリー・マフダヴィアン、スー・キム
共同プロデューサー:ファティマ・フサイニ、アフマド・イマミ
脚本・編集:エムリー・マフダヴィアン
撮影:ナルギス・ファジリ、ザフラ・ファジリ、ファティマ・フサイニ、ハッサン・ファジリ
音楽:グレッチェン・ジュード

アフガニスタンから逃れて5600km
タリバンに死刑宣告を受けた監督一家の長い旅


ハサン・ファジリ監督は、2015年に国営放送のために元タリバンで武器を捨てた平和主義者の男のドキュメンタリー「Peace in Afghanistan」を制作。タリバンの怒りを買い、出演者が殺される。監督も命を狙われていると知り、亡命を決意。妻と二人の娘を連れ、国境を越え、イランへ。そこからトルコ、ブルガリア、セルビア、ハンガリーと、アフガニスタンを出て3年目、ようやくEUに入ることを認められる・・・

冒頭、本作は携帯電話3台で撮影したと掲げられます。国を出る決意をした時には、安住の地を見つけられるまで、どれ程の時間がかかるか全くの未知数。密航斡旋業者に騙されることは日常茶飯事。娘を見失って暗澹たる思いになった日々もあります。一家のリアルな記録からは、国や場所による難民への対応の違いも見て取れます。

映画のタイトル『ミッドナイト・トラベラー』は、映画の冒頭で長女のナルギスが読んでいる本「エゴ・モンスター」の巻の名前から取ったもの。著者サイード・バホダイン・マジローは、政治家、民族誌学者、作家であり、暗殺されるまでの晩年を難民として暮らしたアフガニスタンの知識人です。
監督一家は、ダリ語、それもペルシア語に近い訛りのない綺麗なダリ語を話していて、知識人だとわかります。パシュトゥン族が主のタリバンとは民族も言葉も違います。国境を越える時に、ほかの男たちの中に溶け込むようにシャルワール・カミーズを着た監督に、娘たちが「パパの服、タリバンみたいで嫌い」という場面があります。その娘たちもまた、目立たないようにブルカですっぽり全身を覆うことになるのですが。

本作の製作をプロデューサー・脚本・編集として支えたエムリー・マフダヴィアンは、ペルシア語話者で、中央アジアの映画とメディアに関する博士号を持つ方。パソコンを持ち出せなかったファジリ監督から、撮影映像を記録したSDカードを各国協力者経由、アメリカにいるエムリーに届いたのを確認し、メモリーを消去して撮影を続けるという綱渡りで本作は出来あがりました。

ジャパンプレミアとして上映されたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019で、審査員特別賞を受賞しましたが、ハサン・ファジリ監督はドイツで難民申請が受理され手続き中で出国できず、来日が叶いませんでした。その後、ドイツの永住許可を得たとのこと。
一家そろってドイツに到達し、永住権まで得ることができたのは、ほんとうに幸運なケースだと思います。移動途中で命を落としたり、家族が離散したりすることも多々あるでしょう。危険を冒してまで、故国を離れなければいけない人たちが世界の各地で後を絶たないことに胸が痛みます。誰しも、難民などと呼ばれたくないはずです。日本での公開を前にハッサン・ファジリ監督から届いたメッセージが、心に響きます。

★ハッサン・ファジリ監督から届いたメッセージ★
「私たちも母国を出たいわけでも、捨てたいわけでもない。
私たち、難民はいつも厄介者のような目でみられてしまう。しかし、私たちも人間です。
悲しみも、喜びも、希望もある。
私たちは食事のため、水のために、難民になっているわけではない。
望んで今の状態にあるわけではなく、私たちは仕方がなく、難民になってしまった。
本来は私たちも、アナタたちと同じような普通の人間なんです。
難民もひとりの人間。私たちの痛みも苦しみも理解をしてほしい。」


本作の公開日は、2001年9月11日の同時多発テロから20年に当たる日であり、アメリカ軍完全撤退の期限である日と、かなり以前に決められたのですが、アメリカ軍撤退に伴うタリバン勢力の拡大は予想以上に早く、8月16日に首都カーブルを制圧してしまいました。武力で民主主義を植え付けようとしたアメリカが出ていくことは歓迎ですが、今回もまた、土足でよその国に上がり込んで、後のことを考えず撤退することに憤りを感じます。部族社会の根強いアフガニスタン。女性隔離の慣習を持つパシュトゥンが国家権力を握ると、女性にとって、また暗黒の時代が訪れるのではないかと懸念します。さらなる難民が増えないことを願うばかりです。(咲)


この作品を初めて観たのは2019年の山形国際ドキュメンタリー映画祭。そしてこの作品は「優秀賞」を受賞した。しかし、映画祭へのハッサン・ファジリ監督の参加はなかった。監督と家族はまだ、ドイツの永住許可を獲得できてなくて、海外への移動はまだできなかったのだ。
しかし、この映画を2年前に観た時と今はアフガニスタンの状況が変わってしまった。2年前はタリバンがまさか復権するとは思ってもみなかったのに、この8月にアフガニスタンはまたタリバンに支配されてしまった。この国はイスラムの教義とか聖戦とかいう前に、男たちの権力争い、勢力争いに振り回され、力による支配が続いている。これまでの政権はアメリカの傀儡政権だったのだろうし、世界からの支援も、結局利権を獲得した層だけが得をしていたのだろうけど、それでも女性にとっては、タリバンの時代より暮らしやすかっただろう。しかし、またタリバンが支配することになってどうなってしまうのだろう。以前のタリバンの時代よりは女性の人権を考えると言っているらしいが、それにしたってたかが知れていると思う。
監督の家族たちは、約3年の月日を経てドイツの永住権を得た。しかし、ハッサン監督が「母国を出たいわけでも、捨てたいわけでもない。望んで今の状態にあるわけではなく、私たちは仕方がなく難民になってしまった」というように好き好んで難民になったわけではない。いつか祖国に帰りたいという気持ちはあるのだろうけど、この状態ではさらに帰りにくくなってしまった。こういう作品を観ると、私たちにできることはと思ってしまう(暁)。


参照
山形国際ドキュメンタリー映画祭2019 授賞式レポート
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/470947183.html

2019 年/87 分/アメリカ・カタール・カナダ・イギリス/ドキュメンタリー
配給:ユナイテッドピープル
公式サイト:https://unitedpeople.jp/midnight/
★2021年9月11日(土)シアター・イメージフォーラム他全国順次ロードショー


◆【緊急開催】アフガニスタンの今とこれから。
REALs理事長 瀬谷ルミ子さんに聞く。
日時:2021年9月7日(火) 19時から20時
場所:オンライン(Zoomミーティング)
主催:ユナイテッドピープル
協力:認定NPO法人REALs
料金:1000円/人
▼詳細・チケット https://peatix.com/event/2894439/view


◆トークイベント
9月11日(土)13:00-上映後、安田純平さん/ジャーナリスト
9月12日(日)13:00-上映後、綿井健陽さん/ジャーナリスト・映画監督
※聞き手、ユナイテッドピープル代表関根健次


posted by sakiko at 03:49| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする