2021年08月15日

ドライブ・マイ・カー

drive my car.jpg

(C)2021「ドライブ・マイ・カー」製作委員会

監督:濱口竜介
脚本:濱口竜介 大江崇允
音楽:石橋英子
原作:村上春樹「ドライブ・マイ・カー」(短編小説集「女のいない男たち」所収/文春文庫刊)
出演:
西島秀俊
三浦透子 霧島れいか
パク・ユリム ジン・デヨン ソニア・ユアン ペリー・ディゾン アン・フィテ 安部聡子
岡田将生

舞台俳優で演出家の家福(西島秀俊)と、妻で脚本家の音(霧島れいか)はお互いを補完しあいながら満ち足りた日々を送っていた。ウラジオストクの演劇祭に招聘された家福は成田空港に向かうが、フライトが欠航になり自宅に引き返す。音が男と寝ているのを目撃してしまい、そっと家を後にする。
ある日、出がけに音が「今晩帰ったら話したいことがあるの」という。帰宅すると、音は帰らぬ人になっていた。彼女は何を話したかったのか・・・
それから2年後、家福は広島国際演劇祭から、チェーホフの「ワーニャ伯父さん」の演出を依頼され、東京から広島に向けて愛車サーブを走らせる。音の生前から準備していた企画で、音は「ワーニャ伯父さん」の練習用に台詞をカセットテープに吹き込んでくれていた。車を走らせながら、カセットを聴きながら台詞を覚えるのが家福のスタイルなのだ。広島での宿も、そのために1時間程離れたところに取ってもらっている。だが、広島に着くと、安全のため、車は自分で運転しないよう、専属ドライバーに依頼していると、渡利みさき(三浦透子)を紹介される。みさきの運転で往復する日々。寡黙なみさきだが、やがてお互いの過去を明かし、家福はそれまで目を背けてきたあることに気づかされていく・・・

村上春樹の妻を失った男の喪失と希望を綴った短編「ドライブ・マイ・カー」に惚れ込み映画化を熱望した濱口竜介監督が自ら脚本も手掛けた本作。カンヌ国際映画祭で日本映画としては史上初となる脚本賞を受賞した際のスピーチで、「まずは、原作を書いた村上春樹さんに感謝」と述べていましたが、原作のエッセンスを失わないように気遣いながら、大きく膨らませた物語になっています。
『ハッピーアワー』(2015年)の317分には、遠く及びませんが、179分という長尺。覚悟して観たのですが、思いのほか長く感じませんでした。大好きな西島秀俊さんが、ほぼ出ずっぱりということもありますが、それだけではない不思議。
不思議といえば、劇中劇「ワーニャ伯父さん」には、韓国・台湾・フィリピン・インドネシア・ドイツ・マレーシアからオーディションで選ばれた海外キャストが参加していて、それぞれが自国語で台詞を語るのです。通訳を介さず、話は続いていきます。 
グローバルなのは劇中劇だけでなく、映画の最後は、韓国。いろいろな余韻を残してくれる作品です。(咲)


カンヌ映画祭で4冠!のニュースを聞いて以来、原作も「ワーニャ伯父さん」も読み、作品を観られるのを楽しみにしていました。愛妻の浮気を知りながら追求もしない家福は大人なのか、臆病なのか? 演じるのはいつも端正なたたずまいの西島秀俊さん。反対に思ったままに話し、動くのが高槻(岡田将生)です。この2人が妻の死の2年後「ワーニャ伯父さん」で再会、演出家対俳優の静かなバトルを開始します。寡黙なドライバーのみさき(三浦透子)は、若いのに何を経験してきたの?と勘繰りたくなる落ち着きようで、只者ではない感ありありです。各地の風景とそれぞれの登場人物の心情を追っているうちに3時間は過ぎていました。
本読みで、家福が感情を入れないように指導する場面が興味深かったのですが、これは濱口竜介監督の演出方法なのだと知って「へぇー」。ためて発酵させて本番で一気に出るのでしょうか?自分の台詞に感情を入れないで繰り返すことで、全体の流れとほかの台詞も頭に入ります。
劇中劇の多言語の台詞にもまた「ほぉー」と感心しきりでしたが、韓国手話の動きや表情に見とれました。原作は短いのに、これだけの長尺の作品にできる濱口監督の手腕と、その演出にしっかりとくらいついていく俳優陣の力が織りなした作品でした。(白)


2021年/日本/179分
配給:ビターズ・エンド
公式サイト:http://dmc.bitters.co.jp/
★2021年8月20日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

posted by sakiko at 20:18| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

祈り 幻に長崎を想う刻(とき)

2021年8月20日(金)より、シネ・リーブル池袋他全国ロードショー!
8月13日(金)より、ユナイテッド・シネマ長崎にて先行公開 劇場情報 

ポスター「祈り ―幻に長崎を想う刻―」 _R_R.jpg
(C)2021 Kムーブ/サクラプロジェクト

監督:松村克弥
原作:田中千禾夫(たなかちかお)
脚本:渡辺善則 松村克弥 亀和夫
エグゼクティブプロデューサー : 中込重秋 矢敷和男 中原大幾(Motki) 
撮影監督 : 髙間賢治J.S.C.  
美術 : 安藤 篤 
音楽 : 谷川賢作 
特殊メイク : 飯田文江 
VFX :渡辺輝重 
編集 :川島章正 
助監督:山本優子
出演
鹿:高島礼子
忍:黒谷友香
一ノ瀬:村田雄浩
被爆マリア像の声:美輪明宏

失われつつある戦争の肉声を記憶しつづけるために……。
岸田演劇賞、芸術選奨文部大臣賞受賞。
現代演劇の金字塔「マリアの首」を映画化

人類史上、実際の武器として使用された原子力爆弾は、広島、長崎に投下された。これは原爆投下地となった長崎で、復興期を生き抜いた人々と被爆マリア像の数奇な運命をめぐる戦後史である。

1945年8月9日11時2分、8月6日の広島に次ぐ二発目の原子力爆弾が長崎市に投下され、人口24万人のうち約7万4000人が一瞬にして命を奪われた。東洋一の大聖堂といわれた浦上天主堂も被爆し、外壁の一部を残して倒壊。聖母マリア像も崩壊。それから12年の時が過ぎ、1957年(昭和32年)の冬。戦争の爪痕が生々しく残る浦上天主堂跡には、誰も近寄るものもない瓦礫のなかにひっそりと埋もれるように崩壊した「被爆マリア像」が転がっている。そして、そのマリア像を人知れず運び出している2人の女性がいた。カトリック信徒の鹿と忍を首謀者とする一味がある目的で倒壊した浦上天主堂跡から被爆したマリア像人を盗み出していたのである。

1959年に発表され、第6回岸田演劇賞、第10回芸術選奨文部大臣賞を受賞した田中千禾夫の戯曲「マリアの首 幻に長崎を想う曲」を映画化したもの。鹿役を高島礼子、忍役を黒谷友香が演じ、田辺誠一、金児憲史、村田雄浩、寺田農、柄本明、温水洋一ら演技派俳優陣が脇を固める。またマリア像の声を美輪明宏が演じている。主題歌は長崎市出身のさだまさしが「祈り」(アルバム「新自分風土記Ⅰ〜望郷編〜」より)を提供。曲中のコーラスパートは、再建された浦上天主堂で長崎市民コーラスの方々の協力を得て収録されている。監督は『サクラ花─桜花最期の特攻』『ある町の高い煙突』の松村克弥。

終戦から76年を経た現在、太平洋戦争のことや、原爆のことを語れる人たちはどんどん少なくなっている。この時代に、戦争の愚挙や悔恨を後世に語り継ぐために、戯曲「マリアの首 幻に長崎を想う曲」は、『祈り ─幻に長崎を想う刻(とき)─』という映画として新たに生命を吹き込まれた。
戦後12年がたち、復興の兆しが見えはじめた長崎で、日米国交の妨げとなる浦上天主堂の残骸を撤去するか、被爆遺構として保存するかで、市民と行政のあいだで議論を呼んでいた。浦上天主堂の保存を巡って議会が紛糾しているなか、「被爆マリア像」の残骸を持ち出した人々は、なんとかこの像を再建したいと考えていた。
廃墟と化した浦上天主堂に置き去りにされた、崩壊された「被爆マリア像」の姿と、戦後の混乱期の日本の街の姿と人々の思いを表現した作品だった(暁)。


『祈り 幻に長崎を想う刻(とき)』公式HP
配給 : ラビットハウス/Kムーブ 
製作 : Kムーブ/サクラプロジェクト 
制作協力 : NHKエンタープライズ 
製作著作 : Ⓒ 2021 Kムーブ/サクラプロジェクト inori-movie.com 
推薦 : 長崎県教育映画等審議会[青年(含む高校生)向・一般成人向]
2020年/日本/カラー/110分/シネマスコープサイズ/5.1ch
posted by akemi at 17:41| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

スザンヌ、16歳   原題:16 Printemps(Seize Printemps)

suzanne.jpg

監督・脚本: スザンヌ・ランドン 
編集:パスカル・シャヴァンス
音楽:ヴァンサン・ドレルム
出演:スザンヌ・ランドン、アルノー・ヴァロワ、フレデリック・ピエロ、フロランス・ヴィアラ、レベッカ・マルデール

パリ、モンマルトル。
スザンヌは 16 歳。 ちょっと大人になった気分。高校の同級生たちとの会話は退屈。恋に憧れるけど、学校の男子たちはお子ちゃまに見える。そんなある日、彼女は劇場の前で舞台俳優のラファエルと出会う。35歳。一回り以上、年上の彼はとても頼もしく見えて、瞬く間に恋に落ちる。ラファエルもまた、舞台仲間たちとの毎日繰り返される日常に退屈していて、スザンヌと過ごす時間は新鮮。カフェで音楽を聴きながら過ごしたり、道でダンスをしてみたり、満ち足りた日々。でも、スザンヌはふっと不安になる。これでいいの? 母に「私、恋をしてしまったの・・・」と打ち明けて涙ぐむ・・・


スザンヌ・ランドン:監督・脚本・主演(スザンヌ)
suzanne kantoku.jpg
2000 年パリ生まれ。俳優のサンドリーヌ・キベルランと、ヴァンサン・ランドンの長女として誕生。15 歳でフランスの名門高校 Henri IV に入学し、同時に本作『スザンヌ、 16 歳』の執筆を開始。2018 年優秀な成績で高校を卒業し、パリの国立高等装飾美術学 校に入学。2019 年、15 歳のときに書いた脚本を元に、19 歳で映画制作に着手。監督と主演の両方に初挑戦した。こうして完成した本作は、2020 年カンヌ国際映画祭にて オフィシャルセレクションに選定認定され、その後、各国の映画祭で高い評価を受けている。 また彼女は映画の枠を超えて、セリーヌ(CELINE)のクリエイティブディレクター、 エディ・スリマンによる“PORTRAIT”プロジェクトにモデルとして参加。さらにシャネル(CHANEL)のアーティス ティックディレクター、ヴィルジニー・ヴィアールに新しいミューズとして抜擢されるなど、フランス国内のカルチ ャー&アートシーンで注目される存在となっている。 (公式サイトより)


カフェのテラスに座って、ラファエルと音楽を聴きながら、同じ動作をする場面。忘れられません。携帯電話も出てこない世界に注目を!
suzanne 1.jpg
スザンヌ・ランドン自身が自分探しをしながら、のびやかに描いた瑞々しい映像詩。
脚本を書いたのは 15 歳のとき。「恋をしてみたい」と強く憧れて、まだ経験したことのない恋愛感情を思い描きながら書いたとのこと。まさに恋に恋する思春期の賜物。それに気づいたのか、スザンヌは、自分でラファエルとの恋に終止符を打ちます。次の恋に進む第一歩。まだまだ人生は始まったばかり。ラファエルとの恋がプラトニックなものに終わったのも素敵です。父親や母親との関係も細やかに描いていて、この年代だからこその感情に共感する人も多いのではないでしょうか。
俳優の両親のもとに生まれ、映画の世界をそれなりに小さいときから知っていると思われるスザンヌ・ランドンですが、自由な発想に、若い才能のこれからが楽しみです。(咲)


2020年/フランス/77分
配給:太秦
公式サイト:http://suzanne16.com/
★2021年8月21日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開

posted by sakiko at 16:30| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする