2021年07月31日

日常対話 原題:日常對話 Small Talk

2021年7月31日(土)ポレポレ東中野にてロードショー 、 全国順次公開
劇場情報 
日常対話メイン2.jpg
(c) Hui-Chen Huang All Rights Reserved.

監督・撮影:黃惠偵(ホアン・フイチェン)
製作総指揮:侯孝賢(ホウ・シャオシェン)
プロデューサー:李嘉雯(リー・ジアウェン)
撮影指導:林鼎傑(リン・ディンジエ)
編集:林婉玉(リン・ワンユィ)
編集顧問:雷震卿(レイ・チェンチン)
音楽:林強(リン・チャン)、許志遠(ポイント・シュー)

カメラの前なら「言える」「聞ける」こともある
台湾発 娘がカメラを手に母の本音に迫る


「母(アヌ)は私(ホアン・(ホアン・フイチェン)と孫の食事を作ってから出かけ、帰るのは夜。夕飯は済ませて帰ってくる。同居しているのに何十年も他人同士のように暮らす母と私。「母の作る料理以外に、私たちには何の接点もない」と語るフイチェン監督。娘が誕生したことをきっかけに、監督はある日、勇気を出して母との対話を決意し、母親と向き合う様子を自らビデオカメラをまわし、同性愛者である母の思いを記録するすることにした。母のほか、親族、恋人、仲間などへのインタビューを通じ、アヌの思い、苦悩を浮き彫りにしてゆく。フイチェン監督も自身の過去と向き合い、子供の頃話せなかったある秘密を母に告げる。

2019年、アジアで初めて同性婚が合法化された台湾。だが1950年代、台湾中部の農村に生まれた母アヌがすごしてきたのは、「家」制度が支配し、父親(男)を中心にした保守的な村社会だった。先祖代々の墓に母や祖母(女)の名前は刻まれない。アヌは同性愛を自覚していたが、あの時代、日本と同じようにそういうことは理解されず、また結婚こそが女性の幸せとして、「女が一人で生きていく」ということは考えられない社会にいた。叔父や叔母など親族、故郷の人々はアヌが「同性が好きな人」ということは知らなかったとカメラの前では言う。だが、実際は知っていたのかもしれない。フイチェン監督の前では「知っていた」とは言えなかったのかも。
アヌは見合い結婚し、娘が二人生まれたが、夫は日雇い労働で稼いだ金を酒と賭博に使い果たしたあげく、アヌに暴力を振う。夫が家庭にお金を入れないので、アヌは「道士」として葬送の中で死者をあの世に送り届ける葬式陣頭「牽亡歌陣」の仕事をしていた。夫はアヌが葬式陣頭で稼いだお金さえ奪い、母娘はその日の食べるものさえ得ることができなくなった。暴力を振るう夫から身を守るため、アヌはフイチェンが10歳の頃、妹を連れて3人で家を出た。離婚もせず着の身着のままで家を出て、夫にみつからないように隠れて暮らしていたため、姉妹二人は学校にも行くことができなかった。
弔い業に対する世間の差別的な目。「女性が好きな人」として奔放に振る舞うアヌへの偏見。さらに娘よりも恋人を優先するアヌに、フイチェンは次第に不信感を募らせ、母娘関係はいつしか他人同士のように冷え切ってしまった。母が悪いわけではないのに、多くを語りたがらない母に不信感を募らせていく娘の心情が語られるが、カメラが進むうち、母アヌの苦悩がだんだんに明らかになってゆく。
フイチェンが20歳の時、仕事をしていた「牽亡歌陣」にドキュメンタリーの撮影隊がやってきて、ドキュメンタリー映画に興味を持ち、社区大学(コミュニティカレッジ)で映画を学びながら、消えゆく葬送文化とともに、同性を愛する母のありのままの姿を映像に収め始めたという。
監督がカメラを回す背後には、貧困、虐待、毒親、暴力の連鎖、マイノリティへの偏見等の問題が映し出される。民主化後、急速な経済発展を遂げる台湾社会に潜む問題として映し出されてはいるけど、それらは日本にとっても、決して他国の話ではない(暁)。


口をへの字に曲げ、「話さない方がいいこともある」「子どもに話すことじゃない」と、なかなか口を開かない母。そんなアヌが少しずつ胸の内を語る。暴力を振るう夫のことは「切り刻んで、ひき肉にしてやる!」というほど憎んでいる。10人以上はいたという母の彼女たち。そんな彼女たちの一人から、「とても優しいの。特にベッドの中では」という言葉も出てくる。暴力的な夫への反動か。ある彼女からは、「夫と寝たのは一度きり。娘二人は養女と言っていた」と聞かされる。
見合い結婚するしかなかった時代。針を戻せたら結婚しないという母。
「二人の娘を産んだことを後悔しているの?」との問いへの答えは、ぜひ劇場で!

本作では、母と娘の対話の背景に、台湾土着の葬送文化<牽亡歌陣>、亀甲型の墓(沖縄でも見られる形)での墓参り、街角にしつらえた舞台で行われている伝統劇など、台湾ならではの文化も映し出されていて興味深い。(咲)


『日常対話』公式HP 
2016年製作/88分/台湾
配給:台湾映画同好会

*イベント情報 [ポレポレ東中野]

7月31日(土)
①12:10の回上映後 初日舞台挨拶+Q&A
登壇者:ホアン・フイチェン監督 ※台湾からのオンライン登壇

②16:10の回上映後トークショー
登壇者:北丸雄二(ジャーナリスト、コラムニスト)

8月1日(日)
①12:10の回上映後トークショー
登壇者:牧村朝子(タレント、文筆家)※オンライン登壇に変更となります

②16:10の回上映後トークショー
登壇者:鈴木賢(明治大学法学部教授)

8月6日(金)16:10の回上映後トークショー
登壇者:宇田川しい(ライター、編集者、ゲイ・アクティビスト)

8月7日(土)18:10の回上映後トークショー
登壇者:ティーヌ(読書サロン)

8月8日(日)18:10の回上映後トークショー
登壇者:栖来ひかり(文筆家、道草者)※台湾からのオンライン登壇

8月9日(月祝)18:10の回上映後Q&A
登壇者:ホアン・フイチェン監督 ※台湾からのオンライン登壇

8月10日(火)18:10の回上映後トークショー
登壇者:松尾亜紀子(エトセトラブックス代表)

8月11日(水)18:10の回上映後トークショー
登壇者:山縣真矢(編集者/「結婚の自由をすべての人に」訴訟原告
/NPO法人東京レインボープライド顧問)&
小島あつ子(『日常対話』配給、『筆録 日常対話』翻訳者)

*参照 
『出櫃(カミングアウト) 中国 LGBT の叫び』 房満満監督インタビュー
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/479677060.html
中国のLGBTに関するドキュメンタリー作品。こちらでは、子供が親に「同性愛であること」をカミングアウトする様子が描かれる。こちらも「カメラの前だから言えた」と語っている。
posted by akemi at 11:57| Comment(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

映画 太陽の子

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監督・脚本:黒崎博
撮影:相馬和典
音楽:ニコ・マーリー
主題歌:福山雅治 「彼方で」
出演:柳楽優弥(石村修)、有村架純(朝倉世津)、三浦春馬(石村裕之)、田中裕子(母フミ)、國村隼(荒勝文作)、イッセー尾形(澤村)、山本晋也(朝倉清三)

1945年夏。軍の密命を受けた京都帝国大学・物理学研究室の若き科学者・石村修と研究員たちは、原子核爆弾の研究開発を進めていた。
研究に没頭する日々の中、建物疎開で家を失った幼馴染の朝倉世津が修の家に居候することに。
時を同じくして、修の弟・裕之が戦地から一時帰郷し、久しぶりの再会を喜ぶ3人。ひとときの幸せな時間の中で、戦地で裕之が負った深い心の傷を垣間見る修と世津だが、一方で物理学に魅了されていた修も、その裏にある破壊の恐ろしさに葛藤を抱えていた。そんな二人を力強く包み込む世津はただ一人、戦争が終わった後の世界を見据えていた。
それぞれの想いを受け止め、自分たちの未来のためと開発を急ぐ修と研究チームだが、運命の8月6日が訪れてしまう。

2020年8月にNHKで放送されたドラマ「太陽の子」映画版。テレビは未見でした。
実験好きの石村修が在籍する京大の研究室のようすが詳しく描かれています。戦争中各国で原子爆弾の開発競争があり、日本もその一つだったと知っている人がどれだけいるでしょう?アメリカに先を越されて日本は被爆国となりましたが、研究室の面々もこれが完成すれば戦争を終えられると信じて開発していたのでした。
父の期待に応えて海軍に入隊した弟の裕之が帰省し、修、世津の3人が海辺で遊ぶ美しいシーン、その晩世津が2人の手を取って「お説教」するシーンも深く胸に刻まれます。隊に戻る朝、母が抱きしめたくて出しかけた手を裕之の耳にやります。三浦春馬さんファンの方ハンカチ握りしめていてください。
科学者の修が拠り所としているアインシュタインの声が随所に入ります。「真理」を掴みたい一心が科学を発展させてきたのですが、一番に人間を幸せにするものであってほしいです。注:エンドロール後も映像がありますので、最後までお席に。(白)


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予備知識なしに拝見。観始めてすぐ、この話、観たことある・・・ 謎は観終わってプレス資料を確認して、昨年夏にNHKで放映されたものの映画版と判明したという次第でした。放映されたのが終戦の日の8月15日。三浦春馬さんが自ら旅立って、まだ1か月も経たない時でした。束の間の休みを海辺で楽しんだ三浦春馬さん演じる裕之が、死を覚悟して特攻隊の任地に戻る時に語る言葉にじ~んとさせられました。きらきら輝く目が忘れられません。
原子核爆弾の研究開発に勤しむ学生たちの姿からは、その爆弾が人を大量に殺すものであるということよりも、純粋に研究を成功させたいと思いが感じられました。敗戦後、そうした学生たちが日本の科学技術の目覚ましい発達に携わったことを思うと、原子核爆弾の完成が終戦に間に合わなくてよかったとさえ思いました。
テレビ版と映画版の違いは、テレビ版を観たのが去年のことなのでよくわからないのですが、やはり大きなスクリーンで見る海辺の場面は格別です。黒崎監督がこだわって探したロケ地は、京丹後の海。スタッフが兵庫の近辺から京都を超えるあたりまで海岸線をしらみつぶしに探してたどり着いた浜辺。エメラルドグリーンがかった独特なブルーは、地元の方が「9月半ばから下旬にかけてしか見られない、“奇跡のブルー”」と教えてくれた色だとか。
また、京都大学から特別に許可をいただいて撮影できた時計台を背景にした校門からの学徒出陣シーンも忘れられません。戦争の時代に青春を過ごした父母たちの世代の人たちの気持ちに思いを馳せました。(咲)


<配信トークイベント>
【番組名】『映画 太陽の子』公開記念!監督&プロデューサーの徹底解剖スペシャルトーク!
【配信日時】2021年8月14日(土)20:00~21:00(予定)※生配信
【配信場所】 共感シアター (https://bals.space/theater/233/)
【出演者】黒崎博監督、森コウプロデューサー/MC 伊藤さとり(映画パーソナリティー)

<トークイベント「太陽の小部屋」>
【実施日】2021年8月15日(日)10:30の回 上映終了後(予定)
【場所】渋谷HUMAXシネマ 東京都渋谷区宇田川町20−15
【出演者】黒崎博監督、森コウプロデューサーほか


2021年/日本・アメリカ合作/カラー/シネスコ/110分
配給:イオンエンターテイメント
(C)ELEVEN ARTS Studios/2021「太陽の子」フィルムパートナーズ
https://taiyounoko-movie.jp/
★2021年8月6日(金)ロードショー

posted by shiraishi at 00:50| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月28日

明日に向かって笑え!(原題:La odisea de los Giles)

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監督:セバスティアン・ボレンステイン
原作:エドゥアルド・サチェリ
脚本:セバスティアン・ボレンステイン、エドゥアルド・サチェリ
撮影:ロドリゴ・プルペイロ
出演:リカルド・ダリン(フェルミン)、ルイス・ブランドーニ(アントニオ)、チノ・ダリン(ロドリゴ)、アンドレス・パラ、ベロニカ・ジナス、ダニエル・アラオス、アレハンドロ・ヒへナ

2001年、アルゼンチン。寂れた田舎町に住む元サッカー選手のフェルミン。今は妻リディアと二人ガソリンスタンドを経営してつましく暮らしている。放置されて荒れ果てていく農業施設の復活を思いつき、隣人たちに声をかけた。なけなしのお金を出し合って銀行に融資を願い出、現金を預けた翌日、金融危機で預金が凍結されてしまった。しかも相談に応じた弁護士と銀行がこの状況を悪用して、フェルミンたちのお金は戻らなくなってしまう。呆然としてはいられない、盗まれた財産を取り戻さねば!

『瞳の奥の秘密』の脚本家エドゥアルド・サチェリと主演俳優のリカルド・ダリンが再びタッグを組んだ本作、く同じように金融危機に煮え湯を飲まされ、振り回された国民の支持を得たのでしょう。大ヒットとなったそうです。日本でも銀行が破綻したことはありましたが、預金は守られました。一番頼りになるはずの銀行や弁護士が騙すってどういうこと!?金融などさっぱりわからない私は頭がぐるぐるしてしまいました。HPにも少し解説がありますが、国が外国に作った借金を返すために、銀行のお金をあてたということなんでしょうか(ざっくりすぎ)?きちんと知りたい方は自力で調べましょう。
日本は関係ないと思うかもしれませんが、日本の国債発行高もかなりのものですよ。国が国民に借金しているわけなんですが、これ変ですよね。増税だって国が支出をよく見て、無駄遣いをやめるのが先じゃないですか。自分たちが払った税金の使い道に目を光らせてもっと口うるさくならなきゃ。フェルミンたちのように、気づいたときには大損ってことになるかも。
さて、怒り心頭のフェルミンたちはリベンジに出るのですが、それが雑というかなんというか、見ていてドキドキさせられます。父たちの計画におおいに貢献する息子のロドリゴ役に、リカルド・ダリンの実の息子、チノ・ダリン。『永遠に僕のもの』(2019)で主人公が惹かれるイケメン役でした。(白)


ラテンの国アルゼンチンなのに、なぜだか本作、ヨハン・シュトラウスの「美しく青きドナウ」が軽やかに奏でられる中、悲劇は始まります。いえ、最初は、10年間放置されていた倉庫を皆で農協にしようという夢だったのです。
貸金庫に預けたままなら問題なかったのに、預金が凍結されることを知っていた銀行員と弁護士に、融資を受けるなら口座に入金すればいいと、まんまと騙されてしまった次第。
夢を取り戻そう!と、騙し取られたお金の隠し場所を探し当てて盗み返そうと奮闘する人たちの姿がユーモアを交えて描かれていて、原題「La odisea de los Giles」の「まぬけたちの一連の長い冒険」という意味に納得!(咲)



2019年/アルゼンチン/カラー/シネスコ/116分/スペイン語
配給:ギャガ
(C)2019 CAPITAL INTELECTUAL S.A./KENYA FILMS/MOD Pictures S.L.
https://gaga.ne.jp/asuniwarae/
★2021年8月6日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国順次公開

posted by shiraishi at 16:55| Comment(0) | アルゼンチン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

サマーフィルムにのって

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監督:松本壮史
脚本:三浦直之、松本壮史
撮影:岩永洋、山崎裕典
主題歌: Cody・Lee(李)「異星人と熱帯夜」(sakuramachi records)
出演:伊藤万理華(ハダシ)、金子大地(凛太郎役)、 河合優実(ビート板)、祷キララ(ブルーハワイ)
小日向星一、池田永吉、篠田諒、甲田まひる、ゆうたろう、篠原悠伸、板橋駿谷

勝新を敬愛する高校3年生のハダシ。キラキラ恋愛映画ばかりの映画部では、撮りたい時代劇を作れずにくすぶっていた。そんなある日、彼女の前に現れたのは武士役にぴったりな凛太郎。すぐさま個性豊かな仲間を集め出したハダシは、文化祭でのゲリラ上映を目指すことに。青春全てをかけた映画作りの中で、ハダシは凛太郎へほのかな恋心を抱き始めるが、彼には未来からやってきたという秘密があって――

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時代劇の好きな女子高生ハダシが、自分でも作ってみたくなるほどの映画愛があるなんて「いち時代劇ファン」としても、とても嬉しいです。ちょうどうってつけの男子・凛太郎が現れ、ハダシのやる気に火がつきます。彼が未来人で映画オタクであったというのが、面白い設定です。時空を超えて行き来するシステムがとってもチャチで笑ってしまうのですが、だからといって映画の勢いに水をさすことはありません。むしろ似合っています。
高校生たちのひと夏が、まさにキラキラとまぶしくてラストは拍手喝采です。ハダシかっこいい!
ニックネームが長いのだけがどうもしっくりきませんでした。ブルーハワイとか、ビート板とか呼びにくいでしょ。(白)


2020年/日本/カラー/シネスコ/110分
制作プロダクション:パイプライン
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
© 2021「サマーフィルムにのって」製作委員会
公式サイト:phantom-film.com/summerfilm
公式twitter:@summerfilm_2020

★2021年8月6日(金)より新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

posted by shiraishi at 16:31| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月25日

返校 言葉が消えた日 原題:返校

2021年7月30日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
劇場情報

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(C)1 Production Film Co. ALL RIGHTS RESERVED.


台湾戒厳令下の時代を描いたミステリー

監督・脚本: 徐漢強(ジョン・スー) 
製作:李烈(リー・リエ) 、李耀華(アイリーン・リー)

出演:
ファン・レイシン役:王淨(ワン・ジン)
ウェイ・ジョンティン役:曾敬驊(ツォン・ジンファ)
チャン・ミンホイ役:傅孟柏(フー・モンボー)
イン・ツイハン役:蔡思韵(チョイ・シーワン)
ホアン・ウェンション役:李冠毅 リー・グァンイー
ヨウ・ションジエ役:潘親御(パン・チンユー)
バイ教官役:朱宏章(チュウ・ホンジャン)

台湾で2017年に発売され大ヒットしたホラー・ゲーム「返校」を実写映画化したもの。台湾では1947年に「二・二八事件」が起き戒厳令が敷かれ、蒋介石率いる国民党が反体制派に対して政治的弾圧を行った。そして1987年に解除されるまでの40年間戒厳令下だった。国民に相互監視と密告が強制され、多くの人々が投獄、処刑された。この時代は「白色テロ時代」と呼ばれ、『悲情城市』(侯孝賢/ホウ・シャオシェン監督・1989年)や、『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』(楊德昌/エドワード・ヤン監督1991年)、『GF*BF(原題:女朋友。男朋友 GF*BF)』(楊雅喆/ヤン・ヤーチェ監督2012年)などでも描かれているが、今作でジョン・スー監督は、台湾人が忘れてはならないこの負の歴史を背景にしたダーク・ミステリーを作り上げた。

1962年、国民党の独裁政権下の台湾。翠華高校に通う女子高生のファン・レイシンは放課後の教室で寝込んでしまい、目を覚ますと学校には誰もいなくなっていた。誰もいない校内を彷徨うファンは男子学生ウェイ・ジョンティンと会い、協力して学校からの脱出を試みるがどこからも外に出ることができない。ジョンティンは、政府から禁じられた本を読む読書会メンバーで秘かにファンを慕っていた。彷徨う二人は悪夢のような恐怖と闘うなか、学内で起こった政府による暴力的な迫害事件と、原因を作った密告者の哀しい真相に近づいていった。
この作品は2019年度台湾映画No.1大ヒットを記録。第56回台湾金馬奨で12部門ノミネートされ、最優秀新人監督賞を含む最多5部門受賞を獲得した。

『返校 言葉が消えた日』の話を聞いた時、ゲームが元で、ホラー作品というので、ゲームに興味がなく、ホラー映画が好きでない私は、別に観なくてもいいかなと思ったのだけど、「二・二八事件」事件を背景にした話と聞き、それは観ておかなくてはと出かけた。「二・二八事件」や「戒厳令下」を物語の背景や時代の背景に描いた映画は何本も観てきたけど、ホラーやミステリー仕立てで描いた作品というのは観たことがなかった。ホラーと聞いただけで、ただでさえ恐ろしいのに、「相互監視と密告が強制された時代」というのまで加わって、よけい恐ろしかった。ストレートな物語で観たかったけど、こういうのでないと観ないという人もいるとしたら、こういう形で歴史的な出来事を描いていくのも必要なことなのかもしれないと思った。なんせ台湾では大ヒットしたとのことなので。ま、私はホラーだけだったら観なかったけど、こういう歴史的事実は繰り返し、何かの形で伝えていかなくては忘れ去られてしまう。日本にもそういう出来事がたくさんある。戦争の悲惨さ、原爆の恐ろしさ、環境破壊や公害のことなど、これからもいろいろな形で、若い人たちに繰り返し伝えて行ってほしい。日本でも、戦前、戦中の言論弾圧があり、人々を戦争に駆り立ててしまったことがあったわけだから、ぜひそういう映画もできてほしい(暁)。


『返校 言葉が消えた日』公式」HP
2019年/台湾/カラー/103分/シネスコ/5.1ch/
字幕翻訳:岡田 美希 配給:ツイン    
宣伝プロデュース:ブレイントラスト
posted by akemi at 20:21| Comment(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

パンケーキを毒見する

2021年7月30日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開
劇場情報
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(C)2021「パンケーキを毒見する」製作委員会

企画・製作・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸 
監督:内山雄人 
音楽:三浦良明 大山純(ストレイテナー)
アニメーション:べんぴねこ
ナレーター:古館寛治

たたき上げ?権力志向?勝負師? 
菅首相の素顔(スガオ)に迫る!
かつてない政治バラエティ映画が誕生!!

第99代内閣総理大臣・菅義偉。世界が未曾有のコロナ禍に直面する中、2020年9月14日、安倍晋三に代わる新たな総裁として、国民の命と激動の時代の舵取りは、この男に託された。官邸政治の闇や菅義偉(すが よしひで)首相(当時官房長官)をウォッチし、『新聞記者』『i 新聞記者ドキュメント』という社会派作品を送り出してきた映画プロデューサー・河村光庸が企画・製作・エグゼクティブプロデューサーを務め、“今、一番日本人が知りたい男”に迫る。「新聞記者」2部作で、官房長官時代の東京新聞記者・望月衣塑子さんとの会見でのバトルが有名になったが、菅義偉氏がこれまでどのように政治家としてやってきたのかというのは知られてあまり知られていない。安倍政権のNO2を長く務め、ついにトップの座についた「菅義偉」とはどんな人物なのか? 彼が進める政治の向こうに、報道からは見えてこない「ニッポンの現実」が浮かび上がってくる。果たして日本の将来はどうなっていくのか? ブラックユーモアを交えながらシニカルな視点で日本政治の現在を捉えた。

「世襲議員ではない叩き上げ」の首相の誕生で、“令和の田中角栄”といわれることも…。首相に就任してからは、携帯料金値下げ、ハンコ廃止、デジタル庁の新設など、一般受けする政策を行う一方で、学術会議の任命拒否や中小企業改革などを断行。国会で質問を受けても、不誠実な答弁を繰り返す姿は、政治への関心を国民から奪うための戦略なのではないかとさえ見えてくる。果たして、菅首相は何を考えているのか?
秋田のイチゴ農家に生まれ、上京。段ボール工場で働いた後に進学。国会議員の秘書、横浜市議会議員、衆議院議員を経て、その気配りと才覚で首相にまで登りつめた。安倍政権の官房長官時代は、無表情で公式見解を繰り返し「鉄壁のガースー」とも呼ばれた。側近たちを重用し、メディアをコントロールする「影の支配者」として君臨して、いつの間にか日本中が彼の思惑どおりに管理・支配されるのではないかという不安がよぎる。
ナレーターに古舘寛治を迎え、自由民主党の石破茂や村上誠一郎、立憲民主党の江田憲司、日本共産党の小池晃など、現役の国会議員、経済産業省出身・古賀茂明、元文部科学事務次官・前川喜平ら元官僚、そして、菅首相をよく知るジャーナリストの森功、元朝日新聞記者・鮫島浩という人たちが、それぞれの立場から、菅義偉の人間像や菅政権の目指すもの、日本の現状とその危うい将来を語る。さらに「国会パブリックビューイング」代表として、国会審議を可視化する活動を行っている法政大学の上西充子教授が登場。菅首相が国会で行なってきた答弁を徹底的に検証し、ポーカーフェイスの裏に隠されているものを探る。
しかし、いたずらに意義を唱えたり、スキャンダルを暴く政治ドキュメンタリーではなく、ブラックユーモアや風刺アニメを愉しみつつ、様々な角度から浮き彫りにされる、菅政権や日本の行方を考えてもらう政治バラエティ映画となっている。ふわふわに膨らんで美味しそうなのに中身はスカスカ、まるでパンケーキのような菅政権を作ったのは誰なのか? 有権者の皆さん、それに気づいていますか? 日本の未来はヒトゴトではありません。このままでいいのでしょうか? 観客に突きつける。

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(C)2021「パンケーキを毒見する」製作委員会

相次ぐ取材NGからスタートしたというこのドキュメンタリー。菅氏に近い自民党議員たち、マスコミ、評論家、さらにはホテルやスイーツ店までが取材拒否し、最初、スムーズには進まなかったという。そんな中、取材に応じてくれたのは、菅氏の半生を丹念に追いノンフィクション「菅義偉の正体」にまとめたジャーナリストの森功氏や、かつて自民党宏池会を担当した朝日新聞の記者鮫島浩氏などが登場。「庶民的で親しみ易い、秘書出身の気配りの人」と語り、アクアラインの通行料金や携帯料金、ふるさと納税といった政策で人々の心をつかんできたと分析。これらの話の中で一番面白かったのは、「国会パブリックビューイング」代表、法政大学上西充子教授の話。「議論の答えにならない、噛み合わない、不誠実で意味のない国会答弁を繰り返す」映像を見せながら解説するシーン。こうした答弁を続けることで、国民の政治に対する関心が失われることを狙っているのではと懸念する。もっともこれは前作「新聞記者」シリーズ2本でも繰り返し出てきた場面ではある。
「政治なんて人ごと」とは思わないけど、小選挙区制による、自民党に有利な選挙制度をいつのまにか作り上げてしまったことが、こういうことを生んでいると思う。私なんか、いくら投票に行ってもなかなか思う人が当選しないし、最近は出てほしい人が、自分の選挙区に出てこられなくなった。それで選挙にも行く意味を見出せなくなった。そういうのを狙っているのでしょうね。選挙に行くのもむなしい気持ちを抱えている私です。それでもこういう作品を作っている川村光庸氏のような人がいるということが、せめてもの希望。藤井道人監督『新聞記者(19)、森達也監督『i 新聞記者ドキュメント』(19)を始め、イ・チュンニョル監督のドキュメンタリー映画『牛の鈴音』(08)、ヤン・イクチュン監督の『息もできない』、ヤン・ヨンヒ監督の『かぞくのくに』(11)の配給や制作に関わった方なんですね。『MOTHER マザー』(20)、『宮本から君へ』(19)、『あゝ、荒野』(16)などの話題作は観ていないけど、最新プロデュース作は吉田恵輔監督作『空白』(21)を観てみたい。監督の内山雄人氏はテレビマンユニオン所属の方で、主にTV界で活躍してきた人。情報エンターテインメントやドラマ、ドキュメンタリー等、特番やレギュラー立ち上げなどで活躍しているとのこと。「歴史ドラマ・時空警察」「世界ふしぎ発見!」など好きです(暁)。


いや~、面白いドキュメンタリーでした。
菅義偉首相が誕生した時、安倍さんが体調を崩して降りると言って、棚ぼたで首相になったという感を否めませんでした。消去法で菅さんか・・・と。官房長官を長く務めていらしたのに、存在感がなくて、正体不明。そも、(すが よしひで)とフリガナが振ってなければ、お名前の読み方もわからない。選挙の時には不利だと思うのに、ここまで上り詰めたということは、それなりに人を惹きつけるものがあったのでしょう。
横浜市議会議員時代に、アクアラインの通行料金値下げや、みなとみらい開発に尽くしたということなど、確かな実績をお持ちなことには、ちょっと感心しました。
それにしても、菅さん、正体不明。何をお考えになっているかも、結局、よくわかりませんでした。
一方で、若者がなぜ自民党に投票してしまうのかのヒントになるような、若い人の声も出てきて、興味深かったです。日本がこの先どうなるのか・・・ いい加減な政権を作ってしまったのは、私たち国民にも責任があると、ドキッとさせられた次第です。(咲)


記者会見や国会の答弁を見て、質問の答えになっていない空疎なことばのくりかえしにイラっとした人多いでしょう。そうやってはぐらかしても、追求していく人はまれです。慣れたらいけません。
そんな中、この映画に出演し、苦言を呈してくれた政治家のみなさま、えらい。覚えておきます。最近「役人が最も嫌いな言葉は”責任”」とどこかで目にしました。昔なら責任をとるということはトップが切腹=死ぬことでした。今は現場の人間に押し付けて、上は変りません。
私たちができることと言えば、先人が必死で獲得してくれた選挙権を行使すること。直接参加できる唯一の機会なのに、しないでどうしますか。「入れる人がいない~」と言う人、今のままでいけないと思うなら反対側に投票するの!その人がたとえ当選しなくても、反対意見を表明したことになるでしょ。
この作品はとても親しみやすい方法で、笑うところも混ぜ込みつつ、大事なことを見せてくれています。政治なんてわかりません、という方ほどぜひ。(白)


『パンケーキを毒見する』予告編
『パンケーキを毒見する』公式サイト
2021年/日本映画/104分/カラー/ビスタ/ステレオ
制作:テレビマンユニオン 
配給:スターサンズ 配給協力:KADOKAWA
©2021『パンケーキを毒見する』製作委員会 

*シネマジャーナルHP 特別記事
『パンケーキを毒見する』内山雄人監督インタビュー記事
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/pancake-movie.html
posted by akemi at 20:15| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

名もなき歌(原題:Cancion sin nombre)

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監督・脚本・製作:メリーナ・レオン
撮影:インティ・ブリオネス
音楽:パウチ・ササキ
出演:パメラ・メンドーサ(へオルヒナ)、トミー・パラッガ(ペドロ・カンボス)、ルシオ・ロハス(レオ)、マイコル・エルナンデス(イサ)

1988年、政情不安に揺れる南米ペルー。貧しい暮らしを送っている先住民の女性、ヘオルヒナ20歳。結婚して子供が授かったが臨月の今も町に出て野菜を売っている。妊婦を無償でみてくれる財団の存在を知って、リマのクリニックを受診した。陣痛が始まって、やっとクリニックに到着したヘオルヒナは無事に女児を出産する。子どもを見せてほしいのに、看護師にゆっくり休めと言われる。目がさめると赤ん坊をほかに移したと言われ、一度も我が子に会えないまま締め出されてしまった。再び訪ねるとクリニックはもぬけの殻で、警察や裁判所に訴えても有権者番号を持たない夫婦はとりあってもらえない。新聞記者のペドロは、新聞社に押しかけ泣きながら窮状を訴えるヘオルヒナに事情を尋ねる。

ペルーの女性監督メリーナ・レオンの長編デビュー作。カンヌ映画祭監督週間で上映されたほか、アカデミー賞の国際長編映画賞に向けたペルー代表作品に選出されました。
テレビのような画角の白黒の画面に、荒涼とした風景が映っています。画面を横切る線上に小さな人影が現れ、粗末な家に入っていきます。祖先の開いた土地を代々守ってきた原住民を追いやる政治、ここペルーだけの話ではありません。人種により差別し、人間としての尊厳を認めない過酷な現実も世界中のあちこちで観られます。
この映画は弱い立場のものが虐げられていた事実を元に作られた作品です。ヘオルヒナを演じたパメラ・メンドーサはこれが初めての映画出演。寡黙でひたむきな若い母親を体現しています。ここにあるように我が子を取り上げられた母親たち、現実を変えようとテロに走った若者たちがどれだけいたことでしょう。
美しくも厳しい画面の中に、絶望する母親と、使命感に燃えながらあまりにも大きな壁に苦悩するペドロの表情が映し出されます。ペドロにも同性愛者というマイノリティのくびきがかけられています。30年余りたった今、差別や貧困が蔓延する社会がどこまで変わったのか、変えることができたのか、問わずにいられません。(白)


2019年/ペルー、スペイン、アメリカ合作/モノクロ/スタンダード/97分
配給:アークフィルムズ
(C)Luxbox-Cancion Sin Nombre
http://namonaki.arc-films.co.jp/
★2021年7月31日(土)ユーロスペース、伏見ミリオン座ほか全国順次公開

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アウシュヴィッツ・レポート 原題:Správa  英題:The Auschwitz Report

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監督・脚本 ペテル・ベブヤク
共同脚本:トマーシュ・ボンビク
製作:ラスト・シェスターク
出演:ノエル・ツツォル、ペテル・オンドレイチカ、ジョン・ハナーほか

1944年4月、二人のスロバキア系ユダヤ人、アルフレート・ヴェツラーとヴァルター・ローゼンベルク(後に、ルドルフ・ヴルバに改名)は、アウシュヴィッツのビルケナウ・ナチス絶滅収容所から決死の思いで脱出する。
1942年に強制収容され、遺体の記録係をさせられていた二人は、毎日のように列車で運ばれてくるユダヤ人の多くがガス室で殺害されている実態を、なんとか世に伝えなければと脱走を決意したのだ。脱走11日目、ようやく国境を越え、スロバキアにたどり着いた二人は赤十字職員に救出される。接見した弁護士に脱走した経緯や壮絶な収容所のことを話すと、言葉を失った弁護士は二人にタイプライターを差し出し、実態をレポートとしてまとめるように伝える。収容所の内部やガス室の詳細などをまとめた「ヴルバ=ヴェツラー・レポート(通称アウシュヴィッツ・レポート)」は赤十字に提出される。赤十字職員ウォレンは自分たちが調査し見聞きしていた実態とかけ離れた信じがたい内容に驚くが、二人の話にようやく耳を傾けていく。二人の脱走から22日目のことだった・・・

二人の勇気ある行動のお陰で、12万人以上のハンガリー系ユダヤ人がアウシュヴィッツに強制移送されるのを免れました。この史実を、壮絶な強制収容所から私たちは体感することになります。
脱走を決意した二人は、まず、積み上げられた木材の下に隠れます。点呼で二人がいないことが発覚すると、同じ9号棟の収容者たちは二人が見つかるまで外で立たされます。(3日間が期限らしい) 隙間から収容者仲間がひどい目にあっているのを息を殺してみるしかない二人。木材が積み上げられて、脱出することができなくなるのではとハラハラ。こちらも息苦しくなりました。やっとの思いで、国境を越えますが、強制収容所の壮絶な実態をにわかには信じてもらえません。実態を詳細に記載したアウシュヴィッツ・レポートは、連合軍に報告され、結果、ハンガリー系ユダヤ人12万人を救ったのですが、なぜ彼らの故国スロバキアのユダヤ人でなくハンガリーだったのか? そして、なぜ、ほかの国にいたユダヤ人を救えなかったのか?と、残念でなりません。
それどころか、国家権力がナチスに加担した例も!
2021年8月27日公開の『ホロコーストの罪人』では、ノルウェーの秘密国家警察がホロコーストに加担していた事実が語られています。フランスでナチス占領下のビシー政権がユダヤ人狩りに加担していたことを描いた映画では、『サラの鍵』や『ある秘密』が印象に残っています。
思えば、今も、パレスチナやシリアをはじめ、世界のあちこちで虐げられている人たちを私たちは見て見ぬふりをしていることに気づきます。
本作から、ホロコーストは決して過去の問題ではないことを学ばないといけないのですが、国家権力者の無謀な行いを制することもできないでいることが悲しいです。(咲)


アカデミー賞(R)国際長編映画賞 スロバキア代表

2020 年/スロバキア・チェコ・ドイツ/94 分//英語・チェコ語・ポーランド語・スロバキア語・ドイツ語/カラー/シネスコ/5.1ch /PG12
日本語字幕:川又勝利.
配給:STAR CHANNEL MOVIES
公式サイト:https://auschwitz-report.com/
★2021年7月30日から東京・新宿武蔵野館ほか全国順次公開
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2021年07月22日

ある家族

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監督・脚本:ながせきいさむ
エグゼクティブプロデューサー:井内徳次
撮影:田宮健彦
出演:川﨑麻世(一ノ瀬泰)、野村真美(一ノ瀬陽子)、寺田もか(一ノ瀬茜)、中西悠綺(柴田悠里)、伊藤真央(岡野 尊)、大城沙耶(染谷花梨)、小泉冠人(小島 蓮)、山川大遥(葉山翔太)、三浦優希(木野崎 愛)、奥仲麻琴(高橋 綾)

平成20年の児童福祉法改正により小規模住居児童養育事業として実施された「ファミリーホーム」。養育者としてホームを経営する一ノ瀬泰・陽子夫妻と、二人の実子である一ノ瀬茜は、家庭環境を失った子ども達と共に暮らしている。育児放棄、いじめ、虐待、障害、就活苦など多種多様な問題を抱える子ども達を自らの家庭に迎え入れ、共に泣き、共に笑い、雨の日も風の日も家族として共に日々を送っていた。しかし、そんな彼ら一ノ瀬ホームの終焉が、静かに、だが確かに近づいていた・・・。

ファミリーホームは「委託」された子どもたちを6人まで養育する「家」です。児童養護施設の小型版といいますか、施設や里親の経験が必要だったり両親(または一方)と補助の大人がいることなど、預かるほうにも条件があります。都道府県に認可を得ると補助があります。里親と違うのは18歳になった子どもは退所することです。国はこのファミリーホームに注力して、将来は今の倍以上に増やす予定のようです。この作品では、預かった子どもたちそれぞれの抱える問題を見せて、みんなで対処する様子が描かれています。親代わりのお父さんは足が不自由、明るく支え続けてきたお母さんに病気が見つかって…。実の娘、預かった子どもたちがワイワイと一緒に育っていく様子に、血のつながりより「思いあうことが家族」だとまたあらためて思いました。
子どもを育て上げるには、経済的な余裕も、大きな責任も必要ですが、映画を観て心が動いた方は今一歩踏み出してみてはいかがでしょう。いろいろな形で、できる支援がきっとあります。

◆参考 日本ファミリーホーム協議会
https://www.japan-familyhome.org/

主演の川﨑麻世さんにお話を伺いました。こちらです。(白)


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2021年製作/99分/日本
配給:テンダープロ
(C)「ある家族」製作委員会
https://movie.arukazoku.net/
★2021年7月30日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 15:03| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月18日

ココ・シャネル 時代と闘った女(原題:Les Guerres de Coco Chanel)

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監督・脚本:ジャン・ロリターノ
出演:ココ・シャネル、フランソワーズ・サガン他
ナレーション:ランベール・ウィルソン

1883年8月19日。ガブリエルはフランスの南西部オーヴェルヌの救済院で生まれた。12歳のときに母親が病死。父親は娘たちを孤児院に預けた後、2度と現れなかった。孤児院で裁縫を覚えお針子に。歌手のアルバイトをして持ち歌から「ココ」と呼ばれる。店の客だったバルザンの愛人になり、パリ近郊で暮らした。その友人のアーサー・カぺルと恋に落ちたことで、ココの人生が変わっていく。
機知に富んだココは自立を望み、新しいモードを作り出し、自分の人生を切り開いた。最も裕福な女性と称されるまでになったココ・シャネルのドキュメンタリー。

2021年はココ・シャネル没後50年、そして世界で最も売れた香水「No.5」誕生100年にあたるそうです。彼女の波乱万丈の人生はこれまでにも映画化されて、オドレィ・トトゥ(若いころの本人の写真に似ています)の『ココ・アヴァン・シャネル』(2009)は、若き日から、自分のスタイルを確立し、成功をしっかりとつかむまでを。『ココ・シャネル』(2008)は、第2次大戦終了後、70代で復活したココをシャーリー・マクレーンが、回想部分はバルボラ・ボブローバが演じています。
本作は1時間足らずの中に、ココ・シャネルの一生分をぎゅっとコンパクトにまとめています。ココは、自分が受け入れたくない過去は、自分に合った服を作ったように変えていたようです。忘れたいことにそうやって折り合いをつけたのかもしれません。
戦時下スイスへ脱出し、その後パリに戻ったココ。語られなかったことが近年開示された公文書などで明らかになりつつあります。1971年1月10日、86歳で亡くなった彼女は自分の人生に満足だったでしょうか? 誰よりも先頭に立って闘って、退屈が嫌いだった人なので、とっくに生まれ変わっていたりして。(白)


2019年/フランス/55分/© Slow Production-ARTE France
配給:オンリー・ハーツ
(C)Slow Production, Arte France
http://cocochanel.movie.onlyhearts.co.jp/

後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
★2021年7月23日(金・祝)よりBunkamuraル・シネマ他にて全国順次公開
posted by shiraishi at 23:30| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ベイビーわるきゅーれ

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監督:脚本:阪元裕吾『ある用務員』
撮影:伊集守忠
アクション監督:園村健介
音楽:SUPA LOVE
主題歌:KYONO「STAY GLOW feat.TAKUMA (10-FEET)」
挿入歌:髙石あかり×伊澤彩織「らぐなろっく ~ベイビーわるきゅーれ~feat. Daichi」
出演:髙石あかり(杉本ちさと)、伊澤彩織(深川まひろ)、三元雅芸、秋谷百音、うえきやサトシ、福島雪菜 / 本宮泰風

女子高生殺し屋2人組のちさととまひろは、高校卒業を前に途方に暮れていた。明日から“オモテの顔”としての“社会人”をしなければならない。組織に委託された人殺し以外、何もしてこなかった彼女たち。突然社会に適合しなければならなくなり、公共料金の支払い、年金、税金、バイトなど社会の公的業務や人間関係や理不尽に日々を揉まれていく。
さらに2人は組織からルームシェアを命じられ、コミュ障のまひろは、バイトもそつなくこなすちさとに嫉妬し、2人の仲も徐々に険悪に。そんな中でも殺し屋の仕事は忙しく、さらにはヤクザから恨みを買って面倒なことに巻き込まれちゃってさあ大変。そんな日々を送る2人が、「ああ大人になるって、こういうことなのかなあ」とか思ったり、思わなかったりする、成長したり、成長しなかったりする物語である。

冒頭はまひろがコンビニ店員に応募して、面接を受けているところです。2人は社会参加もしなければならないんです。はみ出してしまう2人は文句を言いつつ、マネージャー?に従っています(殺し屋登録をしていて、そこから仕事がくるようです)。
阪元裕吾監督の前作『ある用務員』(2021年1月公開)は福士誠治さんが「表の顔は用務員、裏の顔は暗殺者」として初主演を飾った作品です。彼を倒すため大挙登場する殺し屋の中に女子高生コンビがいて目をひきました。その2人が今回の髙石あかりさん、伊澤彩織さん。前作とは名前も違いますが、殺しのスタイルは同じ。今度は主役なので、もっとしっかりたっぷり描かれています。
髙石さんは舞台版「鬼滅の刃」で、竈門禰󠄀豆子(かまど ねずこ)を演じています。黒髪にぱっちりした大きな目でぴったりですね。伊澤さんは現役スタントウーマン、様々な作品のスタントをしてきましたが、台詞のある役は今回が初めてだそうです。
この二人の日常と生業の殺し屋とのギャップが見どころ。だらだら過ごす2人の「女子高生あるある」な台詞、いざ仕事に出たときのアクションがすっばらしい!!髙石さんのガンさばき、反射としか思えない速さを見て!何人もの敵(男性ばかり)を相手に、ぼそぼそ愚痴りながらも戦う伊澤さん、よくぞ見つけ出してくれました。2人を存分に生かした阪元監督&園村健介アクション監督すごい!!
反社会的な2人が社会でどう生きるのか注目です。まずは観てください。「面白かった~!!」と声が出ますよ、きっと。
阪元監督にお話を伺いました。こちらです。(白)


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家ではこんな2人


2020年/日本/カラー/ビスタ/95分
配給:渋谷プロダクション
(C)2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会
https://babywalkure.com/
★2021年7月30日(金)テアトル新宿ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 15:08| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

犬部!

7月22日(木・祝)全国ロードショー! 劇場情報 

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(C)2021「犬部!」製作委員会

スタッフ
監督:篠原哲雄
原案:片野ゆか
脚本:山田あかね
エグゼクティブプロデューサー:山田洋二 飯田雅裕  プロデューサー:根本裕美
共同プロデューサー:神保友香 二木大介 堀越大  企画・プロデュース:近藤あゆみ
撮影:鶴崎直樹
音楽:GEN  主題歌:Novelbright
動物トレーナー:ZOO動物プロ
キャスト
花井颯太:林遣都
柴崎涼介:中川大志
佐備川よしみ:大原櫻子
秋田智彦:浅香航大
深沢さと子:安藤玉恵
門脇光子:田中麗奈
久米尚之:螢雪次朗

行き場のない犬や猫のために、人生をかけた若者たちがいた

青森県にある北里大学の獣医学部に実在したサークル「犬部」を元に描いた、青春“犬ラブ”ムービー。捨て犬や捨て猫を救うために、現役の獣医科大学生が立ち上げたサークル「犬部」。SNSがまだ発達していなかった時代、青森県十和田市で行き場を失った犬や猫を保護し、草の根で里親募集や譲渡会を行っていた。
彼らが所属していた獣医科大学では、動物の生体を使った実習が手術の授業として組み込まれていて、獣医師になるためには、動物を安楽死させる=外科実習が避けては通れない道だった。そんな中、「1匹も殺したくない」「生きているものは全部助ける」と訴える学生がいた。「犬部」は彼が中心となって発足。そんな想いに共感した仲間たちは、“犬部”に集って活動を続けた。

22歳の獣医学部の大学生、花井颯太(林遣都)は、子どもの頃から犬が大好きで、一人暮らしのアパートには保護動物がぎっしり。周りから変人扱いされても、目の前の動物たちの命を救いたいという一途な想いで保護活動を続けていた。ある日颯太は心を閉ざした一匹の実験犬を救ったことから、動物の命を救うため、動物保護活動をサークルにすることを思いつき「犬部」を設立した。颯太と同じく犬好きや猫好きの、同級生・柴崎涼介(中川大志)らが仲間となり動物まみれの青春を駆け抜け、卒業後はそれぞれの夢に向かって羽ばたいていった。颯太は動物たちの命を救うため動物病院へ、柴崎は動物の不幸な処分を減らすため動物愛護センターへ。他のメンバーもそれぞれ、開業医や研究者となった。
「犬部」設立から16年後。保護活動を続けていた颯太が逮捕されたという知らせを受けて、開業医や研究者、動物愛護センター所長として、それぞれの想いで16年間動物と向き合ってきたメンバーたちが再集結する。
片野ゆかのノンフィクション「北里大学獣医学部 犬部!」を原案に、『犬に名前をつける日』(15)をはじめ、犬と猫の命をテーマにした映像作品・本を数多く手がけてきた山田あかねが脚本を担当。『影踏み』『花戦さ』の篠原哲雄監督がメガホンを取った。

自然豊かな青森に北里大学のキャンパスが十和田にあるというのは、姪っ子が通っていたので知っていたけど行ったことはなかった。こんなにも広大な自然の中にあるというのは、とてもうらやましく思った。しかし青森のように広い大きな家がたくさんあるようなところでも、捕獲され、保健所送りされてしまう動物がけっこういるということが驚きだった。そして『犬部』である。動物に対する純粋な気持ちを持つ学生たちの気持ちが伝わってくる。
保健所に収容され殺処分にされる動物たちのことを扱った作品は、山田あかね監督の『犬に名前をつける日』や、シネジャスタッフ泉悦子さんの『みんな生きている ~飼い主のいない猫と暮らして~』などに詳しい。いつも乗り降りする駅でも、犬や猫の保護家庭を募集している人たちがいる。いろいろなところで、動物たちを救うために活動しているのを見かける。それほど保護を必要としている動物たちがたくさんいるということなのだろうか。不妊手術をして野に放つというやり方が多いようだけど、人間の都合で動物たちは振り回されている(暁)。


『犬部!』公式HP 
2021年製作/114分/G/日本
配給:KADOKAWA

posted by akemi at 12:10| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月17日

夕霧花園  原題:夕霧花園 The Garden of Evening Mists

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監督:トム・リン(林書宇)(『九月に降る風』)
脚本:リチャード・スミス
原作:タン・トゥアンエン(陳團英)
出演:リー・シンジエ(李心潔)、阿部寛、シルヴィア・チャン(張艾嘉)、ジョン・ハナー、ジュリアン・サンズ、デビッド・オークス、タン・ケン・ファ、セレーヌ・リム

1980年代、マレーシアで史上二人目の女性裁判官ユンリン(シルヴィア・チャン)は連邦裁判所事を目指していた。かつて愛した男、謎多き日本皇室庭師の中村(阿部寛)が、とある財宝にまつわるスパイとして指弾されているのを知り、彼の潔白を証明できる証拠を探すことを決意する。
ユンリンにとって、忘れることのできない約30年前の記憶を手繰り寄せる。
1950年代。イギリスの統治が再開されたマレーシア。ユンリン(リー・シンジエ)は戦犯法廷のアシスタントとして働いていた。戦時中、収容所で亡くなった妹の夢であった日本庭園を造りたいと、キャメロンハイランドで活躍する日本人庭師の中村の元を訪ねる。中村は、現在造っている庭園“夕霧花園”で見習いしながら庭造りを学ぶことを提案する。ユンリンは、第二次世界大戦中のことを思い起こす。イギリスの植民地のマラヤ(現在のマレーシア)でユンリンは妹のユンホンと共に日本軍によって強制労働に駆り出されていた。日本は敗戦し、現地人捕虜を収容所ごと焼き払う。ユンリンはただ一人助かり、妹を見殺しにしてしまった自責の念に苛まれ続けていた。日本人に対しても悲しみと憎しみを抱えていたのだが、造園を手伝いながら、どこかミステリアスで孤独な中村に惹かれていく・・・

台湾のトム・リン(林書宇)監督が、マレーシアの作家タン・トゥアンエン(陳團英)の英文小説でブッカー賞ノミネートの「The Garden of Evening Mist」を映画化。
裁判官として活躍するユンリンが、かつて愛した日本人の皇室庭師である中村のスパイ容疑を晴らそうとする中で、時代をさかのぼって過去の出来事が明かされていきます。最後に、ユンリンが日本占領下のマラヤで妹と共に受けた辛い出来事にたどり着き、胸を締め付けられる思いがしました。中村が造る夕霧花園に秘められた謎にもぞくぞくさせられました。中村を演じた阿部寛、はつらつとした裁判官を演じたシルヴィア・チャン、どちらもとても素敵です。(咲)


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トム・リン監督(2020.3大阪アジアン映画祭リモート挨拶 オープニングにて)

昨年の大阪アジアン映画祭オープニング作品。昨年3月はすでにコロナの影響で、海外からのゲストは来日できず、トム・リン監督はリモートで登場。東京や名古屋からいつもこの映画祭に参加するメンバーも私の周りでも数人来ませんでした。でもこの作品、けっこう人が入っていました。
作品の内容的には、いろいろなことが入り込み、人間関係とか登場人物の関係性とか複雑で、もう一度見ないと消化不足という感じで終わっていたので、それから2年余り、再度見て、関係性、マラヤの当時の状況、今日の状況とか、いろいろなことが繋がってきて、胸の中にあったモヤモヤを解消することができた。それにしても、時代背景、マラヤでの日本軍のこと(太平洋戦争時の日本による支配)、イギリス植民地時代の影響など、いろいろなことが絡まっていて、人間関係の前に、そういう時代背景を理解して、日本人、イギリス人とのかかわりなども含めて、物語は語られている。それにしても日本人庭師というのがマラヤで活躍していたという背景、やはり不思議だなと思う。現在のマレーシアは、マレー系、インド系、中華系の民族からなる国になっているが、その融和というのが一番の課題なのだろう。
私が1990年、初めての外国、オーストラリアに行った時、マレーシア航空で行ったので、最初に降り立ったのがマレーシア・クアラルンプールだった。そこで1日街中を歩きまわった時、インド人街、マレー人街、中国人街と、はっきりと住む街が分かれているのに驚いたが、それはマレーシアの歴史から来たものだった。その時は知らなかったけど、ヤスミン・アフマド監督の『細い目』でマレーシアの人種構成、人種間の距離というのを知った。この映画はさらに、台湾のトム・リン監督が製作した作品ということで、また、マレーシア在住の華人とは思いが違うかもしれない(暁)。

台湾・金馬奨最優秀スタイリングデザイン賞
2020年大阪アジアン映画祭オープニング作品

2020年/マレーシア/120分/カラー/ビスタ/5.1ch
字幕:川喜多綾子/字幕監修:山本博之
配給:太秦
公式サイト:http://yuugiri-kaen.com/
★2021年7月24日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開


posted by sakiko at 19:18| Comment(0) | マレーシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

復讐者たち  原題:Plan A

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監督・脚本:ドロン・パズ、ヨアヴ・パズ
出演:アウグスト・ディール、シルヴィア・フークス、マイケル・アローニ、イーシャイ・ゴーラン

1945年、第二次世界大戦での敗戦直後のドイツ。ナチス・ドイツによるユダヤ人絶滅政策ホロコーストを生き延びたユダヤ人男性マックス。離ればなれになった妻子の行方を捜すために難民キャンプに向かう途中、英国軍の指揮下にあるユダヤ旅団の兵士ミハイルと知り合う。難民キャンプで、妻子がナチスによって殺されたことを知ったマックスは、ナチスの残党への復讐を行っているユダヤ旅団に加わる。そんなある日、森の中で戦争の終結を知らないユダヤ人のパルチザンの一味ナカムと出会う。マックスは、恩人ミハイルより、過激分子ナカムの動向を監視する任務を与えられる。ナカムの隠れ家に潜入したマックスは、彼らが準備を進める“プランA”という復讐計画の全容を突き止める。それは水道水に毒物を混入し、ドイツの市民600万人を殺害するという恐ろしい計画だった・・・

本作の監督を務めたのは、イスラエル出身のドロン・パズとヨアヴ・パズの若い兄弟。
多くの民間人を巻き込む極悪な復讐計画に実際に関わった人たちへのインタビューを重ねて、本作を紡ぎました。ホロコーストで家族すべてを亡くし、生きる望みを失った人たちが、復讐することを生きる目的にしてしまったという切実だけれど残念な状況。けれども、憎悪は憎悪を生むだけ。そのことに気づけば、自ずと行動は変わってくるはずなのですが、今の世界をみると、そうでもないのを憂います。
ホロコーストでひどい目にあったからと、ユダヤ人がパレスチナ人を追い出したというのもまた、許されることではありません。 平和共存の世界はいつ実現するのでしょう・・・ (咲



2020年/ドイツ、イスラエル/英語/110分/シネスコ/5.1ch
日本語字幕:吉川美奈子
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
公式サイト:http://fukushu0723.com/
★2021年7月23日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネクイントほか全国公開

posted by sakiko at 19:05| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

サンマデモクラシー

2021年7月3日より沖縄・桜坂劇場にて先行公開
7月17日よりポレポレ東中野ほか全国順次公開 劇場情報 

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©沖縄テレビ放送

監督・プロデューサー:山里孫存
撮影・編集:祝三志郎
音楽:巻く音 jujumo
ナレーター:川平慈英
ナビゲーター:志ぃさー(藤木勇人)

サンマにかけられた関税の還付訴訟をきっかけに、統治者アメリカに挑んだウシ・カメ・ラッパの物語

1963年沖縄。米軍占領下にあった沖縄で、祖国復帰を願う人々が日本の味として食べていたサンマ。サンマには輸入関税がかけられていた。それは琉球列島米国民政府の高等弁務官布令、物品税法を定めた高等弁務官布令十七号(1958年公布)による。しかし、関税がかかるとされた魚の項目に「サンマ」の文字はなかった。そこで、ずっと関税を払い続けてきた魚卸業の女将・玉城ウシは、「関税がかかっているのはおかしい!」と、琉球政府に徴収され続けていた税金の還付訴訟を起こした。求めた額は現代の貨幣価値で7000万円。ウシおばぁが起こした「サンマ裁判」は、いつしか、自治権を求め、統治者アメリカを追い詰める、民主主義を巡る闘いになっていった。この裁判を支えた弁護士は下里恵良。大きなことを言うことからラッパと呼ばれ、政治家でもあった。信条は違えど、“米軍(アメリカ)が最も恐れた政治家”、瀬長亀次郎とは盟友であり、彼らの行動の足跡をたどり、統治者アメリカと自治権をかけて闘った人々の姿を伝える。
このドキュメンタリー、『サンマデモクラシー』の監督は沖縄テレビの山里孫存。2020年3月公開の『ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記』に続き、沖縄テレビ第2弾となるこの作品を作った。ナレーションは川平慈英。ナビゲーターは、うちな~噺家 志ぃさー(藤木勇人)。沖縄のお笑い集団「笑築過激団」のメンバーとして活動。並行して、沖縄音楽ブームを牽引した「りんけんバンド」のメンバーとしても活躍。

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うちな~噺家 志ぃさー ©沖縄テレビ放送

サンマをめぐる裁判が、沖縄の復帰運動に広がっていったという話を知り驚きだった。ウシおばあの、何事にも動じないようなどんと構えたような容姿が心強かった。ああいう人、沖縄には多いよねと思った。保守派の政治家だった下里恵良弁護士がウシおばあを支え裁判を戦った話の元をたどれば、彼が発した言葉がきっかけだった。それにしてもあの時代、保守、革新という立場を越え、沖縄復帰のため、人々が声を上げ運動をしていったということは沖縄の「結(ゆい)」という言葉を思い起こさせてくれる。草の根民主主義の発展、あるいは発見。うちな~噺家・志ぃさーが、時々画面に登場し、話を結び付け、難しい内容の話を、穏やかにユーモアたっぷりに進めてくれる。この方はどこかで見たことがあると思ったら、NHK連続テレビ小説「ちゅらさん」(2001)にも出演していた。またナレーター川平 慈英のお父さん川平朝清も映画の中に出演し、当時のことを語る。川平朝清さんは、沖縄最初のアナウンサーとして活躍していた人。この話は歴史の影に埋もれていたとのこと。こういう埋もれた歴史を掘り起こし、若い人たちに伝えていくドキュメンタリー、ぜひぜひ残していってほしい(暁)。

『サンマデモクラシー』公式HP
『サンマデモクラシー』予告編
2021年製作/99分/G/日本
配給:太秦
posted by akemi at 19:03| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

最後にして最初の人類   原題:Last and First Men

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監督・脚本・音楽 ヨハン・ヨハンソン
原作:オラフ・ステープルドン
ナレーション:ティルダ・スウィントン

20億年先の未来に生きる人類第18世代のひとりが、20世紀に生きる第1世代の私たちにテレパシーで語りかけてくる。奇怪なモニュメントの数々を背景に語られる壮大な叙事詩。

ヨハン・ヨハンソン(1969~2018)。
アイスランド出身で、クラシックと電子音を融合させた音楽スタイルで知られ、映画をはじめ舞台・コンテンポラリーダンスなど幅広いジャンルで活躍した作曲家。映画音楽では、『博士と彼女のセオリー』(2014/ジェームズ・マーシュ監督)でゴールデングローブ賞作曲賞を受賞し、大ヒットした『メッセージ』(2016/ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督)でも同賞にノミネート。世界的な注目を集めるようになったが、キャリア絶頂期にあった2018年2月9日にわずか48歳で急死。

『最後にして最初の人類』は、ヨハン・ヨハンソンが生前、最後に取り組んだ最初で最後の長編映画。原作は、英国の哲学者で作家オラフ・ステープルドンの「最後にして最初の人類」(1930/邦訳は絶版)。20世紀を代表するSF作家の一人であるアーサー・C・クラーク(「2001年宇宙の旅」)にも大きな影響を与えたといわれるSF小説の金字塔。
もともとシネマ・コンサートの形式で生上演されていたものがベースになっており、ヨハンソンが監督した16mmフィルムの映像をスクリーンに投影し、女優のティルダ・スウィントンが朗読を加え、ヨハンソンによるスコアをオーケストラが生演奏するというスタイル。ヨハンソンが亡くなった後、16mmフィルムの撮影監督を務めたシュトゥルラ・ブラント・グロヴレンを中心とした参加スタッフが、1本の長編映画として構成。ヨハンソンの死後2年を経て、2020年2月のベルリン国際映画祭でワールドプレミア上映。

20億年後の人は、私たちに何を語りかけようとしているのか・・・
ヨハン・ヨハンソンが、それを映像で表す背景に選んだのが、旧ユーゴスラビアに点在する「スポメニック」と呼ばれる巨大な戦争記念碑。第二次世界大戦の対ドイツ戦で犠牲となった人々を追悼し、社会主義の勝利をアピールするべく建設された石碑。奇怪なモニュメントからは、戦争の虚しさが伝わってくるようです。
まだユーゴスラビアだった1987年に、ドゥブロヴニク(現クロアチア)からアドリア海沿いにイタリアのトリエステに抜ける旅をしたことがあります。どのあたりだったか覚えていないのですが、美しい公園の中に、勇ましい兵士を中心にした戦争記念碑があって、ドキッとしたのを思い出しました。のどかで、絵のような風景の続くユーゴスラビアとあまりにもかけ離れたものに思えたのですが、そのほんの数年後に、国がばらばらになる戦争が起こってしまいました。人類の歴史は戦争の繰り返し。本作を見終わって、いつか自滅することを警告されたような気がしました。(咲)


2020年/アイスランド/英語/71分/DCP/ヨーロッパビスタ1.66:1/5.1ch
字幕翻訳:安藤里絵、字幕監修:浜口稔
配給:シンカ
公式サイト:https://synca.jp/johannsson/
★2021年7月23日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネマカリテ他全国ロードショー.




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かば

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制作総指揮・原作・脚本・監督:川本貴弘
主題歌:騒音寺
出演:山中アラタ(蒲先生)、折目真穂(加藤先生)、近藤里奈(由貴)、辻 笙(良太)、さくら 若菜(裕子)、松山 歩夢(繁)、木村知貴、高見こころ、牛丸亮、石川雄也、安永稔、山本香織、皷美佳、浅雛拓、髙橋瑞佳、趙 博、島津健太郎、白善 哲、徳城 慶太、染谷 有香、竹田 哲朗、中山 千夏ほか

阪神タイガースのリーグ制覇に沸く1985年の夏、被差別部落が隣接する西成区北部の中学校。人々の差別と偏見、貧困など多くの問題を抱えた環境の中で、生徒たちは荒んだ学校生活を送っている。蒲先生(43歳/山中アラタ)ら教師たちは手を焼いていた。
ある日、臨時教員として加藤 愛先生(23歳/折目真穂)が赴任してくるが、初日から生徒に受け入れてもらえず自信を喪失。先輩教師の蒲先生は「今、子どもらは加藤先生を試しとるんや、ただ教師と生徒の関係ではアカンねん」と、得意の野球で生徒と向き合うことを勧める。
案の定、反発する野球部員は「勝負に勝てばコーチとして認める」と豪語するもあっさり敗北。そのうち加藤先生はチャーコという愛称で呼ばれるようになる。
登校拒否になった転校生。家庭を顧みない母親、酒浸りで在日朝鮮人の父と暮らす女生徒。出身地を恋人に告白することができない卒業生。服役中の父親に代わって家庭を支える野球部主将。蒲先生ら教師たちは、それぞれの事情を抱えた生徒たちと正面から向き合い、時には生徒の家庭へ強引に入り込んでまで、彼らの生き方を模索する。

実在した「かば」と呼ばれるベテランの蒲先生を中心に同僚の先生たちが、問題だらけの生徒たちと向き合う姿を描いてます。生徒に現れる問題は、実は家庭の中、大人たち、ひいては社会の問題です。蒲先生はそれでも自分にはどうにもできないと諦めることなく、「あの子たちに出逢えてよかった」と言い合える同僚たちと、目の前の子どもたちに真剣に向き合ってきました。
2010年に58歳で亡くなった蒲先生の葬儀には学校関係者だけではなく、卒業生や住民たちなど蒲先生を惜しむ人たちが何百人も集まったそうです。川本監督は2014年から2年半にわたり綿密な取材を続け、7年余りかかってこの映画を完成させました。台詞は取材で集められた生きた言葉です。蒲先生に負けず劣らず熱い川本監督に、詳しいお話を伺いました。
こちらです。http://cineja-film-report.seesaa.net/article/482421995.html
自分が子どもだったころ、お世話になった懐かしい先生たちを思い出して思わず涙腺緩みました。DVDや配信の予定はありません。どうぞ劇場でご覧ください。(白)


この映画の舞台、大阪西成。労務者の街として、ニュースに出てきたり、映画や小説などの舞台にもなってきた。でも学生と先生を主題にした映画というのは、これまでほとんどなかったかもしれない。社会の吹き溜まりのような場所ともいわれる西成。貧困、出自、偏見、校内暴力、すさんだ家庭など、過酷な環境のなかで生活する人々がいて、家族、そして学校も当然ある。そして、よりよい未来、生活、コミュニティを築くために活動していた蒲益男さんという先生がいた。とても感動的な実話を映画にした作品だった。
これまで、この西成というと、「あいりん地区」「釜ヶ崎」と呼ぶことも多く、日雇い労働者が多く集まる街、安宿のドヤ街、炊き出しというイメージで、家族が住み、学生もいるというイメージはなかった。この作品で、家族もいるし、子供もいると、改めて思わせてくれた。この時から35年もたっているけど、今の西成地区はどんな感じなんだろう。
東京から大阪アジアン映画祭に通って10年くらい。ここ数年は全日参加するために、大阪に7,8泊することがある。最初の数年は梅田周辺に宿を取っていたけど高いので、ここ数年は宿代が安い西成地区にも泊まっている。大阪出身の人には「あの地域は治安も悪いし近づかないほうがいい。大阪人は近づかないよ」と言われた。それでも一度行ってみたかったので、5年くらい前に初めて西成(駅は新今宮)のホテルに泊まった。酔っぱらったオジサンが街をウロウロしているんじゃないかとか、ヒヤヒヤしながら行ったけど、そんな危険性は感じなかった。そして外国人がけっこう泊まっている。でも歩いていて、街中にタバコの匂いがただよっていたのには閉口した。ホテルは一泊2800円くらいのところに泊まった。3年くらいはそこを利用していたけど、やはり安いだけあって机とかなく、パソコン作業などもやりにくいし、風呂が12時くらいまでで、あとはシャワーしか使えなかったりして不便なので、去年はとうとう十三(じゅうそう)のホテルにした。なので、ほんの3,4年の旅行者としての経験しかないけど、西成は「そんなに危険な地区ではない」という印象を持っている。
そんな目でこの作品を観ると、やはり現代は街も変わっていて高いビルもあるのに、この映画ではそれが映っていない。通天閣を遠くから見ると、高い建物もあるはずなのになと思っていたら、CGでだいぶなくしていたのですね。1985年の街になっていると思いました。また映画の中では川が随分出てきたけど、私はあのあたりで川を見たことがなかったので、どのあたりを撮っていたのか気になっている。地図を見た限りでは西側のほうに川があり、その先が海のようだった。そして海に沈む夕日が素敵だった(暁)


2021年/日本/カラー/135分
配給:「かば」製作委員会
(C)「かば」製作委員会
https://kaba-cinema.com/
2021年7月24日(土)より新宿 K’s cinemaほか全国順次公開
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親愛なる君へ(原題:親愛的房客 )

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© 2020 FiLMOSA Production All rights

監督・脚本:チェン・ヨウチェ
監修:ヤン・ヤーチェ
出演:モー・ズーイー(リン・ジエンイー)、チェン・シューファン(チョウ・シウユー)、バイ・ルンイン(ワン・ヨウユー)、ヤオ・チュエンヤオ(ワン・リーウェイ)、ジェイ・シー(ワン・リーガン)、シエ・チョンシュアン(検察官)、ウー・ポンフォン(警察官)、シェン・ウェイニエン(警察官)、ワン・カーユエン (ネット市民)

ピアノ講師をしているジエンイーは、間借りしている家の老婦・シウユーの介護と、その孫のヨウユーの面倒をひとりで見ている。血のつながりもないけれども、今は亡き同性パートナー、リーウェイの家族だからだ。彼の家に住み、彼の家族を愛することが何より重要なことだった。
しかしある日、痛みに苦しんでいたシウユーが亡くなってしまう。その死因を巡り、ジエンイーは不審の目で見られ警察沙汰になってしまうが、弁解もせず罪を受け入れようとする。それは愛する“家族”を守りたい一心から出たことだった。

シウユーは糖尿病らしく、脚や目に重い症状が出てきます。入院も手術も拒否して、何度も痛みを訴えます。これは在宅で看病する人にも辛い状況です。指先まで優しいジエンイーに「よく頑張っているね」と褒めてあげたいくらいです。母親が亡くなって、リーウェイの弟が戻ってきます。それまで実の息子でありながら、母の世話もせずジエンイーまかせだったのに、母親の財産の行き先を聞いて態度が変わります。ああ、やれやれ。控え目で辛抱強く、リーウェイを心から大切に想っているジエンイーをモー・ズーイーが静かに演じて、切なさが増します。ネットでジエンイーと知り合う男を演じたワン・カーユエンも印象に残りました。
ジエンイーはゲイであることで、常に理不尽な目に遭います。同性でも異性でも、相手を大切に想う気持ちは変わらないでしょうに。検察官がジエンイーに「なぜそこまで他人の世話をするのか」と尋ねたときに、「自分が女性だったら、そう聞くでしょうか?」と逆に質問します。相手は黙ります。
でも、今や女性だからといって夫亡き後、義父母を看取るとは限りませんよ。実の子だってそう、と自分の終活を思わず考えました。性別に関わらず、血のつながりがなくとも「家族になれる」というお話が最近多いです。家族にもいろんな形があっていい、ゆるやかなつながりで心地よく生きられればいいですよね。(白)


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© 2020 FiLMOSA Production All rights

映画が始まって程なく、背景に低い山に囲まれた港! あ、基隆!と、もう感無量でした。基隆は、私の母が7歳から終戦の年までの10年間を過ごした町。『親愛なる君へ』でジエンイーが間借りしている家は、少し高台に建っていて、時折映し出される港の風情がとてもいいです。
亡くなったパートナーの幼い息子と老いた母親を甲斐甲斐しく世話をするジエンイーの姿が切ないです。“国民のおばあちゃん”と呼ばれる名女優チェン・シューファン(陳淑芳)さん演じるシウユーが「痛い痛い」と苦しむのをなんとかしてあげたいと思うジエンイーや孫。自宅での介護の大変さも胸に迫ります。折に触れて基隆の港が背景に出てきた本作、シウユーの苦しむ姿が10年前に癌に苦しみながら亡くなった母に重なりました。(咲)
★スタッフ日記に、思いをたっぷり書きました。
『親愛なる君へ』 基隆で育った母の最期を想う(咲)

莫子儀(モー・ズーイー)には、『台北に舞う雪~Snowfall in Taipei』( 霍建起監督)が東京国際映画祭で上映された時(2009年)にインタビューしたことがある(シネマジャーナル本誌78号に掲載。HPにも掲載)。その頃はインディペンデントの作品に出ていて、この作品が初めての商業作品出演だった。その話し方から感じたのは、穏やかだけど、芯のある役者というイメージだった。それ以来、ずっと彼の出演作品を気にかけていた。その時からもう11年にもなる。激しさはないけど、穏やかで芯のある役者というイメージは今回の作品でもそう感じられた。

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2009年東京国際映画祭『台北に舞う雪~』舞台挨拶時の莫子儀(撮影 宮崎暁美)

去年夏頃、莫子儀のインタビュー記事が載っているシネマジャーナル78号(2010年春号)を購入したいという日本滞在中の台湾の方から連絡があり、何冊か購入していただいた。それで久しぶりに彼のことを思いだし、どうしているのかなと思っていたら、その方から11月にメールが来て、「莫子儀が『親愛的房客』で主演男優賞を獲得した」と連絡があり、「この作品、日本で公開されますかね?」と質問もされ、私は「来年あたり公開されるかもしれませんね」と答えたものの、情報はない状態だった。そうこうしているうちに6月頃、この映画の日本公開の情報を知った。

この作品を観て、ジエンイーは間借り人だけど、亡くなってしまった恋人の母親シウユーと子供ヨウユーを見捨てるわけにはいかなかったんだろうなと思い、彼と一緒に登った思い出の山など、情緒的な話の展開に引き寄せられた。そして、ジエンイーが逮捕された時に離れたくなかったヨウユーの行動を見て、血の繋がりを越えた家族の絆を感じた。
また、彼らが住んでいる家(マンション?)のベランダから見えた港の景色を見て驚いた。基隆だ! 基隆には3回行ったことがあり、去年2月にも行ったばかり。新コロナの影響が出始めたころで、行くのをさんざん迷ったけど、もう20年近く前から行ってみたかった十分(シーフェン)の天燈祭り(ランタン祭り)にやっと行けるというチャンスを逃したくなかったので出かけた。天燈上げの前に近くの基隆に行ったのだけど、その時は侯孝賢監督の『ミレニアル・マンボ』の冒頭に出てきた基隆の歩道橋が取り壊されてしまうというのでそれを探しに行った。橋をみつけた後、食堂に入ったけど、その食堂の後方あたりにあるビルのどこかが、この家族が住んでいるという設定の場所だろうと、この作品を観て思った。基隆湾の光景が懐かしかった。
天燈上げに興味を持ったきっかけは『シーディンの夏(石碇的夏天)』で、この作品で初めて天燈上げを観た。その後いろいろな作品で「天燈」が上がるシーンを観て、ますます興味を持った。そしていつかこの十分の「天燈祭り」に行ってみたいと思うようになった。去年、十分に行った時、道路標識で「石碇方向」というのを見て、石碇はこの十分の近くなんだと思った。この『親愛なる君へ』の作品紹介を書くにあたっていろいろ調べるうち、鄭有傑(チェン・ヨウチエ)監督のフィルモグラフィの中に『シーディンの夏』をみつけ、『シーディンの夏』は鄭有傑監督の作品だったんだと改めて思い縁を感じた。「基隆」しかり、「石碇」しかり、鄭有傑監督は、侯孝賢監督同様この台湾北部の地域が好きなのかもしれない。  
* 侯孝賢監督『悲情城市』は基隆、九份が舞台。『恋々風塵』は十分が舞台。
* 台湾ロケ地めぐり 平渓線沿線『台北に舞う雪』公開記念

台湾金馬奨では、老母を演じた81歳の陳淑芳(チェン・シューファン)がこの作品で助演女優賞を獲得したが、彼女は『孤味(弱くて強い女たち)』では主演女優賞を受賞し、金馬奨史上初めて、主演女優賞と助演女優賞ダブル受賞を果たした。『弱くて強い女たち』は、去年(2020)の東京国際映画祭で上映されたけど、この作品も日本公開されますように(暁)。


◆ジエンイーが恋人や、恋人の子供ヨウユーと登った山は
合歓山(ハーファンシャン Héhuān Shān)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%88%E6%AD%93%E5%B1%B1

◆終盤の圏谷の光景は雪山(シュエシャン) 台湾で2番目に高い山 
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%AA%E5%B1%B1_(%E5%8F%B0%E6%B9%BE)

2020年/台湾/カラー/シネスコ106分/R18+
原題:親愛的房客 Dear Tenant
配給:エスピーオー、フィルモット
(C)2020 FiLMOSA Production All rights
http://filmott.com/shin-ai/
★2021年7月23日(金・祝)シネマート新宿・心斎橋ほか全国順次公開

*シネマジャーナルHP 特別記事
『台北に舞う雪~Snowfall in Taipei』莫子儀(モー・ズーイー)インタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2010/taipei-snow2/index.html
posted by shiraishi at 00:24| Comment(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月16日

リスタート

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監督・脚本:品川ヒロシ
撮影:Yohei Tateishi
主題歌:「リスタート」HONEBONE
出演:EMILY、SWAY(DOBERMAN INFINITY/劇団 EXILE)、品田誠、朝倉ゆり(エラバレシ)、夏目ベール(純情のアフィリア)、藤井俊輔、向井日菜海、阿部隼也、かんた、岩崎う大、もりももこ、西野亮廣(キングコング、松田大輔(東京ダイナマイト、庄司智春、小杉竜一(ブラックマヨネーズ)、黒沢あすか、中野英雄

杉原未央、28歳。職業、シンガーソングライター 元地下アイドル。
たった一度の失敗で人生は終わらない。何度だって、どん底からだって、″リスタート″できる。

北海道下川町で育った未央は、シンガーソングライターを目指し上京。10年の月日が経ち、思い描いた夢とは異なるものの、地下アイドルとして一生懸命に活動していた。有名アーティストとのスキャンダルによって、世間からバッシングを受け、SNSで炎上。夢に破れ傷つき、故郷に帰ってきた未央だったが、周囲とも上手く接することが出来ずひとり殻に閉じこもってしまう。そんな中、同級生の大輝は、未央を思い出の場所へと連れ出す。自然豊かな景色、支えてくれる仲間や家族の存在によって未央はゆっくりと前を向き始める―。

品川ヒロシ監督何作目でしょう。初めての女性が主演+暴力場面なしの直球作品。歌手を目指して頑張っていたのに挫折、故郷へひっそり戻った未央をHONEBONEのボーカルEMILYが演じています。監督の一目ぼれで熱烈オファーを受けた彼女の、人生最初で最後だろうアイドル姿がとても可愛いです。必見。傷ついた未央をそっと癒すのは家族と友人、故郷の自然。北海道・下川町は旭川よりさらに北にあります。北海道生まれの私、宗谷本線の天塩駅を電車から見ただけで降りたことはありませんでした。いいところだなぁ。
町をあげてのロケ協力、町役場のHPには『リスタート』特集ページもできています。特産品が当たるクイズもありますので、前もってチェックしてから映画館へ。当たるかも。
森や川で心洗われ、本来の自分を取り戻すのは未央だけではありません。未央が笑顔になり、のびやかな歌声が響くまでをぜひご覧ください。
コロナ禍の影響で約2年もの公開延期を経て念願の全国公開の初日、上映会場のヒューマントラストシネマ渋谷で、品川ヒロシ監督、出演者が揃っての舞台挨拶がありオフィシャル写真をいただきました。(白)


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公開記念舞台挨拶
品川ヒロシ、黒沢あすか、SWAY、EMILY、中野英雄、朝倉ゆり

2020年/日本/カラー/シネスコ/100分
配給・宣伝 吉本興業、ハピネットファントム・スタジオ
製作 吉本興業
©️吉本興業
公式HP:https://restart.official-movie.com/
公式 Twitter:@movie_restart  
公式 Instagram:@restart.movie
★2021年7月16日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷、テアトル新宿ほか全国公開
posted by shiraishi at 22:16| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月11日

ジャッリカットウ 牛の怒り   原題:Jallikattu

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監督:リジョー・ジョーズ・ペッリシェーリ
出演:アントニ・ヴァルギース、チェンバン・ヴィノード・ジョーズ、サーブモーン・アブドゥサマド、ジャーファル・イドゥッキ、シャーンティ・バーラクリシュナン

南インド、ケーララ州の奥深い森の中にある小さな村。土地が買えなくて肉屋になったさえない男アントニ。水牛を屠ろうと鉈を研ぎ振りおろそうとすると、命の危機を察した牛は怒り狂って全速力で逃げ出す。夕食のカレーや、婚約式の料理のために屠られるのを待ち構えていた人々も、アントニと共に一団となって牛を追いかける。暴走する牛は、村の商店を破壊し、ハーブやタピオカ畑も踏みつぶして台無しにしてしまう。
農場主や教会の神父、地元の警察官も交え教会に集まり対策を立てる人々。穴を掘りワナをしかける。
アントニは恋心を寄せるソフィに愛想を尽かされていたが、自分の手で牛を捕まえてソフィに見直してもらいたいと奮闘する。一方、かつて密売の罪で村を追放された荒くれ者の猟銃使いクッタッチャンが呼び戻される。ソフィをめぐっていがみあい、自分を密告したアントニを恨んでいた。牛追い騒動は、いつしか人間同士の醜い争いになっていく・・・

松明をかかげて、牛を追って森の中を疾走する大勢の男たちの姿に度肝を抜かれます。
バリ島のケチャにも似た掛け声が森の中に不気味に響きます。正常心を失って、人間ピラミッドまで作ってしまう男たちに対し、家で静かに過ごしている女性たち。女性は家にいるものという考えがあるのかもしれませんが、かえってしたたかで賢く思えます。
ケーララは、インドの中でもキリスト教徒の多い地ですが、この村にも土地持ちの人が寄付した場所に教会が建てられています。
ヒンドゥー教徒は牛は神聖なものとして食べませんが、キリスト教徒はOK? というか、牛と水牛は別物なのでヒンドゥー教徒も食べるのか?と、関係のない疑問がちょっとわきました。
それにしても、CGをほとんど使わないで、実物の水牛とアニマトロニクスを駆使して描いた水牛がリアルです。監督はスタッフと一緒に『ジョーズ』と『ジュラシック・パーク』のシーンを何度も繰り返して観て作り上げたのだそうです。牛だけでなく、どうやって撮影したのかと思う場面が多々あります。撮影監督のギリーシュ・ガンガーダランは、イスラーム映画祭6で上映された『青い空、碧の海、真っ赤な大地』の撮影も担当された方。
とにかく凄い映画なのですが、最後のオチで和やかな気分にさせられました。(咲)


2021年度アカデミー賞国際長編映画賞インド代表作品

2019年/インド/マラヤーラム語/91分/スコープサイズ/カラー/5.1ch
字幕:松岡環 / 字幕監修統括:粟屋利江
配給:ダゲレオ出版(イメージフォーラム・フィルム・シリーズ)
(C)2019 Jallikattu
公式サイト:http://www.imageforum.co.jp/jallikattu/
★2021年7月17日(土)よりシアター・イメージフォーラムにてロードショー

posted by sakiko at 19:58| Comment(0) | インド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

17歳の瞳に映る世界   原題:Never Rarely Sometimes Always

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監督・脚本:エリザ・ヒットマン
製作総指揮:ローズ・ガーネット、バリー・ジェンキンス
音楽:ジュリア・ホルター
出演:シドニー・フラニガン タリア・ライダー セオドア・ペレリン ライアン・エッゴールド シャロン・ヴァン・エッテン

17歳のオータム。高校の文化祭でギターの弾き語りをする彼女に「メス犬!」と野次が飛ぶ。それでも歌い続けるオータム。愛想がなく、友達といえば、同じスーパーでバイトをしている従妹のスカイラーくらいだ。ある日、オータムは予期せぬ妊娠をしたかもしれないとウィメンズ・クリニックに行く。陽性。でも、地元ペンシルベニア州で未成年が中絶するには親の同意が必要だ。スーパーでレジ打ちしている時に吐き気を催す。察したスカイラーが付き添って、親の同意なしに中絶できるニューヨークに向かう・・・

エリザ・ヒットマン監督が、本作を作ろうと思ったきっかけは、2012年、アイルランドで中絶が違法で中絶手術を受けられなかった為に亡くなった女性がいるという記事を読んだこと。アイルランドの女性は中絶するためにイギリスに渡ることも知りました。(アイルランドでは、2018年に妊娠24週まで中絶が可能に)
その後、中絶手術を受けるためにニューヨークにやってきたものの、莫大な費用のために夜をベンチで過ごすという記事をみたことなどから、舞台をアメリカに。監督自身も妊娠を経験し、ウィメンズ・クリニックなどでのリサーチも重ねて、この物語を紡ぎました。
原題の「Never Rarely Sometimes Always(まったくない、ほとんどない、時々ある、常にある)」は、クリニックで、妊娠した女性に生理や性交渉などについて質問する時の回答の選択肢。妊娠がどんな状況の性行為から起きたものだったかもあぶりだしていきます。
一方で、クリニックのカウンセラーの女性ケリーが、「中絶を誰にも強要されずに自分で決めたなら何の問題もない」とオータムに語ります。罪悪感に捉われがちの女性に対して、なんと心強い言葉でしょう。
このケリーは、監督がクイーンズにあるチョイシズ・ウーマン・メディカル・センターを取材した時に知り合い、彼女の言葉に感銘を受けて、カウンセラー役に抜擢したとのことです。
ニューヨークで、費用の工面をアドバイスしてくれるなど、親に知られることなく中絶できる体制があることに感心しました。日本ではどうなっているのか気になりました。
予期せぬ妊娠をして親にも言えなくて、たいていの場合、一人で悩むところ、オータムにはそばにいてくれる従妹がいて、どんなにやすらいだことかと思いました。多くを語らず、そばに寄り添ってくれるというのは、心地よい支えだと感じました。
観終わったときには、10代、20代の若い女性たちに是非観てもらって、望まない妊娠で苦しむことのないよう注意してほしいと思ったのですが、これは、若い男の子にこそ観てもらって、迂闊な行為が相手の女の子を苦しめるかもしれないことを心してほしいと思いました。避妊の大切さを、男女共に映画から学んでほしいものです。(咲)



第70回ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプリ)
サンダンス国際映画祭ネオリアリズム賞

2020年/アメリカ/101分/ユニーバサル作品
字幕翻訳;稲田嵯裕里
配給:ビターズ・エンド、パルコ
公式サイト:https://17hitomi-movie.jp/
★2021年7月16日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー




posted by sakiko at 18:50| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

少年の君 原題:少年的你 英題:BETTER DAYS

劇場公開 2021年7月16日
新宿武蔵野館、Bunkamura ル・シネマほか全国ロードショー

(C)2019 Shooting Pictures Ltd., China (Shenzhen) Wit Media. Co., Ltd., Tianjin XIRON Entertainment Co., Ltd., We Pictures Ltd., Kashi J.Q. Culture and Media Company Limited, The Alliance of Gods Pictures (Tianjin) Co., Ltd., Shanghai Alibaba Pictures Co., Ltd., Tianjin Maoyan Weying Media Co., Ltd., Lianray Pictures, Local Entertainment, Yunyan Pictures, Beijing Jin Yi Jia Yi Film Distribution Co., Ltd., Dadi Century (Beijing) Co., Ltd., Zhejiang Hengdian Films Co., Ltd., Fat Kids Production, Goodfellas Pictures Limited. ALL Rights reserved.

ただ明日を信じて生きる孤独な少女と、今日を生き抜く事で精一杯の不良少年。
孤独な魂が惹かれあった先にあるのは、美しい奇跡か、残酷な現実か。


スタッフ・キャスト
監督:曾國祥(デレク・ツァン)
脚本:林詠琛(ラム・ウィンサム)、李媛(リー・ユアン)、許伊萌(シュー・イーメン)
撮影:余靜萍(ユー・ジンピン)
字幕翻訳:島根磯美
キャスト
陳念(チェン・ニェン):周冬雨(チョウ・ドンユィ)
小北(シャオベイ):易烊千璽(イー・ヤンチェンシー)
尹昉(イン・ファン)
黃覺(ホアン・ジュエ)
吳越(ウー・ユエ)
周也(チョウ・イエ)

中国内陸部の進学校を舞台に、苛烈な受験戦争、壮絶ないじめ、生活苦などの社会問題を描いた作品でありながらサスペンスの要素も。実際の生活の中で出会うことはほとんどないような出会い、二人が心を通わせるまでの物語が胸を打つ。
優等生のチェン・ニェン(チョウ・ドンユィ)は難関大学に合格して北京に行けば人生を変えることができると信じ、毎日懸命に勉強している。全国統一試験(高考」まであと数ヶ月となり、生徒たちは受験勉強に励む。そんな中、彼女は3人の女子生徒からいじめられるようになってしまった。ある日、不良少年シャオベイ(イー・ヤンチェンシー)と知り合い、寂しい思いを抱え生きる者同士、孤独な心を通わせるようになった。高考まで一ヶ月、いじめはますますエスカレートしてゆく。放課後、ニェンを待ち伏せするようになり、危険を感じたニェンはシャオベイにボディーガードを頼む。その後がミステリー調になっていて驚きの展開。中国での過酷な大学受験競争と、陰湿ないじめ、そして格差社会の実態が描かれる。

中国では250億円近い興行収入を叩き出す大ヒットに。青春映画ジャンルとしてみれば歴代1位の記録を樹立した。また香港電影金像奨では作品賞・監督賞・主演女優賞を含む8冠を達成したほか、これまで50以上の映画賞を獲得。第93回アカデミー賞国際長編映画賞にもノミネートされ、世界中から評価された。2020年の大阪アジアン映画祭では観客賞を受賞。
チェン・ニェン役は『サンザシの樹の下で』(10)、『ソウルメイト/七月と安生』(16)のチョウ・ドンユイ。中国河北省生まれ。シャオベイ役は中国の3人組のボーイズ・グループTFBOYSメンバー、イー・ヤンチェンシー。2005年に子役として芸能界入り、2013年からTFBOYSのメンバーとして活動。2018年には中央戯劇学院に入学。中国湖南省生まれ。
監督は1979年香港生まれの曾國祥(デレク・ツァン)。香港で俳優として活動を始めたのち監督デビュー。単独監督デビュー作は『ソウルメイト/七月と安生』。父は『インファナル・アフェア』などで知られる俳優・監督の曾志偉(エリック・ツァン)。

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(C)2019 Shooting Pictures Ltd., China (Shenzhen) Wit Media. Co., Ltd., Tianjin XIRON Entertainment Co., Ltd., We Pictures Ltd., Kashi J.Q. Culture and Media Company Limited, The Alliance of Gods Pictures (Tianjin) Co., Ltd., Shanghai Alibaba Pictures Co., Ltd., Tianjin Maoyan Weying Media Co., Ltd., Lianray Pictures, Local Entertainment, Yunyan Pictures, Beijing Jin Yi Jia Yi Film Distribution Co., Ltd., Dadi Century (Beijing) Co., Ltd., Zhejiang Hengdian Films Co., Ltd., Fat Kids Production, Goodfellas Pictures Limited. ALL Rights reserved.


学校でのシーンの中で、机の上に参考書?などを山に積んだ机が出てくるのだけど、クラス中の机がそんな感じで、そんな学校の中の姿というのは、これまで見たことがなく、このシーンだけでも受験戦争の過酷さが伝わってくる。実際もそうなんだろうか。チェン・ニェンの家は母子家庭で、母親は娘を大学に行かせるために出稼ぎに行っていて家にはいない。高校3年でたった一人で暮らしている。そういえば、この設定は前作『ソウルメイト/七月と安生』の主人公安生も同じ。母子家庭で、母親が出稼ぎに行っていて一人暮らしをしている少女だった。中国ではそういうことが地方では多いのだろうか。そして大学に行くことで、そういう生活から逃れられると思って受験勉強に励んでいる。それにしても学校の生徒の多さにはびっくりした。その割には街中では人が少なく感じた。不良少年のシャオベイにしても家族はなく、街の片隅の狭い部屋に住んでいる。孤独な少年少女たちの心の叫びがヒシヒシと伝わってくる。
去年の大阪アジアン映画祭で観た時、このコロナ禍、平日の昼間にも関わらずチケットは売り切れで、皆さんのこの映画に対する期待が伝わってきた。そして期待にたがわず素晴らしい作品だった。それが観客賞につながった。私のとって、去年の大阪アジアン映画祭で観た作品の中で一番印象に残る作品だった。チョウ・ドンユイは、この作品の撮影時28歳くらいだったと思うけど、高校3年生の役が不自然ではなかった。映画祭仲間の飲み会では、その話で持ち切りだった(暁)。


『少年の君』公式HP 
2019年製作/135分/G/中国・香港合作
提供:クロックワークス/楽天TV
配給:クロックワークス
協力:大阪アジアン映画祭


posted by akemi at 16:42| Comment(0) | 中国・香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ファイナル・プラン(原題:Honest Thief)

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監督:マーク・ウィリアムズ
脚本:スティーブ・オルリッチ マーク・ウィリアムズ
撮影:シェリー・ジョンソン
出演:リーアム・ニーソン(トム・カーター)、ケイト・ウォルシュ(アニー・サンプター)、ジェフリー・ドノヴァン(ショーン・マイヤーズ捜査官)、ジェイ・コートニー(ジョン・ニーブンズ捜査官)、アンソニー・ラモス(ラモン・ホール捜査官)、ロバート・パトリック(サム・ベイカー捜査官)

カーターは全米のあらゆる金庫を爆破するスゴ腕の銀行強盗だったが、偶然に出会った女性アニーと恋に落ちる。最愛の女性を得たカーターは、過去を清算し、新しい人生を始めようとFBIに自主すると連絡した。半信半疑でやってきた2人の若い捜査官は、証拠の現金を横領し、証拠を消そうと躍起になった。アニーまで巻き込んでしまい、これが最後と復讐計画=ファイナル・プランに全ての爆薬を投じる!

リベンジ・アクション『96時間』シリーズ、リーアム・ニーソン最新作。以前は理知的な役が多かったのですが、最近はアクション続きです。それも愛する人を守る、奪還するという熱い心と沈着冷静な判断力が必要なヒーローで、またよく似合います。今度は銀行強盗ですが、これまで一人の死傷者も出さず、爆破するのみ。しかも証拠を一切残さず、素顔を誰も知らないというキャラ。こんな男を出し抜こうったって無理無理、と現金に目のくらんだ若い捜査官に言ってやりたい。捜査官側もいい俳優を束にして揃えています。
完璧なヒーローの弱みは愛するアニーで、そっちが狙われてしまいます。だから孤高のスナイパーやエージェントは家族を持たないんですよね。カーチェイスに爆破と男の子の大好きなシーンがいっぱい。(白)


2020年/アメリカ/カラー/シネスコ/98分
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2019 Honest Thief Productions, LLC
https://happinet-phantom.com/finalplan/
★2021年7月16日(金)解禁
posted by shiraishi at 00:47| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

SEOBOK/ソボク(原題:Seobok)

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監督・脚本:イ・ヨンジュ。
撮影:イ・モゲ
音楽:チョ・ヨンウク
出演:コン・ユ(ギホン)、パク・ボゴム(ソボク)、チョ・ウジン(アン部長)、チャン・ヨンナム(イム・セウン)

余命宣告を受けた元情報局エージェント・ギホン。死を目前にしている彼に、 国家の極秘プロジェクトで誕生した人類初のクローン・ソボク(徐福)を護衛する任務が舞い込む。人類の救いにも災厄にもなりうるソボクを狙うものは多く、早々に襲撃を受ける。からくも逃げおおせたが、ギホンとソボクは2人だけになってしまった。 危機的な状況の中、2人は衝突を繰り返しながらも、徐々に心を通わせていく― 。

韓国の人気俳優2人が初共演。お互いに期待大で臨んだようす。
コン・ユ(1979年生まれ184㎝)、パク・ボゴム(1993年生まれ182㎝)、2人並ぶと絵になります。余命僅かなギホンと永遠に生きられるクローンのソボク、皮肉なコンビの逃避行はどちらにも大きな影響を及ぼします。初めて研究所から外の世界に出たソボクは納得しないと動かず、初めて見るものに好奇心いっぱいで(可愛い)、護衛役のギホンをイラつかせます。しかしソボクの細胞が自分の病気を治すかもしれないという期待も捨てられず。過去のトラウマを抱え、自分の内と外の敵(二転三転)とも戦わねばなりません。それでもコン・ユなら大丈夫、とつい思ってしまいます。ソボクは純真無垢かと思えば、感情が発達していないのかと思う面もあり、まだ外に見せていない能力も秘めていそうです。パク・ボゴムの繊細な表情を見逃さないで。
只今兵役中(来春まで)のパク・ボゴムは、ルックスだけでなく、性格の良さ、ファンサービスでも定評があります。彼の韓国のファンクラブの名前は“ボゴム福祉部”というんだそうです。存在していてくれるだけで、癒されるってことでしょうか?ボゴムは漢字で”宝剣”と書くので、日本の厚労省にあたる韓国の”保険福祉部”と発音が似ているという解説になるほど~。
この映画でもコン・ユとのやりとりで見せる天使か赤ちゃんのような純真さにキュンっとやられます。後半、怒涛のアクション(特殊効果も凄い)ではきりり!
*徐福は始皇帝の命を受け、不老不死の霊薬を探した男の名。それにちなんで初のクローンに同じ名がつけられました。(白)


お気に入りの映画『建築学概論』のイ・ヨンジュ監督が放った新作は、クローン人間が登場するSF。『建築学概論』とは、まったく違ったテイストでした。
人間にとって避けられない死。科学の力で作られた永遠に生きられるクローン人間のソボクですが、その細胞で「不死」を得ることを知られ、研究所の外に出たとたん、身に危険がおよぶという皮肉。警護にあたるギホンは、病を抱え、死が現実のものと感じているからこそ、少しずつ感情を持ち始めたソボクに、寄り添うことができたのだと感じました。実に人間味溢れる物語でした。(咲)


タイトルを見た時、クローンで「SEOBOK/ソボク」? なんだろうと思いました。「SEOBOK/ソボク」は「徐福」のハングル読みということを知り、なるほどと思いました。不老不死の薬を探して中国大陸から日本まで到達したのではないかという伝説の人の名前をつけたクローンだったのですね。この名前は中華圏の映画ではよく出てきますが、この「徐福」という名前を見るたびに、そんなにも人類は「不老不死」を求めてさまよったの?と気になっていたのですが、韓国でもこの名前は広く伝説になっていたのですね。クローン人間といういわばロボットを作り、不老不死を作り出す実験をしているという設定。死を克服したい人間たちは「ソボク」をめぐって争う。「ソボクがいれば人間は死に勝てる」ということを信じて余命宣告されたギホンはソボクの護衛を務めるが…。はたして、それは叶うか? 「不老不死」をテーマにクローンと人間の不思議な物語が描かれる(暁)。

2021年/韓国/カラー/シネスコ/114分
配給:クロックワークス
(C)2020 CJ ENM CORPORATION, STUDIO101 ALL RIGHTS RESERVED
http://seobok.jp/
★2021年7月16日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 00:46| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月07日

ねばぎば 新世界

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監督・脚本:上西雄大
出演:赤井英和(村上勝太郎=勝吉)、上西雄大(神木雄司=コオロギ)、坂田聡、徳竹未夏、古川藍、金子昇、神戸浩、田中要次、菅田俊、有森也実(琴音)、西岡徳馬(須賀田元)ほか

大阪新世界。勝吉こと村上勝太郎、血の気の多い若いころは子分のコオロギこと神木雄司とヤクザの組をつぶして回っていた。今は経営していたボクシングジムを閉鎖し、幼なじみの串かつ屋で働いている。インチキ宗教団体「ラメク」から逃げ出してきた少年・武と出会い、父親探しを手伝うことになった。クスリで収監されていたコオロギも新世界に戻ってきた。暴力団と繋がっているというラメクには、勝吉にボクシングと”Never giveup(ねばぎば)精神を叩き込んでくれた恩師の娘・琴音がいた。武とその母もラメクから助け出したい。

ポスターからして昭和の香り。浪花のロッキー・赤井英和さん、情に厚い×熱い男、勝吉を演じています。”アラ還”だそうですが、冒頭でサンドバッグに拳を打ちこむところが見られます。コオロギ役の上西雄大さんは『ひとくず』でご覧になった方も多いでしょう。私は未見だったので滑舌良く達者な方だなぁと思っていたら…なんと監督&脚本、劇団と芸能プロダクション代表でした。「はいな!」がいいです。
とっても濃~い面々がにぎにぎしく集まって、勝吉&コオロギのコンビが縦横無尽に暴れます。喧嘩ばかりでなく、マインドコントロールされた武や、失読症のコオロギに手を貸す人もちゃんと登場して観客をホッとさせます。「串かつだるま」は赤井さんゆかりの実在のお店です。いつか新世界に行きたいなぁ。(白)


☆2020年ニース国際映画祭で外国語部門最優秀作品賞(グランプリ)と最優秀脚本賞(上西雄大)。
 2021年 主演の赤井英和と上西雄大が、WICA(ワールド・インデペンデント・シネマ・アワード)で外国映画部門最優秀主演男優賞(Best Lead Actor in a Foreign Language Film)を受賞。

2020年/日本/カラー/DCP/118分
配給:10ANTS、渋谷プロダクション
https://nebagiba-shinsekai.com/
★2021年7月10日(土)ロードショー
posted by shiraishi at 21:31| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ライトハウス(原題:The Lighthouse)

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監督:ロバート・エガース『ウィッチ』
脚本:ロバート・エガース、マックス・エガース
撮影:ジェアリン・ブラシュケ
音楽:マーク・コーベン
出演:ウィレム・デフォー(トーマス・ウェイク)、ロバート・パティンソン(イーフレイム・ウィンズロー)

1890年代、ニューイングランドの孤島。4週間にわたり灯台と島の管理のため、2人の灯台守が島にやってきた。ベテランのトーマス・ウェイクと未経験の若者イーフレイム・ウィンズローは、そりが合わずに初日から衝突を繰り返す。トーマスは自分のテリトリーに他者を寄せ付けず、若いイーフレムも何やらわけあり。 険悪な雰囲気の中、やってきた嵐のせいで2人は島に孤立状態になってしまう。

ほぼ2人だけの登場人物が、狭い灯台の中、4週間も生活を共にしなければなりません。それなのに、老人は頑固で決して譲りません。若者も遠慮は最初だけ。穏やかな場面はほんの少しで、えんえんと諍いが続きます。2人のファンであるか、こだわりの映画ファンでないと見続けるのが大変かもしれません。
昔のテレビのように狭い画面にモノクロの映像。全編フィルム撮影だそうです。シンメトリーの構図に2人の人物、閉塞した状況がにじみ出るシーン、不穏な効果音、吹きすさぶ嵐が加わって観客も次第に追い詰められた気分になります。
ウィレム・デフォーはもう何をやっても驚きません。おっと思ったのは、「トワイライト」シリーズ(2008~2012)で主人公のバンパイア・エドワードを演じて世界中の女子を虜にしたロバート・パティンソン。役柄でこんなに人相悪くなれるんだ!『TENET テネット』(2020)で重要な役を果たし、次期「バットマン」にも決定しています。
灯台守が主人公のミステリーはほかにも。1900年に灯台守が消えた事件の詳細は今も不明のまま様々に脚色されて映画化されています。ジェラルド・バトラー主演の『バニシング』(2018)は3人。金塊を発見したり、それを狙う人間が登場したりで、まだアソビの部分がありました。この『ライトハウス』は一切なしの人間劇場。(白)


孤島の灯台という、逃げ場のない場所での二人の関係は極限状態に達しますが、既得権として仕事を譲らない先輩と、仕事をしたいのに教えてもらえない後輩という関係は、どこにでもありそうです。そうはいっても、孤島で二人きりは何かあった場合、問題でしょう。3人にすべきでは?と思ったら、本作のベースになった1801年にイギリス・ウェールズで実際に起きた事件「Smalls Lighthouse tragedy(スモールズ゙灯台の悲劇)」の顛末を知って納得しました。トーマス・ハウエルとトーマス・グリフィスという二人の灯台守が赴任。グリフィスが体調不良と訴え、ハウエルが通過する船に向けて遭難信号を送りますが、悪天のため助けは来ず、とうとうグリフィスは亡くなります。二人の不仲が周知のことだった為、遺体を海に投げれば殺人の疑いがかかると、ハウエルは遺体と過ごしながら、救援を求めます。悪天が続き、やっと救出された時には、ハウエルは容貌も変わり発狂状態でした。この事件があってから、灯台守のガイドラインが変更されて、のちに灯台が自動化されるまで灯台には常に3人が配置されることになったそうです。
それにしても、この痛ましい事件をもとに、ロバート・エガース監督は凄まじい映画を作ってしまったものです。息苦しくて、観ている側も狂ってしまいそうでした。(咲)



2019年/アメリカ・ブラジル合作/モノクロ/1:1.19/109分
配給:トランスフォーマー
(C)2019 A24 Films LLC. All Rights Reserved.
https://transformer.co.jp/m/thelighthouse/
★2021年7月9日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 00:47| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月06日

唐人街探偵 東京MISSION 原題:唐人街探案3

劇場公開 2021年7月9日
劇場情報 
映画『唐人街探偵 東京MISSION』ポスター_R.jpg
©WANDA MEDIA CO.,LTD. AS ONE PICTURES(BEIJING)CO.,LTD.CHINA FILM CO.,LTD “DETECTIVE CHINATOWN3”


シリーズ3作目は日本が舞台!

監督・脚本:陳思誠(チェン・スーチェン)
キャスト
王宝強(ワン・バオチャン):タン・レン
劉昊然(リウ・ハオラン):チン・フォン
妻夫木聡:野田昊
トニー・ジャー:ジャック・ジャー
長澤まさみ:小林杏奈
鈴木保奈美:川村晴子/芳子
奥田瑛二
染谷将太:村田昭
浅野忠信:田中直己
シャン・ユーシエン
三浦友和:渡辺勝
劉徳華(アンディ・ラウ)

中国旧正月初日の2/12(2021)に公開されるや、初日に約約10億1,000万元(約164億円)の興行収入を記録! 公開4日間で興行収入30億元(約490億円)を稼ぎ出し、中国最速となる興行収入30億元突破記録を達成。歴代1位の『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)を抜き、全世界オープニング週末興行収入No.1の新記録を樹立した歴史的・超ヒット作映画『唐人街探偵 東京MISSION』(原題:唐人街探案3)が日本に緊急上陸!! 壮大なスケールの「コメディ&ミステリー&アクション&ドラマ」の超絶エンターテインメント作品が公開される。

大ヒットシリーズとなった本作は、中国の探偵コンビが活躍する物語。
中国の人気俳優・王宝強(ワン・バオチャン)と劉昊然(リウ・ハオラン)が共演し、世界中のチャイナタウン(唐人街)で難事件を解決する。物語は1作ごとに事件を解決してゆく。シリーズ1作目はタイ・バンコクを舞台に2015年に公開された『唐人街探案』(日本未公開)は興行収入8億2,300万元(約140億円)を記録。2018年に公開された2作目の『唐人街探案2』(未)は、ニューヨークが舞台で興行収入33億9,700万元(約576億円)を記録する大ヒットとなり、世界各国で劇場公開された。
そしてシリーズ3作目、初の日本公開となる本作の舞台は日本。東京と周辺各地を舞台に、中国の探偵コンビに加え、日本の探偵、タイの探偵が共同で、ヤクザ絡みの密室殺人事件解決のミッションに挑む。

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©WANDA MEDIA CO.,LTD. AS ONE PICTURES(BEIJING)CO.,LTD.CHINA FILM CO.,LTD “DETECTIVE CHINATOWN3”

チャイナタウンの探偵コンビ、タン・レン(ワン・バオチャン)とチン・フォン(リウ・ハオラン)は、日本の探偵、野田(妻夫木聡)から難事件解決の協力を依頼され東京に飛ぶ。タイの元刑事の探偵ジャック・ジャー(トニー・ジャー)も参加。4人は解決のためにあちこち飛び回り旋風を巻き起こす。大騒ぎの探偵たちがたくさんの人々を巻き込んで大暴れ。
今回のミッションは、東南アジアマフィアの会長の密室殺人事件で、犯人として起訴されたヤクザの組長・渡辺(三浦友和)の冤罪を証明するのが探偵たちの仕事。殺された会長の秘書である小林(長澤まさみ)が何者かに誘拐される事件も発生。そこに解決率100%を誇るエリート警視正・田中(浅野忠信)が登場。謎の指名手配犯・村田(染谷将太)も絡み事件は複雑化する。

出演者は、シリーズの看板俳優ワン・バオチャン<『盲井』李楊/リー・ヤン監督(03)、『イノセントワールド/天下無賊』馮小剛(フォン・シャオガン)監督(04)、『罪の手ざわり』賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督(13)>とリウ・ハオラン<『空海-KU-KAI-美しき王妃の謎』陳凱歌(チェン・カイコ―)監督(17)>に加え、2作目からの出演となる日本人のイケメン探偵・野田に妻夫木聡。日中ハーフという役どころなので、中国語を勉強し披露。タイの探偵にはタイのアクションスターで、『モンスターハンター』などハリウッド映画にも活躍の場を広げているトニー・ジャー。
日本からは、他に中国でも人気があったり、中華圏の映画やドラマに出演した俳優たちが出演。今回の事件の依頼人である、ヤクザの組長・渡辺役に三浦友和(「赤い疑惑」が中国で大ヒット)、ジョン・ウー監督作品にも出演し、中国でもファンの多い長澤まさみをはじめ、染谷将太、鈴木保奈美、浅野忠信など豪華俳優陣が出演している。香港映画界からは劉徳華(アンディ・ラウ)も友情出演。今年正月には、この映画の宣伝用としてワン・バオチャン、リウ・ハオラン、アンディ・ラウの3人が歌う「恭喜発財2020」のMTVが公開されたが、これは映画の最後にかかる曲。

監督・脚本は中央戯劇学院出身の陳思誠(チェン・スーチェン)。日本で劇場公開された婁燁(ロウ・イエ)監督の『スプリング・フィーバー』に出演するなど、元々は俳優として活躍をしていた。2014年『北京愛情故事』(未)から本格的に監督に転向し、『唐人街探案』シリーズでヒットメーカーの地位を確立した。また昨年(2020年)、張芸謀/チャン・イーモウ監督(『紅いコーリャン』、『初恋のきた道』)製作総指揮のオムニバス映画『愛しの故郷(ふるさと)』(20)に監督の1人として抜擢され『空からUFOが!』という作品を製作。これにはワン・バオチャン、リウ・ハオランを始めホアン・ボーも出演し、農村に出現したUFOをめぐるコメディタッチの物語を手掛けた。

1作目と2作目は東京・中国映画週間で『僕はチャイナタウンの名探偵』(2016)、『僕はチャイナタウンの名探偵2』(2018)というタイトルで上映され、1作目の『僕はチャイナタウンの名探偵』はシネマジャーナル98号で紹介をしている。『僕はチャイナタウンの名探偵2』も観たと思うけど、ニューヨークを二人の探偵が疾走しているのを観た記憶がない(笑)。でも最後に妻夫木君が出てきたのを見たような気がするから観ているのか? あるいは中国映画週間の中の予告編で観ただけなのか。今となってはわからず。
それにしてもこの映画どんどんハチャメチャになっている。日本が舞台だからよけい「なんだかなあ」と思うところも。いろいろ突っ込みどころがあります(笑)。関東各地でロケし、新宿歌舞伎町、秋葉原電気街、東京タワー、横浜中華街、大谷石地下採掘場跡などが登場しますが、印象的だったのは大谷石地下採掘場跡での場面。いつか行きたいと思いながら行ってないところだったので、この映画を観て、ぜひ行ってみたいと思いました。また、ロケでは撮影できなくて多額の予算を投じたセットも印象的でした。渋谷のスクランブル交差点のセットを栃木県足利市に、空港のセットを名古屋市に設けたそう。浜離宮のセットも大がかりでした。再度映画館の大画面で観てみたい。そしてシリーズ4はあるのか。次はどこが舞台か? 最後に出てきた場面がヒントかも(暁)。


2021年製作/138分/G/中国
『唐人街探偵 東京MISSION』公式HP
『唐人街探偵 東京MISSION』メイキング映像  7月9日(金)日本緊急公開!
提供:Open Culture Entertainment、アスミック・エース
配給:アスミック・エース
posted by akemi at 21:26| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月04日

走れロム  原題:Rom

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監督:チャン・タン・フイ
プロデューサー:トラン・アン・ユン
出演:チャン・アン・コア、アン・トゥー・ウィルソン

14歳の孤児ロム。今日もサイゴンの路地裏を駆け回って、一攫千金を狙う住民たちから”闇くじ(デー)”の掛け金を集めている。毎日16:30に抽選開始される30分前までに、胴元に掛ける番号とお金を届けるのをフックと競い合っている。ロムにとって、闇くじの手間賃は生き別れた両親を捜すための資金稼ぎ。路地裏の古い集合住宅の住民たちにとっても、地上げ屋から立ち退きを迫られていて、ロムの予想を頼りにしている。住民たちは、いつか大金を手にすることができるのか? そして、ロムは両親と会うことができるのか?

闇くじの締め切りが迫る中、ロムとフックが混沌としたサイゴンの路地裏を疾走する姿が、スタイリッシュに描かれていて、時間に間に合うのかとハラハラしながら、ロムたちの姿を追いました。船で渡っていく川か湾の中州で暮らす胴元の姿は見えません。ベトナム政府公認の”正当な”くじの当選番号の末尾2桁を予想する、ハイリスク/ハイリターンな違法くじ。
サイゴン(ホーチミン市)育ちの監督が、「サイゴンやベトナムの特産品は何か?」と聞かれたら、「間違いなく、宝くじで賭け事をすること=デー(Số đề)と答えるでしょう」というほど、サイゴンの人たちになくてはならない闇くじ。そうはいっても違法。釜山国際映画祭でニューカレンツ部門(新人監督コンペティション部門)最優秀作品賞を受賞しましたが、出品する前に当局の検閲を通してなかったことからお叱りを受けました。当局の要求を受け入れ、一部のシーンをカットして新しいシーンを追加し、釜山でのワールドプレミアと同じ上映時間79分に再編集。これが初長編作と思えない秀作です。(咲)


ベトナムを舞台にした映画をいろいろ観てきました。50作くらいは観ていると思います。でもこの映画に出てくる「くじ」が出てくるものは観たことがありません。なので質素に暮らしてきたこの国には「くじ」があるなんて思ってもみませんでした。この映画を観て、やっぱりベトナムにも「くじ」はあったのだと思いました。やはり一攫千金を夢見る人たちは世界中どこにでもいるいるんだなという思いと、そのせいで生活が破綻してしまう人たちもいる。ベトナムでもそうなんだと思いました。そして、その当たりはずれを左右するために予想屋がいて、しかも孤児の少年たちが、生きるためにそれを仕事にしている。イチかバチかの世界に人々は未了されているのでしょうか。私も「宝くじに当たったらいいのになあ」と思ったことはあるけど、くじ運が悪いので1回しかやったことがない。日本でも宝くじかけている人がいて、毎回けっこう高い金額をかけている人がいる。この映画を通して、「くじ」に賭けるベトナム庶民の生活を垣間見ることができた(暁)。

第24回釜山国際映画祭ニューカレンツ部門(新人監督コンペティション部門)最優秀作品賞
第24回ファンタジア国際映画祭 最優秀新人作品賞

2019年/ベトナム/ベトナム語/カラー/DCP/2.39:1/79分
日本語字幕:秋葉亜子
提供:キングレコード
配給・宣伝:マジックアワー
公式サイト:https://www.rom-movie.jp/
★2021年7月9日(金)、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー

posted by sakiko at 19:29| Comment(0) | ベトナム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

東京自転車節

2021年7月10日 ポレポレ東中野ほか全国順次公開
劇場情報
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(C)2021水口屋フィルム、ノンデライコ

監督・撮影:青柳 拓
撮影:辻井潔、大澤一生
編集:辻井潔
構成・プロデューサー:大澤一生
出演:青柳 拓、渡井秀彦、丹澤梅野、丹澤晴仁、高野悟志、加納 土、飯室和希、齊藤佑紀、林 幸穂、加藤健一郎、わん(犬)
音楽主題歌「東京自転車節」 作詞・作曲:秋山 周

チャリを漕ぎます運びます
コロナ禍を生き抜くリアル・ロードドキュメンタリー


『ひいくんのあるく町』(2017)の青柳拓監督が、自ら働く自転車配達員としての活動を記録したドキュメンタリー。
2020年3月。山梨県で暮らしていた青柳監督はコロナ禍で代行運転の仕事が遂になくなってしまった。その頃、話題になっていた「Uber Eats」の自転車配達員の仕事を知り、家族の反対を押し切り、新型コロナウイルス感染者数が増加していた東京に借りた自転車で向かう。緊急事態宣言下の東京で、自転車配達員として働きながら、スマートフォンとGoProで、自らと東京の今を撮影し始めた。
奨学金を返すため、生活するため、新コロナ禍を生き抜くため始めた自転車配達員。その仕事を通して、「働くということ」、「“あたらしい日常”を生きることとは?」、「新コロナ禍の東京はどんな感じ?」を自転車配達員の視点で表現した疾走する路上労働ドキュメンタリー。
『ひいくんのあるく町』の主人公・渡井秀彦君が出てきたり、『沈没家族 劇場版』の加納土監督ら、監督の周囲の友人たちも登場。

コロナ禍によって生まれた「新しい日常」。生きるために始めた自転車配達員の仕事を自ら映し映画にする。スマートフォンとGoProという小型の道具の登場によって可能になった映画製作方法。観客にとっては、今、話題の「Uber Eats」の働き方とはどういうことなのかを知ることになる。新コロナ禍の東京の町の状態が自転車配達員の視点から見えてくる。そして今の日本の姿が見えてくる。
奨学金の返済、これまでの糧であった仕事の新型コロナによる廃業など、生きるのに精いっぱいの事情。描かれている現実は、ギリギリで切迫感があるにも関わらず、監督自身がもつほんわかさとユーモア感のおかげで、少し希望も感じられる。そうは言っても問題は山積み状態。状況は一向に良くなってはいない状況。コロナ禍は1年以上たっても収まりそうもない。でもこの作品から転んでもただは起きぬ力強さも感じられる。がんばれ青柳拓監督(暁)。


『東京自転車節』公式HP 
映画『東京自転車節』 YouTubeちゃんねる
予告編

2021/日本/93分/日本語/カラー/DCP/ドキュメンタリー
宣伝::contrail
製作・配給:ノンデライコ、水口屋フィルム


posted by akemi at 19:27| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

東京クルド

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監督:日向史有
撮影:松村敏行/金沢裕司/鈴木克彦
編集:秦岳志
カラーグレーディング:織山臨太郎
サウンドデザイン:増子彰
MA:富永憲一
プロデューサー:牧哲雄/植山英美/本木敦子
製作:ドキュメンタリージャパン

クルド人のオザン(18歳)とラマザン(19歳)。二人は小学生の頃に、トルコ南東部の故郷から迫害を逃れて家族とともに日本にやってきた。難民申請をし続けているが認められず、入管の収容を一旦解除される「仮放免許可書」で日本に滞在している。非正規滞在者で、住民票もなく、 自由に移動することも、働くこともできない。いつ入管に収容されるかもしれないという不安も抱えている。
二人とも、小学校から日本で教育を受けてきたので、流ちょうな日本語を話す。
つらい解体の仕事で日銭を稼いでいるオザンの夢はタレントとしてテレビに出ること。外国人タレントの芸能事務所で、トルコ文化も紹介できることを売りに出演も決まるが、仮放免中であることを伝えると、入管の許可をもらうように言われ、結局、出演を果たせない。
トルコ語クルド語の通訳が夢のラマザンは英語力を磨きたいと語学学校への入学を打診するが、仮放免中ではどこも受け入れてくれない。ようやく、埼玉自動車大学校に入学が認められる。第二の夢だった自動車整備士を目指してスーツ姿で入学式に臨むラマザンを、両親が嬉しそうに見守る。だが、資格を取得しても、仮放免の身分で仕事に就くことができるかどうかはわからない。
この入学式を前にした春分の日、クルドの人たちが新年を祝う「ネウロズ祭」が公園で開かれた。父とともに集うラマザン。一方、家を出て一人暮らしを始めたオザンの姿はそこになかった・・・

日向史有監督が、難民に目を向けたのは、2015年。シリア紛争を背景に欧州で難民危機といわれる事態が起きた頃のこと。日本にもいる難民に話を聴きたいと取材を始めて出会ったのがクルドの人たち。彼らを追う中で、日本当局の難民に対するあまりに排他的な態度が見えてきます。
2019年3月、東京入管に長期収容されていたラマザンの叔父メメット(38歳)が極度の体調不良を訴え家族が救急車を呼びますが、入管は2度にわたり救急車を追い返してしまいます。メメットさんは30時間後にようやく病院に運ばれ、体調を取り戻しましたが、今年、収容中のスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが手遅れで亡くなられるという痛ましい事件がありました。入管法「改正」でさらに対応が悪化する動きもあります。

もう20年位前のことになりますが、与野にあった中東ミニ博物館の今は亡き大野正雄館長と共に、蕨のクルドの人たちのコミュニティを訪ねたことがあります。美味しいクルド料理を振舞ってくださり、食後には手をつないでクルドの音楽にあわせて踊りました。暖かくもてなしてくださったクルドの人たちでしたが、国に帰れば身に危険があると訴えても、難民申請が通らないと悲しそうに語っていたのが今でも思い出されます。
トルコが友好国であるが故に、日本政府はトルコでクルドの人たちに迫害がおよぶことを認めたくないというのが、難民として受け入れない大きな理由のようです。
私の知人のイラン人で、ビザなしで入国できた時代に来日し、滞在期限が切れた後も帰国せず不法滞在の身だった時に、日本女性と結婚。在留資格を得たもののその後離婚し、またまた不法滞在者に。入管に相談にいったら、「またいい子見つけて結婚すれば」と言われ、悔しいので会社を立ち上げ、事業主として在留資格を得た人がいます。
本作に出てくるクルドの人たちは、難民申請しているが故に、事情主にもなれないのです。

蕨の公園での新年を祝う「ネウロズ祭」にも、2度参加したことがあります。皆で手をつないで踊るクルドの人たち。この踊りのスタイルは、トルコ、イラン、シリア、イラクの4つの国にまたがって暮らしているクルドの人たちに共通するもの。国のない民族といわれるクルドの人たちですが、全世界に3000万~4000万人もいるのです。クルド人の映画監督バフマン・ゴバディが、「私たちは国が欲しいのではない。国境のない世界がほしい」と語っていたのを思い出します。そう、皆が安心安全に暮らせる世界。日本で暮らしたいという人たちを拒否せず受け入れてほしいものだと思います。(咲)


「クルド民族」の名前を知ったのは2001年頃。サミラ・マフマルバフ監督の『ブラックボード 背負う人』(製作2000年、日本公開2001年)や、バフマン・ゴバディ監督の『酔っぱらった馬の時間(製作2000年、日本公開2002年)、イェシム・ウスタオウル監督の『遥かなるクルディスタン』(製作1999年、日本公開2002年)などの映画が続けて公開されたのがきっかけでした。国を持たない「クルド民族」のこと、「クルディスタン」という4つの国にまたがる場所に暮らしていることなどをその時に知りました。バフマン・ゴバディ監督インタビューにも参加することができ、クルド民族の方への興味が広がりました。
「クルド難民」が日本に来るようになったのもその頃のことでした。この映画に出てきた二人が日本に来たのも、「2015年に小学生の低学年で日本に来た」というので、きっと2002年頃だったのでは。そして野本大監督の『バックドロップ クルディスタン』が公開されたのが2007年でした。この作品は、今回の『東京クルド』と同じく、トルコでのクルド人に対する迫害を逃れるため「難民」として日本にやってきたカザンキラン一家を追ったドキュメンタリーでした。難民申請をしても難民認定されず、強制送還の危険性が高まっていました。そして仮放免申請に向った父アーメット、長男ラマザンが突然強制送還されてしまいました。そんな彼らを追った作品でした。
今回の『東京クルド』を観て、その時となんら変わっていない日本政府の施政に日本人としてできることを考えさせられました。今年、入管法「改正」に対して、SNSで「反対」の声をあげた人の多さに、「改正」が見送られたとニュースで読みました。こういうことは可能なのか、他にも方法がないのか考えました。日本政府の方針は変わっていない状況にあるのなら、繰り返しこういう映画が作られ、日本人の「難民」に対する認識を新たにしていく必要があると、この作品を観て思いました。日本には「難民」がたくさんいるという状況を忘れてはならないのです(暁)。



2021年/日本/103分
配給:東風
協力:日本クルド文化協会
映像提供:#FREEUSHIKU
技術協力:104 co Ltd
クルド語翻訳:チョラク・ワッカス
助成:文化庁文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業) 独立行政法人日本芸術文化振興会
© 2021 DOCUMENTARY JAPAN INC.
公式サイト:https://tokyokurds.jp/
★2021年7月10日(土)より[東京]シアター・イメージフォーラム、[大阪]第七藝術劇場にて緊急公開、ほか全国順次
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ロボット修理人のAi(愛)

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監督:田中じゅうこう
脚本:大隅充
撮影:本吉修
出演:土師野隆之介(倫太郎)、緒川佳波(すずめ)、大村崑(老人)、大空眞由美(和子)、金谷ヒデユキ(村上所長)ほか

16歳の倫太郎は孤児として育ち、人一倍自立心が強い。高校を中退していくつものアルバイトを掛け持ち、大人たちに頼られている。特に家電やロボットまで、なんでも修理する工房で天才的なその腕を磨いている。さらに独学でロボットの勉強を続ける倫太郎に、東京に住む老婦人からAIBOの修理依頼が届く。息子の形見だというAIBOは音声装置とメモリーが壊れていた。同じころ、清掃のアルバイトをしていた病院で、発声障害のある少女すずめと出会った。

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AIBOは90年代末から愛され続けている犬型のエンターテインメントロボット。かつてメーカーに在籍して現在はロボット修理人の乗松伸幸さんをモチーフにしたフィクションです。
美しい榛名湖を背景に、孤児の倫太郎が、AIBOが結んだ縁で過去と向き合い、新しい絆を結んでいきます。子どもの頃に辛い体験をした倫太郎を癒すかのように、ファンタジー要素をからめてあります。現実とファンタジー、そして時間も前後するので、観ていてちょっと戸惑いますが、倫太郎にとっては全て繋がっていることです。
榛名湖は蘇りの女神がいるという設定で、大村崑さんが「謎の老人役」で登場。私が子どもの頃の大人気スターでしたから、思いがけなくお元気な姿を拝見して驚いたり喜んだり。映画は完成まで3年かかり、倫太郎を演じた土師野隆之介さん(中学2年から高校2年まで)が、榛名湖の四季の中で成長していく姿が映されています。コロナ禍で上映が延期になってしまい、今は高校3年生の土師野さんにお話を伺いました。
こちらです。(白)

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2020年/日本/カラー/108分
配給:トラヴィス
夕焼け劇場 presents (C)2021 GENYA PRODUCTION ROBOT REPAIRBOY
http://roboshu.com/
★2021年7月10日(土)より新宿K's cinemaにて2週間限定上映
7/10(土)~7/23(金)
AM10:00~上映後、舞台挨拶&トークショー
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ベルヴィル・ランデブー(原題:Les triplettes de Belleville)

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監督・脚本:シルヴァン・ショメ
音楽:ブノワ・シャレスト
美術:エフゲニ・トモフ
プロデューサー:ディディエ・ブリュネール

マダム・スーザは孫のシャンピオンと暮らしている。両親を事故でなくした彼があまりに寂し像なので、子犬を飼うことにした。ブルーノと名付けられた子犬はシャンピオンの親友となって一緒に育ち、二人とも、ベッドからはみ出るほど大きくなった。シャンピオンは自転車レースの選手を目指して、坂道を上り下りする過酷なトレーニングをしている。
ついに目標だった「ツール・ド・フランス」の日がやってきた。ゴールのマルセイユを目指して走っていたシャンピオンが黒服の男に連れて行かれ、おばあちゃんはブルーノの臭覚を頼りに後を追う。大都市ベルヴィルに到着したおばあちゃんとブルーノは、一文無しになるが三つ子の老婦人と知り合った。一方、シャンピオンは他の自転車選手と一緒にマフィアに拉致され、賭博のために自転車を漕がされていた。おばあちゃんはシャンピオンと再会できるのか?

登場人物は何人もいますが、台詞がありません。それでもデフォルメされた人物たちの感情表現が豊かで、ちゃんとわかるのです。台詞がない代わりにそこかしこに音楽があり、三つ子のおばあちゃんのコーラスも素敵でした。そこの食事はちょっと嫌だけど。ブルーノと無謀とも思われる追跡をするおばあちゃんですが、決してあきらめません。様々な経験をして、徐々にシャンピオンへと近づいていきます。
懐かしい作品です。制作20周年記念の特別興行のために戻ってきたのだそうです。日本初公開は2004年12月18日。
私は今はないテアトルタイムズスクエア(新宿高島屋の12階/2002~2009)の大きなスクリーンで感嘆しつつ観た記憶があります。映画1シーンを切り取ったポストカードが綺麗で、大事にとっておきましたが…どこだっけ?(白)


「21世紀フランス・アニメーション伝説の傑作
製作20周年を目前にリバイバル上映が決定!」
このうたい文句以外、何の予備知識なく観たのですが、台詞がほとんどないのに、ぐいぐい引き込まれ、ちゃんと話もわかりました。
孫を思うおばあちゃんが、ほんと、タフですごいのです。ツール・ド・フランスのゴール目前にして誘拐され、マルセイユの港で大きな船に乗せられた孫を追うのに、20分 1フランの小船を借りるのです。嵐にあいながら、大都市ベルヴィルに到着します。無理でしょう!? (小船を貸した海辺の男が、エンドロールの終わったあとに出てきますので、お見逃しなく!)
行き場のないおばあちゃんとブルーノを家に招いてくれた三つ子の老婦人は、「ベルヴィルのトリプレット」の名で舞台に立つエンターテイナー。空っぽの冷蔵庫、掃除機、新聞が楽器に! おばあちゃんも自転車の車輪を奏でます。
思い切り楽しくて、哀愁に溢れた物語でした♪(咲)


2002年/フランス、カナダ、ベルギー/カラー/ヨーロピアン・ビスタ/80分
配給:チャイルド・フィルム
(C)Les Armateurs / Production Champion Vivi Film / France 3 Cinema / RGP France / Sylvian Chomet
https://eiga.com/movie/1287/gallery/#:~:text=Hatena-,
https://child-film.com/Belleville/
★2021年7月9日(金)5864日ぶりに映画館のスクリーンへ
ヒューマントラストシネマ渋谷、UPLINK吉祥寺ほか全国順次公開


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シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち(原題︓Les Crevettes Pailletees)

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監督・脚本:セドリック・ル・ギャロ、マキシム・ゴヴァール
出演︓ニコラ・ゴブ(マチアス)、アルバン・ルノワール(ジャン)、ミカエル・アビブル(セドリック)、デイヴィット・バイオット(アレックス)、ロマン・ランクリー(ダミアン)、ローランド・メノウ(ジョエル)、ジェフリー・クエット(グザヴィエ)、ロマン・ブロー(フレッド)、フェリックス・マルティネス(ヴァンサン)

50m自由形の銀メダリストのマチアス、同性愛差別発言が問題になり、世界水泳大会の出場資格を失った。もう一度資格を得るのに、条件が出された。ゲイの水球チームのコーチになること!マチアスは同性愛差別意識を持ったまま、渋々出かけて「シャイニー・シュリンプス」のメンバーに出会う。ゲイゲームズに出場するにはへなちょこすぎる彼らにげんなりするが、3ヶ月は付き合わなければならない。
一人娘のヴィクトワールがチームを応援するので、娘の歓心をかいたいマチアスは問題だらけのメンバーと真剣に向き合うことにした。

セドリック・ル・ギャロ監督は2012年に「シャイニー・シュリンプス」に加入。以来、人生観が変わるほどの経験をしてきたそうです。現実が辛くとも、ユーモアで乗り切る彼らの強さを知ってほしいと映画が生まれました。チームのメンバーが一人一人個性的で、それぞれに過去があり辛い今を生き、未来を想っています。マチアスはそんな彼らから、これまでにない気づきをもらって、少しずつ変っていきます。
ゲイゲームズの存在を初めて知りましたが、世界最大のLGBTのためのスポーツ・文化イベントで4年に1度開催されていました。第1回は1982年にアメリカ、ロサンゼルス。以来世界各都市で開かれていますが日本では開催されたことがありません。いろいろググってみましたら、参加資格もLGBT、またはアライ(味方・支援者)であればいいそうで、男女、障害者も同じフィールドで競技するのだとか。2018年はパリで、2022年のゲイゲームズは「香港」だそうで、これはアジアで初の開催です。コロナ禍はどうなっているやら。
問題を起こした人がコーチになる、と言えば『だれもが愛しいチャンピオン』(2018)を思い出します。こちらも勝ち負けにこだわらず、楽しむことが第一でした。(白)

※実際のシャイニー・シュリンプス
勝ち負けにはこだわらず、⼀緒にいることに楽しみを⾒出す、ゲイの⽔球同好会。ここ数年、試合には勝っていないが、練習とコスチューム制作は⽋かさない。試合に出場して狙うは、“最優秀雰囲気”賞。

2019年/フランス/カラー/ビスタ/103分【PG-12】
配給:ポニーキャニオン、フラッグ
© LES IMPRODUCTIBLES, KALY PRODUCTIONS et CHARADES PRODUCTIONS
公式サイト︓shinyshrimps.jp
公式 Twitter︓@shinyshrimps
★2021年7月9日(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、Bunkamura ル・シネマ ほか 全国公開︕︕

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サムジンカンパニー1995(英語題:Samjin Company English Class) 

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監督:イ・ジョンピル
出演:コ・アソン(イ・ジャヨン)、イ・ソム(チョン・ユナ)、パク・ヘス (シム・ボラム)、キム・ジョンス(ポン部⻑)、ペク・ヒョンジン(常務)、デヴィッド・マクイニス(社⻑)

1995年ソウル。大手メーカーのサムジン電⼦⽣産管理3部イ・ジャヨン、商業⾼校出⾝8年⽬。マーケティング部 チョン・ユナ、アイデアにも優れている推理⼩説マニア。会計部 シム・ボラム数学⼤会で優勝の経歴を持つ数字の天才。3人は高卒で入社した同期。今年で勤めて8年になる。上司の男性や大卒女子も負けないほどの実務能力がありながら、いつもお茶くみや書類整理・補佐役に甘んじている。そこへ会社の方針でTOEIC600点を超えたら「代理」に昇進できるチャンスが到来!? 高卒女子たちはステップアップを夢見て邁進する。
ジャヨンが偶然出先で、自社工場が有害物質を川に排出していることに気づいた。さっそく上司の男性を通じて報告するが、会社側は問題ないと言うばかり。ジャヨンは親友のユナとボラムに相談し、ボラムの計算で基準値を大きく超える量だと知った。住民には明らかに健康被害が出ている。3人は愛社精神と正義感から、真相解明に向けて奔走する。

ロードムービーならぬ労働ムービー。1991年に起きた、斗山電子のフェノール流出による水質汚染事件がモデルになっているそうです。学歴が重視され、高卒女子が不遇をかこっていた時代のエピソードも盛り込まれています。
背景となる会社の内部も綿密な時代考証がなされて、デスクトップ型のパソコンの並ぶフロア。32ビットのロゴやレイアウトに、ああそうだった(エンドロールも見てね)。肩パッドの入ったスーツ、カーラーで巻いた前髪、カモメのような眉、ファッションやメイクも懐かしい。
主人公となるジャヨン、ユナ、ボラムの3人の性格付けとキャストの好演により、観客は自分のことのように共感して行動を見守ることになります。何度も壁にぶちあたりながらも諦めず、少しずつ協力者を得ていきます。なかなか黒幕にたどり着かないのにハラハラし、ラストに向けて盛り上がっていくのに快哉。仕事に誇りを持ちたいジャヨン役のコ・アソンは『グエムル 漢江の怪物』(2006)で、ソン・ガンホの中学生の娘でしたね。怪物に襲われる寸前のポスターを思い出します。姉御肌のユナ、可愛いだけでないボラムの3人をまた見てみたいです。
働く女子にも生きづらさを感じる人にも、贈り物になるような台詞がたくさんありますので、どうぞ聞き逃しのないように。(白)


物語の舞台になっている1995年といえば、1月に阪神淡路大震災の起こった年。思い返せば、インターネットが急速に普及し始めた頃ですが、この映画の中でポケベルが出てきて、携帯電話はまだそれほど普及していなかったことに思い当たりました。公衆電話から国際電話をかけるのに、小銭をたくさん用意している姿にも、そんな時代だったと懐かしく思い出しました。
そして、日本の会社と文化が似ているなと思ったのが、体操の時間。サムジンカンパニーでは、始業前の朝の時間に体操をしています。もっとも、私が勤めていた会社では、1975年に入社して数年は一斉に3時に体操をしていましたが、いつしか誰もしなくなって、音楽だけが空しく轟いていました。
また、女子社員が一斉にコーヒーを入れている姿には、お茶汲みが女子社員の仕事だった頃を思い出して、当時のちょっと悔しかった気持ちが蘇りました。私の勤務していた会社では、1991年に移転したのを機に、給茶機が設置されて、社員へのお茶汲みは廃止になりました。
サムジンカンパニーの女子社員たちは、責任ある仕事を任されない悔しさをバネに、英語の勉強に励み、あげくは自社の工場が有害物質を垂れ流していることを追求します。あっぱれな姿に、スカッとしました。男たちよ、女性を甘く見ちゃいけないですよ! (咲)



2020年/韓国/カラー/シネスコ/110分
配給:ツイン
(C)2020 LOTTE ENTERTAINMENT & THE LAMP All Rights Reserved.
https://samjincompany1995.com/
★2021年7月9日(金)シネマート新宿、シネマート⼼斎橋ほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 17:01| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

83歳のやさしいスパイ 原題『El agente topo』

7月9日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開
劇場情報

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© 2021 Dogwoof Ltd - All Rights Reserved


監督・脚本:マイテ・アルベルディ 
日本語字幕:渡邉一治
出演:セルヒオ・チャミー ロムロ・エイトケン

人生初スパイの仕事は、老人ホームへの潜入!

舞台はチリ。80歳以上の高齢男性を募集する新聞の求人広告が探偵事務所から出され、それに応募したのは妻を亡くし新たな生きがいを模索していた83歳のセルヒオ。依頼内容は老人介護施設の内偵。依頼人の母が、この施設で盗難や職員からの虐待にあっているのではないかという疑念を持ち、母の様子を誰にも気づかれずに探ってほしいという依頼。セルヒオは素性を隠し施設に入居する。今までスマホを使ったこともなく、潜入捜査の前に訓練したものの、メールや写真撮影などの電子機器の使い方や、暗号を忘れてしまったりで悪戦苦闘。
入居者と交流し状況を探りやっとターゲットの女性をみつけたが、なかなか手がかりを掴めない。スパイとして入居したが誰からも好かれる心優しいセルヒオは、調査を行う中でいつしか悩み多き入居者たちの良き相談相手となる。この施設や入居者の撮影をするという名目で、別のカメラクルーも参加したドキュメンタリー。

私はてっきりドラマかと思ったらドキュメンタリーだった! でも、よくできたドラマのよう。舞台になった老人ホームの許可を得、スパイとは明かさず3カ月間撮影されたという。
施設には、妄想癖、痴呆症、寝たきりなど様々な人がいる。セルヒオの調査活動を撮影する中で、彼の姿を追ううちに入居者の気持ちが浮かび上がる。親を施設に入れたあと面会に来ない子供たち。家族から捨てられたと感じている人も少なくない。「一生懸命育てたのに、子どもは私を老人ホームに入れて面会にすら来ない」と、孤独感を募らせるおばあちゃんたち。「老人ホームをスパイする」という形をとりながら、ここで暮らす高齢者たちの置かれた状況と思いを撮りたかった。それこそが監督がこの映画に込めたメッセージだったのでは(暁)。


英題『THE MOLE AGENT』
2020年/ドキュメンタリー/チリ・アメリカ・ドイツ・オランダ・スペイン/89分/カラー/ビスタ/5.1ch
『83歳のやさしいスパイ』 公式サイト
配給・宣伝:アンプラグド 
posted by akemi at 09:34| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月01日

シンプルな情熱  原題:Passion simple

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監督:ダニエル・アービッド
原作:アニー・エルノー「シンプルな情熱」(ハヤカワ文庫/訳:堀茂樹)
出演:レティシア・ドッシュ、セルゲイ・ポルーニン、ルー=テモー・シオン、キャロリーヌ・デュセイ、グレゴワール・コラン

シンプルな情熱  原題:Passion simple 
監督:ダニエル・アービッド
原作:アニー・エルノー「シンプルな情熱」(ハヤカワ文庫/訳:堀茂樹)
出演:レティシア・ドッシュ、セルゲイ・ポルーニン、ルー=テモー・シオン、キャロリーヌ・デュセイ、グレゴワール・コラン、スリマン・ダジ

パリの大学で文学を教えるエレーヌ(レティシア・ドッシュ)は、友人宅のパーティーでロシア大使館に勤める年下のアレクサンドル(セルゲイ・ポルーニン)と出会い、恋に落ち、自宅やホテルで逢瀬を重ねる。授業中も、友人と映画を観ている時も、何をしていても心は彼に奪われている。研究対象のイギリスの女性作家アフラ・ベーンの資料について図書館から連絡が入っても、気もそぞろ。友人のアニタ(キャロリーヌ・デュセイ)から「彼は既婚者だし、いつかはロシアに帰ってしまうのよ。恋に恋しているだけ」と言われても無我夢中。夫と別れ息子のポール(ルー=テモー・シオン)と暮らしているエレーヌだが、夜、自宅に来ると電話が入ると、息子を友人宅に泊まりにいかせる始末。やがて彼からの連絡が途絶える。居ても立っても居られずロシア大使館に電話し、翌日、会う約束を取り付けるが彼は現れなかった。気力をなくし何も手につかなくなってしまう。息子から話を聞いた元夫(グレゴワール・コラン)が呆れて様子を見に来るが、ベッドから出られない。エレーヌは精神科医(スリマン・ダジ)のもとを訪れ、昨年9月に彼に出会って以来、彼を待つことしか出来なかった胸の内を語る・・・

原作は、今やノーベル文学賞の候補に名を連ねるフランスのアニー・エルノーが、1991年に自身の年下男性との愛と性の体験を元に綴った「シンプルな情熱」。
ダニエル・アービッド監督がお守りのように愛読してきた原作のエッセンスをそのままに、舞台を現代に置き換えて映画化。脚本段階からアニー・エルノーに相談し、お墨付きをもらったもの。
気まぐれに突然会いたいと連絡をしてくる男のために、友達からの誘いにも曖昧に答え、片時も携帯を手元から離しません。携帯のなかった時代なら、家からも出ない、仕事場でも机を離れないという経験は誰しもあるのでは?
会えない日々が続くと、グーグルマップで彼の住むモスクワの通りを見てみたり、実際にモスクワに飛んで街を彷徨うということにも共感します。
恋に落ちた当初は、まさに恋に酔いしれて我を忘れてしまっても、やがて、相手とは趣味も考え方も違うことを客観的に見えるようになっていく姿も描かれていて、恋という病が人を成長させてくれることも感じさせてくれます。

ダニエル・アービッド監督は、1970年4月26日レバノン、ベイルート生まれ。1987年レバノン内戦の頃、17歳でパリへ。文学やジャーナリズムを学ぶ。 初の長編映画『戦争の中で』(2004年)は、内戦下のレバノンで複雑な家庭の中で12歳の少女が大人になっていく様を描いた自伝的作品。
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2004年第5回東京フィルメックスで『戦争の中で』が上映され、その折に来日した監督にお会いしています。(写真:下段左端 撮影:梅木直子)エレガントな雰囲気の方でした。フランス国籍を取っていますが、レバノン映画界の活性化を担う活動もされています。
今後また、レバノンを舞台に描いた映画を期待したいところです。(咲)



2020 年カンヌ国際映画祭 公式選出作品
2020 年サン・セバスティアン国際映画祭 コンペティション部門出品

2020年/フランス・ベルギー/フランス語・英語/99分/R18
日本語字幕:古田由紀子
配給・宣伝:セテラ・インターナショナル/宣伝協力:テレザ 
公式サイト:http://www.cetera.co.jp/passion/
★2021年7月2日(金)よりBunkamuraル・シネマほか全国ロードショー




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