2021年06月06日

ブルーヘブンを君に

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監督:原作:秦建日子 (ハタ タケヒコ)
脚本:秦建日子、小林昌
撮影:大内泰
出演:由紀さおり(鷺坂冬子)、小林豊(鷺坂蒼太)、柳ゆり菜(鈴木夏芽)、本田剛文(恩田正樹)、中田圭祐(鷹野)、大和田獏(川越恵一)、寺脇康文(鈴木一郎)

「不可能」と言われた青いバラ「ブルーヘブン」を世界で初めて生み育てた園芸科の鷺坂冬子63歳。今は家族に囲まれてバラ園を営みながら幸せに暮らしている。冬子には家族に内緒にしていることがあった。がんが再発してステージ4まで進み、余命は半年と主治医に言われたばかり。実は叶えたかった夢がある。冬子の青春時代の大切な思い出に繋がること、それはハングライダーで空を飛ぶことだった。

2019年に歌手デビュー50周年を迎えた由紀さおりさん初主演作。1986年から実姉の安田祥子さんと日本の歌を歌い継ぐ活動を続けている一方、映画『家族ゲーム』での演技が毎日映画コンクールで助演女優賞を受賞しています。美しい歌声が印象的だった「夜明けのスキャット」のほかに、昨年亡くなった志村けんさんとの「バカ殿と腰元」のコントが思い出されます。毎週楽しみでした。
本作では実在のバラ育種家をモデルに、いくつになっても夢を諦めない冬子を溌剌と演じています。孫役に「BOYS AND MEN」の小林豊と本田剛文、冬子の夢を応援する自動車修理工に柳ゆり菜。青春の思い出と交互に、冬子の奮闘ぶりが披露されます。ロケ地となった岐阜県の雄大な自然を眼下に、自分もハングライダーで空を飛ぶ気分を味わってください。(白)


「青いバラ」って、けっこうこれまで見たことあるような気がするし、青いバラが伏線になった映画やミステリーを見たことがある(TV「相棒」で、3回くらい再放映されていた記憶がある)。でも、そんなに珍しい品種で、この色を作りだすのに様々な苦労があったというのは知らなかった。この作品は、この「青いバラ」を作り出した人を主人公にした物語。心に秘めていた空を飛ぶ夢実現のため動き出します。その夢を持つようになったことがだんだんに明らかになり、最後に納得。それにしても空を飛ぶ夢。他の終活映画でも出てきましたが、やっぱりいいですよね。私もずいぶん前に飛んでみたいと思ったことがありました。でもかなり太ってしまったので諦めました。かつては登山をしたりスキーをしたり、かなり運動をしていたのですが、ここ20年くらいはすっかり運動をしなくなりました。スキーをしていた時に1級検定を受けようと思ったのですが、1級試験にはジャンプ項目があります。10mくらいなのですが、それに挑戦して失敗して以来、空中を飛ぶのはあきらめました(笑)。でも、冬子さんのように空を飛べたら気持ちいいだろうなと思いながら映画を観ました。由紀さおりさんの歌声大好きです(暁)。

余命宣告を受けた主人公が人生を振り返り、やり残したことにチャレンジする姿を描きます。
仕事が続かない、中途半端な孫がおばあちゃんのために一肌脱ごうとする。頼りないけれどその気持ちがうれしい。「BOYS AND MEN」の小林豊が好演しています。そんな孫が惚れた女性を演じるのが柳ゆり菜。過干渉な親(寺脇康文)とは距離を置き、自分の力で生きていこうと奮闘中。主人公の夢に一役買います。
女性ががんばる作品は見ていて気持ちがいいですね。そういう作品の男性はなぜかダメダメな人が多いけれど、愛嬌が許せてしまう。でも、きっとこれがダメにする原因なんでしょうね。(堀)


本作のモデルになったのは、作るのは不可能といわれていた青いバラを作ってしまった河本純子さん。日本一のバラ苗生産地、岐阜県揖斐郡大野町の河本バラ園で、40年以上にわたり、バラの新種を発表されている方です。女性バラ育種家は、世界でも数少ない存在なのだそうです。5月28日から公開されているフランス映画『ローズメイカー 奇跡のバラ』も、女性のバラ育種家が主人公。既存のバラを掛け合わせて、自分の思い描く新しいバラを作って、思いを込めた名前を付けるという、なんて素敵な人生でしょう!
さらに、本作では、人生の終焉を目の前にして、思い出を胸にハングライダーで空を飛ぶという夢を叶える女性育種家を、由紀さおりさんが楚々と演じていらして、私もやり残したことを実現したいなぁ~と思わせてくれました。(咲)


2020年/日本/カラー/シネスコ/93分
配給:ブロードメディア・スタジオ
(C)2020「ブルーヘブンを君に」製作委員会
https://blueheaven-movie.jp/
★2021年6月11日(金)より全国公開
posted by shiraishi at 15:38| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ブラックバード 家族が家族であるうちに(原題:BLACKBIRD)

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監督:ロジャー・ミッシェル
原作・脚本:クリスチャン・トープ
撮影:マイク・エリー
出演:スーザン・サランドン(リリー)、ケイト・ウィンスレット(ジェニファー)、ミア・ワシコウスカ(アナ)、リンゼイ・ダンカン(リズ)、サム・ニール(ポール)、レイン・ウィルソン(マイケル)、ベックス・テイラー=クラウス(クリス)、アンソン・ブーン(ジョナサン)

医師のポールと妻のリリーの家に娘たちがやってくる。長女のジェニファーは夫のマイケル、息子のジョナサンと、次女のアナはパートナーのクリスを連れて両親の住む海辺の家を訪ねる。リリーは難病と長く戦ってきたが、病状が進み安楽死をしたいと家族に告げたのだった。
ジェニファーは母の選択を尊重するつもりだったが、母に会うとまた心が揺れる。アナは母にはもっと生きていてほしい、と泣き出す。孫のジョナサンはここに来て初めて知ってショックを受けている。
家族だけで最後の日々を過ごすはずなのに、母リリーの親友リズもいる。彼女はいつも家族同様だったけれども、ジェニファーはなぜか受け入れられない。

「トーキョーノーザンライツフェスティバル2016」で上映されたデンマーク映画『サイレント・ハート』(2014)を、リメイクしたもの。そちらは残念ながら未見。脚本のクリスチャン・トープがこちらでも担当しました。
安楽死を決意したリリーは、自ら最後の晩餐を計画・早いクリスマスプレゼントを用意します。盛装して現れるリリーが輝いてとても綺麗です。しかし娘たちの心中は穏やかでなく、姉妹は一騒動あったばかり。
強くて美しい母・スーザン・サランドンとしっかり者でまじめな長女・ケイト・ウィンスレットは共にオスカーを受賞(親子ほどの年齢差)したベテラン女優、ごく普通の主婦を演じても貫禄がにじみ出ます。ミア・ワシコウスカ演じるアナの逡巡もまた身につまされます。
夫のポールがわりあい落ち着いているのは医師だからかと思っていたら、だんだん明らかになる真実。私はちょっと納得いかず「う~む」でした。孫のジョナサンが率直で可愛いです。彼がいてくれてなごみました。

安楽死については、自分や家族だったら、と考えると簡単に答えが出ません。上映中の日本映画『いのちの停車場』にも安楽死を望む老親が登場しました。治療法もなく、激しい痛みに苛まれている人を前にしたら、楽にしてやりたいと思ってしまうでしょう。
医師など他人による「積極的安楽死」が認められている国が7カ国(アメリカは州によっては認可されています)。中でもスイスが1942年から認可されているというのには驚きでした。スペインとニュージーランドが今年中に合法化されるようです。日本もいつかは合法化されるのでしょうか?「ブラックバード」とは カラスではなく、”クロウタドリ” という真っ黒な羽根のツグミ科の鳥。なぜこのタイトルなのかしら?(白)


尊厳死について扱った作品ですが、尊厳死を選ぶまでの葛藤ではなく、すでに決定事項とした上で、最後の3日間を家族で過ごしたいという主人公のために娘家族や親友が集まる話です。
医者の夫は主人公からきつい言葉を投げつけられても丸ごと受け止め、妻の生活を支えています。尊厳死についてもおそらくいろいろ話し合った上で妻の意思を尊重し受け入れたのであろうことが伝わってきます。
そこに集まる長女家族と次女カップル、親友。長女の一人息子は受け止めきれず戸惑い、次女は思いとどまらせようとする。それぞれの気持ちが丁寧に描かれているのでみなに共感してしまう。
命は誰のものなのか。いえ、命は誰かのものというものなのか。
後半にある事実が判明し、それまでは主人公の気持ちを受け入れていた長女が気持ちを翻す。「母はある人物の思惑で間違った判断をさせられたのではないか?」
クライマックスの修羅場はベテラン女優たちの熱演が光る。主人公は最終的に何を選び、家族はどう受け止めたのか。理解できる人とできない人がいるかもしれませんが、それも含めてさまざまな思いがあって正解はないことを改めて考えさせられます。(堀)


2019年/アメリカ・イギリス合作/カラー/シネスコ/110分
配給:プレシディオ、彩プロ
(C)2019 BLACK BIRD PRODUCTIONS, INC ALL RIGHTS RESERVED
https://blackbird.ayapro.ne.jp/
★2021年6月11日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 14:50| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

犬は歌わない 原題:Space Dogs

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監督・プロデューサー: エルザ・クレムザー&レヴィン・ペーター
ナレーション: アレクセイ・セレブリャコフ
撮影監督:ユヌス・ロイ・イメル
音楽:ピーター・サイモン&ジョナサン・ショア
編集:ヤン・ソルダット、ステファン・ベヒャンガー

世界で初めて宇宙に飛んだ犬のライカの魂は、今もモスクワの街を彷徨っている・・・

1950年代、東西冷戦の時代。ソビエト連邦は宇宙開発に向けて様々な実験を繰り返していた。その中の一つがスペース・ドッグ計画。世界初の“宇宙飛行犬”として飛び立ったライカは、かつてモスクワの街角を縄張りにする野良犬だった。宇宙開発に借り出された彼女は宇宙空間に出た初の生物であり、初の犠牲者となった。時は過ぎ、モスクワの犬たちは今日も苛酷な現実を生き抜いている。そして街にはこんな都市伝説が生まれていた"ライカは霊として地球に戻り、彼女の子孫たちと共に街角をさまよっている"
本作は宇宙開発、エゴ、理不尽な暴力、犬を取り巻くこの社会を宇宙開発計画のアーカイブと地上の犬目線で撮影された映像によって描き出す、モスクワの街角と宇宙が犬たちを通して交差する新感覚のドキュメンタリー映画。

初めて宇宙に飛んだのが、ワンちゃんだったと聞いたのは小学生の時のことでした。米ソが競って宇宙開発をしていた時代です。ソ連は犬を、アメリカはチンパンジーを最初の宇宙飛行の実験台に選びました。
本作で、選ばれた野良犬たちが、飛行前に様々な実験をされる光景を目にして、なんとまぁ気の毒なと胸が痛みました。
人間の宇宙飛行が可能かどうか検証するために、「スペース・ドッグ計画」として、宇宙に飛んだ犬はライカに続き数十匹。犬は飼い主に情を抱くもの。最初は野良犬でも、訓練しているうちに、訓練にあたっている人たちに親しみを感じていったに違いありません。引き離されて、狭い宇宙船に閉じ込められたワンちゃん。どれほど寂しくて不安な思いをしたことでしょう・・・ 犬権無視の宇宙開発があって、人類が宇宙に飛ぶことができたことを忘れてはならないと思いました。
一方で、現在のモスクワ。街をたむろする野良犬たち。ご先祖さまは、もしかしたら宇宙開発を支えたかもしれません。
5月28日から公開されている日露合作映画『ハチとパルマの物語』は、ソ連にもハチ公のような忠犬がいた実話をもとに描いた物語。先行公開されたロシアで大ヒット。犬がいかに人間に忠実なのかを再認識して野良犬にも接したいものですね。(咲)


人間より前に犬が宇宙に行っていたことを本作で初めて知りました。宇宙に行くとなると大変なんですね。4月に公開された『約束の宇宙』で宇宙飛行士の訓練の様子を見て、そのハード内容に驚きましたが、本作の犬たちはその比ではない気がします。肉体的にも傷つけられ、見ているのが辛い。
そんな過去の映像と並行して映し出されるのが、現在のモスクワの野良犬たち。本能で生きている彼らの姿に恐怖すら感じる。途中、野良犬が猫を襲う。しかし、食べるのではなく、弄ぶだけ。猫がかわいそうと思った瞬間、同じことを人間は野良犬にしてきたのではないかと気づいた。(堀)


初めて宇宙旅行をした犬、ライカのことを映画の中で描いたスウェーデン映画『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』が日本公開されたは1985年。この映画は衝撃的でした。今もあの地球軌道を周回している浮遊感と犬のシーンが目に浮かびます。実際の打ち上げは1957年のことです。すでに60年以上の時が経ちました。そして現代のモスクワ。今も野良犬は街を動きまわっている。
犬のドキュメンタリーなのに、物語がありライカの話とリンクしている不思議。まさにドキュドラマ的な作品だった。今も昔も、人間と犬の関係は変わらないということが描かれていた(暁)。


2019年/オーストリア・ドイツ/91分/カラー・モノクロ/DCP
配給:ムーリンプロダクション
公式サイト:https://moolin-production.co.jp/spacedogs/
★2021年6月12日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国劇場公開



posted by sakiko at 13:40| Comment(0) | オーストリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

湖底の空 英題:SORA

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監督・脚本:佐藤智也
出演:イ・テギョン、阿部カ、みょんふぁ、武田裕光、アグネス・チャン、ウム・ソヨン、ジョ・ハラ、周亜林、蔡仁堯、早川知子、王玫子、金暁明

空(そら)と海(かい)は、日本人の父・高志と韓国人の母・チスクの間に生まれた一卵性双生児の姉弟。大きな湖があり、民俗芸能が盛んな韓国・安東(アンドン)で生まれ育った。小さいときから二人は絵を描くのが好きだった。
28歳になった空は中国・上海で暮らしている。イラストレーターとして仕事を得ようとするが、作品の売り込みはなかなかうまくいかない。出版社に勤める日本人の男性、望月隼人が何かと空の絵を気にかけ、仕事を提供しようとする。異郷の地で暮らす二人は、似たような境遇から親密な関係を築きつつあった。
空のもとに双子の弟が訪ねてくる。性に関する問題を抱えていた海(かい)は性別適合手術を受けて女性となり、名前を海(うみ)と変えていた。
海(うみ)が空と望月を結び付けようとし、恋愛が実りそうになるが、なぜだか空は望月に対し、自分はジェンダーの問題を抱えた海(うみ)の方だと名乗ってしまう・・・

◆ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2020 グランプリ&シネガーアワードW受賞

2001年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭に佐藤智也監督が短編を出品した時から、韓国映画界との縁が出来、この日中韓合作映画に繋がりました。
キャストやスタッフは、韓国で活動する日本人、日本で活動する中国人、日本生まれの韓国人や中国人など様々。撮影には、韓国語、中国語の通訳がつき、3か国語が入り乱れる混沌とした現場だったそうです。
映画の最後、キャストとスタッフの名前が、縦書きで出てくるのですが、韓国語→日本語→中国語と一つ一つ次々に転換していく様がとても素敵です。

撮影地は、韓国・安東市、中国・上海市、日本・東京。
中でも、安東は儒教発祥の地で今も伝統的な町並みの残る風情あるところ。仮面劇が印象的に出てきます。大きな湖は、実はダム湖。当初から湖のあるところで撮影しようと韓国の湖を探し回ったそうですが、日本のような火山国ではない韓国では湖が少なく、ほとんどが川をせき止めて造られたダム湖。

弟の海(かい)が性転換し海(うみ)という女性になり、観ている私も、隼人と話しているのは空(そら)なのか海(うみ)なのかと、くらくら。
自分は何者なのか、この世に存在する意義は?と浮遊する姿が、美しい映像の中で展開するのですが、実は驚きの事実が・・・ これは是非映画をご覧になってご確認を! (咲)



性別適合⼿術を受けて、女性になった弟を持った⼀卵性双⽣児の姉が主人公。一卵性で姉と弟?と思ったら、父親の染色体が普通でないと起こると説明があり、納得。地元を離れて上海に住み、絵の道で生計を立てようと奮闘中。しかし、なかなか思うようには進まない。積極的な弟(妹か?)に言い負かされては凹んでしまう。
恋愛もいつも長くは続かず、今回も土壇場でとんでもないことを言い出すが。。。
弟の性同一性障害のことがテーマの作品と思いきや、後半になって彼女がある大きな十字架を背負って生きてきたことが分かる。その十字架は韓国に残って暮らす母もまた背負っていた。
人生やり直すことはできない。とんでもないことをやってしまっても、それをいかに受け入れ、もう一度前を向いて歩き出すかが大事。ラストは希望を感じさせているが、それは母が経験した過ちの繰り返しではないか。おばさんとしては大きなお世話を焼きたくなってしまう。(堀)


山水画を思わせる安東の風景が印象的でした。そしてまか不思議な物語。双子で男と女。一人二役にしても難しい。途中はすっかり騙されました。いろいろな仕掛けもあったけど、情緒もある作品でした。
日本、韓国を中心に中国語圏の俳優も出てくる。『椿の庭』『アジアの天使』など、最近、韓国、中国、台湾、香港などの俳優がミックスで出演する映画が続いて公開されているが、これからも交流が続いていくのでしょう。阿部カさん、最近見ないのでどうしているかなと思っていたのですが、久しぶりに見ることができてうれしかったです。人気TVドラマ「花より男子」シリーズに出ていた時には知らずでしたが、TV中国語教室にも出ていましたね(暁)。



2019年/日本・韓国・中国/111分
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
公式サイト:https://www.sora-movie.com/
★2021年6月12日(土)より新宿K's cinemaほか全国順次公開


posted by sakiko at 12:20| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする