2021年06月27日

食の安全を守る人々

2021.7.2(金)より
ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺にてロードショー! 他全国順次公開
劇場情報
食の安全を守る人々B5_omote_final_R.jpg
(C)心土不二


監督・撮影・編集:原村政樹
プロデューサー:山田正彦
映像技術:李恩求 青木克都
整音:丸山昇
音楽:鈴木光男
語り:杉本彩
主な出演者(公式Hpより)
☆ゼン・ハニーカット(マムズ・アクロス・アメリカ創設者)
アメリカの遺伝子組み換えに反対する母親の会・Moms Across America(マムズ・アクロス・アメリカ)創設事務局長 
☆河田 昌東(まさはる)元名古屋大学理学部助手
専門は分子生物学、環境科学。退職後は、四日市公害や三重県藤原町(現・いなべ市)のセメント公害、台湾、韓国、中国、フィリピンなど海外の公害調査や裁判支援。1990年からはチェルノブイリ原発事故被災者の救援活動、現在は福島原発事故被災地の調査と支援活動にも携わる。
☆稲葉光國 民間稲作研究所
1969年栃木県立栃木農業高校、1971年真岡農業高校勤務、2001年退職。1999年NPO法人民間稲作研究所を設立。兵庫県豊岡市「コウノトリと共生する水田づくり水田再生事業」の受託。千葉県いすみ市より有機稲作の技術支援の依頼を受け、学校給食有機米100%実現を支援。
☆ドウェイン・ジョンソン(モンサント裁判原告/ラウンドアップ被害者)
米カリフォルニア州在住。末期がん。がんになったのは農薬大手モンサントの除草剤・ラウンドアップのせいだとして同社を提訴。2018年、陪審はモンサントに約2億9000万ドル(約320億円)の支払いを命じる評決を出した。モンサント製品のせいでがんを発症したと提訴し、公判にこぎ着けた最初のケース。

日本は世界の潮流に逆行しているのか?
農と食の持続可能な未来図を描く人たち


食の安全を考える時、種子法廃止、種苗法の改定、ラウンドアップ(アメリカの企業モンサントが開発した除草剤)など農薬の規制緩和、そしてゲノム編集(DNA組み換え)の表記なし食品の流通と、TPP(環太平洋パートナーシップ)をきっかけにした急速なグローバル化により、日本の「農」と「食」にこれまで以上の危機が押し寄せているのに、日本のマスコミはこの現状を正面から取り組み報道することがほとんどなく 、日本人の危機感は薄いのが現状。これに危機感を持った、弁護士で元農林水産大臣の山田正彦さんが映画を通して、この危機感を広めていこうと、長年、「農」をテーマに映画を撮り続けている原村政樹監督に依頼し、作ったのがこのドキュメンタリー。
二人は去年(2020年)『タネは誰のもの』を先に発表しているが、当初はこの作品と一体のものを作る予定だった。しかし、去年、種苗法が国会で通りそうということで、先に『タネは誰のもの』を発表した。
多国籍アグリビジネスにより大企業による支配が強まり、食料自給率の低下や、命・健康に影響を与えることが懸念される。日本国内だけでなく、アメリカでモンサントへの裁判を起こした原告や、子どものために国や企業と闘う女性、韓国の小学校でのオーガニック給食の現状など、多彩に取材。日本の食の安全に警鐘を鳴らす。

原村監督の作る映画は、農業や食の安全に対する深い洞察がある。難しい話を分かりやすくまとめてくれる。たとえ自分が農業に携わっていなくても、そういうことに目を向け考えさせるようになる。いつも、新しい知識を与えてくれるのだけど、行動となるとなかなか難しい。何かをしなければと思うのだけど、実践となるとすぐには動けない。若い人にぜひ観てもらって、今後の日本の農業、食について行動を起こせる人がたくさん出てきてほしいと切に願う(暁)。

『食の安全を守る人々』公式HP 
企画・制作:一般社団法人 心土不二
2021年/日本/1カラー
配給:きろくびと
posted by akemi at 19:26| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アジアの天使

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脚本・監督:石井裕也
撮影監督:キム・ジョンソン
音楽:パク・イニョン
エグゼクティブプロデューサー:飯田雅裕
プロデューサー:永井拓郎、パク・ジョンボム、オ・ジユン
出演:池松壮亮、チェ・ヒソ(『金子文子と朴烈』)、オダギリジョー、キム・ミンジェ、キム・イェウン、佐藤凌

小説家の青木剛(池松壮亮)は妻を病気で亡くし、8歳になるひとり息子の学を連れて、ソウルにやって来た。仕事があるという兄(オダギリジョー)を頼って来たのだが、聞いていた住所には韓国人がいて、言葉が通じず埒が明かない。ようやく兄が帰宅するが、韓国コスメの事業で手を組んでいた韓国人の相棒が商品を持ち逃げしてしまったことが判明する。兄弟は、韓国産ワカメで一山当てようと、海沿いの江陵(カンヌン)に行くことにする。飛び乗った江原道(カンウォンド)に向かう列車で、剛たちは、同じように人生に行き詰った韓国の三兄妹と出会う。言葉は通じないながら、一緒に降りた駅からボロトラックで三兄妹の両親の墓参りに付き合うことになる・・・

『舟を編む』(13)で日本アカデミー賞監督賞を最年少で受賞した石井裕也監督が、オール韓国ロケで挑んだ作品。95%以上のスタッフ・キャストが韓国チーム。
石井裕也監督は、2014年の釜山国際映画祭で共に審査員を務めたパク・ジョンボム監督(『ムサン日記〜白い犬』)と友情を育み、本作の実現へと繋がりました。パク・ジョンボム監督は、韓国コスメの共同事業で商品を持ち逃げする役で出演しています。パク・ジョンボム監督には、こういう悪役が似合いますが、オダギリジョーも、一獲千金を狙ういい加減な男がぴったりです。石井裕也監督が、本作より後に作った『茜色に焼かれる』(5月21日公開)でも、しょうもない男をひょうひょうと演じていたオダギリジョー。憎めないです。
列車で出会う三兄妹の一人ソルは、元・人気アイドルで今は売れない歌手。『金子文子と朴烈』で強烈な印象を残したチェ・ヒソが、しんみりと演じています。
剛とソルは、かつて「天使」に出会ったことがあるのですが、その天使は東洋の中年男性で、人の肩を噛むという、風変わりな天使。これまで持っていた清らかな天使とはイメージがあまりに違うのですが、さて、このヘンテコな天使、何を伝えたかったのか・・・が、映画の肝のようです。(咲)


2021年/日本/128分/G
配給:クロックワークス
公式サイト:https://asia-tenshi.jp/
★2021年7月2日(金)テアトル新宿ほか全国公開

posted by sakiko at 13:01| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

スーパーノヴァ   原題:Supernova

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監督・脚本:ハリー・マックイーン
出演:コリン・ファース(『英国王のスピーチ』)、スタンリー・トゥッチ(『ラブリーボーン』)

イギリス人でピアニストのサム(コリン・ファース)とアメリカ人の作家タスカー(スタンリー・トゥッチ)は、パートナーとして人生を共に紡いできた。二人は古びたキャンピングカーで旅に出る。最初の目的地はイングランドの湖水地方。20年前、二人が出会った直後に訪れ、愛の告白をした思い出の場所だ。次の目的地はサムの実家。両親亡き後、姉の家族が暮らしている。タスカーは、サムに内緒で懐かしい友人たちを集める。歓談する中で、友人からタスカーがもう文章を書けないと嘆いていると聞かされ驚くサム。そうして、二人は旅の最終目的地であるサムの久しぶりのピアノリサイタルの会場に向かう・・・

実はタスカーは認知症で徐々に記憶を失うことを医師から告げられていて、愛する人のこともわからなくなるような醜態は見せたくないと、まだ記憶のあるうちにフェイドアウトしたいと思っていることが最初のほうで語られます。そんな思いを抱えながら、思い出の地に旅に出たのです。
どんなに愛し合っていても、いつかは死が二人を分かちます。愛する人に人生の終焉が迫っているとわかった時、どう対峙すればいいのでしょう。 寄り添う人のいない私は、さらに空しいですが、そろそろ終活を考えなければいけないことをずっしり感じさせられました。

タイトルの「スーパーノヴァ(超新星)」は、星の進化の最後に起こる巨大な爆発のこと。天文学に造詣の深いタスカーは望遠鏡持参で旅に出て、二人で夜空を見あげます。二人の愛の物語が壮大な宇宙を背景にしていることと共に、タスカーが人生の終焉を目前にして輝きを放つことも込めたタイトルのようです。
美しい湖水地方の風景の中で、人生の重みを考えさせられた映画ですが、二人の会話にはブラックユーモアもたっぷり。タスカーは、カーナビの口調がサッチャー元首相みたいで嫌だというのですが、サムはお構いなしにカーナビをつけます。サッチャーが首相時代、同性愛者を敵視し、教育現場で同性愛に触れることを禁じる法まで制定したことを思うと、実に意味深な会話です。(咲)


2020年/イギリス/カラー/ビスタ/5.1ch/95分
字幕翻訳:西村美須寿
配給:ギャガ
公式サイト:https://gaga.ne.jp/supernova/
★2021年7月1日(木)TOHOシネマズ シャンテ他にて全国順次ロードショー.




posted by sakiko at 02:31| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年06月26日

ナポレオンと私

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監督:頃安祐良
脚本:鈴木規子
撮影:谷康生
音楽:今村左悶
出演:武田梨奈(大原春子)、濱 正悟(ナポレオン)、 綾乃 彩(伊原ゆか)、岡林佑香(西園寺里穂)/永吉明日香、白鳥紗良、米村真理、金子祐史、笈川健太/村田 唯、輝海、荒井レイラ/染谷俊之(岩田伸吾 )

わたしは、わたしをあきらめない―。あなたとの出会いがわたしの明日を変えた!
WEB 制作会社で営業アシスタントとして働いている 28 歳の大原春子は、本当の幸せが分からない人生迷子中。会社の先輩・岩田伸吾にほのかに憧れているけれど、春子にとっては高嶺の花。 後輩の里穂が接近中で気が気じゃない。ゆかがハマっているイケメンヴァンパイアとの恋愛ゲームをうっかり始めてみると、画面の中からゲームキャラのナポレオンが現れた!! 出てきた本人もなぜかわからず、春子は大混乱。春子の幸せ探しを手伝うという彼を「ナポ」と呼び、二人の不思議な同居が始まった。

美形のゲームキャラがコスプレそのままに実写版、いや生身で現れたら、そりゃ吃驚×驚愕です。ナポレオンはクールな俺様キャラですが、女性がハマる恋愛ゲームの人気者なので女心には詳しいようす。スーパー戦隊シリーズのルパンブルーで注目された濱 正悟さん、もちろん長身のイケメンです。春子の憧れ岩田先輩は染谷俊之さん、実際のイケメンヴァンパイアではジャンヌ・ダルクの声をあてているそうで、てっきりそのままの役かと思っていたら人間だった(笑)とのこと。
武田梨奈さんは『いざなぎ暮れた。』に続いてのラブコメです。今回は奥手で自分に自信のない春子が「ナポ」の後押しでどんな風に変わっていくのかが見どころ。ナポと春子の身長差も”萌え”要素。超ファンタジックなストーリーですが、「アラサー女子のあるある」もちゃんと入っていて、現実味もあります。
写真(オフィシャル)は完成披露上映会で、30歳のお誕生日のお祝いに濱さんから「30本の薔薇」を贈られた武田さん。(白)


★武田さんの誕生日を祝い濱さんが花束想定.jpg
©CYBIRD

2021年/日本/カラー/シネスコ/82分
配給:ENBU ゼミナール
©CYBIRD
https://napowata.com/
★2021年7月2日(金)池袋HUMAXシネマズ、渋谷HUMAXシネマほか全国公開
posted by shiraishi at 20:03| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年06月24日

ジャニス・ジョプリン(原題:A Night with Janis Joplin)

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監督(シネマ版):デヴィッド・ホーン
脚本・演出(舞台版):ランディ・ジョンソン
音楽ディレクター:ブレント・クレヨン
出演:
メアリー・ブリジット・デイヴィス(ジャニス・ジョプリン)
オーリアナ・アンジェリーク(オデッタ/ベッシー・スミス/ザ・シャンテルズ)
アシュリー・テイマー・デイヴィス(アレサ・フランクリン/ニーナ・シモン/ブルース・ウーマン/ザ・シャンテルズ)
タウニー・ドリー(エタ・ジェイムス/ザ・シャンテルズ)
ジェニファー・リー・ウォーレン(ブルース・シンガー/ザ・シャンテルズ)

ジャニス・ジョプリンは、1967年に音楽シーンに登場して爆発的な人気を獲得し、たちまちロックアンドロールの女王となった。生々しい情感にあふれ、アメリカ南部ならではのおおらかさを感じさせる独特の歌声は、人々を魅了し、モントレーやウッドストックをはじめとする全米各地のライブ会場を席捲した。ジャニスのシングルのうち、Billboard Hot100入りしたのは5枚。中でも『ミー・アンド・ボビー・マッギー』のカバー曲は、1971年3月に1位に輝いている。このほか『ピース・オブ・マイ・ハート』、『クライ・ベイビー』、『ダウン・オン・ミー』、『ボール・アンド・チェイン』、『サマータイム』のカバー曲をはじめとする数々のヒット曲が生まれた。1970年に収録された遺作にして代表作でもある『パール』は、今年、50周年を迎える。同アルバムは、実に9週間にわたり全米No.1を獲得した。ジャニス亡き後、生前に収録された音源やパフォーマンス映像は、音楽界のアイコンとしてのジャニスのステータスを不動のものとし、後進のアーティストやジャニスの音楽を信奉するファンたちにインスピレーションを与えた。無数のヒットコレクション、ライブアンソロジー、コマーシャル、そして大ヒットを記録したブロードウェイのショーなどを通じて、ジャニスの伝説は今も生き続けている。

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スター、ジャニス・ジョプリン。数々の名曲をジャニスが熱唱し、彼女が音楽的にも影響を受けたアレサ・フランクリン、エタ・ジェイムス、オデッタ、ニーナ・シモン、ベッシー・スミスと共に感動のステージを披露する。「孤独」と生涯戦ったジャニス・ジョプリン。そんな中、ジャニスが自らの物語を語り始める。

本場ブロードウェイの演劇やミュージカルの舞台を、間近でそのまま体感できる松竹ブロードウェイシネマ。今回はメアリー・ブリジット・デイヴィスがそのたたずまいといい、歌声といい、ジャニス・ジョプリンをほうふつとさせます。
27歳で亡くなって早くも50年になるジャニス・ジョプリン。2016年のドキュメンタリー『ジャニス リトル・ガール・ブルー』ではジャニスの孤独が垣間見られ、スターダムに昇りつめながら、あんなに早く逝ってしまって…伝説にならなくていいのにと思ったものでした。しかーし本作では、ジャニスが憑依したかのようなパワフルなライブが観られます。次々と披露される懐かしいヒット曲に往年のファンは感涙必至。
彼女が影響を受けたアレサ・フランクリンをアシュリー・テイマー・デイヴィスが、エタ・ジェイムスをタウニー・ドリーが扮し(一人何役も演じています)素晴らしい歌唱を聞かせます。これこそ音響の良い劇場で、たっぷりと楽しんでほしい作品です。(白)


2018年/アメリカ/カラー/ビスタ/117分
配給:松竹
ⓒJason Niedle
★2021年7月2日(金)から東劇(東京)・なんばパークスシネマ(大阪)・ミッドランドスクエア シネマ(名古屋)他全国順次限定公開 ロードショー

【松竹ブロードウェイシネマ 公式アカウント】
https://broadwaycinema.jp/
www.instagram.com/shochikucinema/
www.facebook.com/ShochikuBroadwayCinema
twitter.com/SBroadwayCinema

posted by shiraishi at 15:02| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年06月23日

Bittersand

bittersand.jpg

監督・脚本:杉岡知哉
撮影:山崎裕典
主題歌:add
出演:井上祐貴(吉原暁人)、萩原利久(井葉有介)、木下彩音(石川絵莉子)、森⽥望智(原田澄子)、柾⽊玲弥(遠藤拓真)、⼩野花梨(
上原亜紗美)

吉原暁人25才、サラリーマン。これという夢も楽しみもなくさえない日々を送っている。ある日、高校時代に想いを寄せていた石川絵莉子と思いがけなく出会う。しかし絵莉子にとって高校時代は忌まわしい“黒板事件”によって、葬り去りたい過去だった。暁人もその頃から自分が一歩も前に進めていないことに気付く。悪友井葉有介の力を借り、暁人は自分のため、そして絵莉子のために真相を暴いて記憶を塗り替えようとする…。

かなり痛い青春の思い出が遡って語られます。うーんこれはイヤだ。教室の黒板にでかでかと書かれた3年1組相関図。写真は誰が撮って張り出したのか? 書かれたことは真実だったのか?真相も犯人も明らかにしないまま、うやむやになって心に傷だけが残ったようです。あれだけ書いてあったら、筆跡でわかりそうなものだけれど。遅くなって何もしないよりましか。
みずみずしい俳優たちが集まっている青春ミステリーは、杉岡知哉監督の初長編。高校時代に忸怩たる思いが残っているのでしょうか?

もう遥か昔の話。私の高校2年と3年は持ち上がりで、クラス替えはありませんでした。落書きノートがあって係だった私はそこから文集も作ったこともあり、名前がなくてもけっこう誰の筆跡かわかりました。一人病気で亡くなって無常を感じましたが、事件もなく無事に卒業しました。懐かしいなぁ。
観終わって「辛い思い出は愛で循環させられる」とおっしゃった御法川修監督の言葉を思い出します。こちら。⼩野花梨さんが演じた亜紗美の笑顔はそれだったんだね。(白)


2021年/日本/カラー/99分
配給:ラビットハウス
(C)「Bittersand」製作委員会
https://bittersand.net/
★2021年6月25日(金)シネ・リーブル池袋、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 15:53| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年06月21日

王の願い ハングルの始まり(英題:The King's Letters)

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監督・脚本:チョ・ヒョルチョン
撮影:キム・テギョン
出演:ソン・ガンホ(世宗)、パク・ヘイル(シンミ)、チョン・ミソン(ソホン王妃)、キム・ジュンハン、チャ・レヒョン、タン・ジュンサン

朝鮮第4代国王・世宗の時代。これまで朝鮮には自国語を書き表す文字が存在しておらず、上流階級層だけが特権として中国の漢字を学び使用していた。この状況をもどかしく思う世宗(ソン・ガンホ)は、庶民でも容易に学べて書くことができる朝鮮独自の文字を作ることを決意。そこで、低い身分ながら何カ国もの言語に詳しい和尚シンミ(パク・ヘイル)とその弟子たちを呼び寄せ、協力を仰いだ。王を取り巻く臣下たちは、国の最高位である王様が最下層の僧侶と手を取り合い、庶民に文字を与えようとしている前代未聞の事態に激しく反発。逆境と葛藤のなか、世宗大王とシンミは民へ贈る新たな文字作りに突き進んでいく。

ソン・ガンホ(1967生まれ)、パク・ヘイル(1977生まれ)、チョン・ミソンの3人の共演は『殺人の追憶』以来16年ぶり。2003年の東京国際映画祭に来日、Bunnkamuraオーチャードホールでの舞台挨拶を見て、遠目にもソン・ガンホさんって大きいなと思った記憶があります。
本作では、すっかり貫禄の増した2人が民のために、新しい固有の文字を作ることに注力。王妃は2人を支えます。そのころ朝鮮を支配していた明に知られてはならず、家臣には猛反対される中苦労して完成。思わず観ているこちらも拍手したくなりました。
王の運命(さだめ) 歴史を変えた八日間』で、最優秀脚本賞を受賞したチョ・ヒョルチョンが本作で脚本のみならず監督デビューも果たしています。ソン・ガンホは朝鮮第21代国王・英祖役。撮影はどちらもキム・テギョンが担っていますので、なんだか観たことのある気がしたのも道理。
ハングルは1443年に世宗大王が、訓民正音(朝: 훈민정음、略称: 正音)の名で公布したとされています。同じように世宗が身分の差を超えて友情を結んだ『世宗大王 星を追う者たち』は、ハン・ソッキュ(世宗)、チェ・ミンシク(チャン・ヨンシル)が競演。そちらもご覧ください。(白)


世宗大王は、韓国の1万ウォン札に肖像画が描かれ、景福宮の正面の大通りのど真ん中にある光化門広場に銅像も立つ、まさに今も皆に愛されている名君。
訓民正音とは、「民を訓(おし)える正しい音」という意味。真に民のことを思っていたことがわかります・
世宗がハングルを作った経緯については、これまでドラマ「大王世宗」や「根の深い木~世宗大王の誓い~」などで描かれてきました。「大王世宗」ではキム・サンギョン、「根の深い木」ではハン・ソッキュが世宗を演じていました。今回のソン・ガンホ演じる世宗、さすがにご立派。
本作では、儒教が国是の朝鮮王朝で、民にも読める文字を作るのに助っ人として仏教の僧侶たちを選んだことが詳しく描かれていました。そも、お経を書き表すサンスクリットは表音文字。そこに目を付けたのです。パク・ヘイル演じる和尚シンミは、多言語に通じた人物。シンミから、サンスクリットは50文字、パスパ文字は41文字、チベット文字は34文字と聞いて、世宗は多すぎると頭を抱えます。そうして生み出されたのが、口の中の舌の動きを形にした文字。NHKのハングル講座でなるほど!と感心したのですが、いまだに覚えられません。
この映画のもう一つの魅力は、韓国各地の古い由緒ある建物の数々。ユネスコ世界文化遺産である陜川の「海印寺 蔵経板殿」、栄州の「浮石寺 無量寿殿」、安東の「鳳停寺」は、韓国映画として初めてスクリーンに映し出されたとのことです。お馴染みの景福宮や昌徳宮もロケ地となっています。(咲)

韓国映画をたくさん観てきた。でもハングル文字はなかなか理解ができない。きっとハングル文字の基本、「あいうえお」あるいは「アルファベット」を理解していれば、ハングル文字の法則がわかるのだろうと思いながら、いつも|や〇、□の組み合わせはどうなっているのかなと思っていた。今回もきっと韓国文字の組み立て法則を知っていたら、もっと興味深くみることができたのだろうなと思いながら観た。TVのハングル講座も1,2回は見たことがあるけど、2回くらいでさじをなげた。語学は最初の基本文字を理解するのが肝心といつも思うのだがハングルの基本文字は覚えることができなかった。ポルトガル語、スペイン語にも挑戦したけど基本文字の読み方をマスターしたあと挨拶言葉くらいしかできずだった。中国語はアルファベットのようなものはないけど、発音とか音の上下を表すピンインというのがある。これは30年近く勉強してもなかなか慣れない。やっぱり基礎でしっかり覚えなかったからかもしれない。それにしてもハングル文字の謎はこの作品を観てさらにちんぷんかんぷん。やっぱり基礎からやってみなきゃいけないかもと、映画を観ながら思った。
「韓流」が流行り始めた頃、皆さんのお気に入りの韓流スターはペ・ヨンジュン、イ・ビョンホン、チャン・ドンゴン、ウォンビンなどだったが、韓流ブームのずっと前から韓国映画を観てきた私の好みの韓流スターはアンソンギ、ソン・ガンホ、ハン・ソッキュ、ユ・ジテ、チェ・ミンシクなどだった。あまりに渋すぎ? 古い? でも、この方たちの演技力はすごいと思う。その中でも最近のソン・ガンホの出ている作品は『パラサイト 半地下の家族』など注目を浴びている。
このハングル文字が作られた経緯を描いた『王の願い ハングルの始まり』はこれまでの彼の作品とは違った威厳のある役で、また別の魅力を出していると思うけど、私はコミカルな役のほうが好き。彼の作品で一番好きなのは『反則王』かな(笑)。あの覆面レスラーの役を思うと、この王様の役は雲泥の差がある! 貫禄がさらに出てきたということかな(暁)。

2019年/日本/カラー/シネスコ/110分
配給:ハーク
(C)2019 MegaboxJoongAng PLUS M,Doodoong Pictures ALL RIGHTS RESERVED.
http://hark3.com/hangul/
★2021年6月25日(金)シネマート新宿ほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 19:48| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ソウルメイト/七月(チーユエ)と安生(アンシェン)(原題:七月與安生 英題:Soulmate)

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監督:デレク・ツァン
原作:アニー・ベイビー
出演:チョウ・ドンユィ(アンシェン)、マー・スーチュン(チーユエ)、トビー・リー

ある日、安生(アンシェン)の元に映画会社から連絡が届く。彼らは、人気ネット小説『七月(チーユエ)と安生(アンシェン)』を映像化したいのだという。作者は七月(チーユエ)という名の女性だが、所在は不明。物語は幼馴染の女性2人の友情を描いたもので、作者の自伝的な要素が強いという話だった。そこで彼らは、もう一人の主人公のモデルを探し、アンシェンに連絡をしてきたというわけだ。だがアンシェンは「チーユエなんて人は知らない」と彼らを帰す。
知らないというのは嘘で、チーユエはアンシェンにとって子どもの頃から特別な存在だった。何よりも大切な親友、そして誰よりも激しくぶつかりあった戦友、互いに魂の奥深いところでつながっていたはずの2人がなぜ別れてしまったのか?

チョウ・ドンユィのデビューはチャン・イーモウ監督の『サンザシの樹の下で』(2010年)。「13億人の妹」のキャッチフレーズがぴったりの可憐な女の子でした。それから10年、チャン・イーモウ監督が見出した女優、コン・リー、チャン・ツィイー二人に比べて大人の女性の魅力が足りないのか?と思っていたこの頃、『少年の君』(7月16日公開)とこの作品が公開されることになりました。どちらも可愛くてちょっと不思議、チョウ・ドンユィの魅力が遺憾なく発揮されています。
育った環境の違いを超えて続いていた少女二人の友情は、男の子一人が登場でヒビが入ってしまいます。三人の思いが少し時間をずらして紐解かれ、甘酸っぱいというより苦くて辛い青春の一時期が目の前に立ち上ってきました。得た喜びが大きいほど失ったときの悲しみは深くなります。それでもそういう人に巡り合えたことは嬉しいことです。
これからも出逢いがあるだろう若い人から、別れが多くなりそうな年齢に差し掛かった人までおすすめの作品。(白)


曾國祥(デレク・ツァン)監督の『少年の君』が日本公開されることになり、同監督の長編第一作目の作品『七月與安生』が、『ソウルメイト/七月(チーユエ)と安生(アンシェン)』というタイトルで日本公開されることになった。この作品は2017年の大阪アジアン映画祭で上映され「ABC賞」を受賞している。この「ABC賞」というのは、大阪のABC放送(朝日放送テレビ)で放映されるチャンスを与えられるということで大阪周辺ではTVで放映された。私自身はこの2017年の大阪アジアン映画祭で観て、すでにシネマジャーナル本誌100号で紹介している。素晴らしい作品と思い、日本公開されないのは残念と思っていたけれど、『少年の君』が評価されこの作品も日本公開されることになり嬉しい。

今回見返してみて、安生を演じた周冬雨(チョウ・ドンユィ)の家は『少年の君』と家庭背景が同じと気が付いた。母子家庭で母親は他の町に働きに行っていて家にいなくて一人で暮らしているという設定だった。七月の家は両親がそろっていて、安生を食事に誘ってくれたりしてあたたかく見守ってくれる。生真面目な七月と自由奔放な安生、まるっきり性格の違う二人の少女の13歳から27歳になるまでの成長と友情、そして別れ。成長するにしたがって、進む方向、生き方の違いから疎遠になったという風に描かれていたけど、本当は…。最後にからくりがわかるまで観客はずっと騙される。デレク・ツァン監督の繊細で巧みな演出は、あっと思わせ珠玉の青春映画になった。憎しみあって別れたのかと思ったらシスターフッドが描かれる。『GF*BF』をも思わせる展開。最後にホロリとさせられる。

香港のアカデミー賞にあたる香港電影金像奨では12部門にノミネートされ、作曲賞を受賞。第53回台湾金馬奨では、6部門にノミネートされ、安生を演じた周冬雨と七月を演じた馬思純(マー・スーチュン)は、史上初の主演女優賞W受賞をはたした。アン・ホイ監督がどちらかに主演女優賞というのは無理と主張したらしい。
主題歌を王菲(フェイ・ウォン)と元黒豹楽隊の竇唯(ドウ・ウェイ)の娘・竇靖童(リア・ドウ)が歌ったことも話題になった。しかし、私にとっては、劇中で崔健(ツイ・チェン)の「花房姑娘」や、王菲の「浮躁」が流れたことが懐かしかった。この作品には中国の音楽だけでなく、欧米の音楽も含めたくさんの音楽が流れていた。デレク・ツァン監督は、『インファナル・アフェア』『ラヴソング』など俳優、監督、司会など多彩に活躍している曾志偉(エリック・ツァン)の息子(暁)。 

第53回金馬奨6部門ノミネート主演女優賞W受賞

2016年/香港・中国/カラー/シネスコ/110分
配給:クロックワークス
(C)2016 JOYCORE Pictures(Shanghai) CO.,LTD., J.Q. Pictures Limited,Alibaba Pictures Group Limited,We Pictures Ltd. ALL Rights reserved.
https://klockworx-asia.com/soulmate/
★2021年6月25日(金)より新宿武蔵野館ほかロードショー
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スレイト(原題:Slate)

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監督・脚本:チョ・バルン
撮影:イ・ソクチュン
出演:アン・ジヘ(ヨニ)、イ・ミンジ(キム・ジナ)、パク・テサン(フィリップ)

ヨニの夢は子どもの頃からアクションスター。大人になってもその夢とかける熱意は変わらないものの、なかなか芽が出ない。研鑽と売り込みに励む日々が続いている。ようやくアクション映画のスタントの仕事が入り、撮影現場に行くとまだ誰もいなかった。古びたセットを回るうち、剣を持って戦っている人たちに出会う。撮影と思って参戦し、敵を倒して喝采を浴びる。
ところが、そこは間違って入り込んでしまった異世界で、非情な独裁者に村人が苦しんでいた。ヨニは村人を救う伝説のヒーローと勘違いされたらしいのだが、真剣な彼らに本当のことが言い出せない。

パラレルワールドに入り込んでしまったアクション女優ヨニ。その出入りのアイテムとなるのがタイトルの「スレイト」。撮影のときに「用意、スタート!」でカチン!と鳴らすあの「カチンコ」のことです。スタートでは1回、カットではカチカチと2回鳴らすそうで、タイミングを計らねばNGです。助監督の中でも古株の方が担当するようです。
パラレルワールドなので、元の世界での友人がヨニを知らず、元に戻ると異世界で会った人が微妙に違う役割で動いています。では、異世界には違うヨニがどこかにいるっていうことですよね。ダブルとややこしいので、出てきません。
さて、元の世界で発揮できなかったヨニの剣術の腕が異世界ではおおいに役立ちます。ニセの刀でなく真剣なので、斬られたら血が出るし悪くしたら死んでしまいます。そんな危険な世界で、ヨニは村人の期待に応え、強敵と闘わなければなりません。頑ななところのあったヨニが異世界で成長していく様、水を得た魚のようなヨニの動きもカッコいいですよ。アン・ジヘさんは元々器械体操を10年続けていたそうで、そのしなやかな動きと、決めポーズの美しさに注目してください。(白)


2020年/韓国/カラー/シネスコ/100分
配給:ライツキューブ
(C)2020 CONTENTS VILLAGE and MCMC
https://slate-movie.com/
★2021年6月25日(金)シネマート新宿ほか全国ロードショー

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2021年06月20日

いとみち

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監督・脚本:横浜聡子
原作:越川オサム「いとみち」新潮文庫
音楽:渡邊琢磨
出演:駒井蓮(相馬いと)、豊川悦司(相馬耕一)、黒川芽以(葛西幸子)、横田真悠(福士智美)、中島歩(工藤店長)、古坂大魔王(成田オーナー)、宇野祥平(青木)、ジョナゴールド【リンゴ娘】(伊丸岡早苗)、西川洋子(相馬ハツエ)

弘前市の女子高生・相馬いとの津軽弁はクラスの中でも訛りが激しい。本を読めば爆笑を引き起こす。いとは気後れして話せず、友達もいない。祖母に仕込まれた三味線にも気が乗らずしまい込んでいたら、皮が破れてしまった。修理代を捻出したいと一念発起して、学校や家から離れた”都会”青森市でのアルバイトに応募した。引っ込み思案の自分を変えたくて選んだのはなんとメイドカフェ「津軽メイド珈琲店」!不安いっぱいだったがなんとか採用される。さっそく先輩メイドの幸子や智美に接客の特訓を受けるが「お帰りなさいませ、ご主人様」がスラスラと言えない。

原作の「いとみち」は3巻まで発行されています。もともと津軽三味線が好きで手に取ったのですが、なんとも可愛いいとちゃん、周りの人たちのキャラが良くてすぐに全部読んでしまいました。映画化を楽しみにしていましたら、ヒロインは青森出身の駒井蓮さん。津田寛治さんと共演の『名前』(2018)の女子高生役をよく覚えていますが、今は慶応大生。豊川悦司さんが民俗学者で大学教授の父。東京出身で津軽弁ネイティブの義母の言葉がときどき聞き取れません。年頃の娘との付き合いに戸惑う様が新鮮です。
全て青森でロケしたこの映画、一足早く18日から青森で公開しています。日本の南にお住まいの方には津軽弁は難しいかもしれません。単語が聞き取れれば、後は俳優さんの演技でなんとか通じるはず。日本語なんですから。映画は舞台になった地元の言葉がいいなぁとつくづく思います。
劇中で披露する津軽三味線は蓮さんの特訓の成果です。おばあちゃん役の西川洋子さんは高橋竹山氏のお弟子さん、『津軽のカマリ』(2018)にも出演されていました。高くて綺麗なお声です。お二人の合奏シーンも必見。原作後半にはいとの恋愛や同僚たちの詳細なエピソードも描かれていますので、その後が気になる方はぜひ。(白)


★第16回大阪アジアン映画祭にてグランプリ&観客賞をダブル受賞

2021年/日本/カラー/シネスコ/116分
配給:アークエンタテインメント
(C)2021「いとみち」製作委員会
http://www.itomichi.com/
★2021年6月25日(金)ロードショー

posted by shiraishi at 19:53| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

1秒先の彼女(原題:消失的情人節 My Missing Valentine)

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監督・脚本:チェン・ユーシュン『熱帯魚』『ラブ・ゴーゴー』
エグゼクティブ・プロデューサー:イエ・ルーフェン、リー・リエ
出演:リー・ペイユー(ヤン・シャオチー)、リウ・グァンティン(ウー・グアタイ)、ヘイ・ジャアジャア(ペイ・ウェン)、ダンカン・チョウ(リウ・ウェンセン)

郵便局で働くシャオチーは、仕事も恋も冴えない日々を送っていた。子どものころから何をするのにも人よりワンテンポ早い。写真撮影では必ず目をつむっているし、映画では人より早く笑ってしまい、冷たい視線をあびている。彼女は街で出会ったハンサムなダンス講師ウェンセンと、恋が成就するかもしれない“七夕バレンタイン”にデートの約束をした。準備万端整えて眠りについたシャオチー、しかし目を覚ますと、既にバレンタインの翌日になっていた。大切な一日はどこへ消えてしまったの?

楽しみにしていたデートの日(の記憶)がまるまる消えてしまったシャオチー、それなのに日焼けをしているってどういうこと? カメラに残っていた画像から、出かけた場所を探し出します。記憶に全くないんだけれど、そこに写っているのはまぎれもなく自分なんだもの!! 
「!」と「?」がいっぱいのこのストーリー、シャオチーと原因を作った「彼」グアタイ、それぞれの視線で同じ時を観られるので「こんなところに伏線が!」と気づきがあって面白さ倍増です。初めからもう一度観たくなってしまうラブストーリーでした。二人のキャラがよく描けていて、一歩間違えば「イタイ」人になってしまうところを、可愛さを感じられるところで止めています。
自分を振り返ればせっかちなくせに(いや、だから)抜けていて、やっぱり目をつぶった写真が何枚もありました。今やカメラの性能がよくなってシャッター速度も自在なので、失敗は少ないはず。(白)


少女の頃から、何をしても皆より1秒早かったシャオチー。同級生だったグアタイは、逆にトロい少年でした。大人になっても、グアタイは女性に対しても奥手。ダンス講師ウェンセンがぐいぐいシャオチーにアプローチしているのを後ろで黙ってみている姿を、映画を観ているこちらはいらつきながらも、うぶで可愛いな~と思ってしまいます。
『熱帯魚』(95)『ラブ ゴーゴー』(97)と、初期作品から奇想天外な作風で楽しませてくれたチェン・ユーシュン監督には、『祝宴!シェフ』公開の折にインタビューの機会をいただきました。
http://www.cinemajournal.net/special/2014/shukuen/index.html
その時の記事の最後に「トニー・ヤンとキミ・シアさんという美男美女を起用されましたが、二人共、2枚目半のキャラクターにされたところに、監督らしさを感じました」と書いていました。まさに、今回も同じ! 
郵便局でシャオチーの隣に座っている超モテの可愛い女子を演じているヘイ・ジャアジャアは“美しすぎる囲碁棋士”として有名だそうで、リー・ペイユー演じるシャオチーは、男に縁のなさそうなブスにさえ見えてしまいます。グアタイに海に連れていかれた時のシャオチーの笑顔のなんと素敵なこと! グアタイを演じたリウ・グァンティンも、ほんとはイケメンなのに、のろくてヘタレな青年に見えます。チェン・ユーシュン監督のマジックですね。(咲)

陳玉勲(チェン・ユィシュン)監督が映画界に帰ってきた!
『熱帯魚』(95)、『ラブ ゴーゴー』(97)のあと映画の世界を離れ、以来16年ぶりに撮ったのが『祝宴!シェフ』(13)。その間、CMやミュージックビデオの世界で活動していたらしい。長編映画復帰3作目が、この『1秒先の彼女』。陳玉勲監督の作品が大好きだった私は、映画の世界にいつ戻ってくるのだろう。日本公開されるのだろうと心待ちにしていた。そして、この『1秒先の彼女』が公開される。
以前の作品にもあったユーモア感、ポップなのにノスタルジー感のある不思議な世界。不器用に生きている人にやさしくて観終わった後に心をほんわかさせる映画スタイルは健在だった。思いもよらない展開や、クスッと笑えるシーンの数々。世の中のペースに合わずに生きる人への温かいまなざし。ちょっとずれて生きている人へのエールが嬉しい。
シャオチーが消えた「1日」を探し、訪れたのは美しい海辺の町。見覚えあるような海岸線。公式HPによると『熱帯魚』(95)の舞台になった嘉義県・東石村とのことだけど、『熱帯魚』の撮影が行われたのは、近隣の台南市・大甲というところらしい。今年1月に日本公開された『越年 Lovers』(郭珍弟/グオ・チェンディ監督)の3話目に出てきた彰化という場所もこんな景色だった。地図で調べたら「東石村」「大甲」「彰化」は台中の南部にある場所だった。きっと同じような海岸線の景色が見えるような場所なのでしょう。
下調べをしないまま観たけど、観終わった後、友人から「周群達(ダンカン・チョウ)が出ていたね。久しぶりに観た」と言われ、「え!、どこに?」と思ったら、あのキザなダンス教師役だった。『僕の恋、彼の秘密』(04)、『靴に恋する人魚』(05)では可愛い青年という感じだったのに、ずいぶんと変わってしまっていてわからなかった。李霈瑜(リー・ペイユー)も劉冠廷(リウ・グァンティン)も、他の作品で観た記憶はあるのだけど、どの作品だったのかわからない。出演作をみてみたけど観たことない作品ばかり。劉冠廷に関してはフィルメックスで観た『無聲(むせい)』(20)だったのかも。
陳玉勲監督には、『熱帯魚』、『ラブ ゴーゴー』でインタビューしています。
興味ある方はアクセスしてみてください(暁)。
『熱帯魚』http://cineja-film-report.seesaa.net/article/468743078.html
『ラブ ゴーゴー』http://cineja-film-report.seesaa.net/article/468765261.html

第 57 回台湾アカデミー賞(金馬奨)最多 5 部門受賞
(作品賞、監督賞、脚本賞、編集賞、視覚効果賞)
第 25 回釜山国際映画祭 オープンシネマ部門 正式出品

2020年/台湾/カラー/シネスコ/119分/中国語
配給:ビターズ・エンド
(C)MandarinVision Co, Ltd
https://bitters.co.jp/ichi-kano/
★2021年6月25日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 19:44| Comment(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

夏への扉 キミのいる未来へ

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監督:三木孝浩『フォルトゥナの瞳』『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』
原作:ロバート・A・ハインライン
脚本:菅野友恵
撮影:小宮山 充
音楽:林ゆうき
主題歌:LiSA「サプライズ」(SACRA MUSIC)
出演:山﨑賢人、清原果耶、藤木直人、夏菜、眞島秀和、浜野謙太、田口トモロヲ、高梨 臨、原田泰造

若き科学者の高倉宗一郎は、亡き養父の松下の会社でロボット研究に没頭していた。 早くに両親をなくした宗一郎は松下の養子となり、松下の娘・璃子と愛猫ピートを、家族のように大切に思ってきた。研究の完成を目前に控えたとき、宗一郎は信じていた仲間の罠にはめられ、冷凍睡眠させられてしまった。目がさめるとそこは30年後の東京。研究も財産もピートも失い、璃子は謎の死を遂げていたのを知る。愕然とする宗一郎だったが、人間そっくりなロボットの力を借り、自分が眠らされていた30年の間に何があったのかを調べ始める。

原作はロバート・A・ハインライン著の1956年に発表されたSF小説「夏への扉」。タイムトラベル小説の名作としてこれまで多くのハリウッド映画に影響を与え、今も全世界で愛されています。タイトルは、主人公の愛猫のピートが寒くなると「夏へ続くドアを探す」ことから。猫は寒がりですからね。どこかの扉を開けたら外は夏に違いない、と全部の扉を確かめるんです。
日本が舞台のドラマに翻案、実写版になりましたが、原作と同じくピートは大切な相棒です。宗一郎が璃子の手掛かりを求めて丹念に探究していくところは、どこかにいることを信じてドアを開け続けるようなもの。
高校生役の印象の強かった山﨑賢人さんが『キングダム』で激しいアクション、『劇場』ではこれまでの印象を覆すグダグダ男、おお!大人になったんだなぁと思いました。今作では逆境にめげない科学者役。これまた違う面を見せてくれます。璃子役は連続テレビ小説「おかえりモネ」のヒロインでもあり、出演作の続く清原果耶さん。クールな藤木直人さんとピートの名演技もお見逃しなく。(白)


2021年/日本/カラー/シネスコ/118分
配給:東宝、アニプレックス
(C)2021「夏への扉」製作委員会
https://natsu-eno-tobira.com/
★2021年6月25日(金)ロードショー
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Arc アーク

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監督・編集:石川慶
脚本:石川慶、澤井香織
原作:ケン・リュウ『円弧(アーク)』(ハヤカワ文庫刊 「もののあはれ ケン・リュウ短篇傑作集2」)
音楽:世武裕子
出演:芳根京子(リナ)、寺島しのぶ(エマ)、岡田将生(天音)、清水くるみ、井之脇海、中川翼、中村ゆり、倍賞千恵子、風吹ジュン、小林薫

そう遠くない未来。17歳のリナは人生に自由を求め、生まれたばかりの息子と別れて放浪生活を送ってきた。19歳になったリナは、エマと出会い、彼女の指導のもと<ボディワークス>を作る仕事に就く。それは最愛の存在を亡くした人々のために、遺体を生きていた姿のまま保存できるように施術(プラスティネーション)する仕事であった。リナのセンスを認めたエマは技術をあますことなく伝えていく。
エマの弟・天音はこの技術を発展させ、遂に「不老不死」を完成させる。リナはその施術を受けた世界初の女性となり、30歳の身体のまま永遠の人生を生きていくことになるが・・・。

原作は短編なので、あっさり読んでしまいましたが、そこで繰り広げられる施術もまったく映像を想像できませんでした。これを脚色して2時間余りの映像にまとめた脚本と監督はすごい!すごいというなら、あの舞のようなプラスティネーションもすごい。よく糸が絡まらないなと見入りました。振付の方がいたようです。
何より19歳から132歳のリナを演じた芳根京子さんがすごい!見た目は30歳のまま変化しませんが、子どもを産み育て、事業を継続し、多くの人々と出会いと別れを繰り返した歴史が内面に積み重なっているわけです。ある時期から年をとらないことを選ぶ人もいれば、自然のまま生き、死んでいくことを選ぶ人がいます。後半モノクロ画面に登場する老夫婦のしみじみとした場面が心に残ります。不老不死が本当に幸せなんだろうか、と考えてしまいます。
<ボディワークス>の依頼主が何人か登場しますが、これは自分では絶対にしません~。いくら大切な人でも魂がなくなった入れものの身体は灰になるか、自然に還るのがいいです。<ボディワークス>と<ストップエイジング>あなたはいかがですか?
(白)



2021年/日本/カラー、モノクロ/スコープサイズ/127分/5.1ch
c2021映画『Arc』製作委員会
配給:ワーナー・ブラザース映画
https://wwws.warnerbros.co.jp/arc-movie/
2021年6月25日(金) より全国ロードショー
posted by shiraishi at 17:17| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語   原題:The Journey

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監督:静野孔文 
脚本:冨岡淳広 
音楽:和田 薫 
キャラクター原案:岩元辰郎
エグゼクティブプロデューサー:イサム・ブカーリ 清水慎治 
プロダクションスーパーバイザー:サラ・モハンマド 
声の出演:古谷 徹 神谷浩史 中村悠一 中井和哉 三石琴乃 黒田崇矢

6世紀のアラビア半島。
商業で栄えるメッカの町を攻略しようと、エチオピア出身のアブラハが象の軍団を先頭に進軍してきた。メッカを治める長老ムッタリブは平和裏に解決しようと望むが、アブラハは「カアバの神殿と聖なる石の破壊」「信仰を捨てること」「奴隷になること」を要求。メッカの民は怒りに震え、戦うことを決意する。防衛隊に志願した青年アウスは、幼い頃、盗賊に両親を殺され自らは盗賊の手先となった過去があった。陶工ジュバイルに救われ養子となり、今はジュバイルの娘ヒンドと結婚し、息子ワハブにも恵まれている。この幸せを守ろうと剣を取る決意をしたのだ。小隊長ニザールのもとで、アウスはかつて同じ盗賊団にいたズララと再会する。メッカの軍隊のリーダー、ムサブは先手を打つため、アブラハの軍隊に代表戦を申し込む。アウスたちはメッカの町を守ることが出来るのか・・・


東映アニメーションの全面サポートで作られたサウジアラビア初のアニメーション映画。

本作の始まりは、2011年。東映アニメーションの清水慎治氏が、サウジアラビアに招かれ、ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子(当時は皇子)と謁見した際、日本のゲームやアニメが好きな皇子より、いつかアニメを作ってほしいとの話が出たとのこと。
皇太子となった2017年、サウジアラビアに「マンガプロダクションズ」を設立し、東映アニメ―ションと共同制作協定を締結。本格的にプロジェクトが始動しました。
なお、サルマーン皇太子は、経済・ 社会改革の一環で、女性の自動車運転を認めるなど画期的な政策を打ち出していますが、35年ぶりに映画館も解禁しています。

サウジ側から日本側に寄せられたラフな脚本は3部作にするほどの壮大なもの。監督はアイディアをすべて入れ込みたいと、アブラハの進軍に対峙する中で、アウスたちが説話を思い出して勇気を奮い立たせるという形を取っています。
本筋のアブラハ軍との戦いは、いわゆる日本のアニメのスタイル。挿入される3つの説話は、絵のトーンを変え、音楽もアラブの伝統楽器を使うという工夫がされています。
本作を形成している4つの話について簡単に記しておきたいと思います。

アブラハと象の軍隊
「象章」と呼ばれるクルアーン105章に、「6世紀半ば、当時アラビア半島南部を支配していたキリスト教を奉ずるアビシニアの総督アブラハがカアバ神殿を破壊するために巨象を含む軍勢で来襲した」とあります。

ヌーフ(ノア)の方舟
有名な「ノアの方舟」は旧約聖書の創世記に登場する物語。アラビア語でノアはヌーフ。

ムーサ(モーゼ)の出エジプト記
こちらも有名な海が割れるモーゼの奇跡。
エジプトの王ファラオの弾圧からユダヤの民を救ったモーゼは、アラビア語でムーサ。

円柱のイラム
アラビア半島南部にあった伝説の都市イラム。巨人のアード族の王により建設された金銀宝石で飾りたてた天に伸びる宮殿があったとされます。強い権力・繁栄と共に堕落・傲慢さが表れ、神(アッラー)は預言者フードを遣わせ、信仰の大切さを説きますが、聞き入れなかった為、神により都市イラムは破壊されたと伝えられています。

本作はイスラーム創設前が舞台ですが、旧約聖書は、啓典の民(ユダヤ、キリスト教、イスラーム)にとって共通のもの。当時のアラビア半島で、ノアの方舟もモーゼの奇跡も、流布していたと思われます。イスラームができる前のメッカでは多神教を信じる者が多かったと聞きます。アウスやほかのメッカの人たちの信仰について言及されていませんが、彼らの神様は? 
なお、アラビア語で神はアッラー。キリスト教徒でアラビア語が話者の者にとっても、神はアッラーです。
本作は、「勇気を持ち闘い続けた者たちに新しい時代はすぐそこに」と結ばれます。預言者ムハンマドがイスラームを興すことを暗示していて、サルマーン皇太子が本作を教育用に作った思いを感じました。
共同製作により、サウジアラビアの人たちが観て、違和感を覚えないよう、アラブ人らしいしぐさで描くことにも注意を払ったそうです。サウジアラビアの子どもたちは、この映画をどんな風に受けとめたのでしょうか? 願わくば、アラビア語音声、日本語字幕で本作を観てみたいです。(咲)


サウジアラビア初のアニメーション映画とのこと。サウジアラビアの成り立ちや歴史を知らない日本の人たちにも、それが伝わる物語だったと思います。思い起こせば、私が聖書物語や旧約聖書を読んだのは50年以上前の小学生高学年の頃。宗教というのも良く知らない時に読んだので、この中に記された「モーゼの出エジプト記」にしても「ノアの方舟」にしてもキリスト教の中のことだと思っていたのだけど、この映画でキリスト教、イスラーム教、ユダヤ教にとって共通のものだったということを知った。今、旧約聖書を読んだら、きっと違う解釈ができるのかもしれない。
それにしてもアニメという形で、サウジアラビアの壮大な歴史を描くということを日本のアニメが担うという形を選んだというのがすごい。将来的には自国でそういう技術や知識を担う人材を育てたいという思いがあるのでしょう。濃い茶色を基本にした鮮やかな色の数々。その中でも赤茶色、アラブブルーとも言えそうな緑色と水色、灰色を混ぜたような、アラブらしい色使いが印象的でした(暁)。


2021年/サウジアラビア・日本/110分/5.1ch/ビスタサイズ/日本語吹き替え・英語字幕
製作:マンガプロダクションズ 東映アニメーション 
制作:マンガプロダクションズ 東映アニメーション 横浜アニメーションラボ アーチ  配給:東映アニメーション 配給協力:東映 宣伝:東映エージエンシー ©2021 マンガプロダクションズ
公式サイト:http://www.journey.toeiad.co.jp/
★2021年6月25日(金)より、東京・新宿バルト9、大阪・梅田ブルク7にて限定ロードショー
posted by sakiko at 02:02| Comment(0) | サウジアラビア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年06月18日

息子のままで、女子になる 英題:You decide.

2021年6月19日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開
劇場情報

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©2021「息子のままで、女子になる」


制作・監督・撮影・編集:杉岡太樹
エグゼクティブプロデューサー:スティーブン・ヘインズ(Steven Haynes)
撮影:新行内大輝 小禄慎一郎
音楽:tickles、yutaka hirasaka、Lil'Yukichi、Takahiro Kozuka、Ally Mobbs、ruka ohta
出演
サリー楓、スティーブン・ヘインズ、西村宏堂、JobRainbow、小林博人、西原さつき、はるな愛

新世代のトランスジェンダーアイコン
“サリー楓”を捉えた現在進行形のドキュメンタリー


多くのメディアへ出演しトランスジェンダーの新しいアイコンとして注目されるサリー楓。子供の頃からの夢だった建築家を目指して就職したところ。自分の人生のあり方を模索する「新しい女性」の誕生ストーリー。

大学に男子として入学し、建築を学び、女子として卒業。大手建設会社に内定。8歳からの夢だった建築家としての夢を歩み始めた楓。男であることにずっと違和感を持ち続けてきた楓は就職を機に、これから始まる長い社会人としての生活を女性としてやっていこうと決断した。幼い頃から夢見ていた建築業界への就職も決まり、卒業までに残された数か月のモラトリアム期間に、楓は女性としての実力を試そうとするかのように動き始めた。
​ビューティーコンテストへの出場や、LGBT就職支援活動、講演活動などを通して、楓は少しづつ注目を集めるようになった。それらの活動を通して世間のトランスジェンダーに対するステレオタイプや既成概念を打ち砕き、新しいトランスジェンダー女性像を打ち出そうとする。自身が活躍することでセクシャルマイノリティの可能性を広げたいと語る楓だが、胸中には「父親の期待を受け止めきれなかった息子」という思いが根強く残っていた。母親はある程度理解してくれたけど、父親の息子への期待には応えられなかった葛藤。自分らしく生きたいという思いと家族の関係の中で心にしこりは残る。
二つの間を揺れながら、楓はどんな未来をつくり上げていくだろうか。
これは社会の常識という壁に挑みながら、自分の人生のあり方を模索する「新しい女性誕生」ストーリーである。

「男から女へ」なりたい気持ちはわかる。私は女だけど、子供の頃から「男に生まれればよかった」とずっと思って生きてきたから。しかし、それは「男性になりたい」という気持ちではなく、自分がやりたいことをやろうと思うと、「女のくせに」とか「女は女らしく」と言われて制限されて生きてきたから。「男だったらもっと自分のやりたいことをやれていたのに」と思って生きてきた。そういう思いで約70年生きてきたものからすれば、「女のほうが制限が多いよ。男のままのほうが生きやすいと思うよ」としか言いようがない。
だいたい、化粧をしたり、スカートをはいたり、ハイヒールを履きたいと思ったことがないし、そういうのを強制されるのが嫌だった。それを拒否し、そういうのをしなくていい世界を選んで生きてきた。なので、それをしたいという思いが私にはわからない。それは、そうしたい人を差別する気持ちとは違う。化粧したい人はすればいいし、スカートをはきたい人はつければいい、ハイヒールを履きたいのならはけばいい。「なりたい自分を制限する」ことには断固反対していきたいと思う。そういう意味で、この楓さんの「なりたい自分」に向かっていく生き方は応援したい。(暁)。


『息子のままで、女子になる』公式HP 
【配給】mirrorball works 
【宣伝】大福、大西夏奈子
posted by akemi at 18:36| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年06月13日

グリード ファストファッション帝国の真実   原題:Greed

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監督・脚本:マイケル・ウィンターボトム
製作:ダミアン・ジョーンズ
出演:スティーヴ・クーガン、アイラ・フィッシャー、シャーリー・ヘンダーソン、エイサ・バターフィールド

ギリシャ、ミコノス島。ファストファッションブランドの経営で財を成したリチャード・マクリディ卿(スティーヴ・クーガン)は、この陽光眩しい島で、自身の60歳の誕生日を盛大に祝おうと準備を進めている。イギリス当局から脱税や縫製工場の労働問題を追及されており、このパーティでかつての栄光を取り戻そうと目論んでいるのだ。紺碧の海を見晴らす丘に古代ローマの闘技場を模したセットを作らせ、檻にはライオンも待機させている。誕生日が近づき、元妻のサマンサ(アイラ・フィッシャー)が、思春期の息子フィン(エイサ・バターフィールド)とリアリティショーに出演中の娘リリー(ソフィ・クックソン)を連れてミコノス島にやってくる。リチャードの母親マーガレット(シャ―リー・ヘンダーソン)は、リチャードの自伝執筆のために雇われた作家ニック(デヴィッド・ミッチェル)に良い伝記を書くよう圧力を掛けている。だが、ニックは取材する中で、彼の商品が作られているスリランカの縫製工場の劣悪な労働環境と低賃金を知る。さらにパーティスタッフであるスリランカ出身のアマンダ(ディニタ・ゴーヒル)から、彼女の母親も搾取されたあげく非業の死を遂げたと聞き、ニックは憤りを覚える。
誕生日当日、船で次々にセレブな招待客がやってくる。中には、セレブのそっくりさんもいる・・・

浜辺でテントを張って暮らすシリア難民たちを、目障りだからと排除しようとしたり、円形闘技場の建設が進まないので、低賃金のブルガリア人でなく、倍出してもいいから優秀な人材を雇えなど、我儘放題のリチャード。
強欲に(greed)経費を抑えて富を築いた者と、搾取される者、虐げられた者の対比が強烈に描かれていて、最後には、実際のスリランカやミャンマーの縫製工場の様子が映し出されます。日本の某ファストファッション会社も、中国より安い賃金のバングラデシュに縫製工場を移したことを思い出しました。
弱者への眼差しは、さすが、『イン・ディス・ワールド』を作ったマイケル・ウィンターボトム監督ならではと思いました。
一方、炸裂するブラックユーモア。マクリディ卿を演じたスティーヴ・クーガン主演のグルメ取材シリーズ、『スティーヴとロブのグルメトリップ』(10)、『イタリアは呼んでいる』(14)、『スペインは呼んでいる』(17)も、マイケル・ウィンターボトム監督作品だったのですね。納得!
本作、おふざけが過ぎる感もあるのですが、最初と最後に掲げられる「融和あるのみ」という言葉に、監督の思いが集約されていると感じました。(咲)


2019年/イギリス/英語/カラー/シネスコ/5.1ch/104分
配給:ツイン
©2019 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION
公式サイト:http://greed-japan.com/
★2021年6月18日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他にて全国公開
posted by sakiko at 18:34| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

へんしんっ!

6月19日(土)より、ポレポレ東中野、シネマ・チュプキ・タバタにて公開、他全国順次
劇場情報
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(C)2020 Tomoya Ishida


監督・企画・編集:石田智哉
プロデューサー・録音:藤原里歩 
撮影:本田恵、壷井濯、柗下仁美 
整音:橋本昌幸
字幕監修:北川光子、木山直子、佐沢(野﨑)静枝
音声ガイド制作:鈴木橙輔(大輔)、美月めぐみ、平塚千穂子 
ナレーション:ぺんぺん
指導教授:篠崎誠 
キャスト:石田智哉、砂連尾理、佐沢(野﨑)静枝、美月めぐみ、鈴木橙輔(大輔)、古賀みき
協力:バリアフリー演劇結社ばっかりばっかり、立教大学しょうがい学生支援室、立教大学ボランティアセンター、バリアフリー映画上映会実行委員会 ほか 
第2回 立教大学 映像身体学科学生研究会 スカラシップ助成作品

さまざまな「ちがい」を架橋するひとたち

電動車椅子で生活する石田智哉監督は、「しょうがい者の表現活動の可能性」について探ろうと、演劇や朗読で活躍する全盲の俳優・美月めぐみさんや、ろうの手話表現者の育成にも力を入れているパフォーマーの佐沢静枝さんなど、多様な「ちがい」を橋渡しをする人々を取材し記録した。
石田監督、撮影、録音スタッフの3人で始まった映画制作。ある時、石田監督は、「一方的に指示する暴君にはなりたくないと思っている」とスタッフに打ち明け、対話を重ねながら、映画の作り方も変化していく。
「しょうがい」を「コンテクストが違う身体」という言葉で表現する振付家でダンサーの砂連尾理さんに、「車椅子を降りた石田くんがどんなふうに動くのかを見てみたい」と誘われて、石田監督もパフォーマーとして舞台に立つことに。多様な動きが交差するダンスという関係性の網の目にみずからをあずける体験。あらたな表現の可能性が拓かれていく。第42回ぴあフィルムフェスティバル「PFFアワード2020」グランプリに輝いたドキュメンタリー。

HPより
日本語字幕、音声ガイドありの「オープン上映」で劇場公開。
(本作劇場公開では、石田智哉監督が探究し掴んだものを表現するため、「日本語字幕」をスクリーンに投影し、映画本編の音に加え「音声ガイド」を劇場内のスピーカーから流します。このかたちを「オープン上映」と呼ぶことにしたそうです。はじめは驚きや戸惑いがあるかもしれませんが、最後までご覧になった一人ひとりが新しい感覚をひらき、面白さを感じてもらえたらとのこと)

石田智哉(いしだ・ともや)監督  HPより
1997年生まれ、東京都出身。立教大学現代心理学部映像身体学科卒業、同大学院修士課程在学中。中学生の頃、自分に合った学習方法としてiPadを紹介され、そこでの短編映像の制作をきっかけに映像制作に興味を持つ。大学では、哲学、写真、映画、身体論などを学びながら、3年次より映像制作系のゼミに所属する。また、ボランティアサークル「バリアフリー映画上映会」実行委員を務め、上映会の企画・運営を行う。現在、しょうがい者が創作をする過程で生まれる、身体観やしょうがい観の変化について研究している。本作が初監督作品。
石田智哉監督_プロフィール写真_R_R.jpg


立教大学大学院修士課程在学中の石田智哉さんが大学での授業の中で制作した作品という。車いすに乗った監督が、障害者の表現活動の可能性を探ったドキュメンタリー。映画製作を通じて様々な人と関わり合うなかで、多様な「違い」を発見できます(暁)。

劇場予告編
https://henshin-film.jp/index.php#intro

ラジオCM風 音声予告篇
https://henshin-film.jp/index.php#intro
「どのように届けるかにも想いが込められる」という石田監督の考えから、劇場公開にあたっては、日本語字幕、音声ガイドありの「オープン上映」という新たな上映方法に取り組みました。 さらに劇場予告篇に続き、石田監督自身がナレーションを手掛けた〈ラジオCM風の音声予告編〉(※音声のみ)という新しい予告篇づくりにもチャレンジしました! ぜひ想像しながら聞いてみてください。

『へんしんっ!』公式HP 
2020年製作/94分/G/日本
配給:東風
posted by akemi at 16:46| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

RUN/ラン(原題:RUN)

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監督・脚本:アニーシュ・チャガンティ
製作・脚本:セヴ・オハニアン
出演:サラ・ポールソン(ダイアン)、キーラ・アレン(クロエ)

ある郊外の一軒家で暮らすクロエは、生まれつき慢性の病気を患い、車椅子生活を余儀なくされている。しかし常に前向きで好奇心旺盛な彼女は、地元の大学への進学を望み、自立しようとしていた。そんなある日、クロエは自分の体調や食事を管理し、進学の夢も後押ししてくれている母親ダイアンに不信感をを抱き始める。ダイアンが新しい薬と称して差し出す緑色のカプセル。クロエの懸命な調査により、それは決して人間が服用してはならない薬だった。母はなぜ最愛の娘に嘘をつき、危険な薬を飲ませるのか……。

2018年に公開され、その斬新な手法が話題となった『search/サーチ』のアニーシュ・チャガンティ監督の新作です。前作は父が娘をネットを駆使して探し、今回は母が娘を家に囲い込みます。母の愛を疑わなかった娘が成長して、そのコントロールから全力で逃げ出すストーリー。
じわじわ怖くて、これが連続ドラマだったら先が気になって、毎回見ずにいられません。母役のサラ・ポールソンは映画やドラマでよく見かけましたが、娘役のキーラ・アレンはオーディションで抜擢され映画初出演。普段も車椅子で生活しているのだそうです。孤軍奮闘する姿に思わず応援したくなります。アニーシュ・チャガンティ監督の次作もまた意表をついたものになるのかしら?
教訓:なんだかわからない薬は身体に入れないに限る。え?(白)


2020年/アメリカ/カラー/スコープ/90分
配給:キノフィルムズ
© 2020 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:run-movie.jp
公式Twitter:@RUN_moviejp

★2021年6月18日(金)よりTOHOシネマズ 日本橋他全国ロードショー
posted by shiraishi at 15:47| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ビリー・アイリッシュ 世界は少しぼやけている (原題:Billie Eilish / THE WORLD’S A LITTLE BLURRY)

thumbnail_「ビリー・アイリッシュ世界は少しぼやけている」ポスター.jpg

監督:R・J・カトラー
出演:ビリー・アイリッシュ、フィニアス・オコネル、パトリック・オコネル、マギー・ベアード他

ビリー・アイリッシュは2001 年 12 月 18 日生まれの 19 歳、米国ロサンゼルス在住のシンガー・ソングライター。本作は初のドキュメンタリー。
幼少期の貴重な映像から、家族との団らん、兄フィニアスと自宅で曲作りをする様子、デビュー時のフォトセッション、爆発的な人気を得て急激に変わっていく彼女の世界。成功の軌跡とそれに伴う精神的・肉体的な疲労、それを支える家族の絆と乗り越えていく成長が楽曲と共に映し出される。
★デビューアルバム「WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?」で2020年のグラミー賞5 冠‼ 史上最年少で主要 4 部門独占!
★2021 年グラミー2 冠‼ 史上最年少で「年間最優秀レコード賞」を 2 年連続受賞
★SNS フォロワー計 1 億 3700 万人
★ストリーミング再生回数累計 550 億回突破
★大ヒット曲「bad guy」の MV 再生回数 10 億回突破。
★2021 年公開予定「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」主題歌担当

ビリー・アイリッシュの名前を知ったのは歌よりも、トランプ大統領についてのコメントでした。自分の意見をはっきりという芸能人が少なくないアメリカですが、こんなに若い人が!と驚き、胸のすく思いがしました。全米トップのシンガー・ソングライターであり、史上最年少でグラミー賞やビルボードに名前を残していると知ったのは後のことです。
このドキュメンタリーでは、家族とくつろぐ姿、MVの制作過程、パワフルなステージの裏などが見られます。一人の10代の女性としての悩みや痛みも吐露されていました。彼女の繊細なつぶやきのような歌詞は、同じ年頃の人たちの胸に刺さるのでしょう。ライブでは唱和しながら泣いている少女たちがたくさんいました。中でも印象的だったのが、子どものころからの憧れの歌手に会うシーン。ただの女の子に戻って照れているビリー・アイリッシュがと~っても可愛かった!(白)


2020年/アメリカ/カラー/140分
配給:シンカ
提供・宣伝:Eastworld Entertainment
©2021 Apple Original Films
https://www.universal-music.co.jp/billieeilish-theworldsalittleblurry/

★2021年6月25日(金)より新宿ピカデリー他、全国ロードショー!
IMAX®も限定公開!
IMAX®is a registered trademark of IMAX Corporation.
■ムビチケオンライン発売中:https://mvtk.jp/Film/073196



posted by shiraishi at 14:54| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング   原題:True History of the Kelly Gang

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監督・製作:ジャスティン・カーゼル(『アサシン クリード』)
原作:ピーター・ケアリー「ケリー・ギャングの真実の歴史」
出演:ジョージ・マッケイ(『1917 命をかけた伝令』)、ニコラス・ホルト(『マッドマックス 怒りのデスロード』)、ラッセル・クロウ(『グラディエーター』、チャーリー・ハナム(『パピヨン』)、エシー・デイヴィス(『真珠の耳飾りの少女』)、ショーン・キーナン(『ドリフト』)、アール・ケイヴ、トーマシン・マッケンジー(『ジョジョ・ラビット』)他

19世紀のオーストラリアで、反逆者集団“ケリー・ギャング”を率いた伝説の男ネッド・ケリー。「少年」「男」「モニター艦」という3つの章に分け、ネッド・ケリーの真実に迫る。

「少年」貧しいアイルランド移民の家庭に育ったネッド・ケリー。罪人の父の代わりに、幼い頃から、母と 6 人の姉弟妹を支えてきたが、父の死後、生活のため母はネッドを山賊のハリー・パワーに売りとばす。ネッドはハリーの共犯として 10 代にして逮捕・投獄されてしまう。
「男」出所したネッドは、娼館で暮らすメアリーと恋に落ち、家族の元に帰るが幸せは長くは続かない。横暴なオニール巡査部長、警官のフィッツパトリックらは、難癖をつけてはネッドや家族を投獄しようする。
「モニター艦」鉄のヘルメットをかぶって両手に銃を持つネッド・ケリー。自らの正義、家族と仲間への愛から、ネッドは弟らや仲間たちと共に“ケリー・ギャング”として立ち上がる・・・

本作を通じて感じたのが、アイルランド人であることの悲哀。「じいちゃんはイングランド人に虐げられて、オーストラリアにやってきた」とネッドは手記の冒頭に記します。けれども、オーストラリアに来てもなお、この時代、アイルランド人には犯罪や刑務所行きの運命が当然だったようです。
ラッセル・クロウ演じる山賊のハリー・パワーが、少年ネッドに「イギリス人はいつでも物語を奪って台無しにするから、常に自分自身の物語の作者であることを確認しろ」と教えています。
本作では、ネッドと共に、母親が強烈な印象を残します。夫を亡くし、生きるためになりふり構わず、身も売れば、子どもも売る強い母親。そんな母親を思うネッドにほろりとさせられました。(咲)


2019年/オーストラリア=イギリス=フランス/英語/125分
配給:アット エンタテインメント
後援:オーストラリア大使館
公式サイト:https://kellygangjp.com/
© PUNK SPIRIT HOLDINGS PTY LTD, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, ASIA FILM INVESTMENT GROUP LTD AND SCREEN AUSTRALIA 2019
★2021年6月18日(金)より渋谷ホワイトシネクイント、新宿シネマカリテほかにて全国順次公開




posted by sakiko at 02:43| Comment(0) | オーストラリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年06月11日

アフリカン・カンフー・ナチス(原題:African Kung-Fu Nazis)

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監督:セバスチャン・スタイン、ニンジャマン
脚本:セバスチャン・スタイン
製作:プロデューサーマン
出演:エリーシャ・オキエレ(アデー)、セバスチャン・スタイン(ヒトラー)、秋元義人(東条英機)、マルスエル・ホッペ(ゲーリング)、ンケチ・ヂネドゥ(エヴァ)、アンドリュース・メンサー(影蛇拳の師匠)、アマンダ・アチアー(ビッグ・ブラック・ガール)

第二次大戦後、ヒトラーと東條英機が実は生き延びていた。連合軍の手をかいくぐり逃げ延びた先のガーナで現地の人々を制圧、空手と魔術的パワーを持つ日独同盟旗「血染めの党旗」を用いながら現地の人々を新たな人種「ガーナアーリア人」として洗脳していた。世界を侵略するための拠点を築いていく。心優しき地元の青年アデーは、ヒトラー達に地元のカンフー道場を潰され、愛する恋人エヴァを奪われてしまう。復讐を誓うアデーは最強のカンフーを習得するため、過酷な修行に身を投じていくが.……。

この突拍子もないストーリーの本作が生み出されたのは、二年前。日本在住のドイツ人監督セバスチャン・スタインは、あふれる情熱とユニークな発想だけを胸に、アフリカへと飛びました。ガーナのジョージ・ルーカスとして知られる伝説的監督「ニンジャマン」とタッグを組んで、まさかの映画化を実現させてしまいました。
監督お二人のことも、ガーナでこんな作品が作られていたことも全く存じませんでした。そのぶっ飛んだ発想にびっくり。でもなんでガーナ?ですよね。
スタイン監督自らが演じるヒトラー、友人で便利屋さんの一般人秋元義人氏演じる東条英機は、あの特徴的なお髭や風体のお陰で、あの人ね、というくらいには似ています。ゆるいんだかキレているんだかよくわからないアクションですが、ガーナの男優さんの筋肉質の美しい身体、ボリュームがあって色っぽい女優さんに見とれます。おまけに日本語字幕は関西弁!ここまでやりたいことをやってくれると、いっそ清々しく(?)どんよりした日常を忘れて、ワハハハ笑わせてもらいました。プレス資料にあった映画ができるまでの監督のお話がとても面白かったので、パンフレットをぜひ手に入れて読んでみてください。(白)


2020年/ガーナ・ドイツ・日本合作/カラー/ビスタ/84分/英語、ドイツ語、日本語、トウィ語
配給:トランスフォーマー
(C)2020 BUSCH MEDIA GROUP. ALL RIGHTS RESERVED
https://transformer.co.jp/m/akfn/
★2021年6月12日(土)シアター・イメージファーラムほか全国順次公開

posted by shiraishi at 13:34| Comment(0) | アフリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

男の優しさは全部下心なんですって

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監督・脚本:のむらなお
撮影:早坂伸
音楽:DJ後藤まりこ
着ぐるみデザイン:なみちえ
出演:辻千恵、水石亜飛夢、森蔭晨之介、五味未知子、田中俊介、田中真琴、こだまたいち、安倍乙、木口健太、上田操、加藤才紀子/原田大二郎

宇田みこ(辻千恵)は、遊園地の跡地にできたショッピングモールので、唯一残されたメリーゴーランドの受付をしている。数時間に1回しか動かないので、受付時間外はゆるキャラくまの着ぐるみ姿で風船を配っている。これまで出逢った男たちを100%信じて愛してきたみこだったが、いつもなぜか2番手になってしまっている。そんな彼女についたあだ名は”恋愛体質純情セカンド”。みこはいつか誰かの”唯一”になれるのだろうか。

「MOOSIC LAB 2019」で大人気だった上映作を再編集して送り出す完全版。このタイトルに「うわ!」と図星で落ち着かない男子、「それ、私!」という女子は多いことでしょう。そういう性(さが)なんですもんね、というとセクハラになるんでしょうか。ヒロインのみことみこが出会う男子、いつしか本命になっている女子との出逢いと別れが、ポップな背景と音楽に彩られています。クールなのも物足りなく、尽くし尽くされすぎても重い、と悩ましい時期の「あるある」がいっぱいです。(白)

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6/12舞台挨拶 水石亜飛夢、辻千恵、のむらなお監督

 ご挨拶
のむらなお監督 男友達に恋愛の相談ををした時、「男の優しさは全部下心なんだから、騙されるな」と怒られたことが制作のきっかけ。「男の優しさは全部下心なんだそうなんだけど、みんなはどう思う?」と問い掛けたかった。
辻千恵 撮影中は後のことまであまり考えられなかったんですが、完成した作品を観て、最後まで諦めずに演じてよかったと思いました。いろいろな感謝が浮かぶ作品です。
水石亜飛夢 みんなの力で作りあげることができた作品。劇場で公開出来て感慨深いです。
 互いの印象について
水石亜飛夢 辻さんはクリアで透明な雰囲気。穏やかな空気が流れているような人。」と語る。
辻千恵 現場にいてくれるだけでとにかく安心感がすごい。撮影中悩んでいた時、アイス食べようと誘ってくれました。
 観客へのメッセージ
水石亜飛夢 恋愛という人生において大きなものがテーマな作品。主人公のみこや、その周りの男たちに自分を重ねて併せて繰り返してご覧いただけたら。
辻千恵 この映画で長い旅ができて幸せでした。(演じた)みこを通して、楽しいでも、嬉しいでも、日常とは違う気持ちになって頂ければ嬉しいです。
のむらなお監督 いろいろなことがあっても、それでも誰かと信じようとする主人公の姿を通して、恋は素晴らしいと思って頂ければ幸いです。

2021年/日本/カラー/ビスタ/72分
配給:絶好調ちっちゃいもの倶楽部
©️2021 Z.S.G.K
公式HP:otokonoyasashisa.com

★2021年6月11日(金)新宿シネマカリテほか全国順次公開
posted by shiraishi at 13:10| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

逃げた女(原題:도망친 여자 英題:THE WOMAN WHO RAN)

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監督・脚本・編集・音楽:ホン・サンス
出演:キム・ミニ、ソ・ヨンファ、ソン・ソンミ、キム・セビョク、イ・ユンミ、クォン・ヘヒョ、シン・ソクホ、ハ・ソングク

ガミ(キム・ミニ)は、5年間の結婚生活で一度も離れたことのなかった夫の出張中に、ソウル郊外の3人の女友だちを訪ねる。バツイチで面倒見のいい先輩ヨンスン(ソ・ヨンファ)、気楽な独身生活を謳歌する先輩スヨン(ソン・ソンミ)、そして偶然再会した旧友ウジン(キム・セビョク)。行く先々で、「愛する人とは何があっても一緒にいるべき」という夫の言葉を執拗に繰り返すガミ。穏やかで親密な会話の中に隠された女たちの本心と、それをかき乱す男たちの出現を通して、ガミの中で少しずつ何かが変わり始めていく。

5年間一度も夫から離れたことがなかったと語る主人公が3人の年上の友人の家を訪れる。よく食べ、よく語る。女子トークは盛り上がり、止まらない。しかし、みなどこまで本当のことを語っているのか。久しぶりの友人の手前カッコつけてはいないだろうか。その辺りのほんの少しの駆け引きが側から見ると興味深い。また自分のことをいかに語るかに気を取られ、他の人のことが見えなくなっている気もする。最初の訪問先の友人は野良猫にエサをあげないでほしいと遠慮がちに言ってきた隣人には、大切な猫だし、猫も生きていると言って取り合わないが、そんなに大切ならば家猫にすればいいではないかと思ってしまう。
ところでタイトルの逃げた女とはいったい誰のことなのか。見終わった今でもよくわからない。監督も恐らく答えを提示するつもりはなく、観る者の解釈に任せるつもりだろう。気になるとそこで考え込んでしまうことが多い私だが、本作は主人公の先行きが気になって、その場で考え込まずにすんだ。逃げた女は考えることから私なのかもしれない。(堀)


ホン・サンス作品では、いつもロケ地が楽しみだ。よく出てくるのが趣のある韓屋が並ぶ北村や西村。今回の舞台は、景福宮を見下ろす仁王山が間近に見える地区。西村(景福宮の西)より、さらに山に近いところらしく、韓屋も点在するが、畑地も残る合間にモダンなマンションやカフェがある、郊外だけど、ちょっとお洒落な地区のようだ。
これまでの作品と同様、似た会話の「繰り返し」で綴られる物語。
最初に訪ねた大学の先輩ヨンスンは、泥沼離婚の末、財産分与で郊外に家を買った女性。
翌日、会いに行った別の先輩スヨンは、母との暮らしから抜け出し一人住まい。歩いて15分程のところにある芸術関係の人がよく来る居酒屋で知り合ったハンサムな建築家(別居中の既婚者)が偶然同じマンションの上の階に住んでいて付き合っているという。勝手気ままな日々。
そして、偶然会った友人ウジン。かつて男絡みで何かあったらしいが「もう忘れた」と和解。ウジンの勤める映画館も兼ね備えたカフェを訪ねる。同じ建物の地下でウジンの夫チョン先生の「ブックコンサート」を開く準備中。最近人気のある夫のことを喜べないと、あまり夫と一緒にいたくなさそうだ。
こんな3人を相手に、ガミは「愛する人とは何があっても一緒にいるべき」と言うのだ。
一緒にいるべき?と自問し、相手の答えも求めているようにも思えるが、ホン・サンス監督が「キム・ミニは僕の愛する人」と2017年カンヌ国際映画祭の公式記者会見で公言したことを思うと、キム・ミニ自身、ホン・サンス監督と離れられないということかと!
さて、「逃げた女」は誰?という疑問。
ウジンの夫チョン先生とばったり出会ったガミ、「あなたに会いにきたワケじゃない」と言い放つ。付き合っていたチョン先生から逃げたのがガミ? チョン先生を演じてるのがクォン・ヘヒョで、逃げたくなるのもわかる・・・というのは失礼か?! (咲)


2020年/韓国/韓国語/77分/カラー/ビスタ/5.1CH
配給:ミモザフィルムズ
© 2019 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved
公式サイト:https://nigetaonna-movie.com/
★2021年6月11日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
posted by ほりきみき at 00:00| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年06月10日

47歳 人生のステータス(原題:BRADʼS STATUS)

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監督・脚本:マイク・ホワイト
出演:ベン・スティラー、オースティン・エイブラムス、ジェナ・フィッシャー、マイケル・シーン ほか

ブラッド(ベン・スティラー)は⾳楽の才能がある息⼦のトロイ(オースティン・エイブラムス)の大学受験準備のために息子と2人でボストンに行き、⼤学を巡ることに。妻のメラニー(ジェナ・フィッシャー)は仕事で行けなかったのだ。トロイを案内しながら、ブラッドの頭に浮かぶのは⼤学時代の4⼈の親友たちと⾃分の⼈⽣の⽐較ばかり。というのも、ニック(マイク・ホワイト)はハリウッドの⼤物、ジェイソン(ルーク・ウィルソン)はヘッジファンドの創設者、ビリー(ジェマイン・クレメント)はハイテク企業の起業家、そして、クレイグ(マイケル・シーン)は政界の情報通でベストセラー作家と華々しいキャリアを築いているからだった。 ブラッドは、彼らの裕福で魅⼒的な⽣活を想像し、居⼼地の良い中流家庭が⾃分の⾏き着く最⾼のものなのかと思いを巡らせる。しかし、旧友たちと再び連絡を取るようになり、次第にブラッドはある疑問を抱き始める。⾃分は本当に負け組なのか、それとも、友⼈たちの輝かしい姿の裏には本質的な⽋陥があるのか。
 

47歳といえば大学を卒業して25年。仕事の成果や評価が定まってくるころ。息子の大学見学に付き添い、母校のあるボストンを訪れた主人公は同級生たちの華やかな成功に負け感を覚える。プライベートジェットを所有する会社社長やテレビでもてはやされる政治評論家、会社を売り払って悠々自適の生活を送る者というセレブな友人を持つ人はそうそういないけれど、同級生と比べてしまうのは誰にでもあることなのでは。私たちレベルでは、もっと些細な違いが大きな違いに思えてしまう。
人は自分の幸せには鈍感になりがち。主人公には同級生たちにはない幸せを持っていた。それに気がつけるかどうかが人間の器の本当の大きさなのではないかと作品から伝わってくる。(堀)


夫婦仲良く、賢い自慢の息子がいて、何を贅沢なと思いつつ観ていました。親友と比べて遜色なかった自分なのに、こんなはずじゃなかった、と不満ばかり。あるものよりないものを数える人なんですね。それまで病気もせず、ひどい目にも遭うことなく生きてこられてラッキーと思え>ブラッドへ。まあ、この年頃が人生の中で一番不幸だと思う時期なんだそうですが。更年期と重なりますね。
最後まで観ていただければ、いいところへ着地しますので安心して。
この映画を観て思い出したのが、26歳で亡くなった石川啄木の短歌です。
「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ 花を買ひ来て 妻としたしむ」(最初の歌集「一握の砂」所収。3行に分かち書き)
早く結婚して両親と妻子を養い、汲々としていた中で詠まれたようです。47歳のブラッドの半分、23,4歳ごろに発表されています。人生が短かった時代の人は早熟ですねぇ。(白)


2017年/102分 / 5.1ch/カラー/2:1/アメリカ
配給:STAR CHANNEL MOVIES
© 2017 Amazon Content Services LLC and Kimmel Distribution LLC
公式サイト:https://www.star-ch.jp/starchannel-movies/detail_047.php
★2021年6月11日(金)AM0:00配信開始
posted by ほりきみき at 01:26| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年06月06日

ブルーヘブンを君に

ブルーヘブン.jpg

監督:原作:秦建日子 (ハタ タケヒコ)
脚本:秦建日子、小林昌
撮影:大内泰
出演:由紀さおり(鷺坂冬子)、小林豊(鷺坂蒼太)、柳ゆり菜(鈴木夏芽)、本田剛文(恩田正樹)、中田圭祐(鷹野)、大和田獏(川越恵一)、寺脇康文(鈴木一郎)

「不可能」と言われた青いバラ「ブルーヘブン」を世界で初めて生み育てた園芸科の鷺坂冬子63歳。今は家族に囲まれてバラ園を営みながら幸せに暮らしている。冬子には家族に内緒にしていることがあった。がんが再発してステージ4まで進み、余命は半年と主治医に言われたばかり。実は叶えたかった夢がある。冬子の青春時代の大切な思い出に繋がること、それはハングライダーで空を飛ぶことだった。

2019年に歌手デビュー50周年を迎えた由紀さおりさん初主演作。1986年から実姉の安田祥子さんと日本の歌を歌い継ぐ活動を続けている一方、映画『家族ゲーム』での演技が毎日映画コンクールで助演女優賞を受賞しています。美しい歌声が印象的だった「夜明けのスキャット」のほかに、昨年亡くなった志村けんさんとの「バカ殿と腰元」のコントが思い出されます。毎週楽しみでした。
本作では実在のバラ育種家をモデルに、いくつになっても夢を諦めない冬子を溌剌と演じています。孫役に「BOYS AND MEN」の小林豊と本田剛文、冬子の夢を応援する自動車修理工に柳ゆり菜。青春の思い出と交互に、冬子の奮闘ぶりが披露されます。ロケ地となった岐阜県の雄大な自然を眼下に、自分もハングライダーで空を飛ぶ気分を味わってください。(白)


「青いバラ」って、けっこうこれまで見たことあるような気がするし、青いバラが伏線になった映画やミステリーを見たことがある(TV「相棒」で、3回くらい再放映されていた記憶がある)。でも、そんなに珍しい品種で、この色を作りだすのに様々な苦労があったというのは知らなかった。この作品は、この「青いバラ」を作り出した人を主人公にした物語。心に秘めていた空を飛ぶ夢実現のため動き出します。その夢を持つようになったことがだんだんに明らかになり、最後に納得。それにしても空を飛ぶ夢。他の終活映画でも出てきましたが、やっぱりいいですよね。私もずいぶん前に飛んでみたいと思ったことがありました。でもかなり太ってしまったので諦めました。かつては登山をしたりスキーをしたり、かなり運動をしていたのですが、ここ20年くらいはすっかり運動をしなくなりました。スキーをしていた時に1級検定を受けようと思ったのですが、1級試験にはジャンプ項目があります。10mくらいなのですが、それに挑戦して失敗して以来、空中を飛ぶのはあきらめました(笑)。でも、冬子さんのように空を飛べたら気持ちいいだろうなと思いながら映画を観ました。由紀さおりさんの歌声大好きです(暁)。

余命宣告を受けた主人公が人生を振り返り、やり残したことにチャレンジする姿を描きます。
仕事が続かない、中途半端な孫がおばあちゃんのために一肌脱ごうとする。頼りないけれどその気持ちがうれしい。「BOYS AND MEN」の小林豊が好演しています。そんな孫が惚れた女性を演じるのが柳ゆり菜。過干渉な親(寺脇康文)とは距離を置き、自分の力で生きていこうと奮闘中。主人公の夢に一役買います。
女性ががんばる作品は見ていて気持ちがいいですね。そういう作品の男性はなぜかダメダメな人が多いけれど、愛嬌が許せてしまう。でも、きっとこれがダメにする原因なんでしょうね。(堀)


本作のモデルになったのは、作るのは不可能といわれていた青いバラを作ってしまった河本純子さん。日本一のバラ苗生産地、岐阜県揖斐郡大野町の河本バラ園で、40年以上にわたり、バラの新種を発表されている方です。女性バラ育種家は、世界でも数少ない存在なのだそうです。5月28日から公開されているフランス映画『ローズメイカー 奇跡のバラ』も、女性のバラ育種家が主人公。既存のバラを掛け合わせて、自分の思い描く新しいバラを作って、思いを込めた名前を付けるという、なんて素敵な人生でしょう!
さらに、本作では、人生の終焉を目の前にして、思い出を胸にハングライダーで空を飛ぶという夢を叶える女性育種家を、由紀さおりさんが楚々と演じていらして、私もやり残したことを実現したいなぁ~と思わせてくれました。(咲)


2020年/日本/カラー/シネスコ/93分
配給:ブロードメディア・スタジオ
(C)2020「ブルーヘブンを君に」製作委員会
https://blueheaven-movie.jp/
★2021年6月11日(金)より全国公開
posted by shiraishi at 15:38| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ブラックバード 家族が家族であるうちに(原題:BLACKBIRD)

blackbird.jpg

監督:ロジャー・ミッシェル
原作・脚本:クリスチャン・トープ
撮影:マイク・エリー
出演:スーザン・サランドン(リリー)、ケイト・ウィンスレット(ジェニファー)、ミア・ワシコウスカ(アナ)、リンゼイ・ダンカン(リズ)、サム・ニール(ポール)、レイン・ウィルソン(マイケル)、ベックス・テイラー=クラウス(クリス)、アンソン・ブーン(ジョナサン)

医師のポールと妻のリリーの家に娘たちがやってくる。長女のジェニファーは夫のマイケル、息子のジョナサンと、次女のアナはパートナーのクリスを連れて両親の住む海辺の家を訪ねる。リリーは難病と長く戦ってきたが、病状が進み安楽死をしたいと家族に告げたのだった。
ジェニファーは母の選択を尊重するつもりだったが、母に会うとまた心が揺れる。アナは母にはもっと生きていてほしい、と泣き出す。孫のジョナサンはここに来て初めて知ってショックを受けている。
家族だけで最後の日々を過ごすはずなのに、母リリーの親友リズもいる。彼女はいつも家族同様だったけれども、ジェニファーはなぜか受け入れられない。

「トーキョーノーザンライツフェスティバル2016」で上映されたデンマーク映画『サイレント・ハート』(2014)を、リメイクしたもの。そちらは残念ながら未見。脚本のクリスチャン・トープがこちらでも担当しました。
安楽死を決意したリリーは、自ら最後の晩餐を計画・早いクリスマスプレゼントを用意します。盛装して現れるリリーが輝いてとても綺麗です。しかし娘たちの心中は穏やかでなく、姉妹は一騒動あったばかり。
強くて美しい母・スーザン・サランドンとしっかり者でまじめな長女・ケイト・ウィンスレットは共にオスカーを受賞(親子ほどの年齢差)したベテラン女優、ごく普通の主婦を演じても貫禄がにじみ出ます。ミア・ワシコウスカ演じるアナの逡巡もまた身につまされます。
夫のポールがわりあい落ち着いているのは医師だからかと思っていたら、だんだん明らかになる真実。私はちょっと納得いかず「う~む」でした。孫のジョナサンが率直で可愛いです。彼がいてくれてなごみました。

安楽死については、自分や家族だったら、と考えると簡単に答えが出ません。上映中の日本映画『いのちの停車場』にも安楽死を望む老親が登場しました。治療法もなく、激しい痛みに苛まれている人を前にしたら、楽にしてやりたいと思ってしまうでしょう。
医師など他人による「積極的安楽死」が認められている国が7カ国(アメリカは州によっては認可されています)。中でもスイスが1942年から認可されているというのには驚きでした。スペインとニュージーランドが今年中に合法化されるようです。日本もいつかは合法化されるのでしょうか?「ブラックバード」とは カラスではなく、”クロウタドリ” という真っ黒な羽根のツグミ科の鳥。なぜこのタイトルなのかしら?(白)


尊厳死について扱った作品ですが、尊厳死を選ぶまでの葛藤ではなく、すでに決定事項とした上で、最後の3日間を家族で過ごしたいという主人公のために娘家族や親友が集まる話です。
医者の夫は主人公からきつい言葉を投げつけられても丸ごと受け止め、妻の生活を支えています。尊厳死についてもおそらくいろいろ話し合った上で妻の意思を尊重し受け入れたのであろうことが伝わってきます。
そこに集まる長女家族と次女カップル、親友。長女の一人息子は受け止めきれず戸惑い、次女は思いとどまらせようとする。それぞれの気持ちが丁寧に描かれているのでみなに共感してしまう。
命は誰のものなのか。いえ、命は誰かのものというものなのか。
後半にある事実が判明し、それまでは主人公の気持ちを受け入れていた長女が気持ちを翻す。「母はある人物の思惑で間違った判断をさせられたのではないか?」
クライマックスの修羅場はベテラン女優たちの熱演が光る。主人公は最終的に何を選び、家族はどう受け止めたのか。理解できる人とできない人がいるかもしれませんが、それも含めてさまざまな思いがあって正解はないことを改めて考えさせられます。(堀)


2019年/アメリカ・イギリス合作/カラー/シネスコ/110分
配給:プレシディオ、彩プロ
(C)2019 BLACK BIRD PRODUCTIONS, INC ALL RIGHTS RESERVED
https://blackbird.ayapro.ne.jp/
★2021年6月11日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 14:50| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

犬は歌わない 原題:Space Dogs

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監督・プロデューサー: エルザ・クレムザー&レヴィン・ペーター
ナレーション: アレクセイ・セレブリャコフ
撮影監督:ユヌス・ロイ・イメル
音楽:ピーター・サイモン&ジョナサン・ショア
編集:ヤン・ソルダット、ステファン・ベヒャンガー

世界で初めて宇宙に飛んだ犬のライカの魂は、今もモスクワの街を彷徨っている・・・

1950年代、東西冷戦の時代。ソビエト連邦は宇宙開発に向けて様々な実験を繰り返していた。その中の一つがスペース・ドッグ計画。世界初の“宇宙飛行犬”として飛び立ったライカは、かつてモスクワの街角を縄張りにする野良犬だった。宇宙開発に借り出された彼女は宇宙空間に出た初の生物であり、初の犠牲者となった。時は過ぎ、モスクワの犬たちは今日も苛酷な現実を生き抜いている。そして街にはこんな都市伝説が生まれていた"ライカは霊として地球に戻り、彼女の子孫たちと共に街角をさまよっている"
本作は宇宙開発、エゴ、理不尽な暴力、犬を取り巻くこの社会を宇宙開発計画のアーカイブと地上の犬目線で撮影された映像によって描き出す、モスクワの街角と宇宙が犬たちを通して交差する新感覚のドキュメンタリー映画。

初めて宇宙に飛んだのが、ワンちゃんだったと聞いたのは小学生の時のことでした。米ソが競って宇宙開発をしていた時代です。ソ連は犬を、アメリカはチンパンジーを最初の宇宙飛行の実験台に選びました。
本作で、選ばれた野良犬たちが、飛行前に様々な実験をされる光景を目にして、なんとまぁ気の毒なと胸が痛みました。
人間の宇宙飛行が可能かどうか検証するために、「スペース・ドッグ計画」として、宇宙に飛んだ犬はライカに続き数十匹。犬は飼い主に情を抱くもの。最初は野良犬でも、訓練しているうちに、訓練にあたっている人たちに親しみを感じていったに違いありません。引き離されて、狭い宇宙船に閉じ込められたワンちゃん。どれほど寂しくて不安な思いをしたことでしょう・・・ 犬権無視の宇宙開発があって、人類が宇宙に飛ぶことができたことを忘れてはならないと思いました。
一方で、現在のモスクワ。街をたむろする野良犬たち。ご先祖さまは、もしかしたら宇宙開発を支えたかもしれません。
5月28日から公開されている日露合作映画『ハチとパルマの物語』は、ソ連にもハチ公のような忠犬がいた実話をもとに描いた物語。先行公開されたロシアで大ヒット。犬がいかに人間に忠実なのかを再認識して野良犬にも接したいものですね。(咲)


人間より前に犬が宇宙に行っていたことを本作で初めて知りました。宇宙に行くとなると大変なんですね。4月に公開された『約束の宇宙』で宇宙飛行士の訓練の様子を見て、そのハード内容に驚きましたが、本作の犬たちはその比ではない気がします。肉体的にも傷つけられ、見ているのが辛い。
そんな過去の映像と並行して映し出されるのが、現在のモスクワの野良犬たち。本能で生きている彼らの姿に恐怖すら感じる。途中、野良犬が猫を襲う。しかし、食べるのではなく、弄ぶだけ。猫がかわいそうと思った瞬間、同じことを人間は野良犬にしてきたのではないかと気づいた。(堀)


初めて宇宙旅行をした犬、ライカのことを映画の中で描いたスウェーデン映画『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』が日本公開されたは1985年。この映画は衝撃的でした。今もあの地球軌道を周回している浮遊感と犬のシーンが目に浮かびます。実際の打ち上げは1957年のことです。すでに60年以上の時が経ちました。そして現代のモスクワ。今も野良犬は街を動きまわっている。
犬のドキュメンタリーなのに、物語がありライカの話とリンクしている不思議。まさにドキュドラマ的な作品だった。今も昔も、人間と犬の関係は変わらないということが描かれていた(暁)。


2019年/オーストリア・ドイツ/91分/カラー・モノクロ/DCP
配給:ムーリンプロダクション
公式サイト:https://moolin-production.co.jp/spacedogs/
★2021年6月12日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国劇場公開



posted by sakiko at 13:40| Comment(0) | オーストリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

湖底の空 英題:SORA

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監督・脚本:佐藤智也
出演:イ・テギョン、阿部カ、みょんふぁ、武田裕光、アグネス・チャン、ウム・ソヨン、ジョ・ハラ、周亜林、蔡仁堯、早川知子、王玫子、金暁明

空(そら)と海(かい)は、日本人の父・高志と韓国人の母・チスクの間に生まれた一卵性双生児の姉弟。大きな湖があり、民俗芸能が盛んな韓国・安東(アンドン)で生まれ育った。小さいときから二人は絵を描くのが好きだった。
28歳になった空は中国・上海で暮らしている。イラストレーターとして仕事を得ようとするが、作品の売り込みはなかなかうまくいかない。出版社に勤める日本人の男性、望月隼人が何かと空の絵を気にかけ、仕事を提供しようとする。異郷の地で暮らす二人は、似たような境遇から親密な関係を築きつつあった。
空のもとに双子の弟が訪ねてくる。性に関する問題を抱えていた海(かい)は性別適合手術を受けて女性となり、名前を海(うみ)と変えていた。
海(うみ)が空と望月を結び付けようとし、恋愛が実りそうになるが、なぜだか空は望月に対し、自分はジェンダーの問題を抱えた海(うみ)の方だと名乗ってしまう・・・

◆ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2020 グランプリ&シネガーアワードW受賞

2001年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭に佐藤智也監督が短編を出品した時から、韓国映画界との縁が出来、この日中韓合作映画に繋がりました。
キャストやスタッフは、韓国で活動する日本人、日本で活動する中国人、日本生まれの韓国人や中国人など様々。撮影には、韓国語、中国語の通訳がつき、3か国語が入り乱れる混沌とした現場だったそうです。
映画の最後、キャストとスタッフの名前が、縦書きで出てくるのですが、韓国語→日本語→中国語と一つ一つ次々に転換していく様がとても素敵です。

撮影地は、韓国・安東市、中国・上海市、日本・東京。
中でも、安東は儒教発祥の地で今も伝統的な町並みの残る風情あるところ。仮面劇が印象的に出てきます。大きな湖は、実はダム湖。当初から湖のあるところで撮影しようと韓国の湖を探し回ったそうですが、日本のような火山国ではない韓国では湖が少なく、ほとんどが川をせき止めて造られたダム湖。

弟の海(かい)が性転換し海(うみ)という女性になり、観ている私も、隼人と話しているのは空(そら)なのか海(うみ)なのかと、くらくら。
自分は何者なのか、この世に存在する意義は?と浮遊する姿が、美しい映像の中で展開するのですが、実は驚きの事実が・・・ これは是非映画をご覧になってご確認を! (咲)



性別適合⼿術を受けて、女性になった弟を持った⼀卵性双⽣児の姉が主人公。一卵性で姉と弟?と思ったら、父親の染色体が普通でないと起こると説明があり、納得。地元を離れて上海に住み、絵の道で生計を立てようと奮闘中。しかし、なかなか思うようには進まない。積極的な弟(妹か?)に言い負かされては凹んでしまう。
恋愛もいつも長くは続かず、今回も土壇場でとんでもないことを言い出すが。。。
弟の性同一性障害のことがテーマの作品と思いきや、後半になって彼女がある大きな十字架を背負って生きてきたことが分かる。その十字架は韓国に残って暮らす母もまた背負っていた。
人生やり直すことはできない。とんでもないことをやってしまっても、それをいかに受け入れ、もう一度前を向いて歩き出すかが大事。ラストは希望を感じさせているが、それは母が経験した過ちの繰り返しではないか。おばさんとしては大きなお世話を焼きたくなってしまう。(堀)


山水画を思わせる安東の風景が印象的でした。そしてまか不思議な物語。双子で男と女。一人二役にしても難しい。途中はすっかり騙されました。いろいろな仕掛けもあったけど、情緒もある作品でした。
日本、韓国を中心に中国語圏の俳優も出てくる。『椿の庭』『アジアの天使』など、最近、韓国、中国、台湾、香港などの俳優がミックスで出演する映画が続いて公開されているが、これからも交流が続いていくのでしょう。阿部カさん、最近見ないのでどうしているかなと思っていたのですが、久しぶりに見ることができてうれしかったです。人気TVドラマ「花より男子」シリーズに出ていた時には知らずでしたが、TV中国語教室にも出ていましたね(暁)。



2019年/日本・韓国・中国/111分
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
公式サイト:https://www.sora-movie.com/
★2021年6月12日(土)より新宿K's cinemaほか全国順次公開


posted by sakiko at 12:20| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年06月05日

ベル・エポックでもう一度 (原題:La Belle Epoque)

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監督・脚本・音楽:ニコラ・ブドス
出演:ダニエル・オートゥイユ、ギヨーム・カネ、ドリア・ティリエ、ファニー・アルダン

かつては売れっ子イラストレーターだったヴィクトル(ダニエル・オートゥイユ)は何もかもがデジタル化された社会についていけず、今では仕事を解雇され、妻のマリアンヌ(ファニー・アルダン)にも見放されてしまった。冴えない毎日を送る父を元気づけようと考えた息子は友人のアントワーヌ(ギヨーム・カネ)が始めた〈タイムトラベルサービス〉をプレゼントする。映画製作を応用して客の戻りたい過去を広大なセットに再現する、体験型のエンターテイメントサービスだった。
ヴィクトルが「運命の女性と出会った1974年のリヨンに戻りたい」とリクエストすると、セットにはあの日のすべてが蘇っていた。用意された70年代ファッションに着替え、想い出のカフェで、アントワーヌの恋人で女優のマルゴ(ドリア・ティリエ)が演じる〈運命の女性〉と出会う。ヴィクトルは幸せだった日々を再体験し、見違えるほどイキイキし、唯一にして全財産である別荘まで妻に内緒で売り払い、タイムトラベルサービスのさらなる延長に注ぎ込む。
だが、ある時突然マルゴが降板し、別の女優が現れる。ヴィクトルの楽しい〈再体験〉は、マルゴとアントワーヌの関係にも“ある変化”を与えたのだ。果たして、〈タイムトラベルサービス〉に用意された驚きのエンディングとは?

風刺画を描いてきたヴィクトルの旺盛な批判精神も歳を取った今は世の中の進歩から取り残された愚痴にしか聞こえない。一方、妻のマリアンヌはカウンセラーで、ネットでのカウンセリングを取り入れるなどヴィクトルとは対照的な仕事ぶりが冒頭の会食シーンで話題になる。2人のすれ違いがはっきりと伝わってきた。そして、とうとうマリアンヌの不満が爆発して、ヴィクトルは追い出されてしまう。
しかし、息子からプレゼントされた〈タイムトラベルサービス〉にハマったヴィクトルはその費用を稼ぐため別荘を売るだけでなく、息子の会社の仕事を受けるように。俄然、活き活きとしてくる。人間にとって働く目的は生きる糧になるのだ。ヴィクトルとマリアンヌの関係にも変化が見えてくる。
熟年夫婦の離婚騒動は最近よく取り上げられる。木下グループの作品で先週公開になった『幸せの答え合わせ』も描かれるのは夫婦の離婚で、家族構成も熟年夫婦と1人息子で一緒。しかし、夫婦が辿りつく先が大分違う。どちらがいいかは人それぞれだが、悔いのない人生を送りたいものだ。(堀)


かけがえのない過去の1日、あるいは一時期を再体験できるという「タイムトラベルサービス」。さて、私ならいつを?と、映画を観ながら、誰しもが思い巡らすことと思います。ヴィクトルは、今は険悪な関係になってしまった妻マリアンヌと出会った日を選びます。あの輝かしい日から再スタートしたいという思いも、もちろんチラリ。人生、やり直しが出来ないからこそ、過去の様々な経験があって、今があることを再認識させられた映画でした。

冒頭、ネット配信用に〈タイムトラベルサービス〉が演出したドラマが映し出されます。このサービスを始めたアントワーヌが、いかに時代考証の正確さにこだわって いるかを示すために入れられた場面。
19世紀のシャトーでのディナー風景なのですが、アラブ人と黒人をさげすんだ時代ながら、ムスリムもユダヤも一緒にテーブルを囲んでいるという風刺のこもったもの。
また、ヴィクトルが選んだ1974年という年代について、「昔(1970年代)はシンプルだった。金持ちと貧乏人、右派と左派・・・といった具合に。経済を気にせず、移民を守り、宗教の対立も少なく、テーブルに携帯もなかった・・・」という言葉が出てきます。
今や、目の前に座っている人よりも携帯の向こうにいる人を気にして食事をするような時代。社会も複雑になって、融和という言葉が遠のいていることも感じさせてくれた映画です。(咲)


SFのタイムトラベルでなく、こういう「時を越える」方法もありか!と目を開かされました。しかし、なんとも贅沢で、庶民には手が届かないのが残念なところ。ヴィクトルのように作りものだと知りながらハマれば、ギャンブルなみに財産もなげうつことになってしまいます。なんと罪作りなこと。目がさめたならば高い授業料を払ったと思えばいいのかも。
いくら希望の舞台に上がらせてもらっても、自分が変わらなければ夢を見ているのと同じです。私は映画を観ているほうがいいなぁ。まずはこの映画で、追体験をば。(白)


2019年/115分/R15+/フランス・ベルギー合作
配給:キノフィルムズ
©2019 - LES FILMS DU KIOSQUE - PATHÉ FILMS - ORANGE STUDIO - FRANCE 2 CINÉMA - HUGAR PROD – FILS - UMEDIA
公式サイト:https://www.lbe-movie.jp/
★2021年6月12日(土)より、シネスイッチ銀座ほか全国公開

posted by ほりきみき at 21:31| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年06月04日

カムバック・トゥ・ハリウッド!!(原題:The Comeback Trail)

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監督・脚本:ジョージ・ギャロ
オリジナル脚本:ハリー・ハーウィッツ
脚本:ジョージ・ギャロ ジョシュ・ポスナー
撮影:ルーカス・ビエラン
美術:スティーブン・J・ラインウィーバー
衣装:メリッサ・バーガス
編集:ジョン・M・ビターレ
音楽:アルド・シュラク
出演:ロバート・デ・ニーロ、トミー・リー・ジョーンズ、モーガン・フリーマン、ザック・ブラフ、エミール・ハーシュ

舞台は1970年代のハリウッド。B級映画プロデューサーのマックス(ロバート・デ・ニーロ)はギャングのレジー(モーガン・フリーマン)から資金の提供を受けて映画を撮るが失敗し、借金が返せずピンチに陥る。そんなときに弟子だった映画プロデューサーが映画撮影中に主演俳優が事故死し、保険金を手に入れたことを知る。マックスは早速ボツにしていた脚本を引っ張り出し、老人ホームから往年のスター、デューク(トミー・リー・ジョーンズ)を担ぎ出して西部劇の撮影を開始する。ただし本当の目的は撮影中にデュークに死んでもらい、保険金を手に入れること。自殺を考えていたはずのデュークは思いの外しぶとくて、撮影は順調に進んでしまう。

ロバート・デ・ニーロが『グランパ・ウォーズ おじいちゃんと僕の宣戦布告』に続いて普通じゃない高齢者をコミカルに演じています。酸いも甘いも噛み分けたロバート・デ・ニーロだからこその役どころ。これからはこの路線でいくのかもしれません。
モーガン・フリーマンが演じるギャングはかなりの映画オタク。セリフの1つ1つに映画ネタが散りばめられています。しかし、映画ネタだとわからなくても楽しめますから安心してください。
トミー・リー・ジョーンズはデュークという名の往年の映画スターを演じていますが、飄々としていながらも時々ふっとカッコいいところを見せる。枯れ専女子にはたまらないのでは。ちなみにデュークはジョン・ウェインの愛称。もともとはジョン・ウェインの愛犬の名前だったそうですが、いつも連れていたのでそう呼ばれるようになったとか。
3人のレジェンド名優が活き活きとそれぞれの役どころを演じています。映画を撮るって夢とロマンがあふれているのでしょうね。
監督と脚本を務めたのは、『ミッドナイト・ラン』の脚本で知られるジョージ・ギャロです。若い頃にハリー・ハーウィッツ監督の自主制作映画『The Comeback Trail』という未完成の映画のラフカットを観て頭から離れなくなり、権利を持つ人を探し続けてきたところ、『ミッドナイト・ラン』の上映会でハリー・ハーウィッツ監督の未亡人と出会ったのです。意気投合した2人はこの映画についてパートナーとなることで同意。企画が動き出したそう。人生、どこで何があるかわかりません。(堀)


2020年/104分/G/アメリカ
配給:アルバトロス・フィルム
©2020 The Comeback Trail, LLC All rights Reserved
公式サイト:https://comeback-hollywood.com/
★2021年6月4日(金)公開
posted by ほりきみき at 00:00| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする