2021年05月30日

戦火のランナー  原題:Runner

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監督・プロデューサー:ビル・ギャラガー
撮影:ニッキー・ブラムリー、ピーター・グメ、ジェイコブ・ベンジャミン・アテニー
脚本・編集:ビル・ギャラガー、エリック・ダニエル・メッツガー
音楽:エドゥアルド・アラム
製作総指揮:ジェイ・ナライン、リンジー・ナライン
出演:グオル・マディング・マケア(グオル・マリアル)、ラスティ・コフリン、コーリー・イーメルス、ブラッド・プア他

初めて走ったマラソンで、2012年のロンドンオリンピックに難民選手団として出場を果たしたグオル・マリアル選手の感涙のドキュメンタリー。

1984年、スーダン南部で生まれたグオル・マリアル。スーダンとして、1956年にイギリスとエジプトの統治下から独立するものの、アラブ系住民の多い北部と、アフリカ系住民の多い南部の間で内戦が勃発。途中、停戦したこともあるが、内戦は2005年まで40年近くも続いた。子どもはさらわれ、家は燃やされ、どこもが戦場。両親は8歳のグオル・マリアルの命を守るため、彼を一人で逃がす苦渋の決断をする。逃げたものの武装勢力に捕まってしまったグオルは、夜明け前に走って逃げることに成功する。その後4年間、スーダン南部を放浪し、ようやく難民キャンプに保護される。2001年、16歳の時に幸運にもアメリカへ難民として移民する。ニューハンプシャー州の高校に入学し陸上部に入った彼は、走ると他を圧倒。初めて走ったマラソンで2012年ロンドン五輪出場資格を得る。しかし、彼の故郷が南スーダンとして建国されたのはロンドン五輪開催の一年前。国内オリンピック委員会がなく、代表する国がなかった。出場が危ぶまれたが奇跡が起こる。国際オリンピック委員会(IOC)が“国のない男”といわれた彼の個人参加選手としての出場を認めたのだ。そして彼は、祖国南スーダンの人々の期待を背負い走り、完走する・・・

内戦の中、身を守るために走り続けたグオルが、独立したばかりの祖国の人たちの思いを背負ってマラソン選手として活躍する姿に胸が熱くなりました。なにより涙なしに観られなかったのは、20 年ぶりに故国を訪れ、両親との再会を果たした場面。両親と別れたのは、8歳の時。自分だとわかってくれるだろうかとの不安も、泣きじゃくるお母さんや、踊り狂うお父さんの姿をみて吹っ飛びます。ご両親も、こんな日が来るとは思いもよらなかったことでしょう。
本作を観て思い出したのが、『行け、生きろ、生まれ変われ』のタイトルで、第13回フランス映画祭横浜2005で上映された後、『約束の旅路』の邦題で2007年3月10日から一般公開された映画。
1984年、スーダンの難民キャンプにいるエチオピアのユダヤ人を、 イスラエルとアメリカの援助で秘密裏にイスラエルに移民させた「モーゼ計画」。難民キャンプで、あるキリスト教徒の母親が我が子だけでも助けたいと、 9歳の息子にシュロモというユダヤ名を教え込み、 ユダヤ女性に託してイスラエルに逃れさせた物語。
親は、永久に会えなくても、我が子の幸せを願って別れを決断できるものなのだとつくづく思いました。(咲)


戦火を逃れ、難民になり、内戦の続く故国スーダンを飛び出しアメリカに渡ったグオル。そこで走る力を認められオリンピック選手にまで上り詰められたということ自体が感激の真実だけど、2011年新しく「南スーダン」として独立した故国の期待を背負いオリンピックで走ることができたということ。こんな話を若い人たちは知ってほしい。両親とは会えたのだろうかと途中で心配しながら観ていたが、最後に再開シーンがあって、「両親は生きていたんだ」とほっとし、また涙。でも彼以外の兄弟姉妹は亡くなってしまっていたということを知り、厳しい内戦下を生き抜いて選手になったグオルに改めてよかったねと思った。
そして南スーダンの選手たちといえば、今、群馬県前橋市でもう2年も練習を続けている陸上の選手たちがいる。南スーダンでは練習ができなかったが、日本の支援者たちがクラウドファンディングで基金を募り、練習を続けている。このコロナ禍でオリンピックが延期になってしまったけど、延長して練習を続けているという。何度かTVでその姿を見たことはあったが、あまり深く考えていなかった。でもこのドキュメンタリーを観て、彼らがそういう走れる環境を手に入れて走れるよう支援している人たちが日本にもいることに、日本人も捨てたもんじゃないと感動した。そして、南スーダンは今も危機的な状態に置かれています。支援などに興味がある方は、ネットで探してみてください(暁)。

*朝日新聞デジタル記事
コロナ禍も走り続ける 南スーダン選手 異国で支えられ
写真・文 福留庸友 2020年6月24日 17時00分
https://www.asahi.com/articles/ASN6R5V37N6LUQIP03F.html?iref=pc_rellink_01

◆公開に先立ち、主人公のグオル・マリアル選手、そしてビル・ギャラガー監督
から届いたビデオメッセージを、ぜひご覧ください。

https://unitedpeople.jp/runner/archives/15755


*「南スーダン」についての解説*
グオル・マリアル選手の故郷が、「南スーダン」として、2011年にスーダンから独立するまでの過程、そして独立後も紛争の絶えない南スーダンの状況について、公式サイトに掲載されている本作アンバサダーの友成晋也氏(元JICA南スーダン事務所長、一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構代表理事)による解説文を是非お読みください。
https://unitedpeople.jp/runner/exp

◆友成晋也さんによるアフタートーク
日時:6月5日(土)、6月6日(日)13:00-上映後 約20分間を予定

2020年/アメリカ/英語/88分/カラー/16:9
配給:ユナイテッドピープル 宣伝:スリーピン
公式サイト:https://unitedpeople.jp/runner
©Bill Gallagher
★2021年6月5日(土)シアター・イメージフォーラム他全国順次ロードショー



posted by sakiko at 16:28| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

トゥルーノース(原題:True North)

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監督・脚本:清水ハン栄治
音楽:マシュー・ワイルダー
出演:ジョエル・サットン、マイケル・ササキ、ブランディン・ステニス、エミリー・ヘレス

聴衆の前に立った男性にスポットライトが当たり、語り始める。「私は12年前祖国から亡命しました。政治の話ではなく私の家族の物語です」
1995年、平壌(ピョンヤン)。9歳のヨハンは両親と妹ミヒとの4人家族。父親が政治犯の疑いで追われ、母親とヨハン、ミヒも極寒の強制収容所に入れられてしまった。ヨハンは父との「家族を守る」という約束を守ろうと何年も頑張ってきたが、あまりにも過酷な日々に心が荒んでいく。そんなとき、母が瀕死の苦しみの中で残した言葉に、ヨハンは目がさめる。

2020年の東京国際映画祭で一足早く鑑賞しました。3Dアニメーションのなめらかでリアルな絵ではなく、人も折り紙のようにカクカクとした多面体のように表現されています。観客への配慮のためにワンクッションおいてあまりにリアルにしなかったそうです。アニメにしたことで、わかりやすく子どもにも伝わります。収監されて生き延びた人や看守などに取材をし、10年かけて出来上がった作品です。苛烈な環境の中でも見上げる星空や自然は美しく、奪い合わず分け合い、互いに思いあう優しさがあったことも描かれます。観ずに敬遠するのではなくぜひ足を運んで、心揺さぶられてください。
タイトルの「True North」には「真実の北朝鮮」の意味だけでなく、「真に重要な目標/羅針盤」の意味もあります。(白)


これまで、北朝鮮を描いた映画や、脱北者の手記などで、ベールに包まれた北朝鮮の実態を垣間見てきました。
強制収容所を描いたものでは下記が印象的でした。
『北朝鮮強制収容所に生まれて』
シン・ドンヒョクさん来日報告
作品紹介
北朝鮮で政治的に粛清されたり、韓国ドラマやK-POPの動画を観たというだけで刑を受けたりというニュースも毎日のように流れてきます。
本作は、監督が10年もの年月をかけて取材した内容に基づいて作り上げたもの。アニメという形ながら、北朝鮮の実情がリアルに伝わってきます。1960年代の帰還事業で日本から北朝鮮に移民した家族が主人公。地上の楽園と騙されて北朝鮮に渡った人たちの末路に涙が出ます。北朝鮮の人たちが、いつ自分も捕らえられるかとおびえながら暮らさないで済む日が来ることを願うばかりです。(咲)


北朝鮮の政治犯強制収容所のことは、収容所内で生まれ育った脱北者シン・ドンヒョクさんを描いた『北朝鮮強制収容所に生まれて』(2014年日本公開)で、政治犯強制収容所が何ヶ所もあることを知り、本人も来日して話を聞き、実状にショックを受けたことを覚えている。こちらは「北朝鮮強制収容所」の生活をアニメで描いたもの。その分、少し強烈さは緩和され、子供たちにも観てもらえる内容になっていると思う。
1960年代の帰還事業で日本から北朝鮮に渡った家族が政治犯として強制収容所に収容され、10年に渡ってここで暮らし生きてきたことが描かれている。これまでも帰還事業で北朝鮮に渡った人たちの姿を描いた作品は、いくつもあったけど、「北朝鮮強制収容所」に‎入れられてしまった人たちを描いた作品は観たことがなかった。日本から渡った人の中で強制収容所に収監されてしまった人はどのくらいいるのだろうと思った。強制収容所は10数か所あって、収監数は12万人とも14万人とも言われているらしいが、理由もなく入れられている人はどのくらいいるのだろうか。過酷な収容生活の現実、抑圧の中でも健気に生きる北朝鮮の人々の姿。やはりこれは現実なんだろうと思う。何か救える方法はないのだろうか。こういう姿を見ると胸が苦しい(暁)。


2020年/日本・インドネシア/カラー/94分
配給:東映ビデオ
(C)2020 sumimasen
https://www.true-north.jp/
★2021年6月4日(金)より全国ロードショー



posted by shiraishi at 14:01| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング 原題:Denise Ho: Becoming the Song

2021年6月5日よりシアター・イメージフォーラムにて公開 公開劇場情報 

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©Aquarian Works, LLC 

監督・脚本・プロデューサー:スー・ウィリアムズ 
制作総指揮:ヘレン・シウ 
共同制作:ジュディス・ヴェッキオーネ
編集:エマ・モリス 
撮影:ジェリー・リシウス 
字幕:西村美須寿 字幕監修:Miss D 
出演:デニス・ホー(何韻詩)、アンソニー・ウォン(黄耀明)、アニタ・ムイ(梅艷芳)

香港に自由を
デニス・ホー。熱狂と再生のドキュメンタリー


2014年に香港で起こった「雨傘運動」。警官隊の催涙弾に対抗して雨傘を持った若者たちが街を占拠したこの運動に、一人の香港歌手の姿があった。彼女の名前はデニス・ホー(何韻詩)。同性愛を公表する香港のスター歌手である彼女は、この雨傘運動でキャリアの岐路に立たされていた。彼女は、中心街を占拠した学生たちを支持したことで逮捕され、中国のブラックリストに入ってしまう。
ジョニー・トー(杜琪峯)監督の『奪命金』(2011)に出演し、俳優としても活躍する香港の歌手デニス・ホーを追ったドキュメンタリー。パワフルなコンサート映像や、雨傘運動に対する支援など、デニスの様々な活動を追っている。
デニス・ホーは1977年香港生まれのシンガーソングライター。11才で家族とカナダへ移住。9才の時にコンサートで見たアニタ・ムイ(梅艷芳)に憧れ、1996年香港の歌唱コンテストに出場し歌手の道へ。アニタ・ムイの弟子に。2001年にデビュー。音楽賞を総ナメにして以後香港ポッブスの中核を担う歌手として音楽活動を続ける中、女優としても活躍。
2014年、香港の民主的な選挙を求めて3ヶ月に及ぶ道路占拠に至った「雨傘運動」。警官隊の催涙弾に対抗して雨傘を持った若者たちが街を占拠したこの運動にデニスも参加。香港の女性歌手で初めて同性愛であることも公表していた彼女は、この雨傘運動でキャリアの岐路に立たされた。学生たちを支持し運動に参加したことで逮捕され、中国のブラックリストに。スポンサーが離れていき、演唱會を開催することが出来なくなった彼女は、キャリアを再構築しようと第二の故郷モントリオールへと向かった。カナダやアメリカでもライブを行い支持者を募り歌手活動を続ける。
 2019年には逃亡犯条例改正に反対するデモが起き、彼女は再び運動に参加。数百万のデモ参加者が街頭に繰り出した時、彼女も催涙ガスと放水砲が飛び交う通りに立ちデモ参加者を守ろうと警官隊と対峙。国連やアメリカ議会でも香港の危機的状況について訴え、自由と民主主義を守ろうとする人々の姿を世界に発信した。

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 ©Aquarian Works, LLC 

これから見えるのは香港ポップス界のスターであるデニスが香港のアイデンティティと自由を守るために声を上げる民主活動家へと変貌していく姿。香港の闘いはまだ終わっていない!
 1994年頃から中華圏(香港、台湾、中国、シンガポールなど)の音楽にハマってしまい、それから約20年。中華圏音楽のCDを買い、今や400枚位ある。でもアニタやデニスは2枚くらいしか持っていない。それでもアニタの歌や映画はけっこうビデオで観てきた。でもデニスのことは、映画は『奪命金』しか知らなかった。彼女が活躍し始めた10年位前からHMVとか行かなくなってしまったから。今、日本で彼女のCDを買うことができるなら買って聞いてみたい。
『奪命金』でデニスは漁夫の利を得る銀行員だか金融機関に勤める事務員の役を演じていた。そういえば、2012年の香港電影金像奨の取材で香港に行ったなと思い、その時『奪命金』は助演女優賞・蘇杏璇(ソー・ハンシュン)と助演男優賞・盧海鵬(ロー・ホイパン)を受賞していたと思い出し、もしかしてその時デニスも授賞式の会場に来ていたらレッドカーペットでの写真があるかもしれないと、その時の写真を調べてみたけど、彼女はどうも授賞式には来ていなかったよう。写真はなかった。アニタ・ムイのラストコンサート?には、デニス以外のアニタの弟子的な存在のグラスホッパーやアンディ・ホイの姿もチラッと写っていて懐かしかった。みんな元気だろうか。
この映画のデニス・ホーの姿を通して、香港の人々の声が世界に伝わるといいのだけど。そして香港でも公開できる日が来てほしい(暁)。


香港の自由と民主主義のために果敢に闘うデニス・ホーという歌手がいることを、この映画を観るまで知りませんでした。
アニタ・ムイに憧れて歌手になり、弟子入りも果たしたデニス・ホー。
アニタ・ムイが亡くなる前年の2002年の初冬だったと記憶しているのですが、闘病中のアニタを囲んで、アニタと親しい歌手たちが出演するコンサートが香港コンベンションセンターで開かれました。もしかしたら、レスリー・チャンも出るかもと、レスリーのファン仲間6人で香港に飛びました。予想に反して、レスリーは最後まで出てこなくてがっかりだったのですが、アンディ・ラウやジャッキー・チュン等々、アニタと親しい香港のトップスターたちが一堂に会して、痩せ細ったアニタを疲れさせないようにと気遣うアットホームなコンサートでした。このコンサートに、デニス・ホーも出演していたのかもしれません。その後、アニタの追随はやめ、自分らしいスタイルで活動しているデニス・ホー。彼女の願いが叶って、香港にかつてのような自由な世界が戻ることを祈るばかりです。かなり絶望的なのが悲しい・・・ (咲)


協力:TOKYO FILMeX、市山尚三 資料監修:江口洋子 
【2020/アメリカ/ドキュメンタリー/DCP/83分】
『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』公式HP
左から黄耀明と何韻詩 .JPG
左から黄耀明と何韻詩 ©Aquarian Works,LLC


*シネマジャーナルHP 「雨傘運動」に関する、他の作品の監督インタビュー記事
『革命まで』2015年 香港
郭達俊(クォック・タッチュン)監督&江瓊珠(コン・キンチュー)監督インタビュー
山形国際ドキュメンタリー映画祭 2015にて
http://www.cinemajournal.net/special/2016/kakumeimade/index.html

『乱世備忘 ― 僕らの雨傘運動』
英題 Yellowing   香港/2016年/128分カラー/広東語
山形国際ドキュメンタリー映画祭2017 アジア千波万波 小川紳介賞受賞
山形国際ドキュメンタリー映画祭 2017にて
http://www.cinemajournal.net/special/2017/yellowing/index.html

『乱世備忘 僕らの雨傘運動』
陳梓桓(チャン・ジーウン)監督インタビュー(日本公開時)
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/460641864.html

posted by akemi at 08:32| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月29日

幸せの答え合わせ  原題:Hope Gap

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監督:ウィリアム・ニコルソン
出演:アネット・ベニング、ビル・ナイ、ジョシュ・オコナー

イギリス南部の町シーフォード。海辺の白い崖の下に「ホープ・ギャップ」と呼ばれる入り江が広がる。グレース(アネット・ベニング)は、好きな詩を集めながら、今は家を出て独立した一人息子ジェイミー(ジョシュ・オコナー)が、「ホープ・ギャップ」を大好きだったことを思い出す。もうすぐ結婚29周年を迎える夫エドワード(ビル・ナイ)は高校で歴史を教えている。土曜日の午後、ジェイミーが久しぶりに帰ってくる。日曜の朝のミサには行かないという。エドワードも試験の採点があるから行かないという。グレースが一人で教会に行っている間に、エドワードは息子に「もう限界。家を出ていく。母親を支えてやってくれ」と頼む。教会から帰ってきたグレースは、夫から別れを告げられる。突然のことに驚くが、夫は準備していたスーツケースを携えて出ていってしまう・・・

順風満帆、幸せな日々だと思っていた妻。一方、ずっと妻とは合わないと我慢してきた夫。所詮、結婚するのは勘違いと勢い。一緒に暮らしてみたら、思い描いていたのとは違うということもあるでしょう。アネット・ベニングが、こんな女性と一緒に暮らしていたら、確かに疲れるというグレースを実に上手く演じています。夫が出ていったあとも毎日無言電話をかける陰湿さ。寂しさを埋めるために飼った犬にエド(エドワード)と名付けて、「死ね」と動作させるのには笑ってしまいました。
一緒にいて気楽な女性と出会ったからと出ていくなんて、勝手だ!と思う一方、一度きりの人生、好きにしたほうがいいとも思ってしまいます。
父が出て行ったあと、毎週、実家に帰ってくる息子が健気です。自分の恋もなかなかうまくいってないのに、せめて週末には母親と過ごさなければという孝行息子。「ホープ・ギャップ」に佇みながら、小さい頃、両親に手を繋がれて家路についたのを懐かしく思い出します。「母は幸せだったのか?」と自問するジェイミー。息子としては、幸せな時もあったに違いないと思いたいでしょう。
あと、本作で面白い!と思ったのが、宗教に対する母と息子の考え方の違い。
息子は、「この世は不平等。安心を得るために神と天国の物語を作り上げた」と、もう信仰を捨てています。一方、「神は存在する」と教会にいくのを欠かさない母。「自殺したら地獄行き」という教えも、しっかり信じていることが救い?(咲)


若い頃は魅力に感じたことも、歳を重ねると苦痛に思えてくることもあります。言葉に出して変化を求めた妻と、それが負担になって苦痛を感じるようになった夫。夫婦というのは本当に難しい。
本作は監督と脚本を手がけたウィリアム・ニコルソン自身の両親が30年の結婚生活の末に離婚したことをベースに脚本が書かれました。主人公は母のグレースですが、監督が投影されたと思われる息子の視点も入っています。親の離婚は幸せだったころが否定されてしまうような気持ちになり、大人になっていてもショックであることが作品から伝わってきました。
同じ木下グループの『ベル・エポックでもう一度』も高齢夫婦の仲違いをテーマにしていて、こちらも夫婦に息子1人と家族構成が同じ。本作の主人公グレースが機嫌を損ねるとテーブルを引っ繰り返していましたが、こちらは夫の荷物をまとめて追い出してしまう。妻が気の強い点でも似ていますが、夫婦の辿るその後の道筋はかなり違います。見比べてみるのもいいかもしれません。(堀)


長年暮らした夫婦が別れるというのがテーマの作品ですが、これはやはり男性監督が夫側の視点から描いていると思いました。いかにも、こんな女ならやっぱり嫌になるよなというような妻を描いています。でも彼女が、夫との関係の中で悩んだことは描かれていません。「愛されていると思っていたのに」としてしか描かれていません。彼女なりの悩みや、ここまでくるまでの夫との葛藤とかあったはずだと思うのですが。
この年代(60代以上?)の夫が、本を読んでいる、あるいは詩の制作をしている妻にお茶を入れてあげるなんていうシーンが描かれた作品はなかなかないですし、夫が食事の後の食器を洗っている間、妻は手伝うでもなくソファの上でだらっとしているみたいなシーンもあったし、とにかく夫は妻のためにかいがしく働いている。それに対して妻は感謝の言葉も表情もない。なんだかわざとらしいと感じてしまった。ま、これは観客に対して、「こんな妻なら、やっぱり夫は出ていきたいと思うわな」と思わせるための演出なんでしょうけど。これを夫がしていても観客はそうは思われないですからね。二人の間にたって、どちらの方にもつくわけにいかず、巻き込まれる息子。彼がいなければ、母はほんとに自殺でもしかねなかったかもしれない。それにしても女性から見ても、こんな人とは付き合いたくないなと思わせる女性像だったと思う。
私の家は逆で、父が母を一方的に支配しているような状況だった。「自分が養ってやっているんだから文句言うな」というような感じだった。今でいうDV夫だったので、中学の頃からずっと「なんで母はこんな父の支配に我慢しているんだろう。別れてしまえばいいのに」とずっと思っていた。母としてはずっと主婦として暮らしてきたし、自立して自分の収入で暮らしてはいけないだろうという思いがあったようだけど、ずっと我慢の人生だった。でも母に聞いた時に「幸せな時もあった」ということも言っていた。だから離婚せずいたのかもしれない。そんな母の姿を見てきたので、私は結婚はするまいと子供心に思ってしまった。そして就職して5年目くらいに私が家を出た。
そういう私から見て、この映画のテーマはわからなくはない。我慢して一緒に暮らすことはない。子供のことを考えて我慢することもないと思う。この映画の夫婦にも幸せな時はあったのだし、これまでの生活全部が不幸だったわけではないと思う。何度も出てきた海辺の白い崖のある砂浜の景色が印象的だった(暁)。


2018年/イギリス/英語/カラー/スコープサイズ/DCP/5.1ch/100分
字幕翻訳:川喜多綾子
配給:キノシネマ 提供:木下グループ 
© Immersiverse Limited 2018
公式サイト:https://movie.kinocinema.jp/works/hopegap
★2021年6月4日(金.) キノシネマ他、全国順次公開


posted by sakiko at 13:28| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月28日

るろうに剣心 最終章 The Beginning

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監督・脚本:大友啓史
原作:和月伸宏「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」(集英社ジャンプ コミックス刊)
撮影:石坂拓郎
音楽:佐藤直紀
アクション監督:谷垣健治
主題歌:ONE OK ROCK
出演:佐藤健(緋村剣心)、有村架純(雪代巴)、高橋一生(桂小五郎)、村上虹郎(沖田総司)、 安藤政信(高杉晋作)、 北村一輝(辰巳)、江口洋介(斎藤一) 他

動乱の幕末。天涯孤独だった緋村剣心は、飛天御剣流(ひてんみつるぎりゅう)の継承者である比古清十郎に助けられ、彼の弟子になった。倒幕派の長州藩の奇兵隊に志願し、リーダーの桂小五郎の目にとまる。小五郎の指示で影の暗殺者となり、言われるまま正義と信じて人を斬り続ける。必ずとどめを刺し、血も涙もない最強の人斬り・緋村抜刀斎(ひむらばっとうさい)と恐れられていた。ある夜、人斬りの現場に出くわした雪代巴(ゆきしろともえ)を口封じのため側に置くことにする。その後、巴とともに農村へ身を隠し、穏やかな暮らしの幸せを知った剣心には人を斬ることに迷いが生まれていた。
ある日巴が姿を消してしまい、剣心はしかけられた陰謀と数々の罠を一人突破していく。満身創痍でたどり着いたその先にあったものは?

ついにグランドフィナーレを迎えた『るろうに剣心』シリーズ。シリーズの第3作を撮り終えてから、これを撮らなければ意味がない、とスタッフ・キャストが全身全霊であたったしめくくりが最終章の2作です。この”The Beginning”が時系列でいえば一番最初の部分、剣心がどうやって生きてきたのか、頬の十字傷がなぜついたのか、なぜ消えずにあるのか、が明らかになります。キャストが多くて書ききれませんでしたが、お馴染みのキャストも登場していますのでお楽しみに。ポスターにある雪景色の中の巴と剣心のシーンが美しいですが、前半女優さんが少ない中、村上虹郎さんの沖田総司がはかなくもまた美しかったです。
10年間、ほかの作品にも関わりながらこの「るろ剣」シリーズに出演してきた佐藤健さんはじめキャスト・スタッフのみなさんに「ありがとう」と「お疲れ様」を。(白)


2021年/日本/カラー/シネスコ/137分
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)和月伸宏/ 集英社
(C)2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」製作委員会
http://wwws.warnerbros.co.jp/rurouni-kenshin2020/
公式 Twitter/公式 Instagram @ruroken_movie #るろうに剣心最終章
★2021年6月4日(金)ロードショー

『るろうに剣心 最終章 The Final』はこちら


posted by shiraishi at 23:05| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

コンティニュー(原題:Boss Level)

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監督:ジョー・カーナハン
脚本:クリス・ボーレイ、エディ・ボーレイ、ジョー・カーナハン
出演:フランク・グリロ(ロイ・パルヴァー)、メル・ギブソン(クライヴ・ヴェンター大佐)、ナオミ・ワッツ(ジェマ・ウェルズ)、ミシェル・ヨー(ダイ・フォン)、ケン・チョン(ブレット)

元デルタフォース特殊部隊員のロイは、朝目が覚めたとたんに襲撃される。しか~し対策はばっちり、目をつぶってもよけられる。なぜなら毎日同じ一日を繰り返す無限ループに陥っているから。冒頭は140回近く繰り返している今日。なぜ襲われるのか、敵は誰なのか、このループから抜けられるのか、答えは襲い来る敵を倒して進まねばわからない。銃で撃たれ、爆弾で吹っ飛び、首を切られ・・・と毎日殺されて一日が終わる。そしてまた同じ敵に襲われて一日が始まるのだ。ただ日々レベルアップして変化していることは間違いない。何度もトライ&エラーを重ねるうちに、科学者である元妻のジェマや息子にも危険が及ぶことがわかってきた。

『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』(2010)を送り出したジョー・カーナハン監督の最新作です。見た目は地味目なフランク・グリロが主人公。『パージ:アナーキー』(2014)から記憶に残るようになりました。本作は、またもや大好きなタイムループもの。ゲームさながらに戦って戦って主人公が死ぬと、また1からやりなおしです。最近のゲームのように進んだところで、セーブしておくということはできません。昔、小学生だった息子がシューティング・ゲームの「メビウス」をクリアするのに必死だったのを思い出します。ドラクエだって初期はヘンな呪文を長々と書き写し、一字でも違うと続きができなかったのですよ。今はめちゃくちゃ楽。あ、脱線しました。
さて、繰り返すうちにレベルアップし、要領よくなったロイの前には、小ボス、中ボス、ラスボスが立ちはだかりますが、一緒に戦ってクリアするつもりで楽しめます。
途中、香港・中国映画でお馴染みのミシェル・ヨーが登場して「お~!」と喜びました。いつもロイがなかなか勝てない「クワンイン=観音」対策のため。観音役はセリーナ・ロー。この作品で初めて観た気がします。お父さんがブルース・リーとジャッキー・チェンのファンで、セリーナは子どもの頃からマーシャル・アーツを学んでいたんだとか。それで綺麗にアクションが決まるんですね。以後注目。
元妻のほか、ロイの一人息子も登場して、父親としてのロイの心情も知ることができます。(白)


ミシェル・ヨーが出演しているとあっては、これは観なくては!と、観てみました。
冒頭、部屋には招き猫。ロイが毎日お昼に入り浸るのは中国料理のお店。東洋趣味満載と思っていたら、さらに、元妻ジェマから、「イシスとオシリスの物語」の本を渡され、「オシリスを覚えておいてね」と言われます。オシリスは、エジプト神話で冥界の神。死を克服する力を象徴する存在です。なるほど!
ミシェル・ヨーは、剣の名手ダイ・フォン役として、いつもながらの華麗な剣術を披露してくれます。「観音が成敗」と、襲ってくるセリーナ・ローも、独特な雰囲気で忘れられません。中国の彫像などが展示されている博物館のようなところで撮影していましたが、あれはどこなのでしょう? 気になる~
それにしても、毎日毎日、あの手この手で殺されるのは、観ているほうもしんどかったです。(咲)

このところよくあるタイムループものと思ったらひと味もふた味も違う作品でした。なんと冒頭ですでに140回もループ済。殺し屋の手の内はすべてお見通し。攻撃を避けながらコーヒーを淹れてしまう余裕には思わず笑ってしまいます。最近では『パーム・スプリングス』もループものでしたが、あちらは緩~いラブコメ。スピード感満載の本作は同じジャンルには思えません。さまざまなタイプの殺し屋が次から次へとやってきます。よく考えるとけっこうグロい殺され方もするのですが、グロいのが苦手な私が見ていても不快感がないのはテンポがいいからかも。ループの回数を重ねていくにつれ、謎が見えてきます。それとともに元夫婦の強い絆が浮かび上がってきて、そちらの行く末も気になってしまいます。(堀)

2021年/アメリカ/カラー/シネスコ/100分
配給:クロックワークス
(C)2019 Georgia Film Fund 72, LLC All Rights Reserved
http://continue-movie.jp/
★2021年6月4日(金)より新宿バルト9ほか全国公開

posted by shiraishi at 23:02| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

グリーンランド 地球最後の2日間 (原題:Greenland)

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監督:リック・ローマン・ウォー
脚本:クリス・スパーリング
撮影:デイナ・ゴンザレス
出演:ジェラルド・バトラー(ジョン・ギャリティ)、モリーナ・バッカリン(アリソン)、ロジャー・デイル・フロイド(ネイサン)、スコット・グレン(ディル)

近所の友人たちとのパーティのさなか、テレビに「隕石が地球に迫っている。ただちに避難せよ」という警告が流れる。人々がパニックに陥る中、ジョン・ギャリティは携帯に大統領アラートが届いているのに気づく。妻のアリソン、息子のネイサンとともに緊急避難者に選ばれたのだ。隕石が衝突するのは48時間後だという。選ばれなかった友人が娘を連れて「この子を基地まで一緒に」と涙ながらに追ってくる。許可証がないので断るほかない。ようやくたどり着いた集合場所の基地ではネイサンの持病のため、出発機への搭乗を拒否される。緊急避難者ではない群衆も集まり、大混乱のうちに3人は離ればなれになってしまう。

平和な日常が突然の隕石の接近によって一変します。隕石の落下はミサイルでも防ぎようがなく、人々は一律に危機に陥るのですが、ここには超能力のヒーローも卓抜した指導者も現れません。いつも強い主人公だったジェラルド・バトラーは、建築技師の普通の父親で妻と息子を守るために奔走します。世界崩壊まで48時間というタイムリミットの中、政府に選ばれた人々の避難が始まりますが、選ばれなかった人々はどこへ行けばいいのでしょう。必死で生き延びようとする人たちの、剥き出しの姿が描かれます。
『コンティジョン』(2011)は世界を覆うウィルスとの攻防を描いて、コロナ禍の現代と重なりました。政府にはこんな時にどう対処するのか、計画はあるのでしょうか?生き残るために私たちは何ができるのでしょう?
ウォー監督とバトラーは『エンド・オブ・ステイツ』(2019)に続く再タッグ。目を奪う視覚効果は、アカデミー賞受賞VFXスタジオの”PXOMONDO”が担っています。実際には絶対体験したくないこのディザスタームービー、劇場で”安全に体感”してください。(白)


2020年/アメリカ/カラー/シネスコ/119分
配給:ポニーキャニオン
(C)2020 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
https://greenland-movie.jp/
★2021年6月4日(金)より全国ロードショー
posted by shiraishi at 23:00| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月25日

女たち

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監督: 内田伸輝
製作:奥山和由 
プロデューサー:木谷真規
出演: 篠原ゆき子、倉科カナ、高畑淳子、サヘル・ローズ、筒井茄奈子、窪塚俊介

《チームオクヤマ25周年》作品

山あいの自然豊かな小さな町。美咲(篠原ゆき子)は、母の介護をしながら地域の学童保育所で働いている。40歳を目前に、思うように就職も結婚もできない娘に、半身不随の母・美津子(高畑淳子)は、口だけは達者で、お金をかけて東京の大学に行かせた甲斐がないと暴言を浴びせる。幼なじみの親友・香織(倉科カナ)が営む養蜂場を手伝うことと、母の介護を担当している直樹(窪塚俊介)と密かに愛の営みを交わすことで美咲は心の安堵を得ている。直樹に結婚をほのめかした翌日、ホームヘルパーの異動があったと、田中マリアム(サヘル・ローズ)が代わりにやってくる。美咲は、直樹に裏切られたことを知ってしまう。そんな折、香織が自ら命を絶ってしまう・・・

テレビからアベノマスクや一人10万円の給付金のニュースが流れ、本作がコロナ禍の中で撮影されたことが伝わってきます。生きにくい世の中で、それぞれの女たちの鬱屈した思いが綴られていて、ちょっと息苦しくなりました。美咲の父親は服毒自殺していて、そのせいで学校でいじめられたことが語られます。「産まなきゃよかった」とまで暴言を吐く母親ですが、「幸せになってほしかった。私の育て方が悪かった」と嘆く姿に、複雑な母の思いを感じました。
私が注目したのは、サヘル・ローズさん。母・美津子は、サヘルさん演じるマリアムが来た日、「ずっと外人と一緒で、何か盗られたら・・・」と警戒していました。その後、美津子の苦手な人参を美味しく食べさせてあげようと、マリアムはペルシア料理のホレシュテ・ハヴィージ(人参の煮込み)を作ってきます。彼女の優しさにすっかりほだされる美津子。
ペルシア料理が出てきて嬉しかったのですが、人参だけのホレシュ(煮込み)は初めて聞きました。マリアムは、「香織さんの蜂蜜を食べていると幸せな気持ちになる」と語っています。蜂蜜はイラン人にとって朝食に欠かせないもの。サヘルさんを上手に起用したと唸りました。(咲)


主人公の美咲は、実母との確執、甘い夢を見てしまった直樹の裏切り、と不幸のつるべ打ち状態です。自分のことでいっぱいで親友の香織の痛みに気づきません。このところ出演作が続いている篠原ゆき子さん、爆発寸前なのをおさえてなんとかやり過ごしている美咲に真実味を与えています。
倉科カナさん演じる香織については詳しく語られませんが、過去に男性に傷つけられたようです。いつも白い服装の香織は、地上で羽根を休めている天使のようでもあり、今に天上へ帰ってしまうのでは、というはかなさと透明感がありました。美咲と楽しむために用意したテーブルで、一人飲み続けるところは彼女の孤独が迫ってくる圧巻のシーン。
言いたい放題の母も、自分だけが辛いと思っていた美咲もよく似ていて、文字のとおりの近親憎悪です。香織を亡くしたことで、やっと頭が冷える美咲に「遅くても気づかないよりまし」と思ったことです。嘘つき直樹にお金返してもらいましょう。(白)


2021年/日本/カラー/97分
配給:シネメディア、チームオクヤマ
公式サイト:https://onnatachi.official-movie.com/
★2021年6月1日(火) よりTOHOシネマズ シャンテ他、全国公開

posted by sakiko at 19:10| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

5月の花嫁学校   原題:La bonne épouse  英題:How to be a good wife

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監督・脚本:マルタン・プロヴォ(『ルージュの手紙』『セラフィーヌの庭』)
出演:ジュリエット・ビノシュ、ヨランド・モロー、ノエミ・ルボフスキー、フランソワ・ベルレアン、エドゥアール・ベール

1967年春、フランス、アルザス地方の小さな村。ヴァン・デル・ベック家政学校に、18人の少女たちが入学する。ピンクのスーツ姿で迎える校長のポーレット(ジュリエット・ビノシュ)。講師陣は迷信を信じる修道女、マリー=テレーズ(ノエミ・リヴォウスキー)と、ポートレットの義理の妹で料理長のジルベルト(ヨランド・モロー)。2年間で良妻賢母に仕立て上げる授業は、女性解放運動の風を感じ始めた少女たちには、ちょっと時代遅れだ。親が決めた結婚なんてしたくないと反発しながらも、お金も学歴もない彼女たちは大人の決めた道に進むしかなかった。
ある日、ポーレットの夫で学校の経営者のロベール(フランソワ・ベルレアン)が莫大な隠れ借金を遺して急死する。日々、夫の事業を支え、夜のお勤めにも渋々おつきあいしていたのに、こんなひどい仕打ちが待っていたとは……。ポーレットは破産寸前の学校を救うために、取引先の銀行に駆け込む。担当者は、なんと、第2次世界大戦で死んだと思っていた恋人アンドレ(エドゥアール・ベール)だった。30年振りの再会に興奮を隠せない彼はウルトラC級の解決法を提案。ポーレットを破産危機から救出し、心の奥にしまっていた情熱に火をつける・・・
 
夫の突然の死を機に、いかに夫が自分を縛り付けていたかに気付き、自分らしく生きることに目覚めるポーレット。少女たちもまた、美容師になりたい、法律を勉強したいと将来を見据えます。
社会変革を求める五月革命の嵐が吹き荒れ、フランス全土にあった花嫁学校は2年後にはすべて消滅。何百年も当たり前だった亭主関白も、1968年以降、フランスでは絶滅の途を辿っているそうで、その点、日本はまだまだと不満に思います。
マルタン・プロヴォ監督は1957年生まれ。彼自身の父が亭主関白だったことや、夏になると花嫁学校の生徒が家政婦として家に来ていた記憶があって、今また女性たちを公の場から家庭に戻そうとする動きを敏感に察知しています。逆戻りしないようにと女性たちにエールをおくった作品です。
文字で書いてしまうと、女性が自我に目覚める社会派映画かと思う方もいるかもですが、そこはやっぱりおフランス! いくつになっても恋に浮つく姿が、コメディタッチで描かれています。フランス人から色恋を取ったら何が残るのやら! 年をとっても、そうありたいと、うらやましくもあります♪(咲)


この花嫁学校に来る子たちと大差ない時代に青春を送りました。確かに女の子の幸せは結婚にあり、会社で働いても寿退社が花道みたいな空気がありました。結婚はゴールじゃなくてスタート、というか通過点だと思い知るのは結婚してからです。子育てや家事も大切ですが、なんだか物足りないと思っていました。当時後回しにしてきたことを今やれる自由や時間があるので、怠けないでちゃんとやらなくては。あきらめないうちは失敗じゃない、っていいますしね。おっと、映画と離れてしまいました。
この作品に登場する女の子たち、陰に甘んじていたポーレットやジルベルトの気づき、シスターの意外な過去など、歌って踊って軽めに見えますが、実はけっこう大切なことを言っています。好いた惚れたなしでは客入りが悪いのか、と勘ぐりつつ、フランスだしねと納得。めんどくさいのが苦手な(白)より。


2020年/フランス/フランス語/109分/シネスコ/5.1ch
日本語字幕:井村千瑞
配給:アルバトロス・フィルム
(C)2020 - LES FILMS DU KIOSQUE - FRANCE 3 CINEMA - ORANGE STUDIO - UMEDIA
公式サイト:https://5gatsu-hanayome.com/
★2021年5月28日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開!


posted by sakiko at 15:47| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月24日

HONG SANGSOO RETROSPECTIVE 12色のホン・サンス

『ホン・サンス特集上映 12色のホン・サンス』チラシ(表).png

2020年ベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)に輝いたホン・サンス監督の24作目『逃げた女』が、6月11日(金)より公開されるのを記念して、ホン・サンス監督特集上映「HONG SANGSOO RETROSPECTIVE 12色のホン・サンス」が開催されています。

2021年5月14日(金)~5月27日(木)
ヒューマントラストシネマ有楽町 https://ttcg.jp/human_yurakucho/
5/14(金)~20(木) 連日10:00~
5/21(金)〜27(木) 連日11:45~ (当初10時からの予定が変更になりました)

2021年5月28日~6月10日 
アップリンク吉祥寺 https://joji.uplink.co.jp/
上映時間はこれから決定 
上映料金:一律1000円

【上映作品】
『ホン・サンス特集上映 12色のホン・サンス』チラシ(裏).png

ビターズ・エンドとクレストインターナショナル配給作の全12作品。
★の4作品は、日本最終上映作品。ヒューマントラストシネマ有楽町のみ上映。

思いもかけず、今回のすべての上映作品を過去にシネジャで紹介していました。
韓国の伝統的な風情溢れる町を舞台に、同じような言葉や行動が展開されるホン・サンスらしい愛おしい作品たちをどうぞお楽しみください。(咲)

『よく知りもしないくせに』★
2009年/126分/カラー/Blu-ray
出演:キム・テウ、コ・ヒョンジョン、オム・ジウォン
有楽町:5月14日(金) 
シネジャ作品紹介

『ハハハ』★
2010年/116分/カラー/Blu-ray
出演:キム・サンギョン、ムン・ソリ、ユ・ジュンサン、キム・ガンウ
有楽町:5月15日(土) 
シネジャ作品紹介

『教授とわたし、そして映画』★
2010年/80分/カラー/Blu-ray
出演:イ・ソンギュン、チョン・ユミ、ムン・ソングン
有楽町:5月17日(月)
シネジャ作品紹介

『次の朝は他人』★
2011年/79分/モノクロ/Blu-ray
出演:ユ・ジュンサン、キム・サンジュン、ソン・ソンミ、キム・ボギョン
有楽町:5月16日(日) 
シネジャ作品紹介

『3人のアンヌ』
2012年/89分/カラー/Blu-ray  
出演:イザベル・ユペール、ユ・ジュンサン、チョン・ユミ、ユン・ヨジョン、ムン・ソリ
有楽町:5月22日(土) 
吉祥寺:6月3日(木)
シネジャ作品紹介

『へウォンの恋愛日記』
2013年/90分/カラー/Blu-ray
出演:チョン・ウンチェ、イ・ソンギュン、イェ・ジウォン、ユ・ジュンサン
吉祥寺:6月4日(金)
シネジャ作品紹介 

『ソニはご機嫌ななめ』
2013年/88分/カラー/Blu-ray
出演:チョン・ユミ、キム・サンジュン、イ・ソンギュン、チョン・ジェヨン 
有楽町:5月18日(火) 21日(金)
吉祥寺:5月28日(金) 6月5日(土)
シネジャ作品紹介

『自由が丘で』
2014年/67分/カラー/DCP 
出演:加瀬亮、ムン・ソリ、ソ・ヨンファ、キム・ウィソン、チョン・ウンチェ
有楽町:5月19日(水) 23(日) 
吉祥寺:5月29日(土) 6月6日(日)
シネジャ作品紹介

『正しい日 間違えた日』
2015年/121分/カラー/DCP  
出演:チョン・ジェヨン、キム・ミニ、クォン・ヘヒョ、コ・アソン
有楽町:5月27日(木)
吉祥寺:6月2日(水) 6月10日(木)
シネジャ作品紹介

『夜の浜辺でひとり』
2017年/101分/カラー/DCP 
出演:キム・ミニ、クォン・ヘヒョ、チョン・ジェヨン
有楽町:5月26日(水)
吉祥寺:6月1日(火) 6月9日(水)
シネジャ作品紹介

『クレアのカメラ』
2017年/69分/カラー/DCP  
出演:キム・ミニ、イザベル・ユペール、チョン・ジニョン
有楽町:5月24日(月)
吉祥寺:5月30日(日) 6月7日(月)
シネジャ作品紹介

『それから』
2017年/91分/モノクロ/DCP 
出演:キム・ミニ、クォン・ヘヒョ、キム・セビョク
有楽町:5月25日(火)
吉祥寺:5月31日(月) 6月8日(火)
シネジャ作品紹介


◆特集上映「作家主義 ホン・サンス」も開催されます。
6月12日(土)~渋谷・ユーロスペース 6月26日から長野・上田映劇 以降、全国順次公開
上映作品:『カンウォンドのチカラ』(1998)、『オー!スジョン』(2000)
https://apeople.world/hongsangsoo/

●『逃げた女』
2021年6月11日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺他全国順次公開
公式サイト:https://nigetaonna-movie.com/


posted by sakiko at 11:44| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月23日

ハチとパルマの物語   原題:Palma

hachi palma.jpg

監督:アレクサンドル・ドモガロフJr.
出演:渡辺裕之、藤田朋子、アナスタシア、壇蜜、高松潤、山本修夢、早咲、アクサンドル・ドモガロフ、レオニド・バーソフ、ヴィクトル・ドブロヌラヴォフ、阿部純子(友情出演)、堂珍嘉邦(友情出演)、アリーナ・ザギトワ(友情出演)

ロシアで語り継がれる、もう一つの忠犬の物語

ロシアの空港で働くコーリャ。テレビで流れる秋田犬の話題に、ふと目が留まる。少年時代の犬との忘れられない思い出がよみがえる。
ソ連時代の1970年代、モスクワのヴヌーコヴォ国際空港。飼い主とともにプラハに行く予定だったジャーマンシェパードのパルマは、獣医の証明書がないため搭乗を拒否される。飼い主は、やっと得たプラハでの仕事に就くべく、仕方なくパルマを滑走路に放つ。パルマは空港に住み着き、飼い主が搭乗したのと同じ機種の飛行機の音がすると滑走路を走ってタラップの下で待ち構えるようになる。
同じ頃、母を亡くした9歳の少年コーリャが、パイロットの父親に引き取られる為、ヴヌーコヴォ空港にやってくる。母を失った悲しみと、顔も知らなかった父との暮らしに心を閉ざすコーリャと、飼い主を失ったパルマは、すぐに心を引き寄せ合うようになる。
空港で働くニーナたちから、パルマの飼い主らしき人物のことを聞いたコーリャは、「飼い主のもとに戻してあげたい」と行動を起こす。ようやく飼い主と連絡が取れ、パルマと飼い主の再会の時がやってくる。パルマはなぜかコーリャのもとを離れようとしない・・・

2年もの間、実際にヴヌーコヴォ国際空港で飼い主を待ち続け、今も多くの人に語り継がれる実話“パルマの物語”。これまでに3回、ドキュメンタリーとして映画化されていますが、この度、初めて劇映画となりました。
飼い主を待ち続けた犬といえば、渋谷駅の忠犬ハチ公。ハチ公は秋田犬。プーチン大統領や、フィギュアスケーターのアリーナ・ザギトワが秋田犬を飼っていることから、ロシアと日本の合作映画として、ハチ公とパルマを繋ぐ物語が生まれました。
ザギトワ選手は、本作に本人役で出演していますが、公開を前に、コロナ禍の中、来日し、5月23日、秋田県大館市での先行上映会で舞台挨拶に立ちました。  
舞台挨拶の模様はこちらでご覧ください。
ハチ サブ1_20210522zagitova_1806.JPG

@Shutterz/ CB


日本側のプロデューサーを務めた益田祐美子さん(平成プロジェクト代表)は、映画製作にまったく素人だった時に手掛けた日本とイラン合作映画『風の絨毯』(2003年、キャマル・タブリーズィー監督)を皮切りに、数々の映画を製作。日韓合作ドキュメンタリー映画として、『海峡をつなぐ光』(2011年、乾弘明監督)と『李藝-最初の朝鮮通信使』(2013年、乾弘明監督)、中東カタールの協力をあおいだ『サンマとカタール 〜女川つながる人々』(2016年、乾弘明監督)と、諸外国と組んだ作品も多数。本作は、『ソローキンの見た桜』(2019年、井上雅貴監督)で縁のできたロシアとの第二弾として製作されました。

『ハチとパルマの物語』は、ロシアで大ヒット中。
5月 11 日~15日にサンクトペテルブルクで開催された第29回ビバロシア映画祭のコンペティション部門でグランプリも受賞しました。
★ハチとパルマ グランプリ受賞_監督(中央)_プロデューサー(左)_配給会社の人(右).jpg

アレクサンドル・ドモガロフJr.監督(中央)_プロデューサー(左)_配給会社の人(右)

コーリャ少年も可愛いし、男優さんたちもなかなかのイケメンなのですが、ロシアの女優さんたちが芸達者で、大いに笑わせてくれます。
なによりパルマを演じたリリヤは名女優! 飛行機の音を聞きつけ、猛ダッシュする姿や、悲しげな顔、うれしそうな顔と、監督の指示通りに演じてくれる“本物の女優”だったそうです。

ハチ公といえば、確か父が渋谷駅で見たことがあると言っていたのを思い出し、聞いてみたところ、新聞に出てすぐに渋谷駅に行ってみたとのこと。3回ほど頭を撫でたことがあるそうです。新聞報道されたのは、ハチ公がもう何年も待ち続けた晩年の昭和7年から8年の頃。父は大正11年生まれなので、小学生の頃のことです。
私はかつて渋谷駅で待ち合わせるときには、「ハチ公の尻尾の後ろ」と指定していました。ただ、ハチ公のところでというと、人が多くてなかなか会えないので!
秋田犬の故郷、大館に行った時には、駅前に4匹の銅像があって、おぉ~ハチ公が4匹!とちょっと感動。駅の構内には、秋田犬の写真もたくさん飾られていました。
いつか、本作に出てくる秋田犬の里も訪れてみたいです。(咲)


2020年/日本・ロシア合作/120分/G
配給:東京テアトル、平成プロジェクト
(C)2021パルマと秋田犬製作委員会
公式サイト:https://akita-movie.com/
★2021年05月28日(金)全国順次公開




posted by sakiko at 19:02| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

たゆたえども沈まず

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監督:遠藤隆(テレビ岩手)
ナレーション:湯浅真由美

2011年3月11日。
この日、震度7の地震と津波が東北地方を襲いました。
未曾有の大災害をもたらした東日本大震災。
地元のテレビ岩手は、震災直後から被害の状況、被災者の安否、そして避難者の声をテレビ放送を通じて伝え続けてきました。
あれから10年・・・
がれきの山はなくなり、防潮堤が整備され、低い土地はかさ上げされてそこに新たな街ができました。しかし、復興は終わったわけではありません。
あの日から生活が一変した人々は、今なお、もがき、揺れ動き、大きなうねりの中に身をゆだねながらも懸命に生きています。
この映画は、津波や復興、そして防災の資料として 全国や後世に伝え遺すべき、との思いから作られました。

宮古、陸前高田、釜石、大船渡、遠野・・・
1850 時間の映像から紡いだ本作からは、大災害に直面した人たちのそれぞれの思いがあふれ出ています。
高台にあった家は無事だったのに、近隣の人を助けに行って行方不明になってしまった夫に手紙を書き続けた奥さま。数年後、ようやく死亡届を出されたという話に、肉親が津波にのまれてしまったことを信じたくない方たちが今も大勢いることに思いを馳せました。
津波で家を失った近隣の人たち38人を受け入れた釜石の旅館・宝来館の女将さんは、裏山に車椅子でも避難できる「きずなの道」を作って、今も営業を続けています。コロナ禍、経営は大丈夫でしょうか・・・
震災 5 日目に、運行可能な路線を当時無料で走らせた三陸鉄道北リアス線。2019年3月、復興した南リアス線やJR山田線一部区間と統合されて、三陸鉄道リアス線となり、4時間半の路線となりました。
10年前、中学生で、2009年に作ったビデオ「津波てんでんこ」の教えに従って高台に走った子は成長し、この復旧した三陸鉄道の運転士になっています。

「たゆたえども沈まず」というタイトルは、パリ市の紋章にラテン語で書かれている “Fluctuat nec mergitur”(揺れはするが、沈まない)から取られたもの。人は、何があっても立ち直れるということでしょうか・・・
コロナ禍の今、いつかきっと乗り越えられると心を強く持って立ち向かいたいものだと思わせられました。(咲)

sanriku.jpg
(C)2021テレビ岩手

テレビ岩手がこれまでに撮影した1850時間の記録映像の中から、選ばれた映像にはそれぞれのあのときと今が刻まれています。大切な方を亡くして時間が止まってしまった方も多いことでしょう。10年は長くて、そしてあっというまでもありました。語ることで前に進めたり、忘れないことを力にできたりもします。スタッフ欄には『山懐(やまふところ)に抱かれて』の遠藤隆監督、田中カメラマン、編集の佐藤さんのお名前が並んでいます。これらの映像を見返すと当時が蘇り、上映に適した時間に収めるのが大変だったろうと思います。一人ひとりの来し方を、縁あって撮り続けた人の想いもそっとのせられていました。みなさまの行く末に幸多きことを祈ります。(白)

☆この映画の収益金は、全額「いわての学び希望基金」に寄付されます。

◆6月12日(土)、13日(日)に開催を予定していたポレポレ東中野でのトークイベントはこの度の緊急事態宣言の延長を受け、中止となりました。

2021 年/日本/103 分/16:9/カラー/DCP/ドキュメンタリー
企画・製作:テレビ岩手
制作協力:日本テレビ放送網株式会社/株式会社宮城テレビ放送/株式会社福島中央テレビ/NNN取材団
特別協力:読売新聞社
後援:岩手県/岩手県教育委員会
公式サイト:https://www.tvi.jp/tayutaedomo/
★2021 年 5 月 29 日(土)〜東京・ポレポレ東中野にて公開
 2021 年 3 月 5 日(金)〜地元での劇場公開(岩手県内 4 館+仙台・福島)
posted by sakiko at 12:59| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ローズメイカー 奇跡のバラ   原題:La fine fleur

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監督・脚本:ピエール・ピノー
出演:カトリーヌ・フロ、メラン・オメルタ、マリー・プショー、オリヴィア・コート、ファツァー・ブヤメッド、ヴァンサン・ドゥディエンヌ

エヴは、父の遺してくれた小さなバラ園を経営する育種家。かつて、パリで開催される国際バラ新品種コンクールで、何度も優勝し、天才ローズメイカーと称されていた。だが、この8年はバラを大量生産する巨大企業ラマルゼル社に賞を奪われ、顧客も減り、バラ園は倒産寸前。ただ一人の助手のヴェラが何とか立て直そうと、職業訓練所から前科者のフレッド、なかなか定職に就けないサミール、内気な女性ナデージュを雇う。社会復帰を目指す人たち故、低賃金なのはいいが、全くの素人。手助けどころか失敗の連続。そんなある日、エヴに新種のアイディアが閃く。交配に必要な希少種の「ライオン」が、ラマルゼル社にしかないことがわかり、盗みの前科があるフレッドを頼りにラマルゼル社のバラ園に忍び込む・・・

自分らしいバラを作り出そうと奮闘するエヴと、彼女を取り巻く人たちの姿がコメディタッチで描かれた物語。バラの為なら、なりふり構わないカトリーヌ・フロ演じるエヴと、ヴァンサン・ドゥディエンヌ演じるやり手経営者ラマルゼルの対決が絶妙です。新種のために不法侵入までしていまうという、ややドタバタ喜劇の面もあるのですが、バラどころか、園芸に疎かった3人の人たちが、縁あってバラ園で働くようになり、新種のために情熱を持ったエヴをみて、それぞれの人生を見つめなおす姿も素敵に描かれています。
アルジェリア生まれのファツァー・ブヤメッド演じるサミールはフランス生まれの移民2世か3世という設定で、市民権を得ていてもフランスでなかなか定職に就けないという社会背景もさりげなく描いています。

ところで、ペルシア語でバラは「ゴルGOL」といいますが、花という単語も「GOL」。まさしく、花を代表するのがバラ。それは世界共通の認識かもしれません。次々に作り出されるバラの新種の名前をみると、作り手の思いを感じます。
ピエール・ピノー監督は、映画と同様に、花や庭園にも長年情熱を持っていて、バラを作ることがフランスのお家芸であることを知り、本作の脚本を書き始めたそうです。この企画を気に入ってくださっていたお母さまは、脚本執筆中に他界。映画は、お母さまに捧げられています。私もバラが大好きだった母を思い出しました。この映画を見せてあげたかった! (咲)


2020年/96分/G/フランス
配給:松竹
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/rosemaker/
★2021年5月28日(金)全国公開
☆各劇場の状況は劇場情報をご覧ください。
https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=rosemaker




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2021年05月22日

のさりの島

nosarinosima.jpg

監督・脚本:山本起也(やまもとたつや)
プロデューサー:小山薫堂
撮影:鈴木一博
出演:藤原季節、原知佐子、杉原亜実、 中田茉奈実、 宮本伊織、 西野光、 小倉綾乃、 水上竜士、 野呂圭介、 外波山文明 、吉澤健、 柄本明

オレオレ詐欺を働いて旅をする若い男が天草の島にやってきた。寂れた商店街で楽器店を一人営む艶子は、孫だという彼を「将太お帰り」と迎える。男は現金を手に入れたらすぐに出ていくつもりだったが、艶子の世話に甘えるのが心地良く、しばらく将太として手伝うことにした。
地元FM局のパーソナリティを務める清ら(きよら)は、昔の天草の8ミリ映像や写真を集め、商店街の映画館で上映会を企画する。将太も引き入れ、少しずつ親しくなるが、なんだかひっかかりも感じていた。

タイトルの「のさり」は、天草の言葉で「良いこともそうでないことも、天からの授かりものとして受け入れること」を言うそうです。「排除」とは真逆の緩やかな優しさを感じます。
名前が明らかにならない青年役は、このところあちこちで顔を見る藤原季節。店の小銭までさらうワルの小者が、”ばあちゃん”と暮らすうちに変わっていきます。艶子ばあちゃんは”将太”を受け入れ、何も詮索せず、押し付けず日々を過ごします。わかっているのかいないのか明確にしません。様々な役を演じた原千佐子さんの遺作となりました。
「まやかしでも、人には必要な時があっど(ある)」という台詞がありました。”艶子ばあちゃん”にも”将太"にも必要な時だったのでしょう。同じような設定の作品を思い出しました。市原悦子&林遣都の『しゃぼん玉』(2016/東伸児)は、宮崎県の山村に逃げてきた犯罪者の青年と老女の物語。やはり同居するうちに青年が土地の若者と知り合い、ばあちゃんの身体を気遣うようになり、これまでの生き方を顧みて再生する話でした。本人の意思と周りの支えがあれば、人は変われるはず。人でいっぱいの都会では他人に構わないことが多いので、紛れることはできても、安らぐ場所は見つけにくい気がします。二つの作品のように海や山に抱かれて暮らす土地は、根無し草も落ち着きやすいのかもしれません。ブルースハープの音色が哀切です。(白)


オレオレ詐欺を目論む青年と、艶子ばあちゃんの不思議な関係もさりながら、背景に描かれている天草に興味津々でした。賑わっていた頃の映像や写真を集めて皆で見ようという若者たちの企画。網走番外地シリーズのポスターが並ぶ昭和の香り漂う映画館(高倉健にも愛された本渡第一映劇で撮影)に集った町の人たちの前に映し出されるのは、昭和39年(1964年)10月の東京オリンピックの終わった夜に起こった本渡中央商店街大火の映像。エキストラで参加していた方の中には、実際に大火を経験した人もいるのではないでしょうか。
柄本明さんが演じた能面師・碓井は、天草に実在する碓井弘幸さんがモデル。映画にも出てくる、まるで生きている人のようなユーモア溢れるかかしも、実際に碓井弘幸さんが宮地岳地区の人たちに作り方を指導しているもの。
天草というと隠れキリシタン(潜伏キリシタン)の地というイメージでしたが、それだけでない魅力がいっぱい。九州には何度も行きながら、未踏の地の天草に、いつか宮地岳かかし祭りの時期に行ってみたくなりました。(咲)


2020年/日本/カラー/ビスタ/129分
配給:北白川派
(c)北白川派
https://www.nosarinoshima.com
★2021年5月29日(土)より、ユーロスペースほか全国順次ロードショー
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アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン(原題:Amazing Grace)

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監督・撮影:シドニー・ポラック『愛と哀しみの果て
映画化プロデューサー:アラン・エリオット
出演:アレサ・フランクリン、ジェームズ・クリーブランド、コーネル・デュプリー(ギター)、チャック・レイニー(ベース)、ケニー・ルーパー(オルガン)、パンチョ・モラレス(パーカッション)、バーナード・パーディー(ドラム)、アレキサンダー・ハミルトン(聖歌隊指揮)他

「ソウルの女王」アレサ・フランクリン(1942-2018)のドキュメンタリー。1972年1月13、14日の2日間、ロサンゼルスのニュー・テンプル・ミッショナリー・バプティスト教会でのライブを収録したライブ・アルバム「AMAZING GRACE」は、300万枚以上の販売を記録し大ヒット。史上最高のゴスペル・アルバムとして今も尚輝き続けている。そのアルバムの映像が半世紀近く経って完成、日本で初上映となった。

「幻のフィルム」が公開できなかったのは、テイクの始まりと終わりの「カチンコ」が入っていなくて(なぜそんなことに?)、映像と音声をシンクロさせられなかったからなんだそうです。お蔵入りになっている間に技術が進んで、その修正ができるようになったんだとか。公開できてほんとによかった。
アルバムでは、アレサ・フランクリンの素晴らしい歌唱を聞くことができます。この映像には彼女のバンドのメンバーやコーラス隊、聴き入る観客が映っています。長い時を経てしまいましたが、そのときに飛び、彼女や観客と一緒に格別な体験をしましょう。(白)


私はアレサの名前も知らなかったほど疎いのですが、妹はジャズやブルースなど黒人音楽が大好きで、30年程前、3か月のアメリカ滞在中に黒人の集う教会でゴスペルを体感しています。特に、メンフィスからニューオーリンズにかけてドライブした時には、各町の教会を訪れ、どこでも大歓迎され一緒にゴスペルに合わせて踊って、ものすごく楽しかったそうです。
本作は、アレサ・フランクリンが子どもの頃から歌って慣れ親しんでいた歌の数々を収録した時の映像。歌詞も字幕でちゃんと見ることができて、なるほど、こうしてアメリカの黒人の人たちはキリスト教を自分たちの信仰として取り入れていったのだとわかりました。例えば、「Mary Don’t You Weep(マリアよ、泣くなかれ)」は、モーゼの出エジプトの話。歌で自然に旧約聖書も耳に馴染んでいくのですね。映画の最後には、司会の師の「天上の人は決して老いることはない。父や母にも会える」「信仰を持っていることが嬉しい」と結ばれます。1970年代といえば、黒人の公民権運動が盛んだったころ。白人に蹂躙され、差別を受けてきた黒人の人たちの心の拠り所になっていたのがキリスト教というのが、なんともなぁ~というのが信仰を持たない私の実感。でも、アレサ・フランクリンの魂が籠った熱唱を聴くと、酔いしれて信じてしまうのもわかるような気がします。 そして、1970年代という時代、ミニスカートが流行ったことも懐かしく思い出した映画でした。(咲)


「アメイジング・グレイス」は私の大好きな曲です。そしていろいろな人が歌っている曲でもあり、たくさんこの曲を聴いてきました。
この曲はアカペラで歌われるのが一番好き。でも、最後のほうたくさんの人が輪唱するように歌われるのも好き。とにかくこの歌を聴くと胸が打ち震えます。英語の歌詞は知らないできましたが、キリスト教徒でなくても、何か神様の力のようなものを感じます。
そして、この教会での50年近くも前のアレサ・フランクリンの歌の収録風景を感慨深く見ました。彼女の歌は若い頃、ずいぶんラジオから流れているのを聴きましたが、今、聴いても素晴らしい歌声です。教会での収録なんていうのが当時あったんだと驚きでした。確かに教会での音の反響というのは独特のものがあると思います。そして信心がなくてもおごそかな気持ちになります。でもおごそかさだけでなく、やはりソウルはパワフルなシャウトが真骨頂。彼女の歌の魅力を充分に伝えていました。けっして古くはないのです。
司会とピアノを弾いていたのは、「ゴスペル音楽の王」と言われたジェームズ・クリーブランド牧師。それにしてもこんな古い映像を再現できる技術があるとはびっくり。我が家の子供の頃に撮った8ミリの映像もなんかデジタル化できないかなと思わず思ってしまった(暁)。


2018年/アメリカ/カラー/90分
配給:ギャガGAGA★
2018(C)Amazing Grace Movie LLC
https://gaga.ne.jp/amazing-grace/
★2021年5月28日(金)よりBunkamuraル・シネマほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 12:32| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

HOKUSAI

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監督:橋本一
脚本:河原れん
撮影:角田真一
衣装:宮本まさ江
美術:相馬直樹
装飾:鈴村髙正
出演:柳楽優弥(葛飾北斎/青年期)、田中泯(葛飾北斎/老年期)、阿部寛(蔦屋重三郎)、永山瑛太(柳亭種彦)、玉木宏(喜多川歌麿)、瀧本美織(コト)、津田寛治(永井五右衛門)、青木崇高(高井鴻山)

幕府の締め付けが厳しくなっていた江戸。絵に打ち込む北斎は版元の蔦屋重三郎に見出される。食うや食わずの毎日を送っていた北斎は喜ぶが、なかなか銭にはつながらない。大人気の歌麿には「お前の絵には色気がない」と言われ、めきめきと腕をあげる若い写楽にも追い越される。自分は何を描きたいのか煩悶する北斎は、大自然の中でようやく自分らしい絵をつかんだ気がした。画業にまい進する北斎は、戯作者の柳亭種彦や滝沢馬琴と出会い、意気投合し友情を結んでいく。

早くからあの「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏波」の横断幕を目にしていたので、観られる日を楽しみに待っていました。キャストの豪華な布陣、若き北斎や絵師たちが次々と描き上げる様子に興味深々で見とれました。版元の蔦屋に捕り方が入ったときに、錦絵が散々に踏み荒らされ、果ては店の前に積まれて燃やされてしまいます。美術さんがどれだけ手をかけて用意したことか、ああ、もったいない。いや、手描きに見せたコピーだったかも。余計な想像をめぐらしてしまうほど、たくさんの絵が登場します。歌麿が入り浸る花魁の部屋の襖絵や調度品に目が吸い寄せられます。主役級の多くのキャストを飾る衣裳にもぜひ注目を。
青年期の柳楽優弥は負けず嫌いな北斎を生き生きと、田中泯は絵を描くことだけに打ち込む風狂な老年期を演じます。90歳で亡くなるまで数万点もの絵を残し、西欧の画家たちに大きな影響を与えた画業は今もあせることがありません。絵に没頭するあまり、逸話も多かったようですが、おかげで今も楽しむことができます。映画はぜひそのきっかけに。(白)


葛飾北斎の名前は多くの人が知っているでしょう。江戸時代後期の浮世絵師です。たとえ知らなくても、赤い富士山や波が大きくうねる向こうに富士山が見える浮世絵なら見たことがあるのでは。アメリカのLIFE誌が「この1000年で最も偉大な業績を残した世界の100人」という特集で選出した唯一の日本人。本作はその葛飾北斎の青年期(柳楽優弥)と晩年(田中泯)を描いています。
自分の絵のスタイルを見出せていなかった北斎をプロの浮世絵師に育て上げたのが版元・蔦屋重三郎。喜多川歌麿や東洲斎写楽もプロデュースしていましたが、絵師のタイプによって接し方が違う。子育てにも通じるものがありそう。なかなか一皮むけない北斎を歯がゆそうに見つめる蔦屋重三郎を阿部寛が渋く演じています。今、話題になっているTBSの日曜日のドラマ「ドラゴン桜」の桜木建二に通じるところがあるような気がします。阿部寛、いい役者になりましたね。
晩年の北斎と大きく関わるのが柳亭種彦。武士の身分を隠して戯作を書いていましたが、隠し通せなくなったときに悲劇が起こります。悩みながらも強い意志を貫き通した生き様を永山瑛太が熱演。印象に残ります。
タイトルの『HOKUSAI』は葛飾北斎のことだけでなく、彼に深く関わった人も含めたHOKUSAIという文化そのものを意味しているのかもしれません。(堀)


去年、試写状をいただいた時にも、東京国際映画祭でも観ることができずにいたのですが、パソコンを買いかえ、やっとオンライン試写で観ることができました。でも、我が家のは小さなノート型パソコンです。公開されたら大きな画面でまた観ます。
北斎の浮世絵はこれまでたくさん見てきたし、子供の頃は永谷園のお茶漬け海苔に入っている北斎のカード集めもしました。「富獄三十六景」にちなんだものでしたが、36種以上あったような気がしました。それが、今回36景だけでなくそれ以上ほんとはあると出てきて、何十年もたって納得しました(笑)。
北斎の浮世絵はたくさん見てきましたが、これまで北斎の生涯や考え方、生き方、性格などのことは、ほとんど知らずに来ました。この作品を観て、あの時代の絵師たちの仕事、芸術に対する迫害についても知ることができました。そして北斎が認められるようになったのが70代を越えてからというのにびっくりしました。
小布施の栗が好きで30年以上前から何度も通っているのですが、初めて小布施に行った時に北斎館にも行ったし、その後、天井画を見に行ったこともあるし、祭り屋台の北斎の絵も見たし、けっこう小布施には北斎ゆかりの場所があります。この映画にも出てきた高井鴻山は江戸まで修行に来ていた弟子だったのですね。そして故郷小布施に戻って、豪商になった鴻山が晩年の北斎を支えたということだったということがよくわかりました。
小布施での北斎ゆかりの地
https://hokusai-kan.com/obuse-and-hokusai/
そんなこともあり北斎の仕事を見てきたつもりだったのですが、こんなに激しい生き方をしてきた人だったとは、というのが映画を観た感想です。東京の北斎ゆかりの地には行ったことがないので、これを機に行ってみたいと思います。でもこの映画が公開されたらしばらくは混んでいるでしょうね(暁)。



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TIFF2020 宮崎撮影

左から 橋本一監督、柳楽優弥さん、田中泯さん、河原れんさん(脚本・北斎の娘お栄役で出演)


2020年/日本/カラー/シネスコ/129分
配給:S・D・P
(C)2020 HOKUSAI MOVIE
http://www.hokusai2020.com/index_ja.html
★2021年5月28日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 11:18| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月21日

お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方

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監督・脚本:香月秀之
主題歌:財津和夫
挿入歌:チューリップ
撮影:松尾誠
照明:小野村拡洋
美術:西沢和幸
録音:深田晃
出演:水野勝 剛力彩芽 松下由樹 高畑淳子 橋爪功

大原真一(橋爪功)と千賀子(高畑淳子)は、来年には結婚50年を迎える熟年夫婦。定年退職して自宅で趣味のプラモデル作りに熱中している真一は典型的亭主関白で、妻の千賀子とは事あるごとにすれ違い、夫婦喧嘩ばかりの日々を送っている。千賀子も頭の固い夫のことは相手にせず、趣味の健康コーラスに出掛け、練習後に仲間とお茶をしながらストレス発散していた。同居する独身の娘・亜矢(剛力彩芽)はどちらかというと千賀子の味方。真一のイライラは募るばかりで、友人の麻雀仲間たちと、妻に対する愚痴を言い合っている。
そんな折、娘の亜矢は自分が営むキッチンカーの客で、葬儀社に転職したばかりの菅野(水野勝)と出会う。菅野から終活フェアに誘われた亜矢は母親の千賀子に行くことを勧める。そこで菅野の上司でもあり一級葬祭ディレクターでもある桃井(松下由樹)から最新の終活情報を得た千賀子は前向きに今後のことを考えようとするが、真一は縁起でもないと嫌がり、新たな危機が生まれる。 亜矢や桃井を巻き込んだ、大原夫婦の“お終活”の行く末は!?

終活という言葉を大分前から耳にするようになってきました。必要なことだとは思うものの、死ぬ準備って何だか楽しくないと思って見始めたら、実は熟年を活き活きと過ごすコツを伝授してくれる作品だったのです。いい意味で予想を大きく裏切られました。
劇中に何度か繰り広げられる熟年夫婦の他愛もない夫婦喧嘩はどこの家庭でもある話。橋爪功と高畑淳子がコミカルに演じているのでつい笑ってしまいます。「妻のトリセツ」「夫のトリセツ」で大ベストセラー作家となった黒川伊保子の「定年夫婦のトリセツ」(SB新書)が参考図書として使用されているとのこと。夫たちの愚痴話のときに大和田伸也が演じた大学教授が「女は共感を求め、男は解決を求める」と男女の違いを解説していましたが、きっとこの部分がそうなのでしょう。大きく頷く方が多いのではないかと思います。夫婦で見に行き、会話のきっかけにすることで夫婦のあり方にいい変化が生まれるかもしれません。
そうそう千賀子が入っているコーラスグループの練習風景が何度か登場しますが、歌っているのはチューリップの名曲「虹とスニーカーの頃」。熟年世代にはうれしい選曲。思わず一緒に口ずさんでしまいたくなること請け合いです。(堀)


2021年/日本/カラー/113分
配給:イオンエンターテイメント
(C)2021『お終活』製作委員会 
公式サイト:https://oshu-katsu.com/
★2021年5月21日全国公開
posted by ほりきみき at 00:00| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月16日

ベルリン・アレクサンダープラッツ  原題:Berlin Alexanderplatz 

berlin alexander plats.jpg

監督:ブルハン・クルバニ  
脚本:マーティン・ベーンケ、ブルハン・クルバニ  
原作:アルフレート・デーブリーン著「ベルリン・アレクサンダー広場」(1920年)
出演:ウェルケット・ブンゲ、イェラ・ハーゼ、アルブレヒト・シュッヘ、アナベル・マンデン、ヨアヒム・クロルほか

西アフリカ・ギニアビサウ出身のフランシス(ウェルケット・ブンゲ)は、国を逃れ、難民として海を渡り、命からがらドイツにたどり着く。地底で不法に重労働に就くフランシスは、やがて麻薬売人のラインホルト(アルブレヒト・シュッヘ)のもとで働くようになる。ラインホルトのボスのプムスからは、ゴリラ呼ばわりされる。ラインホルトから荷積みの手伝いを頼まれるが、宝石店強盗だった。拒んだことから、車から突き落とされ、片腕を失う。以前クラブで知り合ったナイジェリア女性のエヴァがドイツ女性ミーツェにフランシスを看るように手配してくれて、やがてフランシスとミーツェは恋仲になり、子どもを宿す。エヴァのクラブでの仮装パーティの夜、身重のミーツェは連れていけないとフランシスは一人で出かける。ミーツェはキティの名で、アントレという男と連絡を取り合っていたが、フランシスの留守に初めてアントレと会う。アントレは実はラインホルトの別名だった。そして、その夜、悲劇が起こる・・・

「善人になりたい」と願うフランシスですが、不法滞在のドイツで、どんどん悪の世界に巻き込まれていきます。最初に働いていた地下の作業場で、同僚が負傷し救急車を呼んだことから、不法就労がばれて働けなくなります。ちなみに、この時に負傷した同僚がマスードという男性で、恐らくクルバニ監督の故国であるアフガニスタンからの難民だと思います。
働き場所を無くし、不法移民を食い物にするラインホルトの甘い誘いに乗ってしまうフランシス。最初は、売人がたむろする公園でビサウ料理のマンカラを売っていたのですが、だんだん悪の世界に引きずり込まれます。それでもなお、善人になりたいともがくフランシス・・・

原作は、1920年代に出版されたアルフレート・デーブリーンによる現代ドイツ文学の金字塔「ベルリン・アレクサンダー広場」。アフガニスタン人難民の息子として、1980年にドイツで生まれたブルハン・クルバニ監督は、独自の解釈で映画化。原作の主人公は、下層労働者でしたが、それをアフリカからの難民に設定。時代も現代にして、貧困・人種・難民の問題を盛り込んだ深みのある作品に仕上げています。(咲)


スタイリッシュで斬新なオープニングは見る者の不安を煽るが、気になって目が離せなくなる。恋人の命を救えなかったことを悔やみ、いい人間になろうと誓う男が犯罪社会へと滑り落ちていく。原作のフランツは第一次大戦を経験し、映画のフランシスは難民としてドイツに辿りついた。時代と設定を変えているが、共通して言えることはどちらもPTSDに苦しんでいるところ。善でありたいと思いつつ、ラインホルトに魅力を感じてしまい、囚われてしまう。何度も立ち止まる機会はあったはずだ。いや、彼は彼なりに踏ん張って、自分の正義を貫こうとしたのだが、どこかで何かを間違えて、いちばん大事なものを喪ってしまった。そんなフランシスはスクリーンの向こう側の人間ではない。立場や状況は違うけれど、私たちもフランシス的な部分を持っているのではないだろうか。3時間という長尺にもかかわらず、ラストに希望を感じて心地よい余韻が残る。(堀)

<ブルハン・クルバニ監督 コメント>
原作の「ベルリン・アレクサンダー広場」を読んで僕は育ちました。ベルリンに引っ越したとき、近くの公園には金持ちも黒人もいて、ただ麻薬のコミュニティは黒人の難民がほとんどでした。格差を目の当たりにし、僕は彼らに焦点を当てた物語を作りたいと考え、頭の中で難民の物語とフランツ・ビーバーコップ(「ベルリン・アレクサンダー広場」の主人公)の物語が重なりました。自慢のチームと役者たちが作った、旅をするような映画です。本作はドイツ人社会と難民の話で、そこには闇が存在する。しかし結末には希望の見える話になっています。楽しんでください。

2020年/ドイツ・オランダ/ドイツ語・英語/183分  
配給:STAR CHANNEL MOVIES  
公式サイト:https://star-ch.jp/starchannel-movies/detail_048.php
★2021年5月20日(木)よりMIRAIL(ミレール)、Amazon Prime Video、U-NEXTにてオンライン上映

☆「ドイツ映画祭 HORIZONTE 2021」上映作品
(5月開催予定が11月に延期されました)
posted by sakiko at 17:21| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

やすらぎの森  原題:Il Pleuvait des Oiseaux 英題:And the Birds Rained Down

5月21日(金)、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
劇場情報 https://theaterlist.jp/?dir=yasuragi
●最終版『やすらぎの森』ポスター_R_R.jpg
© 2019 - les films insiders inc. - une filiale des films OUTSIDERS inc.

監督・脚本:ルイーズ・アルシャンボー
原作:ジョスリーヌ・ソシエ
撮影:マチュー・ラベルディエール
編集:リチャード・コモー
出演
ジェルトルード/マリー・デネージュ役:アンドレ・ラシャペル
チャーリー:ジルベール・シコット
トム:レミー・ジラール
テッド・ボイチョク:ケネス・ウェルシュ
ラフ(ラファエル):エブ・ランドリー
スティーヴ:エリック・ロビドゥー
ジュヌヴィエーヴ:ルイーズ・ポルタル 

ケベックの森から届いた人生賛歌!

カナダ・ケベック州の人里離れた深いにある湖のほとりにたたずむ小屋で、3人の高齢の男性たちが愛犬たちと一緒に暮らしていた。歩んできた人生、それぞれの理由で社会に背を向け、人里を離れ森の中で暮らしを満喫していた。そんな彼ら世捨て人たちの前に、思いがけなく女性来訪者が現れる。その80歳の女性ジェルトルードは、少女時代に父の誤解により、不当な措置によって精神科療養所に入れられ、60年以上も外界と隔絶した生活を強いられていた。甥っ子の判断で療養所には戻さず、世捨て人たちの仲間に。彼らも最初は戸惑ったけど、だんだんに受け入れられていった。ジェルトルードはマリー・デネージュという名前で新たな人生を踏み出し、森の中の生活に慣れ、澄みきった空気の中で活力を取り戻していった。そして、それまで得られなかった「愛」を得ていくのだが、そんな温かな森の生活を揺るがす緊急事態が巻き起こり、彼らは重大な決断を迫られていく。
森での新しい出逢いと湖畔での穏やかな共同生活。80代の男女を主人公に、人生の晩年をいかに生きるかを深い森の中、詩情豊かに描く。愛と再生の物語。

『やすらぎの森』というタイトルを見て、ニヤっとした人はきっと、倉本聰脚本の「やすらぎの郷(さと)」「やすらぎの刻(とき)~道」を見ていた人でしょう。そういう私も、ここ数年、このTVドラマを毎回見ていた(録画したものだけど)。「やすらぎの郷」というのは、TV業界で活躍した人たち(俳優や脚本家、裏方の人たち)だけが入居できる老人ホームのような場所。それぞれ、この『やすらぎの森』にも出てくるコテージのような一軒家で暮らしているので、「シニア村」ともいうべき感じだった。石坂浩二、浅丘ルリ子、有馬稲子、加賀まりこ、草刈民代、五月みどり、常盤貴子、名高達男、野際陽子、藤竜也、風吹ジュン、松岡茉優、ミッキー・カーチス、八千草薫、山本圭など (※役者名50音順)そうそうたる俳優たちが出演していた。「死との向き合い」「愛情」「絆」「友情」「日本がたどってきた道・歴史」など多彩なものを盛り込み、「社会に対する批判と提言」が盛り込まれているように感じた。
これはまさに、『やすらぎの森』にも通じるもので、大いに共鳴できるものだった。詳しくは出てこなかったけど、ここに出てきた男たちも社会からドロップアウトし森の中で暮らすようになったのだろうし、ジェルトルードにいたっては、社会に出ることもなく精神科療養所に入れられ、社会とのつながりもたたれていた。
小学校の頃「ロビンソンクルーソー漂流記」を読んで、無人島や森の中で生活をすることに憧れた。そして成長してからは、東京ではなく田舎で暮らしたいと、30代後半に信州白馬で5年くらい働いていたことがある。その経験は大変だったけど幸せな体験だった。
森の生活の解放感を感受するのは若者たちだけでなく、老人たちにもあっていい。電気もガスも水道もない生活は不便だけど、解放感はなにものにもかえがたい(暁)。


毎日おうち時間を過ごして「どこかへ行きたい」と思っている方、カナダの森を見るのはいかがでしょう。森で暮らすお年寄りの静かな映画です。いろんな体験や思いを胸に齢を重ねてきた人たちが、自然の中で最後の時間を過ごしています。カナダの名優と言われるベテラン俳優たちが演じ、ジェルトルード役のアンドレ・ラシャペルはこれが遺作となりました(2019年11月88歳で逝去)。
森の生活に加わったジェルトルードは、名前をマリーと変えて新しい人生を始めます。マリーが取り戻した人生には友人も愛する人もいます。シニアのラブシーンは映画の中でもあまり描かれません。美しくて幸せなひとときがそこにありました。
劇中で「時は来る♪時は来る♪」と歌われます。こうしている間にも一日一日過ぎていき、人は老いていきます。明日目覚めないかもしれません。1970年生まれのルイーズ・アルシャンボー監督は良い原作と名優を得て、美しい自然と時間を切り取りました。(白)


『やすらぎの森』公式HP 
原作:「Il Pleuvait des Oiseaux」ジョスリーヌ・ソシエ著
2019/カナダ/フランス語/スコープサイズ/カラー/5.1ch/126分/映倫:G
日本語字幕:手束紀子 
後援:カナダ大使館、ケベック州政府在日事務所 
配給・宣伝:エスパース・サロウ
公式サイト https://yasuragi.espace-sarou.com/index.html
posted by akemi at 13:33| Comment(0) | カナダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ペトルーニャに祝福を 原題: Gospod postoi, imeto i’ e Petrunija 英題:God exists,her neme is Petrunya

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監督:テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ
脚本:エルマ・タタラギッチ、テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ
出演:ゾリツァ・ヌシェヴァ、ラビナ・ミテフスカ

北マケドニアの小さな街シュティプ。32歳のペトルーニャは大学を出たのに仕事に就けず、ウェイトレスのバイトでしのいでいる。母がお膳立てした縫製工場の面接に渋々行くが、男性の担当者から身体を触られた上に、容姿をけなされる。散々な面接の帰り道、ぺトルーニャはキリストの受洗を祝う「神現祭」の群衆に巻き込まれる。寒い中、上半身裸の男たち。司祭が川に十字架を投げ込み、それを手に入れた男は、1年間幸福に過ごせると信じられている祭。ぺトルーニャの目の前で十字架が投げ込まれ、思わず川に飛び込み十字架を手に入れる。「女が取るのは禁止だ!」と男たちから猛反発を受け、教会や警察を巻き込んでの大騒動になる・・・

日本でも神事や相撲の土俵など、女人禁制とされてきたものが多々あります。本作では、神現祭の取材に来ていたテレビ局の女性ジャーナリスト、スラビツァ(演じているのは、監督の妹ラビナ・ミテフスカ)が、女性に十字架を取られたことは、なぜ問題なのかと皆に問います。司祭は「子供に男だけがとれると教えている」と答えます。要は、慣例。納得できる答えではありません。ぺトルーニャは、十字架が欲しかったわけではなく、女に禁じられていることに挑戦したかったのだと感じます。何をしようと娘のことを信じている父親の存在も、ぺトルーニャの勇気の源泉だと思いました。
petoruhya kantoku Photo (c) Ivan Blazhev.jpg
Photo (c) Ivan Blazhev
テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ監督は、1974年旧ユーゴスラビア(現北マケドニア)スコピエ生まれ。芸術一家に生まれ、子役としてキャリアをスタート。絵画とグラフィックデザインを学んだ後、ニューヨーク大学のティッシュ芸術学部で映画の修士号を取得。本作は、2014年に、北マケドニアのシュティプで十字架を掴み取った若い女性が住民から「狂っている」「問題を抱えている」という烙印を押された事件をもとに完成させました。伝統儀式「神現祭」は、東欧の東方正教を信仰する国々で毎年1月19日に行われていて、男性だけが参加を許されてきました。2018年には、騒動のあったシュティプの町で女性も参加するようになったとのこと。
「幸せになる権利は私にもあるはず。なのに、なぜ?」というぺトルーニャの思いは、女性だけでなく、男女問わず、すべての人のもの。大学で学んだ知識を生かす仕事に就けない人がいるのも、多くの国の現実でしょう。そして、仕事についていたとしても、本作に登場するテレビ局のカメラマンは安月給故に、賭けサッカーに夢中です。同じ安月給のスラビツァは、上司からほかの話題に注力しろと言われても、ぺトルーニャのことを通じて、人権について報道しようと頑張ります。
さて、最終的に十字架はぺトルーニャのものになったのかどうか・・・ 結末はぜひ劇場で!(咲)



2019年 第69回ベルリン国際映画祭 エキュメニカル審査員賞&ギルド映画賞W受賞

2019年/北マケドニア・フランス・ベルギー・クロアチア・スロヴェニア合作/マケドニア語/シネスコ/5.1ch/100分
日本語字幕:岩辺いずみ 
後援:駐日北マケドニア共和国大使館 
提供:ニューセレクト 
配給:アルバトロス・フィルム
© Pyramide International
公式サイト:https://petrunya-movie.com/
★2021年5月22日(土)より岩波ホールほか全国順次公開

*当初、2020年4月25日(土)公開予定でした。緊急事態宣言で延期され、やっと公開です。  


posted by sakiko at 04:06| Comment(0) | 北マケドニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月15日

藍に響け

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監督:奥秋泰男
原作:すたひろ「和太鼓♰ガールズ」(双葉社刊)
脚本:加藤綾子
出演:紺野彩夏(松沢環)、久保田紗友(新島マリア)、永瀬莉子(江森寿)、板垣瑞生(江森司)、小西桜子(佐伯美鈴)、山之内すず、 茅島みずき、 吉田凜音、川津明日香、山本亜依、カトウシンスケ、濱田マリ、須藤理彩、筒井真理子、吹越満

ミッション系のお嬢様学校に通っている松沢環は、父の会社が倒産して生活が変わってしまったことを誰にも言えないでいる。好きだったバレエも続けられなくなった。富裕層の子女が集まるこの学校で、以前と同じように友達と付き合うには、バイトをするほかなかった。鬱屈した思いを抱える環は太鼓の音に気付く。吸い寄せられて覗くと、クラスメートの新島マリアが一人で和太鼓の練習をしていた。
マリアは事故で声帯を損傷して、まだ発声することができない。言葉の代わりのように力強い音を響かせるマリアは、孤独な影を持っている環を和太鼓部に誘う。

少女漫画が原作かと思っていたら、男性コミック誌に連載されたものでした。本音を話すことができない環と、事故で声が出なくなったマリア。話したいのに話せない二人と、太鼓にかける女子高生たちの青春が描かれます。最初に環が太鼓に気づくのは、水盤の水面に見えたさざ波でした。練習場所から離れているのに、空気や水面を震わせるんですね。
環が興味をひかれてから入部するまでがちょっと長いです。辛抱して。厳しい指導に腰が引けそうになりますが、ここも辛抱して。上達は辛さを越えたところにあるようです。
何かを目指している人には特に響くだろう台詞がいくつもありました。太鼓部キャストが吹替なしで挑んだ演奏シーンは圧巻の一言。マメや筋肉痛に悩まされたはず。その甲斐あって彼女たちの特技に「太鼓」と入れてもいいんじゃないかと思う出来栄えでした。
気になる若手注目株・板垣瑞生が寿(ことほ)の兄で太鼓の先輩役。太鼓部が一緒に出かけて観る”御陣乗太鼓(ごじんじょだいこ)”は石川県輪島に伝わる無形文化財。上杉謙信の時代から始まった幽玄・勇壮な太鼓です。こちらも必見。(白)


2021年/日本/カラー/ビスタ/117分
配給・宣伝:アンプラグド
(C)すたひろ/双葉社 (C)2021「藍に響け」製作委員会
https://ainihibike.com/
★2021年5月21日(金)より新宿武蔵野館、渋谷ホワイトシネクイント、池袋シネマ・ロサ他全国順次公開
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茜色に焼かれる

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監督・脚本・編集:石井裕也
撮影:鎌苅洋一
音楽:河野丈洋
主題歌:GOING UNDER GROUND「ハートビート」
出演:尾野真千子(田中良子)、和田庵(田中純平)、片山友希(ケイ)、大塚ヒロタ(熊木直樹)、芹澤興人(滝)、笠原秀幸(斉木)、泉澤祐希 (教師)、前田勝(ケイの彼氏)、コージ・トクダ(店長)、前田亜季(幸子)、鶴見辰吾(有島耕)、嶋田久作(成原)、オダギリジョー(田中陽一)、永瀬正敏(中村)

田中良子の夫・陽一は7年前事故死した。自転車で横断歩道を渡っていて、85歳の元官僚の車にはねられたのだ。夫を死なせた老人は認知症だったからと逮捕すらされなかった。一人息子の純平と残された良子は謝罪しなかった加害者から賠償金も受け取らず、必死に働いて息子を育ててきた。義父の入っている老人ホームの料金も家計を圧迫する。頼みのカフェはコロナ禍でつぶれ、スーパーのパートの他、息子には内緒でピンクサロンでも働く。同僚のケイは糖尿病でインスリン注射が欠かせず、愚痴をこぼしながらこの仕事をしている。ケイが解せないのは、陽一がほかの女性との間に作った子どもの養育費まで良子が払い続けていることだ。

息子や友達に良子がよく言うのが「まあ頑張りましょう」。息子の純平は良子がピンサロで働いていることで、級友のいじめに遭っています。母親の頑張りを見て育った彼は、決してそのことを口に出しません。良子が加害者の葬式に出席しようとして門前払いをくったときだけは、なんで?と尋ねます。
観ていて「なんで?」と私も思いました。葬式じゃなくて。「夫は戻ってこないけど」と賠償金を受け取り、大事に使えば風俗で働かなくても純平と食べて行けるのに。それをしないことが良子の「背骨」であり、夫の娘への養育費も良子なりの「筋を通す」ことなんだろうと。これは石井監督の「母親」への憧憬と愛情ですよね。凛々しくてまっすぐで、「頑張りましょう」と言ってくれる人=世の母親へのエール。
尾野真千子さん、今回もしっかりした女性役です。面白いのは良子が劇団出身で「芝居が真実」というところ。問題山積みでせち辛い世間を舞台に、日々演じることで生きてきたことが「なんで」の答えになります。
父親はオダギリジョーさん。生活力はなさそうなのに、浮気して子どもまで残して、ヘラヘラしたまんまいなくなっています。『アジアの天使』(7月2日公開)でもヘラヘラ役でしたが、彼が演じるとどうも憎めなくなってズルイ~。その分永瀬さんがお助け神のごとく現れて男気を見せました。(白)


「母ちゃんは、時々意味わからない、難しい人だ」と息子がつぶやくように、田中良子の行動は一般常識では考えられないもの。交通事故の賠償金を受け取っていれば、風俗で働く必要もないのにと思うのですが、尾野真千子さんが演じたことによって、田中良子の生き方に納得させられてしまいます。
コロナ禍で製作された本作。良子が働くスーパーの花売り場の担当者は、上司からコロナでバイトがなくなった取引先の娘の為に、一人解雇しろと言われ、良子が売れ残った花を持ち帰ったのは規則違反、店の前で電話したのも規則違反と難癖をつけて解雇を告げます。「解雇は2か月前に伝えるのが規則では?」と返す良子。理不尽なことには黙っていられないのです。
このような母親に育てられた純平くん。これまた和田庵くんが、好青年を体現しています。良子の同僚のケイが、もう少し年がいっていれば本気で惚れてしまうと言うほど! 闘病しながら風俗で務めるケイを演じた片山友希さんも好演で、なんとも切なかったです。(咲)

夫役のオダギリジョーが事故死してしまう、池袋で起きた元官僚の過失運転事故をモチーフにしたエピソードから始まり、新型コロナの影響で経営していた喫茶店の倒産、賃金格差の問題、高齢者介護(義父のための施設費負担)、風俗での状況、DV被害、パートの不安定雇用と理不尽な雇止め、学校での子どものいじめ、かつての同級生との不倫などなど、今の社会で問題、話題になっていることが、これでもかこれでもかと出てきて、生きづらい世の中がリアルに描かれ、その対応や表現に前半はイライラしながら観ていた。
「謝まるのが先でしょ。お金で解決すればいいという問題ではない」という気持ちもわかるけど、交通事故の賠償金を受け取らず風俗で働くという設定に「なんで?」と思ったし、義父の施設費を毎月16万円負担、夫が外に作った子供の生活費を7万も負担しているというのはもっとわからない。なぜ自分ひとりで背負っているのか。あまりにも理不尽。そして、最後に爆発というのも、そりゃあそうでしょと思ってしまう。でもその矛先が同級生? なんか違うんじゃないの?と思ってしまった。弱者に寄り添った映画なのかもしれないけど、その解決や対応の方法、描き方、これでいいの?という気分。こんな理不尽だらけの世の中でも 必死に生きる女たちのシスターフッドが描かれていて、そこは悪くはなかったんだけど、なんかひっかかってしまった。
石井監督の作品、このところいくつか観ているけど、『生きちゃった』にしても『アジアの天使』にしても、なんだかすっきり、はっきりしない人が出てきてイライラしてしまい、なんか共感できない人物像が多いと感じてしまう。今の社会の理不尽さに何か言いたいのはわかるのだけど。観終わった後、気持ちよく帰れる映画もぜひよろしくお願いします(暁)。


2021年/日本/カラー/シネスコ/144分/R15+
配給:フィルムランド、朝日新聞社、スターサンズ
(C)2021「茜色に焼かれる」フィルムパートナーズ
https://akaneiro-movie.com/
★2021年5月21日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開




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地獄の花園

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監督:関和亮
脚本:バカリズム
撮影:奥平功
主題歌:LiSA「Another Great Day!!」
出演:永野芽郁(直子)、広瀬アリス(蘭)、菜々緒(安藤朱里)、川栄李奈(佐竹紫織)、大島美幸(神田悦子)、勝村政信(妙子)、松尾諭(麻里)、丸山智己(早苗)、遠藤憲一(赤城涼子)、小池栄子(鬼丸麗奈)、ファーストサマーウイカ(進藤楓)、室井滋(七瀬小夜)

一見華やかなOLの世界。しかしその裏では地獄のような派閥争いが繰り広げられていた。直子の会社には営業部の佐竹一派、開発部の安藤一派、製造部の神田一派の3つの派閥がある。3大勢力を掌握したのは悪魔の朱里率いる安藤一派だった。
トキメキのOLライフを夢見る直子はカタギのグループ。争いには無関係だったが、中途採用された蘭とひょんなことから親しくなる。蘭は向かうところ敵なしのカリスマヤンキー、あっというまに朱里をおさえてしまった。蘭がいることで、日本のテッペンを狙うつわものOLたちが直子の会社に注目する。

架空OL日記』(2020)でまったりした”あるある”のOL世界を描いたバカリズムが、今度は"ないない、あったら怖い"「力が全てのOLの世界」を展開しました。本人もちょっとだけ顔を見せています。
え、この人が!と驚く面々が罵り合い、殴り合うバトルを見せて迫力です。元女番長だったり、暴走族でならした彼女たちが自分こそ日本一強いことを証明するために争います。このアクション、タイマンも引きで撮る大乱闘もけっこう見ごたえあるんですよ。女優さんたちもいろいろ発散できて楽しかったんじゃないかな。生傷増えたに違いない。
女性名であげられている勝村さん、松尾さん、丸山さん、エンケンこと遠藤憲一さんは女性役です。女装子ではありません。エンケンさんミニスカート姿で、細くて長い美脚を披露しています。いい大人たちが本気でバカやってるのは観ているほうも楽しいです。大笑いさせてもらって、この淀んだ空気を吹っ飛ばしましょう。唯一人のイケメン枠に森崎ウィンくん。メインは女子バトルで男子の出番は少ないのに、いいところさらっていきました。(白)


2021年/日本/カラー/102分
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)2021「地獄の花園」製作委員会
https://wwws.warnerbros.co.jp/jigokumovie.jp/
★2021年5月21日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 12:58| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

いのちの停車場

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監督:成島出
原作:南杏子「いのちの停車場」(幻冬舎刊)
脚本:平松恵美子
撮影:相馬大輔
出演:吉永小百合(白石咲和子)、松坂桃李(野呂聖二)、 広瀬すず(星野麻世)、南野陽子(若林祐子)、佐々木みゆ(若林萌)、柳葉敏郎(宮嶋一義)、 小池栄子(寺田智恵子)、伊勢谷友介(江ノ原一誠)、みなみらんぼう(柳瀬尚哉)、 泉谷しげる(並木徳三郎)、森口瑤子(宮嶋友里恵)、松金よね子(並木シズ)、石田ゆり子(中川朋子)、田中泯(白石達郎)、西田敏行(仙川徹)

東京の救命センターで医師として働いていた白石咲和子はある事件の責任をとって、長く勤めた職場を去ることになった。父・達郎が一人暮らしている金沢の実家に戻り、旧知の仙川医師の頼みで「まほろば診療所」の医師として再出発する。仙川と看護師の星野麻世は、近隣の患者の元を訪ねる在宅医療を担っていた。訪問のための足がほしいとき、ちょうど東京から野呂が咲和子を慕ってやってきて、診療所の運転手となった。
これまでの救急医療とは全く違う命との向き合い方に戸惑いつつ、咲和子は周囲に支えられ、患者とその家族のためにより良い医療を考えていく。

末期がんの患者、脳出血後、胃ろうの妻を介護する夫、小児がんの女の子、再発した患者、最先端の医療を望む富豪…様々な症例があります。原作者の南杏子さんは現役医師でもあるので、多くの事実に裏打ちされたフィクションのなのでしょう。中でも老夫婦のストーリーは身につまされますし、幼い子が死と向き合う恐怖や親の心痛を思うと涙せずにいられません。
多様なケースに出逢う咲和子が、老いた父の願いに娘として医師として煩悶するシーンは、演者・吉永小百合さんと田中泯さんの真剣勝負。命をめぐる話の良い締めくくりでした。親子役ですが、実は同い年なんですね。
暗くなりがちなストーリーを、すずちゃんと桃李くんの若さが照らしてくれて、こういう介護師さんや先生がどこの現場にもいてくれたらいいですよね。
昨年総務省が発表した65歳以上の高齢者、2020年は3617万人・総人口の28.7%にのぼったそうです。逆に少子化も進んでいるので、在宅を希んでも担う子どもがいなかったり、子どもはあっても世話は他人に、ということも。その方が割り切れていい場合もあります。
在宅医療の長尾医師のドキュメンタリー『けったいな町医者』、長尾医師の著作が原作の『痛くない死に方』をご紹介し、監督取材もいたしました。いろいろ読んだり見たりするにつけ、これからますます在宅医療が増えていくだろうと思われます。ただ、介護にあたる家族や、夜も昼もなく駆けつけるような仕事をする方々に、その苦労への労わりや感謝や、見合った報酬があってほしいものです。自分だったら「どう生きたいか」ということをいろいろ考えさせられました。
東映グループの会長であり、長くプロデューサーでもあった岡田裕介氏が自ら発案し、製作総指揮にあたった最後の作品。俳優だった頃を覚えています。合掌。(白)


2021年/日本/カラー/119分
配給:東映
(C)2021「いのちの停車場」製作委員会
https://teisha-ba.jp/
★2021年5月21日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 12:43| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

しあわせのマスカット

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監督:吉田秋生
脚本:清水有生
出演:福本莉子(相馬春奈)、中河内雅貴(屋敷達也)、本仮屋ユイカ(姉/相馬)、大島蓉子、田中要次、土居裕子、竹中直人(秋吉伸介)、長谷川初範(田岡社長)

春奈は高校の修学旅行で岡山にやってきた。入院中のおばあちゃんに名産の高級ブドウ“マスカット・オブ・アレキサンドリア”をお土産に買う予定だった。ところが財布を落として買えなくなってしまった。ちょうどそのマスカット一粒をそのまま使った和菓子「陸乃宝珠」に目が止まり、手持ちのお金で一つだけ買うことができた。おばあちゃんが大喜びしてくれたことから、こんな風に誰かを幸せにするお菓子を作りたいという夢ができる。
その和菓子を作っている会社の大事な面接の日、春奈は遅刻して不合格となってしまう。帰りかけた春奈を呼び止めたのは、なんと田岡社長。特別に面接を許され、熱意が通じて就職できることになった。配属されたのは希望していたお菓子作りではなく、ブドウ農園での実習だった。仕事に厳しく頑固な農園主の秋吉は、春奈を受け入れずけんもほろろに追い返す。諦めずに通い続ける春奈だったが。

2018年、西日本豪雨で大きな被害を受けた岡山の応援に作られた作品です。岡山市、倉敷市、総社市でのオールロケーションです。夢に向かって少しずつ進んでいく春奈の成長と、周りの人々とのふれあいを描いています。ヒロインの春奈を演じる福本莉子さんの初の単独主演作品。春奈は意欲が空回りして失敗も多いけれども、めげません。初々しい彼女を周りのベテランが支えています。
欠点もあれば、難題もふりかかり、ちょうど朝ドラの主人公のようです。展開は王道なお仕事+成長物語で、予想のつく展開ですが観た後元気が出て「私もひと頑張り」と思えます。
作中で春奈が考案した「しあわせのマスカット」が、全面協力をした源吉兆庵とのコラボ商品として販売中でした。銀座のお店で手に入れてきました。ブドウの酸味と餡の甘味がお茶とぴったり。「陸乃宝珠」は売り切れでした。また今度。(白)


2021年/日本/カラー/ヴィスタ/93分
配給:BS-TBS
(C)2020「しあわせのマスカット」製作委員会
https://shiawasenomuscat.com/
★2021年5月14日(金)全国ロードショー
★東京の上映館は緊急事態宣言のため休館中。お出かけ前に劇場情報をお確かめください。
posted by shiraishi at 12:30| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月11日

くれなずめ

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監督・脚本:松居大悟
出演:成田 凌、高良健吾、若葉竜也、浜野謙太、藤原季節、目次立樹.

優柔不断だが心優しい吉尾(成田凌)、劇団を主宰する欽一(高良健吾)と役者の明石(若葉竜也)、既婚者となったソース(浜野謙太)、会社員で後輩気質の大成(藤原季節)、唯一地元に残ってネジ工場で働くネジ(目次立樹)。アラサーを迎えた高校時代の帰宅部仲間6人。久しぶりに顔を合わせた同級生の結婚式。余興で、かつて文化祭で好評だった赤フンダンスを披露したものの、皆にドン引きされてしまう。赤いフンドシ一丁で、まさに赤っ恥。あまりに恥ずかしくて、とても二次会に出られないと言いつつ、二次会までの3時間を過ごす6人。近くの喫茶店は満席。あてもなく付近を歩いて、思い出話にふけるうち、暮れなずんでいく・・・

高校時代につるんで馬鹿をやってた仲間。なんとなく元気がないのは、赤フンで恥をかいたからだけでなかったことが、だんだん明かされていきます。仲間が集まったのは、5年ぶり。実は5年前に別れたあとに、一人亡くなっているのです。5年前に、あ~していればという悔いも出てきて、やるせない思いにほろっとさせられます。
高校を卒業してから、それぞれの人生を歩んで、立場は違っていても、集まれば高校時代の気持ちに戻れるのが、同級生のいいところ。私の高校の同級生で、同じ中学から進学して仲のよかった3人の男子が核になって、毎年開催していた忘年会。3年前に一番はしゃいでいたK君が、翌年の忘年会の直前に、癌であっけなく逝ってしまいました。予定通り開いた忘年会、K君は確実にそこにいました。そんなことを思い出した『くれなずめ』でした。同級生っていいなとも。(咲)


高校生のときから男子グループを相手に一歩も引かない”あっちゃん”かっこいいです。同年齢だとやっぱり女の子のほうがしっかりしているのね。松井監督の実体験がもとになっているそうですが、こんな女子がいたのでしょうか?「17,8から男は変わらない」と言ってた知人男性がいましたが、ほんとにそうかも。とはいえ、卒業して5年10年と経つうちにいつしか変ってしまうのですが、変わらないところを見つけては嬉しくて、どこか安心してしまいます。
このところ作品が続いている成田凌くんはじめ、6人の仲良しぶりが伝わってきます。『佐々木、イン、マイマイン』でも先に逝ってしまった友人を偲んでいた藤原季節くんがこちらにも登場。生まれてきたら老いも病いも死ぬことも避けられません。元気なうちに会いたい人に会っておきましょう。ウルフルズの主題歌「ゾウはネズミ色」が切ないです。(白)


2021年/日本/96分/G
配給:東京テアトル
公式サイト:http://kurenazume.com/
★2021年5月12日(水)テアトル新宿ほか全国公開
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2021年05月09日

海辺の家族たち  原題:La Villa  英題:The House by the Sea

umibeno kazoku.jpg

監督・製作・脚本:ロベール・ゲディギャン
出演:アリアンヌ・アスカリッド、ジャン=ピエール・ダルッサン、ジェラール・メイラン、ジャック・ブーデ、アナイス・ドゥムースティエ、ロバンソン・ステヴナン

マルセイユ近郊のベランダから美しい入り江を見晴らせる瀟洒な家。
父親が倒れ、パリで暮らす人気女優のアンジェルは、20年ぶりに故郷に帰って来る。
家業の小さなレストランを継いだ上の兄のアルマンと、若い婚約者を連れた下の兄のジョゼフがアンジェルを迎える。父はすでに遺産相続のことを公証人に伝えていた・・・

遺産は、アンジェルに50%、兄二人には25%ずつ。
アンジェルが20年間も実家に帰って来なかった理由が徐々に明かされていきます。
意識のない父親のそばで、3人の兄弟妹のそれぞれの思いがさく裂します。
寝たきりの父は、一体いつまでこの状態なのか?
「イスラエルのシャロン元首相は、8年寝たきりだった。ユダヤ人は、しぶとい。反ユダヤじゃない。特徴の描写だ」と次男ジョセフ。強烈な皮肉です。

かつては別荘で賑わった町も、20年の間に、すっかり寂れてしまっています。
父親はこの町をユートピアにしようと、クリスマスには大きなクリスマスツリーを広場に飾って、皆にプレゼントを振舞っていました。
別荘も売りに出されて空き家が増え、借家住まいの臨家の老夫婦は、大家が家賃を上げてきたのが悩みです。都会で暮らす孝行息子が気にせず暮らしてと家賃を自動引き落としにしますが、両親にはそれも心苦しいのです。
レストランに魚を届ける漁師の青年バンジャマンは、小さい時に父親に連れていかれた劇場で演じるアンジェルを観て以来、彼女に憧れています。
それぞれの思いが交錯する町に、難民のボートが漂着し、軍人たちが難民を捜索しています。「テロリストが紛れているかもしれないから、必ず通報するように」と軍人が伝えにきます。
「テロリストは、正規の手段でやってくる」と、ジョセフ。
ことごとく、こんな調子だから、婚約者に捨てられてしまうのですね…
アルマンとジョセフが、山道を整備していて、幼い弟二人の世話をする少女を見つけます。フランス語は通じません。もしかしたらアラブ人かもと、「シュクラン(アラビア語でありがとう)」と言ってみますが、3人とも無言・・・  弟二人は、何があってもしっかり手をつないでいます。船で逃れてきた時に何があったのかと胸が痛みます。
ある瞬間、少女が初めて「シュクラン」と口にします。そして、家の背後にある石造りのアーチ型の鉄道橋に向かって、それぞれに名前を叫ぶ姿に明るい未来が見えたような気がしました。(咲)


「海辺の」で始まる映画が今年は何本もあります。先週は北国の海辺、こちらは別荘地の海辺に住む何組かの家族の悲喜こもごもを描いています。親を送る子どもたちがけっこうあっさり、うーん。こんなもの?しかしながら恋愛にはマメです。日本のほうが家族主義で愛憎が濃く、恋愛は淡泊な気がしました。個人主義のお国柄か。
一方、難民の子供たちが人目を避けて暮らし、ひもじさに耐えていたかと思うと可哀想でなりません。人が流れ着くのも日常の一つなんですね。日本と大違い。この子たちが出現したことで、自分のことだけだった人たちがなんとかしようと動きだします。そこが希望。(白)


かつて別荘地として賑わった地。そして今は来る人も少なく、寂れてしまった村? 町? 登場人物が少なくて、ほんとにほとんどいないのか、そうでもないのか街中の道、町の人などは写されていなくて、山道と登場人物だけなので、どのくらいの人が住んでいるのか、あるいは夏のシーズンだけは賑わうのか、その辺はわからない。
しかしこういう街は、今、ここばかりでなく日本でもある。最近観た作品の中でも、別荘地ではないけど、かつて栄え、今は寂れてしまった商店街とか鉄鋼業の町を描いた作品もあった。ここでは別荘地が舞台だけど、これはブームが去った街なのか、あるいは高度成長の時代には別荘地を持つ人がいたけど、今の時代はそんな余裕がなくなってしまったあらわれなのか。
私の伯母夫婦は伊豆高原に別荘を持っていたが、二人が80歳を過ぎてそんなに行けなくなり、結局手放した。でもなかなか売れなかった。私たちも別荘を持てるような余裕もなく、誰も買い取って引き受けられる人はいなかった。かつては別荘地だったけど、首都圏に1時間半もあれば行けるという近さから、そこに移り住んでしまった人たちもけっこういるようなところだった。この映画に出てくるマルセイユ近郊の別荘地も、そういうようなところなのかも。
でも長男は父がやっていたレストランを引き継いでやっているというから、そこに来る客がいるからやっているのだろう。この映画の中にはそういう客は出てこなかったので、その辺が舞台背景の街を理解するにはちょっと足りなかった。それにしてもフランスの映画だなと思った。日本だったら父親が倒れて、離れ離れに暮らしていた兄弟妹が集まってきたら、もう少し父親のこととか、この家のその後のことが描かれると思うけど、やってきた弟や妹の恋愛模様が描かれるという流れ。う~ん、なんだかなと思い、あまり共感できずだった。
最後のほうにとってつけたように難民の子供たちが出てきて、大人たちがよってたかって世話をするというように描かれていたけど、もう少しこの子たちの部分があるのかなと、実は期待していたので、これだけ?というのが印象だった。こちらのほうこそもっと描いてほしかった。どんな背景があるのか、結局どこから来たのかもわからず、あやふやで終わって残念。アーチ形の鉄橋と列車の通過光景が何度も出てきたのが印象的だった(暁)。


2016年/フランス/フランス語/カラー/ビスタ/DCP/5.1ch/107分
字幕翻訳:宮坂愛
配給:キノシネマ  提供:木下グループ 
© AGAT FILMS & CIE – France 3 CINEMA – 2016
公式サイト:https://movie.kinocinema.jp/works/lavilla/
★2021年5月14日(金.) キノシネマ他、全国順次公開


posted by sakiko at 19:48| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

クー!キン・ザ・ザ   原題:Ku! Kin-dza-dza

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監督:ゲオルギー・ダネリア
共同監督:タチアナ・イリーナ
声の出演:ニコライ・グベンコ(ウラジーミル・チジョフ)、イワン・ツェフミストレンコ(トリク)、アンドレイ・レオノフ(ウエフ)、アレクセイ・コルガン(ビー)

雪に覆われたモスクワ。世界的に著名なチェリストのウラジーミル・チジョフは、大通りで「あなたの甥だ」というDJ志望の青年トリクから金を貸してくれと頼まれる。二人の前にパジャマ姿の裸足の宇宙人が現れ、彼の”テレポーター”のボタンをうっかり押してしまい、キン・ザ・ザ星雲にワープしてしまう。そこは見渡す限りの砂漠に覆われ、身に着けるズボンの色によって階級が分かれた場所だった。「クー!」の一言がその抑揚で名詞・形容詞・副詞・感嘆詞などを表す世界。トリクは、臨機応変に異星人たちと「クー!」を駆使して物々交換し、なんとか地球に還ろうと奮闘する・・・

ソ連時代のジョージア(グルジア)で、1986年に製作された『不思議惑星キン・ザ・ザ』を、ゲオルギー・ダネリア監督が自らアニメ化した作品。2019年に88歳で逝去し、遺作となりました。
2016年8月に公開された実写版『不思議惑星キン・ザ・ザ デジタル・リマスター版』を拝見し、何とも不思議な世界で面白かったので、これは絶対見逃せないと観てみました。
実写版の方がインパクトありましたが、アニメも負けず劣らず脱力系の作品で楽しみました。描かれている世界は、はっきりとした階級社会。現実社会への皮肉がたっぷりです。 (咲)


不思議な寓意に満ちた作品でした。あまりアニメとか見ない私ですが、たまにはアニメもいいかなと感じさせてくれました。言葉が通じない世界で、「クー」の抑揚を変えることで、話がわかるというのがおかしかったし、なるほどと思いました。現在の世界でもそういうのが通じたらいいのにと思ったけど、実際、言葉が通じないところに行ったら、大変でした。それにしても、階級社会、差別化された社会への痛烈な批評が込められた作品で、こういうアニメだからこそ表現できたのかもと思います(暁)。

2013年/ロシア/92分
配給:パンドラ
公式サイト:http://www.pan-dora.co.jp/kookindzadza/
★2021年5月14日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
posted by sakiko at 18:44| Comment(0) | ロシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

グンダーマン 優しき裏切り者の歌   原題:GUNDERMANN

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監督:アンドレアス・ドレーゼン
脚本:ライラ・シュティーラー 音楽:イェンス・クヴァント
出演:アレクサンダー・シェーア、アンナ・ウンターベルガー

失われた国、最大のスキャンダルとなった秘密警察 (シュタージ) ――
“東ドイツのボブ・ディラン”と呼ばれ、スパイだった男の真実の物語

ゲアハルト・グンダーマンは、ベルリンの壁が崩壊し、東ドイツが消滅した後もシンガー・ソングライターとして、カリスマ的な人気を博していた。しかし、彼は人には言えない過去を抱えていた。昼間は炭鉱でパワーショベルを運転、仕事が終わると仲間と共にステージに上がり、自作の歌で人々に感動を与えていた。しかし、東西統一後、シュタージに協力した人々の多くが、その事実をひた隠し、公になることを恐れていた。かつて、バンド仲間や友人たちの行動を報告していた過去が脳裏を過る。そして、友人の妻となった幼なじみコニーへの諦めきれない想い。優しかった父との確執と再会。そんなある時、かつてシュタージに協力した著名人たちが次々と告発されるのをテレビ報道で知る。彼は友人たちを訪ね、過去の自分とシュタージとの関わりを告白する・・・

シュタージに指示されるまま、友人たちを監視していたことがずっと心の重荷になっていたグンダーマン。勇気を振り絞って友人に告白したところ、「俺もお前を監視していた」と告げられます。体制に逆らえなかったからと割り切って過ごす人の多い中、グンダーマン、あまりにお人よしすぎて、ちょっといらつきます。
東ドイツがお互いを監視する社会だったことが、当時、どれくらい明らかだったのでしょう。東西ドイツが統一して、自由社会で暮らせるようになっても、過去を引きずって生きる人たちが多くいることに思いが至りました。過去は忘れるのが処世術!?(咲)

東西冷戦の時代、ドイツは東西に分断されていた。そして東ドイツの秘密警察は、国民同士を監視するようなことをしていた。これはグンダーマン という人物を介する形で、そういうことを告発する映画なのだろうか? 国家というのは、社会主義国家だろうと、民主主義国家だろうとも、そういう風に人を監視している。私も1969年頃の日本でそういう経験をした人たちのことを知っている。あの頃、学生運動や反戦運動をしている人たちを監視している人たちがいて、デモの最中に「あのイヤホーンをしている人たちには気をつけたほうがいい」なんて言葉も聞いたことがある。今もそういうことがあるのかもしれない。
炭鉱で働きながら歌を作り、歌っていたグンダーマン。日々の暮らし、仕事のことなど歌っていた。巨大なパワーショベルを運転し、炭鉱の鉱脈がある場所を削っていたのが印象的だった。そして彼の仲間で、高齢の女性もそれを運転していて、実際もそういうことがあるのかなと驚いた。
「ベルリンの壁崩壊後の東ドイツにおいて最も重要で最も有名な実在のシンガー・ソングライター、ゲアハルト・グンダーマン」と紹介され、“東ドイツのボブ・ディラン”とHPに書いてあったけど、その言い方は違うような気がする。「ボブ・ディラン」とは反体制のシンボル的な存在の歌手。もしそうなら、監視の対象ということはあるだろうけど、秘密警察が彼をスパイとして利用というのはちょっとおかしいという感じもするので(暁)。


*ドイツで最も権威のあるドイツ映画賞(2019)で作品賞、監督賞含む 6 部門で最優秀賞を獲得。

2018年/HD/シネマスコープ/5.1ch/128分/ドイツ
字幕・資料監修:山根恵子
提供:太秦/マクザム/シンカ
後援:ゲーテ・インスティトゥート大阪・京都 
配給・宣伝:太秦   
© 2018 Pandora Film Produktion GmbH, Kineo Filmproduktion, Pandora Film GmbH & Co. Filmproduktions- und Vertriebs KG, Rundfunk Berlin Brandenburg
公式サイト:https://gundermann.jp/
★2021年5月15日(土)より渋谷ユーロスペース他全国順次公開



posted by sakiko at 16:34| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ファーザー(原題:The Father)

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監督・原作:フロリアン・ゼレール
脚本:クリストファー・ハンプトン、フロリアン・ゼレール
撮影:ベン・スミサード
美術:ピーター・フランシス
出演:アンソニー・ホプキンス(アンソニー)、オリヴィア・コールマン(アン)、マーク・ゲイティス(男)、イモージェン・プーツ(ローラ)、ルーファス・シーウェル(ポール)、オリヴィア・ウィリアムズ(女)

81歳のアンソニーはロンドンで独り暮らしを送っている。健康だけれども記憶が薄れ始めてきた。父を案じる娘のアンが手配した介護人を拒否して追い返している。本人には言わないが、内心ではおおいに頼っているアンが恋人とパリで暮らすというのにショックを受けている。
それでは、アンソニーの自宅に現れ「アンと結婚して10年以上になる」と語る男は誰?恋人のポールはこんな顔だったろうか? アンソニーのもう一人の娘、最愛のルーシーはどこに消えたのだろう?現実と幻想がまじりあい、アンソニーの記憶は混沌としていく。

1937年12月31日生まれのアンソニー・ホプキンスが「同じ誕生日、同じ名前のアンソニー」として映画の中に存在しています。彼は認知症を患っている自分の状態を認められません。身体が動けるうちは一人で気ままに暮らしたい、とは誰もが思うことです。
父を心から案じるアンですが、自分の人生も大切にしたいと思っています。アンがどれだけ父を思おうと、アンソニーの口にのぼるのはお気に入りだった妹のルーシーのことばかりです。若い介護人ローラが、ルーシーに似ていると言って浮かれ、上機嫌の父を見守るアンの心情はいかばかりでしょう。
アンソニーの心の動きの通りに、幻想と現実の生活のシーンが交互に現れるので、最初は観客も混乱します。進むに従って「そういうことだったのか」と納得できます。認知症の方の脳内を「見える化」するとこうなるわけですね。
元は舞台劇。戯曲を手掛けたフロリアン・ゼレールが自ら初監督・共同脚本。ほぼ部屋の中だけで進み、登場人物も6人だけです。動きの少ないアンソニーを中心にしてカメラもあまり動きません。名優二人の競演と、背景になるアンソニーの部屋、アンの部屋の色合いが変わっていくのにもぜひご注目ください。日本でも橋爪功主演で2019年公演があったそうで、それも観たかったなぁ。
アンソニー・ホプキンスが、本年のアカデミー賞主演男優賞を最高齢で受賞しました。(白)


2020年/イギリス・フランス合作/カラー/シネスコ/97分
配給:ショウゲート 
(C)NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINE-@ ORANGE STUDIO 2020
https://thefather.jp/
★2021年5月14日(金)全国公開
posted by shiraishi at 16:31| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月07日

アニメーションの神様、その美しき世界 Vol.2&3 川本喜八郎、岡本忠成監督特集上映(4K修復版)

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「アニメーションの神様、その美しき世界」シリーズは、WOWOWプラス(旧IMAGICA TV)が、優れたアニメーション作家にスポットをあて、その素晴らしい作品を最新の技術で修復・発掘することを目的としたもの。第一弾として2017年にロシアのユーリー・ノルシュテインが取り上げられました。

第二弾・三弾として、日本のアニメーションの発展に大きく貢献した二人の映像作家・川本喜八郎(1925-2010)と岡本忠成(1932-1990)の特集上映が組まれました。
いずれもノルシュテイン同様、ストップモーション撮影(コマ撮り)による立体アニメーションの分野で比類なき功績を残した世界的巨匠であり名匠です。
2020年に川本の没後10年、岡本の没後30年を迎え、作家・作品の歴史的価値を再評価・継承するタイミングとしても絶好の機会です。上映されるのはそれぞれの代表作5本ずつ合計10本・2プログラムで、全ての作品が日本の最新技術による4Kデジタル修復版です。

【上映作品】
◆Aプログラム=川本喜八郎5作品  
『花折り』『鬼』『詩人の生涯』『道成寺』『火宅』合計80分

◆Bプログラム=岡本忠成5作品  
『チコタン ぼくのおよめさん』『サクラより愛をのせて』『虹に向って』『注文の多い料理店』『おこんじょうるり』合計78分

上映作品詳細
https://www.wowowplus.jp/anime_kamisama2-3/#films


◆Aプログラム

川本喜八郎(1925-2010)
日本の伝統芸能を人形アニメーションに進化させた世界的巨匠。
人形にふさわしい物語を探し、自ら人形を造形し、演じさせた。

1925年東京・千駄ヶ谷生まれ。
祖母の影響を受け小学校時代から人形を作る。
東京府立工芸学校、横浜高等工業学校(現横浜国立大学)建築学科を経て、1946年に東宝撮影所美術部に入社。
五所平之助・衣笠貞之助・成瀬巳喜男らの作品の美術として参加したが東宝争議で解雇。
1951年、劇作家・飯沢匡に見出され「人形芸術プロダクション」創設に参加。
1958年に飯沢と共にCM制作会社「シバ・プロダクション」設立に参加。
1963年から1年半チェコスロバキア・プラハに留学。憧れのイジー・トルンカに師事。
トルンカ・スタジオで『天使ガブリエルと鵞鳥夫人』(1964年)の撮影に参加。
1968年、第一作『花折り』を発表。日本の古典芸能に取材した題材で独自の表現を確立し、NHKの人形劇「三国志」など人形美術作家としても幅広く活躍。
岡本忠成の遺作『注文の多い料理店』は川本の監修で完成した。
国内各賞の他、海外映画祭でも多数受賞。

上映作品
『花折り』(1968年・14分)
初の自主制作人形アニメーション。原作は、壬生狂言の滑稽話。軽快なドタバタや飛躍のあるカットつなぎは後の川本作品とは大きく異なる。桃山時代の障壁画をイメージした平面的な美術は日本画家の壬生露彦が担当。恩師トルンカに生前唯一見せ、コメントをもらうことが出来た作品。
声の出演:黒柳徹子

『鬼』(1972年・8分)
「今昔物語」の中の「猟師の母鬼になりて子を噉(く)はむと擬するものがたり」に想を得た作品。老醜の果てに鬼となって子を喰らうという救いのない不条理と怪奇。文楽人形を模した兄弟の人形造形、般若の面、頭を上下させず摺り足で移動する能の所作。文楽三味線の名手・鶴澤清治と山口五郎の尺八による音楽。壬生露彦による漆黒に金蒔絵のスタイリッシュな美術。日本の能・文楽の流れを汲むアニメーション。

『詩人の生涯』(1974年・19分)
安部倍公房原作。セピア調のパステル画によるカットアウト(切紙)作品。川本自身のストライキに明け暮れた青春時代を重ね、「詩人」を「貧しい人々の痛みが分かる時代の証人」と解釈。赤いジャケツが空を舞って青年に被さり、自らを詩人として自覚する一連のイメージは鮮烈である。川本は本作以降、カットアウトで制作していない。「ユーリー・ノルシュテインのような作家が出現しては自分の出る幕はない」というのが理由。そのノルシュテインと川本は互いを尊敬し合う仲であった。

『道成寺』(1976年・19分)
「今昔物語」の「安珍清姫」や能の同名演目が題材。川本独自の人形アニメーションのスタイルを確立した記念碑的作品。僧侶を追う若い娘の設定を寡婦に変更。髪を振り乱して走る様をスローモーションによって印象付け、「執着と不条理」のモチーフを進化させた。背景に「斜投影図法」で平面に描かれた大和絵風建物や里山を置き、人形たちはその中を横へと移動する。それは絵巻物を繰り広げて読む感覚に極めて近い。手描きの紙をセットにはめこんだ日高川の激流、炎のオプチカル合成などの新技法も導入。崖や道成寺の階段や鐘楼で上下の縦方向の広がりへと劇的に展開する演出。

『火宅』(1979年・19分)
「大和物語」を原典とした能「求塚」を翻案した作品。誰も傷つけたくないと二人の男の求婚を拒んで入水した菟名日処女が500年間も業火に焼かれる。『鬼』『道成寺』に続く不条理三部作の完結編。立体的セットの奥行きと平面画の同居する美術、霧・モヤや重層的な炎の表現、薄暗い光の照明、能役者の観世静夫(銕之丞)の静かな語りと武満徹の重厚な音楽を得て集大成的な作品となった。

※各作品について、叶精二(かのう せいじ)氏の解説をもとに記載しました。

渋谷ヒカリエ8階にある「川本喜八郎人形ギャラリー」を偶然見つけて、無料なので何度か覗いたことがあります。「三国志」「平家物語」の人形が展示されていて、その人形たちからイメージする川本喜八郎の人形は、今回の上映作品では『道成寺』や『火宅』。まさに彼がたどり着いた世界観。
今回拝見した初作品『花折り』は、コミカルながら後の彼の世界が伺えます。『鬼』もまた、後に繋がる作品ですが、異色なのが『詩人の生涯』。こんな骨太の作品も作っていたのかと驚かされました。(咲)



◆Bプログラム

岡本忠成(1932-1990)
多彩な技法を駆使してアニメーションの可能性を開拓し続けた名匠

大阪府豊中市生まれ。大阪大学法学部を卒業し就職した後、日本大学芸術学部映画学科に再入学。卒業制作は同大初の人形アニメーション。1961年から持永只仁率いるMOMプロダクションでアニメーターとして腕を磨き、1964年に株式会社エコーを設立し、幾多の短編を制作。1972年からは川本喜八郎と共に「川本+岡本パペットアニメーショウ」を自主開催。国内に人形アニメーションを広めた。

岡本は「同じことは二度しない」との方針の下、スタッフのアイデアや即興性も積極的に採用。立体・半立体ストップモーションの人形(パペット)素材では木・布・粘土・和紙・杉板・毛糸などを使用。作画では水彩、マーカー、クレヨン、墨など画材も様々。題材もSF・民話・童話・小噺と幅広く、悲劇も喜劇も怪談もある。民謡・フォーク・義太夫・合唱曲など歌曲が挿入され、語りには方言・落語も起用。人間と動物たちの暮らしをつぶさに見つめる演出の視点は一貫しており、晩年になるほど日本人の情緒や土着性が色濃く反映されている。

『チコタン ぼくのおよめさん』(1971年・11分)
岡本初のセルアニメーション。通常セルのキャラクターは、輪郭線で括られ均一の色面で塗り分けられる。岡本はこれを「美術のイメージから縁遠い」と拒絶し、セルの表からポスターカラーなどで厚塗りし、クレヨンでタッチを加える新様式で臨んだ。
西六郷少年少女合唱団の歌う組曲に乗せて各章が進行。

『サクラより愛をのせて』(1976年・3分)
桂朝丸(現ざこば)の創作落語「動物いじめ」に着想を得た連作「人間いじめシリーズ」の3作目。関西弁のトークに乗せて、セルにマーカーで着色された半透明キャラクターが躍動する。

『虹に向って』(1977年・18分)
大掛かりなセットで展開される人形アニメーション。原作は大川悦生が信州・梓川にかかる雑炊橋(雑仕橋)にまつわる伝説を元に記した絵本「ふたりがかけた橋」。作りかけた橋が豪雨で流される、絶望したおりつが川に落ちるなどの劇的展開は原作にはない。及川恒平のフォークソングが流れる機織りや「刎(はね)橋」の具体的工法の検証による創作も加えられ、恋人たちの思いがより深く彫り込まれている。

『おこんじょうるり』(1982年・26分)
岡本の最高傑作として名高い。さねとうあきらの原作絵本には具体的記述のない力強い浄瑠璃歌唱シーンの創作、長岡輝子の東北弁、郷土玩具の泥人形や張子をイメージした土薫る人形造形、描画風セットなど、それまでの集大成的技巧が凝らされている。

『注文の多い料理店』(1991年・19分)
1990年、岡本は宮沢賢治原作『注文の多い料理店』の制作途上、道半ばにして死去。絵コンテも未完であったが、盟友・川本喜八郎が遺志を継ぎ翌91年に完成させた。銅版画風の繊細な線描によるセルアニメーションで、童話のイメージとは異なる病的不気味さが際立つ。初の長編となる次回作『ほたるもみ』の実験も兼ねていたと伝えられるが、その作品が制作されることはなかった。

※各作品について、叶精二(かのう せいじ)氏の解説をもとに記載しました。

「同じことは二度しない」というスタンスの通り、今回上映される5作品も、同じ人の製作なのかというほど違います。
『チコタン ぼくのおよめさん』は、合唱団の歌に合わせて物語が進行するのですが、NHKの「みんなのうた」を見ているよう。思いもかけない悲しい結末に、ほろっとさせられました。
『サクラより愛をのせて』は、軽快な関西弁の落語の世界を楽しみました。
『虹に向って』は、川を挟んで敵対している村人たちという設定が、『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』(2020年、池田暁監督)と同じ! そんな中で、恋するようになった二人が、橋を架けようと努力する姿に心を打たれました。
『おこんじょうるり』は、年老いて声も衰えたイタコのおばあ様の背中に隠れたキツネが、おばあ様の代わりに浄瑠璃を語る物語。キツネの恩返し。
『注文の多い料理店』は、宮沢賢治原作のよく知られた物語ですが、ちょっと風合いが違いました。
どれもどこか懐かしい、情緒溢れる作品です。(咲)


私は1952年生まれ。家にTVが来たのが1964年。前回の東京オリンピックの時。中学1年でした。それまではTVでアニメとか見ていなかったし、漫画にも興味はなく、子供時代に漫画本を読みまくったということもなかったので、アニメや漫画は、あまり見てこなかったのです。でも本にはとても興味があり、20世紀の新発見とか探検記、冒険物語そんなものばかり読んでいました。アマゾン河に興味を持ちました。子供の頃好きでよく読んでいたのは「ドリトル先生」「長靴下のピッピ」「ツバメ号とアマゾン号」でした。
そして、このアニメーション特集ですが、名前を知っている川本喜八郎さんのほうは観ることができず、岡本忠成さんの方だけ試写を観ることができました。岡本忠成さんの名前は知りませんでした。でも観たことがある、あるいは名前を知っている作品があり懐かしかったです。『注文の多い料理店』『おこんじょうるり』の2本です。岡本さんの名前は知らなくても子供の頃観ていました。そういうことってありますよね。一昨年、「江古田映画祭 3.11 福島を忘れない」で初めて知りあったブラジル在住の岡村淳監督と話していて、この方が作ってきた「数々の南米に関するTV番組、たくさん見ていました」という話で盛り上がりました。それにしてもアニメーションも面白いものがたくさんありますね。こういうものを創出できるアイデアを持っている人の特技すごいと思いました(暁)。

提供:株式会社WOWOWプラス 
配給:チャイルド・フィルム 
宣伝:プレイタイム
公式サイト:https://www.wowowplus.jp/anime_kamisama2-3/
★2021年5月8日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
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大綱引の恋

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監督:佐々部清
脚本:篠原高志
撮影:早坂伸
出演:三浦貴大(有馬武志)、知英(ヨ・ジヒョン)、石野真子(有馬文子)、西田聖志郎(有馬寛志)、松本若菜(中園典子)

有馬武志は鳶職・有馬組の三代目だが、35歳にしていまだ独身。鳶の親方でもあり、“大綱引”の師匠でもある父親寛志から、早く結婚して後を継げとうるさく言われている。女性とめぐり合う機会が少ない上に、奥手の武志には難題だ。
ある日、武志が川内駅のコンコースで倒れた老人の救命措置をしているところに、医者だという女性が助けに入ってくれた。二人の連携プレーで老人の命は救われた。その女性の名前を聞くこともせずに別れたが、後日偶然に再会する。彼女は甑島(こしきしま)の診療所に勤務する韓国人女性研修医のヨ・ジヒョンだった。くったくなく明るいジヒョンと武志は次第に心を通わせるようになるが、父は国が違うことを理由に交際を反対される。秋分の日前夜に催される“大綱引”が近づいてきた。

家族愛をテーマにした作品を世に送り出し続けてこられた佐々部清監督の遺作(2020年3月31日ご逝去)となりました。『六月燈の三姉妹』(2014)に続き、佐々部清監督と西田聖志郎が再タッグした作品。前作と同じく、鹿児島弁で通しています。運命に導かれるような出逢いをした武志とジヒョンは、朴訥な印象の三浦貴大さん、韓国の人気グループKARAのメンバーだった知英さんが演じて、二人のケミストリーが観られます。
その恋物語と並行して、鹿児島県薩摩川内市に420年続く勇壮な“川内大綱引”(せんだいおおつなひき)の一番太鼓をめぐっての男たちの競争も描かれます。上半身裸の男たちが数千人、押し合いへし合いするシーンが圧巻です。引くだけではなく押す技もあり、太鼓は文字通り引き手押し手たちを鼓舞するもの。一番太鼓を担うのは一人前の男の証のようなもの。武志はジヒョンにその姿を見せたいわけです。
昨年はコロナ禍で中止になりました。全国でお祭りが同じように中止になってしまいました。今年はどうなるのでしょうか。(白)


2020年/日本/カラー/108分
配給:ショウゲート
(C)2020「大綱引の恋」フィルムパートナーズ
https://ohzuna-movie.jp/
★2021年5月7日(金)ロードショー
一部の劇場で公開延期になっております。劇場情報をお確かめのうえお出かけください。
posted by shiraishi at 15:42| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月06日

ジェントルメン  原題:THE GENTLEMEN 

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監督・脚本・原案・製作:ガイ・リッチー
出演:マシュー・マコノヒー、チャーリー・ハナム、ヘンリー・ゴールディング、ミシェル・ドッカリー、ジェレミー・ストロング、エディ・マーサン、トム・ウー、バグジー・マローン、リン・ルネー、コリン・ファレル、ヒュー・グラント

ロンドンの昼さがり。パブに入り、ビールとピクルドエッグを注文するニヒルな紳士、ミッキー・ピアソン(マシュー・マコノヒー)。ジュークボックスで選んだ渋いアメリカン・ロックを聴きながら、スマホで話し始めたミッキーの背後に銃を構えた男。銃声が響き、ビールグラスが血に染まった・・・
アメリカ生まれのミッキーは、奨学金を貰ってイギリスの名門オックスフォード大に入学。勉強そっちのけで非合法の“園芸”を学んだ彼は、上流階級の金持ち同級生たちに園芸品=大麻を売って財を成し、今やロンドンの暗黒街に君臨していた。そんな彼が、総額4億ポンド(約 500 億円)もの利権を売って引退するという。
大富豪のユダヤ人、チャイニーズ&ロシアン・マフィア、さらにはゴシップ紙の編集長に私立探偵、スラムの不良たちを更生させるジムの経営者まで利権争いに係わってくる。
ミッキーを撃ったのは、いったい何者なのか・・・

ジェントルメン=英国紳士と思いきや、ジェントルメン=利権を巡る一流のワルたちでした。ロンドンは、まさに人種のるつぼ。いわゆる白人だけでなく、ユダヤ人、中国人、ロシア人、黒人、ロマ(ジプシー)と、次々に出てくる登場人物にくらくら。加えて、それぞれの語りで物語が進行していくので、ついていくのにふぅふぅ! あの長い台詞を覚えるのも大変だったでしょうが、そこはさすがな俳優陣!

*主要登場人物*
アメリカ生まれ、オックスフォード大学中退でロンドンのマリファナ王に上り詰めた男ミッキー・ピアソン: マシュー・マコノヒー(『ダラス・バイヤーズクラブ』)

ミッキーが頼りにしているビジネス・パートナー、レイ: チャーリー・ハナム(『パシフィック・リム』、リメイク版『パピヨン』

高級車専門のガレージを経営するミッキーの妻ロザリンド: ミシェル・ドッカリー(TV シリーズ「ダウントン・アビー」)

ジョージ卿(トム・ウー)率いるチャイニーズ・マフィアの若頭ドライ・アイ: ヘンリー・ゴールディング(『クレイジー・リッチ!』)

大富豪のユダヤ系アメリカ人マシュー・バーガー: ジェレミー・ストロング(『シカゴ7裁判』)

ミッキーに激しい恨みを持つゴシップ紙の編集長ビッグ・デイヴ: エディ・マーサン(『シャーロック・ホームズ』2 部作(09/11)以来のガイ・リッチー作品出演、『博士と狂人』)

編集長ビッグに雇われ、ミッキーとレイを監視している私立探偵フレッチャー: ヒュー・グラント(『コードネーム U.N.C.L.E.』(15)に続くガイ・リッチー作品出演。『モーリス』『ノッティングヒルの恋人』)

スラムの不良たちの指導と更生に務めるボクシングジム経営者コーチコリン・ファレル(『ヒットマンズ・レクイエム』)


大物だけ挙げても、こんなに大勢の面々。
一番印象に残っているのが、チャイニーズ・マフィアのボス ジョージ卿(トム・ウー)が、大きな画面で競馬を観ている場面。香港のハッピーバレイ(跑馬地)の競馬場でした!(咲)


情報量が多いので、登場人物の関係性や状況を理解するのに戸惑うかもしれません。しかし、わからないからと投げ出さずに、流れに任せていれば、次第にわかってくるようになっています。サプライズな展開が次から次へと用意され、どこに行き着くのか、まったく読めないと思っていたら、すべてのピースがきっちりはまったラストに着地。感服です!
この作品、配給会社は「MIRAMAX(ミラマックス)」です。そのことを覚えておくと、へぇ~と思う部分が後半に出てきますよ!
そういえば、マシュー・マコノヒーはキノフィルムズで先週公開された『ビーチ・バム まじめに不真面目』でも主人公を演じています。全然タイプが違うけれど、どちらも振り切った役どころで、妻とは深い愛情で結ばれています。冷静に考えたら、どちらも夫にしたくないけれど、マシュー・マコノヒーが演じるとどちらも魅力的に見えてしまうから不思議。(堀)


2020年/英・米合作/カラー/スコープサイズ/5.1ch/113分
字幕翻訳:松崎広幸
配給:キノフィルムズ 提供:木下グループ
© 2020 Coach Films UK Ltd. All Rights Reserved.
公式サイト:https://www.gentlemen-movie.jp
★2021年5月7日(金)より、全国公開

*注:緊急事態宣言の出ている都府県では、解除後の公開となります。公式サイトでご確認ください。


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2021年05月02日

プロジェクトV (原題:急先鋒 Vanguard)

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監督・脚本:スタンリー・トン
出演:ジャッキー・チェン(トン・ウンテン)、ヤン・ヤン(ロイ・ジャンユー)、アレン(チョン・ホイシュン)、ムチミヤ(ミヤ)、シュ・ルオハン(ファリダ、)、ジュー・ジャンティン(コンドル)、ジャクソン・ルー(チョン・クオックラップ)

トン・ウンテンが設立した民間の特殊護衛部隊”ヴァンガード”は、世界中のクライアントにセキュリティサービスを提供している。ロンドンのチャイナタウンで実業家のチョン・クオックラップが誘拐された。犯人はトンのビジネスパートナーのマシムの息子だった。マシムは中東の過激派の首領で、トンの通報によりマシムは米軍の攻撃で命を落とす。マシムの息子は父親の遺産のありかを知るチョンを拉致したのだった。若手の派遣でチョンは救出されるが、アフリカにいる自分の娘も守ってほしいと依頼する。トンも加わったヴァンガードチームはアフリカへと向かう。

古くからの香港映画ファンには嬉しい”スタンリー・トン監督&ジャッキー・チェン”の新作です。舞台があちこちへと移り、背景が楽しめます。今年はライオンが出てくる映画が続いて、ストーリーやアクションはあんまり目新しくはありません。オールドファンにはなじみのない若手がたくさん出演していて、香港映画(中国になりましたが、つい)も代替わりしたんだと実感しました。富豪の実業家役のジャクソン・ルーは台湾出身の俳優で、スタンリー・トン監督の映画でよく見かけました。
ジャッキーは1954年生まれ、還暦をとうにすぎていますが、相変わらず身軽にアクションを自らこなしています。アクション指導もスタンリー・トン監督、まめなジャッキーもきっとあれこれやったに違いない…と見ました。
公式ホームページではファンの"ジャッキーBEST MOVIE"があげられて、懐かしい作品が並んでいます。6月6日まで投稿も受け付け中。(白)


2020年/中国/カラー/シネスコ/107分
配給:ツイン
(C)2020 SHANGHAI LIX ENTERTAINMENT CO.LTD ALLRIGHTS RESRVED
https://projectv.jp/
★2021年5月7日(金)より全国ロードショー
posted by shiraishi at 20:03| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから 原題:Mon inconnue/英題:Love at Second Sight

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監督:ユーゴ・ジェラン(『あしたは最高のはじまり』)
出演:フランソワ・シビル、ジョセフィーヌ・ジャピ、バンジャマン・ラベルネ

閉校間近の高校。小説家を夢見るラファエルは学校の片隅でピアノを弾くオリヴィアと出会う。正門が閉まり、一緒に窓から飛び降り、ベンチで気を失った二人。恋に落ちて、卒業と同時に結婚。そして、10年。ラファエルはSF小説の映画化が決まるほどの売れっ子作家に。小さなピアノ教室を開くオリヴィアは、夕食はいつも一人。深夜に帰宅したラファエルと大喧嘩になる。
翌朝。吹雪の中、高校時代からの悪友フェリックスがバイクで迎えにくる。ラファエルが連れていかれた先は学校。サイン会の会場?と思ったら、そこの教師だという。方や、オリヴィアは人気ピアニストとして活躍していて、立場が逆転した世界だった。しかも、もぐりこんだパーティで出会ったオリヴィアは、ラファエルのことを知らなかった・・・

若くして結婚したユーゴ・ジェラン監督が、「一番大切な人に出会わなかったら、人生はどうなっていたのだろう?」という、ふとした発想から生まれた物語。構想から約10年、自身の結婚生活を見つめ直しながら脚本を何度も練り直して作り上げた珠玉のラブストーリー。
立場が変わって、初めて、ほんとに自分にとって大事な人は誰だったかに気づく・・・なんて、困ったものですが、気がつかないよりはいい?
人生を振り返って、「あの時、もし」ということは、皆、多々あると思います。選択の結果が今なのですが、いろいろな人との出会いが人生を豊かにしてくれたことにも思いが至ります。縁を大切にしたいと思わせてくれました。そんな普遍的な要素を内在させた映画ですが、パリの街や、高校の様子、オリヴィアがリサイタルを行うオデオン座、南フランスのカマルグなど、フランスの香りもたっぷり。特に冒頭に映し出されたノートルダム寺院近くの壊れた橋はいつのものだったのか気になりました。
ピアノ曲は、ラファエルがオリヴィアに初めて会ったときに弾いていたのは「セレナード」(シューベルト)、もう一つの世界に迷い込んだラファエルがネット検索したオリヴィアの演奏動画は「ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 BWV1052 第1楽章」(J.S.バッハ)、ラスト、オデオン座のリサイタルでオリヴィアが弾いたのは「幻想即興曲 Op.66」(ショパン)。どれもお馴染みの曲です。 (咲)


違う世界で目覚めてしまったラファエルは、元へ戻ろうと躍起になります。オリヴィアが夢見たとおり有名なピアニストになっていて、自分は思ってもみなかった教師。元へ戻れば自分は良くてもオリヴィアは?それにちっとも気がまわらないラファエル。だから元の世界では大喧嘩になったというのに。男性と女性では、感想がちょっと違うかも。デートで観に行ってカップルが別れても責任持ちません。恋と愛の違いが判る大人なら大丈夫。
ところで、元の世界には教師のラファエルが入れ違いで行っているんでしょうかね?そっちのパターンも観たいものです。(白)


2019年/フランス・ベルギー/カラー/DCP /5.1ch/シネスコ
字幕翻訳:大城 哲郎
配給:シンカ  提供:シンカ、フラッグ、ハピネット
公式サイト:http://love-second-sight.jp/
Twitter/Instagram:@lovesecondmovie #ラブセカ
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★2021年5月7日(金)新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町、渋谷ホワイトシネクイント、グランドシネマサンシャイン(池袋)ほか全国順次ロードショー!

*注:緊急事態宣言の出ている都府県では、解除後の公開となります。公式サイトでご確認ください。



posted by sakiko at 17:03| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

なんのちゃんの第二次世界大戦

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監督・脚本:河合健 
出演:吹越満、大方斐紗子、北香那、西めぐみ、西山真来、髙橋睦子、藤森三千雄、きみふい、細川佳央、河合透真

平成最後の年。関谷市の市長、清水昭雄は令和元年に、太平洋戦争の平和記念館設立を目指している。祖父の清水正一は、まもなく105歳。「戦争には行けなかったけれど・・・」が口癖だ。戦時中から国民学校の教師として子供たちに反戦を訴えていた人物なのだ。
ある日、一通の怪文書が届く。
「平和記念館設立を中止せよ。私は清水正一を許さない」
送りつけてきたのは、街で石材店を営む BC 級戦犯遺族の南野和子。清水正一の教え子でもある。
平和記念館設立を目指す市長と反発する戦犯遺族の攻防劇が始まる・・・

市長、清水昭雄の父の名は、清水国勝。南野和子おばあちゃんに言わせれば、反戦を掲げる清水正一先生が、我が子に国勝などという名前を付けるはずがないという次第。父親がBC級戦犯として死刑になった身には、許されない思いなのがずっしり伝わってきます。
『なんのちゃんの第二次世界大戦』というタイトルから、1989年生まれで戦争を知らない世代の監督が、戦争の記憶のある人たちの証言を集めて作った映画かと思いきや、ちょっと違いました。
南野家の長女・えり子は、街でスナックを営むノンポリなのですが、その娘の紗江は国際ボランティア活動を行っていて、「日本人は太平洋戦争に捉われ過ぎ。太平洋戦争の平和記念館じゃなくて、今、世界で起きている戦争に目を向けて!」と諭します。もう一人の娘である光は祖母と一緒に石材店を営んでいるのですが、和解しようとやってくる市長に敵対心丸出しです。
一方、関谷市では外来種である亀の大量繁殖に悩まされていて、紗江の娘のマリたち小学生は、亀を捕獲するのに追われる日々・・・
奇想天外な物語にあっけにとられたのですが、混沌とした今の世の中そのものだと感じました。生まれた時代によって経験が違って感覚が異なるという、ジェネレーションギャップも見事に描いてました。(咲)


予告編 https://youtu.be/hxNCSuw6m4c

緊急事態宣言中ですが公開致します!
映画『なんのちゃんの第二次世界大戦』主演・吹越満さんより公開に向けてメッセージが到着!

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(C)なんのちゃんフィルム
「恐らく、皆さんがタイトルから想像する内容からは、どんどんズレていきます。面白いです。淡路島のおかしな人達がわんさか出てきます。とても変な映画ですが、大マジメな映画です!良い意味で裏切ってくれる作品ですので、どういう映画か想像してから劇場にお越しください!」

2020年/日本/112分/カラー/ビスタ/5.1ch/DCP
配給・宣伝:なんのちゃんフィルム
特別協力:淡路市、洲本市、南あわじ市、(一財)淡路島くにうみ協会、淡路島フィルムオフィス、洲本オリオン 
公式サイト:http://nannochan.com/
★2021年5月8日(土) より渋谷ユーロスペースにて、
5月22日(土)より名古屋シネマテークにて公開!他全国順次公開
☆公開中、オンラインでのイベントを実施予定。



posted by sakiko at 16:22| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする