2021年03月06日
アウトポスト 原題:THE OUTPOST
監督:ロッド・ルーリー(『ザ・コンテンダー』)
脚本:エリック・ジョンソン
出演:スコット・イーストウッド(『ワイルド・スピード ICE BREAK』、)ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ(『スリー・ビルボード』)、オーランド・ブルーム(『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ)、ジャック・ケシー(『デッドプール2』)、マイロ・ギブソン(『ハクソー・リッジ』)
本作は、アフガニスタンで最悪の戦闘と言われる「カムデシュの戦い」を、ジェイク・タッパーによるノンフィクション小説「The Outpost: An Untold Story of American Valor」に基づき映画化したもの。
2006年、アフガニスタン北東部に現地の人々と連携してパキスタンからのターリバーン流入を防ぐため前哨基地(アウトポスト)が作られる。 キーティング前哨基地は、米軍の補給経路を維持するための重要拠点でもあったが、ヒンドゥークシュ山脈に囲まれた谷間にあって、いつ上から敵に狙われても不思議のない立地だった。時折、銃撃され命を落とす者もいて明日は我が身だ。
ついに、2009年10月3日、300人ものターリバーン兵が押し寄せる。50人の米軍兵は圧倒的不利な状況下でいかにして立ち向かったのか・・・
なぜ、米軍はこの地で戦わなければならないのか?という大前提はさておき、救われるのは、大尉たちが部下に「地元の人に敬意を表して、彼らの気持ちに寄り添うように」と諭していること。
地元の長老たちとの合議場で、「40年も居座って」と言う長老に、「それはロシア・・・」と言いかけてやめる場面がありました。ソ連がアフガニスタンに侵攻したのは1979年12月なので、2000年後半の時点では、それから40年も経っていませんが、それよりもずっと前の19世紀にイギリスが居座ったことを思えば、40年以上!
パキスタンとの国境線も、パシュトゥーン人が住む地区を真っ二つに分断する形でイギリスが引いたもの。パキスタンのアフガニスタン難民キャンプで育ったパシュトゥーン人が中心となってできたターリバーンにとって、険しい山伝いに国境を越えてくることなど朝飯前。地元の人たちとは言葉も通じるはず。米軍にとって、まさに強敵です。
映画の最後に、実際にこの戦いを経験した本物の兵士で自分自身を演じた方が「亡くなった戦友たちのことを伝えるのは義務だと思った」と語っています。 彼らは、愛する家族と離れて、死と隣り合わせの兵士という任務になぜつかなければならなかったのか?と、つくづく思います。
この部隊は、勲章の数が多かったことも映画で紹介されますが、勲章のために兵士になったわけでもないでしょう。戦争のない世界は、なぜ実現しないのかと虚しくなります。(咲)
この谷間に到着した兵士の誰もが、あんぐりと口を開けたに違いない、とおばちゃんの私でも想像がつきます。狙ってくれと言わんばかりの地形のところに前哨基地など作らせたのは、命令だけして弾の届かない場所にいる高官でしょう。大事な夫や息子や兄弟がそんなところで「国や家族を守るため」と死んでいくとわかったら、誰も送り出したくありません。
リアルな戦闘場面を精魂込めて再現しただろうスタッフ、キャストたちに敬意を表し、任務を全うして亡くなっていった若い兵士たちを心から悼むばかり。(白)
2020年/アメリカ/英語ほか/123分/シネマスコープ
字幕翻訳:大城哲郎、字幕監修:大久保義信
配給:クロックワークス
© 2020 OUTPOST PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:https://klockworx-v.com/outpost/
★2021年3月12日(金)より新宿バルト9ほか全国ロードショー
ワン・モア・ライフ! 原題:Momenti di trascurabile felicità 英題:Ordinary Happiness
監督・脚本:ダニエーレ・ルケッティ(『ローマ法王になる日まで』)
出演:ピエールフランチェスコ・ディリベルト(ピフ)、トニー・エドゥアルト、レナート・カルペンティエーリ(『ナポリの隣人』)
イタリア、シチリア島のパレルモ。港で技師として働くパオロは、渋滞が大嫌い。仕事を終え、スクーターをぶっ飛ばして家路につく。交差点をいつものように右折が赤信号の数秒のうちにすり抜けようとしたが、一瞬の差でバンに撥ね飛ばされ即死してしまう。
天国の事務所は人でごった返していて、ようやく呼ばれたパオロは、「健康のためにジンジャー入りのスムージーも我慢して飲んでいたのに!」と役人に向かって駄々をこねる。「え? スムージー?」と、情報を追加し計算し直した役人から「寿命があと1時間半あった。2分オマケして92分」と言い渡される。役人に付き添われて、地上に戻ったパオロ。人生最後の92分、どうやって過ごす?
冒頭、パオロがガントリークレーンの上から眺めるパレルモの町の美しいこと! パレルモが低い山に抱かれた町なのを初めて知りました。シチリアは、9 ~11世紀にわたってアラブの支配下にあったところで、一度は行ってみたいと思っていたのですが、故郷・神戸にも似た地形だと知り、ますます訪れてみたくなりました。
その神戸の同級生で、交通事故に遭って瀕死の状態から生還、「三途の川を渡ったとこで、あんた、家族もおるし、まだやり残したことあるやろと言われて戻ってきた」という男性がいるのを思い出しました。
本作では、パオロが生きるチャンスをもう一度もらって、人生を悔い改め、それまでないがしろにしてきた妻や子と最後の時間を過ごそうとする姿がユーモアたっぷりに描かれています。
2017年、『ローマ法王になる日まで』公開の折に、ダニエーレ・ルケッティ監督にインタビュー。その中に、「人生、何度でもやりなおすことができる!」という言葉があって、本作にも通じる?とびっくり!
さて、余命がわかったら、私なら何をする? (咲)
天国の入り口は大混雑でした。受付係が操作しているパソコンは最新型とはいえず、データの不備や計算ミスもそのせいかも。自分勝手な信号無視は棚に上げて、パオロ(高松英郎さん似)が猛抗議の末もらった92分。リアルタイムで観客も体験します。短い。
合間に今更ながら後悔ばかりのパオロの人生も御開帳。なんていい加減な男なんだ、おまけに妙なところにこだわって細かい。そんな彼の欠点も含めて愛した妻のアガタに拍手。そういう人にはなぜかいい奥さんがついて、苦労させられるんだよね。しっかりした子どもたちが育ったのは母親のおかげです。
パオロはピフことピエールフランチェスコ・ディリベルトのあてがきだそうです。すっごく人気の俳優だそうです。天国の役人は渋くて素敵なレナート・カルペンティエーリ。間違いを認め、温情も併せ持ちます。お役人はこうでなくては。懲りないパオロに笑ったり呆れたりしながら、しんみり家族愛にも浸れる作品でした。(白)
2019年/イタリア/94分/シネスコ/5.1ch/イタリア語
日本語字幕:関口英子
後援:イタリア大使館、イタリア文化会館
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
(C)Copyright 2019 I.B.C. Movie
公式サイト:https://one-more-life.jp/
★2021年3月12日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開