2021年02月13日

痛くない死に方

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監督・脚本:高橋伴明
原作・医療監修:長尾和宏
撮影・照明:今井哲郎
音楽:吉川忠秀
出演:柄本佑(河田仁)、坂井真紀(井上智美)、余貴美子(中井春菜)、大谷直子(本多しぐれ)、宇崎竜童(本多彰)、奥田瑛二(長野浩平)

在宅医療に従事する河田医師は、末期の肺がん患者の大貫を担当する。娘の智美は夫の協力も得て自宅介護を続けていたが、河田の対応に疑問と不満が募る。河田が間に合わないまま、苦痛の中で父が逝ってしまう。智美は在宅を選んだ自分を責めていた。河田も患者や家族との意思の疎通が足りなかったと悔やみ、先輩の長野の治療現場を見学させてもらう。長野は病気の臓器の断片ではなく、患者の物語を見ろ、と河田をさとす。患者と丁寧に向き合う姿に自分との違いを痛感して、長野のそばで医療の根底から学んでいく。
2年後、河田は大貫と同じ末期のがん患者の本多彰に出会った。

映画の大貫さんと同じ肺がんで実父を、親しい友人を二人見送りました。大貫さんの苦しむ様子に、自分がそばにいてもきっと何もできなかったな、とか、せめて手を握っていたかったとかいろいろな思いが湧き上がってきました。
河田先生が先輩の長野先生の診療を目の当たりにして変わっていく姿に、若いお医者さんたちみんなにこんな先輩がいてほしいと思いました。同じ活動はできなくとも(モデルの長尾先生の毎日があまりに大変そうで)、その心を受け継いでほしいものです。後半の宇崎竜童さん演じる本多さん、惚れます。なんて粋でカッコいいご夫婦でしょう!高橋伴明監督の「理想」だそうです。お話聞けましたのでしばしお待ちを。
自分ごとですが、20年前、骨折を機に寝たきりになった義母を10年間在宅介護して看取りました。夫は単身赴任中、ヘルパーさんと夫の姉妹、近所のかかりつけのお医者さんとの連携プレーでした。介護保険の恩恵はあまりうけられませんでしたが、ケアマネさんも介護経験があって頼りになりました。義母は血圧が高いほか病気はなく、最期まで自分で食事ができました。「あっぱれ!」と義母と自分たちをほめてあげたいです。挫折することなく続けられたのは「介護しているからとあれこれ我慢せず、自分の楽しみを確保した」が大きいです。ヘルパーさんがいるときはバイトや映画に出かけ、義姉妹が泊まってくれたので実母と一緒に海外にも行けました。借りられる手は全て借りて、一人で背負わないことです。お神輿もみんなで担ぐので楽しく前に進めるんですから。(白)


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余貴美子、柄本佑、宇崎竜童、大谷直子

「最期は家で迎えたい」。そんな言葉をよく聞きますが、それを叶えるためにはどんな苦労があるのか。この作品を見ると、いろいろな意味でよくわかります。がん難民という言葉は初めて聞きました。病気で苦しむだけでなく、こんな思いもしなくちゃいけないとは! それでも、宇崎竜童演じる末期がん患者を見ていると最期はこうありたいと思ってしまいます。
そのためには在宅医選びも重要らしい。さて、うちの近くに奥田瑛二が演じた長野先生のような方が開業してくれているといいのだけれど。(堀)


2019年/日本/カラー/112分
配給・宣伝:渋谷プロダクション
(C)「痛くない死に方」製作委員会
https://itakunaishinikata.com/
★2021年2月20日(金)シネスイッチ銀座、3月5日(金)~テアトル梅田、他関西地方ロードショー

★高橋伴明監督のインタビュー掲載しました。こちらです。
★原作の著者長尾和宏先生のドキュメンタリー『けったいな町医者』はこちらです。


posted by shiraishi at 00:48| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

藁にもすがる獣たち(原題:Beasts Clawing at Straws)

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監督:脚本:キム・ヨンフン
原作:曽根圭介「藁にもすがる獣たち」(講談社文庫)
撮影:キム・テソン
音楽:カン・ネネ
出演:チョン・ドヨン(ヨンヒ)、チョン・ウソン(テヨン)、ペ・ソンウ(ジュンマン)、ユン・ヨジョン(スンジャ)、チョン・マンシク(ドゥマン)、チン・ギョン(ヨンソン)、シン・ヒョンビン(ミラン)、チョン・ガラム(ジンテ)

韓国の港町。ジュンマンは事業に失敗してサウナのアルバイトをしている。ロッカーの中に忘れたままのバッグを見つけた。開けると札束がぎっしりと詰まっていた。夜遅くに来て買い物に出ていったままのお客のものだとわかる。家には認知症の母、その世話とやりくりに苦労している妻がいる。大学生の娘に学費を出すこともできない。喉から手が出るほどお金はほしい。
出入国管理の仕事をしているテヨンは、失踪した恋人の借金の取り立てに追われている。金融業者に脅されているが金策のあてもない。借金のために夫にDVを受けているミラン。過去を精算して新たな人生を歩みたいヨンヒ。誰もが地獄から抜け出すために藁にもすがりたい。欲望に駆られたら獣にだってなる!?あの10億ウォンはどこへ行く?

10億ウォンというと今の為替で9500万円。ざっくりで1億円。1980年、銀座で風呂敷包みの1億円を拾って届け、落とし主が現れず一躍有名になった方がいましたね。結局誰のどんなお金か判明しませんでしたが、この映画はだんだんと明らかになります。
テヨン役のチョン・ウソンが口先ばかりのいい加減な男。いつもカッコいい役なのに、これ。チョン・ドヨンが何枚も上手の、男を翻弄するヨンヒ。真っ赤な口紅に胸元のあいたドレスが妖艶です。この二人に真面目なジュンマンのペ・ソンウや、凶暴なパク社長のチョン・マンシクらキャストたちが少しずつ関わって思いがけない展開になります。二転三転するストーリーに目が離せません。原作はありますが、脚本も書いたキム・ヨンフン監督うまいです!次作が楽しみ。
認知症の母スンジャのひとことが胸に落ちてしみてきます。さすがユン・ヨジョンさん。蛇足ながら”1億円は1万円札で重さ10㎏”、5万ウォン札で10億ウォンはその倍?(白)


冒頭、大写しのルイ・ヴィトンの鞄。若い頃、彼から貰ったのと同じ!と思わず見入ってしまいました。鞄自体が重くて、ブランド志向じゃない私には無用の長物でした。これに10億ウォンの札束が入っているのですから、かなりの重さ! 男性にとっても重いけど、チョン・ドヨン演じる華奢なヨンヒには、とてつもない重さのはず。それにしても、本作のチョン・ドヨン、ほんとに艶っぽいです。
チョン・ウソンがそのヨンヒの色気に現を抜かして借金を背負うマヌケな男なのですが、そんな役もさすがに上手い!(と、ウソンさま命の私) 
ホテル併設のチムジルバンでバイトしているジュンマンが床掃除している時に流れている3つのニュースが、この物語の核になっている事件。どうぞ聞き流してしまわずしっかり聞いてください。伏線がいっぱいあって、最後のオチには拍手です♪ あ~面白かった! (咲)


原作は曽根圭介の同名小説です。しかし韓国らしく設定し直されていて、日本の話だったとは思えません。原作者も「実をいうと、私は今、本作を手本にして原作を書き直したいと、半ば本気で思っています」とコメントしているくらい。原作は未読なのですが、小説ならではの仕掛けがあり、それをキム・ヨンフン監督は原作の構成を生かしつつ、巧みな手法で解決したそう。脚本も手掛けた監督の手腕ですね。しかし、高額な現金って怖いですね。どんな辛い仕打ちにも耐えていた人が大金を見つけた瞬間、人が変わってしまう。クライマックスのどんでん返しに笑ったものの、ラストで誰もが持つ人間の心の闇を改めて感じさせられます。
チョン・ドヨンが演じる女社長とチョン・ウソンが演じる出入国審査官のクズっぷりが半端ないのですが、どこか魅かれてしまう。その結果、ずるずると道を踏み外していく人がいるのも納得です。
個人的には不法滞在者を演じたチョン・ガラムに注目。「感染家族」でキャベツを食べるゾンビをかわいく演じていましたが、本作でも好きになった女のためなら何でもやってしまう漢気を見せたものの、その後にうじうじと悩む辺りは母性本能をかき立てられます。
また、『ミナリ』でオスカーの呼び声高いユン・ヨジョンは息子かわいさのあまりに嫁にきびしい認知症の姑を好演。こうはなりたくないと思いつつ、自分もこうなってしまうのではないかと不安になりました。(堀)


2020年/韓国/カラー/シネスコ/109分
配給:クロックワークス
(C) 2020 MegaboxJoongAng PLUS M & B.A. ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED. (C) 曽根圭介/講談社
http://klockworx-asia.com/warasuga/
★2021年2月19日(金)シネマート新宿ほかロードショー
posted by shiraishi at 00:02| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする