2021年01月08日

43年後のアイ・ラヴ・ユー(原題:Remember Me)

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監督・脚本:マーティン・ロセテ
出演:ブルース・ダーン、カロリーヌ・シロル、ブライアン・コックス

70歳のクロード(ブルース・ダーン)は妻を亡くし、LA郊外に一人で住む元演劇評論家。親友のシェーン(ブライアン・コックス)と老後を謳歌していた。ある日、昔の恋人で人気舞台女優のリリィ(カロリーヌ・シロル)がアルツハイマーを患わせて施設に入った事を知る。もう一度リリィに会いたいと願ったクロードは、アルツハイマーの《フリ》をしてリリィと同じ施設に入居するという一世一代の《嘘》を思いつく。シェーンの協力のもと、遂にリリィと念願の再会を果たしたクロード。だがリリィの記憶からクロードは完全に消し去られていた―。そんなリリィに、クロードは毎日のように二人の想い出を語りかけるのだった。ある日、昔リリィが演じたシェイクスピアの「冬物語」を施設で観る事になり、クロードは孫娘と一緒にある作戦を実行する。

このところシルバー世代を主人公に迎えた作品がぐっと増えてきました。本作もその1つ。かつて愛した女性が認知症になって施設で暮らしていることを知った主人公の涙ぐましい奮闘を描いた純愛ストーリーです。
認知症には特効薬はありません。しかし、何かの拍子にふっと思い出したりすることがあるようです。頭ではなく、体が覚えていることなのでしょう。本作ではクロードを演劇評論家に、リリィを舞台女優に設定することで、リリィが認知症になってもかわいらしさを保っていることやクロードが起こした奇跡にリアリティをもたらしています。
またクロードの奮闘はリリィだけでなく、家族や親友にも影響を及ぼしました。ダメだと諦める前に一歩踏み出してみる。自分の思い込みが明るい未来を阻んでいたことに気づくのです。とはいえ、すべてが思い通りに進むわけじゃない。クロードもそれはわかっていました。立場をわきまえ、引くべきところは潔く引く。男としての矜持に惚れ惚れしてしまいます。それを体現できるのはブルース・ダーンだからこそ! さすがです。
作品にはシェイクスピアの作品がいくつか登場します。私はシェイクスピアに詳しくないのですが、解説的な話を自然な流れで盛り込んであるので問題ありませんでした。ただ詳しい方にはより楽しめるに違いありません。(堀)


冒頭、クロードと悪友シェーンとの会話は薬のことばかりで、この年になるとそうなるよねと実感する年代に私も達しています。かつての恋人の消息を知って色めきだって、認知症のフリまでして施設に入居してしまうクロードは、あっぱれです。人生まだまだ・・・と、私もチャンスを期待して元気になりました♪ 
認知症のリリィは、かつて舞台で演じた時のセリフをにわかに思い出します。年をとっても、昔ひとつ覚えした外国語のフレーズや、語劇で演じたセリフをいつまでも覚えている方を知っているので、あるあると思いました。(咲)



2019年/スペイン・アメリカ・フランス/英語/89分/スコープ/カラー/5.1ch/日本語字幕:星加久実
配給:松竹
(C) 2019 CREATE ENTERTAINMENT, LAZONA, KAMEL FILMS, TORNADO FILMS AIE, FCOMME FILM . All rights reserved.
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/43love
★2021年1月15日(金)新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷
posted by ほりきみき at 23:54| Comment(0) | スペイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

キング・オブ・シーヴズ(原題:King of thieves) 

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監督:ジェームズ・マーシュ(『博士と彼女のセオリー』)
出演:マイケル・ケイン、ジム・ブロードベント、トム・コートネイ、チャーリー・コックス、ポール・ホワイトハウス、レイ・ウィンストン、マイケル・ガンボン  

かつて「泥棒の王(キング・オブ・シーヴズ)」と呼ばれたブライアン(マイケル・ケイン)。一度は裏社会から引退し、愛する妻と平穏な日々を過ごしていた。しかし、妻が急逝したことをきっかけに、かつての犯罪にまみれた自分が呼び起こされることになる。知人のバジル(チャーリー・コックス)からロンドン随一の宝飾店街〝ハットンガーデン″での大掛かりな窃盗計画を持ちかけられたブライアンは、テリー(ジム・ブロードベント)、ケニー(トム・コートネイ)、ダニー(レイ・ウィンストン)、カール(ポール・ホワイトハウス)ら、かつての悪友たちを集め、平均年齢60歳オーバーの窃盗団を結成。綿密な計画のもといざ実行日を迎えようとしたとき、ブライアンは突然計画から抜けると言い出す・・・。

本作は、英国史上もっとも最高額で最高齢の金庫破りと呼ばれた実話の映画化です。マイケル・ケインを始めとする英国を代表する名優たちが集結し、圧倒的な存在感を示しました。
作品が描いているのは事件の顛末だけではありません。シルバー世代の生活も描くことで、彼らの悩みや葛藤を浮かび上がらせます。窃盗団リーダーのブライアンは愛する妻を喪い、生きる喜びさえ失いそうになっていましたが、窃盗を持ち掛けられた途端に目が活き活きとしてきました。けっしてお金が目的ではなかったのが伝わってきます。シルバーパスでバスに乗り、現場の下見に出掛けるシーンは何とも微笑ましい。高級車が似合うマイケル・ケインが自然に演じるのには驚きましたが。
ストーリーの合間には名優たちの若かりし頃の出演作からチョイスされた本作に通じるようなカットが挿し込まれています。これも彼らに長く偉大なキャリアがあるからこそ。何の作品なのかを見つけるのも一興かもしれません。(堀)


泥棒稼業で人生を送ってきた人の老後ってどうよという姿を垣間見せてくれました。何度か臭い飯も食ったであろう人たち。もしかしたら刑務所の中で友情をはぐくんで、出所したら一緒に大きな山を当てようなんてこともあったのではないでしょうか。
名優たちが、それなりのワルに見えて凄みさえあります。最後に映し出されるモデルになった人たちのお顔にも注目を! 映画で顔を知られることになるとは!・・・とご本人たちは苦笑しているかも。(咲)


2018/イギリス/スコープサイズ/108分/カラー/英語/DCP/5.1ch/
配給:キノフィルムズ
(C) 2018 / STUDIOCANAL S.A.S. - All Rights reserved
公式サイト:https://kingofthieves.jp/
★2021年1月15日(金)TOHOシネマズ シャンテ ほか全国順次公開
posted by ほりきみき at 23:26| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする