2020年12月29日

おとなの事情 スマホをのぞいたら

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監督:光野道夫
原作:映画“Pefettie Sconosciuti”
脚本:岡田惠和
撮影:須藤康夫
音楽:眞鍋昭大
出演:東山紀之(小山三平)、常盤貴子(園山薫)、益岡徹(六甲隆)、田口浩正(園山零士)、木南晴夏(向井杏)、淵上泰史(向井幸治)、鈴木保奈美(六甲絵里)

ある事情で知り合い、毎年食事会を催している三組の夫婦と中年の独身男性。今回も賑やかなパーティでお酒もほどよく回ったころ、一番若い向井杏が「今からスマホをスピーカーにして、届いたメールも公開しよう」と提案する。ほかのみんなは内心ギョッとするものの、作り笑顔でしぶしぶ応じることになった。それからスマホが鳴るたびに戦々恐々。こんなときに限ってかかってくる電話、隠しておきたい秘密がさらされて、楽しいはずのゲームは修羅場と化していった。

イタリアのコメディ映画『おとなの事情』(Perfetti sconosciuti)は2016年制作。日本では翌17年に公開されました。7人の男女が食事会に集い、スマートフォンをテーブルに出してゲームをしようというところは同じ。スマホの機能がどんどん向上し、世界中に普及している今、このドラマは他人事でなかったのでしょう。18か国でリメイクされたとか。各国の暮らしぶりを反映した作品になっているはずで、どれどれと見比べたいものです。日本版は芸達者な俳優陣が集まって、重くなりすぎずにまとまりました。
笑って済むなら良いけれど、これで人間関係にヒビが入ったり後々まで響いたりするなら困ります。秘密がなければいいんですけどね。あなたとあなたのスマホは大丈夫ですか?
スマホだけでなく、パソコンもたくさんのサイトに登録しパスワードを使っています。もし急に倒れたりしたら、本人が使えないのに有料サイトの会費引き落としが続くということもあります。亡くなっても死亡証明書一つではすまないそうで、これはなんとかしなくてはと目下の懸案事項。(白)


セレブな医者夫婦、パラリーガルの夫とパート務めの妻、カフェレストランの雇われ店長の夫と獣医の妻という3組の夫婦と1人の独身男性が集まってテーブルを囲む。結婚間もない獣医妻が夫を信じられなくなり、夫婦間に秘密はあるのかと他の夫婦に疑問を投げ掛けた。
気持ちは分かる。雇われ店長の夫はちょっと女にいい加減そうですから。しかし、夫婦間で秘密は持たないことと、みんなの前でスマホをオープンにするのは意味が違う。他人には言えない夫婦としての秘密もあるはず。と思いながら見ていましたが、誰もそんなことは気にしません。こんなときに限って、この人からこんな連絡が…ということが次々起こり、見ているこちらはほとんどワイドショー感覚。独身男性も含め、パートナーとの関係に亀裂が入ったかのように見せて、それぞれの機微に触れた修復が見事です。特に益岡徹と鈴木保奈美が演じたセレブな医者夫婦は夫婦の絆が深まったかもしれません。
東山紀之が無駄にイケメンで人が良すぎる中年男性を演じているのがとても新鮮!(堀)


2021年/日本/カラー/シネスコ/101分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
(C)2020 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.
https://www.otonanojijo.jp/
★2021年1月8日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 13:42| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット

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監督:南部充俊
撮影:千葉真一
音楽:青柳拓次
出演:菅谷晋一、ザ・クロマニヨンズ(甲本ヒロト、真島昌利、小林勝、桐田勝治)、THE OKAMOTO’S(オカモトショウ、オカモトコウキ、ハマ・オカモト、オカモトレイジ)、青柳拓次、VLADO DZIHANほか

デザイナーの菅谷晋一は元々大学では建築を学び、卒業後は家業の町工場を手伝った。デザインは全くの独学でどこにも属さず、今もたった一人でものづくりをしている。南部充俊監督は自分の会社のロゴマークデザインを菅谷に依頼している。好きなことを仕事にし20年続けている菅谷の生き方に共鳴して、自ら監督として菅谷に密着した。作品の製作過程を記録したドキュメンタリー。

見覚えのある絵柄にこの人が描いていたのか!と興味深々。技法が多岐にわたっているというのに、アトリエが整然としているのにまずびっくりしました。モノづくりを始めると(私は)周りにあれこれ積みあがったり拡がったり、どんどんモノが増えていってしまいます。菅谷さんは頭の中にすっかりイメージが出来上がっていて、必要なものがすぐに取り出せて無駄がないのでしょう。ああ羨ましい。作っている間中楽しそうで、迷って悩む風もありません。物腰も柔らかく、それでいてきっぱりと納品します。
レコードジャケットは最初に目にする手にできる「情報」で、デザインはとっても大事なんです。ジャケ買いするほど。菅谷さんの一見ヘタウマ風のデザインはすごく印象的です。中身とぴったりで「これ面白そう」な感じがするんですよね。
高校の美術の時間、一度だけレコードジャケットを作りました。いろいろな文字を組み合わせて作った、たった一枚のレコードジャケット、どこへいっちゃったかな。(白)


菅谷晋一さんは絵を描き、オブジェを作り、版画を刷り、写真を撮り、コラージュをし、映像のディレクションまで、ビジュアルをあらゆる手段で表現し、ザ・クロマニヨンズ、OKAMOTO'Sなどのアートワークを手がけてきました。
作品ではザ・クロマニヨンズの13枚目となるアルバム「PUNCH」の制作に密着しながら、本人やこれまで菅谷さんと仕事をしてきたザ・クロマニヨンズとOKAMOTO'Sのメンバー、関係者のインタビューを織り交ぜながら、菅谷さんのアートワークの「つくりかた」を紐解いていきます。
菅谷さんのソフトな話しぶりから穏やかな人柄が伝わってきます。しかし、ザ・クロマニヨンズとOKAMOTO'Sのメンバーが口を揃えて話すには、菅谷さんは捨て案を一切用意せず、自信を持って完成した作品を提出するとのこと。プロとしての矜持を感じます。最新作はボルト2つをデザインしたものですが、なぜボルトなのか。その謎は作品の最後に明らかにされ、菅谷さんの仕事に対する意識の高さを改めて感じました。(堀)


2020年/日本/カラー/96分
配給:SPACE SHOWER FILMS
(C)2020「エポックのアトリエ」製作委員会
https://epok-film.com/
★2021年1月8日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 13:19| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする