2020年12月20日
ソング・トゥ・ソング 原題:SONG TO SONG
監督・脚本:テレンス・マリック
製作総指揮:ケン・カオ
撮影監督:エマニュエル・ルベツキ
出演:ルーニー・マーラ、ライアン・ゴスリング、マイケル・ファスべンダー、ナタリー・ポートマン、ケイト・ブランシェット、ホリー・ハンター、べレニス・マルロー、ヴァル・キルマー、リッキ・リー、イギー・ポップ、パティ・スミス、ジョン・ライドン、フローレンス・ウェルチ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(アンソニー・キーディス、フリー、チャド・スミス、ジョシュ・クリングホッファー)
美術監督:ジャック・フィスク
衣装デザイナー:ジャクリーン・ウェスト
音楽:ローレン・マリー・ミクス
編集:ハンク・コーウィン
テキサス州オースティン。アメリカ有数の音楽の街。ここで様々な思いを抱えて生きる男女の人生が交差する。
フリーターのフェイ(ルーニー・マーラ)は、ロック・バンドでギターを弾いているところを大物プロデューサーのクック(マイケル・ファスベンダー)に見初められ、密かに付き合うようになる。ソングライターBV(ライアン・ゴズリング)に声をかけられたフェイは、クックにそそのかされ、BVとも付き合うようになる。一方、クックは夢を諦めたウェイトレスのロンダ(ナタリー・ポートマン)を誘惑する・・・
浮遊するかのように、男女それぞれの行動が綴られ、映像詩を見ているかのよう。かと思えば、急に現実的な営みが展開して、くらくら。名優たちの即興演技にゆだねられていたと知り、この不思議な映像世界が生み出されたことに納得。
そして彩を添えているのが、様々なミュージシャンたち。ロック・フェスにカメラを持ち込んで、ライブ映像だけでなく、バックステージや楽屋などフェスの裏側も映し出しています。私は疎いので知らないミュージシャンばかりですが、詳しい人には思いがけない嬉しい映像もあるのではないでしょうか。(咲)
何者かになりたいフリーターのフェイ。そんなフェイに想いを寄せる、売れないソングライターBV。フェイの生活をサポートする、大物プロデューサーのクック。クックに誘惑される、夢を諦めたウェイトレスのロンダ。4人が織り成す恋模様を美しい映像と詩的なモノローグで映し出す。まるで夢でも見ているかのような2時間。夢を叶えたくてもがくフェイとBV、夢を諦めて生きるロンダにとってクックは天使なのか、悪魔なのか。すべてを手に入れ、人生に夢が見出せないクックが実はいちばん寂しいのかもしれない。(堀)
2017年/アメリカ/英語/128分/シネスコ/カラー/5.1ch/PG12
字幕:野城尚子
提供:キングレコード、AMGエンタテイメント
配給宣伝:AMGエンタテインメント
© 2017 Buckeye Pictures, LLC
公式サイト:https://songtosong.jp/
★12月25日(金)より、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開
ジョゼと虎と魚たち
監督:タムラコータロー
原作:田辺聖子
脚本:桑村さや香
総作画監督:飯塚晴子
主題歌:Eve
声の出演:中川大志(鈴川恒夫)、清原果耶(ジョゼ)、宮本侑芽(二ノ宮舞)、興津和幸(松浦隼人)、Lynn(岸本花菜)、松寺千恵美(山村チヅ)
海洋学を専攻する大学生の恒夫はメキシコに生息する幻の魚を見ることを夢見て、バイトに精を出している。ある日坂道を失踪してくる車椅子に気づき、間一髪で乗っていた女の子を助けることができた。小柄な彼女の名前はジョゼ、ずっと車椅子生活でおばあちゃんと暮らしている。家まで送り届けた恒夫に、祖母のチヅさんは管理人バイトを持ちかける。それはジョゼの注文を聞いて叶えてやること。口が悪くて一筋縄でいかないジョゼに恒夫は振り回されるが、まっすぐにぶつかりながら投げ出すことなく、どこまでも付き合った。ジョゼは少しずつ頑なだった心を開いて、外へ踏み出そうとする。
一足早くTIFFで観ることができました。2003年の実写版(犬童一心監督)では、妻夫木聡さん池脇千鶴さんに涙していました。自分の名前はジョゼだというクミ子は、フランソワーズ・サガンの小説のヒロインから名前をとっています。その主人公に重ねるほど気に入っているというわけで、女の子というより大人の女性です。原作はもっと大人向きでした。
アニメーションでリメイクされたこちらは、より軽やかに明るくなって大分趣が変わっていました。アニメーションなら小中学生でも楽しんで観られますね。そしてもう少し大きくなったら実写版や原作も見てください。
(白)
アニメならではのポップな色使い、世界観にぐいぐい引き込まれます。原作は田辺聖子の同名小説。こんな話を書く人だったとは! 原作は未読で、実写版も未見だったので、ラストの展開に驚きました。でも、これもハッピーエンドなんでしょうね。主人公の声を当てたのは中川大志、清原果耶。2人の顔が思い浮かばないくらい完璧に声が役柄に溶け込んでいました。
車椅子生活の孫を心配する祖母の気持ちは分からなくもないけれど、自分の年齢を考えたら、ジョゼが1人で生きていけるように厳しく接しなければいけないのではないかと思うものの、いざその立場になったらできないかもしれない。子育て経験者は自分の子育てを振り返ってしまうかもしれません。(堀)
2020年/日本/カラー/98分
配給:松竹、KADOKAWA
(C)2020 Seiko Tanabe/ KADOKAWA/ Josee Project
https://joseetora.jp/
★2020年12月25日(金)ロードショー
AWAKE
監督・脚本:山田篤宏
撮影:今井哲郎
音楽:佐藤望
出演:吉沢亮(清田英一)、若葉竜也(浅川 陸)、落合モトキ(磯野達也)、寛 一郎(中島透)、馬場ふみか(磯野栞)、川島潤哉(山崎新一)、永岡佑(堀亮太)、森矢カンナ(山内ひろみ)、中村まこと(清田英作)
幼いころから将棋の才能を見込まれ、プロ棋士になることを夢見て邁進してきた清田英一。同じころその天才ぶりを発揮している浅川陸がいた。彼に敗北した英一はプロになることを諦め、目標のないまま大学生活を送っていた。ところが、たまたま父親のコンピュータゲームの将棋を覗いて、その面白さに目覚める。自分でプログラムを作ってもっと強くしてみたいと、大学の人工知能研究会に飛び込んだ。変わり者の先輩磯野にしごかれた英一は、将棋で鍛えた記憶力と洞察力でたちまちプログラミングをモノにしていく。数年後開発したソフトを「AWAKE」と名付け、コンピュータ将棋の世界でトップとなった英一は棋士との対決を提案される。相手はかつてのライバルで、今や棋界きっての若手強豪となった浅川陸だった。
2015年に実際にあった将棋電王戦(※)をヒントにして構築した山田篤宏監督のオリジナルシナリオは、第1回木下グループ新人監督賞グランプリに輝きました。主演に吉沢亮、ライバルの天才棋士に若葉竜也、英一が信頼する磯野先輩を落合モトキ、良き俳優を得て、劇場映画デビューを飾りました。映画は英一と陸の子ども時代から将棋にかけてきた日々、英一が挫折してから別の道で再起を図るところ、そして対決までを丁寧に見せています。
将棋以外の体験がなく人間関係に不器用な英一を吉沢亮が体現しました。少女漫画の王子様がぴったりの端正なルックスですが、様々な感情が渦巻くようすを表情で見せています。熾烈な戦いの続く作品『キングダム』(2019)の若き王と影武者の二役を演じた姿が重なりました。静かに考えている場面が多く、台詞が極端に少ない陸を演じた若葉竜也は、着物での所作や指し手の動きが美しく、チビ玉の片鱗が残っているのかもしれません。磯部先輩が寡黙な二人の何倍も台詞がありました。緊迫した対局シーンと別のお休みどころになっていました。
完成報告会見に参加しまして只今書き起こし中です。「吉沢君が死ぬほど暗かった」という若葉君発言がありましたが、そのへんも(笑)。吉沢君は終始笑ってウケていましたので、ご心配なく。もうちょっとお待ちください。
完成報告会見は12月24日18時以降からご覧になれます。こちら。(白)
※2015年に行われた将棋電王戦FINAL第5局、阿久津主税八段 VS AWAKE戦。開始からわずか49分、21手という異例のスピード決着となった。将棋プログラム・AWAKEの開発者は、元奨励会員という経歴の持ち主、また、棋士の手がコンピュータの弱点をついたものであったことから、当時、ネットユーザー、将棋ファンの間で物議を醸した。
2019年/日本/カラー/シネスコ/119分
配給:キノフィルムズ
(C)2019「AWAKE」フィルムパートナーズ
http://awake-film.com/
★2020年12月25日(金)新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
映画 えんとつ町のプペル
監督:廣田裕介
原作・脚本・製作総指揮:西野亮廣
アニメーション監督:佐野雄太
美術監督:秋本賢一郎
音楽:小島裕規、坂東祐大
声の出演:窪田正孝(プペル)、芦田愛菜(ルビッチ)、 立川志の輔,(ブルーノ)、小池栄子(ローラ)、 藤森慎吾(スコップ)、 野間口徹(レター15世)、伊藤沙莉(アントニオ)、宮根誠司(トシアキ)、大平祥生(デニス)、飯尾和樹(スーさん)、山内圭哉(アイパッチ)、國村隼(ダン)
えんとつ町のルール
1 空を見上げてはいけない
2 夢を信じてはいけない
3 真実を知ってはいけない
煙に覆われたえんとつ町に住む少年ルビッチは、身体の弱い母ちゃん・ローラと二人暮らし。父ちゃんのブルーノが出かけたまま帰らないので、学校を辞めて煙突掃除人として働いている。この町の人は空を見上げない。ルールを破ると、異端審問官がやってきて、どこかへ連れていかれてしまうから。それでもルビッチは、ブルーノが教えてくれた青い空と、輝く星があることを信じている。けれどもみんなにうそつき呼ばわりされて、友達が一人もいなくなった。ハロウィンも独りぼっちのルビッチの前に、ゴミから生まれたゴミ人間が現れる。名前のないゴミ人間にルビッチはプペルと名付けて、二人は友達になった。
原作の絵本(2016年/幻冬舎)が好きだったので、アニメ化を楽しみにしていました。冒頭の絵柄が動き出すのに、思わず「わぁ」と言ってしまいました。絵本は分業で作られたそうですが、そのビジュアルの美しさやストーリーが評判となり、大ヒットしました。クリスマスシーズンの映画化のせいか、今も人気で売れています。
映画では、著者のお笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣(にしのあきひろ)さんが脚本、製作総指揮を務めました。絵本には描かれていなかった物語の背景が詳しく語られ、スピーディな動きもあいまって老若男女問わず楽しめる作品です。声優のみなさんが適役で、特にプペルの声をあてた窪田正孝さんの声が、生まれたばかりで心もとない無垢なプペルにぴったり。親子もの、友情ものに弱い涙もろい方はハンカチを忘れずに。(白)
制作したSTUDIO4℃はミュージッククリップが得意なスタジオ。冒頭に繰り広げられるハロウィンダンスは鮮やかな色彩と細やかな作画に目が奪われ、見る者を圧倒します。
そして、声をあてた俳優陣の素晴らしいこと!
主人公のルビッチを担当した芦田愛菜はプロの声優レベルです。ゴミ人間・プペル役の窪田正孝もハマり役でした。心優しいキャラクターが本当によく似合う。ルビッチの母親役の小池栄子もクライマックスで家族への思いを語るのですが、真に迫った声の演技に泣きそうになりました。伊藤沙莉が演じた元友だち・アントニオは声もさることながら、キャラクターが魅力的。彼の心の葛藤が伝わってきました。(堀)
2019年/日本/カラー/シネスコ/110分
配給:東宝=吉本興業
(C)西野亮廣/「映画えんとつ町のプペル」製作委員会
https://poupelle.com/
★2020年12月25日(金)全国公開