2020年12月05日
パリのどこかで、あなたと(原題:Deux moi)
監督・脚本:セドリック・クラピッシュ
出演:アナ・ジラルド、フランソワ・シヴィル ほか
パリの隣り合うアパートメントでひとり暮らしをしている30歳のメラニー(アナ・ジラルド)とレミー(フランソワ・シヴィル)。がんの免疫治療の研究者として働くメラニーは、元恋人との恋愛を引きずりながらも仕事に追われる日々を過ごしていた。一方、倉庫で働くレミーは、同僚が解雇されるも自分だけ昇進することへの罪悪感とストレスを抱えていた。その影響から、メラニーはいくら寝ても寝足りない過眠症に、レミーは眠れない不眠症に苦しむ日々が続き、2人はそれぞれセラピーに通い始める。
そんな中、友人からマッチングアプリを勧められたメラニーは、出会った男性たちと一夜限りの関係を繰り返していたが、過去の失恋で空いた心の穴を埋められずに思い悩む。かたや、元同僚への罪悪感を抱えながら孤独な日々を送るレミーは、職場で出会った女性とデートをするも、うまく距離を縮めることができない。
都会の喧騒の中で、同じ電車に乗り、同じ店で買い物をして、同じように孤独を埋められない2人は、道ですれ違うことはあっても知り合うことはない。世界で最も美しい街・パリに住む2人の人生が交わることはあるのか? そして、その出会いは2人の人生を変えるものとなるのか?
男女2人のすれ違いを描いた作品と聞けば、愛し合っていた2人にすれ違いが重ねり、心が離れていく物語を思い浮かべますが、全く違う展開に驚きます。本作ではメラニー(アナ・ジラルド)とレミー(フランソワ・シヴィル)は頻繁に同じシーンに映り込みますが、一向に知り合う機会さえない! 見ているこちらはじれったくてヤキモキ。2人の一挙手一投足に目が離せなくなります。
メラニーを演じたアナ・ジラルドとレミーを演じたフランソワ・シヴィルはクラピッシュ監督の前作『おかえり、ブルゴーニュへ』(17)で姉弟役を演じて2度目の共演。あのときにイケメンだわ!とチェックしたフランソワ・シヴィルはその後、『私の知らないわたしの素顔』でジュリエット・ビノシュがSNS上で恋に落ちるカメラマン、『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』で妻とすれ違うSF作家を演じて、フランスでも人気急上昇中。第72回カンヌ国際映画祭で将来の活躍が期待される若手俳優に贈られるショパール・トロフィーを受賞しました。本作ではちょっと頼りない感じですが、ご近所さんに押し付けられた子猫と暮らすうちに見せるようになる笑顔は最上級の癒しになるはずです。(堀)
隣り合ったアパートに住んでいる二人。観客には何度もニアミスしているのがわかるので、二人の動向に目が離せません。そのほかに気になったのがカウンセリングのシーン。カウンセラーは答えを出すのではなく、本人が自分の心と向き合って問題を見つけ出す手助けをするんですね。なんでもなさそうな話から始まって、だんだんと核心に迫っていく過程が興味深かったです。いったい料金っていくらなんでしょう?ググルとすごく開きがあり、保険の対象になるにはいくつも条件がありました。
人と付き合うのはストレスにもなりますが、得られるものもあります。あの二人が何をきっかけに出会うのかは、映画を観てのお楽しみ。それまでのことを話し合ったら笑っちゃいそうですよね。
どの作品でも人を優しく見つめているクラピッシュ監督には、2008年のフランス映画祭で来日したときインタビューさせていただきました。作品の印象と同様穏やかで優しい方で、小さな雑誌の取材に丁寧にお返事してくださったのを思い出します。 (白)
2019年/111分/PG12/フランス
配給:シネメディア
(C) 2019 / CE QUI ME MEUT MOTION PICTURE - STUDIOCANAL - FRANCE 2 CINEMA
公式サイト:https://someone-somewhere.jp/
★2020年12月11日(金)より YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開