2020年11月17日
サウラ家の人々(原題:Saura(s))
監督:フェリックス・ビスカレット
出演:カルロス・サウラ、カルロス・サウラ・メドラノ、アントニオ・サウラ・メドラノ、アンナ・サウラ・ラモン
スペインが世界に誇る巨匠カルロス・サウラ。今年88歳になる彼と長男アントニオを筆頭にした7人の子どもたちとの交流を撮ったドキュメンタリー映画。サウラが撮った写真に手を加え、子どもたちと率直に語り合う姿をカメラがとらえた。
カルロス・サウラはルイス・ブニュエル、ペドロ・アルモドバルとともにスペインが世界に誇る映画監督。これまでに40本以上映画を撮っており、世界三大映画祭での受賞歴やノミネート作があります。1992年バルセロナオリンピックでは公式映像のディレクターを務めました。
サウラは4人の女性との間に7人の子どもがいます。その1人1人と向き合って語りあうのですが、子どもが幼い頃に父親とどんな風に一緒の時間を過ごしていたか、それについてお互いがどう思っていたかを聞いていると愛情の深さが伝わってきます。子どもたちの何人かはサウラの仕事に関わっていることもあるからか、本作のフェリックス監督は子どもたちに聞き出してほしいテーマを伝えていたよう。しかし、サウラ自身は人生を振り返るようなことは話さないし、気分がそがれると撮影の途中でも「今日はもうお仕舞」と言い出します。しかもフェリックス監督を画面に引き込んでしまいます。サウラの方が一枚も二枚も上手。撮影に行き詰って悩むフェリックス監督の姿まで作品は映し出します。
父と子の語り合いはスタジオ内で作品を映し出しながら行われるので、サウラの作品を見たことがある人にはとても興味深いでしょう。しかし、作品を見たことがなくても大丈夫。また、『カラスの飼育』『ブニュエル~ソロモン王の秘宝~』『フラメンコ・フラメンコ』『J:ビヨンド・フラメンコ』の4作品は同時上映されるので、本作を見て、気になったらぜひご覧ください。(堀)
本作を観る前に、カルロス・サウラというお名前に恥ずかしながら記憶がなかったのですが、『血の婚礼』(日本公開:1985年1月22日)が出てきて、この監督だったのか~と! 公開当時、フランコ独裁の時代に犠牲になった詩人ロルカに興味を持っていたので、そのロルカの舞台の映画化と知って観に行ったのでした。
カルロス・サウラは多くを語らないのですが、7人の子どもたちとの会話の中から、子ども時代に経験したスペイン内戦や、その後のフランコの独裁政治が、彼の人生、そして彼の生み出した写真や映画に大きく影響を与えたことを感じ取れました。
さらに、彼に影響を与えたのが、7人の子どもたちの4人の母親たち! 常に前を向いて歩くカルロス・サウラ。パートナーが代わるたびに作風が変わっていくのです。
チャップリンの娘、ジェラルディン・チャップリンは3番目のパートナー。籍こそ入れませんでしたが、息子を授かっています。
今回、同時上映される『カラスの飼育』(1975年)には、ジェラルディン・チャップリンが出演しています。
やはり同時公開される『フラメンコ・フラメンコ』(日本公開:2012年2月11日)、実は観ていて、「歌や踊り、ギターやピアノの演奏など、フラメンコの真髄を21幕で描き出した重厚な作品でした。ひたすら舞台を写していて、いつしか夢の世界へ・・・」とスタッフ日記に書いていました。トホホです。
★予告編 http://www.youtube.com/watch?v=9HS1e-aD0RQ には、この映画が凝縮されていて、これを観れば本作を観たくなること請け合います♪ (咲)
2017年/スペイン/カラー/85分
配給:パンドラ
© Una producción Pantalla Partida e Imval Madrid. 2017
公式サイト:http://www.pan-dora.co.jp/sauras/
★2020年11月21日(土)〜新宿K's cinemaにてロードショー全国順次公開
ルクス・エテルナ 永遠の光(原題:Lux aeterna)
監督:ギャスパー・ノエ
出演:シャルロット・ゲンズブール、ベアトリス・ダル、アビー・リー・カーショウ、クララ3000、クロード・ガジャン・マウル、フェリックス・マリトー、フレッド・カンビエ、カール・グルスマン、ローラ・ピリュ・ペリエ、ルー・ブランコヴィッチ、ルカ・アイザック、マキシム・ルイス、ミカ・アルガナラズ、ポール・ハメリン、ステファニア・クリスティアン、トム・カン、ヤニック・ボノ
ベアトリス・ダルがシャルロット・ゲンズブールを主演に迎えて、魔女狩りをテーマにした映画を撮ることになった。その日は磔のシーンが撮影される予定だったが、ベアトリスを監督の座から引き下ろしたいプロデューサー、彼と結託する撮影監督、更にはシャルロットを自身の作品にスカウトしようとする新人監督や現場に潜り込んだ映画ジャーナリストなど、それぞれの思惑や執着が交錯し、現場は次第に収拾のつかないカオス状態へと発展していく。しかも、問題のシーンの撮影直前、シャルロットは子守に預けている娘から電話で驚くべき話を聞き、不安に陥ってしまう。
前作でドラッグと酒でトランス状態に陥ったダンサーたちの狂乱の一夜を描いたギャスパー・ノエ。スクリーンの上下を字幕も含めて逆さまにするなど、これまでの常識を超えた編集に驚かされました。今作では魔女狩りをテーマにし、昔の映画風の映像による中世の魔女狩りで使われた拷問器具の解説からスタート。拷問の様子は映しませんが、それがかえって不安を煽ります。とはいえ、編集としてはおとなしめな印象でしたが…
シャルロット・ゲンズブールとベアトリス・ダルが登場し、2人を分割した画面で映す辺りからギャスパー・ノエらしさが現れ始めます。コロナ禍にリモート撮影された作品を見ているような感じですが、次第に2つの画面で別の展開を見せるようになっていき、それぞれの画面で字幕が表示されます。これを同時に理解しようとすると頭の中が混乱状態に。ギャスパー・ノエ、やってくれるね!といった感じです。
作品内での映画撮影が始まるとギャスパー・ノエはまた別の仕掛けを用意していました。そこでシャルロット・ゲンズブールが妖艶な色気を放ち、目が離せなくなります。ただ、光がちかちかと点滅するのが苦手な方は鑑賞を控えた方がいいかもしれません。事前に予告編をご覧になって、ご確認されることをお勧めします。(堀)
2019 年/フランス/フランス語・英語/51 分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/DCP
配給:ハピネット
©2020 SAINT LAURENT-VIXENS-LES CINEMAS DE LA ZONE
公式サイト:http://www.luxaeterna.jp/
「のむコレ2020」にて11/20(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋で公開!
1月上旬より全国劇場で順次公開予定