2020年11月05日
ストックホルム・ケース(原題:STOCKHOLM)
監督・脚本:ロバート・バドロー
製作:ジェイソン・ブラム
劇中歌:ボブ・ディラン
劇伴:スティーブ・ロンドン
出演:イーサン・ホーク、ノオミ・ラパス、マーク・ストロングほか
何をやっても上手くいかない悪党のラース(イーサン・ホーク)は自由の国アメリカに逃れるために、アメリカ人に扮装してストックホルムの銀行強盗を実行する。彼は幼い娘を持つビアンカ(ノオミ・ラパス)を含む3人を人質に取り、犯罪仲間であるグンナー(マーク・ストロング)を刑務所から釈放させることに成功。続いてラースは人質と交換に金と逃走車を要求し、グンナーと共に逃走する計画だったが、警察は彼らを銀行の中に封じ込める作戦に打って出る。現場には報道陣が押し寄せ、事件は長期戦となっていく。すると犯人と人質の関係だったラースとブリジッタたちの間に、不思議な共感が芽生え始める……。
「ストックホルム症候群」とは誘拐事件や監禁事件などの被害者が、犯人と長い時間を共にすることにより、犯人に連帯感や好意的な感情を抱いてしまう心理学用語のこと。ノオミ・ラパスが振り返るように説明するところから始まります。本作は、「ストックホルム症候群」の語源となった、“スウェーデン史上、最も有名な銀行強盗事件”として知られる5日間の立てこもり事件(ノルマルム広場強盗事件)を基にしたクライム・エンタテインメントです。
犯人ラースを演じるのは俳優のみならず脚本家、映画監督、演出家としても多方面で活躍するイーサン・ホーク。伝説のトランペット奏者チェット・ベイカーを演じた『ブルーに生まれついて』のロバート・バドロー監督と再タッグを組みました。
アメリカかぶれのラースは「警察はボブ・ディランが好き」といい、作品内でも「新しい夜明け」「今宵はきみと」「明日は遠く」「 トゥ・ビー・アローン・ウィズ・ユー」といったボブ・ディランの名曲が使われています。しかも俳優たちが英語を話すので、舞台がスウェーデンであることを思わず忘れてしまいそう(笑)。
それはさておき、本作の魅力はイーサン・ホークに尽きます。人質を取って銀行に立て籠もり、すぐにキレて過激な発言をするものの、実際には人質に危害を加える気がなく、むしろ優しい。本人は一生懸命なのだけれど、空回りするばかりでうまくいかない人物はイーサン・ホークの得意とするところ。チャーミングな魅力を本作でも余すところなく発揮しているので、気がつけば、すっかり犯人に肩入れしている自分に気がつくことでしょう。ファン必見の作品です。(堀)
2018年/カナダ・スウェーデン/英語・スウェーデン語/ 92分/シネスコ/カラー
配給:トランスフォーマー
©2018 Bankdrama Film Ltd. & Chimney Group. All rights reserved.
公式HP:http://www.transformer.co.jp/m/stockholmcase/
★2020年11月6日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷、シネマート新宿、UPLINK吉祥寺ほか