監督:兼重淳
原作:渡辺俊美
脚本:清水匡、兼重淳
撮影:向後光徳
主題歌:井ノ原快彦、道枝駿佑
出演:井ノ原快彦(鈴本一樹)、道枝駿佑(鈴本虹輝)、森七菜(仁科ひろみ)、若林時英(田辺章雄)、工藤遥(柏木礼奈)、阿部純子(矢島真香)、野間口徹(徳永保)、坂井真紀(遠藤咲江)、倍賞千恵子(鈴本奈津子)
鈴本一樹は好きな音楽を続けて身を立てている。一人息子の虹輝(こうき)が15歳と多感な時期に離婚したのが影響したのか、受験に失敗してしまう。進路について話し合うと、来年受験すると言い、1年遅れの高校入学となった。中学と違って給食がない。虹輝の希望は「お父さんのお弁当がいい」だった。一樹は「卒業まで3年間毎日お弁当を作ること」、虹輝は「一日も休まず高校に行くこと」を互いに約束する。
お弁当作りの3ヶ条以来、どんなに遅く帰っても地方に行っても、一樹は毎日お弁当を写真に残し、同じものが続かないよう工夫した。1歳下の同級生と机を並べる虹輝は居場所が見つからずにいたが、孤立から一歩出たのはお弁当のおかげだった。
その1 調理の時間は40分以内
その2 1食にかける値段は300円以内
その3 おかずは材料から作る
3ヶ条の「おかずは材料から作る」というのは、既製品でなく手作りってことですね。朝のルーティンに組み込むことが肝心なのでしょうが、なかなかできることではありません。ずらりと並んだ写真の壮観なこと!クラスで浮いていた虹輝が溶け込むきっかけになったほどの出来栄えです。どれも美味しそうですし。
離婚したからと言って息子が親を責めたり、喧嘩したりの場面などひとつもなく、よくできた息子です。父親と息子がこんな関係を築けるとは、休まずに続けたお弁当の功績が大きいはず。このごろ強権発動する父親の映画が多かったので、あまりに優しい繋がりに心揺さぶられました。
我が家はどうだったか考えても、息子たちに一体どんなお弁当を作ったのかさっぱり思い出せません。手抜き親のわりにちゃんと育ってくれました。感謝。(白)
原作は今年結成30周年を迎える「TOKYO No.1 SOUL SET」の渡辺俊美が書いた「461個の弁当は、親父と息子の男の約束。」(マガジンハウス刊)。ご本人もカメオ出演されています。
しかし、主人公=渡辺俊美ではありません。あくまでも監督とプロデューサー、脚本家が作り上げたフィクションです。バンドマンのシングルファーザーが浪人して高校に入った息子のために高校三年間、欠かさずにお弁当を作ったという設定が同じというだけ。むしろ、井ノ原快彦をあてがきして、主人公は書かれています。
久しぶりに俳優・井ノ原快彦を見ましたが、いい感じに歳を重ねていました。もうアイドルって感じではありませんね。お弁当を作るシーンの手際の良さには目を見張ります。撮影中、毎日、卵焼きを焼いていたという料理の腕前が遺憾なく発揮されていました。
そして、息子との距離感がいい!くっつき過ぎず、離れ過ぎず。この絶妙な距離感は母親には難しいかもしれません。
そして、オープニングに1曲聴かせつつ、鈴本家の15年をさらりと描いた演出が見事。(堀)
2019年/日本/カラー/シネスコ/110分
配給:東映
(C)2020「461個のおべんとう」製作委員会
https://461obento.jp/
★2020年11月6日(金)ロードショー