2020年10月31日

461個のおべんとう

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監督:兼重淳
原作:渡辺俊美
脚本:清水匡、兼重淳
撮影:向後光徳
主題歌:井ノ原快彦、道枝駿佑
出演:井ノ原快彦(鈴本一樹)、道枝駿佑(鈴本虹輝)、森七菜(仁科ひろみ)、若林時英(田辺章雄)、工藤遥(柏木礼奈)、阿部純子(矢島真香)、野間口徹(徳永保)、坂井真紀(遠藤咲江)、倍賞千恵子(鈴本奈津子)

鈴本一樹は好きな音楽を続けて身を立てている。一人息子の虹輝(こうき)が15歳と多感な時期に離婚したのが影響したのか、受験に失敗してしまう。進路について話し合うと、来年受験すると言い、1年遅れの高校入学となった。中学と違って給食がない。虹輝の希望は「お父さんのお弁当がいい」だった。一樹は「卒業まで3年間毎日お弁当を作ること」、虹輝は「一日も休まず高校に行くこと」を互いに約束する。
お弁当作りの3ヶ条
その1 調理の時間は40分以内
その2 1食にかける値段は300円以内
その3 おかずは材料から作る
以来、どんなに遅く帰っても地方に行っても、一樹は毎日お弁当を写真に残し、同じものが続かないよう工夫した。1歳下の同級生と机を並べる虹輝は居場所が見つからずにいたが、孤立から一歩出たのはお弁当のおかげだった。

3ヶ条の「おかずは材料から作る」というのは、既製品でなく手作りってことですね。朝のルーティンに組み込むことが肝心なのでしょうが、なかなかできることではありません。ずらりと並んだ写真の壮観なこと!クラスで浮いていた虹輝が溶け込むきっかけになったほどの出来栄えです。どれも美味しそうですし。
離婚したからと言って息子が親を責めたり、喧嘩したりの場面などひとつもなく、よくできた息子です。父親と息子がこんな関係を築けるとは、休まずに続けたお弁当の功績が大きいはず。このごろ強権発動する父親の映画が多かったので、あまりに優しい繋がりに心揺さぶられました。
我が家はどうだったか考えても、息子たちに一体どんなお弁当を作ったのかさっぱり思い出せません。手抜き親のわりにちゃんと育ってくれました。感謝。(白)


原作は今年結成30周年を迎える「TOKYO No.1 SOUL SET」の渡辺俊美が書いた「461個の弁当は、親父と息子の男の約束。」(マガジンハウス刊)。ご本人もカメオ出演されています。
しかし、主人公=渡辺俊美ではありません。あくまでも監督とプロデューサー、脚本家が作り上げたフィクションです。バンドマンのシングルファーザーが浪人して高校に入った息子のために高校三年間、欠かさずにお弁当を作ったという設定が同じというだけ。むしろ、井ノ原快彦をあてがきして、主人公は書かれています。
久しぶりに俳優・井ノ原快彦を見ましたが、いい感じに歳を重ねていました。もうアイドルって感じではありませんね。お弁当を作るシーンの手際の良さには目を見張ります。撮影中、毎日、卵焼きを焼いていたという料理の腕前が遺憾なく発揮されていました。
そして、息子との距離感がいい!くっつき過ぎず、離れ過ぎず。この絶妙な距離感は母親には難しいかもしれません。
そして、オープニングに1曲聴かせつつ、鈴本家の15年をさらりと描いた演出が見事。(堀)


2019年/日本/カラー/シネスコ/110分
配給:東映
(C)2020「461個のおべんとう」製作委員会
https://461obento.jp/
★2020年11月6日(金)ロードショー
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アイ・キャン・オンリー・イマジン 明日へつなぐ歌 (原題:I Can Only Imagine)

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監督:アンドリュー・アーウィン ジョン・アーウィン
原作:バート・ミラード
音楽:ブレント・マッコークル
出演:J・マイケル・フィンレイ(バート)、マデレイン・キャロル(シャノン)、デニス・クエイド(父 アーサー)、トレイス・アドキンス(スコット)

テキサスで、両親と暮らした子どもの頃、父・アーサーからたびたび暴力を受け、かばってくれた母も家を出てしまった。なぐさめとなるのはキャンプで出会った少女シャノンと音楽だった。高校生になって父の期待するアメフトに打ち込むが、けがのため断念。音楽部に入って裏方をしているうち、歌の才能を見いだされる。
父と大喧嘩をしたバートは家を飛び出して音楽の道へと進んでいく。バートはクリスチャン・バンドのボーカルとしてキャリアを積みプロデューサーのスコットに出会う。しかし業界から酷評されたことから自信をなくし、故郷へと戻ってくる。アーサーは過去を悔やみ、なんとかバートと解り合おうと努力していた…。

史上最も売れたコンテンポラリー・クリスチャン・ソング"アイ・キャン・オンリー・イマジン"がどのようにして誕生したのか?この曲を作ったロックバンド"MercyMe"のボーカル、バート・ミラードがインタビューを受けるところから映画が始まります。暴力をふるう父から逃れて母が10歳で家をでてしまい、一人で耐えたこと。言葉でなく手が出る父の葛藤を知るのは、ずっと後のことです。
シャノンは子どものころからバートの支えになっているのですが、夢にまい進するバートはシャノンの気持ちをくまずに別れてしまいます。女の子のほうが早く大人になるんですね。
失意のバートが故郷へ戻ったことで、ようやく父と向かい合うのですが、そのきっかけが父の病気。それでも間に合ったことを喜ぶべきでしょう。どんなに辛いことも、それがあってこその今、と思えばこの曲の歌詞がしみてきます。当初、この曲を気に入ったエイミー・グラントに提供するはずだったのを、エイミーが「あなたの曲」と本人に歌わせたエピソードにも感動しました。
主人公バート役をブロードウェイの舞台で活躍し、本作が映画デビューとなるJ・マイケル・フィンリー、父アーサー役をデニス・クエイドがそれぞれ演じています。日本公開版エンディング・テーマ曲はDedachiKenta: 「アイ・キャン・オンリー・イマジン feat.小坂忠」オリジナル日本語歌詞のこちらも素敵です。(白)


無名のミュージシャンが、父親からの虐待のトラウマを乗り越えて、名曲を生み出すまでのストーリー。
どうしても傷つけ合わなければ生きていけない悲しい人間の性…人間にとっていちばん大切なことは「ゆるすこと」だと教えてくれる。「アメージング・グレイス」が奴隷船の船長が「神に赦された」と感激するって話は、ちょっと複雑な心境だった。神は赦しても黒人は赦さないかも。BLM。しかし、キリスト教は根強い。全人類のすべての罪を背負って死んだ人がいたなんて、考えたらほんとうに凄みのある話だと思う。コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージックってジャンルが存在することも知らなかったけど…若い人たちが信仰を歌にしてライブで熱狂するなんて、、日本でもコンテンポラリー踊念仏とか流行ってほしい。
ゆるすことは、ゆるされること。特定の信仰はなくても、奇跡は起こるだろう。美しい歌声に癒されました。 (千)


2018年/アメリカ/カラー/シネスコ/110分
配給:EASTWORLD ENTERTAINMENT、カルチャヴィル
(C)2018 IMAGINE Rights, LLC. All Rights Reserved.
https://www.universal-music.co.jp/icanonlyimagine/
★2020年11月13日(金)全国順次ロードショー

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☆劇場招待券2枚一組をお一人様にプレゼント!
11月10日(火)までに、info@cinemajournal.net にHPの感想も書いてご応募ください。
当選者にのみお知らせいたします。
  ☆当選者確定しました。ご応募ありがとうございました。
posted by shiraishi at 11:49| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月30日

愛しの故郷(ふるさと)(原題:我和我的家乡)

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製作総指揮:チャン・イーモウ
監督:ニン・ハオ(総監督)、チェン・スーチェン、シュー・ジェン、ダン・チャオ、ユー・バイメイ、ポン・ダーモ、イエン・フェイ
出演:グォ・ヨウ、ホアン・ボー、ワン・バオチャン、リウ・ハオラン、ドン・ズージェン、トン・リーヤー、ファン・ウェイ、タオ・ホン、チャン・イー、ダン・チャオ、イエン・ニー、スン・リー、シェン・トン、マーリ他

1本目 Episode5の『hello 北京』の続編。グォ・ヨウが前作のまま、調子のいいタクシー運転手。保険証のない親類のためにひと肌脱ぐ。
2本目 貴州の田舎にUFOがやってきたと大騒ぎ。国中に知れ渡ってテレビ番組スタッフが取材にやってくるが…。
3本目 アルツハイマーに苦しむ元教師。かつての教え子たちが先生の思い出を再現しようと大奮闘する。
4本目 カリスマインフルエンサーが、母校の設立記念日を祝うために、故郷へ向かう。途中ですり寄ってきた胡散臭い男は後輩だった。
5本目 過疎の村は年寄りばかり。妻は画家の夫をロシアの大学に行かせたい、夫は故郷の村興しをしたい。そこで思いついたのが。

『愛しの母国』姉妹編。広い中国大陸の東、西、南、北、中部の5つの地域を舞台に、故郷を思う人々のストーリーが展開します。『愛しの母国』よりコメディ色が強く、礼賛もほどほどなので見やすいです。グォ・ヨウはじめ俳優さんが達者で上手いので、笑ったり涙したり。観終わったらぽっと心が温まっていました。
身につまされてしまったのは、3本目のアルツハイマーにかかった元教師のお話。貧しくて学校に来られない子どもたちのために奔走した先生の思い出は、元生徒たちにも確かに残っていて、昔の自分によく似た我が子を教室に座らせて「あの日を再現」します。
どの作品も、故郷やそこに繋がる誰かのために手助けしたり、力を尽くすお話です。
人と関わることを面倒に思う人が多い、と言われる昨今です。コロナ禍の今年、わずか残っている人との繋がりが切れてしまった人もいるかもしれません。思い合うことで繋ぎなおすこともできます。メールでなく、手紙を書こうと思いました。(白)


2020 年/中国/シネスコ/152 分/中国語/
配給・宣伝:wow cool entertainment /
©︎BEIJING JINGXI CULTURE&TOURISM CO.,LTD /CHINA FILM CO.,LTD
HP:wowcoolentertainment.com
★2020年11月6日(金)よりグランドシネマサンシャン1週間限定公開決定!
posted by shiraishi at 02:05| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月29日

相撲道~サムライを継ぐ者たち~

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監督:脚本:坂田栄治
撮影:門田博喜
劇中画:琴剣淳弥
語り:遠藤憲一
出演:境川部屋、髙田川部屋

1500年以上の歴史を持ち、国技として日本人の暮らしに深く根付いている相撲の世界を追ったドキュメンタリー。2018年12月から約半年間、境川部屋と高田川部屋の2つの稽古場にカメラが密着。力士たちの本場所での熱い闘いの姿を迫力のある映像と音声で捉え、歴史、文化、競技と、さまざまな角度から相撲の魅力をひも解いていく。監督は「マツコの知らない世界」など長年テレビの演出家として活躍し、本作が映画初監督作品となる坂田栄治。元大相撲力士で、日本相撲協会の公認漫画家として知られる琴剣淳弥がコーディネートプロデューサーとして参加。ナレーションを遠藤憲一が務める。

早朝からの稽古、激しいぶつかり合い、力士たちの熱や監督の感じている衝撃がこちらまで伝わってくる作品です。相撲の歴史や文化を全く知らない人に届くように、わかりやすく見せています。元力士の琴剣(ことつるぎ)さんの絵も秀逸。
日々の激しい稽古が身体と自信を作り、本場所で力を発揮します。厳しさに耐え、険しい道を歩いてきた人の言葉は、観ている人のもとにまっすぐに届きます。一方ちゃんこ鍋に舌鼓をうち、部屋の同輩たちと歓談する素顔も捉えます。眼鏡をかけているのが珍しくてなんだか可愛く見えました。土俵を降りたら普通の、大きめの男の子でした。
子どもの頃、古くは栃若時代から家族で取り組みを楽しみにしていたのに、最近全くうとくなっていた私にも新鮮で面白く、相撲熱が再燃しそうです。凛々しい千代の富士、小兵ながら奮闘する舞の海さんファンでしたが、今や力士はどんどん大きくなって(*)、150㎏以上の関取はたくさん。思い切り当たれば「毎日が交通事故」とか。どうか怪我のないようにと祈りたくなります。
「相撲の魅力を知らせたい」と、坂田監督が密着取材し、こだわった迫力の映像と、包み込むような音響を劇場でお楽しみください。大相撲を観に行きたくなりますよ。11月場所は11月8日初日・両国国技館、新番付も発表になりました。(白)


2020年/日本/カラー/104分
配給:ライブ・ビューイング・ジャパン
(C)2020「相撲道 サムライを継ぐ者たち」製作委員会
https://sumodo-movie.jp/
★2020年10月30日(金)よりTOHO シネマズ錦糸町、
10月31日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開 


日本相撲協会:http://www.sumo.or.jp/
☆坂田栄治監督インタビューはこちら

*新弟子検査:身長167cm以上、体重67kg以上(就職場所と言われる3月場所は中学卒業見込者に限り身長165cm以上、体重65kg以上となる)
posted by shiraishi at 13:29| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ウルフウォーカー(原題:Wolfwalkers)

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監督:トム・ムーア、 ロス・スチュアート
脚本:ウィル・コリンズ
音楽:キーラ、オーロラ
声の出演:オナー・ニーフシー(ロビン)、エバ・ウィッテカー(メーヴ)、ショーン・ビーン(ビル)
日本語吹き替え:新津ちせ(ロビン)、池下リリコ(メーヴ)、井浦新(ビル)

1650年、アイルランドの町キルケニー。ロビンは狼ハンターの父と一緒にイングランドからやってきた。父から「女の子は家事をしていなさい。森には危険なオオカミがいるので、家から出ないように」ときつく言われていたのに、こっそり出かけていく。
自由で不思議な力を持つメーヴという少女と出会い、友達になった。人間とオオカミが身体に共存する”ウルフウォーカー”のメーヴは、人間のために森がだんだん小さくなり、オオカミの住む場所がなくなっていること、オオカミの姿で出かけた母親が戻らなくて心配なことを打ち明ける。翌日、城の調理場で働くように送り出されたロビンは、メーヴの母親らしい大きな狼が檻に囚われているのを知った。なんとしても助け出して、オオカミ退治をやめさせなくては。

『ブレンダンとケルズの秘密』(2003)『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』(2014)に続くケルトの伝説三部作の最終作品。前作では美術監督だったロス・スチュアートが共同監督となっています。
東京アニメアワードで鑑賞して以来、その美しさ、質の高さに感嘆したカートゥーン・サルーン・スタジオの制作です。『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』のころに着想、『ブレッドウィナー』(2017)の後に本格的に制作が開始され、構想7年で完成となりました。監督が大好き!これからも続ける!という2D手描きアニメーションの世界観はそのまま、今回3Dソフトウェアも使って森や狼のモブシーンなどが作られました。手描きの線の力を大切にして消さずに残し、ソフトウェアを使った絵も紙に出力して手を加えているそうです。街と城、森、そこに住む人々、動物をそれに合った手法・色味で描き分けているのにも注目を。

イングランドがアイルランドの支配権を手に入れようと画策していた時代、森のオオカミを悪者として退治することも人心の掌握手段であったのでしょう。そんな歴史を背景に、街と森、そこに住む人間とオオカミ、男と女と相反するものが、共存すること理解しあうことも物語の中に語られていました。
この作品を観て細田守監督の『おおかみこどもの雨と雪』(2012)を思い出しました。設定は異なるものの、通ずるものがありますね。(白)


2020年/アイルランド、ルクセンブルク/カラー/シネスコ/110分
配給:チャイルド・フィルム
(C)WolfWalkers 2020
https://child-film.com/wolfwalkers/
★2020年10月30日(金)YEBISU GARDEN CINEMA他ロードショー
posted by shiraishi at 13:25| Comment(0) | アイルランド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

愛しの母国(原題:我和我的祖国 My People, My Country)

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総合監督:チェン・カイコー
監督:グアン・フー、 チャン・イーバイ、 シュー・ジェン、 シュエ・シャオルー、 ニン・ハオ、ウェン・ムーイエ
主題歌:フェイ・ウォン
出演:ホアン・ボー、オウ・ハオ、レン・スーシー、チャン・イー、ハン・ハオリン、ファン・ユジェ、リウ・タオ、サイモン・ヤム、カラ・ワイ、グォ・ヨウ、ワン・ドン、ティエン・チュアン・チュアン、リウ・ハオラン、アーサー・チェン、ソン・ジア、トン・リーヤー

Episode1:『前夜』監督:グアン・フ―
1949年9月30日、新中国建国式典の前日。寝食を忘れて国旗掲揚装置を開発したリン・ジーユエン(フォン・ボー)。式典本番で滞りなく掲揚されるよう、最後の確認中だったが、次々と予期せぬ問題が起こる。

Episode2:『すれ違い』監督:チャン・イーバイ
1964年。国家の秘密プロジェクトに携わっている科学研究者ゴーエン(レン・スーシー)は、被爆したため任務から外れる。3年ぶりに町へ向かい、声をかけてきたのは、何も知らせないまま別れた恋人だった。本当のことが言えないまましらを切りとおすゴーエン。

Episode3:『初恋』監督:シュー・ジェン
1984年8月8日 上海の電気屋の息子ドンドン。女子バレー中国代表チームはロサンゼルスオリンピックで決勝戦に進んだ。中国全土が最後の一戦を見守っている。ドンドンは初恋の女の子が引っ越しするのでお別れを言いたいのに、テレビの調整が忙しくなって抜けられない。

Episode4:『回帰』監督:シュエ・シャオルー
1997年7月1日、香港がイギリスから返還される。きっかり0分0秒に国旗掲揚を行うため、旗揚げ係のジュートゥ、式典警備員、外交官、それぞれの時計完璧に調整したのは、ある時計職人(サイモン・ヤム)だった。

Episode5:『Hello 北京』監督:ニン・ハオ
2008年8月7日、北京オリンピック開会式の前日。タクシー運転手のチャン・ペキン(グォ・ヨウ)は開会式のチケットを会社の福引で引き当てる。嬉しくて乗客に見せびらかしていたら、ある少年が譲ってくれと頼み込む。断って目的地で降ろすが、チケットが消えて現金800元が残されていた。

Episode6:『流れ星』監督:チェン・カイコー
貧しい土地に生まれ育ったオーディラとハザブの兄弟。生きるために何でもしてその日暮らしを続けていた。リー老人(ティエン・チュアン・チュアン)は貧困地域を再生を願って尽力し、二人を疑うことなく受け入れ兄弟も心を開いていく。

Episode7:『青い空』監督:ウェン・ムーイエ
2015年9月3日。抗日戦争勝利記念日の軍事パレードを控え、女性パイロットのリュショーランは飛行チームの控えを命ぜられた。幼いころからの夢だったが、親友に託す決心がつく。

新中国建国70年記念作品。チェン・カイコー総合監督のもと、チェン監督含む7人の監督が、歴史的節目となる7つの出来事を選んでオムニバス映画としました。予算も潤沢で(たぶん)国を代表する監督がメガホンを取り、全土の国民がこぞって観に行ったはず。歴代8位の大ヒットです。
中国の戦後の節目となる出来事を中心にすえ、国を讃えた作品ですが、主人公は偉大な業績をあげた人物ではなく、それぞれの仕事を全うして生きる小市民たちです。つつましく送る日々の小さなエピソードを重ねて、中国という国の大きな歴史の流れを俯瞰することができました。この時に日本では何があったのか、自分が何をしていたのか振り返りました。(白)


中国礼賛の映画ながら、市井の人を主人公にしているところが憎いです。
Episode1:『前夜』では、北京の伝統的な四合院でスパイの捜査をする姿が上空から映し出されました。あの美しい四合院の並ぶ通りも、中国の目覚ましい近代化で今やわずかしか残されてないことに思いを馳せました。天安門広場での式典で、滞りなく国旗掲揚されるまでの、てんやわんやに、くすっと笑わせられましたが、その後の天安門広場での出来事を思うと複雑。
Episode2:『すれ違い』には泣かされました。国家のために恋人とも別れ秘密裏に核の開発に携わったあげく被爆・・・ 国家が偉業を成し遂げた号外に歓喜しますが、なんとも気の毒。
Episode3:『初恋』は、とっても可愛い物語。通りに椅子を並べてテレビを見る皆のためにアンテナを調整しなくてはならないけれど、引っ越してしまう女の子にどうしても会いたい男の子。通りではないけれど、テレビのある家に集まって皆で見たなんて時代が日本にもありましたね。
Episode4:『回帰』は、サイモン・ヤム(任達華)が出ているというだけでも嬉しい物語でしたが、1997年6月30日に香港にいた私にとって、格別の思いがありました。警備にあたっていた警官の方と言葉を交わした時に、中国回帰後の帽章をポケットから出して見せてくれて、0時きっかりにこれに替えるといわれたのです。まさに帽章を替える場面がありました。
Episode5:『Hello 北京』、グォ・ヨウ(葛優)が出てくるだけで笑ってしまいます。ほんとに名優!
Episode6:『流れ星』、内モンゴルの広大な地を舞台にした、盗みを繰り返す兄弟の物語。兄弟が改心することになる沙漠に落ちてくる流れ星の正体は・・・??
Episode7:『青い空』、抗日戦争勝利70周年の軍事パレード。優秀だからこそ裏にまわってもらったと言われても、晴れの舞台に出られないのはやっぱりつらいでしょう・・・ 
それぞれに味わい深い作品でした。(咲)



2019年/中国/カラー/シネスコ/155分/
(C)2019Huaxia Films
配給:wow cool entertainment
HP:www.wowcoolentertainment.com
★2020年10月30日(金)より東京・グランドシネマサンシャインにて1週間限定公開
10月31日(土)より大阪シネ・ヌーヴォ ほか全国順次公開。

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2020年10月27日

パピチャ 未来へのランウェイ  原題:Papicha

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監督・脚本:ムニア・メドゥール
出演:リナ・クードリ、シリン・ブティラ、アミラ・イルダ・ドゥアウダ、ザーラ・ドゥモンディ、ヤシン・ウイシャ、ナディア・カシ、メリエム・メジケーン

1990年代のアルジェリア。大学の女子寮で暮らすネジュマは夜な夜なルームメイトのワシラと寮を抜け出してナイトクラブに繰り出す。ファッションデザイナーを夢見るネジュマは、そこに集う女性たちの採寸をしてドレスの仕立てを請け負っているのだ。ジャーナリストの姉リンダもネジュマの夢が実現することを応援している。
だが、町にはイスラーム過激派が台頭してきて、女性にヒジャーブ(髪の毛や全身を隠す服装)を強制するポスターがいたるところに貼られ、締め付けが厳しくなる。武装した彼らは、独自の基準でイスラーム的でない者を容赦なく殺すようになる。ついにネジュマの身近で悲劇が起こる。ネジュマは自分たちの夢と未来のために、命がけでファッションショーを開く決意をする・・・

1962年、フランスから独立を果たしたアルジェリア。民衆が一丸となって戦った姿を描いた『アルジェの戦い』(1966年、ジッロ・ポンテコルヴォ監督)のデジタルリマスター/オリジナル言語版が2016年10月8日に公開されて、女性たちも果敢に闘った姿を知ることができました。
その後、独立を担った民族解放戦線FLNが一党独裁支配を続けたことにより国内の不満が高まり、1991年の選挙で急進派のイスラーム救国戦線FISが勝利を収めますが、FIS政権が軍のクーデーターで倒されたあと、様々なイスラーム急進組織によるテロが頻発し内戦状態に。2002年まで続いた暗黒の10年の間に10万人の市民がテロのために命を落としたといわれています。特に、西欧的な思想を持つ知識人や西欧的服装をしている人たちが標的になりました。

ムニア・メドゥール監督は、1978年モスクワ生まれ、アルジェリア育ち。内戦の時代、知識人として第一線で闘っていた映画監督だった父が殺すと脅され、1997年末、一家はフランスに移住することを決意。監督が18歳の時のこと。出国前には、本作と同じような大学でジャーナリズムを専攻していて、その経験がネジュマに投影されています。
皆が国を出たいという中で、ネジュマは、「アルジェリアが好き、ここで頑張る」という気概を見せます。監督も、事情が許せばアルジェリアで暮らしたかったに違いありません。

さて、ネジュマは、ある出来事があって、その時に血まみれになったハイクと呼ばれるアルジェの伝統的な白い布を洗いながら、ハイクだけを使ったお洒落なドレスでファッションショーを開く決意をします。
ハイクはアルジェの女性たちが身体を覆う伝統的な5m四方ほどもある大きな一枚の布。ネジュマの母親が、ハイクを羽織ったことのない娘たちに使い方を説明する場面があります。
「未婚女性は前髪を出して、結婚したら髪を隠すの。完全に隠れたかったら、片目だけ出せばいい。独立戦争のときには、この中にピストルを隠してフランス軍相手に戦ったのよ」
そんな母親も「父さんが生きてる間は使ってたけど、今は使わない」と、あっけらかんと言っています。
一方、イスラーム勢力が推奨するヒジャーブは、全身真っ黒なもので、アルジェ伝統の白いハイクではありません。
大学に銃を持って侵入してくる女性たちが黒づくめで、アルジェリアの女性たちの間にも分断があったことを感じさせてくれます。

アルジェリア内戦を背景にした映画で思い出すのは、第12回 フランス映画祭横浜2004で上映された『ビバ!アルジェリア』(2004年、ナディール・モクネッシュ監督)です。暗黒の10年が終わってもなお社会が落ち着かないアルジェの姿を3人の女性たちを主人公に描いたもの。『パピチャ~』で、女子学生寮の寮母を演じたナディア・カシさんが高級売春婦役でした。
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来日され、インタビューさせていただいたのですが、ハイクの使い方について、「持ち上げて足を見せれば、男を誘惑することもできるのよ」とご自身のスカートを引っ張り上げながら語っていたのを思い出します。原理主義者を見かけた時には、深く被って顔を隠すともおっしゃっていました。
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ところで、タイトルの「papicha」は、“愉快で魅力的で常識にとらわれない自由な女性”を意味するアルジェリアのスラング。思えば、『ビバ!アルジェリア』に出てきたキャバレーの歌手の名前がpapichaでした。演じたビュウナさんも来日され、お話を伺ったのですが、本物の歌手で、内戦の時代もアルジェで歌っていたという気骨のある女性。慶應大学での講演会の折にも、突然立って歌いだすという愉快な方でした。

『パピチャ~』の中で、「家族に男がいないと飢え死にする」という言葉が出てきます。
『ビバ!アルジェリア』で、母娘二人での暮らしが大変なことが描かれていたのですが、ナディア・カシさんがインタビューの中で、「アルジェリアは男性絶対優位で女性として生き難い国。1984年に施行された家族法の中に、“女性は生涯男性に従わないといけない”とあり、一夫多妻の上に、男性は一方的に離婚し妻を放棄する権利があって、子どもと共に家を放り出された女性は家を探す術もなく路頭に迷います」とおっしゃっていました。(インタビューは、シネマジャーナル62号に掲載しています)

これほどまでに女性が生き難いアルジェリアで、ネジュマは自立して生きていくことを模索します。暴力で脅かされても、決して屈しません。こうした勇気ある女性たちの行動の積み重ねが、後世の女性たちに光を与えてくれるに違いありません。(咲)


「パピチャ」とは、はアルジェリアで若い娘に使うスラングとのこと。日本風に言えば「お転婆娘」ですかね。内戦状態で暗黒の10年と言われた1990年代のアルジェリアの首都アルジェを舞台にした作品。アルジェリア育ちで、内戦時代の1997年、18歳で両親と共にフランスに逃れたというムニア・メドゥール監督自身の経験を元に作られた、お転婆娘の反骨精神にエールを送る作品。「国を出る必要はない。ここに満足している。闘う必要があるだけ」というセリフがあったけど、この言葉は国を出ざるを得なかった監督自身の気持ちを込めたものだろう。
私は(咲)さんのようにイスラム圏のことに詳しくないけど、この作品に出てくる勇気ある女性たちの姿を観て、世界の女性たちが同じように困難と闘って、自分たちの可能性を広げていったことに思いを馳せた。そして私自身の1970年からの約50年に渡る「女性であることの制限との闘い」を考えた。イスラム圏でなくても、日本は女性の活躍、活動ということを考えるとかなり遅れている。日本社会、家族、会社、地域、議会など、女性が何かをするときにかなり制約を感じている人は多いと思う。世界経済フォーラムが発表している男女間の格差指数のことを「ジェンダーギャップ指数」というらしいが、日本は全153か国中121位とのこと。経済・教育・保健・政治などの状況を項目別に点数化して算出した数字からランキングを出したもので、ランキングの上位に入るほど男女格差が少ない。ちなみにランキングTOP3は、1位アイスランド、2位ノルウェー、3位フィンランド。日本でも1970年代に比べたら女性が活躍しているし、その当時より女らしさの呪縛から逃れ、少しは生きやすくはなっていると思うけど、世界はもっと早い速度で女性の活躍の場が広がっている。
話をこの映画に戻すと、この作品の舞台は1990年代だけど、今、アルジェリアはどうなっているのだろう。少しは変わってきているのかとても気になる。世界のイスラム地域で、あの当時より女性の服装に関する制限が強まっているのではないかと感じている(暁)。


第72回カンヌ国際映画祭 ある視点部門 正式出品
第45回セザール賞 2冠 新人監督賞、有望若手女優賞
第92回アカデミー賞® 国際長編映画賞 アルジェリア代表

2019年/フランス・アルジェリア・ベルギー・カタール/アラビア語・フランス語・英語/109分
配給:クロックワークス
© 2019 HIGH SEA PRODUCTION – THE INK CONNECTION – TAYDA FILM – SCOPE PICTURES – TRIBUS P FILMS - JOUR2FETE – CREAMINAL - CALESON – CADC
公式サイト:http://papicha-movie.com/
★2020年10月30日(金)よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー



posted by sakiko at 09:28| Comment(0) | アルジェリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月25日

私たちの青春、台湾  原題:我們的青春,在台灣

2020/10/31(土)よりポレポレ東中野他全国順次公開!
劇場情報

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© 7th Day Film All rights reserved 

監督:傅楡(フー・ユー)
製作:洪延儀(ホン・ティンイー)
主題歌:楊彝安(ヤン・イーアン)
出演
陳為廷(チェン・ウェイティン)
蔡博芸(ツァイ・ボーイー)

不安定な台中関係下の台湾で三人の若者は夢見た

台湾ひまわり運動のリーダー、人気ブロガーの中国人留学生。
ドキュメンタリー映画監督がみつけた「私たち」の未来への記録

このドキュメンタリーの主人公は陳為廷(チェン・ウェイティン)と蔡博芸(ツァイ・ボーイー)。
陳為廷は1990年、台湾の苗栗県生まれ。中国政府の脅威に直面したことで、台湾の主権を守りたいと考え、仲間と共に反政府運動を行う学生運動に参加し、2014年に起こったひまわり運動では林飛帆と共にリーダーを務めた。ひまわり運動は23日間に及ぶ立法院を(台湾の国会に相当)占拠。統率が取れた組織力、世界に向けたメディア戦略などで「成功」をおさめたといわれている。しかしカメラは理想の「民主主義」の困難さに直面し多くの課題があったことを映し出した。
蔡博芸は1992年中国湖州生まれ。台湾の大学が2011年、大陸の学生に開放され、留学生第一期生として台湾の大学に留学する。高校生の時に自由や民主主義に興味をもち、台湾に来て、巻き起こっていた社会運動に共鳴し参加することになる。彼女のブログ「我在台湾・我正青春」(台湾で過ごす青春)は話題となり、10万人以上のフォロワーを持つ人気ブロガーになった。台湾の社会運動に参加し、民主主義について積極的に発信する異色の中国人留学生。
二人の姿は社会運動を通し“民主主義”を実現し、未来を切りひらいていく輝きに満ち溢れていた。傅楡監督は二人と出会い、彼らの姿をカメラで記録してゆく。しかし結果的にひまわり運動は、その後、失速していく。それは監督が求めていた未来ではなかったが、その失意は監督自身が自己と向き合うきっかけとなった。

左、蔡博芸 右、陳為廷.jpg
左、蔡博芸 右、陳為廷
© 7th Day Film All rights reserved 

蔡英文総統の再選、女性議員がアジアトップ水準の4割、アジア初の同性婚法制化、優れた新型コロナ対策など、世界で注目される台湾。
2014年のひまわり学生運動に至る道は突然起こったのではなく、1987年の戒厳令解除の以前からある市民運動、学生運動などの流れがあってのこと。歴史を変え理想の民主主義を目指した人たちに出会い、監督は記録を始めたが、社会を変えていくことの難しさ、悩み、もがく若者たちの青春を捕らえた。台湾のひまわり運動、香港の雨傘運動を記録したドキュメンタリーはたくさんありますが、山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映された作品を参考までに下記に記しています(暁)。


恥ずかしながら台湾のひまわり運動について、この作品を見るまでまったく知りませんでした。2014年、香港の雨傘運動、日本のSEALDsとともにアジアで盛り上がった学生運動1つであり、23日間に及ぶ立法院(日本における国会に相当)占拠や統率の取れた組織力、全世界に向けたメディア戦略などで稀に見る成功を収めた学生運動と言われているそうです。
立法院占拠のきっかけになったのは、国民党による「サービス貿易協定」強行採決で、この内容についてはよく分からかったものの、若者たちが自分たちの未来のために何を考え、どう行動したのかは伝わってきます。まだまだ世の中、捨てたもんじゃないと思った一方で、占拠した立法院内で今後の方向性を決めるのは、一部のリーダーたちによる密室での会議というのはいかがなものか。全員で話し合うのは難しいけれど、選ばれた人しか入れない密室での会議では彼らが否定した政治の仕組みを変わらない。民主主義って言葉を掲げるのは簡単ですが、それを本当に行うのは難しいのですね。
ドキュメンタリー映画のいいところは、知らなかったことを学び、考える機会になることだとこの作品で改めて実感しました。(堀)


公式HP
2017年製作/116分/G/台湾
配給:太秦

参考作品(暁)
●山形国際ドキュメンタリー映画祭2015で上映されたもの
『太陽花(ひまわり)占拠』 原題:太陽、不遠
英題:Sunflower Occupation
監督:太陽花運動映像記録プロジェクト[傅榆(フー・ユィ)、王佩芬(ワン・ペイフェン)、陳育青(チェン・ユィチン)、蔡崇隆(ツァイ・チョンロン)、蔡静茹(ツァイ・チンルー)、黃兆徽(ホアン・チャオフイ)、李家驊(リー・ジアホア)、李惠仁(リ・ホイレン)、周世倫(チョウ・シィルン)]
台湾/2014/中国語/カラー/Blu-ray/120分
多くの独立系映像制作者が参加し台湾立法院占拠を様々な角度から捕らえたもの。傅榆(フー・ユィ)監督も参加している。
https://www.yidff.jp/2015/cat041/15c062.html

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山形国際ドキュメンタリー映画祭2015 上映会場で 前列右から5人目が傅榆監督?


『革命まで』 原題:幾乎是,革命
英題:Almost a Revolution
香港/2015/広東語/カラー/Blu-ray/174分
監督・脚本:郭達俊(クォック・タッチュン)、江瓊珠(コン・キンチュー)
撮影、編集、録音、提供:郭達俊
雨傘革命を記録したドキュメンタリー。
https://www.yidff.jp/2015/cat041/15c061.html

*シネマジャーナルHP 特別記事『革命まで』
郭達俊監督&江瓊珠監督インタビュー記事
http://www.cinemajournal.net/special/2016/kakumeimade/index.html

●山形国際ドキュメンタリー映画祭2017で上映されたもの
『乱世備忘 ― 僕らの雨傘運動』
(山形国際ドキュメンタリー映画祭2017で上映後、日本公開)
香港/2016/広東語/カラー/Blu-ray/128分
監督、撮影:陳梓桓(チャン・ジーウン)
雨傘革命を記録したドキュメンタリー。
https://www.yidff.jp/2017/cat041/17c046.html

*シネマジャーナルHP 特別記事
『乱世備忘 ― 僕らの雨傘運動』陳梓桓監督インタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2017/yellowing/index.html
posted by akemi at 10:32| Comment(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月18日

ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった  原題:Once Were Brothers: Robbie Robertson and the Band

2020年10月23日(金)〜角川シネマ有楽町、渋谷WHITE CINE QUINTO、アップリンク吉祥寺、立川シネマシティほか全国順次公開
劇場情報
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(C) Robbie Documentary Productions Inc. 2019


ミュージシャンが愛したミュージシャン、ザ・バンド
デビューから解散(ラスワルツ)までが語られる


監督:ダニエル・ロアー
製作:スティーブン・パニッチャ、アンドリュー・マンガー、サム・サザーランド、ラナ・ベル・マウロ
製作総指揮:マーティン・スコセッシ、ブライアン・グレイザー、ロン・ハワードほか
撮影:キアラッシュ・セイディ
原案:「ロビー・ロバートソン自伝 ザ・バンドの青春」(ロビー・ロバートソン著、奥田祐士訳、DU BOOKS刊)
出演
ザ・バンド:ロビー・ロバートソン、、リック・ダンコ、レボン・ヘルム、ガース・ハドソン、リチャード・マニュエル

マーティン・スコセッシ、ボブ・ディラン、ブルース・スプリングスティーン、エリック・クラプトン、ピーター・ガブリエル、ジョージ・ハリスン、ロニー・ホーキンス、バン・モリソン、タジ・マハール

ザ・バンドの中心メンバーだったロビー・ロバートソンが語る
伝説のバンドの誕生と栄光、そして、解散

 
ボブ・ディランをはじめ、世界で活躍するたくさんのミュージシャンたちからリスペクトされている「ザ・バンド」の誕生から解散までを描いたドキュメンタリー。彼らの足跡を、ロビー・ロバートソンが2016年に発表した自伝「ロビー・ロバートソン自伝 ザ・バンドの青春」をもとにたどった。
1959年にカナダでスタートした「ザ・バンド」。最初のメンバーはリヴォン・ヘルムで、その後、ロビー・ロバートソンが入り、リック・ダンコ、リチャード・マニュエル、ガース・ハドソンが入り、ザ・バンドの母体が出来上がる。その後、ボブ・ディランから声がかかり、65年、66年にかけて、彼のバックバンドとしてツアーに出た。1967年から76にかけて活動し、67年にはディランや彼のマネージャー、アルバート・グロスマンの誘いもあって、彼らが当時暮らしていたニューヨーク郊外のウッドストックに移り、ピンクに塗られた「ビッグ・ピンク」と呼ばれる家で創作活動続けた。ブルース・スプリングスティーン、エリック・クラプトン、ピーター・ガブリエル、ジョージ・ハリスン、ロニー・ホーキンス、バン・モリソン、タジ・マハールなど、大物ミュージシャンが登場し「ザ・バンド」の魅力を語る。
「ザ・バンド」の「ラストコンサート」を記録した音楽ドキュメンタリー『ラスト・ワルツ』を作ったマーティン・スコセッシや、ロン・ハワード、ブライアン・グレイザーらも製作総指揮として参加している。監督は若いカナダの新鋭ダニエル・ロアー。アメリカ映画界のベテランたちと組んだことで、いろいろな映像を加えることができ、世代を超えた心に響く作品ができあがった。

私が「ザ・バンド」のことを知ったのは、ボブ・ディランのバックバンドとして演奏している時。それ以前のボブ・ディランはフォークギター1本でソロで歌っていたが、フォークギターからエレキギターに変えたころで、フォークソングファンからはブーイングの嵐だった。ボブ・ディランその声には応えず、「ザ・バンド」を迎え、ロックの道を進んだ。当時そのことを、私も最初は残念に思っていた一人だったが、ザ・バンドとのセッションを見て納得。そしてボブ・ディランは「これでいい」と変わっていった。そのくらい「ザ・バンド」の演奏は素晴らしかった。その影に彼らとのこういう生活があったのだと、この映画で知った。そして伝説になった「ラストコンサート」。
しかし、これはあくまでロビー・ロバートソンの自伝を元にしたドキュメンタリー。兄弟のような絆で結ばれ、ウッドストック、「ビッグ・ピンク」での創作活動、ライブという生活の日々が続くなかで、やがてバンド内に不穏な空気が流れ5人はそれぞれの道を選択する。今となっては5人のメンバーのうち3人が亡くなってしまった。唯一残っているガース・ハドソンのインタビューも撮影されたが映画には使われず、最終的にはアーカイブ映像だけが使用されているとのことなので、やはり、これはロビー・ロバートソン目線の「ザ・バンド」の記憶なのだろう。
この映画を観て、1969年の「ウッドストックのコンサート」がここで行われたのは、彼らがここで暮らしていたことと関係あるのかもしれない」と思ったが、やっぱりそうだった。まさか50年もたってから知るとは思ってもみなかった(暁)。


公式HP
2019年製作/101分/G/カナダ・アメリカ合作
配給:彩プロ


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アリ地獄天国

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監督・撮影:土屋トカチ
構成:土屋トカチ、飯田基晴
主題歌:マーガレットズロース「コントローラー」
ナレーション:可野浩太郎
出演:西村有(仮名)

とある引越会社。社員は自分たちの状況を「アリ地獄」と自嘲する。長時間労働を強いられ、事故や破損は自己責任で、会社への弁済で借金漬けになるからだ。本作の主人公、西村有さん(仮名)は34歳の営業職。もとは営業職でトップの成績をあげていた。しかし、会社の方針に異議を唱え、個人加盟の労働組合(ユニオン)に加入した。するとシュレッダー係へ配転、給与は半減し、さらに懲戒解雇にまで追い込まれた。
ユニオンの抗議により解雇は撤回させたが、復職先はシュレッダー係のまま。会社に反省の色は見られない。西村さんは「まともな会社になってほしい」と闘いを続けてゆく。

土屋監督が作中で声を詰まらせる場面がありました。仕事で悩んでいた親友やまちゃんの自死を防げなかったことを後悔し、その思いとともに西村さんの3年にわたる闘いに密着しました。西村さんは、自分もかつて理不尽な規則を後輩に強いてきたと打ち明けます。ブラック企業からなぜ出てしまわないのかと思ってしまいますが、自分も含めた社員たちが働きやすい、まともな職場になってほしいと諦めません。労働組合がないため、一人で入ったユニオンの担当者がなんとも頼もしく、西村さんをしっかりサポートします。
最初は大丈夫かなぁと心配しながら観ていましたが、だんだんたくましくなっていく西村さんにホッとしました。顔つきも変わっていきます。諦めずに戦い続ければ、志を同じくする人も集まり、小さなアリが大きな巣を作るように何かを成しえることができます。会社の上層部は儲け主義でなく、顧客と働く人間のための会社を心がけてほしいものです。その人たちがいなければ、立ち行きません。
これは、労働者が「生き残るためのロードームービー(労働映画)」。第16回山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映。同年、貧困ジャーナリズム賞を受賞。20年、第20回ニッポン・コネクションにて第1回ニッポン・オンライン賞受賞。第2回米国ピッツバーグ大学日本ドキュメンタリー映画賞グランプリ受賞。(白)


どちらかというと、草食系と呼ばれるだろう。まじめで、誠実で、穏やかに話す人だ。
こんな青年が引越しの見積りに来たら、みんな頼みたくなってしまうに違いない。
だから営業成績が良かったというのも首肯ける。家庭を持ったのをキッカケに、仕事を頑張ろうとした、しごく普通の、真っ当な人という印象。しかし、彼を受け入れた会社が普通でも真っ当でもなかった。こんな会社は大小問わずたくさんあるのだろう。コンプライアンスが表面的にはしっかりしているところでも、通常はもっと上手くやるのだ。しかし、この映画で露わになった、根底にある「思想」は、この社会に広く蔓延し、浸透しているのだろうと思う。真っ当であることを貫こうとして、どこかでこの「思想」と衝突し、力尽きてしまう人も多いんだと思う。まじめで誠実であればあるほど、わけがわからぬまま置き去りになり、心を病んでしまうかもしれない。体や心の実感よりもこの思想が優先されるため、いろんなレベルで、みんなが少しずつ狂っている。もはや右とか左とか言っている場合ではない。使えるものは何でも使って、この思想から脱却しないと、またまた大きな破綻が目前に迫っているような…。 (千)


40人を超える集団訴訟の原告のうち、唯一顔出し取材に応じた西村さん。⚫入社時の保証人は土地権利書を持つ人←何のために? ⚫社員同士の会食・飲み会・マージャン禁止、違反通報者には報奨金←モラハラ極まれり!密告制度まで! ⚫70時間残業、1日19時間労働←完全なる労基法違反! ⚫組合に相談したら営業成績トップにも関わらず不当な配置異動、更に減給。⚫会社を訴訟したとの理由で懲戒解雇。”罪状”と書かれた氏名顔写真入り通知を全店配布・掲示←人権侵害! ⚫母の葬儀中に「イメージダウンで会社が被害」と怪文書、妻の実家にも届く← 嫌がらせ極まれり!⚫都労働委員会の和解案提示も拒否。 ⚫団体交渉10回 とも決裂。 ⚫組合脱会工作、抜けたら30万円←不当労働行為救済で都に申立てするも副社長は知らぬ存ぜぬ(!) ⚫組合の尽力でシュレッダー係に復職するもボーナス20円(!)←合理的根拠なし。
⬆どうです?怒りがふつふつと湧いてきませんか?出来事を時系列に整理立てて構成したことからも、撮影・編集・構成・企画を担った土屋トカチ監督の技量は明らかだ。人間が尊厳と矜恃、自負をを保ち、ギリギリに立っていける様を本作は目を背けず忖度なしで観客へ突き付ける。監督自身も映画製作中に当該社から仮処分申請の裁判を申立てられ、心労が多かった筈だ。過去、友人を救えなかった悔恨も孕む。西村さんに体験を話しながら言葉に詰まる監督、シュレッダーの粉塵で鼻腔が詰まりストレスで食事すら摂れない西村さん。胸を突かれる場面が連続する本作の鑑賞体験は、きっと変革と勇気を齎せてくれる98分になるだろう。(幸)


2019年/日本/カラー/98分
配給:映像グループローポジション

https://www.ari2591059.com/
★2020年10月24日(土)より渋谷・ユーロスペース、11月1日(日)より東京田端 シネマ・チュプキ・タバタほか公開

☆『アリ地獄天国』スペシャルトーク付きオンライン上映会開催。

劇場まで出かけられない方もこの機会に本編とトークショーをご覧ください。
チケット購入は ZAIKO 専用ページより https://streaming.zaiko.io/_item/332163
映画「アリ地獄天国」公式サイト https://www.ari2591059.com/
【配信日時】2020 年 11 月 1 日(日)
12:50 本編オンライン上映開始
14:30 本編終了、トーク開始(安田菜津紀、土屋トカチ監督)
15:00 トーク終了予定
※アーカイブは 11/4(水)の 15:00 まで視聴することができます。
posted by shiraishi at 18:38| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

JUST ANOTHER

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企画・制作・撮影・編集・監督:大石規湖
宣材写真:菊池茂夫
出演:the 原爆オナニーズ(TAYLOW、EDDIE、JOHNNY、SHINOBU)、JOJO広重、DJ ISHIKAWA、森田裕、黒崎栄介、リンコ他

結成38年、日本を代表するパンクバンド「the 原爆オナニーズ」。初のドキュメンタリー。1982年、名古屋でTHE STAR CLUBに在籍していたEDDIEと地元のパンク博士と言えるTAYLOWを中心に結成されたthe 原爆オナニーズ。数度のメンバーチェンジを繰り返す中で、後にBLANKEY JET CITYに加わる中村達也や、Hi-STANDARDの横山健が在籍したことでも知られている。本作では、これまで語られなかったバンド内部の真実が本人たちによって明かされる。

地元愛知にこだわり続け、名古屋の”今池まつり”で、老若男女問わず集客しているパンクバンド。この盛り上がり方にびっくり。こんなにパンクバンドに熱狂するお祭りがほかにあるでしょうか?観るまで全然知らなくて、「このカッコいいオジさんたちは何者?」と目が点になりました。大石規湖(おおいしのりこ)監督も、ライブを観てすぐに撮影したいと思ったそうです。
地元で暮らし、きちんと正業を持っていてライブでは全力注力。忘れられないインパクトがある「the 原爆オナニーズ」の名前は「セックスピストルズ」にならって?つけられたらしいです。
還暦過ぎたTAYLOWさんはじめメンバーみな力いっぱいのステージ!普段は静かで温厚そうな方ばかり。亡くなられた遠藤ミチロウさんを思い出します。「ザ・スターリン」時代、過激なパフォーマンスで話題になりましたが、それはステージ上の顔でしたし。ミチロウさんはいなくなってしまいましたが、「the 原爆オナニーズ」のメンバーは地元にしっかり根を張って、また”今池まつり”で熱いパフォーマンスを見せることでしょう。そんな日が早く戻ることを祈りつつ。(白)


the 原爆オナニーズのことはこの作品で初めて知りました。ちょっと口にするのは憚られるバンド名ですが、結成38年とのこと。日本を代表するパンクバンドです。なんて、知ったようなことを書いてしまいましたが、パンクがどんな音楽なのか、ロックとどこが違うのか。そんなことが分からなくても大丈夫。私はこの作品で知りました。バンドの音楽そのものだけでなく、好きなことを仲間と一緒にやっていくことの楽しさ、大変さをメンバーへの個別のインタビューで浮かび上がらせています。
興味深かったのはTAYLOWさんのSHINOBUさんへの接し方。本人には常にダメ出しをしていますが、インタビューでは「あいつは天才肌だから褒めちゃいけない」と褒める。直接、言ってあげればいいのにと思いましたが、インタビューで答えるというのは間接的にSHINOBUさんが聞くことを分かっているんですよね。この人心掌握術は何らかの組織に所属する人には誰にでも役立ちそうな気がしました。またJOHNNYさんは夫婦で互いに支え合って、子育てしながら好きなことをしているようで何だかいい感じ。EDDIEさんはバンドを続けたくて、独身をとおしたよう。それもなかなか覚悟がいること。他のメンバーがインタビューで語るのとはひと味違った響きがありました。(堀)


2020年/日本/カラー/90分
配給:SPACE SHOWER FILMS
(C)2020 SPACE SHOWER FILMS
https://genbaku-film.com/
★2020年10月24日(土)新宿K’s シネマほかにてロードショー!以降全国順次公開
posted by shiraishi at 18:13| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ストレイ・ドッグ(原題:DESTROYER) 

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監督:カリン・クサマ 
脚本:フィル・ヘイ&マット・マンフレディ 
撮影:ジュリー・カークウッド 
音楽:セオドア・シャピロ
出演:ニコール・キッドマン、トビー・ケベル、タチアナ・マズラニー、セバスチャン・スタン

LA市警の女性刑事エリン・ベル。若き日の美しさはすでに遠い過去のものとなり、今は酒に溺れ、同僚や別れた夫、16才の娘からも疎まれる孤独な人生を送っている。ある日、エリンの元に差出人不明の封筒が届く。17年前、FBI捜査官クリスとともに砂漠地帯に巣食う犯罪組織への潜入捜査を命じられたエリンは、そこで取り返しのつかない過ちを犯し、捜査は失敗。その罪悪感が今なお彼女の心を蝕み続けていた―。封筒の中身は紫色に染まった1枚のドル紙幣。それは行方をくらました事件の主犯からの挑戦状だった。過去に決着をつけるため、犯人を追う野良犬(ストレイ・ドッグ)と化したエリンは、灼熱の荒野へと車を走らせるが―。

特殊メイクを施したニコール・キッドマンにとにかく驚く。こんなにすさんだ汚れ役は初めてではないだろうか。1967年生まれのニコール・キッドマンは53歳。しかし、劇中では17年前に20代の役なので、どう高くみても40代のはず。実年齢よりも若い役を老けた感じに見せる特殊メイクで演じるとは! エリンのやさぐれ感が全身から陽炎のように立ち上っていた。一方で20代のときを本人が(すっぴんで?)演じている。しかし違和感がない。ニコール・キッドマン、恐るべし!
ストーリーは時間軸を自由自在に動かして展開する。ロサンゼルスの街がスクリーンから強烈に主張し、じりじりと照りつくような太陽に見ているこちらまで意識が朦朧となっていった先にあっと驚く結末が用意されていた。「ちょっと待って、もう一回見せて」と思わず、声をあげてしまうかもしれない。(堀)


2018年/アメリカ/英語/カラー/スコープサイズ/5.1ch/121分
配給:キノフィルムズ
(C) キノフィルムズ
公式サイト:https://www.destroyer.jp/
★2020年10月23日(金) TOHOシネマズ シャンテ他全国順次ロードショー
posted by ほりきみき at 01:43| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

どうにかなる日々 

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原作:志村貴子「どうにかなる日々」(太田出版) 
監督:佐藤卓哉
演出:有冨興二 
脚本:佐藤卓哉、井出安軌、冨田頼子 
キャラクターデザイン:佐川遥
美術監督:齋藤幸洋 
撮影監督:髙津純平
音楽:クリープハイプ 
主題歌:「モノマネ」/クリープハイプ

元恋人の結婚式、男子校の先生と生徒、心と身体の変化を迎える思春期の幼馴染み。
誰が相手でも、どんな形でも、全ての恋と生き方には同等の価値がある。そして、不器用に誰かを想った日々は、きっといつか愛しい思い出になる。そんな“誰かの恋”を優しく見守り、温かく描くオムニバスショートストーリー集。

15分ほどの4つの話から構成され、最後の2つは登場人物が同じで、2年後を描いています。どれもちょっと特殊な性的きっかけから始まりますが、きっかけを作った本人はあまり登場せず、それによって心をざわつかせた人たちのその後を独特のテンポと繊細な心理描写で綴っています。展開は日常からはみ出すことなく、そういうことってあるかもなぁとクリープハイプの音楽に身をゆだねながら眺めている気分になるのではないでしょうか。なにげない日々のあたたかさ、愛しさに溢れた作品です。(堀)

2020年/54分/PG12/日本
配給:ポニーキャニオン
©志村貴子/太田出版・「どうにかなる日々」製作委員会
公式サイト:https://dounikanaruhibi.com/
★2020年10月23日(金)公開
posted by ほりきみき at 01:27| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

瞽女 GOZE 

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監督:瀧澤正治
脚本:加藤阿礼、椎名 勳、瀧澤正治
撮影:佐々木 秀夫、伊集 守忠
照明:磯野 雅宏
音楽:まついえつこ
音響効果:帆苅 幸雄
編集:白石 悟
出演:川北のん、吉本実憂、中島ひろ子、冨樫真、小林綾子、小林幸子(特別出演) 、本田博太郎、国広富之、田中健、寺田農、綿引勝彦、左時枝、渡辺美佐子
語り部:奈良岡朋子

生後3ヶ月で失明したハルは2歳のとき父と死別し、7歳で瞽女になる。するとそれまで優しかった母トメが子を思う深い愛情ゆえ、心を鬼にしてハルを厳しく躾けた。母親の本心に気がつかないまま、ハルは8歳でフジ親方と共に初めて巡業の旅に出る。その年、病が悪化してトメはこの世を去ったが、ハルは自分を虐めた鬼である母親に涙一つ流さなかった。苛酷な瞽女人生の中でハルは意地悪なフジ親方からは瞽女として生き抜く力を、サワ親方からは瞽女の心を授かる。
こうして様々な困難を経て親方になったハルは初めて幼い弟子ハナヨを向かい入れる、何も知らないハナヨを瞽女として生きていける様にとハルは厳しく躾をした時、自分が幼い頃、母から鬼のように厳しく躾けられる姿が走馬灯のように浮かび上がった。ハルはようやく自分を愛してくれた母親の慈愛の深さに気づき、感謝の涙を流すのだった。

瞽女(ごぜ)
親しく「瞽女さん」と呼ばれ、三味線を奏で、語り物などを唄いながら、各地を門付けして歩く「盲目の女旅芸人」のこと。幼い頃から親方と呼ばれる師匠に預けられ、瞽女として生きてゆくために厳しく芸を仕込まれます。視力の残った手引きを先頭に、3~4人が一組となって師匠から弟子の順に前の人の肩の荷に左手を触れて動きを知り、右手に持った杖で足元を確認して歩き、各地を回って瞽女唄を聞かせます。
江戸時代まで全国各地に瞽女が存在したといわれています。瞽女たちの手によって津軽三味線の素地が伝えられ、信濃追分の馬子唄が順次伝播されて江差や松前追分に転化するなど民謡の伝播者としても大きな役割を残しました。明治期に越後・新潟にだけ残り長岡地区と上越高田地区の二つの集団が生まれました。


瞽女のことをこの作品で知りました。タイトルの漢字を見ても、実は読めなくて、この記事を書くときにWordで「ごぜ」と打っても出てこなくて、四苦八苦しました。それだけ瞽女を知らない人が多くなってしまったということなのでしょう。
冬、雪の中を素足で草履をはいて歩く姿に、思わず自分の足を摩ってしまいます。しかし、彼女たちの巡業を楽しみにしていた人たちがたくさんいたことが作品から伝わってきました。娯楽の多い現代と違い、当時は他に楽しみがなかったのですね。
子ども時代のハルを演じた川北のんさんの目が見えない演技が素晴らしく、特に針に糸を通す練習している姿は涙を誘います。そして、子どもを愛するがゆえに、鬼になる葛藤を母を演じた中島ひろ子さんが見事に表現しました。
ハルは2人の親方と巡業の旅に出ました。最初の親方は意地悪で辛い思いをしますが、瞽女として生き抜く術を学びます。次の親方は優しい人で瞽女としての心を授かりました。ハルはそのことを「いい人と歩けば祭り、悪い人と歩けば修行」と振り返ります。謙虚な心持ちは私たちにも通じることかもしれません。(堀)


2005年4月、105歳で亡くなった最後の瞽女・小林ハルさんの半生を映画化した作品です。目が見えないので一生人の世話になるから、と厳しく躾けられ、口答えをせずどんな理不尽なことにも耐えて生きてきたハルさん。それをいいことに酷い仕打ちをしてきた人がいました。辛苦を味わってきた半分までが映画に描かれています。その後も決して楽にならず、人の何倍も過酷な目に遭います。
人間ってもっといいもので、真面目に務めていれば報われると思いたかっただろうに、ハルさんが幸せと言える日はずっと先なのでした。映画をきっかけに、瞽女、を知ったなら本や音源、動画も遺されていますので、手にとってみてください。
吉本実憂さんは、『レディ in ホワイト』(18)など、めげない強気の役の印象があります。それとは全く反対の、何もかも受け入れるハルさんを三味線や瞽女唄の特訓をして演じました。初めて観て泣いた自分の出演作品だそうです。ラストでハルさんが口にする一言が胸をうちました。(白)


2019年/109分/G/日本
配給:エムエフピクチャーズ
©2020映画 瞽女GOZE製作委員会
公式サイト:https://goze-movie.com/
★2020年10月23日(金)公開
posted by ほりきみき at 01:10| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

キーパー ある兵士の奇跡(英題:The Keeper)

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監督:マルクス・H・ローゼンミュラー 
出演:デヴィッド・クロス、フレイア・メーバー、ジョン・ヘンショウ、デイヴ・ジョーンズ

1945年、ナチスの兵士だったトラウトマンはイギリスの捕虜となる。収容所でサッカーをしていた時、地元チームの監督の目に留まり、ゴールキーパーとしてスカウトされ、名門サッカークラブ「マンチェスター・シティFC」に入団。ユダヤ人が多く住む街で、想像を絶する誹謗中傷を浴びながらも、トラウトマンはゴールを守り抜いた。やがて彼の活躍によって、世界で最も歴史ある大会でチームを優勝へ導き、トラウトマンは国民的英雄となる。だが、彼は誰にも打ち明けられない〈秘密の過去〉を抱えていた。そしてその秘密が、思わぬ運命を引き寄せてしまう。

ナチスの兵士だった主人公がキーパーとしてイギリスの国民的英雄になる。事実は小説より奇なりという言葉を改めて思い出す、実話を基にした作品です。ただ、メインテーマはサッカー選手の人生を描くことではなく、罪と許し、そして和解です。
戦争が終わっても、敵国の人と仲良くするのは感情的に簡単なことではありません。まして、家族や友人を戦争で喪っていたらなおのこと。直接的に関わったわけでなくても、敵国というだけでその人を憎む気持ちが生じてしまいます。一方で、許せるようになるのは個人的な関わりを持つことから始まるのではないでしょうか。トラウトマンに対するマーガレットの気持ちの変化や、その後の彼女の奮闘からそれが伝わってきます。
起きてしまった戦争をなかったことにはできません。しかし、それを認め、受け入れ、許すことで和解することはできるはず。世界の各地で今もなお戦争は続いています。やられたからやり返すのではなく、罪と許し、そして和解の心があれば、トラウトマンがイギリスの人たちに受け入れられたように、世界的な共存は可能なのではないかと思えてきます。
ところで、トラウトマンが捕虜としてイギリスのランカシャー収容所に送り込まれたところから始まりますが、収容所での捕虜の扱いに驚かされました。これまでに見てきた映像作品の印象から、捕虜収容所では人間としての尊厳が大事にされない扱いをされると思っていましたが、この作品に出てきた収容所ではもっと人間らしい生活が営まれていたのです。エピソードにフィクションも含まれているとはいえ、国によってこんなに違うものとは。
また、トラウトマンと地元サッカーチームの監督とのやりとりにくすっと笑ってしまうシーンがたくさんありました。娘がトラウトマンと恋に落ちたときの狼狽ぶりには笑いつつも、娘がいる人は共感を覚えるかもしれません。重厚なテーマを扱いつつ、コミカルなシーンを挟み込むことでエンタメとしても楽しめる作品に仕上がっています。(堀)


これが事実を元にしていると知って、余計に印象深い作品になりました。トラウトマンを演じるデヴィッド・クロスは『愛を読むひと』(08)で年上の人(ケイト・ウィンスレット)に恋した男の子マイケルではありませんか。こんなに大きくなって。
イギリスで捕虜となったナチスの兵士がどれほど憎まれたか、この映画の描写が垣間見せてくれます。国が起こした戦争に駆り出され、国や家族を守ろうと戦ったのはどの国の国民も同じはず。妻の必死の訴えに男たちが口をつぐむ場面に「よく言った!」と拍手したくなりました。トラウトマンの真摯な態度、GK(ゴールキーパー)としての卓抜した技能があってこそですが。
サッカーはどんなに攻撃が上手くても、そのボールをゴール前で止められたら得点できません。スポーツ観戦はほとんどしないのに、唯一熱心に観た2002年のFIFAワールドカップを思い出しました。日本と韓国が合同開催し日本は16強に入って敗退しましたが、ドイツとブラジルが勝ち上がり、ドイツのGKだったオリバー・カーンのにわかファンになったものです。以来GKびいき。
戦後の辛い時期に、鉄壁のGKを得た「マンチェスター・シティFC」とファンがどんなに熱狂したか、想像に難くありません。生活そのものではない娯楽が、人々を癒し元気づけること…この時期に観るとよけいに胸に響きます。(白)


「ドイツ人は友達の命を奪った」というマーガレットに、トラウトは「戦うより君と踊りたかった。でも選べなかった」と答える場面がありました。誰しも、自ら好んで戦争に加担したくないけれど、国家という枠組みの中にいる限り逃れられません。
人は被害にあったことは語るけれど、自分の加害については語れないのが常。ましてや、地獄を味わった人は、それが一生人に言えないまま胸に突き刺さっているのです。日本でも、実戦で地獄を見た人は多くを語りません。戦争においては加害者もまた被害者と言えるでしょう。
トラウトマンは、ユダヤ教のラビが、「直接加担してない人間までも罰すれば、我々も加害者になる」と声明を出してくれて救われます。「許すより憎むほうが簡単」「罪は消えないけれど、許すことはできる」という言葉が心に残りました。
ところで、トラウトマンが近所の子どもたちとサッカーに興じていた頃に、キーパーというポジションを選んだのは、実は自分の意志ではなかったというエピソードが出てきました。戦争に加担したのも自分の意志ではなかったことを考えると、面白い運命です。(咲)



2018年/イギリス・ドイツ/英語・ドイツ語/119分/スコープ/カラー/5.1ch
配給:松竹
ⓒ2018 Lieblingsfilm & Zephyr Films Trautmann
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/keeper/
★2020年10月23日(金)新宿ピカデリーほか全国公開



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2020年10月11日

靴ひも   原題:Laces

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監督:ヤコブ・ゴールドワッサー
出演:ネボ・キムヒ、ドブ・グリックマン、エベリン・ハゴエル

発達障害のある30代半ばを過ぎたガディ。一緒に暮らしていた母親が急死し、入居先が決まるまで長年疎遠だった父親ルーベンのところに身を寄せることになる。父の経営する自動車整備工場で働き始めるが、何かとこだわりが強く、顧客や周囲の人と摩擦を起こし、父もどう接していいか戸惑う日々だ。そんなある日、父が倒れ、腎不全で人工透析を受けるが、治癒には腎臓移植が必要とわかり、ガディが腎臓提供を決意する。だが、父はガディの後見人で被後見人からの提供は受けられないという・・・

生まれてくる子に障害があるとわかって、母子から逃げた父親。養育費は払っていたものの、バル・ミツバ(13歳の時に行われるユダヤの成人式)と20歳の誕生日にしか会ってなかった息子との暮らし。最初はぎくしゃくしていますが、そこは親子。血の繋がりがなせる技を感じさせてくれます。
障害の程度を調査する面接の日、「今日は芝居をする日」と父と息子は結託。靴ひもを結んでと言われ、ガディはあえて結べない振りをします。より高額の給付金を貰うために! そんなガディも心を乱される出来事があったときには、靴ひもが結べません。
2018年の東京国際映画祭で観た折には、障害を持つ息子と父の思いを描いた普遍的な物語で、いかにもイスラエル映画と感じたのは、病院のシーツの模様がダビデの星だったこと位でした。今回、公開を前にもう一度観てみたら、最初の母親の埋葬のシーンからして、正統派ユダヤのラビが仕切っていて、長男であるガディが一生懸命ガディッシュ(追悼の祈り)を述べていました。
ガディは歌手を自認していて、好きな歌手3人の名前を挙げるのですが、3人目のシュロミ・シャバットのことは、シャバット(安息日)に掛けて、平安なという意味のシャロームを付けて「シュロミ・シャバット・シャローム」と言っています。なかなかお茶目。
また、ガディが食堂で働くアデラという女の子と結婚したいと父親にいうと、「黒人だから不釣り合い」と言われます。黒人といっても、恐らくエチオピアから移住してきたユダヤ人。様々な地からイスラエルにやってきたユダヤ人の中にも差別意識があることを見せてくれました。
障害を持つ息子が父親に腎臓移植をしようとしたけれど却下されたという実話から紡いだ普遍的な物語ですが、イスラエルらしさも感じていただければと思います。(咲)

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2018年の東京国際映画祭の折に来日したヤコブ・ゴールドワッサー監督のQ&Aはこちらで!


息子の障害から逃げた父親と育ててくれた母を亡くしたばかりの息子。疎遠だった2人が一緒に暮らし始める話です。タイトルの靴ひもは(咲)さんが書いているように、特別給付金を得るための認定テストの一つ。息子は靴ひもが結べるのに、結べないフリをします。このシーンを見ていたら、親の介護で大変な思いをしている友人たちの話を思い出しました。介護認定をもらうための判定で認知症の親ががんばってしまい、認定がもらえなかったと、この作品とは真逆な話をよく聞くのです。むしろ、この作品の息子のようにあえてできないふりをしてくれたら、お互いに楽なはずなのにと。友だちの話は近い将来の私の話かもしれないと思って聞いていましたが、この作品で主人公が陥ったジレンマを知り、人生って後で何があるか分からないから、ちゃんとしないといけないんだなと思いました。
ラストは映画としては意外な展開ですが、これが現実なのでしょう。しかし、前向きな気持ちで新しい生活を始めていく息子にエールを送りたくなるに違いありません。(堀)


2018年/イスラエル/103分
配給:マジックアワー
公式サイト:https://www.magichour.co.jp/kutsuhimo/
★2020年10月17日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開






posted by sakiko at 17:29| Comment(0) | イスラエル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

朝が来る

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監督・脚本・撮影:河瀬直美
原作:辻村深月「朝が来る」文春文庫
共同脚本:高橋泉
音楽:小瀬村 晶、An Tôn Thât
出演:永作博美(栗原佐都子)、井浦新(栗原清和)、蒔田彩珠(片倉ひかり)、浅田美代子(浅見静恵)、佐藤令旺(栗原朝斗)、中島ひろ子(片倉貴子)

長い不妊治療を経て、子どもを持つことを諦めた栗原清和と佐都子の夫婦は「特別養子縁組」で、産まれたばかりの男の子を迎え入れる。それから6年、朝斗と名付けた息子と3人幸せな日々を送っていた。
突然、朝斗の産みの母親“片倉ひかり”を名乗る女性から「子どもを返してほしい」という電話がかかってきた。当時14歳だったひかりとは、朝斗を引き取る際一度だけ会ったことがある。泣き泣き子どもへの手紙を佐都子に託す、心優しい少女だった。意を決して清和と佐都子が迎えた若い女性は、ほんとうにひかりなのか?

昔々なら結婚する(させられる)こともあった14歳。妊娠も出産も可能な年頃です。ひかりが一人で訪れて出産した施設ベビーバトンには、いろいろな事情で産んでも育てられない女性たちがいました。この施設の代表を演じていたのが、浅田美代子さん。人気テレビドラマ「時間ですよ」でデビューして天然キャラだったのを思い出します。わけあり女性たちを迎え入れ、産まれた子どもの幸せを考える慈愛深い女性を演じています。
前半は佐都子一家、後半はひかりの事情が描かれ、追い詰められていくひかりの幼さが際立ちます。ドラマチックな展開に思わず見入り、子どもと二人の母親の幸せを祈る気持ちになりました。あ、父もね(幼い父は蹴飛ばしたくなった)。
特別養子縁組の説明はこちら。(白)


幼稚園の先生から電話がかかってきて、「お子さんがお友だちをジャングルジムから突き落とした」と言われたけれど、子どもは「やっていない」と主張したら? 佐都子は息子が嘘をついていたとしても息子の言うことを信じてあげようとします。親として子どもに対して揺るぎない信頼を置いている母親を実生活でもお子さんがいる永作博美がリアリティを感じさせながら演じていました。こんな母親になりたい。自分だったら子どもが信用できず、なぜそんなことをしてしまったのか、私の育て方のどこがいけなかったのかと自分自身を責めてしまったような気がします。
14歳で妊娠し、子どもを産んだひかりを演じたのは蒔田彩珠。ドラマ「ゴーイング マイ ホーム」で是枝裕和監督から演技を高く評価され、『海よりもまだ深く』、『三度目の殺人』、『万引き家族』に出演。是枝作品の常連となっている実力派です。本作では家族の中に居場所が見つけられずにいる中、思いがけず妊娠してしまい、ますます孤立するという難しい役どころを見事に演じていました。見ている立場では、「両親がもっと違った受け止め方をしてあげていれば」と思ってしまいますが、実際に彼女の親の立場になったら…。
ほかにも「自分だったら?」と考えてしまう場面がいくつもありました。親としての姿勢が問われる作品なのかもしれません。(堀)


河瀨直美監督は、辻村深月の原作「朝が来る」に出会い、二人の母をつなぐ子供「朝斗」のまなざしを映像化できれば素晴らしいなと感じたと語っています。
映画は、朝斗がまなざしを向ける二人の母の姿を丁寧に描いています。「特別養子縁組」の制度のお陰で息子を持つことができた佐都子の朝斗に向ける溢れる愛情。そして、恋をして身篭ったものの、育てるのを諦めるように諭された14歳の少女。奈良の実家を離れて、瀬戸内海の似島にあるNPO法人ベビーバトンが運営する施設に篭って出産の日を待つ姿、そして、その後に彼女が歩んだ人生・・・
佐都子を演じた永作博美さんが、河瀬直美監督の「役積み」の手法を語っているのを先日聞きました。撮影に入る前に、1か月間、実際にタワーマンションに親子3人で暮らしたのだそうです。産みの母ひかり役の蒔田彩珠さんも実際に奈良で暮らして学校に通ったのだとか。
これまで河瀬直美監督の作品は、ちょっと難解という印象があったのですが、今回は、丁寧に作られた映画を堪能しました。(咲)


子供を授からなかった夫婦と、若くして妊娠してしまった少女。「特別養子縁組」制度によって、両者は知り合い、夫婦は息子を育てることになった。その息子朝斗をめぐっての葛藤が描かれる。
これまでの河瀬監督の映画とはちょっと毛色が違うと思ったが、実父と生き別れ、実母と離別し、母方の祖母の姉に育てられた自身の境遇から作られた初期の作品『につつまれて(山形国際ドキュメンタリー映画祭国際批評家連盟賞受賞)』や、『かたつもり(山形国際ドキュメンタリー映画祭奨励賞受賞)』のことを考えると、やはり「生き別れと家族について」の監督の思いにつながる作品なのかもしれない。
でもわからないのは、借金取りに追われて自身の生活もままならない状態なのに「息子を返して」と、ひかりが栗原家にやってきたこと。そして相手の男の子のこと。妊娠したことによって彼女の人生は大きく変わってしまったわけだけど、その男の子は彼女が妊娠したことに対してどのような態度だったのだろう(暁)。

2020年/日本/カラー/139分
配給:キノフィルムズ、木下グループ
(C)2020「朝が来る」Film Partners
http://asagakuru-movie.jp/
★2020年10月23日(金)よりロードショー

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アイヌモシリ(リは小文字)

2020年10月17日(土)より渋谷ユーロスペース、11月14日(土)より札幌シアターキノほかで公開 劇場情報

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(C)AINU MOSIR LLC/Booster Project

監督・脚本:福永壮志
プロデューサー:エリック・ニアリ、三宅はるえ
エグゼクティブプロデューサー:中林千賀子、宮川朋之、ジャッド・エールリッヒ
共同プロデューサー:福永壮志、ドナリ・ブラクストン、ジョシュ・ウィック
撮影監督:ショーン・プライス・ウィリアムズ
編集:出口景子、福永壮志
音楽:クラリス・ジェンセン、OKI
制作担当:星野友紀
出演
カント:下倉幹人
デボ:秋辺デボ
エミ:下倉絵美
コウジ:結城幸司
吉田先生:三浦透子
トンコリ伝承者::OKI
岡田(新聞記者):リリー・フランキー

デビュー作『リベリアの白い血』で、ニューヨークに移住するアフリカの移民の苦悩を描き高く評価された福永壮志監督が5年をかけて作り上げた2作目は、自身が生まれ育った北海道を舞台に阿寒湖のアイヌコタンで暮らす少年の成長と、現代のアイヌ民族の現状と伝承について映し出した。
14歳の少年カントはアイヌの民芸品店を営む母親のエミと北海道阿寒湖畔のアイヌコタンで暮らしている。アイヌ文化に触れ、行事に参加しながら育ってきたが、一年前の父の死をきっかけにアイヌの活動に参加しなくなってしまった。アイヌの伝承文化に距離を置く一方、友達と始めたバンドの練習に没頭するようになり、中学校卒業後は高校進学のため故郷を離れようと思うようになった。
亡き父の友人で、アイヌコタンの人たちの中で中心的存在のデボは、カントに自然の中で育まれたアイヌの精神や文化について伝えようとする。そして、長年行われていない熊送りの儀式、イオマンテの復活のために密かに育てている子熊の世話をカントに任せる。世話をするうちに子熊への愛着を深めていくカント。
初主演を果たしたのはアイヌの血を引く下倉幹人。演技は初めてだが力強い眼差しとアイデンティティーにゆれる印象的な主人公・カントを等身大で演じた。その他の主要キャストもアイヌの人たちが務めている。カントの父の友人デボに扮するのは、阿寒に暮らし多岐にわたる活躍をみせる秋辺デボ。アイヌの伝統を重んじるデボ役を体現している。カントを優しく見守る母のエミ役は下倉幹人の実の母親でミュージシャンの下倉絵美が担当した。三浦透子、リリー・フランキーら俳優人がゲスト出演している。

*アイヌモシリとは:「人間の静かなる大地」を意味するアイヌの言葉。アイヌ民族は自分たちの生活圏をアイヌモシリと呼んだ。「アイヌの大地」「アイヌのくに」とも解されている。

前作『リベリアの白い血』でインタビューした時、次作は「アイヌ」を描いた作品を考えていると答えていた福永壮志監督だったので、この作品を観て感慨深かった。
アイヌ民族の人たちの文化と伝承について興味があった私は、北海道に行ったときに平取町立二風谷のアイヌ文化博物館を訪ねたりしていた。アイヌの文化は、北海道の地名などに残っていることもあるけど、言葉の伝承などはかなり失われているのかもしれない。今はほとんど観光的なものも多くなってしまっているような感じだが、何ヶ所かのアイヌコタンでかろうじて残されている。私がアイヌ民族のことを知ったのは中学時代。アイヌ民族の歴史に興味を持ったけど、アイヌ模様にも興味を持った。衣服などに刺繍されている幾何学的な模様はとても美しくて力強い。それにしても長年行われていない「イオマンテ」の儀式と、この映画では出てきたけど、阿寒湖のアイヌコタンでは実際、今でも行われているのだろうか。
主人公の実の母親である下倉絵美さんが出演していた『kapiwとapappo~アイヌの姉妹の物語~』(16年/佐藤隆之監督)も印象的なアイヌのアイデンティティを描いた作品だった。これは妹の郷右近富貴子さんと共に出演している。下倉幹人君も出演している。(暁)


北海道出身なので、先住民のアイヌの人たちは身近に思えています。生まれた利尻の村はアシリコタンと呼ばれていましたし、小刀はマキリと言い、チャランケ(談判、話し合い)という言葉も生きていました。札幌の高校生のときにアイヌの民族衣装を調べて、現物が見られる北大植物園に通ったことがありました。今はネットでもなんでもありますが半世紀前のことです。
北海道・白老(しらおい)に今年7月「ウポポイ(民族共生象徴空間)」がオープンしました。HPはこちら。9月こそこそ里帰りしていたので、足を延ばして訪ねてきました。国立の施設でアイヌ文化の保存と継承のために作られたものです。ポロト湖と森を背景にした広大な土地に、博物館や交流ホール、学習館、工房などの建物、再現されたチセ(家)、イベントの行われる広場などが点在して多くの道民や観光客が訪れていました。コロナ禍中だったので、入場制限があり、予約が必要でした。入って感じたのは、知る機会と働く場所が増えて良かったということでした。
この映画では幹人くんの強い目に魅了されました。多感な時期に自分のアイデンティティに向き合うのは必須なのでしょう。幸多かれと祈ります。東京・八重洲にもアイヌ文化交流センターがあります。こちら。里帰り日記はこちら。(白)


2018年9月2日~3日に開催された「キルギス映画祭 in Tokyo」で上映された『北海道のマナス』は、キルギス人が阿寒湖アイヌコタンを訪れたドキュメンタリー映画でした。キルギスの英雄叙事詩「マナス」を世界各地で語るプロジェクトの一環なのですが、「マナス」にはアイヌのことも語られているそうです。
アイヌ文化とキルギス文化には模様や口にあてて演奏する楽器など、共通点が数多くあることも紹介されていました。『北海道のマナス』の撮影で阿寒湖を訪れたキルギスの人達が皆、「異国にいる気がしない」と言っていたのも印象的でした。恐らく、『アイヌモシリ』に出演されている方たちも登場していたのではないかと思います。日本では消え去りそうな少数民族のアイヌですが、地球規模で見れば、同様の文化を持つ人たちがいるのだと、少し心強くなりました。それでも、アイヌ語という文化の根幹を成す言語がいつまで存続するのか心配です。
福永壮志監督の描いた本作が、貴重なアイヌ文化の記録の一つになるのは間違いありません。(咲)


メインキャストの多くは演技経験のないアイヌの方々が演じられています。主人公のカントと母親は本当に親子です。そのせいか、最初はフィクションではなく、ドキュメンタリー作品かと思ってしまいました。そのくらい、みなさん自然なのです。
阿寒には高校がなく、中学を卒業すると、高校に通うために町を出て行きます。あそこで暮らしているのは、中学生以下の子どもたちと年配の人ばかり。そんな状況での中学生の思春期の成長の物語です。アイヌの世界を描いていますが、思春期特有のもやもやした気分や大人に対する反発は誰にでもある感情ではないでしょうか。映画は答えを提示しませんが、見ている側の想像力を広げてくれ、印象に残る作品となっています。(堀)


公式HP
2020年製作/84分/G/日本・アメリカ・中国合作
配給:太秦

*参照
シネマジャーナル『リベリアの白い血』福永壮志監督インタビュー記事
http://www.cinemajournal.net/special/2017/liberia/index.html
posted by akemi at 09:31| Comment(0) | 日本・アメリカ・中国合作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月10日

アウェイデイズ (原題:AWAYDAYS) 

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監督:パット・ホールデン
脚本:ケヴィン・サンプソン(原作「AWAYDAYS」ケヴィン・サンプソン著)
出演:ニッキー・ベル、リアム・ボイル、スティーブン・グレアム、イアン・プレストン・デイビーズ、ホリデイ・グレインジャー、サシャ・パーキンソン、オリヴァー・リー、ショーン・ワード、マイケル・ライアン、リー・バトル、レベッカ・アトキンソン、ダニエレ・マローン、デヴィッド・バーロウ、アンソニー・ボロウズ 他

母親を1年前に亡くした19歳のカーティ(ニッキー・ベル)は下級公務員として働きながら、郊外の中産階級の家庭で悲しみにくれる父、そして血気盛んな妹モリー(ホリデイ・グレインジャー)と暮らしていた。収入のすべてはクラブ遊び、レコード、サッカー、ライブに費やしている。
ある日、《Echo & The Bunnymen》のライブでカーティはエルヴィス(リアム・ボイル)に出会う。エルヴィスはカーティが魅了されていた悪名高いギャング集団“パック”の一員だった。彼らはピーターストームにフレッドペリー、ロイスのジーンズ、そしてアディダスのスニーカーを履いてスタジアムで常に問題を起こしていた。エルヴィスはカーティに“パック”と付き合うことが危険であることを警告した。それよりもエルヴィスはカーティの様に芸術、音楽、詩、そして死について語り合える友人をずっと待っていた。そして、いつしかエルヴィスはカーティに夢中になっていく。しかし、カーティの“パック”への憧れはエスカレートして行き、エルヴィスの警告にもかかわらず、危険な世界の扉を徐々に開いていくのだった。
ある日の遠征(=Awayday)でカーティは成果を得るが“パック”のボス、ゴッドン(スティーブン・グレアム)に認められることはなかった。自分よりも、謎に包まれた存在のエルヴィスが尊敬を集めていることに苛立つカーティ、自分の想いが届かないことに苦悩するエルヴィス。次第に綻びは大きな傷になっていく。

“Football Casual”とは
毎週末にサッカースタジアムに通う労働者階級のファッションのこと。
1970年代の終わりに、何千というリヴァプールのサポーターたちがチームに帯同してヨーロッパをまわりアディダスのスニーカーを手に入れ、それを履いてロンドンのチームとの試合に行く、それを見たロンドン子たちが衝撃を受け真似ていったという大きな流れがあります。1980年代に入ってから雑誌がカテゴライズして広まりました。
リヴァプールでは自分たちを“スカリーズ=Scallys”と呼び、カジュアルズはロンドンでの呼称です。まずフットボールありきで、スタジアムに入り易くするためにスポーツブランドに身を隠す様になったと言われています。

本作はケヴィン・サンプソンが1998年に上梓した同名小説を原作にして、自ら脚本を書きました。Joy Division、The Cure、Magazine、Echo & The Bunnymen、Ultravoxの音楽をバックに、若者たちが自らの拠りどころを探し、絶対的な者へ憧憬を抱き、そして形成された“族”の中で避ける事の出来ない運命にもがき苦しむ様をリアルに映像化しています。
これまで日本では英国フットボール発祥の文化“Football Casual”について、 ほとんど紹介されることがありませんでしたが、その黎明期を初めて切り取った映画でもあります。
イギリスでは公開当時、『さらば青春の光』(1979年)、『トレインスポッティング』(1996年)、『コントロール』(2007年)、さらには『スタンド・バイ・ミー』(1986年)等の映画を例えに、さらにこれら全ての要素を詰め込んだ、若者の生き辛さを描いた小説『ライ麦畑でつかまえて』(J・D・サリンジャー著/1951)のジャックナイフ版であると紹介されました。イギリス公開から11年の月日を経て、ようやく日本で公開されます。

ポスト・パンクの曲が数多く使われていますが、音楽が分からなくてもまったく問題はありません。カーティとエルヴィスという2人の若者が互いに自分とは違う世界に住む相手に惹かれて近づき、すれ違っていく物語です。どちらか片方が自分の世界に留まっていれば仲良くやっていけたのか。いや、それでは惹かれない。なるべくしてなった結果なのかもしれません。思い通りにならないもどかしさをニッキー・ベルとリアム・ボイルが若者らしく体現していました。(堀)


2009年/イギリス/カラー/ビスタ/5.1ch/DCP/R18+/105分
配給:SPACE SHOWER FILM S
© Copyright RED UNION FILMS 2008
公式サイト:https://awaydays-film.com/
★2020年10月16日(金)より新宿シネマカリテほかにてロードショー!以降、全国順次公開!
posted by ほりきみき at 18:57| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

空に住む 

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監督・脚本:青山真治
脚本:池田千尋 
原作:小竹正人『空に住む』(講談社)
主題歌:三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE「空に住む〜Living in your sky〜」(rhythm zone)
出演:多部未華子、岸井ゆきの、美村里江、岩田剛典、鶴見辰吾、岩下尚史、髙橋洋、大森南朋 、永瀬正敏、柄本明

郊外の小さな出版社に勤める直実は、両親の急死を受け止めきれないまま、叔父夫婦の計らいで大都会を見下ろすタワーマンションの高層階に住むことになった。長年の相棒・黒猫ハルとの暮らし、ワケアリ妊婦の後輩をはじめ気心のしれた仲間に囲まれた職場、それでも喪失感を抱え、浮遊するように生きる直実の前に現れたのは、同じマンションに住むスター俳優・時戸森則だった。彼との夢のような逢瀬に溺れながら、先は見えないことはわかっている。そんな日常にもやがて変化が訪れる。

原作は作詞家・小竹正人の同名小説で、原作とともに誕生した「三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE」の楽曲「空に住む Living in your sky」の世界観を基に、青山真治監督がさまざまな葛藤を抱える女性たちを描きました。青山監督にとって7年ぶりの長編映画です。
叔父夫婦に呼ばれてタワーマンションに住み始めたが、両親を亡くして悲しいのに泣けなかった自分に戸惑う主人公。金銭的にはかなり恵まれている生活をしながらも、子どもがいないこともあるのか、満たされない思いを抱える主人公の叔母。結婚を目前にしながら、婚約者ではない男性の子どもを身籠る後輩。一見、幸せそうに見える女性たちも内面には葛藤や問題を抱えていました。いちばんたくましそうに見えた後輩も、いざ出産を目前にすると逃げ出したい気持ちが表に現れてしまいます。でも、みんな何かしら、強さと弱さを併せ持つものかもしれない。後輩を演じた岸井ゆきのが絶妙な塩梅でその両面を見せてくれました。(堀)


2020年/118分/G/日本
配給:アスミック・エース
©2020 HIGH BROW CINEMA
公式サイト:https://soranisumu.jp/
★2020年2020年10月23日(金)全国ロードショー

posted by ほりきみき at 18:44| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

きみの瞳(め)が問いかけている

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監督:三木孝浩
原案:映画「ただ君だけ」
脚本:登米裕一
撮影:小宮山充
出演:吉高由里子(柏木明香里)、横浜流星(篠崎塁)、やべきょうすけ(原田トレーナー)、田山涼成(大内会長)、野間口徹(尾崎)

駐車場の管理人の仕事を見つけた塁の前に、目の不自由な女性明香里が現れる。前の管理人のお爺さんと勘違いしている彼女に、やめてしまってもういないと話すと、一緒にテレビを見てほしいと頼まれる。不慮の事故で視力と家族を失ってしまった明香里はくったくなく、キックボクサーとしての未来を絶たれた塁の生活に灯りをともす存在となった。つかのま、穏やかで幸せな日々を満喫する二人。しかし、明香里の事故の顛末を聞いた塁は、自分が知らないままに明香里の事故に関わっていたことに気づく。明香里の目が手術をすれば光を取り戻せると知った塁は、もう二度とやるまいと誓った賭けボクシングに身を投じようとする。

チャップリンの名作『街の灯』(1931)からインスパイアされて韓国映画『ただ君だけ』(2011/ソ・ジソプ、ハン・ヒョジュ主演)が、そしてさらに今回本作が生まれました。どれももれなく泣けるようにできている純なラブストーリー。安定の三木じるしです。中途失明した明香里を演じた吉高由里子さんの視線にもぜひ注目を。明るく生きるのには大きな努力が要るはず、それを重たくなりすぎずに演じていました。
流星くんのお顔が見えないのはもったいない!とか、触ってもハンサムってわかりそう!とか、追っかけるなら自分が走らないで、犬を!とか私のように「余計なつっこみ」をしないで素直に観ましょう。綺麗な涙が流れるはずです。野間口さん印象的でした。(白)


「吉高由里子の代表作となるラブストーリーを作る」という企画に恋愛映画の旗手である三木孝浩監督が加わり、切なさの先に感動のある作品ができあがりました。
相手役は横浜流星。キックボクサーとして将来を有望視される役ですが、横浜流星は中学時代に極真空手の世界大会で優勝経験があり、それもキャスティングの決め手の1つだったそう。本作のためにトレーニングを重ね、筋肉を10キロ近くまで身につけてキックボクサーの体を作り上げました。アクションがバッチリ決まって、カッコいいです。これでファンがまた増えちゃいますね。
ところで、三木孝浩監督作品といえば野間口徹。すべての作品に名前のない、ちょい役で出演し続けていて、「野間口徹を探せ」が三木孝浩監督ファンの恒例となっています。今作では初めて名前のある役で出演しています。が、初めての名前アリの役が…。(堀)


2019年/日本/カラー/ビスタ/123分
配給:ギャガ
(C)2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会
https://gaga.ne.jp/kiminome/
★2020年10月16日(土)ロードショー
posted by shiraishi at 15:08| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

スパイの妻 劇場版

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監督:黒沢清
脚本:濱口竜介 野原位 黒沢清
撮影:佐々木達之介
美術:安宅紀史
音楽:長岡亮介
出演:蒼井優(福原聡子)、高橋一生(福原優作)、坂東龍汰(竹下文雄)、恒松祐里(駒子)、みのすけ(金村)、玄理(草壁弘子)、東出昌大(津森泰治)、笹野高史(野崎医師)

1940年。戦争の足音が近づいてきたころ。神戸の瀟洒な洋館で暮らす優作と聡子夫婦。優作は貿易会社を営み、何不自由ない生活を送っている。満州へ買い付けに出かけた優作は、偶然国家機密を知ってしまう。一緒に目撃した甥の文夫と共に、現地で手に入れた証拠を秘密裡に持ち帰り、事実を世界に知らしめようと準備をしていた。何も知らない聡子は、幼なじみの憲兵の津森から夫が満州から女性を連れ帰っていたこと、その女性はすでに死亡したと聞かされた。夫とどんな関わりがあるのか、聡子は夫を信じたい気持ちと湧き上がる嫉妬に悩まされる。

戦争間近とはいえ、神戸の美しい洋館、調度品、執事とお手伝いもいる若い夫婦のハイソな暮らしは別空間。髪型や衣裳、小物まで、時代と階層に合わせて選び抜いたと思われます。上品な色使い、良い仕立ての衣裳は主人公の夫婦の人柄まで表しているようでした。穏やかで一点の曇りもなかった幸せな生活が、次第に不穏な空気に包まれてサスペンスに転じていきます。
信じる正義を貫けば愛する人を巻き込むことになると心痛める夫、信じてみな受け入れようとする妻、双方の想いが切ないです。蒼井優さんの目元の泣きボクロが色っぽくて、和服もよく似合いました。東出昌大さんが珍しい敵役ですが、聡子さんには惚れるかもね、とうなずいてしまいます。この作品はヴェネチア映画祭で、黒沢清監督が銀獅子賞(監督賞)を受賞しました。普遍的なストーリー、映像の美しさは国や時代を越えて届くものですね。(白)


8K・スーパーハイビジョン撮影された本作は6月にNHKBSで放送され、スクリーンサイズや色調を新たに劇場版として10月に劇場公開されます。一般の人が8Kのドラマを目にする機会はそう多くないと考えた黒沢清監督が最初から劇場公開を想定して撮っていたのです。ただ、8Kの映像は生々しくて、フィクションのドラマ感が出ない。8Kのよさである、きめの細かさは残したまま、生々しさを消すよう、大河ドラマを作ってきたNHKの技術スタッフががんばりました。
高橋一生と蒼井優は『ロマンスドール』でも夫婦を演じているので、息はぴったり。個人的には太平洋戦争間近という時代設定の衣装やセリフ回しがこの2人はあっているように思えました。ブリティッシュなスーツを着こなす高橋一生が何と素敵なことか。また、夫が撮影する自主映画に出演した妻のアップが銀幕のスターさながらの煌めきを放ち、蒼井優の美しさを改めて感じました。
クライマックスに向け、互いが相手を思うがゆえにこっそり取った行動は厳しい現実になって2人を苦しませますが、エンドロールに書かれたその後には希望があると信じています。(堀)


プロデューサーの岡本英之氏が、本作の企画は監督:黒沢清、脚本:濱口竜介という座組と、「神戸」の地が絡む物語という2点だけで立ち上がったとプレス資料のプロダクションノートに書いておられました。その時点では現代劇か時代劇、いずれになるかも決まってなかったとのこと。それが、昭和15年~20年という戦争の時代を背景にした『スパイの妻』という形で結実したのです。
神戸で生まれ育った私にとって、神戸がどんな風に出てくるのか興味津々でした。繁華街や神戸港の雰囲気は、私の思い出の中の神戸とちょっと違うと感じましたが、思えば私の知っている神戸は戦後の昭和30年代。違って当然です。私が通っていた赤塚山にある学校から、阪急御影駅に降りていくバス道から脇に入ったあたりには瀟洒な洋館が点在して、優作と聡子夫婦もあのような雰囲気のところで暮らしているのだなと想像できました。
黒沢清監督も神戸生まれ。通っていらした六甲学院は、私の通っていた御影の隣り六甲駅から上がった伯母野山。同じ茅渟の海(ちぬのうみ:現在の大阪湾)を眺めていらしたのだと、ちょっと嬉しくなりました。満州から連れ帰った女性を匿っていたのは、有間温泉。六甲山の裏手にある風情ある温泉地で、これまた神戸っ子には懐かしい。
さて、優作が満州で偶然目撃してしまった国家機密。今や皆が知る歴史ですが、優作が撮った映像を見せられた聡子の、なんとかこれを伝えなければという思いが、心にひしひしと突き刺さってきました。そして、人間の残酷な行為が今もどこかで続いていることに思いが至ります。(咲)


これは1940年の話として作られた映画だけど、過去を舞台にしてはいるけど、「もしかして戦争前夜かもしれない」現代に置き換えられるような映画である。「忖度」という言葉が流行るほど政府の内実(嘘や真実)が隠されていたり、最近の日本学術会議での政府の意向に沿わない人の会員候補からの除外等々、そんなことが続くと、隠された真実を表に出すことの難しさは昔も今も変わらないんじゃないかとさえ思えてくる。政府のすることに疑問の声をあげようとすると戦前のように「非国民」などというような人がいるような状態がある今の日本。過去のことを描いているようでいて、今の日本に警鐘を出してるような映画でもあると感じる(暁)。

2020年/日本/カラー/115分
配給:ビターズ・エンド

https://wos.bitters.co.jp/
★2020年10月16日(土)新宿ピカデリーほかロードショー
posted by shiraishi at 14:46| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月08日

星の子 

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監督・脚本:大森立嗣 
原作:今村夏子『星の子』(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
出演:芦田愛菜、岡田将生、大友康平、高良健吾、黒木華、蒔田彩珠、新音、永瀬正敏、原田知世

大好きなお父さんとお母さんから愛情たっぷりに育てられたちひろだが、両親(永瀬正敏、原田知世)は、病弱だった幼少期のちひろを治した“あやしい宗教”を深く信じていた。中学3年になったちひろ(芦田愛菜)は、一目惚れしたイケメンで新任の南先生(岡田将生)に、夜の公園で奇妙な儀式をする両親を見られてしまう。そのことが彼女の心を大きく揺さぶることに繋がっていく。

原作は『むらさきのスカートの女』で令和初となる第161回芥川賞を受賞した今村夏子の同名小説です。『日日是好日』で第43回報知映画賞監督賞を受賞した大森立嗣監督が脚本を書き、音楽の世武裕子を始め『日日是好日』のスタッフとともに、不遇な環境に負けずに生きるヒロインの健気で涙ぐましい姿を描きました。芦田愛菜が象徴的だったロングヘアを大胆に切って、主人公のちひろに挑んでいます。
ちひろの両親は誰が見ても怪しい宗教にのめり込んでいます。しかし、作品はこの宗教について客観的に描き、是非については判断をしていません。ちひろが両親や彼らが信じる宗教をどう捉え、受け止めていくかを丁寧に描いているのです。多難な思春期を生きるちひろの複雑な感情がセリフではなく芦田愛菜の細やかな表情で伝わってきました。学業優先でしばらく女優業から遠ざかっていましたが、その間に幼いながらもさまざまな経験を積んできたのでしょう。今後の活躍が楽しみです。(堀)


2020年/110分/G/日本
配給:東京テアトル、ヨアケ
©2020「星の子」製作委員会
公式サイト:https://hoshi-no-ko.jp/
★2020年10月9日(金)TOHOシネマズ 日比谷 ほか全国公開ロードショー
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異端の鳥(原題:The Painted Bird )

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監督・脚本:ヴァーツラフ・マルホウル
原作:イェジー・コシンスキ「ペインティッド・バード」
出演:ペトル・コラール、ステラン・スカルスガルド、ハーヴェイ・カイテル、ジュリアン・サンズ、バリー・ペッパー、ウド・キアー

東欧のどこか。ホロコーストを逃れて疎開した少年(ペトル・コトラール)は、預かり先である一人暮らしの叔母が病死した上に火事で叔母の家が消失したことで、身寄りをなくし一人で旅に出ることになってしまう。行く先々で彼を異物とみなす周囲の人間たちの酷い仕打ちに遭いながらも、彼はなんとか生き延びようと必死でもがき続ける。

地面に埋められ、頭部だけ出ている少年とカラス。モノクロのビジュアルは一見、不気味ですが、カラスを見据える少年の眼差しに引き込まれます。このシーンも作中にありますが、タイトルにある「鳥」はこのカラスではありません。鳥を飼う男性が小鳥の羽にペンキを塗って群れに放ったエピソードに由来します。原作はポーランドの作家イェジー・コシンスキが1965年に発表した代表作『ペインティッド・バード(初版邦題:異端の鳥)』で、その題名を知ると納得できると思います。
少年はナチスのユダヤ人迫害から逃れるために田舎の親戚に預けられました。しかし親戚が亡くなって居場所を失い、行く当てもなく放浪する先々で差別や迫害、虐待を受けます。ただ、辛い境遇に苦しむのは少年だけではありません。極限における人間の本性が醜いほどむき出しにされ、虫けら同様に扱われる人々が淡々と映し出されます。思わず目を覆いたくなる場面もありました。
時代的背景は第二次世界大戦末期ですが、現在の世界でも同じようなことが繰り広げられています。余裕のなさが人を追い詰めるのでしょう。みなが幸せになるためにはどうしたらいいのか。作品ではラストに少年がある人物の受けた苦しみに気がつき、人間的な心を取り戻します。そこで初めて、音楽が使用されました。周りに目を向ける余裕が生まれれば、希望は見えてくるという監督の思いが伝わってきます。(堀)


映画化を知って原作を先に読んでいました。350pほどの厚い本で、過酷な状況下での人間の本能や浅ましさ、おぞましさがこれでもかとばかりに書かれています。その中に放り出されて、様々な苦難に遭う少年が痛ましく(孫と同い年)、好転してくれと願いなら読み進めました。
映画はモノクロで台詞も少なく、「カラーだと生々しくなる。モノクロで良かった」と思ったものの、冷徹な視線と不条理な出来事が変わるわけではありません。ほんの少し挟まれる暖かなやりとりに救われながらも、ラストまで緊張が途切れませんでした。
鳥飼の男に”色を塗られた鳥=The Painted Bird”が空に放たれるシーンがあります。集まったほかの鳥たちに攻撃され、ボロボロになって落ちてきた鳥を少年が拾い上げます。物語の序盤、これからの艱難辛苦を暗示しているようなシーンでした。2年をかけた順撮りの撮影は、少年の成長をそのままに映し出して、最初の幼い顔立ちが終わりにはすっかり変わっているのが見てとれました。(白)


メディア擦れしていない少年の瞳、彼を襲う凄惨な差別と虐待、暴力… 。が、35mm白黒フィルムが醸す艶やかで端正な映像、シネマスコープの画角から終始、目が釘付けになる169分である。テンポの良いカット編集、小道具、衣装と意匠の質感の高さにより、一瞬たりとも飽きさせない秀作を生み出したチェコ出身のバーツラフ・マルホウル監督に尊敬の念を禁じ得ない。異質のものを排除しようとする人間たちの残虐性は、ナチスの優生政策や第二次世界大戦下の抑圧だけではなく、現代にも通底する普遍性を獲得し得た。安易なカタルシスを呼び起こすような安い音楽を排除した静謐さが、観客を豊かな世界へと導いてくれる。(幸)

2018年/チェコ・スロヴァキア・ウクライナ合作/スラヴィック・エスペラント語、ドイツ語ほか/169分/シネスコ/DCP/モノクロ/5.1ch/
配給:トランスフォーマー
COPYRIGHT @2019 ALL RIGHTS RESERVED SILVER SCREEN ČESKÁ TELEVIZE EDUARD & MILADA KUCERA DIRECTORY FILMS ROZHLAS A TELEVÍZIA SLOVENSKA CERTICON GROUP INNOGY PUBRES RICHARD KAUCKÝ
公式サイト:http://www.transformer.co.jp/m/itannotori/
★2020年10月9日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー
posted by ほりきみき at 00:41| Comment(0) | チェコ・スロヴァキア・ウクライナ合作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月05日

みをつくし料理帖

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監督:角川春樹
原作:高田郁
脚本:江良至、松井香奈、角川春樹
撮影:北信康
音楽:松任谷正隆
主題歌:手嶌葵「散りてなお」
出演:松本穂香(澪)、奈緒(野江)、若村麻由美(芳)、浅野温子(おりょう)、窪塚洋介(小松原)、小関裕太(源斎)、藤井隆(清右衛門)、野村宏伸(清八)、衛藤美彩(菊乃)、渡辺典子(お満)、村上淳(卯吉)、永島敏行(伝右衛門)、薬師丸ひろ子(お百)、石坂浩二(種市)、中村獅童(又次)、榎木孝明(駒澤)、鹿賀丈史(采女)

享和二年の大坂。8歳の澪と野江は仲の良い幼馴染だった。「何があってもずっと一緒や」と約束を交わす二人、その約束の夜大坂を大洪水が襲った。澪は洪水で両親を失い、天満一兆庵の女将芳に拾われるが、野江の消息は分からずじまい。
それから10年、澪と芳は江戸の神田にある蕎麦処「つる家」の店主・種市に助けられ、そこで働いていた。種市に料理の才能を認められた澪だったが、上方の味と全く違う江戸の味に戸惑っていた。お客に喜ばれる料理を考えて試行錯誤の末、生み出されたつる家の看板料理は江戸中で評判となった。
ある日、吉原の翁屋で料理番をしている又次がやってきた。吉原で頂点を極めるあさひ太夫のために澪の看板料理を作ってくれという。澪は故郷の話を又次にし、又次は料理を持ち帰り、あさひ太夫に澪の話を聞かせた。

享和二年は西暦の1802年。実際に大きな水害があり多くの人が家族や家を亡くしました。ここで離ればなれになってしまった澪と野江を、10年後澪の料理が結んで劇的な再会を果たします。二人の変わらない友情を芯に、澪の周りの人々との交流と成長していくさま、澪が工夫する美味しそうな料理とに惹かれて、原作全10巻(+4年後に別巻)を読み続けました。「読んでから見るか、見てから読むか」で出版業界から映画制作に参入した角川春樹氏のハルキ文庫刊でした。
その角川春樹氏が『笑う警官』(2008年)以来約10年ぶり、8本目の監督をしたのが本作。出演作が続く松本穂香と奈緒がヒロインを務めました。初めての時代劇で、着物姿での所作から、調理の手際まで学ぶことばかりだったでしょう松本穂香さん、そのままひたむきな澪です。吉原一の太夫役の奈緒さんも凛として美しいです。フレッシュな二人を支えるのが、これまで角川映画に出演した豪華な出演陣、映画を盛り立てています。松任谷由実の書き下ろし曲を手嶌葵が歌い上げる「散りてなお」は10月14日CD発売。(白)


本作は豪華な俳優陣に目が行きがちですが、実はスタッフも邦画屈指の技術を持つ方々です。撮影の北信康さん、照明の渡部嘉さんは三池崇史監督の『十三人の刺客』で第34回日本アカデミー賞最優秀撮影賞と最優秀照明賞を獲得しています。本作でも北さんは円形移動で情感を盛り上げ、渡部さんは夕方と夜の微妙な違いを照明で表現しています。また、音響効果の柴崎憲治さんは三味線や唄などあふれるほどの材料をうまく整理しながら、遊郭の雰囲気を作り上げました。肝心の料理は服部栄養専門学校の人が作り、物語の中で全部は使えなかったので、最後のローリングタイトルで使われています。そんなことにもちょっと意識を向けてご覧になるのもおもしろいですよ。(堀)

2020年/日本/カラー/シネスコ/131分
配給:東映
(C)2020 映画「みをつくし料理帖」製作委員会
https://www.miotsukushi-movie.jp/
★2020年10月16日(土)全国一斉公開
posted by shiraishi at 16:16| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月04日

薬の神じゃない! 原題:我不是薬神

2020年10月16日 新宿武蔵野館、池袋シネマ・ロサ他全国順次公開
劇場情報はこちら

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©︎2020 Cine-C. and United Smiles Co., Ltd. All Rights Reserved

監督・脚本:文牧野(ウェン・ムーイエ)
共同製作:寧浩(ニン・ハオ)
出演:徐崢(シュー・ジェン)、王伝君(ワン・チュエンジュン)、周一囲(ジョウ・イーウェイ)ほか

何がホンモノで、何がニセモノか?!

上海で男性向けのインドの強壮剤を販売する店主 程勇(チョン・ヨン)は、店の家賃も払えず、妻にも見放され人生の目標を見失っていた。ある日、「血液の癌」である 「慢性骨髄性白血病」を患う呂受益(リュ・ショウイー) が、国内で認可されている治療薬は非常に高価なので、安価で成分が同じインドのジェネリック薬を輸入して欲しいという依頼しにきた。最初は申し出を断ったものの 金に目がくらんだ程勇は、ジェネリック薬の密輸・販売に手を染め、より多くの薬を仕入れるために白血病患者たちとグループを結成。依頼人の呂を始め、白血病患者が集まるネットコミュニティ管理人の劉思慧(リウ・スーフェイ)、中国語なまりの英語を操る劉牧師、不良少年の彭浩(ボン・ハオ)らが加わり、事業は大きく拡大していく。しかし、警察に密輸として目をつけられ、一度はグループを解散した。でも、薬を絶たれた患者たちの悲痛な姿を見て、あえて危険な仕事を続け、患者の負担を軽くするため仕入れ値以下の価格で薬を売るようになった。そんな彼に警察がせまる。あえて危険な仕事を続ける彼に待ち受ける結末とは…。

2014年に中国で実際に起きたニセ薬事件。それを元に作った作品。この事件をきっかけに中国の医薬業界に改革が起きた。事件発生から間もない 2018年7月に映画化され、中国公開されると3日間で9億元(約146億円)、 最終的に30億元(約500億円)を超える爆発的なヒットを記録した。 また、興行的な成功だけでなく、アジア・フィルム・アワード・助演男優賞、台湾の金馬奨・主演男優賞、新人監督賞、オリジナル脚本賞の3部門受賞をはじめ、国内外の映画賞を数多く受賞し、名実とともに中国を代表する作品になった。
薬を密輸する主人公を演じたのは、ヒット作に多数出演し監督としても活躍する徐噂(シュー・ジェン)、その他、王伝君(ワン・チュエンジュン)、『スプリング・フィーバー』の譚卓(タン・ジュオ )、『象は静かに座っている』の章宇(チャン・ユー) などが出演。監督は、岩井俊二、魏徳聖(ウェイ・ダーション、關錦鵬(スタンリー・クワン)監修のオムニバス映画『恋する都市5つの物語』を監督した文牧野(ウェン・ムーイエ)。共同製作は寧浩(ニン・ハオ)。

2018年の中国映画週間で上映された時に見逃し、残念に思っていた作品が日本公開されることになり嬉しい。中国で実際に起こった事件を元に作られた作品とのことだけど、この事件をきっかけに「慢性骨髄性白血病」のジェネリック薬品の輸入が認められることになったということを聞き、痛快な気分。主人公を演じた徐噂は、これまでコメディアンかと思っていたけどそうではなかったんですね。エンターティメントとしても面白くドタバタ喜劇風な作品だと思ったら、共同製作が『クレイジー・ ストーン 翡翠狂騒曲』の寧浩。なるほど(笑)。この作品のテイストにも近いかも(暁)。

ニセ薬販売事件がベースになっているのですが、まったくのインチキな薬ではありません。インドで作られたジェネリック医薬品です。国内で認可されている薬が高すぎて、多くの慢性骨髄性白血病患者には手が届かないため、密かに輸入していたのです。
もともと主人公が金もうけのために始めたとし、前半はコミカルに展開します。多くの患者から必要とされていくうちに、主人公の気持ちに変化が現れました。そして後半はシリアスに転換。中国の社会問題をさらけ出していきます。その結果、事件と映画公開をきっかけに中国医薬業界に変化が起きました。映画が社会に及ぼす影響は思っていた以上に大きいものなのですね。(堀)


徐崢シュー・ジェンさん.JPG
程勇役の徐崢(シュー・ジェン)さん;2018年中国映画週間にて

『薬の神じゃない!』公式HPはこちら
中国/2018年/カラー/北京語・英語/117分/ビスタ/5.1ch/
配給:株式会社シネメディア


posted by akemi at 21:28| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

博士と狂人 原題:The Professor and the Madman

2020年10月16日(金)
ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー 劇場情報はこちら

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(C)2018 Definition Delaware, LLC. All Rights Reserved.

監督:P.B.シェムラン 
脚本:トッド・コマーニキ、 P・B・シェムラン
撮影:キャスパー・タクセン
出演:メル・ギブソン、ショーン・ペン、ナタリー・ドーマー、エディ・マーサン、スティーヴ・クーガン 
原作:サイモン・ウィンチェスター著「博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話」

孤高の学者と呪われた殺人犯。
世界最大の英語辞典誕生に隠された、真実の物語。


初版発行まで70年以上の歳月を費やし、世界最高峰と称される「オックスフォード英語大辞典」通称OED。この辞典の礎を築いたのは「異端の学者」と「殺人犯」だった。この事実をドラマチックに描いたノンフィクション本の映画化。
19世紀、独学で言語学博士になったマレーはオックスフォード大学で英語辞典編纂計画の中心となっていた。シェイクスピアの時代まで遡りすべての言葉を収録するというプロジェクトが困難を極める中、博士に大量の資料を送ってくる謎の協力者がいた。その協力者は殺人を犯し精神病院に収監されていた。貧しい家に生まれ学士号を持っていない学者マレーと、元軍医というエリートながら精神を病み殺人を犯してしまったアメリカ人のマイナー。辞典づくりというロマンを共有したふたりは固い絆で結ばれていく。しかし、大英帝国の威信をかけた一大事業に犯罪者が協力していることが明るみになり、プロジェクトは暗礁に乗り上げてしまった。ついには時の内務大臣ウィンストン・チャーチルや王室をも巻き込んでいく。
構想から20年。原作の映画化に名乗りを上げたのが、マレー博士を演じるメル・ギブソン。狂人マイナー役にはショーン・ペン。南北戦争で心を病みながらも辞典づくりで心救われるマイナーに挑んでいる。

この作品の試写を観ながら、やっぱり辞典作りの肝は「言葉集め」なのだと思い、『マルモイ ことばあつめ』のことを思いながらこの作品を観た。『マルモイ ことばあつめ』は1940年代の朝鮮半島、京城(日本統治時代のソウルの呼称)が舞台で、全国の言葉・方言を集めた朝鮮語の辞典を作る話。日本の圧力で朝鮮語が使えなくなる中、朝鮮語の辞典を作るための言葉集めが描かれる。辞典を作る学者と一方の主人公は言葉はしゃべれても文字は知らない。ただ機転が働く。こちらの「言葉集め」は、地方から京城に来ている人たちを集め、ひとつの言葉に対して、その人たちの故郷ではどのように言うのか聞き、方言を集めていた。
作りは違っても辞典を作る苦労は同じ。いかにたくさんの言葉を集めるか。言葉がなくならないように、あるいはなくなる前に記録する。それには膨大な時間がかかる。そしてある意味、言葉に取り付かれないとできないのだなと思った(暁)。


1998年に「博士と狂人──世界最高の辞書OEDの誕生秘話」が刊行されると全米で大反響を呼び、劇的なストーリーに魅せられたメル・ギブソンが映画化に名乗りをあげました。構想から約20年。2016年に撮影が開始されましたが、妥協を許さないメル・ギブソンと製作会社の間でトラブルが起こり、裁判までに発展。OED編纂に人生を賭けたマレーの姿が重なります。
本作はOED編纂が本筋ですが、ショーン・ペンが演じたマイナーの秘めた愛もサブストーリーとして展開されます。マイナーは妄想から射殺してしまった男性の家族に援助を申し出るのですが、男性の妻イライザに拒否されました。しかし、そのやりとりを通じて。イライザが文盲と分かり、マイナーが読み書きを教えていくうちに愛が芽生えるのです。とはいえ、敵味方のような立場の2人は気持ちのままに生きることはできません。マイナーが選択したあまりにもストイックな決断に切なくなってしまいました。(堀)


19世紀、全世界に覇権した大英帝国。その威信をかけて、英語がいかに世界各地に波及したかを証明する為に編纂されることになったのがオックスフォード英語大辞典(OED)。
3代目のOED編集主幹に任命されたジェームズ・オーガスタス・ヘンリー・マレーは、家が貧しく、大学に行かず独学で言語を学んだ人物。フランス語、イタリア語、ドイツ語、ギリシャ語、ラテン語などを習得。ヘブライ語とシリア・アラブ語の聖書は辞書なしに読めたそうです。語源を紐解くのには、古い言語にも通じていないと出来ないから、まさにうってつけの語学の天才。それでも、言語は生き物。全世界の英語を使用する地域の人たちから、使われ方を収集して辞典を出版しても、その時点ですでに古くなっているというジレンマがあったと思います。今や、ネット時代。電子辞典なら変化にすぐ対応できるのでしょうが、それでも追いつかないスピードで言語も変化していくような気がします。一方で言語もグローバル化が進んで、地域差が薄れていくという寂しさも感じます。(咲)


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(C)2018 Definition Delaware, LLC. All Rights Reserved.

公式HP
2019年製作/124分/G/イギリス・アイルランド・フランス・アイスランド合作
配給:ポニーキャニオン

わたしは金正男を殺してない   原題:Assassins

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監督:ライアン・ホワイト(『おしえて!ドクター・ルース』『ジェンダー・マリアージュ 全米を揺るがした同性婚裁判』)

2017年2月13日、マレーシアのクアラルンプール国際空港出発ロビーで、北朝鮮の金正男(キム・ジョンナム)が暗殺されたというニュースが世界を駆け巡った。北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)の異母兄である金正男。空港の監視カメラには、一部始終が写されていて、殺害犯二人が捕まる。それは意外にも若い二人の女性だった。インドネシア人のシティ・アイシャと、ベトナム人のドアン・ティ・フォン。二人はなぜ金正男殺害の実行犯となったのか・・・

当時、ニュースを観た時に、若い女性二人が空港ロビーを歩いている金正男に突然抱きつく姿が監視カメラの映像が映し出されていて、しかもそれが北朝鮮の女性ではないことに違和感を覚えました。本作は、二人がなぜ殺害実行犯になったのかを丁寧に紐解いていきます。北朝鮮の工作員たちは、SNSで日本のテレビ向けのイタズラ動画への出演を呼びかけ、巧妙に彼女たちを「演出」したのです。裏で操った工作員たちは、さっさと国外に逃げてしまい、実行犯として捕まった彼女たちのその後がなんとも気の毒でした。監視カメラに写ることも計算済みの暗殺劇。いやはや怖いです。(咲)

大きく報道された暗殺事件のニュースははっきり記憶にあります。白昼堂々と行われた暗殺、顔に塗られただけで死んでしまう薬物があるのにも驚きました。が、その後逮捕された彼女たちがどうなったかは全く知りませんでした。実際続報を観た覚えがありません。この作品は実行犯となってしまった二人がなぜこんなことに巻き込まれたのか、誰が暗躍していたのか、その後何があったのかを順序だてて見せてくれます。うまい話には裏があると、少しは疑いましょう。一般人の知らないところで、いろいろなことが秘密裡に動いているのだと知らされました。(白)

マレーシアでは殺人で有罪になると死刑が確定すると本作で知り、驚きました。他にも国王反逆罪や麻薬密輸、営利誘拐、銃器不法所持でも死刑になるようです。
金正男殺害実行犯としてインドネシア人のシティ・アイシャとベトナム人のドアン・ティ・フォンが逮捕されました。政治的な意図はなかったにしても、お金をもらって誰かを殺害することは許されないと思っていましたが、2人は殺人を犯した意識は全くなかったことが作品から明らかになります。しかし、誰かをスケープゴートにしなければ、マレーシアが国家としての面目が立たない。実行犯に仕立て上げられた2人は殺人で有罪と判決が出てしまうと死刑が確実。加害者というよりも被害者といえるでしょう。
それぞれに弁護士がついて、無罪獲得のために奔走します。観客からすれば2人は同じ立場ですが、母国と北朝鮮の関係からその後の状況に差が生まれます。思わず、「そんなのありなの?!」と叫んでしまいそうになりました。やり切れない思いがこみ上げてきます。
高度な政治的判断とエライ人はいうのでしょう。そんなこと一般人にはわかりません。私たちにもわかるように、ちゃんと正義を貫いてほしいものです。(堀)


殺されたのは、私の人生
この事件の映像が流された時、「嘘でしょ。どうして!」と思わず叫んでしまった。白昼、堂々と、暗殺が行われたということにびっくり。しかも殺されたのは、北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)の異母兄である金正男(キム・ジョンナム)という人物。しかも場所は、大勢の利用客でごった返すマレーシア・クアラルンプール国際空港の出発ロビー。たくさんの防犯カメラの映像が一部始終を記録していた。この大胆で奇妙な謎に覆われた世紀の暗殺事件の真相に迫ったドキュメンタリーだが、暗殺事件を起こしたという女性二人は、加害者にさせられたと同時に被害者でもあった。そこに、サブタイトルににある「殺されたのは、私の人生」という言葉が突き刺さる。二人のその後がどうなったのか気になっていたけど、どうやら二人は裁判のあと、故国に戻れたらしいけど、高度な国と国との判断というのはなんなんだろうと疑問は残る。それでも見ず知らずの二人は、この裁判の間に協力しあい、励ましあう中で、弁護士など協力者の力を得て釈放に至ったということを知り、少しは救いを感じた。それでも納得のいく終わり方ではないのが政治判断という結果(暁)。


2020年/アメリカ/104分/G
配給:ツイン
公式サイト:https://koroshitenai.com/
★2020年10月10日(土) シアター・イメージフォーラム、ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー
posted by sakiko at 12:02| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月03日

建築と時間と妹島和世

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監督・撮影:ホンマタカシ
出演:妹島和世

丘に溶け込むように建つ大阪芸術大学アートサイエンス学科の新校舎。
その設計から建築にあたったのは妹島和世。金沢21世紀美術館やルーブル美術館ランス別館などを手がけ、建築界のノーベル賞ともいわれるプリッカー賞を受賞した建築家.
本作は、その構想から完成までの3年6か月を追ったドキュメンタリー。
妹島和世は構想にあたって大切にしたことを3つ挙げている。
建物が立つ「丘」に合せた外観であること。
建物が「開かれている」こと。
そこが人々の「交流の場」となること。
彼女が込めた思いは「公園のような建物」。見晴らしの良い丘の上に、誰もが立ち寄れるような、「公園」が出来上がった・・・

いくつもいくつも模型を作って、理想の形を追い求める妹島和世さん。合間には、事務所の植木鉢に水をあげるのも忘れません。いつもスカートにかかとの高い靴。建築現場でも、そのスタイルにヘルメット。
取材に応じて、落ち着いた語り口で話されていた妹島和世さんが、廊下で騒々しい音がしたときに、突然「静かにしてね!」と、高い声でおっしゃったシーンがありました。なんとも可愛い方なのです。
試写を観た直後に、妹島和世さんが「唯一無二の海を見せる駅」日立駅を設計されたことが朝日新聞デジタルに掲載されていると(暁)さんが教えてくれました。海が見晴らせ、風景の一部になっている素晴らしい駅。妹島和世さんの建物の在り方へのこだわりに、建築家皆がこのような考え方なら、素晴らしい景観が実現するのにと思いました。(咲)


本作から話は反れますが、娘は幼かったころテレビ朝日の「大改造!!劇的ビフォーアフター」を見て、「匠(建築家)になりたい」と言っていました。あれから20年。理系には進んだものの機械工学科に進学し、いつの間にか建築家の夢は消えていました。ただ、友人の何人かは建築学科に進みました。理系の中でも建築学科は女性の割合が多いよう。娘の学科は女子が1割ですが、お友だちが学んでいる建築学科は同じ大学ですが半数に迫る勢い。建築は意外に女性向きなのかもしれません。
とはいえ、妹島さんが就職したころはまだまだ女性の建築家は少なかったはず。この世界でやっていくのにかなりの苦労があったことと思います。男性に負けないぞという覚悟で挑んできたのでしょう。現場に行くときもモードな雰囲気でおしゃれな妹島さん。一般的な発想なら動きやすいパンツスタイルにするところでしょうけれど、あえてのスカートに、もしかすると自分を曲げない強い決意が込められているのかもしれないと感じました。(堀)


2020年/日本/カラー/16:9/60分/英語字幕付き
製作:大阪芸術大学
配給:ユーロスペース
公式サイト:http://kazuyosejima-movie.com/
★2020年10月3日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開



posted by sakiko at 23:54| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

82年生まれ、キム・ジヨン(原題:Kim Ji-young: Born 1982)

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監督:キム・ドヨン
原作:チョ・ナムジュ
出演:チョン・ユミ(ジヨン)、コン・ユ(夫 デヒョン)、キム・ミギョン(母 ミスク)、コン・ミンジョン(姉 ウニョン)、キム・ソンチョル(弟 ジソク)、イ・オル(父 ヨンス)、イ・ボンリョン(ヘス)

1982年生まれのジヨンは大学の先輩のデヒョンと結婚し、出産のために会社を辞めた。デヒョンは仕事が忙しく、ジヨンは家事と一人娘のアヨンの育児にかかりきりで疲れがたまっていた。
新年はいつも夫の実家。義姉も帰省し、夫一家が歓談している間嫁は休むひまもない。突然ジヨンが実家の母の口調で「うちの娘も里帰りさせて」と話し始め、みんなはあっけにとられる。ときどきジヨンが他の人間が乗り移ったように変わるのを、夫のデヒョンだけが知っていた。ジヨン本人には全くその記憶がない。デヒョンは精神科医に相談していたが、本人にまだ言えずにいた。

同名の原作は韓国でも日本でも異例の売れ行きだったそうです。日本以上に男性優位の韓国で、時代が進んで目が開かれてきた女性たちが「これはおかしい!」と声をあげ始めました。社会でも家庭の中でも男の子が優遇され、女の子はそれを支える役割を担ってきました。男の子が生まれることばかり期待している親世代に、あなたは父親から生まれたのか?と言いたくなります。日本版の表紙には、観光地の看板のように顔がくりぬかれている女性が描かれています。誰でも顔を当てはめて「これは私のこと」と感じた女性が多かったはず。
ジヨンが”ほかの人間になって自分の心身の危機を訴えた”のは、自分の意見を言えなかったからでしょう。そこまで追い詰められていたことが痛ましいです。チョン・ユミとコン・ユはこれが3度目の共演で初の夫婦役です。繊細な演技の息もぴったり。デヒョンは決して無理解な夫ではありませんが、自分の育ってきた社会の認識から出て想像することができません。夫婦間のことだけでなく、女性が社会で期待される役割分担や、無意識の差別などが織り込まれて、自分や周りのことを振り返るきっかけができます。カップルで観ると認識の違いが明らかになりそうです。それで別れても責任は負えませんが、話し合ってより理解を深められたらいいですよね。
助演の俳優陣の手堅い演技にも支えられ、チョン・ユミは第56回大鐘賞映画祭で主演女優賞受賞、キム・ドヨン監督は第56回百想芸術大賞で新人監督賞を受賞しました。(白)


1人きりで抱える育児は本当に辛い。私もかつて心を病み、大丈夫と思えるまでに6年かかりました。夫はデヒョンのように病んだ私を気遣ってくれましたが、所詮は病に寄り添い、育児に協力するというスタンス。自分の問題としてとらえていませんでした。そこの認識の違いは大きい。作品からも夫婦の意識のずれが伝わってきます。
しかし、同じ経験をしたからこそ、見えてくるものもある。こちらが分かってくれないと思うように、夫もどうすればいいのかわからないことを妻に理解してもらえず辛かったのだと本作を見て、今更ながらに気づきました。
主人公は82年生まれ。韓国と日本では状況が違うかもしれませんが、87年に就職した私は男女雇用機会均等法2年目。年上の女性たちから、羨ましい気持ちからの過剰な期待を押し付けられました。その年上の女性たちの子どもがジヨン世代のはず。過剰な期待は私世代以上に強く押しつけられたのかもしれません。(堀)


1982年に韓国で生まれた女の子の名前の中で一番多かったのが、ジヨン。そして、韓国で一番多い名字がキム。まさにキム・ジヨンはどこにでもいる普通の女性。原作が出版された時に、韓国で100万部を超える大ヒットとなったのも、女性の社会進出が進む中で、育児や家事は女性がするものという考えが根強く、主人公の悩みが普通の女性たちの共感を得たからだといわれています。一方で、韓国では男性からの反発もあって、映画化にあたって反対意見もあったそうです。背景として、男性だけが軍隊に行く義務があることや、家族のために働いて犠牲になってきたという思いがあって、女性たちのほうが優遇されてきたじゃないかという被害者意識があるそうです。兵役の義務もない日本男子はもっと女性に協力すべきと思わず思ってしまいます。
出版のあと、男性も産休や育休などを取りやすくするなどの法案、いわゆる「キム・ジヨン法案」が国会で発議されたなど、韓国社会に大きな影響を与えた小説の映画化。さらに世界へも、男女の役割分担や、男女格差を考えるきっかけを与えてくれるでしょう。
ちなみに独身の私には、キム・ジヨンの思いにあまり感情移入できませんでした。思えば、育児や家庭に縛られるのが嫌で結婚に踏み切れなかったような気がします。もちろん、仕事の上での男女差別はずっしり感じてきましたが・・・ 世の男性にこそ観てほしい映画です。(咲)


2019年/日本/カラー/シネスコ/110分
配給:クロックワークス
© 2020 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.
http://klockworx-asia.com/kimjiyoung1982/
★2020年10月9日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー



posted by shiraishi at 01:15| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月02日

本気のしるし 劇場版

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監督:深田晃司
原作:星里もちる
脚本:三谷伸太朗、深田晃司
撮影:春木康輔
音楽:原夕輝
出演:森崎ウィン(辻一路)、土村芳(葉山浮世)、宇野祥平(葉山正)、石橋けい(細川尚子)、福永朱梨(藤谷美奈)、忍成修吾(峰内大介)、北村有起哉(脇田真一)

辻一路30歳、サラリーマン。職場の女性二人とあいまいな関係を続けながら、何事にもさめている。ある晩、コンビニで出会ったばかりの女性の車が踏切で立ち往生しているのに出くわし、必死で助け出した。彼女は葉山浮世、儚げで不思議な魅力があるが、その場しのぎのウソをついて状況をさらに悪くしてしまう。辻はなぜか放っておけなくて、次々と浮世のトラブルに巻き込まれていく。

コミック原作がメ~テレ(名古屋テレビ)の連続ドラマになり、好評を得て劇場公開用に再編集。カンヌ映画祭のオフィシャルセレクション2020に選出されました。
星里もちるさんのそれまでの軽いラブコメと一味も二味も違うこの作品、ドラマの惹句が「共感度ゼロ」でした。この主人公二人にどれだけイライラさせられたことか。なんでそうなる?の連続です。それでも先の展開が気になって観ないわけにいきません。そんなドラマをディレクターズカット版で一気見ですよ。楽しみでしょ?
深田監督が長年撮りたいと願ってきた原作での、初の連続ドラマ。愛憎劇を作りながらも、楽しい現場であることを心掛けたそうです。躍進目覚ましい森崎ウィンが闇を抱えた辻を、天然のトラブルメーカー・浮世を土村芳(つちむらかほ)、一癖ある脇役陣たちが彩りと深味を加えています。登場人物の誰にシンパシーを感じるかで、あなたの本音が見えるかも。約4時間の長丁場(途中休憩あり)ですが、引き込まれるので長く感じません。
今年の東京国際映画祭は深田晃司監督特集を組みました。最新作の本作はじめ、『淵に立つ』『よこがお』『東京人間喜劇』を上映します。(白)


森崎ウィン演じる主人公の辻が社内で二股をすると聞き、正直、見るまですごく気が重たかったのですが、見始めたら、全然嫌な感じじゃない! むしろ、ヒロインに振り回されっ放しで、気の毒になってきます。でも男の人ってこういうタイプに弱いんだろうなぁ。絶対に夫や彼氏を近づけてはいけません。
二股を掛けられた細川先輩には好感を持ちました。クールに見えて、嫉妬ゆえに強気な行動を取ってしまうこともあり、人間味にあふれています。彼女の選択には拍手を送りたくなります。
北村有起哉が演じるヤクザは男性の色気がムンムンしています。危険な香りにころっといってしまいそう。もしかしたら、男性にとって妻や彼女を近づけてはいけないタイプなのかも!(堀)


2020年/日本/カラー/シネスコ/228分
配給:ラビットハウス
(C)星里もちる・小学館/メ~テレ
https://www.nagoyatv.com/honki/
★2020年10月9日(金)より全国順次公開
ヒューマントラストシネマ渋谷にて、森崎ウィン、土村芳、深田晃司監督による初日舞台挨拶を行います。

書き起こし記事はこちら
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(撮影:白石)
posted by shiraishi at 08:28| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

トロールズ ミュージック★パワー(原題:TROLLS WORLD TOUR ) 

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監督:ウォルト・ドーン
エグゼクティブ・ミュージック・プロデューサー:ジャスティン・ティンバーレイク
声の出演:アナ・ケンドリック、ジャスティン・ティンバーレイク
吹き替えキャスト:上白石萌音、ウエンツ瑛士、仲里依紗、宮野真守、松本梨香、吉野裕行、平田広明、木村昴、斉藤壮馬、浪川大輔、ミキ・昴生、関智一、ミキ・‎亜生、速水奨ほか 

歌って踊ってハグして、毎日ハッピーに暮らすポップ村のトロールたち。ある日、女王ポピーのもとに、ハードロック族の女王バーブからの手紙が届く。ポピーたちは、この世界に別の音楽を楽しむ仲間たちがいることを知って大興奮!テクノ、クラシック、カントリー、ファンク、そしてロック。そこは個性豊かな村が集まる1つの王国だったのだ。期待を胸に旅に出るポピーたち。でもそれは、すべての音楽をうばい、王国をロックで支配しようとするバーブのワナだった。
いま、世界中のハッピーを取り戻すための、ゆかいな仲間たちの壮大なアドベンチャーが始まる!

バラバラだったポップ、テクノ、クラシック、カントリー、ファンク、ロックの国が紆余曲折を経て、最後は手を取り合ってみんなで音楽を楽しむ。そこから伝わってくるメッセージはシンプル。人は違って当たり前、それを受け入れようということ。金子みすずさんの「 わたしと小鳥とすずと」の詩の一節「みんなちがってみんないい」という言葉を思い出します。子どもに「お友だちと仲良くしなさい」と言うよりも、親子でこの作品を見る方がストレートに伝わるのではないでしょうか。しかも、楽しいお出掛けの思い出にもなるのではないでしょうか。
キャラクターがかわいらしいこともあり、子ども向きの作品と思われてしまいそうですが、メッセージは大人の心にも奥深く響きます。しかも、シンディ・ローパーの「ガールズ・ジャスト・ウォント・トゥ・ファン」など往年の大ヒットナンバーもアレンジして使われているので、親世代もワクワクして楽しめること請け合いです。(堀)


2020年/92分/G/アメリカ
配給:東宝東和、ギャガ
A UNIVERSAL PICTURE ©2020 DREAMWORKS ANIMATION LLC.ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:https://gaga.ne.jp/trolls/ 
★2020年10月2日(金)より全国ロードショー

posted by ほりきみき at 00:00| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする