2020年09月13日

セノーテ 原題:TS’ONOT 英題:CENOTE

2020年9月19日(土)より 新宿K's cinemaほか全国順次公開 他の公開情報

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(C) Oda Kaori


監督・撮影・編集:小田香
日本・メキシコ/2019/75分

メキシコの泉(セノーテ)をめぐる神秘の旅

メキシコ、ユカタン半島北部に点在するセノーテと呼ばれる洞窟内の泉。そこはかつてマヤ文明の時代の水源であり、雨乞いの儀式のために生け贄が捧げられた場所だった。古代マヤで、現世と黄泉の世界を結ぶと信じられていたセノーテをめぐって交錯する、人々の過去と現在の記憶。カメラは水中と地上を浮遊し、光と闇の魅惑の映像に遠い記憶がこだまする。
現地に住む人々に取材し、現地の人たちの語る「精霊の声」、「マヤ演劇」のセリフなど、マヤの人たちにより伝えられてきた言葉の数々。集団的記憶、原風景を映像に取り入れている。セノーテの水中撮影のため、小田監督自らダイビングのライセンスを取り、iPhoneや8ミリフィルムカメラを駆使し、誰も見たことがない不思議な世界を表現した。
2015年に『鉱 ARAGANE』を完成させ、同作は山形国際ドキュメンタリー映画祭2015のアジア千波万波部門にて特別賞を受賞している。今年、第1回大島渚賞を受賞した。(公式HPより:世界に羽ばたく新たな才能の発掘を目的に大島渚監督が1979年から10年間審査員を務めたぴあフィルムフェスティバルが創設。『戦場のメリークリスマス』に出演した坂本龍一が審査委員長、大島監督が審査員の時に見いだされた黒沢清監督、同映画祭ディレクターの荒木啓子氏が審査員を務めた)


今も泉の底に残る骸骨や遺品の数々。泉の中から真上を見上げた光景などが印象に残る。こんな映像を自らダイビングの資格を取り、撮影した女性がいるというのを心強く思った。海外留学したり、海外での「武者修行」という行動力、勇気にエールを送りたい(暁)。


昨年の第12回恵比寿映像祭で本作に初めて出会った時の衝撃は忘れ難い。鑑賞直後に小田香監督のトークセッションがあり、本人の印象が強かったせいもあるだろう。これほど幻想的な光と水、外の世界との”あわい”を繊細に描く人が、見た目は体育会系、話すと大阪弁の気さくなお姉ちゃん!といったギャップを感じたことに由来しているのかもしれない。

題材、マヤ文明への興味、ユカタン半島への果敢な取材、現地の人さえ脚を運ばないセノーテにまで潜り(水が嫌いなのに!)、カメラを回した勇気…。全てに於いて規格外。近頃の若手監督にはついぞ見られないスケール感に圧倒されたのだ。栄えある「第1回 大島渚賞」受賞の選考理由が、「大器出現の予感」だったのも納得である。

だが、当の小田監督には”芸術ドキュメンタリー作家”という気負いは観られない。
「カメラで撮っていると、カチッとくる瞬間がある。頭で考えない自分だけの感覚」
と言う静かな語り口が新鮮だった。独創性溢れる小田監督の”カチッとくる瞬間”が生み出す作品世界に、今後も期待したい。(幸)


小田香さんの長編第一作『鉱 ARAGANE』を観たときに、無駄のない研ぎ澄まされたような映像に釘付けになったのを思い出す。『セノーテ』もまた、精霊が宿ったような神秘的な映像に驚かされた。
『ニーチェの馬』を最後に引退したタル・ベーラ監督が後進の育成のために設立した映画学校「film.factory」で3年間学んだ小田香さん。気難しいタル・ベーラ監督のお眼鏡に敵ったのも納得の期待の監督である。(咲)




公式HP  http://aragane-film.info/cenote/
2019年/75分/デジタル
製作:cinevɘndaval、FieldRain



posted by akemi at 22:55| Comment(0) | メキシコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アダムスファミリー(原題:The Addams Family)

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監督・原案・製作:コンラッド・ヴァーノン
監督:グレッグ・ティアナン
声の出演:オスカー・アイザック(ゴメズ)、シャーリーズ・セロン(モーティシア)、クロエ・グレース・モレッツ(ウェンズデー)、フィン・ウォルフハード(パグズリー)、ベット・ミドラー(おばあちゃん)

モンスターの一族がひっそりと住む村。ゴメズとモーティシアの結婚式が行われていたその時、モンスターを恐れる人間たちが村を襲ってきた。命からがら逃げだしたゴメズとモーティシア夫婦は、あてのないまま旅をする。途中で出会った大男のラーチを執事として雇い入れ、一行は人里離れた丘の上に荒れ果てた屋敷を発見した。幽霊が住み着いていたので人間はやってこない。彼らには願ってもない物件だった。
時が流れて、夫婦には娘ウェンズデーと息子のパグズリーが生まれてすくすくと大きくなった。パグズリーの成長の儀式を行うために、屋敷には親戚一同が集まることになった。

元々は1937年から雑誌ザ・ニューヨーカーに連載されていた一コマ漫画。テレビドラマやアニメになった後、1991年に実写映画『アダムス・ファミリー』(バリー・ソネンフェルド監督)、1993年に同じスタッフ、キャストで続編『アダムス・ファミリー2』が製作されて大ヒット。3も計画されていたそうですが、ゴメズ役のラウル・ジュリアが亡くなったため作られていません。モーティシアがアンジェリカ・ヒューストン、ウェンズデーがクリスティナ・リッチとあまりにぴったりなキャストで、これ以上の組み合わせはないと思いました。が、このアニメ版の声をあてている俳優陣がすごい。このまま実写版を作ってほしいものです。
ストーリーは現代の人間たちとの関わり、どこにでもあるあるなエピソードが盛り込まれています。カリスマ主婦で実業家、テレビのコメンテーターまでやってる人って、いましたよね。あの人か?ウェンズデーが人間の学校に入学したことで、人間と関わらざるを得なくなるのですが、この知らない者同士が歩みよって行く過程も丁寧に描かれています。アニメ版2もできてほしいなぁ。(白)


何となく知っているけれど、実はよく知らなかったアダムスファミリーについて、本作は家族の成り立ちからしっかり描いているので、初心者にはぴったり。しかもキャラクターがきもかわいいので、ホラーが苦手な人でも大丈夫。
モンスターも人間も変わらない。愛する人と心地よく暮らしたいだけ。ただ、その心地よさが違うのが問題なのよねぇ。嫁姑問題が人間だけではないことには思わず笑ってしまいます。
いくつものドタバタの末、あの人がそんな決断をするのという想定外に驚くけれど、みんなが幸せになる結末に気持ちよく映画館を後にできること間違いなしです。(堀)


2019年/アメリカ/カラー/シネスコ/87分
配給:パルコ、ユニバーサル映画
(C)2020 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved. The Addams Family (TM) Tee and Charles Addams Foundation. All Rights Reserved.
https://addams-movie.com
★2020年9月25日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 18:53| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ヴィタリナ   原題:Vitalina Varela

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監督:ペドロ・コスタ 
出演:ヴィタリナ・ヴァレラ、 ヴェントゥーラ マヌエル・タヴァレス・アルメイダ、フランシスコ・ブリト、マリナ・アルヴェス・ドミンゲス、ニルサ・フォルテス

闇の中、一列になって黒人の男たちが歩いていく。十字架の並ぶ墓地。
リスボンの片隅、移民たちが暮らす、フォンタイーニャス地区。
暗く狭い部屋。小さな祭壇の傍らに座る女性ヴィタリア。夫が亡くなった知らせを受けて、カーボ・ヴェルデから駆け付けたが、3日前にすでに葬儀は終わっていた。
弔いにきた男たちに、ぽつりぽつりと語るヴィタリア。
「1982年の12月14日に婚姻届を出し、1983年3月5日に結婚式を挙げた」
「出稼ぎ先のポルトガルからカーボ・ヴェルデに一時帰国して、牝牛1頭売って、45日で10室も部屋のある立派な家をひとりで作ってくれた。別れも告げずにポルトガルに帰ってしまって、ドアや窓は私が作った。完成した家を夫は見ていない」
「リスボン行きの切符が届くのを40年待った」
ヴィタリアは夫が過ごしたリスボンの家で暮らす決意をする・・・

ペドロ・コスタ監督は、『ホース・マネー』を撮影中の2013年秋、カーボ・ヴェルデからやってきたヴィタリアに出会う。まさに、亡き夫の家に着いたばかりだった。連日、家に通って彼女の話を聞きだしたのが、本作の始まり。演じたのも、ヴィタリア本人。2019年ロカルノ国際映画祭でみごと女優賞を受賞。『ヴィタリア』は最高賞である金豹賞も受賞し、まさに作品の力。
ヴィタリアには夫が一時帰国したときにできた子どもが二人。夫は故郷に立派な家も作りながら、なぜ一生を狭いリスボンの暗く狭い家で終えたのか・・・ その狭い家で暮らすことを選んだヴィタリア。夫と長く一緒に暮らせなかったことへのヴィタリアの思いが感じられて切ない。(咲)


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2015年山形国際ドキュメンタリー映画際『ホース・マネー』上映時のペドロ・コスタ監督 撮影 宮崎暁美


2019年/ポルトガル/ポルトガル語・クレオール語/DCP/130分 
配給:シネマトリックス
公式サイト:http://www.cinematrix.jp/vitalina/
★2020年9月19日(土)ユーロスペースにてロードショー、全国順次公開

posted by sakiko at 13:15| Comment(0) | ポルトガル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

プリズン・エスケープ 脱出への10の鍵  原題:Escape from Pretoria

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監督:フランシス・アナン
原作:ティム・ジェンキン「脱獄」(同時代社刊)
出演:ダニエル・ラドクリフ、イアン・ハート、ダニエル・ウェバー、ネイサン・ペイジ、スティーブン・ハンター

1970年代、アパルトヘイト下の南アフリカ。ティム・ジェンキン(ダニエル・ラドクリフ)とスティーブン・リー(ダニエル・ウェバー)は、白人でありながらネルソン・マンデラ率いる反アパルトヘイト組織「アフリカ民族会議(ANC)」に加わり活動していた。1978年6月、爆破装置を使用してチラシを散布していたのが見つかり、白人政治犯専用のプレトリア刑務所に収監される。
看守長から「国と白人を裏切った“白人のマンデラ”」と揶揄される。マンデラと共に終身刑の判決を受けた政治犯の長老デニス・ゴールドバーグ(イアン・ハート)からは、「我々は“良心の囚人”。犯罪者じゃない。逃げずに闘え」と言われながら、ティムたちは抵抗の意思表示をするために脱獄を決意する。同調したレオナールと3人で脱獄方法を模索する。収監23日目、独房の鍵穴を見つめていたティムは、木片で鍵を作ることを思いつく。木工所で作業しながら、木片を隠して持ち帰り、鍵を試行錯誤で作る日々が始まる・・・

アパルトヘイト政策下の南アフリカで育ったティム-ジェンキンの自伝「脱獄」(同時代社刊)を基に製作された実話。なので、脱獄に成功したのはわかってはいるものの、10もの鉄の扉を開ける鍵を作り上げて、看守たちに見つからないように外に出るまで、ハラハラどきどき。脱出まで300日近く! その忍耐力と執念に驚かされます。
もう一つ驚いたのは、差別の対象でない白人が抵抗運動をしていたこと。アパルトヘイトの国らしく、白人専用の刑務所があったのは理解できるのですが、専用の刑務所が必要なほど、白人の政治犯が多くいたことに、なぜ彼らは抵抗運動をしたのか興味津々です。黒人用の刑務所と待遇に差別はあったのかも気になります。(咲)


アパルトヘイトについて取り上げた、御堅い作品ではありません。白人の主人公がアパルトヘイトに反対して投獄されるものの、鍵の形を記憶して、木片で合鍵を作って脱獄するという、ハラハラドキドキのエンターテインメント寄りの作品です。主人公を演じたのはダニエル・ラドクリフ。『スイス・アーミー・マン』では死体役でしたが、今回はちゃんと生きています。『ハリー・ポッター』の頃の印象がすっかりなくなっているのを感じます。
鍵の製作、リハーサル、本番。それぞれ違った緊張感が作品を盛り上げます。ぽたっと落ちた汗1つで不安が生じました。実話モノなので結果はわかっているものの、最後まで目が離さない演出の先にあるラストは爽やかです。(堀)


2020年/イギリス・オーストラリア/106分/G/
後援:ブリティッシュ・カウンシル
配給:アット エンタテインメント
© 2019 ESCAPE FP HOLDINGS PTY LTD, ESCAPE FROM PRETORIA LIMITED AND MEP CAPITAL, LP
公式サイト:http://www.at-e.co.jp/film/escape/
★2020年9月18日(金)シネマート新宿、ユナイテッド・シネマ豊洲ほか全国順次公開




posted by sakiko at 13:09| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

友達やめた。

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監督・撮影・編集:今村彩子
音楽:やとみまたはち/ギター:鈴木裕輔/ピアノ:奥村真名美
CG:瀧下智也/イラスト:小笠原円
文字起こし:野村和代、江川美香
手話通訳:北村奈緒子
英語翻訳:William J.Herlofsky
翻訳協力:河合世里子
出演:今村彩子(あやちゃん)、まあちゃん

空気を読みすぎて疲れてしまい、人と器用につき合うことができないまあちゃんは、大人になってからアスペルガー症候群(アスペ)と診断された。わたし(あやちゃん)は「大丈夫、わかりあえる」と思っていたれど、小さなことのすれ違いが積み重なっていく。二人の仲がギクシャクするたび、これは彼女がアスペだから? それとも、わたし自身の問題なの? いい人でいなくちゃと悶々とする。まあちゃんと友達でいるために、わたしは自分たちに向けてカメラを回しはじめた…はずが、たどりついた答えは「友達やめた。」?!

『Start Line』から4年。今村彩子監督は新たな葛藤と向きあった。上映会がきっかけで知り合ったアスペルガー症候群のまあちゃんとのやりとりを映画にした。友達って何? 普通ってどういうこと? コミュニケーションとはなに? 「まあちゃんと私」、ふたりの違いから生まれたすれ違いを映画にした。
ほっこりするような部分もあったけど、観ている途中から、だんだん心がひりひりしてきた。そして、画面の中のスマホの文字が読み取れず、話が途中で内容や進み具合がよくわからなくなってしまった。この映画に限らず、最近、スマホやパソコンでのメールなど、文字のやりとりを画面上に出すことが多いけど、その字が小さすぎて読み取れず、そういうシーンが出てくるとお手上げ状態。せめて、もう少し字が見える大きさや、画面の字を読み取る時間をもう少し多く取ってくれるといいのになと思ってしまう今日この頃。年をとってくると文字が読み取りにくくなっているのを実感(暁)。

今村監督に1時間お話を伺いました。今村監督は発話ができるので、手話通訳さんが私の側にいて手話で今村監督に伝えます。監督はゆっくりはっきり口を動かせば、相手の言葉も読み取れます。ときどき言葉を補うように監督の手が動いて(美しい)、それを私が読み取れたならいいなぁと思いました。動画サイトにたくさん手話の解説があるので、やってみよう。覚えたはしから忘れていくんだけれど(苦笑)。
頑固な二人(笑)のやりとりを観ていて、ああ自分はどっちかというとまあちゃんだなぁ。人見知りだったのが転校や引っ越しを何度もして、だんだん変わってきたのです。そうは思ってもらえませんが。相手にちょっとずつ歩み寄って、わからないところも含めて、二人が友達でいられればいいなと思いました。(白)
☆今村彩子監督インタビューはこちらです。

2019年/日本/カラー/DCP/84分
配給:Studio AYA
(C)2020 Studio AYA
http://studioaya-movie.com/tomoyame/
★2020年9月19日(土)より劇場公開とネット配信を同時スタート。
新宿K’s cinemaほか全国順次公開。

posted by shiraishi at 12:53| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ジャズ喫茶ベイシー Swiftyの譚詩(Ballad)

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監督:星野哲也
出演:菅原正二、

岩手県一関市で営業を続けるジャズ喫茶ベイシーは50周年。マスターの菅原正二がこだわりぬいた唯一無二の音にひかれて、世界中からジャズファン、オーディオファンが集まってくる。より良い音を再現するため、開店以来使い続けるJBLのオーディオシステムに日々調整を重ねる。故に、菅原が不在で営業したことは1日たりとも、ない。そうして生み出された音は、聴く者に、演奏者がその場に現れたかのような錯覚を起こさせる。本作では、そんな菅原がかけるカウント・ベイシー、マイルス・デイヴィス、セロニアス・モンクなど名だたるプレイヤーたちのレコードを、アナログ録音の伝説的名器「ナグラ」で生収録。

ジャズ祭りが続いています。4Kで8月21日より公開のドキュメンタリー映画『真夏の夜のジャズ』、9月4日より公開の『マイルス・ディヴィス クールの誕生』、続いて本作。知る人ぞ知る一関の名店「ジャズ喫茶ベイシー」のオーナーはダンディな菅原正二氏。菅原氏へのインタビューを中心に、名だたるジャズプレイヤーたちの演奏、著名人たちへのインタビューなど盛りだくさんのドキュメンタリーです。「カッコいい音を出したい」という菅原氏本人、彼が丹精したシステムから流れる音もカッコいい。
音にこだわる良い耳をお持ちの方、それほどではないという方もぜひ音響設備の良い会場でどっぷりと浸ってご鑑賞ください。(白)


来日したジャスピアニストのカウント・ベイシーは、自分の名前を冠したジャズ喫茶があると知って、わざわざ一関まで足を運んだそうです。勝手に名前を借りたと謝る菅原さんに対して、笑って「Swifty」の愛称まで付けてくださったとか。それからも何度か来店して、演奏も。ベイシーの名前を付けた甲斐がありましたね♪ (咲)

2019年/日本/カラー/104分
配給:アップリンク
(C)「ジャズ喫茶ベイシー」フィルムパートナーズ
https://www.uplink.co.jp/Basie/
★2020年9月18日(金)アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

☆ジャズ喫茶ベイシーのHPはこちらです。
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ブリング・ミー・ホーム 尋ね人(原題:Bring Me Home)

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監督・脚本:キム・スンウ
撮影:イ・モゲ
出演:イ・ヨンエ(ジョンヨン)、パク・ヘジュン(ミョングク)、イ・ングン(スンヒョン)、ユ・ジェミョン(ホン)

看護師のジョンヨンは6年前に一人息子ユンスが公園で遊んでいて、失踪してしまった。以来夫のミョングクと二人で行方を捜している。記憶は7歳の面影のままのユンス、自分たちを忘れていないだろうか。捜索の旅の途中事故が起きて、ジョンヨンはショックで立ち直れない。そこへユンスに似た子がいるとの情報が寄せられる。マンソン釣り場で働く男の子の特徴がユンスと共通していた。一縷の望みをかけて釣り場へ向かうジョンヨン。釣り場を営む家族や従業員、土地の警察のホン警長まで、知らないの一点張り。疑惑がぬぐえないジョンヨンは諦めず、真夜中に忍び込むことにした。

キム・スンウ監督がこの脚本を書き始めたきっかけは、子どもを探す親が書いた横断幕を目にしたことから。子どもが行方不明になる事件は洋の東西を問わず無くなりません。自分も人の子として生まれながらよその子を攫い、いくばくかの金儲けの手段にしたり、快楽の対象にしたりする輩は、なんの痛痒も感じないのでしょうか(天罰を!)。
イ・ヨンエ主演作は2005年公開『親切なクムジャさん』以来です。自らも母になって、それ以前の作品選びや演技とは変化があったと語っています。掌中の珠である一人息子が行方不明になり、わずかな手がかりを求めて探し回るジョンヨンの姿に世の母親は胸をかきむしられるような思いで共感するはずです。疑わしい人間たちに壁やガラス戸に叩きつけられるアクションもあり、その激しさに思わず息を飲みました。
イ・ヨンエの迫真の好演と共に、憎まれ役を演じた助演の方々に最敬礼。行方不明の子どもたちが親元に戻れるよう祈りつつ。(白)


児童労働という社会の闇を描いた作品ですが、その児童は人身売買によって集められたことが推察されます。いったい韓国では年間どのくらいの子どもが失踪しているのか。ネットで調べたところ、3万人という数字が出てきました。とんでもない数字に驚いて、日本の子どもの失踪数も調べたら、平成28年の警察庁のデータによると、平成24~28年の9歳以下の子どもの失踪数は1000人前後と判明。この差はいったい何なんだろう。
しかし、親にとっては人数の問題ではありません。韓国であろうと、日本であろうと自分の子どもがいなくなったら、それはとても辛い。(白)さんも書かれていますが、お金儲けのために誘拐する人には、ほんと、天罰を喰らわせたい!
ただ、悪いのは人身売買に直接、関わっている人だけではないと作品から伝わってきます。周りの人間の無関心さが事件の隠ぺいを助長してしまいました。また、6年もの間、必死に息子を探し続けてきた主人公夫婦に襲い掛かった更なる不幸にも心が痛みます。軽い気持ちで人を騙してはいけません。私たちには関係ないといえる話ではないことを感じました。(堀)


2019年/韓国/カラー/シネスコ/108分
配給:ザジフィルムズ、マクザム
(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
https://www.maxam.jp/bringmehome/
★2020年9月18日(金)新宿武蔵野館ほかにて全国ロードショー
posted by shiraishi at 12:11| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする