2020年09月09日
ミッドウェイ(原題:Midway)
監督・製作:ローランド・エメリッヒ
脚本:ウェス・トゥーク
出演:エド・スクライン、パトリック・ウィルソン、ルーク・エヴァンス、アーロン・エッカート、豊川悦司、浅野忠信、國村隼、マンディ・ムーア、デニス・クエイド、ウディ・ハレルソン
1941年の日本軍による奇襲とも言える真珠湾(パールハーバー)攻撃。戦争の早期終結を狙う山本五十六連合艦隊司令官の命により、アメリカ艦隊に攻撃を仕掛けたのだ。大打撃を受けたアメリカ海軍は、新たな指揮官に士気高揚に長けたニミッツ大将を立てた。両国の一歩も引かない攻防が始まる中、日本本土の爆撃に成功したアメリカ軍の脅威に焦る日本軍は、大戦力を投入した次なる戦いを計画する。
一方、真珠湾の反省から、アメリカ軍は日本軍の暗号解読など情報戦に注力し、情報部レイトン少佐が次の目的地をミッドウェイと分析した。限られた全戦力を集中した逆襲に勝負を賭ける。そしてカリスマパイロット、ディック率いる爆撃機が出撃し、総力をあげた激突へのカウントダウンが始まった。
アメリカ側の視点でミッドウェイ海戦を描いた作品だが、日本人に対するリスペクトとともに、日米双方の戦争で亡くなった方々への鎮魂の想いを強く感じる。ローランド・エメリッヒ監督はドイツ人としての責任感から日本人を単なる敵としてではなく、敬意を持って描くことを心掛けたそうだ。山本五十六に豊川悦司、山口多聞に浅野忠信、南雲忠一に國村隼をキャスティングしたことだけでなく、ほかの日本人役の俳優も正しい日本語のイントネーションでセリフを話すことからも伝わってくる。
アメリカ側のメイン人物の1人、ディック・ベストは日本の真珠湾攻撃で親友を失った。仇討ちに燃え、ミッドウェイ海戦では目覚ましい活躍をする。しかし、味方のためなら命を惜しまない戦い方を見ていると、特攻隊を思い出す。また空母と命を共にした山口多聞の描き方に、軍人としての危ない美学を感じてしまった。しかし、この作品を見て、軍人に対する行き過ぎたリスペクトをしないでほしい。ローランド・エメリッヒ監督も「多くの命が失われる戦争には勝者はなく、敗者しかいない」とも言っているのだから。(堀)
太平洋戦争の勝敗を分けたといわれるミッドウェイ海戦。それに至るまでの日米の兵士たちの思いと葛藤、アメリカ側の作戦を史実に基づいて描いている。日本軍による真珠湾攻撃で大打撃を受けたアメリカは、日本が次はどのような作戦で来るのか、どこが次なる攻撃地になりそうか、日本軍の無線を傍受し暗号解読し冷静に分析し、どこで日本軍に打撃を与えることができそうかがというアメリカ軍の情報分析の様子が描かれ、ミッドウェイ海域での日本軍への攻撃目標をたてる。そして、ミッドウェイ海戦でのアメリカ軍の攻撃が描かれているのだけど、これを観て日本の作戦はアメリカに筒抜けだったんだと改めて思い、これではやはり全然勝ち目はなかったんだと思った。
それにしてもこの映画に限らず、戦争を描いた映画での戦闘シーンが多いのが気になる。戦争の悲惨さ、愚かさを描くのに必要というけど、本当にそうなのかといつも思う。やはり「手に汗握る戦いのシーン」を観たいという男の人が多いことのあらわれなのではないか。どんな風に戦ったのか、どのように飛行機や空母で働く戦闘員たちが動いたのか、そういうところに興味をもち、空中戦とか戦艦の姿とか、攻撃し散っていく飛行機や銃撃を受けて沈んでゆく軍艦の姿、戦った兵士たちの姿にかっこよさを感じたり、ある種の羨望というか、戦争美学のようなものをもっているのではないかとさえ思う。これまで、数々の戦争映画が作られてきたけど、戦闘シーンのない戦争を描いた映画は数少ない。戦いのシーンがない戦争映画なんて考えられないのかもしれないけど、せめて「戦闘シーンはかっこいい」と思わせないような映画が多くなることを願う。戦争は悲惨であるということをけっして忘れてはならない。昨今の寛容性のない世界事情を思うと、第3次世界大戦は絶対あってはならないとつくづく思う(暁)。
よく父が、「兄さんが次はミッドウェイだぞ!」と言っていたのを思い出したので、父に確認してみたら、昭和17年(1942年)の春に、軍医として駆逐艦に乗っていた兄が南方から帰ってきたときに聞いた言葉とのこと。しばらくして府立高校の同級生が「次はミッドウェイ」というので、自分の方が先に知ってたぞと思いつつ、父は何も言わなかったそうです。その同級生のあだ名は「デマ」。よく戦況のことを得意げに話していたそうで、おそらく軍関係者が近親者にいて耳にしたことを学校で言っていたのでしょう。こんな調子だから、日本軍の情報は簡単に漏れてしまったのではと思ってしまいます。
昭和16年12月6日、父は現在の都立大学駅近くの蕎麦屋の2階で同級生たちと食事をしながらアメリカと開戦するかどうか議論になって、「アメリカと戦争したら負けるに決まってるからするはずない」と豪語。8日に真珠湾攻撃で戦争が始まってしまい、驚いたそうです。その後、父は昭和18年10月に大学に入った途端、学徒出陣が決まり、海軍に入隊。特攻隊で訓練していましたが、無事生き抜き、この9月98歳となりました。映画『ミッドウェイ』をぜひ観てみたいと言っています。私からみて、日本軍のことも公平な目で描いていると思ったので、父がどんな感想を持つのか興味津々です。(咲)
2019年/アメリカ/カラー/138分
配給:キノフィルムズ/木下グループ
Midway ©2019 Midway Island Productions, LLC All Rights Reserved.
公式サイト:https://midway-movie.jp/
★2020年9月11日(金) TOHOシネマズ 日比谷他全国ロードショー