2020年09月05日

妖怪人間ベラ

youkai.jpg

監督:英勉
原作:ADKエモーションズ
脚本:保坂大輔
撮影:川島周
音楽:主題歌はロックバンド「BREAKERZ」の「BARABARA」
出演:森崎ウィン(新田康介)、emma(ベラ)、堀田茜(新田歩美)、吉田奏佑(新田陽太)、六角精児(霧島拓)、清水尋也(篠田弘樹)、吉田凜音(綾瀬莉子)、桜田ひより(牧野沙織)

広告代理店に勤める新田は、かつての人気アニメ「妖怪人間ベム」の特集企画のため調査中、運よく幻の最終回のビデオテープを発見した。放送できなかったという衝撃の結末を知って狂いそうになる。そのころ百合丘ベラという物静かな女子が転校してきた。ミステリアスな彼女が来て以来、それまでのあやうい均衡が崩れ、不穏な空気が蔓延していく。一方、新田は妖怪人間に固執し、家族や会社で不可解な行動をとるようになった。

1968年に放送されたテレビアニメ「妖怪人間ベム」は、人間でも動物でもない“妖怪人間”であるベム、ベラ、ベロの3人が、いつの日か人間になりたいと望み、世の中にはびこる悪と対決する姿を描いたホラーアクション。これをリアルタイムで見て、主題歌も覚えています。いやはや。今回の映画の中ではベラが感情をこめずにクールに歌って、それが周りから浮いてemmaさんなかなか妖怪っぽいです。
ベラが人間界に登場したことで、新田を始め、人間たちが狂わされていくのがちょっと解せません。悪と戦う存在だったはずなのに、方向が違うような。そのわけが後で明らかになっていきます。壊れていく新田を演じる森崎ウィンさん、「自分と全く違うキャラをやってみたい、アクションも」と以前言っていたのがこれで叶いましたね。初の妻子持ち役で、パパぶりも見られます。
女子高校生主体の前日譚が、Amazonプライムほかで10話一挙配信されています。
1話、2話のみ無料限定公開中。こちら
(白)


2019年/日本/カラー/シネスコ/110分
配給:DLE
(C)2020映画「妖怪人間ベラ」製作委員会
https://bela-movie.com/
★2020年9月11日(金)池袋HUMAX シネマズ、渋谷HUMAXシネマズほか全国順次公開

【森崎ウィン コメント】
長い間多くの方に愛された原作を、少し違う目線で覗いている今作。
歴史ある作品だからこそのプレッシャーはありました。人間の本性と向き合い、心の中に潜む妖怪を存分に出し切ったつもりです。是非、劇場で、少しクスッとしながら覗いて頂ければと思います。

【emma コメント】
<妖怪人間>という長い歴史ある作品の中で、今回この作品に自分がベラとして関われたことを大変嬉しく思っています。ホラーという怖さの中で、その枠に捉われず、人間模様や葛藤、闇が描かれており、時折少し笑える部分もあったり・・・。ジェットコースターのような急展開に、鑑賞後はきっと今までみなさまが想像していた妖怪人間を良い意味で裏切る形になるかと思います。そして、最後には<妖怪とは何か、人間とは何か>の答えが見つけられるのではないかと思います。この作品をみなさまに観てもらえる日をとても楽しみにしています。

【英勉監督 コメント】
『人間になんてなりたくない』というコンセプトで作って見たら、ぐるぐるで、目がバチバチして、グワーってくる体感チックな映画になりました。キモ楽しいです。笑うところも。
posted by shiraishi at 09:17| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

マイ・バッハ 不屈のピアニスト(原題:Joao, o Maestro)

my bach.jpg

監督:脚本:マウロ・リマ
プロデューサー:ブルーノ・レザビシャス
撮影:パウロ・バイネル
出演:アレクサンドロ・ネロ(ジョアン成年)、ロドリゴ・パンドルフ(ジョアン青年)、ダヴィ・カンポロンゴ(ジョアン幼少)、カコ・シオークレフ(ピアノ教師)、フェルナンダ・ノーブル(最初の妻)、アリーン・モラエス(妻)

幼い頃からピアノが得意だったジョアンは、瞬く間にとその才能を伸ばし13歳でプロとなった。20歳でカーネギーホールでの演奏デビューを飾っり“20世紀最も偉大なバッハの奏者”として世界的に活躍するまでになる。
一流の演奏家として世界を飛び回っていたジョアンだったが、不慮の事故により右手の3本の指に障害を抱えてしまう。ピアニストとして生命線である指が動かせなくなった彼はリハビリに励み、再びピアニストして活動できるまでになる。ついに復帰を果たし自身の代名詞ともいえるバッハの全ピアノ曲収録という偉業に挑戦をしていたところ、さらなる不幸が襲いかかった。

ブラジルのピアニスト、ジョアン・カルロス・マルティンスの伝記映画。子ども時代、青年時代、成年時代と3人の俳優がジョアンを演じています。ピアノ演奏の場面も多く、どのシーンも本人が演奏しているように見えます。プレスには言及されていませんが、動きは本人のものでしょう。得意な楽器が何もない私など、どれを見てもははーっと感服するばかり。
最初の事故で指が動かなくなっても決して諦めず、リハビリに励んだジョアンですが、さらに何度もの試練がやってきます。たった一つでさえ、乗り越えられず屈服してしまいそうなのに。
重なる不幸にめげず、片手で、さらには握りこぶしで、と道を開いていくジョアンの姿が素晴らしい!誰もができることではありません。が、ちょっとのことで愚痴っちゃいられないと背筋がシャキン!!と伸びますよ。この偉業の一方なかなかのプレイボーイだった一面も描いていて、人間臭いところもあるのねとちょっと安心します。(白)


クリント・イーストウッドも映画化を考えたという。若くして世界的な活躍をしていたピアニストが2度の不幸に見舞われたにもかかわらず、その苦難を乗り越えて、音楽の道を切り開いていく。確かにクリント・イーストウッドが興味を示しそうな内容だ。プロデューサーであるブルーノ・レザビシャスはジョアン・カルロス・マルティンスが指揮を務めるコンサート会場で「この物語はブラジル人こそが映画化すべきだ」と直談判し、映像化にこぎつけた。
話を暗く、重いものにしたくなかったからだろうか。ものすごい苦労があったはずなのだが、いつもするりと乗り越えてしまう。またジョアンがいつの間にか結婚をしているなど、パーソナルな部分に説明不足を感じた。それはジョアン本人から音楽家としての功績などにフィーチャーしてほしいというリクエストがあって、脚本の方向性を修正したからのようだ。クリント・イーストウッドが作ったら、もっと人間ジョアン・カルロス・マルティンスが深く描かれたのかもしれない。
しかし、音楽家としての功績にスポットを当てたので、ジョアンがピアノを弾くシーンが多い。しかも、それはジョアン・カルロス・マルティンス本人が弾いたものを使っている。心地よいバッハのメロディーに酔いしれる2時間となった。(堀)


2017年/ブラジル/カラー/117分
配給:イオンエンターテイメント
http://my-bach.jp/
★2020年9月11日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 08:56| Comment(0) | ブラジル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

チィファの手紙(原題:Last Letter)

chifa.jpg

原作・脚本・監督:岩井俊二
プロデュース:ピーター・チャン
撮影:神戸千木
音楽:岩井俊二、ikire
出演:ジョウ・シュン(チィファ)、チン・ハン(イン・チャン)、ドゥー・ジアン(ジョウ・ウェンタオ)、チャン・ツイフォン(チィファ、サーラン)、ダン・アンシー(チィナン、ムームー)、フー・ゴー(ジャン・チャオ)

チィファの姉、チィナンが死んだ。彼女宛に届いた中学の同窓会に出かけて、そのことを伝えようとしたチィファだったが、姉に間違えられた上、スピーチまでするはめになってしまった。同窓会には、チィファが憧れていたイン・チャンも来ていた。途中で帰ったチィファをチャンが追いかけ、呼びとめる。チィファは姉のふりを続け連絡先を交換するが、チャンが送ったメッセージをチィファの夫ウェンタオが目にして激昂したあげくスマホは壊されてしまう。チィファは、チャンに住所を明かさないまま、チィナンとして一方通行の手紙を送る。それは思いがけないできごとを引き寄せた……。

今年1月に公開された岩井俊二監督の『ラスト・レター』のもう一つの”ラスト・レター”。中国版リメイクではなく、ほんとはこちらが先に作られました。
中国を舞台に二つの時代を描き分けるため、日本とは違う様々な文化・習慣をリサーチしたそうです。それをぴったりのキャストが演じ分けています。チィナンとチィファの少女時代と現代の娘役を同じ俳優が演じるのも、日本版と同じ。中国の一人っ子政策や、犬を飼うにも制限があったこともきちんと反映されています。
岩井俊二監督の『Love Letter』などロマンチックな作品は中国でも人気が高いそうです。その知名度に加えて岩井監督旧知の香港のピーター・チャン監督がプロデューサーとして加わったことで、制作がたいへんスムーズにいったのだとか。ジョウ・シュン、チン・ハンといった有名俳優を主演に迎え、観客の心に訴える中国映画が完成しました。(白)


好きになった人の想い人は姉。好きだからこそ思いを叶えてあげたい。しかし、自分の気持ちも抑え切れない。しかも、大人になって再会しても彼の想いは変わっていなかった。この設定は切なすぎる。岩井俊二監督の世界観が静かに炸裂していて、どっぷりと物語の中に引き込まれます。
2020年1月には『ラスト・レター』というタイトルで、同じ主題の日本版も公開されました。好みの問題ですが、私は『チィファの手紙』が好き。日本版では福山雅治、中山美穂、豊川悦司がくたびれた中年を演じていて、私の中でカッコいいはずの彼らのそんな姿がどうしても受け入れられなかったのです。(堀)


2018年/中国/カラー/シネスコ/113分
配給:クロックワークス
(C)2018 BEIJING J.Q. SPRING PICTURES COMPANY LIMITED WE PICTURES LIMITED ROCKWELL EYES INC. ZHEJIANG DONGYANG XIAOYUZHOU MOVIE & MEDIA CO., LTD ALL Rights reserved.
https://last-letter-c.com/
★2020年9月11日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 08:52| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

喜劇 愛妻物語

aisai pos1.jpg

監督・原作・脚本:足立紳
撮影:猪本雅三
音楽:海田庄吾
出演:濱田岳(豪太)、水川あさみ(チカ)、新津ちせ(アキ)、夏帆(由美)

売れない脚本家の豪太は年収50万円。ほぼ妻のチカの稼ぎで食べている。結婚して10年、可愛い一人娘のアキもいるが、いつまでたっても鳴かず飛ばずの豪太にチカの怒りは収まらない。歯に衣着せぬアキの罵倒にときたま抵抗するものの、10倍になって返ってくる。セックスレス3か月に及び、何とかご機嫌をとりたい豪太はうどん作りの取材と称して四国への旅を提案する。

『百円の恋』脚本の足立紳が2016年に発表した小説が原作。稼ぎがなくても適当なセフレを作り、お金があれば風俗へも行く豪太に、まったくもう!と思ってしまうのは私だけではないでしょう。男性諸氏は剛太にどのくらい共感できますか?
とことん情けない豪太と鬼嫁チカの夫婦を濱田岳&水川あさみさんが演じて本当にうまい~!どちらにも呆れつつ、親近感を持たせてくれます。どれだけ口汚く罵ろうとも、見放していない、憎んでいるのではないことは素直で可愛い娘と、チカがはいている赤パンツでわかります。赤パンツは巣鴨の地蔵通り商店街の人気商品で「元気と幸福」を願うものです。仲良く出かけたときに買った赤パンツを今も愛用しているチカ。豪太くんよ、少しは気持ちを察してやって。

昨年第32回東京国際映画祭のコンペティション部門で最優秀脚本賞を受賞。
足立監督がきっと意識されただろう、喜劇とつかない『愛妻物語』(1951)は新藤兼人監督(脚本も)が自らの下積み時代、夫を支え続けて結核で死去した愛妻との日々を描いています。70年前はこんな風でした。(白)


喜劇 愛妻物語 足立紳家督.jpg
第32回東京国際映画祭(2019) 最優秀脚本賞受賞
『喜劇 愛妻物語』足立神監督


喜劇 愛妻物語.jpg
第32回東京国際映画祭(2019)オープニングレッドカーペット
左から 足立神監督、濱田岳さん、水川あさみさん


まったくしょうもない夫、豪太を浜田岳はひょうひょうと演じている(笑)。夫を罵倒しながらも支えている妻チカ。男の身勝手さにイライラしながら観たけど、浜田岳が演じるとコミカルに感じる。笑える悲壮感というようなイメージ。そんな豪太だけど、チカはなんとかなるのではという希望を持っている。それは「赤パンツ」をはいていることでわかる。そのへんがうまい表現と思った。それが報われるとこまでは描かれていないけど、こんな関係性の中での生活はさてどうなるのでしょう。

去年、友人がスタッフとして参加している第10回周南[絆]映画祭(2019)に初めて行ったけど、『百円の恋』はこの映画祭での「第1回松田優作賞」グランプリに選ばれた脚本ということを知った。思わぬ発見だった。きっと足立紳監督の運はこれで開かれていったのではないかと思った。そして徳山の方たちの映画愛ははんぱない。今年はどんな作品が上映されるかなと思ったのだけど、残念ながら今年の周南[絆]映画祭は今のところ延期になっている(暁)。


第10回周南絆映画祭.jpg
第10回周南[絆]映画祭(2019)で見かけた、第7回周南[絆]映画祭(2014)のポスター。足立神監督のサインも。(写真撮影3点 宮崎暁美)

愛妻というのは愛している妻だと思っていたが、この作品では愛してくれる妻らしい。主人公は働きもせず、子守もせず、セフレと遊ぶ。とことんクズな男だが、濱田岳が演じる、まぁいいかと思わせてしまう。いやいやダメでしょ。
しかし、女性の幸せって何なんでしょう?
夏帆が演じる妻の友人も、大久保佳代子が演じる主人公のセフレも幸せそうに見えない。夫がこんなにクズな主人公でも、水川あさみが演じる妻がいちばん幸せそうに見える。
自力で生きていける力があり、愛する夫と娘がいる。人生を自分で選べることこそ最強なのかもしれない。
そして、足立紳監督は愛妻の本当の意味がわかったから、売れっ子脚本家になれたに違いない!(堀)


豪太が以前に企画を出した「四国にいる高速でうどんを打つ女子高生」が映画化されることになり、脚本を書くために四国に取材に行きたいけれど、取材費は出そうにない。運転免許がない豪太は、妻チカに運転係として同行を頼み、娘も連れて親子3人で四国旅行にとう物語。まったくもう~な夫に呆れるばかり。
公式サイトの監督インタビューを読んでみたら、どうやら足立監督自身の経験が投影されていると知りました。小説にする前に、さぬき映画祭のプロットコンペに応募しようと思って書いたものが発端なのだそうです。香川県を舞台にしたものなら何でもいいというコンペ。香川県に行ったことがなくて、家族3人で行ったもののネタが見つからず、奥さんから「このクソど貧乏のさなか、せっかくお金かけて行ったんだから絶対に応募しろ」と言われたのだそう。足立監督の奥様にお会いしたくなりました♪ (咲)



2019年製作/115分/PG12/日本
配給:バンダイナムコアーツ、キューテック
http://kigeki-aisai.jp/
(C)2020「喜劇 愛妻物語」製作委員会
★2020年9月11日(金)より全国ロードショー
posted by shiraishi at 08:32| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする