2020年07月10日

追龍(原題:追龍 Chasing the Dragon)

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監督:バリー・ウォン、ジェイソン・クワン
出演:ドニー・イェン(ホー)、アンディ・ラウ(ロック)、フィリップ・キョン、ウィルフレッド・ラウ、ケント・チェン

1960年、中国の潮州から仲間たちと香港に仕事探しにきたホーは、日当目当てでヤクザ同士の抗争に参加して逮捕されてしまった。差別意識の強い英国人上司とそりの合わない警察官のロックはホーたちを助け、ホーはその恩義を胸に刻む。ホーは裏社会で、ロックは警察でのし上がり、ここぞというときには互いに助け合いながら権力と金を手にしていく。

実在の二人をモデルにしたクライムストーリー。W主演のアンディ・ラウがドニーより2歳年長で、香港のテレビ局の俳優養成所の先輩でもあります。トップスター二人のこれが初共演。ケネス・ツァンやケント・チェンの共演、もう見ることのできない九龍城砦のセットが素晴らしく、香港映画ファンには嬉しい限り。ぜひ大画面で堪能してください。アンディ・ラウは『リー・ロック伝 大いなる野望』(91)では30そこそこで(若くて美形!)同じロックを演じています。見比べるのも良し。
ドニー・イェンは『ワンス・アポン・ア・タイム 天地大乱』(92)で黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)の敵役で、ジェット・リーよりも目を引き「誰!?」と以後作品を追いかけたのでした。この作品の腕っぷし強く仲間思い、義理人情に厚いホーは、ドニー本人に近いのではないかと想像しています。
歌に映画にとトップを走り続けてきたアンディ、アクションだけでなく演技にもさらに磨きがかかってきたドニー、俺様キャラ二人かとの心配は無用。二人とも良い年を重ねてきました。(白)


市民の安全を守るためには警察内でのし上がって権力を持つしかない。ロックの考え方はどこかで聞いたことがあると思ったら、「踊る大捜査線」で柳葉敏郎が演じた室井慎次。テレビシリーズ当時は警視庁刑事部捜査第一課強行犯捜査担当管理官でしたが、その後、紆余曲折はあったものの、『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』では警察庁長官官房審議官兼警察庁長官官房組織改革審議委員長に就任して、警察組織の抜本的改革に踏み出すこととなりました。
が、ロックは裏社会でのし上がったホーと手を組み、私利私欲にまみれてしまいます。どこで道を違えたのでしょうか。ホーとともに海の向こうを見たときの青空はいつの間にか消えていました。それとももともと目指すものが違っていた? 
アンディ・ラウに見とれているとラストは「よかった~」と思えるのですが、一般市民の感覚としては、それでよかったんだろうかと、何とも言えないざらざら感が残ります。(堀)


冒頭、頭上を飛行機が飛んでいきます。九龍城砦のすぐそばに啓徳空港のあった時代。空港ビルから眺めた九龍城砦の異様な姿を思い出します。無法地帯といわれ、足を踏み入れるのをためらっているうちに壊されてしまいました。在りし日の姿を写真展で見たことがありますが、本作で生々しく悪の巣窟を再現していて、こんなだったのかなぁ~と想像をめぐらしました。
九龍側から眺めた香港島には、まだ高層ビルも林立してなくて、のどかな風情。
警察が黒社会と結託して、担当地区を決めて甘い汁を吸っているのですが、九龍側に住む警察幹部のトン・ガン(ケント・トン)が尖沙咀と同じ位、香港島の湾仔にうまみがあると聞いて、食指を伸ばそうとします。ガンと対立するリー・ロック(アンディ・ラウ)が、すかさず「船酔いするぞ」とからかいます。まだ海底トンネルが出来てなくて船で行き来していた時代。
また、英国人があらゆる面で香港人の上に立っていたことが、競馬場の場面からも見て取れました。ジョッキークラブのメンバーでないと入れない上層部のテラスですら、英国人と香港人は柵で区切られていました。
英国から中国に返還され、一国二制度という形での独立を得たはずの香港ですが、香港人による自治とは程遠い現実。警察が市民にこん棒を振っているのも60年代と変わらないですね。(咲)


2017年9月中旬 『追龍』香港公開直前の銅鑼湾時代広場の看板(撮影:宮崎暁美)
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私はよっぽど『追龍』と縁がないらしい。なかなか観ることができなかった。2017年9月中旬に華仔天地/わーちゃいてんち(アンディワールドクラブ)のイベントで香港に行った時は『追龍』香港公開1週間くらい前だった。日本に帰る前の日、銅鑼湾の時代広場にこの映画の大きな看板があるというので見に行った。
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2017年9月中旬 『追龍』香港公開直前の銅鑼湾時代広場の看板

日本公開が決まり試写状をいただいたけど2月は2回旅行に行ったり、3月は大阪のアジアン映画祭に行ったのでなかなか試写に行けなくて、4月にやっと観に行けると思ったらコロナ禍中になり、持病持ちの私は約2ヶ月自粛状態で家にこもっていた。5月25日に東京の緊急事態宣言が解除され、6月1日の『追龍』最終試写で映画解禁と思ったのにやはり怖くて都心に行けず、(咲)さんがDVDを取り寄せるというので、それをまわしてもらうことにした。それが失敗だった。やっと観ることができたけど、我が家のTVは小さく、字幕が小さくてよく見えず、やはり映画は大きな画面で観なくてはと反省。公開されたら、さっそく映画館の画面で観なくては。お預け状態約3年近く。やっと観ることができる。それでもDVDで観た『追龍』、やっと観ることができて嬉しかった。

劉徳華(アンディ・ラウ)と甄子丹(ドニー・イェン)の二人が共演するという話を聞いたときは、これが初めての共演とは意外だった。長年香港映画界で活躍してきた二人だけど、やっと一緒にやれる機会がやってきたということだったのかも。それもリーロックとホーという実在の人物をモデルにした物語で。香港映画で幾度も描かれてきた実在のキャラクターということだけど、二人は大勢の出演者たちの中で実在感たっぷりに演じていた。そして、香港映画のおなじみの面々。フィリップ・キョン、ケント・チェン、ケネス・ツァンばかりでなく、アンディとTVBで仲間だった五虎のメンバーだったケン・トンやフェリックス・ウォンも出ているし、テレンス・インまで出ていて、香港映画ファンにとっては出演者だけでも思わずニヤリとしてしまう面々が、次々と登場。
大陸(潮州)からの無法移民、大勢の人数による黒社会の出入り、九龍城砦とそのすぐ上を飛行機が飛んでいる姿。英国人の警官。1960年代から80年代を映した香港映画ではお馴染みの光景。ちょっと懐かしかった。
警察と黒社会が結託し汚職が横行した時代を現した映画をたくさん観てきたし、英国人の警察官の横暴をあらわしたものもたくさんあった。でもこの映画を観たとき思ったのは、今は英国が中国に変わっただけで、相変わらず香港は自分たちが住んでいる国であって、香港人のものではないというのをひしひしと感じた。この数年の香港で起こっていることを暗示させるものだったのかもと感じた。そして「いつから英国の手下に」という言葉が、そのまま「中国」に成り代わっていると思いながら観た。バリー・ウォンの「おバカ映画」が好きなんていっていた時代もあったけど、今やバリー・ウォンはエンターティメント映画の中にしっかり皮肉を折りこんだ骨太の映画を作るようになっていた。「香港は俺たちのものだ」という言葉が空しく響く。
九龍城砦は取り壊され、今は公園になっていて、この映画に出てきたような光景とは思いもつかぬ姿になっている。2018年に香港に行ったとき、九龍城砦跡地にできた九龍塞城公園に行き、ここでゆっくりしながら数々の香港映画で観た九龍城の姿を思い出していた。

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九龍城砦跡地にできた九龍塞城公園

今年(2020年)2月に台湾に行き、台北・西門町の映画館で『肥龍過江』を観た。太っちょ姿のドニーさんが活躍する作品で日本でも撮影している。これを観たら、アンディの『ダイエット・ラブ/瘦身男女 』を思い起こすくらい似たような太っちょ姿だったので、この「太っちょ」姿を作ったのは、もしかしたらアンディの太っちょ姿を作った会社と同じかも(笑)。この作品面白かったので、ぜひ日本でも公開してほしい(暁)。

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西門町の映画館で『肥龍過江』の看板

2017年/中国、香港/カラー/シネスコ/128分
配給:インターフィルム
(C)2017 Mega-Vision Project Workshop Limited.All Rights Reserved
https://www.tsuiryu.com/
★2020年7月24日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー



posted by shiraishi at 10:54| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

WAR ウォー!!(原題:WAR)

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監督・脚本・原案:シッダールト・アーナンド
出演:リティク・ローシャン(カビール)、タイガー・シュロフ(ハーリド・ラフマニ)、バーニー・カプール(ナイナ)

インドの対外諜報機関RAW(Research and Analysis Wing) に衝撃が走る。RAWのナンバーワンのカビールが、組織の高官を射殺して逃亡したと報告が入ったのだ。ただちにカビールの抹殺が決まり、彼の愛弟子でもあったハーリドがそのミッションに名乗りをあげる。カビールは最も尊敬し、憧れていた上司でもあった。ぬぐい切れない疑問がわき、直接カビールに会って問いただしたかったのだ。なぜ裏切ったのか?

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凄腕スパイ同士の世界各地をまたいだ追跡劇、しかも長身イケメン俳優+渾身のアクションとカーチェイス…これだけ揃えた上、美女とダンスシーンもぬかりありません。『サーホー』を越えて大ヒットしたそうです。迫力のダンスシーンはかなり熱い(暑い)ので、のぼせないようご注意を。
インド映画といえばこの方!松岡環さんのブログ”アジア映画巡礼”にも詳しーい解説が載っていますので、ご覧くださいませ。(白)


W主演のリティク・ローシャンとタイガー・シュロフはどちらも二世俳優。リティクの父は1970~80年代に二枚目スターとして人気があったラーケーシュ・ローシャン。タイガーの父は1980~90年代のトップ俳優ジャッキー・シュロフ。しかし、親の七光りなんてことはなく、リティクは甘い二枚目なうえ、キレのあるダンスステップを披露するし、タイガーはアクションが素晴らしい。2人の年齢差は16歳あるものの、師弟関係の設定でバディを組んでも違和感がありません。
脚本もよくできていて、「あれが伏線になっていたの!」と驚くことばかり。また2人が二丁拳銃で戦うところはジョン・ウー監督の『狼 男たちの挽歌・最終章』を彷彿させます。きっと他にも伏線やオマージュはありそう。(堀)


ハリウッド映画に負けないダイナミックなアクションシーン。加えて、イタリア、オーストラリア、フィンランドなど7カ国 15都市でのロケも超豪華。中でもポルトガルのポルトのドン・ルイス1世橋や、北極圏での砕氷船のシーンは圧巻です。アマルフィのポジターノビーチでの150人を越えるダンサーを背景にしたリティック・ローシャンとヴァーニー・カプールのパーティソングのシーンは、ほんと、熱いです。
インド南部ケーララののどかな風景など、癒される場面も。
国際的なイスラーム過激派テロリストを追う物語ですが、インドの対外諜報機関RAWのハーリドもまたムスリム。信仰に反するのにお酒を飲み干したのはおかしい・・といった言葉もありました。それも伏線。(咲)


2019 年/インド映画/ヒンディー語/カラー/スコープサイズ/151 分
配給:カルチュア・パブリッシャーズ/配給協力:インターフィルム
© Yash Raj Films Pvt. Ltd.
https://war-movie.jp/
★2020年7月17日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷他全国順次公開!



posted by shiraishi at 08:24| Comment(0) | インド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする