2020年07月09日

パブリック 図書館の奇跡(原題:The Public)

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製作・監督・脚本・主演:エミリオ・エステベス
出演:アレック・ボールドウィン、テイラー・シリング、クリスチャン・スレイター、ジェフリー・ライト、ジェナ・マローン、マイケル・ケネス・ウィリアムズ、チェ・“ライムフェスト”・スミス

米オハイオ州シンシナティの公共図書館で、図書館員スチュアート(エミリオ・エステベス)は常連の利用者のホームレスから「今夜は帰らない」と告げられる。大寒波が到来し、路上での凍死者が続出し、その日の朝も図書館前で別の常連利用者ホームレスが亡くなったばかりだった。しかし、市の緊急シェルターは満杯。行き場を失った70人ほどのホームレスたちが図書館を占拠したのだ。
彼らの苦境を察したスチュアートは、3階に立てこもった彼らと行動を共にし、出入り口を封鎖する。それは“代わりの避難場所”を求める平和的なデモだったが、政治的なイメージアップをもくろむ検察官の偏った主張やメディアのセンセーショナルな報道によって、スチュアートは心に問題を抱えた“アブない容疑者”に仕立てられてしまう。やがて警察の機動隊が出動し、追いつめられたスチュアートとホームレスたちが驚愕の行動に出た。

寒い中、図書館の開館を待つホームレスの人たち。開館と共に入場し、歯を磨いて顔を洗う。町のシェルターはすでに満員で、受け入れてもらえず、ここが生活の場となっている人たち。折りしも大寒波。閉館後、行くアテのない人たちに、夜を過ごす場所を提供してあげてもいいじゃないかと思ってしまいます。
図書館員スチュアートは、過去にホームレスの経験もあって、本に救われたと語っています。テレビレポーターから、人質事件の首謀者の烙印を押され、言いたいことは?との問いに、人道的危機と言いかけるのですが、まともに聞いてもらえません。そこで、「ここには告発しても足りぬ罪がある。涙では表わしきれない悲しみがある・・・」と「怒りの葡萄」の一節を語ります。いぶかしげなレポーター。小学校高学年の教科書にも載っている一節なのだそうで、リチャードの知り合いの女性たちがレポーターを馬鹿にしています。報道の功罪も考えさせられました。(咲)


監督のエミリオ・エステベスは、ある公共図書館の元副理事がロサンゼルス・タイムズに寄稿したエッセイにインスピレーションを得て、構想に11年かけて完成させました。
記録的な大寒波の到来し、凍死者が続出しますが、緊急シェルターがいっぱいで行き場がないホームレスの集団が図書館のワンフロアを占拠。ひとりの図書館員が突如勃発した大騒動に巻き込まれながらも奮闘していく姿を描きます。

配給をしたロングライドは、日本各地の“公共”のエキスパートの方たちを繋いで、コロナ禍でより露わになった、日本における公共性を持つ空間が現在抱える問題やその未来についてともに考えるオンライン座談会を2夜連続配信しました。


《イベント概要》
『パブリック 図書館の奇跡』公開記念 本作を通し考える、日本の公共性を持つ空間のあり方と未来

【第1夜】
日程:7/7(火)
時間:18:00~19:30
司会:岡本真(アカデミック・リソース・ガイド株式会社 (arg)代表、著書『未来の図書館、はじめませんか?』)
登壇者:
福島幸宏(東京大学大学院 情報学環 特任准教授)
嶋田学(奈良大学 文学部 文化財学科 教授・司書課程)
谷合佳代子(公益財団法人大阪社会運動協会・エル・ライブラリー:市民ボランティアと寄付で支えられている労働専門図書館)
岡野裕行(皇學館大学文学部国文学科准教授)
桂まに子(京都女子大学図書館司書課程講師)

Youtube配信URL:https://youtu.be/GC4aGeKo2TM

【第2夜】
日程:7/8(水)
時間:19:00~20:30
司会:岡本真
登壇者:
田中元子(株式会社グランドレベル代表取締役社長、喫茶ランドリーオーナー)
平賀研也(前県立長野図書館長)
川上翔(NPO法人ビッグイシュー基金 プログラム・コーディネーター)
Youtube配信URL:https://youtu.be/D3VJK0lDI4w


初日は時間を1時間間違えて、終わりの方しか聞けませんでしたが、2日目はしっかり聞きました。
映画のシーンを引き合いに出して、日本の現状や今後への提案が話題に上がりました。

今から40年ほど前、図書館で働きたくて、大学で司書過程を取りました。しかし、当時は公務員試験に採用され、運よく図書館に配属されたらなれる職業で、なかなかなれない職業でした。(むしろ、意思とは関係なく図書館に配属され、不本意に図書館で仕事をしていた人もいました)
図書館は本を借りるところと思っている人が多いのですが、実はその利用方法は多岐にわたります。本の貸し出しの次くらいに分かりやすいのが、レファレンスサービス。利用者の質問に答えるのです。作品の中でも、「原寸大の地球儀はありますか」といったとんでもない質問がありましたが、これがなかなか大変なのです。そういった知られていない司書の仕事もさらりと紹介しているあたりに、エミリオ・エステベスの深いリサーチを感じる作品でした。(堀)


2018年/アメリカ/英語/119分/スコープ/5.1ch
配給:ロングライド
© EL CAMINO LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:https://longride.jp/public/
★2020年7月17日(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
posted by ほりきみき at 14:20| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

バルーン 奇蹟の脱出飛行(原題:BALLOON)

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監督:ミヒャエル・ブリー・ヘルビヒ 
脚本:キット・ホプキンス、ティロ・レーシャイゼン、ミヒャエル・ブリー・ヘルビヒ
出演::フリードリヒ・ミュッケ、カロリーヌ・シュッヘ、デヴィッド・クロス、アリシア・フォン・リットベルク、トーマス・クレッチマン

1979年、東ドイツ・テューリンゲン州。電気技師ペーター(フリードリヒ・ミュッケ)とその家族は、手作りの熱気球で西ドイツをめざすが、国境までわずか数百メートルの地点に不時着してしまう。東ドイツでの抑圧された日常を逃れ、自由な未来を夢見ていたペーターは、準備に2年を費やした計画の失敗に落胆の色を隠せない。しかし妻のドリス(カロリーヌ・シュッヘ)とふたりの息子に背中を押されたペーターは、親友ギュンター(デヴィッド・クロス)の家族も巻き込み、新たな気球による脱出作戦への挑戦を決意する。ギュンターが兵役を控えているため、作戦のリミットはわずか6週間。ふたつの家族は一丸となって不眠不休の気球作りに没頭するが、国家の威信を懸けて捜査する秘密警察の包囲網が間近に迫っていた……。

作品冒頭でフェンスを乗り越えて西側に逃げようとする亡命者を映し出します。フェンスを超えられるのか、逃げ切れるか。いきなりハラハラドキドキのシーンで緊張感が煽られます。そして、主人公一家たちの登場。秘密を抱えた感じが演出からびしびし伝わってきます。
作品では2度、気球に乗って脱出を図るのですが、誰が乗って、誰が乗らないのか。それぞれの辛い選択に見ているこちらまで心が痛みます。
そして、実行。しかし、脱出は容易なことではありませんでした。この失敗がシュタージ(秘密警察)に手がかりを与えてしまうことになります。2回目の実行は危険度がさらにアップ。しかもシュトレルツィク家の長男が向かいの家の娘といい感じになり、そこから秘密が漏れてしまいそうで心配は尽きません。歴史的事実を描いた作品なので、結果はわかっているものの、125分のほとんどが緊張感の連続。だからこそ、ラストの安堵感は大きいものでした。
ちなみに気球による脱出を阻止しようとするシュタージのサイデル大佐を演じたトーマス・クレッチマンは東ドイツ出身で1983年に東ドイツから逃亡し、ユーゴスラビアに逃げたそう。逃亡した経験者が追う立場を演じているので、さらにリアル感が増しているのかもしれません。
そうそう、バルーンが意外にカラフルで、スクリーンいっぱいに大きく膨らんだときは思わず声を上げてしまいそうになるほどです。お楽しみに。(堀)


あんなに大きなバルーンを作ってしまったことに、まず驚きます。見つかったら命はないでしょう。そこまでして国を逃げ出したかったとは! 東ドイツ時代のベルリンの空港にトランジットで降り立ったことがあって、確かに荒んでいて、暗くて、国情を推し量って大変な国だなと思ったことを思い出します。
このバルーンで西に逃れた2家族8人の実話は、1982年にウォルト・ディズニー・カンパニーが『気球の8人』のタイトルで映画化し、日本でも公開されているのですが、知りませんでした。
東ドイツから壁を乗り越えて西に逃げた話は数多く聞いてきました。バルーンで亡命した話は聞いたことがなかったので、ベルリンの壁が崩れる前の東ドイツを何度か訪ねたことのある友人に聞いてみました。
「私が知らないだけかもしれませんが、おそらく当時はそういう脱出成功情報はあまり公に流されていなかったと思います。インターネットもない時代でしたし、隠されていたと思います」とのこと。さもありなんです。
報道されたとしても、バルーンに関して、よほどの知識と忍耐力がなければ、おいそれと真似して脱出するのは難しいのではと思います。
それにしても、実話なので脱出に成功するとわかっていても、ハラハラドキドキ、手に汗握りました。(咲)


東西冷戦下の東ドイツ。東ベルリンから西ベルリンへの脱出というと、ベルリンの壁を乗り越えたり、地下トンネルを掘ってという話は数多く聞いたり映画でも観てきたけど、熱気球で境界線を乗り越えたという話は聞いたこともありませんでした。でも実話を元にした話ということで実現したことがあるのでしょう。知られざる真実です。1989年にベルリンの壁が崩壊されたので、このあとまだ10年は壁がありました。その間にも何人もの人たちがこの境界を乗り越えたことでしょう。どのくらいの人たちが乗り越えられず犠牲になったことかと思います。
熱気球を作るにはかなりの知識(作り方とか気象知識など)と熟練した腕(ミシンで縫ったり)が必要だと思うけど、ペーターは電気技師、ギュンターは同僚という情報しかなかったけど、二人は東ドイツ国内で、仕事で熱気球などを作るような仕事もしていたのかな。素人ではとてもこんな8人も乗れるような熱気球は作れないでしょうね。
どうなるかとドキドキしながら観た作品であり、とても興味深い作品ではあったのですが、なぜ東西ドイツに分かれていたのかとか、東ドイツでの生活はどんなだったのかという視点では描かれてなかったのが残念です。その事情を知らない若い人たちのためにも、そういう部分も入れて描いてほしかったなと思います。
最近、歴史の史実を元にしたという映画が随分作られ、歴史に埋もれた真実が明らかになってきていますが、そこに至った歴史とかが省かれていることが多く、それが残念だなと思うことがあります。そのくらい、今の若い人は歴史を知らないと感じます。私自身も教科書からより、映画でいろいろな歴史や文化を知ったので、ぜひいろいろな視点で映画を観ていけたらと思います(暁)。

2018年/ドイツ/ドイツ語/125分/カラー/シネマスコープ/5.1ch
配給:キノフィルムズ/木下グループ
© 2018 HERBX FILM GMBH, STUDIOCANAL FILM GMBH AND SEVENPICTURES FILM GMBH
公式サイト:http://balloon-movie.jp/
★2020年7月10日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー


posted by ほりきみき at 14:08| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

グレース・オブ・ゴッド 告発の時(原題:Grace a Dieu)

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監督・脚本:フランソワ・オゾン
出演:メルヴィル・プポー(アレクサンドル・ゲラン)、ドゥニ・メノーシェ(フランソワ・ドゥボール)、スワン・アルロー(エマニュエル・トマサン)、エリック・カラバカ(ジル・ペレ)、フランソワ・マルトゥーレ(バルバラン枢機卿)、フランソワ・マルトゥーレ

妻と子どもたちとの幸せな家庭を築いているアレクサンドルには、教会での忌まわしい思い出があった。子どもの頃人格者だと思われていたプレナ神父に性的虐待を受けていたのだ。教区を変えながら今も神父でいることを知って驚愕する。アレクサンドルは子どもたちが二度と同じ目に遭わないよう事件の告発を決意し、自分と同じ被害者を探し始める。同時に子どもを守り切れなかった親ともあらためて向き合うことになった。

フランソワ・オゾン監督が初めて実際にあった事件「プレナ神父事件」を映画化しました。一人が子どもの頃受けた性暴力を勇気を持って告発したのを契機に、次々と被害者が名乗りを上げ、結果的に80人以上になりました。裁判は現在も進行中です。
当時虐待を知りながら見ないふりを決め込んだ人たちがいて、被害者は増えていきました。大人になるまで声を上げられないほど、傷は深くトラウマは大きかったということでしょう。あらためて思い出し、言葉にすることでまた傷つく被害者たち。事件が明るみに出ると、家族を巻き込み、好奇の目にさらされます。
日本でも同じような問題があったことを知りました。幼い子どもに「人を信じるな」と教えなければならないとは。有形無形の様々な暴力に立ち向かうには、この映画のようにやはり声をあげること。たとえ小さな声でも、遅くなってもあきらめずに。
2019年の第69回 ベルリン国際映画祭審査員グランプリ(銀熊賞)受賞。2020年のリュミエール賞では最多の5部門にノミネート、セザール賞では7部門8ノミネートされ、今にも折れそうなエマニュエルを演じたスワン・アルローが助演男優賞に輝きました。(白)


本作は最初に声を上げたアレクサンドル、それを知って立ち上がったフランソワ、告発を躊躇うエマニュエルによって話が紡がれる。同じ神父による被害者でも、受け止め方やその後の人生によって苦しみ方が違うことがわかります。
また、苦しむのは本人だけではありません。家族にも大きな影響を及ぼしました。息子に告白されても認めない、重く受け止めて何とかしなければと奔走するなど親の受け止め方はさまざまで、その結果、兄弟間の関係性の亀裂が生じることもありました。フランソワ・オゾン監督は被害者やその家族の心情を丁寧に見つめて描いています。
さらに信仰の問題にも触れています。フランソワは無神論者になりましたが、アレクサンドルは被害を受けてもキリスト教信者として生きてきました。ラストにアレクサンドルは息子からまだ神を信じているかを問われます。フランソワ・オゾン監督がいちばん描きたかったのはこのことだったのではないでしょうか。(堀)


2019年/フランス/カラー/ビスタ/137分
配給:キノフィルムズ
(C)2018-MANDARIN PRODUCTION-FOZ-MARS FILMS–France 2 CINÉMA–PLAYTIMEPRODUCTION-SCOPE
https://graceofgod-movie.com/
★2020年7月17日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほかロードショー
posted by shiraishi at 00:27| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする