2020年06月28日
SKIN/スキン 原題:SKIN
監督・脚本:ガイ・ナティーヴ
製作:ジェイミー・レイ・ニューマン、ガイ・ナティーヴ
撮影:アルノー・ポーティエ
編集:リー・パーシー、マイケル・テイラー
音楽:ダン・ローマー
出演:ジェイミー・ベル、ダニエル・マクドナルド、ダニエル・ヘンシュオール、ビル・キャンプ、ルイーザ・クラウゼ、カイリー・ロジャーズ、コルビ・ガネット、マイク・コルター、ヴェラ・ファーミガ
スキンヘッドにタトゥーまみれのブライオン・“バブス”・ワイドナー(ジェイミー・ベル)。10代の時に親に見捨てられ、白人至上主義者グループを主宰するクレーガー(ビル・キャンプ)とシャリーン(ヴェラ・ファーミガ)に実の子のように育てられ、今やグループの幹部だ。反ファシスト抗議を行う人々に先頭きって襲い掛かる筋金入りの差別主義者のブラインアンだが、ある日、3人の幼い娘を育てるシングルマザーのジュリー(ダニエル・マクドナルド)と出会い、自分の生き方は間違っているのではないかと気づく。グループを抜け、ジュリーと暮らし始めるが、彼の裏切りを許さない元仲間たちから度々襲われる。そんな彼に、反ヘイト団体を運営する黒人であるダリル・L・ジェンキンス(マイク・コルター)が手を差しのべる。ある裕福な女性が、彼のタトゥー除去に資金を提供するというのだ。ブライオンは、計25回、16カ月に及ぶ除去手術に挑む・・・
イスラエル出身、ユダヤ人のガイ・ナティーヴ監督。アメリカにいる婚約者のもとに移住予定で、アメリカで映画を作りたいとテーマを探していたある日、新聞を読んでいて、過去の自分と決別するために過酷なタトゥー除去手術を終えたブライオン・ワイドナーの写真に目をとめます。ホロコースト生存者の孫である監督は、筋金入りの人種差別主義者だったブライアンの転向の過程をぜひ映画にしたいと、ブライアン本人を探し出します。彼に会い許可を得て、手助けしてもらいながら脚本にとりかかります。2012年のことでした。資金がなかなか集まらず、製作資金を募る目的で貯金をはたいて短編『SKIN』(2018)を製作。これが大きな反響を呼び、長編『SKIN/スキン』の製作にこぎつけました。
アメリカでは、ジョージ・フロイドさんが警官に殺害されたことを契機に、今また白人至上主義への抵抗運動が激しくなっています。世界をみても、多様な人々の共生をはかるどころか、人種差別や移民排斥がはびこり、国家権力者までもがそれを牽引しているケースも見受けられます。
ブライアンが顔中のタトゥーを消してまで主義主張を変える努力をしたことに、少しでも感じ入ってほしいものだと思いますが、差別主義者が、そも、この映画を観てくれなければ! (咲)
2003年に米国で発足したレイシスト集団「ヴィンランダーズ」の共同創設者ブライオン・ワイドナーが辿った実話の映画化です。
親に捨てられ、白人至上主義者グループを主宰する夫婦に拾われ、実の子のように育てられれば筋金入りの差別主義者になるのも仕方ないといえるでしょう。それが愛する人と出会い、これまでの悪行を悔いて新たな人生を築こうと決意する。生半可な覚悟でできることではありません。抜けることを許さない組織から執拗な脅迫、暴力が容赦なく向けられていきます。それに負けることなく、過去の自分と決別するために計25回、16カ月に及ぶ過酷なタトゥー除去手術に挑んだブライオン・ワイドナー。愛がここまで強く人を変えるものなのかと驚きました。
主人公のブライオン・ワイドナーを演じたのはジェイミー・ベル。『ロケットマン』(2019年)でエルトン・ジョンの親友で作詞を担当していたバーニー・トーピンを演じていましたが、今作ではすっきりスキンヘッドに全身タトゥーで別人のよう。組織からの嫌がらせだけでなく、世間からの差別に苦悩する主人公を見事に演じ切りました。
資金集めのために作られた短編『SKIN』(2018)もご覧になる機会があればぜひ。こちらの作品もかなり秀逸です。(堀)
2019年/アメリカ/カラー/DCP/118分
© 2019 SF Film, LLC. All Rights Reserved.
配給:コピアポア・フィルム
公式サイト:http://skin-2020.com/
★2020年6月26日(金)新宿シネマカリテ、ホワイト シネクイント、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開