2020年06月28日

SKIN/スキン   原題:SKIN

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監督・脚本:ガイ・ナティーヴ
製作:ジェイミー・レイ・ニューマン、ガイ・ナティーヴ
撮影:アルノー・ポーティエ
編集:リー・パーシー、マイケル・テイラー
音楽:ダン・ローマー
出演:ジェイミー・ベル、ダニエル・マクドナルド、ダニエル・ヘンシュオール、ビル・キャンプ、ルイーザ・クラウゼ、カイリー・ロジャーズ、コルビ・ガネット、マイク・コルター、ヴェラ・ファーミガ

スキンヘッドにタトゥーまみれのブライオン・“バブス”・ワイドナー(ジェイミー・ベル)。10代の時に親に見捨てられ、白人至上主義者グループを主宰するクレーガー(ビル・キャンプ)とシャリーン(ヴェラ・ファーミガ)に実の子のように育てられ、今やグループの幹部だ。反ファシスト抗議を行う人々に先頭きって襲い掛かる筋金入りの差別主義者のブラインアンだが、ある日、3人の幼い娘を育てるシングルマザーのジュリー(ダニエル・マクドナルド)と出会い、自分の生き方は間違っているのではないかと気づく。グループを抜け、ジュリーと暮らし始めるが、彼の裏切りを許さない元仲間たちから度々襲われる。そんな彼に、反ヘイト団体を運営する黒人であるダリル・L・ジェンキンス(マイク・コルター)が手を差しのべる。ある裕福な女性が、彼のタトゥー除去に資金を提供するというのだ。ブライオンは、計25回、16カ月に及ぶ除去手術に挑む・・・

イスラエル出身、ユダヤ人のガイ・ナティーヴ監督。アメリカにいる婚約者のもとに移住予定で、アメリカで映画を作りたいとテーマを探していたある日、新聞を読んでいて、過去の自分と決別するために過酷なタトゥー除去手術を終えたブライオン・ワイドナーの写真に目をとめます。ホロコースト生存者の孫である監督は、筋金入りの人種差別主義者だったブライアンの転向の過程をぜひ映画にしたいと、ブライアン本人を探し出します。彼に会い許可を得て、手助けしてもらいながら脚本にとりかかります。2012年のことでした。資金がなかなか集まらず、製作資金を募る目的で貯金をはたいて短編『SKIN』(2018)を製作。これが大きな反響を呼び、長編『SKIN/スキン』の製作にこぎつけました。

アメリカでは、ジョージ・フロイドさんが警官に殺害されたことを契機に、今また白人至上主義への抵抗運動が激しくなっています。世界をみても、多様な人々の共生をはかるどころか、人種差別や移民排斥がはびこり、国家権力者までもがそれを牽引しているケースも見受けられます。
ブライアンが顔中のタトゥーを消してまで主義主張を変える努力をしたことに、少しでも感じ入ってほしいものだと思いますが、差別主義者が、そも、この映画を観てくれなければ! (咲)


2003年に米国で発足したレイシスト集団「ヴィンランダーズ」の共同創設者ブライオン・ワイドナーが辿った実話の映画化です。
親に捨てられ、白人至上主義者グループを主宰する夫婦に拾われ、実の子のように育てられれば筋金入りの差別主義者になるのも仕方ないといえるでしょう。それが愛する人と出会い、これまでの悪行を悔いて新たな人生を築こうと決意する。生半可な覚悟でできることではありません。抜けることを許さない組織から執拗な脅迫、暴力が容赦なく向けられていきます。それに負けることなく、過去の自分と決別するために計25回、16カ月に及ぶ過酷なタトゥー除去手術に挑んだブライオン・ワイドナー。愛がここまで強く人を変えるものなのかと驚きました。
主人公のブライオン・ワイドナーを演じたのはジェイミー・ベル。『ロケットマン』(2019年)でエルトン・ジョンの親友で作詞を担当していたバーニー・トーピンを演じていましたが、今作ではすっきりスキンヘッドに全身タトゥーで別人のよう。組織からの嫌がらせだけでなく、世間からの差別に苦悩する主人公を見事に演じ切りました。
資金集めのために作られた短編『SKIN』(2018)もご覧になる機会があればぜひ。こちらの作品もかなり秀逸です。(堀)


2019年/アメリカ/カラー/DCP/118分
© 2019 SF Film, LLC. All Rights Reserved.
配給:コピアポア・フィルム
公式サイト:http://skin-2020.com/
★2020年6月26日(金)新宿シネマカリテ、ホワイト シネクイント、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開




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2020年06月27日

一度も撃ってません

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監督:阪本順治
脚本:丸山昇一
出演: 石橋蓮司、大楠道代、岸部一徳、桃井かおり
佐藤浩市、豊川悦司、江口洋介、妻夫木聡、新崎人生、井上真央
柄本明、寛 一 郎、前田亜季、渋川清彦、小野武彦、柄本佑、濱田マリ、堀部圭亮、原田麻由

市川進(石橋蓮司)、74歳。トレンチコートにブラックハットといういで立ちで、伝説のヒットマンと呼ばれる男。今日も依頼を受けた殺しの現場に現れる。
だが、実は一度も銃を撃ったことがない。本業はハードボイルド小説家。リアリティにこだわるあまり、密かに殺しの依頼を受けては、本物のヒットマン今西に実行を頼み、市川はその現場を取材し執筆に活かしているのだ。涙ぐましい努力にもかかわらず、小説は一向に売れず、妻・弥生(大楠道代)の年金が頼り。担当編集者の児玉(佐藤浩市)も愛想をつかしている。そんな市川の楽しみは、夜な夜なバー「Y」で、旧友で元検事の弁護士・石田(岸部一徳)や元ミュージカルの歌姫・ひかる(桃井かおり)と酒を酌み交わすこと。のうのうと暮らしていた市川だが、敵のヒットマン(豊川悦司)に命を狙われる羽目に。おまけに妻からは浮気を疑われてしまう・・・

豪華な出演陣が勢揃いして完成報告会見が行われたのは、3月9日のことでした。
本来は、朝日ホールでの完成披露試写会でお客様を前に舞台挨拶が行われる予定だったのですが、新型コロナウィルスの感染予防で、試写会は中止。マスコミ向けの記者会見となりました。

受付で熱を測り、マスクをしていない人にはマスクを渡すという感染予防は、今となっては当たり前ですが、当時はここまできたか・・・という感じでした。

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登壇者:石橋蓮司、大楠道代、岸部一徳、桃井かおり、佐藤浩市、江口洋介、妻夫木聡、新崎人生、井上真央、渋川清彦、前田亜季、小野武彦、阪本順治監督

大勢の登壇者で、2段になっての会見となりました。

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主演の石橋蓮司さん、「これほどの豪華キャストが出演を受けてくれたのは、阪本監督が僕の遺作になると言って皆さんを説得したかららしい」と、まず笑わせてくれました。

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阪本順治監督、そんなことはないと否定しつつ、「蓮司さんは、常日ごろ、全身のアルコール消毒もされていますので、ご安心を」と、マスクをした記者席を意識しての言葉で応酬しました。

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登壇した方たち一人一人のお話からは、俳優仲間のオフの時の様子が垣間見れるようでした。それにしても、主役にもなれそうな大物俳優たちを、よくもこれだけ揃えたものです。

実は、記者会見に臨んだときには、まだ映画を観てなくて、これだけのメンバーの日程を合わせるのは、さぞかし大変だったのでは?と思っていました。

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その謎を明かしてくれたのが、妻夫木聡さん。
「お話をいただき、このメンバーの中で演じられるのがすごく嬉しかったのですが、皆さんのスケジュール調整が大変なのではと思いました。それが、2週間で撮ると聞いて、さらにびっくりしたら、僕の撮影は2~3日でした。蓮司さんは寝る暇もないスケジュールだったようですけど」
後に映画を観てみたら、なるほど! 妻夫木聡さんの出番は、ほんの少し。
メインの方たち以外は、うっかり居眠りしたら見過ごしてしまいそうですので、どうぞ気をつけて~!

石橋蓮司さんのいでたちもカッコよくて、渋いハードボイルドかと思いきや、皆それぞれどこか抜けたところのある人物で、なごませてくれました。(咲)



◆新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、当初の4月24日より公開を延期されていましたが、ようやく7月3日(金)より公開と決定し、それを受けて阪本順治監督よりのコメントが宣伝ご担当者様から届きました。

阪本順治監督よりコメント
「やっとの公開です。撮影はおととしです。いきすぎたグローバリズムの時代に、昭和のたたずまいをよしとして撮りあげた作品です。
この状況下での上映となり、まったく意図せぬ感想がうまれそうです。
懐かしさより、いつかこんなありさまが、ふざけたような遊び心が、あらためて懇求されるような、新しい日常のその次の日常がこんな風景となってくれればいいなあと、おこがましくも思ってしまいます。
懐古的ではなく未来図として。

メジャー系も、最も苦境に喘ぐ独立系の映画館も、やれるかぎりの防疫策をとり、みなさんをお待ちしています。
映画界の踏ん張りは続きますが、少しずつ映画は銀幕に戻ってきます。
アートで心の栄養を!」



2020年/日本/100分/G
製作:木下グループ
配給:キノフィルムズ
©︎2019「一度も撃ってません」フィルムパートナーズ
公式サイト:http://eiga-ichidomo.com/
★2020年7月3日(金)TOHOシネマズ 日比谷、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
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イップ・マン 完結(原題:葉問4 Ip Man4)

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監督:ウィルソン・イップ
脚本:エドモンド・ウォン
撮影:チェン・チュウキョン
音楽:川井憲次
アクション監督:ユエン・ウーピン
出演:ドニー・イェン(イップ・マン)、ワン・ゾンホア(ウー・ユエ)、スコット・アドキンス(バートン・ゲッデズ)、チャン・クォックワン(ブルース・リー)、ヴァネス・ウー(ハートマン・ウー)、クリス・コリンズ(コリン・フレイター)、ケント・チェン(ポー刑事)

1964年、イップ・マンはアメリカ在住の弟子ブルース・リーの招待を受ける。初めは固辞していたが、思いがけず病気の宣告を受けたことから、単身サンフランシスコに渡った。ブルース・リーと再会した後、中華総会のワンや武術家たちと出会い、異国で移民として生きる同胞の厳しい現実を知る。ワンは太極拳の達人でもあったが、中国武術を敵視する海兵隊軍曹バートンに度重なる嫌がらせを受けていた。バートンとの戦いで敗北し、ワンは重傷を負ってしまう。イップ・マンは香港に残してきた息子に、父親としての思いを伝え、病を隠して正義と誇りを守るために最後の戦いへと向かう。

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ドニー・イェンの代表作となった伝記シリーズ第4作にして最終作です。2008年『イップ・マン 序章』2010年『イップ・マン 葉問』2015年『イップ・マン 継承』と続編を重ねて、アクションもドラマもさらに充実していきます。戦争で日本軍に豪邸を接収され財産もなくし、生活が困窮する中での夫婦愛に泣かされました。アクションなしのシーンでさえ、イップ・マンの佇まいが美しいです。
ドニー・イェンは11才の時に家族で香港からボストンへ移住。父は香港の新聞の編集者、武術家の母親は、移民でしかも女性であることで理不尽な扱いを受けながらも、積極的に外国人を生徒に迎えて武術を広めようとした方。作品中の華人たちの描写にドニーの想いも入っていたのではないでしょうか。イップ・マンはブルース・リーの師匠というだけではなく、シリーズで描いてきたように好んで戦わない、控え目な人です。ドニー・イェンは詠春拳の達人イップ・マン像をしっかりと完成させ、代表作としました。(白)


物腰が柔らかく、礼節をわきまえたイップ・マンですが、これぞという対戦の時には、鋭い手さばきで打ち負かします。ドニー・イェンが体現したイップ・マンは実に優雅で、惚れ惚れします。
前作『イップ・マン 継承』では、病に倒れた奥様との最後の日々が描かれていて、涙なしには観られませんでした。『イップ・マン 完結』では、イップ・マン自身が病に冒され、一人残される息子の行く末を案じる親心が描かれています。これまた涙です。
当初、5月8日(金)公開予定で、5月にはムービープラスで、これまでの3作が上映されました。スタッフ日記に感想を書いています。こちら!
イップ・マンの人生を、どうぞ振り返ってみてください。(咲)


子育てって難しい。こんなことをこの作品で書くとは思いませんでした。
がんで余命がわずかだと知ったイップ・マンの考えたことはケンカで高校を退学になった息子のアメリカ留学。病を隠して渡米し、入学には地元の名士の口添えが必要と知れば伝手をたどる。詠春拳葉問派の宗師でブルース・リーの師匠でもあるほどの人物がこんなに俗っぽいことをするなんて! 一方、息子本人はアメリカに行く気はなく、むしろ父の教えを受けて、詠春拳葉問派を学びたいと思っています。親の希望と子の思いがすれ違う。子育てって難しいですね。イップ・マンと息子が選んだ進路はいかに!(堀)


2019年/香港/カラー/シネスコ/105分
配給:ギャガ・プラス
(C)Mandarin Motion Pictures Limited, All rights reserved.
https://gaga.ne.jp/ipman4/
★2020年7月3日(金)より新宿武蔵野館ほかロードショー
posted by shiraishi at 15:31| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

のぼる小寺さん

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監督:古厩智之(ふるまやともゆき)
原作:珈琲
脚本:吉田玲子
撮影:下垣外純
音楽:上田禎
主題歌:CHAI
出演:工藤遥(小寺)、伊藤健太郎(近藤)、鈴木仁(四条)、吉川愛(倉田梨乃)、小野花梨(田崎ありか)、両角周(益子)

クライミング部の小寺さんは、周囲の思惑など気にしないで、大好きなことだけ考えている。クラスでは「不思議ちゃん」位置だ。天然記念物なみに素直でまっすぐな小寺さんは「目の前にある壁を登ること」が目標。進路希望も正直に書いて、先生や部活の先輩たちを絶句させる。
これまで何にも熱くならずクールな男でいた近藤は、ひたすら登る小寺さんから目が離せなくなっていた。適当にやっていた卓球に真面目に取り組み、ありかと梨乃はあらためて自分の進路を考え、臆病だった四条も小寺さんを見て、少しずつ変わっていく。

ひたすら上を見てのぼり続ける小寺さん、その姿を見ている人たちはいろんなものを感じ取って、知らないうちに背中を押されています。まだ何者でもない「僕たち」が自分の道を見つけてちょっとだけ進んでいくストーリー。
部活に学校祭、友達との会話、好きな人への告白と「高校生活あるある」に胸がキュンとなります。見つめるだけだった近藤が、勇気を振り絞って小寺さんに話しかけるシーンにはこちらも緊張してしまいました。勘違いして喜ぶところも可愛いです。自分の好きなことだけ見つめていた小寺さんは、周囲に関心が薄く特に欲求もありません。たぶん初めての近藤からの告白に、小寺さんもちょっと心が動きます。二人が並んだシーンに思わずほっこりしました。
小寺さん役の工藤遥さんは、役が決まってからクライミングのトレーニングを重ね、“小寺さんのボルダリング”を見せてくれました。
(白)

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2019年/日本/カラー/シネスコ/100分
配給:ビターズ・エンド
(C)2020「のぼる小寺さん」製作委員会 (C)珈琲/講談社
http://koterasan.jp/
★2020年7月3日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 14:40| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

東京の恋人

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監督:下社敦郎
脚本:下社敦郎、赤松直明
音楽:東京60WATTS  主題歌「外は寒いから」
出演:森岡龍(大貫立夫)、川上奈々美(満里奈)、吉岡睦雄(義兄)、階戸瑠李(妻)、木村知貴(駒沢先輩)、西山真来

学生時代の立夫は映画監督志望で脚本がコンクールで入賞したこともあった。しかし夢を諦めて東京を出て群馬でサラリーマンになった。すでに結婚してもうすぐ子どもが生まれる。早朝にかかってきた電話はかつての恋人の満里奈からだった。写真を撮ってほしいという。立夫は数年ぶりに上京して先輩の家に泊まり、翌日は満里奈と神奈川県沖へ向かう。

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立夫が上京して最初に会ったのは、一度は脚光を浴びながら挫折した駒沢。自虐しつつ昼から酒を飲み、女房に養われています。酔った姿が痛々しいですが、もしかしたら駒沢はもう一人の立夫だったかもしれません。
川上奈々美さん演じる満里奈の学生時代、主婦になった現在も、とっても可愛くてこれは立夫ならずともコロッといきますね。不倫か…とつぶやく立夫の森岡龍さんも清潔感があって、アダルトシーンもいやらしくないんです。昔の恋人ならあっさり浮気しちゃうんだなぁと呆れますが、これは青春の尻尾との決別なんでしょうね。
この大人のラブストーリーを女性が描いたなら、昔の恋人を呼び出すことはないと思うのは私だけではないはず。あ、そうなると話が進みません(汗)。作中やエンドロールで流れる東京60WATTS の主題歌がいつまでもグルグル回りました。
「MOOSIC LAB2019」で川上奈々美さんが主演女優賞を受賞。(白)


(白)さんは「この大人のラブストーリーを女性が描いたなら、昔の恋人を呼び出すことはないと思う」と述べていますが、人によって感じ方が違いますね。私はこれこそ女性が書いた青春との決別ラブストーリーだと感じました。子どもが生まれてしまったら、もう自由に動くことはできません。その前に、あの頃愛したあの人ともう一度会って、青春の思い出にしっかりけじめをつけておきたい。そんな思いがひしひしと伝わってきました。
それに対して、妻に出張だと嘘をつき、こっそり結婚指輪を外し、やる気満々の立夫。男ってそんなものなのでしょうか。傍から見ると、こんな男に…と思うけれど、演じる森岡龍はカッコいいですし、満里奈にとっては青春の煌めきの象徴なのでしょうね。(堀)


2019年/日本/カラー/シネスコ/81分
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
https://tokyo-modernlovers.com/
★2020年6月27日(土)ユーロスペース他ロードショー
posted by shiraishi at 13:13| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

悪の偶像(原題:IDOL)

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監督:イ・スジン
脚本:イ・スジン
撮影:ソン・ウォンホ
出演:ハン・ソッキュ(ク・ミョンフェ)、ソル・ギョング(ユ・ジュンシク)、チョン・ウヒ(リョナ)

市議会議員のミョンフェは来る知事選での有力候補。順風満帆な政治家人生を送ってきたかに見えたが、ある夜息子のヨハンが飲酒の上交通事故を起こしてしまったことで一変する。ヨハンは血まみれの被害者を車に乗せて帰宅していた。ミョンフェは自らのクリーンなイメージをできるだけ守るため、遺体を現場に戻したうえ、ひき逃げ事故を起こした息子を自首させる。
被害者はユ・ジュンシクの一人息子プナンだった。プナンは新妻のリョナと新婚旅行中で、リョナは身重のまま行方不明になっていた。ジュンシクは息子の忘れ形見になる孫と嫁を、ミョンフェにとっては、事故を目撃しているはずのリョナを必死に探し続ける。

加害者の父・エリート政治家ミョンフェをハン・ソッキュ、被害者の父・工具店を営み男手ひとつで息子を育てたジュンシクをソル・ギョング。役柄にぴったりのキャスティングではありますが、たとえ役柄を取り換えたとしても、この二人なら違和感なく演じた気がします。
初めにミョンフェの息子が事故を起こしたと知ったときに、自分の保身が一番にあったのが間違い、その後の悲劇のもとでした。どんなに取り繕うとも、あったことを消すことはできません。それでもあがいてしまうのが人間の業なのでしょう。父親二人の苦悩に一ひねり加えられたのがリョナの存在です。イ・スジン監督の前作『ハン・ゴンジュ 17歳の涙』(2013)はリョナ役のチョン・ウヒが主演。未見なので観てみたいです。(白)


ハン・ソッキュとソル・ギョングが演じる2人の父親がこの作品の柱ですが、チョン・ウヒが演じるリョナも強烈な印象を与えます。スジン監督は新人俳優をキャスティングしたいと思っていたそうですが、リョナを思い浮かべるたびにチョン・ウヒの顔が鮮明になり、残酷なキャラクターを演じられる心身ともにタフで健康な俳優はチョン・ウヒしかいないと確信したそうです。
脚本も書いた監督に残酷なキャラクターと言わしめるリョナ。猟奇的な側面もあり、サスペンスタッチの本作にホラーっぽさを銜えています。チョン・ウヒは円熟味あふれるハン・ソッキュとソル・ギョングの演技にも勝るとも劣らぬ強さを放っていました。(堀)


2019年/韓国/カラー/シネスコ/144分
配給:アルバトロス・フィルム
(C)2019 CJ CGV Co., Ltd., VILL LEE FILM, POLLUX BARUNSON INC PRODUCTION All Rights Reserved

★2020年6月26日(金)よりシネマート新宿ほかロードショー
posted by shiraishi at 12:56| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

さらばわが愛、北朝鮮   原題:굿바이 마이 러브 NK/Goodbye My Love, North Korea

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監督:キム・ソヨン
撮影:カン・ジンソク シン・イムホ
編集:キム・ソヨン カン・ジンソク
録音:チョン・ジヨン 
美術:キム・テフン
製作:カン・ジンソク

1952年、北朝鮮からスターリンの時代のモスクワ国立映画大学に留学した8人。
1953年にスターリンが死去。北朝鮮では、スターリン批判から派生した内紛「宗派事件」が起こり、ソ連と北朝鮮の関係が悪化。留学生にも帰国命令が出されるが、8人は金日成を批判し、亡命を決意する。1958年のことである。ソ連はフルシチョフの時代となり、「雪解け」で文化の自由化が始まった時期である。

本作は、キム・ソヨン監督の《女性史3部作》に続く《亡命三部作》の完結編。
(キム・ソヨン監督のプロフィールについては是非公式サイトをご覧ください)
彼女が製作に取りかかった時の生存者であるカザフスタンで映画監督として生きたキム・ジョンフンとチェ・クッキンへの直接取材、そして、作家になったハン・デヨンのロシア人の妻などへのインタビューを通じて、亡命後の8人の「その後」を追っている。

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ソ連に亡命後、中央アジア朝鮮民族のための“高麗劇場”の作家となったハン・デヨン(後に改名してハン・ジン)。
「ムクドリ」「肖像画」などの小説で高麗人二世の文学をリードしました。

亡命した8人は、自分たちのことを「8真」と称していましたが、ソ連の意向で8人は、モスクワ近郊、カザフスタン、イルクーツク、ウクライナに分散移住させられました。
学生寮を背景に撮った集合写真(上記チラシの画像)に、その後の運命を思うと涙が出ます。
映画監督、撮影監督、作家として名を残した人もいますが、仕事や住まいを探すのに苦労し、貧しいまま亡くなった人もいます。
何より、亡命したということは、故郷に戻れないということ。
肉親とは生き別れ、お墓参りにもいけません。

試写に伺ったときに、宣伝の担当者の方から、「タイトルにドキッとするでしょう?」と言われました。私がレスリー・チャンのファンだとお見通しだったのでしょうか?! もちろん、この邦題は『さらば、わが愛/覇王別姫』(1993)をもじったわけではなく、原題を直訳したもの。『さらばわが愛、北朝鮮』は、まさに故郷である北朝鮮への決別の言葉です。

映画の冒頭、
何事も始まりも終わりも大事。
生まれた地は故郷と呼ぶが、骨を埋める地は何というのだろう…
と、掲げられます。
歴史に翻弄され、生まれ故郷を二度と訪れることのできなかった人たちにとって、骨を埋めた地が、幸せな思い出の残るもう一つの故郷であってほしいと願うばかりです。(咲)


北朝鮮からスターリンの時代のモスクワ国立映画大学に留学した8人は北朝鮮に帰れば、エリートの道が約束されていたはず。それを捨ててソ連に亡命し、最後まで北朝鮮に帰ることはかないませんでした。
作品冒頭に「生まれた地は故郷と呼ぶが、骨を埋める地は何というのだろう」という言葉が出てきます。この言葉が頭から離れなくなりました。そして、それ以上に心に刺さったのが韓国公開当時、唯一の生き残りだったキム・ジョンフン氏が語った「生きている間に言葉は3回変わったね。日本語から朝鮮語、ロシア語、カザフスタン語。たまにこういう質問を受けるよ。『あなたは何語で考えるの?』」という言葉。日本人として責任の一端を感じずにはいられません。
ハン・デヨン氏は亡くなっていたものの、ロシア人の奥さまがご存命で、夫が描いた仲間の肖像画をバックに夫との出会いなどの思い出を語ってくれました。
政治に翻弄され、異国の地で生きるしかなかった人の思いを埋もれさせないというキム・ソヨン監督の強い意志を感じるドキュメンタリー作品です。(堀)


映画のことを学ぶため、北朝鮮からモスクワの映画大学に留学した8人の若者たち。母国で金日成の個人崇拝がはげしくなり、それに反発して北朝鮮に帰ることをあきらめソ連に亡命した。今回、この映画がなければ、そういう人たちがいたということを知るよしもなかった。世の中数奇な運命をたどった人というのは数々あれど、そういう事実は何らかの形で残さなければ時代の流れとともに忘れられていくわけだけど、韓国人であるキム・ソヨン監督はどのようにして彼らのことを知ったのだろうか。いろいろな人生の掘り起こし。映画はそれを伝えてくれるのに最高の手段だと思う(暁)。

2017年/韓国/カラー/デジタル/80分
©822Films+Cinema Dal
日本版字幕:小川昌代
配給:パンドラ
公式サイト:http://www.pan-dora.co.jp/goodbymylovenk/
★2020年6月27日(土)新宿K's cinemaにて公開




posted by sakiko at 09:22| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月26日

ランボー ラスト・ブラッド(原題:Rambo: Last Blood) 

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監督:エイドリアン・グランバーグ
出演:シルベスター・スタローン、パス・ベガ、セルヒオ・ペリス=メンチェータ、アドリアナ・バラーサ、イヴェット・モンレアル、オスカル・ハエナダ

ジョン・ランボー(シルベスター・スタローン)は故郷アメリカへ帰り、父親の牧場を引き継いで営んでいた。そして古い友人のマリア(アドリアナ・バラーサ)と彼女の孫娘ガブリエラ(イヴェット・モンレアル)と養子縁組をし、一緒に暮らしていた。
ある日、ガブリエラが自分と母を捨てた父に会いにメキシコへ行ったまま戻らなくなり、ランボーはメキシコへと向かう。ガブリエラは友人に騙され、裏社会を仕切る人身売買カルテルのボス、ウーゴ(セルヒオ・ペリス=メンチェータ)とビクトル(オスカル・ハエナダ)のマルティネス兄弟に売られたのだ。ランボーは客のふりをして潜入し、鉄の意志でガブリエラを奪還する。そしてランボーの壮絶な復讐劇が始まった。

1982年に第1作『ランボー』が公開されてから38年。戦地での苛烈な経験で精神を病んだベトナム帰還兵が田舎町で迫害を受け、自らの身を守るために暴走する。社会復帰に苦しみ、やり場のない怒りと悲しみを抱えたランボーはシルベスター・スタローンのもう一つの代名詞であるロッキーとは正反対なキャラクターでした。
今作では家族を得て、穏やかな暮らしをしているランボーを映し出し、やっとPTSDを乗り越えたかと思いきや、自宅の下に巨大な地下壕を作り上げ、夜はそこで過ごしている。PTSDの根深さを改めて突き付けます。
ランボーは今作を含めて5作品ありますが、2作目の『ランボー/怒りの脱出』(1985年)ではベトナムで捕虜にされている米軍兵を、3作目の『ランボー3/怒りのアフガン』(1988年)ではアフガンで捕まった恩人トラウトマン大佐を、4作目の『ランボー 最後の戦場』(2008年)ではミャンマー軍事政権の暴虐によって囚われたボランティア支援団体を救出するもので、2作目以降はどれも引き受けた仕事。今作は大切なものを守るため、自らの本能ともいえる意志で戦いに挑みます。内面的には1作目に近いのではないでしょうか。
とはいえランボーもすでに70歳を超え、体力的な衰えは否めません。見どころは地下壕に作り上げた罠の数々。ランボーの奮闘を最後までしっかり見届けてください。(堀)


2019年/アメリカ・スペイン・ブルガリア合作/シネスコ/カラー/5.1chデジタル/101分
配給:ギャガ
© 2019 RAMBO V PRODUCTIONS, INC.
公式サイト:https://gaga.ne.jp/rambo/
★6月26日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー!

posted by ほりきみき at 01:32| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ソニック・ザ・ムービー(原題:Sonic the Hedgehog)

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監督:ジェフ・ファウラー
出演:ベン・シュワルツ、ジェームズ・マースデン、ジム・キャリー、ティカ・サンプター 
日本語吹替版:中川大志、山寺宏一、中村悠一、井上麻里奈

宇宙の果てにある平和な“島”でのびのびと育ったソニック。音速のスピードで走る能力を持つため絶えず狙われ、とうとう島にはいられなくなり、たった一人で地球に逃げてきました。それから10年、ソニック(ベン・シュワルツ)は誰にも見つからず安全に、でもさみしくひとりぼっちで生活していました。そんなソニックの存在を偶然にも探り当てた悪の天才科学者ドクター・ロボトニック(ジム・キャリー)の魔の手がソニックに迫ります。ドクター・ロボトニックはそのパワーを利用して、世界征服計画を遂行しようとしたのです。窮地に陥ったソニックは、小さな街の保安官トム(ジェームズ・マースデン)に助けを求めました。

世界的人気を誇るセガのビデオゲームシリーズがハリウッドで実写映画化されました。監督のジェフ・ファウラーは13歳のときからゲームをやってきたとのこと。ソニックがトレードマークの赤いスニーカーを履くきっかけをさらりと挟み込むなど、映画全篇にわたってソニック愛が感じられます。それはゲームを知らない人を排除するのではなく、むしろWelcomeな雰囲気。まずはソニックのスピード感がどんなものなのかを見せ、驚かせます。そのソニックが別れを経験し、寂しさを乗り越え、新たな出会いがあり、友情を育んでいく。まさに王道の少年成長譚に仕上げられています。
さらにそのストーリーを彩る悪役ドクター・ロボトニックにジム・キャリーを配しましたが、これが大正解! 顔芸や奇妙なダンスを繰り広げ、見ていて笑ってしまって憎めません。主人公のソニックよりも印象に残るかも。
続編がありそうなラストに、ぜひ次はクリスマスの時期にと思ってしまいましたが、その理由はぜひドクター・ロボトニックに聞いてください。(堀)


2020年/100分/G/アメリカ
配給:東和ピクチャーズ
©2020 PARAMOUNT PICTURES AND SEGA OF AMERICA, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:https://sonic-movie.jp/
★2020年6月26日(金)公開!
posted by ほりきみき at 01:30| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月25日

ドクター・ドリトル(原題:DOLITTLE)

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監督 スティーヴン・ギャガン
出演:ロバート・ダウニーJr.、アントニオ・バンデラス、マイケル・シーン、ジム・ブロードベントほか
動物の声の出演:エマ・トンプソン、ラミ・マレック、トム・ホランド、オクタヴィア・スペンサー、ジョン・シナ、マリオン・コティヤール、セレーナ・ゴメス、レイフ・ファインズほか
日本語吹替え版出演:藤原啓治、石田ゆり子、八嶋智人、せいや、粗品、小野大輔、朴璐美、中村悠一、斉藤壮馬、沢城みゆき、花澤香菜、黒田崇矢、茅野愛衣、杉田智和、井上和彦、諏訪部順一、池田秀一、森功至、大塚芳忠、大塚明夫、増田俊樹、武内駿輔、沢城千春

動物と話せるドリトル先生は、名医だが変わり者。愛する妻リリー(カシア・スムートニアック)を亡くして以来、世間から遠ざかり、様々な動物たちとひっそりと暮らしていました。
あるとき、ヴィクトリア女王(ジェシー・バックリー)が重い病に倒れ、ドリトル先生は宮殿に呼び出されます。ドリトル先生が動物たちの助けを借りて診断した結果、女王は毒を盛られたと判明します。唯一の解毒剤は伝説の島にある“エデンの樹”の果実でした。
ドリトル先生は最も信頼する親友で頑固なオウム、臆病なゴリラ、とぼけたアヒル、陽気なシロクマ、皮肉屋のダチョウなど個性豊かな動物たちと、助手を志願したスタビンズ(ハリー・コレット)とともに伝説の島へと冒険の旅に出発しました。

小鳥が服を銜えて飛んできて、犬が腰ひもを結わえて、あひるが靴を履かせる。そして動物たちが総出で仕事をサポートし、手術のときにはあひるが器具出しを担当する。動物と話ができるドリトル先生の世界観をファンタジックに具現化。さらに、その動物たちと大海原に乗り出して、ハラハラドキドキの大冒険を繰り広げる。子どもだけでなく、大人もワクワクしてくるでしょう。
この作品の見どころは壮大なアドベンチャーですが、ドリトル先生の心の再生も見逃せません。愛する妻リリーを喪い、生きる気力を無くしたドリトル先生がいかに立ち直っていくか。その過程で妻の父も登場。彼も娘を喪った悲しみから立ち直っておらず、ドリトル先生に怒りをぶつけます。しかし互いの悲しみの根本は同じ。リリーは2人がいがみ合うことを望んでいないはず。それに気づいた妻の父の申し出がドリトル先生を助けます。生きていれば、いつかは大切な人との別れはあります。それを受け入れ、その人がいたからこその出会いを大切にし、前向きに生きていきたいものです。

動物たちに声をあてた俳優たちが豪華で驚きます。ドリトル先生が最も信頼するオウム・ポリネシアの声を担うのはエマ・トンプソン。臆病なゴリラ・チーチーにラミ・マレック、愛情あふれるけれどうっかりしているアヒル・ダブダブにオクタビア・スペンサー、モットーが「革命万歳」のキツネ・チュチュにコティヤール、おしゃべり好きなキリン・ベッツィにセレーナ・ゴメス。ドリトル先生を憎むトラのバリーにレイフ・ファインズ。「アベンジャーズ」シリーズでもダウニー・Jr.と共演したトム・ホランドがメガネをかけた忠実な犬・ジップ役を務めています。
日本語版声優もオリジナル版に負けないくらい豪華です。まず、ドリトル先生に藤原啓治。アニメ「クレヨンしんちゃん」の野原ひろし役などで知られ、「アイアンマン」以降ほとんどの作品でダウニー・Jr.の声を担当してきました。惜しくも4月12日に亡くなり、この作品が遺作となりました。さらに上記の日本語吹替え版出演に書いてあるような人気絶頂の声優からレジェンドともいえる存在の声優まで、実力と人気を兼ね備えた日本を代表する声優たちが声をあてています。(堀)


2020年/101分/G/アメリカ
配給:東宝東和
© 2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.
公式サイト:https://dr-dolittle.jp/
★2020年6月19日(金)全国ロードショー
posted by ほりきみき at 01:28| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アングスト 不安 ( 原題:Angst 英題:FEAR )

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監督:ジェラルド・カーグル
撮影・編集:ズビグニェフ・リプチンスキ
音楽:クラウス・シュルツ

実在の殺人鬼、ヴェルナー・クニーセクが起こした一家惨殺事件を映画化した衝撃作。1980年にオーストリアで実際にあった事件を基に、刑務所出所後に凶行に及んだ主人公の行動に肉薄する。『アンダーワールド』などのアーウィン・レダーが殺人鬼にふんし、ジェラルド・カーグル監督がメガホンを取る。1983年公開当時、あまりにも衝撃的な内容のため本国では1週間で上映打ち切りになった。

このような大傑作が製作から37年の時を経て日本初公開されたことは全くもって喜ばしい。余程の過激内容かと思いきや、終始上品な話法に徹し、撮影、照明、劇版ともスタッフワークの見事さに唸り、主人公の独白によって紡がれるアイデアに眼を見張らされた。
各国で上映禁止、ビデオ発売もNG、米国では“XXX指定”となり配給会社が逃亡…といった問題作の烙印が押されたのは、恐らくキリスト教的倫理観に照らしての”禁忌”場面が含まれているせいではないだろうか。幼少期にサディストと診断され、その後の行為について、オーストリアに実在した犯人ベルナー・クニーセクの過去として成育歴を紹介するのは致し方ないことだ。
中盤以降の殺害場面に於ける”死と欲望”の成立は、宗教的倫理観を前提とするならば受け容れ難いだろう。だが、本作は決して扇情、劣情を刺激する表現を用いていない。乾いた冷静なタッチで綴られる。
冒頭から手持ちカメラが醸し出す不穏な空気 。説明は一切ない。ニュース映像により淡々と事実が明かされる。動機は不明、無自覚な犯罪傾向。私生児の出自により預けられた修道院では体罰が容認されていた。修道院を追い出されてからの犯罪に関し、主人公の独白が続く。

終盤まで緊張を保つ演出力は生半可ではない。監督は本作が唯一の作品であるジェラルド・カーグル。元「タンジェリン・ドリーム」のクラウス・シュルツによる劇版は金属音のように響き、主人公の歩調や鼓動とスピードを同じくする。殺人に至るまでの高まる緊張…。殺害場面も凡百な映像表現には留まらない。人はなかなか死なないものだ。殺害時、アップになるのは犯人の顔である。苦しんでいるように見えるのは殺害者のほうなのだ!かといって、カーグル監督は決して犯行を容認しているわけではない。殺人鬼の映画を”心理劇”として描きたかったであろうことが分かる。

主人公ベルナー・クニーセク役は『U・ボート』『アンダーワールド』などで強烈な印象を残したエルウィン・レーダー。ベルナー・クニーセクが憑依したかの如き鬼気迫る名演に魂が揺さぶられるようだった。本作が血ドバーッのスリラーやホラーと一線を画したのは、レーダー、カーグル監督及びスタッフ陣の”品性”が高潔だったからに他ならない。聖と俗をめぐる懊悩。それでも生き続けねばならない犯人の苦しみを美的に昇華した本作は今年一番の必見作だ。
ただ、人によっては心的外傷を及ぼす可能性もあるため、鑑賞の際には十分に熟慮の上で、とお伝えしたい。(幸)


1983年製作/87分/R15+/オーストリア/カラー/ビスタサイズ
配給:アンプラグド
(C) 1983 Gerald Kargl Ges.m.b.H. Filmproduktion
公式サイト: http://angst2020.com/
★7月3日(金)からシネマート新宿ほか全国順次公開★
posted by yukie at 00:40| Comment(0) | オーストリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月22日

サンダーロード(原題:Thunder Road)

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監督・脚本・編集・音楽・主演:ジム・カミングス
撮影:ローウェル・A・マイヤ
編集:ブライアン・バンヌッチ
美術:ジョスリン・ポンダー
衣装:ミカエラ・ビーチ
出演:ケンダル・ファー、ニカン・ロビンソン、ジョセリン・デボアー、チェルシー・エドマンドソン、メイコン・ブレア、ビル・ワイズ

テキサス州の警官ジム・アルノーの愛する母親が亡くなった。私生活では妻と別居し、仕事も空回りでトラブル続き。親権争いの渦中にいる小学四年生のひとり娘クリスタルとは週 3 回だけ会う生活。葬儀では遺族を代表して スピーチを任されたジムだったがうまく話せず、娘のピンクのラジカセで母が好んだブルース・スプリングスティーンの「涙のサンダーロード」に合わせて踊ろうとするが、あえなく故障で失敗。無音のなか涙ながらに踊り出す ジム。バレエ教室を主宰していた母への想いを込めた踊りだったが…。そんななか親権をめぐる調停で、母の葬儀 で踊る映像が奇行の証拠として提出されると、相棒の黒人警官ネイトに八つ当たりし、ついには警官を解雇されて しまう。そんなジムに振りかかった涙の結末とは…。

この作品はたった 1 テイクで撮られたコメディタッチの 12 分の短編『Thunder Road(原題)』が基になっています。愛する母の葬儀で悲しみに暮れる警察官ジムが、娘のラジカセで母の敬愛したブルース・スプリングスティーンの名曲「涙のサンダーロード」を流しながら踊るというもの。短編ではちゃんと音楽が流れている中、踊っています。これが2016 年サンダンス映画祭短編グランプリを獲得。監督・脚本・編集・音楽・主演を務めたジム・カミングスはその後 6 本の短編を立て続けに発表し、アメリカのインディー映画界を中心に一躍その名が知られるようになりました。
その短編を長編化した本作は、2018 年 SXSW 映画祭グランプリを受賞し、同年カンヌ映画祭 ACID 部門に正式出品。世界中の映画祭で 13 冠を獲得しました。全米映画批評サイト・ロッテントマトでは満足度 96%の高評価を記録しています。
ジムは仕事もプライベートも一生懸命なのに、すべてが裏目に出て、空回りしている感じ。ちょっと誇張されているものの、自分の黒歴史が頭に浮かんできて、他人事とは思えません。ジム・カミングスが演じるジムは情けない男ですが、応援したくなること請け合いです。妻と娘の親権を争っていて、正直、負けてしまいそう。このままジムは娘と離れ離れになってしまうのでしょうか。意外な展開はぜひご自身の目でお確かめください。(堀)


2018/アメリカ/カラー/92 分/DCP
配給:ブロードウェイ
公式サイト:https://thunder-road.net-broadway.com/
★2020年6月19日(金)より新宿武蔵野館ほか
posted by ほりきみき at 01:41| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月21日

カセットテープ・ダイアリーズ   原題:Blinded by the Light

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監督:グリンダ・チャーダ(『ベッカムに恋して』)
脚本:サルフラズ・マンズール、グリンダ・チャーダ、ポール・マエダ・バージェス
原作:サルフラズ・マンズール「Greetings from Bury Park: Race, Religion and Rock N’Roll」
出演:ヴィヴェイク・カルラ、クルヴィンダー・ギール、ミーラ・ガナトラ、ネル・ウィリアムズ、アーロン・ファグラ、ディーン=チャールズ・チャップマン、ロブ・ブライドン、ヘイリー・アトウェル、デヴィッド・ヘイマン

1987年9月、イギリスのルートン。16歳のパキスタン系の少年ジャベドは高校に入学する。幼なじみの少年マットは恋人ができて忙しい。一人寂しくジャベドがウォークマンで流行のペット・ショップ・ボーイズを聴きながら歩いていると、すれ違いざまにインドにルーツを持つシーク教徒のルーブスからカセットテープを渡される。それは熱烈なファンたちから「ボス」と呼ばれ親しまれているアメリカのブルース・スプリングスティーンの歌。ジャベドは一気に惹きこまれる・・・

イギリスの小さな町で、人種差別や、故国の習慣を守ろうとする父親との確執など、ジャベドの悩みは尽きません。それを吹き飛ばしてくれたのが、スプリングスティーンの音楽でした。人生の価値を見出すほどの衝撃だったのです。カセットをくれたルーブスと親しくするようなったジャベドは、その後、スプリングスティーンの生の歌を聴きにアメリカにも一緒に行くほど意気投合。宗教は違うけど同じインド亜大陸の出身の二人の友情にほろりとさせられます。

原作はパキスタン出身で、イギリスでジャーナリストとして活躍するサルフラズ・マンズールの自伝的な回顧録。監督のグリンダ・チャーダも、スプリングスティーンの大ファンで、サルフラズと一緒に行ったイベントでスプリングスティーン本人に会ったことから、この映画は誕生しました。スプリングスティーン自身が多くの楽曲を本作に提供しています。さらに、アカデミー賞受賞のインドの音楽家A.R.ラフマーンが、オーケストラ編成の曲で映画に彩を添えています。

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グリンダ・チャーダ(写真中央)は、1960年ケニヤ・ナイロビ生まれのインド系。ロンドン育ち。BBCでジャーナリストとしてキャリアをスタートさせ、1989年から監督業に転身。英国映画史の中で、現役の最も多作な女性監督の一人となりました。2006年に大英帝国勲章を叙勲。『ベッカムに恋して』(02)『英国総督 最後の家』(17)等、自身のルーツにゆかりのある作品も数多く手がけています。
また、本作で描かれている80年代の国民戦線などの人種差別主義者の台頭もグリンダ・チャーダ自身が経験したもの。ジャベドの姉の結婚式が行われる日、結婚式場に向かう一行が、頭を剃り上げ、タトゥーで全身を覆った国民戦線の支持者たちのデモ隊に阻まれる場面は圧巻です。街の壁にあふれる人種差別的な国民戦線のスローガンは、実際に当時を経験したグリンダ・チャーダ監督と、父親役のクルヴィンダー・ギールが自ら落書きしたものだとか。
こうした移民排斥や人種差別は、残念ながら今も世界の各地で見られます。この映画で描かれていることは決して過去のことではありません。
そして、出会った音楽が人生を変えてくれるという魔法も、いつの時代にもあることですね。(咲)

2019年/イギリス/117分/カラー/英語/シネマスコープ/5.1ch/G
日本語字幕:風間綾平/字幕監修:五十嵐 正
配給:ポニーキャニオン
© BIF Bruce Limited 2019
公式サイト:http://cassette-diary.jp/
★2020年7月3日(金)TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー



posted by sakiko at 19:48| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

凱里ブルース 原題:路边野餐

6/6(土)~シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
劇場情報
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© Blackfin(Beijing)Culture & MediaCo.,Ltd - Heaven Pictures(Beijing)The Movie Co., - LtdEdward DING - BI Gan / ReallyLikeFilms

監督・脚本:畢贛(ビー・ガン)
撮影:ワン・ティアンシン
録音:リアン・カイ
美術:ズー・ユン
編集:クィン・ヤナン
音楽:リン・チャン
出演:チェン・ヨンゾン/ヅァオ・ダクィン/ルオ・フェイヤン/シエ・リクサン/ルナ・クオックほか

公式HP

2015年/110分/中国
配給:リアリーライクフィルムズ+ドリームキッド

今年2月に日本公開された『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』(2018)。そのビー・ガン監督のデビュー作が、この『凱里ブルース』である。日本ではこの作品は2015年に開催された中国インディペンデント映画祭で上映されたが、『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』の公開を経て、このデビュー作も公開されることになった。

監督の故郷である貴州省東部の凱里(かいり)を舞台に、幻想的に描いた作品。
亜熱帯の霧と湿気に包まれた凱里市の小さな診療所に身を置いて、老齢の女医とともに仕事をしているチェン。幽霊のように暮らすチェンだが、彼が刑期を終えてこの地に帰還したときには、彼の帰りを待っていたはずの妻はすでに亡く、亡き母のイメージとともにチェンの心に影を落としている。さらに可愛がっていた甥も弟の策略でどこかへと連れ去られてしまった。チェンは甥を連れ戻す為に、そして女医のかつての恋人に想い出の品を届ける為に旅に出る。
彼が辿り着いたのは時間の流れが他とは違う、過去の記憶と現実と夢が混在する不思議なところだった。
『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』でも描かれた、主人公の魂の彷徨ともいうような独自のスタイルが、すでにこの作品でも描かれ、ノーカットのロングショットは、ここでも40分間にわたって展開されていて、監督独自のスタイルがこの作品ですでに描かれている。『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』は、このデビュー作をバージョンアップさせたともいえるだろう。

私がこの『凱里ブルース』を初めて観たのは、2015年の中国インディペンデント映画祭でのこと。なんだかウォン・カーワイ的世界観のある作品だなと思った記憶がある。夢とも現実ともわからない世界を彷徨するという浮遊感。失った者に対する時を超えた交流ともいえるような独自のスタイル。バイクや車や船を乗り継ぎ、たどり着いた場所は洞窟だったり、トンネルだったり。そして鏡や時計、扇風機、風車がモチーフで描かれる。いなくなったものたちと共有した場所や時間をイメージしたものなのか。観るものの想像力を試しているような作品。私の中では山道をバイクで行くシーンが脳裏に残っている(暁)。
posted by akemi at 11:55| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

新喜劇王 (原題:新喜劇之王)

新宿武蔵野間ほかで公開中 
劇場&公開情報

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©2019 The Star Overseas Limited All Rights Reserved.

監督・脚本・製作:周 星馳(チャウ・シンチー )『喜劇王』『少林サッカー』『人魚姫』
共同監督:邱 禮潯(ハーマン・ヤウ)『イップ・マン 最終章』『イップ・マン 誕生』
音楽:日向大介 『喜劇王』「ロングバケーション」
キャスト
鄂靖文(エ・ジンウェン)俳優志望役
王宝強(ワン・バオチャン)元スター俳優役
張全蛋(チャン・チュエンダン)恋人役

公式HP
2019年/香港・中国/90分/広東語・英語
字幕翻訳:小木曽 三希子
配給:ツイン

笑いと涙の帝王チャウ・シンチーが、すべての夢追い人に贈る

チャウ・シンチーが監督&主演を務め、セシリア・チャンとカレン・モクが競演し、1999年香港興収No.1ヒットを記録した超絶コメディ『喜劇王』が20年の時を経てパワーアップして復活!
主人公を男性から女性に交代し、オリジナル版へのオマージュを捧げ、困難な現実に直面する若者たちに向けて「努力すればきっと夢は叶う」というストレートなメッセージを送る。
主演はシンチーに見出された新星エ・ジンウェン。体当たり演技でコメディエンヌ魂を発揮。変顔やがんこなこだわりを連発するシンチー印演技を発揮。『アイスマン』や『僕はチャイナタウンの名探偵』シリーズの中国の人気俳優ワン・バオチャンが起死回生を狙う元スターに扮し、「白雪姫コスチューム姿」で登場。共に下積み時代にエキストラ経験を持つ二人が、息の合ったハジけぶりで爆笑を誘う。これぞ“チャウ・シンチー・ワールド” そして、『イップ・マン 最終章』『イップ・マン 誕生』のハーマン・ヤウが共同監督を勤めた。

映画女優になる夢を抱くモン(エ・ジンウェン)だが、10年近く万年エキストラのまま。来る仕事は顔も映らない端役や死体の役ばかり。なのに映画理論や役作りの話をするのであきれられる。ある日、プチ整形顔のセットがスタッフの目に止まり、かつてのスター俳優マー(ワン・バオチャン)主演の超大作『白雪姫 血のチャイナタウン』に抜擢された。だがマーは過去の栄光にすがるトラブルメーカーで、演技も性格も最低、最悪だった。落ちぶれ俳優マーと、万年エキストラから脱しようと奮闘するモン。やがて二人のこの出会いが人生を変えていく。
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©2019 The Star Overseas Limited All Rights Reserved.

チャウ・シンチー映画に出てくる人は、わざと変顔だったり、汚れた顔やよれよれの服を着ていたり、いびられていたり、なんか救いのない人たちのオンパレードだったりで笑えない部分もあるし、荒唐無稽な物語だったりで、何これ!という部分もあるんだけど、でも、いつもへこたれない人々を描いていると思う。どんな目にあっても、生きていくというたくましさを描いているのだろう。だから中華圏のヒットメーカーとしての地位を築いてきたのかな。
それにしても、この主演の二人のいじられ方はすごい(笑)。こんなにひどい役にもへこたれずに演じているのにも関心する。でも、あの男っぽいワン・バオチャンが白雪姫のコスチュームで出てきた時には大爆笑してしまった。
彼は本当は少林寺で修行していたこともあるアクション俳優とのことだけど、そういう役を観たことがないので観てみたいもの。ちなみに私は彼の『僕はチャイナタウンの名探偵』シリーズが好きだけど、最新作『僕はチャイナタウンの名探偵3』は、妻夫木聡、三浦友和、長澤まさみも競演し日本で撮影しているとのことなので、きっと日本公開もあるだろうと期待している(暁)。
 
posted by akemi at 05:23| Comment(0) | 中国・香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月20日

ハニーランド 永遠の谷   原題:Honeyland

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監督:リューボ・ステファノフ、タマラ・コテフスカ
プロデューサー/編集:アナタス・ゲオルギエフ
撮影:フェルミ・ダウト、サミル・リュマ
サウンドデザイナー:ラナ・エイド
字幕:林かんな

バルカン半島、北マケドニアの首都スコピエから20キロほど離れた、道路も電気も水道も通じていない山間の村。ハティツェ・ムラトヴァは、盲目で麻痺のある年老いた母親と暮らしている。彼女はヨーロッパ最後の自然養蜂家。時折、20キロ離れた町の市場に蜂蜜を売りにいくのが、唯一他者と接する機会だ。
静寂な暮らしは、ある日突然壊される。音を立てトレーラーでやって来たのはトルコ人一家。7人の子供に牛や羊たち。やがて蜜蜂が全滅してしまう・・・
 
北マケドニアから届いた珠玉のドキュメンタリー。タマラ・コテフスカ(左)がリューボ・ステファノフと共に作った長編デビュー作。
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ギリシャの北に位置するこの国は、かつてはユーゴスラビア、その前にはオスマン帝国に属し、多様な民族が共に暮らしてきたところ。ハティツェの住む村にも、かつてアルバニア人やトルコ人が住んでいたことが語られていました。
ハティツェは古代トルコ語を話しています。越して来たムスリムのトルコ人一家の言葉とはちょっと違うようです。
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隣人となったトルコ人の少年を眺めながら、自分にも子供がいたならとつぶやくハティツェ。母親に「求婚に来た人を父はなぜ断ったの?」と尋ねる場面には、じ~んとさせられました。決して、結婚が幸せだとは思わないけれど!

「半分はわたしに、半分はあなたに」という信条が、持続可能な生活と自然を守ってきたことに、私たちも学びたいと思いました。(咲)


この作品はハティツェが自然養蜂家として生活している様子を映し出したドキュメンタリー作品です。しかし、隣にトルコ人一家が引っ越してきて、ハティツェの真似をして蜂蜜の販売を始め、欲をかいたばかりに蜜蜂を全滅させてしまう展開は起承転結が見事で、しっかり練られた脚本があるよう。いえ、見ているうちにドキュメンタリー作品であることをすっかり忘れていました。まさに「事実は小説より奇なり」です。
蜜蜂は全滅してしまいましたが、ハティツェはまだまだそこで生きていかねばなりません。ラストに希望が見えたような気がしましたが、果たして今、ハティツェはどこでどんな生活をしているのでしょうか。幸せであってほしいです。(堀)


自然と共存しながら生きていくこと。そこに住んでいる人にとっては昔から引き継いできた人たちからの知恵であり教え。あとに続く人たちへの贈り物でもある。この蜂蜜もそれで保たれてきたのに、一時の自分たちの欲のために採りきってしまったら後が続かない。それは動物でも植物でも、全部採りきらず、後の人のために残しておくということがそこで生きていく人たちの暗黙のルールで人々の営みは続いてきた。
それなのにあとから引っ越してきた一家は、そのルールを無視して、そこの地の蜂蜜を根こそぎ採ってしまって、蜜蜂がいなくなったら別の地を目指して出ていった。そういうことの繰り返しで生きていくのだろうか。撮っていた監督たちもこういう展開になるとは思わず3年近くカメラをまわしていたのでしょうけど、これがドキュメンタリーであるというのがすごい。それにしても、こんなに周りに住む人がいない緑が少ない土地でハティツェは生きていけるのか。これまでは母がいたからここにいたけど、一人になってしまってここでは一人でやってはいけないだろうな(暁)。


2019年/北マケドニア/トルコ語・マケドニア語・セルビアクロアチア語/86分/1.85:1
配給:オンリー・ハーツ
(C)2019, Trice Films & Apollo Media
公式サイト:http://honeyland.onlyhearts.co.jp/
★2020年6月26 日(金)よりアップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開




posted by sakiko at 21:37| Comment(0) | 北マケドニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

水曜日が消えた

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監督・脚本・VFX:吉野耕平
音楽:林祐介
製作:沢桂一、新井重人
出演:中村倫也、石橋菜津美、中島歩、休日課長、深川麻衣、きたろう

幼少期の交通事故が原因で、曜日ごとに7人の人格が入れ替わる青年は、思考や性格はバラバラだが、各曜日の名前で呼び合いながら平穏な毎日を過ごしていた。その中でも地味な火曜日(中村倫也)は、ほかの曜日から家の掃除、荷物の受け取り、通院といった面倒な用事を押し付けられていた。ある日の朝、目を覚ました火曜日が水曜日がいなくなっていることに気づく。火曜日は、見慣れないテレビ番組などに戸惑いながらも水曜日を満喫する。

以前からカメレオンのように役の表情を変える俳優だと評価していたが本作に於ける中村倫也は凄い!1人7役だけでも想像を絶する難関なのに、7人の中で最も個性が薄く地味な「火曜日」を主人公とした難役を熟すのだ。

「水曜日」がいなくなったことで、「火曜日」は初めて「水曜日」の世界を体験する。その新鮮さと喜びと混沌…。複雑な心情を汗をかく熱演ではなく軽やかに演じ分ける中村倫也は絶品だ。

名演を引き出した監督の吉野耕平は、CMやMVなどで高評価を得てきた実績のある人だけに、デビュー作にしては編集のテンポがよく、丁寧な絵造りが美しい。
吉野監督が自ら手掛けた主題歌「Alba」(須田景凪)のMVにも卓抜な映像センスがうかがわれる。本編と併せて観ると監督の描こうとしていた世界が理解でき、興味深いだろう。(幸)


中村倫也が7曜日分の人格を演じ分けるのが見どころだと思って見ると、拍子抜けするかもしれません。基本的には火曜日の僕で話は展開します。
少年時代の事故はなぜ起きたのか。いつも助けてくれる幼馴染みの女性は何を知っているのか。定期的に通う病院は意味があるのか。分からないことばかりの物語はとってもミステリアス。その中でいちばん地味といわれる火曜日を中村倫也が演じることで、物語にほわっとした温かみを残しました。
すべてがわかった上で火曜日が選択した未来は意外性たっぷりですが、それもありかなと思えるのも中村倫也がなせる業。自粛期間中に始めたYouTube「中村さんちの自宅から」はまだ更新が続き、秋には主演作『人数の町』が控え、その後も出演作が上映される予定。しばらく目が離せそうにありません。(堀)


2020年製作/104分/G/日本
配給:日活
(C) 2020『水曜日が消えた』製作委員会
公式サイト:http://wednesday-movie.jp/
★6月19日より全国公開★
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2020年06月19日

オーバー・ザ・リミット 新体操の女王マムーンの軌跡(原題:Over the Limit) 

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監督:マルタ・プルス 
出演:マルガリータ・マムーン、イリーナ・ヴィネル、アミーナ・ザリポア、ヤナ・クドリャフツェワ

「あなたは人じゃない。アスリートなの!」リタ(=マルガリータ・マムーン)は、新体操王国ロシアの代表選手。オリンピックに向けて、鬼コーチたちからの強烈な指導を受け、日々の練習に励む。アリーナ・カバエワなど、数多くのオリンピック金メダリストを育て上げたイリーナ・ヴィネルの指導は、特に精神面において厳しい。リタは優雅にリングをキャッチし、ボールを肩で転がすが、コーチたちは更なる高みを求め、何度も何度も繰り返させる。わずかな自由時間には、彼氏と電話で話したり、家族と穏やかに過ごすが、すぐにまた激烈なトレーニングが始まる…。
本作はリタがリオ・オリンピックで金メダルを獲得するまでの道のりを追ったドキュメンタリー。美しく華やかな表舞台で栄光を勝ち取るため、 アスリートはその裏で何をしているのか。想像を絶する世界に迫る。

マルガリータ・マムーンは、バングラデシュ人の父とロシア人の母との間に生まれました。幼少期にはバングラデシュの選手として活動、その後ロシアの選手として活動するようになったと資料にあって、俄然、興味を持ちました。
リオデジャネイロオリンピックに出場中、お父様は癌で病床にあって、金メダルを取って帰国して、2日後にお父様は亡くなられました。
お父様とお母様の馴れ初めを知りたいなと思いました。

指導をするイリーナ・ヴィネルの個性は、マルガリータ・マムーン以上に強烈です。国の威信をかけて、なんとしてでもメダルを取らせるという厳しい指導。
ポーランド人であるマルタ・プルス監督が、ロシアの新体操選手を追ったドキュメンタリーを作ろうと思ったのは、彼女自身が5歳から11歳まで新体操をしていた素地も影響しています。ですが、なにより、映画に政治的な要素を取り入れたいという思いから、ロシアで政治とプロパガンダのために体操が重要であることに注目したのです。アスリートとして活躍した後、コーチを務めるイリーナ・ヴィネルが、ロシア一の富豪と結婚していることからも、体操界から現代ロシアを映し出せるのではと考えたそうです。(咲)


総監督のイリーナ・ヴィネルがリタに対して罵詈雑言を浴びせかけ、まるで暴君のように映し出されます。きっと同じ経験を彼女自身も経験したのでしょう。日本の昔の運動部あるあるな状況です。いえ、もしかしたら相変わらず、日本でもひっそり繰り広げられているかもしれません。
『新体操の女王マムーンの軌跡』というタイトルを考えれば、結果は自ずから見えてくるのですが、タイトルを忘れてしまうくらい強烈です。そしてイリーナが辛辣な物言いをするのはリタだけではありません。リタを直接的に指導するアミーナ・ザリポアにも浴びせかけます。中間管理職の辛さを思い出す人もいるのではないでしょうか。このアミーナもイリーナに見出されて、ロシアの選手として活躍していたのです。きっと選手時代にはリタと同じように言われていたのでしょう。
リタは結果を残しました。今は引退し、作品にも出てきた彼を結婚しています。また別の若い才能の持ち主がイリーナの暴言に耐えているのもしれません。パワハラでその才能が潰れてしまうことがないよう祈るばかりです。(堀)


2018年/ロシア語/74分/ポーランド、ドイツ、フィンランド/
配給:トレノバ、ノーム
©Telemark, 2018
公式サイト:https://otl-movie.com/
★2020年6月26日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿ピカデリー他全国順次ロードショー

posted by ほりきみき at 01:25| Comment(0) | ポーランド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月15日

ワイルド・ローズ ( 原題:WILD ROSE )

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監督:トム・ハーパー 脚本:ニコール・テイラー
出演:ジェシー・バックリー 、ジュリー・ウォルターズ、ソフィー・オコネドー

カリスマ的な歌声を持つシングルマザーのローズは、故郷のスコットランドからアメリカに渡り、歌手としての成功を夢みていた。だが不器用にしか生きられない彼女は、夢を追い求めるあまり、時に愛する母親や幼い二人の子供達を傷つけてしまう。
夢と家族の狭間で苦しみ、若く才能のピークを迎え焦燥感に駆られるローズにチャンスが訪れる。老いた母と幼い子供たちとのささやかな幸福に包まれた暮らしか、夢を掴んでスターの座を追い求めるのか。葛藤する彼女がたどり着いた答えとは?葛藤の末に書き下ろした初のオリジナルソング。ローズの魂のステージの幕が上がる。

ある事件が起こる映画の中盤から、もう泣き通し!そしてラスト、主人公のローズリンが歌う場面では号泣してしまった…。近年これほど感情を揺さぶられる映画はない。
前科持ちシングルマザーの、”夢を叶える”という公式モデルを逸脱し、安直な予定調和を避けた脚本の巧さと、演者陣の絶妙なアンサンブル!登場人物一人ひとりの心情が脇役や子役に至るまできめ細かく描出されているのだ。

加えてグラスゴー独特の地方性が画面を横溢する魅力。英国労働者階級ものには名作が多いが、本作もその系譜に連なろう。母娘3代の確執、労働者階級出身なのに起業して成り上がった新富裕層の欺瞞・偽善…。登場人物一人ひとりを主役にして更ににドラマが描けるくらい丁寧に造形され、また演者陣も脚本・監督の期待に応える絶品演技を披露している。

『ジュディ 虹の彼方に』の脇で光っていたジェシー・バックリーが、これほど歌が上手いとは!ウェスタンブーツにカントリーシャツを着こみ、
「私はトランスジェンダーみたいなもんだよ。心はアメリカ人でナッシュビルにいるはずが、ここ(英国)に居る」
と語るさまは、女優ではなくローズリンそのものにしか見えない。母役のジュリー・ウォルターズは、娘の夢と孫たちを含む現実生活との折合いに葛藤する。『リトル・ダンサー』を凌ぐ名演だろう。

正攻法に見える撮影も、ローズリンが掃除人として働いていた豪邸のパーティを一瞬だけ空撮することにより、この世界と訣別するのだ、という展開を冷徹に表現する。地味な一瞬のディテールに真実を語らせる演出法に感動した。
ローズリンが魂を込めた歌唱、「私はナッシュビルの人間じゃなくてグラスゴー  イエロー・ブリックロード道はないけれど故郷が1番」
と歌い上げる場面は観客の共感と涙を誘うに違いない。今年、必見の秀作をお見逃しなく!(幸)


主人公ローズの成長ぶりを取り上げて紹介する記事が多く見かけます。夢を叶えたい、でも子供の世話をしなきゃいけない。その葛藤に苦しみながらも自分なりの答えを出したローズをジェシー・バックリーが見事に演じ切りました。
しかし、私はローズの母やローズを雇っていた豪邸のマダムに共感しました。すべきことをきちんとして、真っ当に生きています。そしてローズを応援する。その心の裏には、常識に囚われず、やりたいことに向かってなりふり構わず突き進むローズへの羨望があったように思います。自分をローズにすり替え、ローズが夢を叶えることで自分も夢を叶えた気分を味わおうとしていたのではないでしょう。そのことに気づいたことで2人は自分の人生が少し変わって見えてきたはず。私も自分の人生を生きなきゃというエールを作品からもらいました。(堀)


2018/カラー/5.1ch/イギリス/スコープ/102分/PG-12
配給:ショウゲート
© Three Chords Production Ltd/The British Film Institute 2018
公式サイト:https://cinerack.jp/wildrose/
★ 6月26日 (金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開 ★
posted by yukie at 21:37| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月14日

はちどり(英語題:House of Hummingbird)

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監督:脚本:キム・ボラ
出演:パク・ジフ(ウニ)、キム・セビョク(ヨンジ)、イ・スンヨン(ウニの母)

1994年のソウル。中学2年生のウニは、両親、姉と兄の5人家族。両親は餅屋の仕事に忙しく、末っ子のウニの話を聞く余裕もない。志望高校に落ちた姉は遊び歩いて両親の顰蹙をかい、成績優秀な兄は両親の期待を一身に背負っている。外では良い顔の兄はたまったストレスを妹にぶつけてくる。学校も家もウニにとって安らぐ場所ではない。親友と通う漢文塾に、新しく女性のヨンジ先生が入った。一風変わった彼女だけがウニの話に耳を傾け、答えてくれる大人だった。

ハチドリは虫と見紛うほど小さな鳥で、1秒間に最高80回も羽ばたき、空中でホバリングして花の蜜を吸います。小さいながら誰よりも速く羽ばたくハチドリに、思春期を必死に生きていくウニの姿を重ねたタイトルなのでしょう。当時のヒット曲やニュース場面を挿入して雰囲気を伝えています。キム・ボラ監督の自伝ではないようですが、揺れ動くウニの感情や周りの人物を繊細に表現して、自国のみならず世界の映画祭でも高い評価を受けました。
家族の愛情を求めているウニの姿が幾度となく現れます。親にしてみれば毎日の生活でいっぱいで「元気でいることが当たり前」と、子どもたちを顧みないことがあります。いまさらですが反省。娘を失いそうになって初めて涙したり、しみじみ見つめたりするシーンに胸がつまりました。愛情がないわけではありません。そんなウンジにとってヨンジ先生からもらった多くの言葉は、何よりの宝になりました。観客の心にも深く刻まれます。
儒教の影響が大きく、家父長の権限が強かった韓国。この映画でも父親や長男の言動に驚きます。女性が虐げられるのを理不尽と思う人たちの女性運動が90年代から盛んになり、今や日本は追い越されているようです。(白)


キム・ボラ監督自身の少女時代の体験をベースにした作品だそうですが、監督の視点は主人公のウニではなく、ウニが通う漢文塾で先生として知り合うヨンジのような気がします。
親は仕事が忙しくて構ってくれないし、兄は親に隠れて暴力を振るう。姉は受験に失敗してから塾をさぼって恋人との時間に現を抜かす。学校には何となく馴染めない。そんなやり切れない日々を淡々と生きる主人公。大人になった監督が14歳だった自分を優しく包み込むように見守っています。切なさと懐かしさが相まって心に沁みいってきました。(堀)


私が初めて韓国・ソウルを訪れたのは、1995年の冬のことでした。
1995年6月にソウルの三豊百貨店が突然崩壊するという事故がありました。その前の年には、漢江にかかるソンス大橋の橋桁が落下するという事故もあって、1988年のソウルオリンピックを機に急成長を遂げている韓国だけど、手抜き工事も多いのでは?と、街歩きしながら心配したのを思い出します。
『はちどり』では、そのソンス大橋の事故がクライマックスで登場します。中学生だったキム・ボラ監督にとっても忘れられない1994年の出来事です。
ウニの両親は、餅屋を営んでいるのですが、ソウルを訪れた時に、朝6時ごろに餅屋が数件並んでいる地区を訪れたら、どこのお店もお餅が湯気を立ててうず高く積み上げてありました。朝早くから女性たちの働く姿が印象的でした。
思えば、1995年のソウルは、地下鉄も路線バスもニンニクの匂いが立ち込めていました。それから数年後に訪れたソウルでは、ほとんどニンニクの匂いを感じなくなりました。それも韓国の変化かと思います。
ウニは漢文塾に通っていますが、生徒は少ない様子。ヨンジ先生のように大学などで専門に学ぶ人以外は、自分の名前以外の漢字を読めないとも聞きます。今の韓国で、漢文塾はどんな状況なのかも、この映画を見ていて、ふっと気になりました。(咲)


2018年/韓国・アメリカ合作/138分/PG12
配給:アニモプロデュース
(C)2018 EPIPHANY FILMS. All Rights Reserved.
https://animoproduce.co.jp/hachidori/
★2020年6月20日(土)よりユーロスペースほかにて公開
posted by shiraishi at 17:07| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

今宵、212号室で 原題:Chambre 212/英題:On A Magical Night

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監督・脚本:クリストフ・オノレ
出演:キアラ・マストロヤンニ ヴァンサン・ラコスト
カミーユ・コッタン バンジャマン・ビオレ キャロル・ブーケ

第72回カンヌ国際映画祭ある視点部門最優秀演技賞(キアラ・マストロヤンニ)受賞

恋がいっぱい。でも、愛は一つだけ。
マリアは、結婚して20年になる夫リシャールと二人暮らし。今ではすっかり“家族”になってしまった夫には内緒で、密かに浮気を重ねていたが、ある日ついにバレてしまう。怒ったリシャールと距離を置くため、マリアは一晩だけアパルトマンの真向かいにあるホテルの212号室へ。窓越しに夫の様子を眺めるマリアのもとに20年前の姿をした夫が現れ、さらには元カレたちも次々と登場、そのうえ夫の初恋相手のピアノ教師までもがかつての姿でやってきて、愛の魔法にかかった不思議な一夜が幕を開けた! もしもあの時、あの恋が成就していたら?かつての恋の思い出が脳内を走馬灯のように駆けぬけたあと、マリアが見つけた真実とは?

冒頭、アポリネール自身が朗読する「ミラボー橋」が流れた時から気分はもうパリ!颯爽とパリの街を歩くキアラ・マストロヤンニの魅力に酔いしれ、物語の独創性とウィットに富む上品なユーモア、センスのいい挿入歌(シャルル・アズナブールなど)の数々にウットリする87分である。

とはいえ、そこは仏映画。お気楽モードなロマコメでは終わらない。夫婦、男女の愛における本質、普遍性に鋭く迫る批評精神が断片のように忍ばせてある。タイトルの【212】には仏ならではの意味が込められているのだ。

性に放縦なヒロインを語り部に配し、片や浮気知らずの夫をサブパーソンに。口論から夫婦が暮らす部屋の向かいのホテルへ逃げ出した妻は、通常とは別の窓に広がる世界を初めてのぞく。目に入るのは怒り荒れる夫…。
と同時に25歳の若き夫が現れる!観客はファンタジックな夜に誘われる。「元カレ」大集合の場面は爆笑だ。

トリッキーな展開に呼応すべく、映像のカラリングや編集、ライティングまで魔法粉をまぶしたかのような幻想性を帯びて行く。巧みな絵造りと軽妙洒脱なタッチは仏映画ならでは。

キアラ・マストロヤンニの無邪気で憎めない表情は、ラテンラヴァーの父マルチェロ・マストロヤンニに生き写し。細長い手足は母カトリーヌ・ドヌーヴ譲りだ。
夫役のバンジャマン・ビオレは本業ミュージシャン。2人は実生活の”元夫婦”である。
若き日の夫を演じるバンサン・ラコスト(『アマンダと僕』など)はミュージシャンであり、医師免許も持つ才人。特別出演で仏を代表する美人女優キャロル・ブーケも顔を見せる。
魅力的なキャストを揃え、仏映画が苦手な方にも抵抗なく受け容れられる佳篇だろう。(幸)


2019年/フランス・ルクセンブルク・ベルギー/フランス語/87分/1:1.85/
配給:ビターズ・エンド
©Les Films Pelleas/Bidibul Productions/Scope Pictures/France 2 Cinema
公式サイト:http:www.bitters.co.jp/koyoi212
★6月19日(金)より、Bunkamuraル・シネマ、シネマカリテ他全国順次公開 ★
posted by yukie at 13:05| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ドヴラートフ レニングラードの作家たち  原題:Dovlatov

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監督:アレクセイ・ゲルマン・ジュニア
撮影:ウカシュ・ジャル 
美術・衣装:エレナ・オコプナヤ
出演:ミラン・マリッチ、ダニーラ・コズロフスキー、スヴェトラーナ・ホドチェンコワ、エレナ・リャドワ

現代ロシアの作家セルゲイ・ドヴラートフの、ある6日間に迫った物語。

1971年、ロシア革命記念日である11月7日を目前にしたソビエト、レニングラード(現サンクトペテルブルク)。
ドヴラートフは新聞や雑誌に小さな記事を書いて原稿料を得ながら文筆活動に勤しんでいるが、政府の厳しい統制のもとで自身の作品を発表できないでいた。妻エレーナとは別れ、娘カーチャとはたまにしか会えない。
友人で、のちにノーベル賞を受賞する詩人ヨシフ・ブロツキーや、女優のセリョージャなどと集い、自由に活動できないことを憂いながらも、30代の若者らしくエネルギーに溢れ、希望に満ちていた。そんな中、親友で画家のダヴィッドが闇取引で捜査を受ける途中で不慮の交通事故で亡くなってしまう・・・

監督のアレクセイ・ゲルマン・ジュニアは、27歳の時にドヴラートフの小説に出会い、一気に全作品を読み尽くしました。監督にとってドヴラートフは、ロシア文学のスーパースター。いつか映画にしたいと思いながら15年が経ち、ようやく完成させました。
1971年という年は、監督の父でやはり映画監督のアレクセイ・ゲルマンが、映画『道中の点検』を発表したものの、検閲で上映禁止処分を受けた因縁の年。第二次世界大戦後のソ連では、1953年に独裁者スターリンが亡くなった後、「雪解け」で文化の自由化が始まり、1960年代には従来のソ連ではありえなかったような文学・芸術の新しい波が勃興しました。ですが、1968年にチェコの自由化の動きにソ連が介入したのを機に、政治的な締め付けが再び厳しくなりました。そんな時代の物語です。

詩人ヨシフ・ブロツキーは自由な表現を求めてアメリカに亡命。その後、ノーベル賞を受賞。
ドヴラートフも、創作の自由を求めて、レニングラードを去り、エストニアのタリンの新聞社に勤めた後、亡命しアメリカに渡りましたが、48歳の時、心臓発作でご逝去。ドヴラートフご自身、後に故国で著書が出版されることも知らずに亡くなってしまったことに涙です。
政治に翻弄されながらも、自らの思いを表現したいと抗った若き芸術家たちの姿が瑞々しく描かれていて、素敵な映画でした。
最後の場面、身体の大きいドヴラートフが車の屋根の上に乗っている姿は微笑ましくもありました。(咲)


2018年/HD/シネマスコープ/5.1ch/126分/ロシア
配給:太秦
公式サイト:http://dovlatov.net/
★2020年6月20日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開




posted by sakiko at 11:29| Comment(0) | ロシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

エジソンズ・ゲーム 原題:The Current War: Director’s Cut

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監督:アルフォンソ・ゴメス=レホン
製作総指揮:マーティン・スコセッシ
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、マイケル・シャノン、トム・ホランド、ニコラス・ホルト

19世紀のアメリカ。白熱電球を事業化した発明家のトーマス・エジソン(ベネディクト・カンバーバッチ)は、大規模な送電には直流が適していると考えていた。だが実業家のジョージ・ウェスティングハウス(マイケル・シャノン)は、交流の方が安価で遠くまで電気を送れるとして、交流式送電の実演会を開いて成功させる。それを知ったエジソンは、世論を誘導しようとする。

当初、ワインスタイン・カンパニーの作品としてトロント国際映画祭でj上映されるも、創業者のハーヴェイ・ワインスタインがセクハラ訴訟で失脚。製作会社が破産に追い込まれ、公開延期となっていた曰く付きの作品だ。製作総指揮を務めるマーティン・スコセッシが撮り直しや再編集を敢行するなど、アルフォンソ・ゴメス=レホン(TVシリーズ「glee/グリー」などを演出)の監督ながら、スコセッシの”光と影”が濃厚に感じられる活力に溢れた秀作である。

映画の内容も、まさに”光”を追い求める男たちの思惑や戦略、電流戦争による人生の毀誉褒貶が描かれる。そこには敗者としての”影”が宿っていることも映画は忘れない。19世紀シカゴ万博における眩い光が表象するように、本作の映像美は圧巻だ。電気が世界を照らす。国際基準を得た者だけが獲得し得る栄光と光芒をカメラは澱みなく映し出す。

流麗な音楽、19世紀を再現した質感ある衣装と意匠。細部のディテールに凝った映画だけが持つ重厚感が隅々に満ちている。が、一番の貢献は俳優陣だろう。米国の話にも関わらず、エジソン役にベネディクト・カンバーバッチ、その秘書にはトム・ホランド、ニコラス・ホルトのニコラ・テスラ役というように、マイケル・シャノン以外の殆どのキャストは女優陣に至るまで英国勢なのだ。
カンバーバッチはエジソンが持つ傲慢さと狂気を、トム・ホランドは若い助手としての焦燥を巧みに演じる。極めつけは天才ニコラ・テスラに扮するニコラス・ホルトだ。テスラの持つ気品と才気、悲劇的な末路まで予兆させる難役を短い出番ながら観客の心に焼き付かせた。英国名優陣を堪能する映画でもある。

ライバルを追い落とすためには手段を選ばぬネガティブキャンペーン、裏取引…。ビジネスバトルは現代にも通ずる普遍性を呈した内容である。今年の必見作となろう。(幸)


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配給:KADOKAWA
製作/アメリカ/2019/108分/カラー/シネマスコープ/5.1ch
(C)2019 Lantern Entertainment LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:https://edisons-game.jp/sp/index.html
★TOHOシネマズ日比谷ほかにて6月19日(金)公開★
posted by yukie at 07:26| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月13日

グッド・ボーイズ(原題:GOOD BOYS)

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監督:ジーン・スタプニツキー
脚本:リー・アイゼンバーグ、ジーン・スタプニツキー
出演:ジェイコブ・トレンブレイ(マックス)、キース・L・ウィリアムズ(ルーカス)、ブレイディ・ヌーン(ソー)、モリー・ゴードン(ハンナ)、ミドリ・フランシス(リリー)、リル・レル・ハウリー(ルーカスの父)、スティーヴン・マーチャント(クロード)

マックス、ルーカス、ソーは小学6年生の親友3人組。同級生の女の子たちが開く”初キスパーティ”に招待されたマックス。気になるあの子も参加する。キスの経験がない3人はどうしていいかわからない。あの手この手でリサーチを開始すると、これまで知らなかった禁断の大人の世界が目の前に拡がった。さらなるリサーチを、とマックスの父親が大事にしているドローンを使ったために、とんでもない事態になる。さて、初キスまでたどり着けるのか?

12歳の少年3人が主人公ですが、大人向けのコメディ作品。男性諸氏は自分たちのあの頃を思い出して、爆笑必至です。その時期に身体をかけめぐるホルモン?リビドーの萌芽?が好奇心満タンの彼らに、おバカなこともやらせてしまうのです。アメリカではR指定になり、当時の3人は映画が観られなかったとか。NGワードは撮影の間だけ、と子役たちの保護者も目を光らせていたようです。
そんな彼らが、ヤバ目のグッズを前に何をするのか、劇場でご覧ください。好奇心はあっても知識のないソーお兄ちゃんに説明するのは、クールな妹。女の子のほうが早く大人になってしまうのはどこも一緒なんですね。ワハハハ笑いながら、男の子たちの純粋さと友情にほろりとします。ジェイコブ・トレンブレイくんに引けを取らない、いい子役さんたちを観て!(白)


マックス、ルーカス、ソーの“ビーンバッグ・ボーイズ”3人組は、6年生になって、もう子どもじゃない、自分たちはオトナの仲間入りと自負するのですが、まだまだお子ちゃま。悪ガキというより、やることなすこと、なんとも可愛くて健気。
マックスを演じたジェイコブ・トレンブレイ君は、2016年に『ルーム』が公開された折に来日。可愛い彼に会いたくて記者会見に駆け付けました。
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『ルーム』来日記者会見報告(2016/4/3)
その時の彼は、母親役のブリー・ラーソンさんを男として守らなければという気概を見せてくれて、ずいぶんこまっしゃくれた少年と思ったのですが、『グッド・ボーイ』では、初キスに揺れるキュートな男の子モードが全開。ほんとに可愛いです。(咲)


クールに決めたいマックス、正しい行動をしたいルーカス、ミュージカルに出て歌を歌いたいソー。いつも一緒にいた幼友達の3人ですが、少しずつ、自分の求めるものと他の2人が求めるものとの両立が難しくなっていきます。一緒にいたいのに、一緒にいるとつらい。
自分を振り返ってみると、小学校時代の友だちとは中学、高校と成長するにつれて会う頻度が少なくなっていったことに気がつきます。悲しい別れがあったわけではないけれど、アイデンティティが確立していくにつれ、自然と疎遠になっていきました。そんな過渡期を迎えたマックスたちの決断に胸が熱くなります。
でも幼友達とは、たまに会うと時間が昔に一気に飛んで、昔話に盛り上がります。マックスたちもきっとそんな関係に慣れるに違いありません。(堀)


2019年/アメリカ/カラー/90分/PG12
配給:パルコ
https://goodboys.jp/
★2020年6月12日(金)ロードショー


posted by shiraishi at 19:57| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

15年後のラブソング(原題:JULIET, NAKED)

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監督:ジェシー・ペレッツ
原作:ニック・ホーンビィ
音楽:ネイサン・ラーソン
出演:ローズ・バーン(アニー・プラット)、イーサン・ホーク(タッカー・クロウ)、クリス・オダウド(ダンカン・トンプソン)、アジー・ロバートソン(ジャクソン)

イギリスの港町サンドクリフに住むアニーは30代半ば。博物館に勤めて恋人もいるが、最近モヤモヤが収まらない。長年付き合っている恋人のダンカンはタッカー・クロウというロックミュージシャンの大ファン。タッカーはとっくに表舞台から姿を消し、今や伝説と化している。ダンカンはタッカーに心酔、地下室に聖堂と称したコレクションルームを作り、同じような輩と盛り上がるファンサイトも運営している。日頃執着が過ぎるとイラついていたアニーはダンカンと口論した挙句、そのサイトにタッカーの曲を酷評したコメントをしてしまった。そして、タッカー本人からアニーへ1通のメールが届いた。

地方の街でアラフォーになりつつあるアニー。別れるでも結婚するでもない、腐れ縁の彼氏ダンカンと15年も付き合っています。彼が崇め奉っているミュージシャンの悪口を書いてしまう気持ちもわからないではありません。その本人からメールが届くという展開にびっくりです。やりとりをダンカンには言えないままのアニー。
原作のニック・ホーンビィは人気作家で、日本でも『アバウト・ア・ボーイ』などの翻訳本が出ています。映画化された作品も多く、どれもいい感じに仕上がっています。
いつのまにかこの年になっちゃった3人、それぞれが良い味です。アニーを『ピーター・ラビット』のローズ・バーン。華々しいというよりマニア受けしていたタッカーを、イーサン・ホーク。タッカーはわけあって舞台から降りてしまい、今や決まった仕事もなくアメリカの片田舎で元妻の家の”ガレージ”で居候というていたらく。ぐだぐだなイーサン・ホークもなんだか憎めず、面倒見てやりたくなってしまいます(映画の中ならね)。今回も歌が聞けます。
タッカーおたくなダンカンはクリス・オダウド。この人を見ると渋川清彦さんが浮かびます。おたくっぷりが痛いやらほほえましいやら。
そんな二人の間でアラフォー目前のアニーの人生は変わるのか?大人になれない男としっかり者の女、というのはよくある組み合わせですが、このアニーちょっと気づくの遅すぎ。自由で辛辣な妹の言葉に賛成してしまいます。ゆるめのラブコメ好きな方どうぞ~。(白)


原作はニック・ホーンヴィ。ほかにも映画化された作品があり、コリン・ファース主演の『ぼくのプレミアライフ フィーバーピッチ』(1997)やヒュー・グラント主演の『アバウト・ア・ボーイ』といったように、大人になり切れない男性を主人公にしたものが多いです。今回もイーサン・ホークが演じたタッカーは伝説のロッカーですが、大人になり切れていない。イーサン・ホークが演じるから、よけいにそう見えてしまうのかも。まさに適役。イーサン・ホークも「ニック・ホーンヴィの映画化作品をずっとやってみたかった」と言っているくらいなので、相性はいいのでしょう。本作でも、男としてはダメダメなのだが、母性本能をくすぐられて、なぜか許してしまいたくなってしまいます。いつものイーサン・ホークを堪能したい人にはうってつけの作品です。(堀)

2018年/アメリカ、イギリス/カラー/シネスコ/97分
配給:アルバトロス・フィルム
(C)2018 LAMF JN, Ltd. All rights reserved.
https://15-lovesong.com/
★2020年6月12日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
posted by shiraishi at 00:00| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月12日

その手に触れるまで(英題:YOUNG AHMED、原題:LE JEUNE AHMED)

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監督・脚本:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
出演:イディル・ベン・アディ、オリヴィエ・ボノー、ミリエム・アケディウ、ヴィクトリア・ブルック、クレール・ボドソン、オスマン・ムーメン

13歳の少年アメッドはどこにでもいるゲーム好きの普通の少年だったが、尊敬するイスラム指導者に感化され、過激な思想にのめり込む。
ある日、学校の先生をイスラムの敵を考え、抹殺しようとして失敗。少年院に入ったアメッドは更生プログラムのひとつである農場作業を手伝うようになるが、動物に触れたり、親切にされたりすることが心地悪くて仕方ない。
狂信的な考えに囚われてしまった少年の気持ちを変えることはできるのだろうか?

ダルデンヌ兄弟が、過激な思想に感化された少年をどのように描いたのかが一番の関心事でした。細部にわたって、イスラームにも様々な解釈があることが散りばめられていて、過激な思想がイスラーム社会の一般的なものでないことを伝えようとする気遣いが感じられました。その点について、スタッフ日記に詳しく書きました。
http://cinemajournal.seesaa.net/article/475497357.html
結末については、私の中でもやもやしています。観た人と話したい気分です。(咲)


人は見たいものを見、信じたいものを信じてしまうのね、とため息が出てしまいました。同じ年頃、自分もそう違わなかった、とほろ苦い思いです。平和な世の中で過ごしましたし、ひどい大人も近くにいなくて幸いでした。思春期のまっすぐな少年を利用する大人が許せません。選ばれたキャストと監督の演出に、まるでドキュメンタリーを観るかのように、ハラハラして見守りました。(白)

母の飲酒や姉の肌の露出。スクリーンのこちらから見る分には問題なく程度に思えるけれど、13歳の真っすぐな少年アメッドには忌み嫌うものに見えてしまったよう。だから、尊敬するイスラム指導者に必要以上に感化され、過激な思想にのめり込んでしまいました。
アメッドは学校の先生をイスラムの敵を考え、抹殺しようとしますが、けっして特別な少年ではありません。そして、彼の家族も(お父さんの姿は見えないけれど)ごくごく普通です。私の子どもも気がつかないうちにアメッドのような思いを抱えているかもしれない。そんなことを考えてしまいました。(堀)


2019年/ベルギー=フランス/84 分/1.85:1/映倫区分:G 
配給:ビターズ・エンド
© Les Films Du Fleuve – Archipel 35 – France 2 Cinéma – Proximus – RTBF
公式サイト:http://bitters.co.jp/sonoteni/
★2020年6月12日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!
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アンティークの祝祭(原題:La derniere folie de Claire Darling、英題:CLAIRE DARLING)

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監督・脚本:ジュリー・ベルトゥチェリ 
原作:リンダ・ラトレッジ著「La derniere folie de Claire Darling」
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、キアラ・マストロヤンニ、アリス・タグリオーニ、ロール・カラミー、サミール・ゲスミ

意識や記憶がおぼろげになることが増えてきたクレール(カトリーヌ・ドヌーヴ)は夏のある朝、突然「今日が私の最期の日」と確信。長年かけて集めてきたからくり人形、仕掛け時計、肖像画など数々のコレクションをヤードセールで処分することにする。見事な品々の大安売りに、庭先はすぐにお客と見物人で賑わいはじめた。大きな家財から小さな雑貨まで家中を彩り続けたアンティークたちは、いつもクレールの人生と共にあった。それは、彼女の劇的な生きざまの断片であり、切なく悲劇的な記憶を鮮明に蘇らせるものでもあった。
そこに、疎遠になっていた娘マリー(キアラ・マストロヤンニ)は、母のこの奇妙な行動を友人のマルティーヌ(ロル・カラミー)から聞きつけ、20年ぶりに帰ってくる。

ドヌーヴの毅然とした表情を見ていると「今日が人生最後の日なんてわかるもの?」という疑問も払拭されてしまいます。
クレールがなぜ1人で暮らしているのか。家族はどうしたのか。最初は分からないことばかりですが、少しずつ明らかになっていきます。それとともに浮かび上がってくる娘との確執。圧倒的な存在感を放つ母親とうまくやっていくのは難しかったことでしょう。娘マリーを演じたのはドヌーヴの実の娘のキアラ・マストロヤンニですが、マリーの寂しさはそのままキアラの寂しさではないかと思ってしまいました。実際にはどうなのでしょう。
クレールの邸宅は監督の祖母が遺したもので、作品を彩るティファニーやバカラなどの高級アンティークもその祖母や監督の私物だそう。この点でも見応えたっぷりの作品です。(堀)


「こんなヤードセールがあったら私も行きたい!」と誰しも思うはず。それほど素敵な品々が並んでいました。ロケーションも、屋内の撮影も美しいです。初という白髪も似合って、あたりを払うような貫禄のカトリーヌ・ドヌーヴでした。
マストロヤンニそっくりの実の娘キアラとの共演が久しぶりです。記憶を一番確かにとどめるのはやはり我が子か?親が消えてもたしかに続いていきます。
刻み込まれた記憶はその人のもの、墓に持って行けるのはそれだけです。その記憶も混濁してきたら、執着も消えていくのでしょう。断捨離進まず、まだ執着するものがある私、あともうしばらくの時間はほしい。(白)


2019/フランス/スコープサイズ/94分/カラー/フランス語/DCP/5.1ch
配給:キノフィルムズ/木下グループ   
©Les Films du Poisson - France 2 Cinema - Uccelli Production - Pictanovo
公式サイト:http://clairedarling.jp/
★2020年6月5日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開
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なぜ君は総理大臣になれないのか

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監督:大島新

衆議院議員・小川淳也(当選 5 期)、49 歳。
衆議院が解散した2003 年10月10日、「国民のためという思いなら誰にも負けない自信がある」と語り、小川淳也は民主党から初出馬することを明らかにした。当時 32 歳。残念ながらこの選挙では当選できなかったが、2005 年に初当選する。2009 年に政権交代を果たすと「日本の政治を自分たちが変えます」と小川は目を輝かせる。保守・リベラル双方の論客から“見所のある若手政治家”と期待されていた。
しかし、2012 年に安倍政権が誕生すると表情は苦悩に満ちていく。党利党益に貢献しないと出世できず、敗者復活の比例当選では立場も弱い。権力への欲望が薄く、家族も「政治家に向いていないのでは」と本音を漏らす。
2017 年の総選挙では、希望の党への合流を決断した前原誠司の最側近として翻弄されていく。小池百合子代表への不信感、前原や地元の盟友・玉木雄一郎への仁義というジレンマの中、苦悩は益々深まる。背水の陣の選挙戦に小川はどのように挑んでいったのか̶。

小川 淳也(おがわ・じゅんや)
1971年香川県高松市生まれ。高松高校・東京大学を経て、1994年自治省(現総務省)に入省。2005年初当選。 民主党→民進党→希望の党を経て無所属。2020年5月現在、立・国・社・無所属フォーラムに属し、国会質疑で注目を集めている。著書に『日本改革原案』など。


32歳の小川淳也さんが決意表明をする直前に監督と話す姿が娘婿に似ていました。(嫁にいった娘の夫を娘婿と表現していいのか、ちょっと躊躇いがありますが、それはさておき)だからよけいに、「自分の息子でなければ普通の家に生まれた若者が政治家を目指すのは応援したいが、自分の息子だと複雑」と語るご両親の言葉にとても共感しました。もしも娘婿が選挙に出るといいだしたら、きっと素直に喜べない。しかし、小川さんのご両親は息子のために電話を掛け、頭を下げる。親ってそういうものなのよね。
そして、もっと大変なのは奥さんです。初めての選挙では就学前の娘2人を抱えながら夫を支えていました。当選を果たせなかったものの、諦めない夫を支え続けた妻の苦労はいかばかりだったでしょう。
また15年近く小川さんを追い続けた作品の中で娘2人はどんどん成長し、やがて「娘です」と襷をかけて、父と一緒に選挙区を自転車で回ります。戦う相手はいつも平井卓也。地元大手メディアのオーナー一族出身で、祖父は参議院副議長、郵政大臣を務め、父は元労働大臣という三世議員。どう見ても戦況は不利。それでも必死に、家族一丸となってがんばり続ける姿に胸が熱くなりました。
(堀)


「なぜ君は総理大臣になれないのか」のタイトルに「足りないものがあるから?」と考えました。当選に必須の「ジバン(地盤)=後援組織」、「カンバン(看板)=知名度」、「カバン(鞄)=資金」の3つのバンは、私でも知っています。小川淳也氏は能力、資質において不足はないように見えます。理想が高く、国民のことを考える、責任感のある人に当選してほしいもの。それが難しい現実に歯噛みしたくなる人は多いでしょう。政治の中枢に近づくほどに人事に絡み取られ、理想と遠くなるって変ですよね?活力バリバリの好青年だった小川氏がやつれていました。ご家族の心情を吐露した言葉に、こちらも思わず「そうそう」とうなずいてしまいました。
選挙にうって出るほどの3バンも気概もない私は、投票だけは棄権したことがありません。そして関心の低さがそのまま表れた投票率に毎回がっくりしています。先人が苦労して獲得した選挙権をきちんと行使して、と切に願っています。いろいろややこしい仕組みや背景がかなりわかりやすいこのドキュメンタリー、これも一面と参考になさってください。(白)


2020年/日本/119分
製作・配給:ネツゲン
©ネツゲン
公式サイト:http://www.nazekimi.com
★6月13日(土)よりポレポレ東中野・ヒューマントラスト有楽町で公開ほか全国順次ロードショー
posted by ほりきみき at 14:07| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月11日

君がいる、いた、そんな時。

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監督・脚本:迫田公介
撮影:小山田勝治
主題歌:オカダノリコ
出演:マサマヨール忠(岸本正哉)、坂本いろは(香山涼太)、小島藤子(祥子)

DJカヤマこと香山涼太の校内放送が鳴り響く小学校。6年生の岸本正哉は、お父さんは日本人、お母さんがフィリピン人のハーフ。学校では「ガイジン」といじめの種にされている。正哉の楽しみは新米司書の祥子さんと話すこと。自分だけと思っていたこのオアシスに、ウザい校内放送でクラスでも浮いている涼太が割り込んできた。涼太のトンデモ放送計画に祥子さんが賛成したのが面白くない。自分の知らなかった祥子さんの秘密を、なぜか涼太が知っていたのも悔しい。

広島と呉でオールロケの本作。迫田監督は「生きるのが下手で不器用なので、同じように不器用な3人を描いた」そうです。私を含めてたぶん誰にもそんな面があり、傷も抱えていながらもなんとか取り繕って生きています。正哉はいじめにあうけれど、家族は仲が良く、涼太はうるさいくらい元気ですが、家では独りぼっちです。祥子さんには内緒にしていることがあります。
気持ちをうまく伝えられない正哉と涼太ですが、「大事な誰かのために」だったら思いがけない力が出て、思った以上のことができる?そんなささやかだけれど大きいとも言える希望を叶えて見せてくれた作品。正哉と涼太が祥子さんのために何ができたのか、ぜひスクリーンでご覧ください。
キャストのマサマヨール忠くんと坂本いろはさんは初オーディションを経ての、初演技です。いろはさんは女の子ですが、なんと男の子に間違われて予選を通過したそうです。女の子とわかっても涼太役に決定。涙でぐしゃぐしゃになりながらみごとにやりぬきました。いつの日か別の作品で会うことができるでしょうか。楽しみにしています。(白)


クラスにうまく馴染めない正哉と涼太。「担任はなぜ気がつかないの? 何とかしてあげて」という思いで見ていました。でも、担任がいじめに気がついて何とかしてくれるクラスなら、最初からいじめは起きないのかもしれません。
祥子と話すことで気を紛らわせ、しょうがないと受け入れてきた正哉が涼太と過ごすうちに自分の力で状況を変えるまでに成長する。もしかして子どもの成長は大人より友だちの方が大きな影響を及ぼすものかもしれないと思いました。
涼太の問題は解決されないままでしたが、涼太が声を挙げることを願わずにいられません。(堀)


2020年/日本/カラー/85分
配給:とび級プログラム
(c)とび級プログラム
https://kimi-iru.com/
★2020年6月13日(土)新宿K’s cinemaほか全国順次ロードショー
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2020年06月09日

タッチ・ミー・ノット ローラと秘密のカウンセリング 原題:Touch Me Not

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監督・脚本・編集: アディナ・ピンティリエ
出演: ローラ・ベンソン、 トーマス・レマルキス、 クリスティアン・バイヤーライン、 グリット・ウーレマン、 ハンナ・ホフマン、 シーニー・ラブ、 イルメナ・チチコーヴァ、 アディナ・ピンティリエ

寝たきりの父親の介護で病院通いの日々を送るローラ(ローラ・ベンソン)には、人に触れられることに拒否反応を示す精神的障害があった。ある日、彼女は病院で、患者同士がカウンセリングを行う一風変わった療法を見かける。そこでは無毛症のトーマス(トーマス・レマルキス)をはじめ、さまざまな症状の人々が互いの体に触れ合っていた。
アディナ・ピンティリエ監督の初長編作で、第68回ベルリン国際映画祭においてコンペティション部門最高賞の金熊賞に輝いた。

冒頭は修正のない生の身体性や異形の人を観ることへの違和感 、衝撃や畏れ…、率直に言えば或る種の不快感を抱くかもしれない。静謐で透明感に溢れた映像ながら、本作が醸す印象濃度は強烈だ。

人と人との触れ合い、親密さを主題とした監督デビュー作が金熊賞(最高賞)と最優秀新人作品賞をW受賞した2018年のベルリン国際映画祭時、アディナ・ピンティリエ監督は翌年末から始まる真逆の世界新常識”ディスタンス”を想像し得ただろうか?
新型コロナウイルスの時代の渦中から本作を観ると、人々が無防備に晒す身体性、積極的に触れ合う密度、親密性に憧憬を覚えてしまう。

本作に登場する重度障害者、無毛症のアイスランド人、トランスジェンダーであり性カウンセリングも行う男娼、病院の患者たち、秘密クラブに集う人々…。何れも触れ合うことに癒しを求めている。性を通そうと治療であろうと、”接触は是”だと伝える。触れられることに拒否反応を示す主役ローラを除いては…。

そのローラも次第に叫び、感情を吐露し、身体性を晒して踊る姿には既にカウンセリングは必要ないように思えてくる。”自己解放”は本作に於ける一つの解答なのだろう。(幸)


2018年製作/125分/R18+/ルーマニア・ドイツ・チェコ・ブルガリア・フランス合作/ ビスタサイズ/5.1ch / DCP
配給:ニコニコフィルム
公式サイト:http://tmn-movie.com/
「仮設の映画館」にて先行オンライン配信中
★7月4日(土)よりシアター・イメージフォーラム、大阪シネ・ヌーヴォ、アップリンク京都、大分シネマ5 ほか全国順次公開★
posted by yukie at 15:32| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月06日

マルモイ ことばあつめ(英語題:Malmoe: The Secret Mission)

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監督・脚本:オム・ユナ
撮影:チョ・ヨンファン
出演:ユ・ヘジン(キム・パンス)、ユン・ゲサン(リュ・ジョンファン)、キム・ホンパ、ウ・ヒョン、キム・テフン、キム・ソニョン、ミン・ジヌン

1940年代、日本統治下の京城(ソウル)。日本語を使い、朝鮮名を日本式に変えることを強制されていた時代。民族の言葉を消さないために朝鮮語の辞書を作ろうと奮闘した人たちがいた。ジョンファンは裕福で教養もある朝鮮語学会代表。敬愛する父親が親日に変わったことに忸怩たる思いを抱いている。
息子の学費を捻出するため、高価そうなジョンファンの鞄を盗んだ貧しいパンス。中身は密かに集められた辞書作りのための資料だった。官憲に見つかると没収され関係者は逮捕されてしまう。ジョンファンは必死で取り戻し、編集仲間に話したことからパンスは仲間入りすることになった。辞書作りをしているチョ先生と刑務所で知り合い、顔のきくパンスがなにかと助けたことがあったのだ。読み書きもできなかったパンスは少しずつ文字を覚え、持ち前の明るさと仲間のつながりを駆使して辞書作りに協力していく。
 
光州事件を扱った『タクシー運転手 約束は海を越えて』脚本のオム・ユナの初監督作。今回も史実を元に、熱い血も情もある市井の人たちが活躍します。どの映画にも必ずいた気がするユ・ヘジンが、非識字者のヤクザ者として主演。この作品にユーモアを加え、応援したくなるパンスを体現しました。息子と娘を残して亡くなった妻の分まで子どもを愛し、パンスなりに大切にしています。ジョンファンに軽んじられてもめげずに、地方出身の仲間を集めて次々と方言を披露させる場面、40過ぎて初めて文字を覚えた喜びの表情など面目躍如といったところです。
ユン・ゲサンは1978年生まれ。『僕らのバレエ教室』(04)の少年っぽさが消え、『豊山犬(プンサンケ)』ではすっかり男らしくなって目を見張りましたが、本作ではスーツの似合う知識人役。一作ごとの成長ぶりが嬉しいです。
日本統治下の韓国で母国語と名前を取り上げ、弾圧してきたことを知らない私たちと、繰り返し伝えられた韓国の人たちと齟齬が生まれるのは当然、まず知ることから始めましょう。人の心はそう違うものではありません。違いを並べ立て、憎しみを煽るのは支配したい側の常とう手段です。映画人は観客に届くことを願って想いを込めて映画を作ります。一本の映画、ひとりの俳優に目が留まり、さらに知りたくなったならそれが第一歩。自分で観て、知って、考えて、判断するきっかけとするのにふさわしい作品です。エンタメ作品としても文句なし。(白)


日本統治時代の朝鮮半島では監視と弾圧の中、朝鮮の言葉だけでなく創氏改名による日本化が進められていた。このことを描いた作品としては林權澤(イム・グォンテク)監督の名作『族譜』(1978)が有名。こちらもぜひ観てほしい。朝鮮の人たちのアイデンティティをあらわした映画としてすばらしい映画です。
この作品『マルモイ ことばあつめ』は、辞典を作るのに非識字者が主人公という思いもよらない設定で作られているが、ユ・ヘジンの行動が、笑いと感動で観客の心を動かしてゆく。
私はこの作品を今年(2020年)3月初めの大阪アジアン映画祭の会場で観たけど会場にはけっこう観客がいた。すでにコロナ騒動の渦中でゲストも来日せず、映画を観るだけだったけど、たくさんの人がこの作品を観に来ていた(暁)。


2019/韓国/カラー/135分
配給:インターフィルム
(C)2020 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.
https://marumoe.com/
★6月13日(土)新潟 シネ・ウインドにて先行公開、ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 14:45| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ANNA アナ(原題:ANNA)

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監督・脚本:リュック・ベッソン
撮影:ティエリー・アルボガスト
出演:サッシャ・ルス(アナ)、ルーク・エヴァンス(アレクセイ・チェンコフ)、キリアン・マーフィ(レナード・ミラー)、ヘレン・ミレン(オルガ)、アレクサンドル・ペトロフ(ペーチャ)

1990年、モスクワの露店でマトリョーシカを売っていたアナは、パリのモデル事務所にスカウトされた。あっというまに売れっ子になり、華やかな生活を送るようになった。しかしその裏の顔はソ連の諜報機関KGBに育て上げられた最強の殺し屋だった。あるときは美貌のファッションモデル、あるときは妖艶なコールガールと姿を変え、忠実に命令をこなしていく。アメリカのCIAの罠にはまったアナは、レナード捜査官からCIAのスパイになることを持ちかけられる。その究極のミッションとは?

自分をスカウトしたKGBのアレクセイと恋仲になり、上司のオルガの期待も裏切らないアナ。実際にスーパーモデルとして活躍していたサッシャ・ルスが、マーシャルアーツの特訓をへてスーパーヒロインとして登場しました。恵まれた肢体から繰り出されるアクションを指導(スタント&ファイト・コレオグラファーというそうです)したのは『LUCY ルーシー』『トランスポーター イグニション』のアラン・フィグラルツ。『ザ・ファブル』にも参加しています。本作では、いきなりのレストラン大乱闘に驚いてください。サッシャ・ルスは『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』にも出演していたそうですが、最初に出てくるパールの島の姫様でしょうか?特殊メイクしているんですが、スタイルや横顔がそうかな。
ヘレン・ミレンが食えない冷徹な上司役で、絶対何かあると勘ぐってみてしまいました。話が二転三転するので騙されないように頑張ってついていってくださいね。アナが大活躍してくれるのでスカッとします。
パリのモデル事務所の同僚でアナと親しいモード役、レラ・アボヴァも注目。これまでのヒロインたちのように次のリュック・ベッソン作品で重要な役になるのでは、とみています。(白)


2019年/フランス、アメリカ/カラー/シネスコ/119分
配給:キノフィルムズ
(C)2019 SUMMIT ENTERTAINMENT,LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
http://anna-movie.com/
★2020年6月5日(金)よりロードショー
posted by shiraishi at 13:43| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月04日

デッド・ドント・ダイ 原題:THE DEAD DON’T DIE

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監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
製作:ジョシュア・アストラカン
製作・音楽:カーター・ローガン
撮影監督:フレデリック・エルムズ
美術:アレックス・ディジェルランド
衣装:キャサリン・ジョージ
メイクアップ:ジュディ・チン
出演: ビル・マーレイ 、アダム・ドライヴァー、ティルダ・スウィントン、クロエ・セヴィニー、スティーヴ・ブシェミ、ダニー・グローヴァー、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、ロージー・ペレス、イギー・ポップ、セレーナ・ゴメス、トム・ウェイツ、RZA

ロバートソン署長(ビル・マーレイ)、ピーターソン巡査(アダム・ドライヴァー)、モリソン巡査(クロエ・セヴィニー)が見守るのどかな田舎町センターヴィルで、死者が墓場から次々とよみがえる。ゾンビは生前の活動に引き寄せられるように町をさまよい、時間を追うごとに増殖していた。三人の警察官や葬儀屋のゼルダ(ティルダ・スウィントン)、住民たちは、生き残りを懸けてゾンビの大群に立ち向かう。

『パターソン』から3年ぶりの新作はゾンビコメディ。だが、そこはジャームッシュらしくスプラッターでも血ドバ~!でもなく、長閑で飄々とした味わいに仕上がっている。ゾンビたちが生前の嗜好を残す点が面白い。イギーポップ(怪演!)は、コーヒーゾンビ。ギターゾンビやWiFiゾンビ、ブルートゥースゾンビ、ファッションチェックをするゾンビまで!
米国の平和な田舎町に湧き出たゾンビらをアダム・ドライバー扮する警官がライトセーバーならぬナタでバッサバッサと斬り捨てる。、『スター・ウォーズ』ネタも用意されているので、お見逃しないように。

日本刀捌きがあまりにもカッコいい葬儀屋のティルダ・スウィントンは、『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』でも吸血鬼を演じ、ジャームッシュとの相性は良いようだ。事実、ティルダ・スウィントンはジャームッシュがゾンビ映画を撮ることを予感していたという。
ジャームッシュは、ゾンビ映画の元祖ジョージ・A・ロメロ監督を崇拝しており、映画製作を始めたときからゾンビ映画を撮る構想を練っていたと語っている。
『ストレンジャー・ザン・パラダイス』の公開時から観続けてきたジャームッシュ。ジャームッシュらしいゆる~い間合いと切口を見せてくれた本作を観て、なぜか”母親”のような安心感を抱いた(笑) (幸)


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製作:スウェーデン/アメリカ/2019/104分/ アメリカンビスタサイズ/カラー/5.1ch
提供:バップ
提供・配給ロングライド
Credit : Abbot Genser / Focus Features (C) 2019 Image Eleven Productions, Inc. (C) 2019 Image Eleven Productions, Inc. All Rights Reserved.
公式サイト:https://longride.jp/the-dead-dont-die/
★TOHOシネマズ日比谷ほかにて2020年6月5日(金)公開★


posted by yukie at 12:10| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月03日

アンナ・カリーナ 君はおぼえているかい 原題:Anna Karina, souviens-toi 英題:ANNA KARINA, REMEMBER

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監督、脚本: デニス・ベリー
プロデューサー:シルヴィ―・ブレネ
出演:アンナ・カリーナ

1940年、デンマーク・コペンハーゲン生まれのアンナ・カリーナは17歳で故郷を飛び出す。パリのサンジェルマン・デプレに到着した彼女は、ようやく自分のいるべき場所を見つけたと確信。世界的デザイナーのココ・シャネルにアンナ・カリーナと命名され、一躍人気モデルとなった17歳の家出娘をゴダール監督が気に入り映画に出演させる。

アンナ・カリーナ、アンナ・カリーナ…その名前をつぶやくだけで甘酸っぱく切ない想いが胸いっぱいに広がる。アンナ・カリーナ80歳、ジャン=リュック・ゴダール90歳を迎える2020年を目前にした’19年12月14日、永遠のミューズ・アンナは旅立った。本作は夫のデニス・ベリー監督がアンナへの愛と敬意、万感の思いを込めたドキュメントである。
名前を口にするだけで胸ときめく人が、55分間スクリーンを占領し続けるのだ!瞬きするのも惜しい気持ちで魅入った。ゴダールやゲンズブールとのオフショット、様々な逸話や映画監督としての顔も披露される。アンナの女優人生=仏映画史として観ることもできる貴重な記録だ。

戦火のコペンハーゲンで生まれ、父を知らないアンナ。母に育児放棄され、愛情を注いでくれた祖母は他界。孤独と飢えを凌いだ家出少女を救ったパリ。モデル業で出会ったココ・シャネルがアンナ・カリーナと命名したことなど興味深い生立ちが綴られる。

モデルのアンナを見染めたゴダールが『勝手にしやがれ』のヒロインをオファーするも素気無く断ったアンナ。役を射止めたジーン・セバーグはベリー監督の前妻でもある。何という運命の悪戯か!

歌手志望だったアンナは、セルジュ・ゲンズブールと出会い、歌手の夢を果たす。「太陽よ!」と歌い上げるアンナの幸せそうな顔が眩しい。本作は挿入映像の権利から今年限りの公開だ。また『女と男のいる舗道』『女は女である』も同時上映されるが、『気狂いピエロ』は権利の関係で日本最終上映となる。この機会を逃すまじ!(幸)


配給:オンリー・ハーツ
2017年製作/55分/フランス/カラー
© Les Films du Sillage – ARTE France – Ina 2017
公式サイト: http://annakarina.onlyhearts.co.jp/
★6月13日(土)より新宿K’s cinema他にて全国順次公開★
posted by yukie at 17:35| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする