2020年05月31日

未成年(原題:미성년/Another Child) 

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監督:キム・ユンソク
脚本:キム・ユンソク、イ・ボラム
出演:ヨム・ジョンア、キム・ソジン、キム・ヘジュン、パク・セジン、キム・ユンソク

父が不倫していることを知った女子高生のジュリ(キム・ヘジュン)。その相手は、問題児として知られる同級生ユナ(パク・セジン)の母ミヒだという。ジュリはユナに母親の不倫を止めるよう忠告するが、激しい口論の末ユナは母がジュリの父の子を妊娠していることを告げ、ジュリの母にまでその事実を暴露してしまう。思いもかけない告白に戸惑い、また現実から目を背けようとする両親の姿に傷つくジュリ。一方のユナも、娘を顧みず不倫の恋にのめり込んでゆく母の姿を見て深い孤独を感じていた。そんな最中、2つの家族を決定的に揺るがす、ある事件が起こる…。

キム・ユンソクが同名の舞台を原作に思春期の少女たちの物語の脚本を書きあげて、監督デビューしました。親の不倫に傷つく2人の女子高生の感情の機微を浮かび上がらせています。そして、キム・ユンソク自身は覚悟もなく不倫に走って醜態を見せる父親を演じ、男としての情けなさを見事なほどにさらけ出しました。ハ・ジョンウと組んだ『チェイサー』や『哀しき獣』をイメージして見ると、はぐらかされた気持ちになるかもしれませんが、そんな方はぜひ公開中の『暗数殺人』をご覧ください。
キム・ユンソクが演じた不倫夫だけでなく、彼の不倫相手ミヒの元夫も出番は少ないものの、そのだらしなさは記憶に残ります。一方、妻や不倫相手は腹が据わった行動力を見せました。男ってどいつもこいつも…思わず、そんな言葉が口から出てしまうかもしれません。
本作は韓国映画界最高峰の栄誉である青龍映画賞で新人監督賞と新人女優賞の2部門にノミネートされ、キム・ユンソク自身の受賞は残念ながら逃したものの、キム・ヘジュンに新人女優賞をもたらしました。監督としての次回作に期待したくなりますね。(堀)


2019年/韓国/カラー/96分
配給:クロックワークス
© 2019 SHOWBOX AND REDPETER FILM ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:http://klockworx-asia.com/miseinen/
★2020年6月5日(金)シネマート新宿、シネマート心斎橋にて公開

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2020年05月29日

ハリエット(原題:HARRIET) 

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監督:ケイシー・レモンズ
出演:シンシア・エリヴォ、レスリー・オドム・Jr、ジャネール・モネイ

1849年アメリカ、メリーランド州。ブローダス農場の奴隷ミンティ(シンシア・エリヴォ)は、幼いころから過酷な労働を強いられていた。そんな彼女の願いはただ1つ、いつの日か自由の身になって家族と共に人間らしい生活を送ること。ある日、借金の返済に迫られた農場主がミンティを売りに出す。遠く離れた南部に売り飛ばされたら、もう二度と家族には会えず、お互いの消息すらわからなくなってしまう。脱走を決意したミンティは、奴隷制が廃止されたペンシルバニア州を目指してたった1人で旅立つのだった―。

主人公のハリエット・タブマンはアフリカ系アメリカ人として史上初めて米ドル新紙幣に採用され、アメリカでは誰もが知る実在の奴隷解放運動家。そんなハリエットを演じたのはシンシア・エリヴォ。ミュージカル「カラー・パープル」の主人公セリー役でブロードウェイ・デビューを果たし、2016年のトニー賞主演女優賞、グラミー賞、エミー賞ほか数々の賞を総なめにした実力派スターです。初主演の本作で第77回ゴールデングローブ賞、第92回アカデミー賞において主演女優賞と、自ら歌うテーマ曲「スタンド・アップ」が主題歌賞にダブルノミネートという快挙を果たしました。
愛する人との生活を夢見ていた幼さが残る女性が苦難を経て、たくましくなり、歴史に残る偉業を達成する。ハリエットの表情の変化をシンシア・エリヴォは少しずつ、でも確実に表現しています。
ハリエット・タブマンは日本人には馴染みの薄い存在ですが、この作品をきっかけに日本でも知名度が一気にアップするはず。(堀)


渋谷の映画館で『ハリエット』を観た。この映画を観るまで、奴隷を逃がすために働いていた元奴隷の女性がいたなんて知らなかった。実はこの週は『グローリー ー明日への行進ー』(2014年作)も観た。これは1965年3月7日、アラバマ州セルマという場所で黒人の選挙権を求めてデモ行進をしていた人たちが警官隊の暴力により弾圧された「バーミンガムの血の日曜日事件」というアメリカの歴史に大きな衝撃を与えた事件がおこり、これがきっかけで、次第に白人たちも巻き込んだ歴史的大行進へと発展していくさまを史実を元に描いた作品。
この二つの作品を見て、私の社会への関心の原点は小学校の頃に知った人種差別、奴隷問題だったと思い出した。「アンクル・トムの小屋」を読んだのがきっかけだった。もう50年以上前のことだけど、私が中学生だったのは1964年~67年。この「バーミンガムの血の日曜日事件」のことはリアルタイムでニュースを見た経験がある。そしてアメリカの公民権運動が盛り上がった時代だったので、マルティン・ルーサー・キング牧師、マルコムX、ハリー・ベラフォンテ、ジョン・バエズ、ボブ・ディランなどの名前をよく目にし、聞いた。あの頃、人種差別・奴隷問題、公民権運動、アメリカの歴史などの本をよく読んでいた。その中に奴隷を逃がすための運動のこともあったけど、ハリエット・タブマンのことは知らなかった。あるいは読んだことはあったけど忘れてしまったのか。それにしても自身が逃亡奴隷として逃げ延びただけでなく、その後、危険を顧みず、何度も南部と北部を行き来して数十人の奴隷を脱走させるのに貢献したとは。すごい!
今年(2020)、20ドル新紙幣にハリエット・タブマンが採用される予定になっていたそうだけど、トランプ政権になってから横槍が入って延期になっているとか。まさかくつがえそうなんて考えてないよね。いつか実現するといいな。
この作品では、たくさんの黒人霊歌(ゴスペル)が歌われていたのも印象的。懐かしく嬉しかった。タイトルはわからないけど聞き覚えのある歌もいくつかあった。ゴスペルの女王マヘリア・ジャクソンのCDをいくつか持っているけど、この中にある曲もあったのかも(暁)。


2019年/アメリカ/125分/カラー/シネスコ
配給:パルコ
©2019 Focus Features LLC.
公式サイト:https://harriet-movie.jp/
★2020年6月5日(金)全国ロードショー!
posted by ほりきみき at 22:28| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

罪と女王(原題:Dronningen、英題:Queen Of Hearts)

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監督・脚本:メイ・エル・トーキー
共同脚本:マレン・ルイーズ・ケーヌ
撮影:ヤスパー・J・スパンニング
音楽:ヨン・エクストランド
出演:トリーヌ・ディルホム、グスタフ・リン、マグヌス・クレッペル、スティーヌ・ジルデンケルニ、プレーベン・クレステン セン

児童保護を専門とする優秀な弁護士のアンネは、優しい医者の夫と幼い双子の娘たちと美しい邸宅で完璧な家庭を築いていたが、夫と前妻との息子である17歳の少年グスタフが問題を起こし退学になったため、スウェーデンからデンマークに引き取ることに。グスタフは衝動的な暴力性があり家族に馴染もうとしなかったが、そんな子供達と仕事で常に接しているアンネは根気よく彼を家族として迎え正しい方向へ導こうと努める。しかし、グスタフと少しずつ距離を縮めていくうちに、親密さが行き過ぎてしまい、アンネはグスタフと性的関係を持ってしまう。そして、そのことが大切な家庭とキャリアを脅かし始めた時、アンネは残酷な選択をする。

知的で美しい女性が義理の息子とただならぬ関係になってしまう。たびたび描かれてきたテーマですが、本作がこれまでの作品と大きく違うのは、展開が倫理観の範疇に収まり切れないところです。「一応、映画だし、そこはやっぱり、最後はねぇ」というラストを予想していたら、「え~、それでいいの?!」と驚くことでしょう。しかし、もし自分が主人公なら、心の奥底ではこの結末を願ってしまっていたに違いありません。決して口にはできないけれど。
人間の醜い欲望の本質をえぐり出したような脚本を北欧作品ならではのサスペンスタッチで仕上げてあります。どんなラストなのか、気になったら、ご覧になるのはぜひ1人で。もし、主人公に共感してしまったら、その思いは心に秘めておく方がいいかも。
本作は2月に開催された「トーキョーノーザンライツフェスティバル2020」で『クイーン・オブ・ハーツ』のタイトルで上映されました。
サンダンス映画祭で観客賞受賞し、圧倒的国内評価でアカデミー賞デンマーク代表作品に決定。そしてデンマークが誇る偉大な女性監督スサンネ・ビア、ロネ・シェルフィグですら成し得なかった女性初のデンマーク・アカデミー賞(ロバート賞)作品賞を含む主要9部門で受賞。さらに北欧最大の映画賞であるヨーテボリ国際映画祭で最優秀ノルディック賞・観客賞・最優秀俳 優賞の3冠受賞。北欧5カ国から選出されるノルディック映画賞ではグランプリに輝きました。(堀)


2019年/デンマーク=スウェーデン/デンマーク語・スウェーデン語/127分/シネスコR15
配給:アット エンタテインメント
©2019 Nordisk Film Production A/S. All rights reserved
公式サイト:http://www.at-e.co.jp/film/queen/
★2020年6月5日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺、シネ・リーブル梅田、他にて公開
posted by ほりきみき at 21:36| Comment(0) | デンマーク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

花のあとさき ムツばあさんの歩いた道

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監督・撮影:百崎満晴
プロデューサー:伊藤純
語り:長谷川勝彦
制作著作:NHK
制作:NHKエンタープライズ

埼玉県秩父の山あいの村 楢尾集落。長くここで暮らしてきた小林ムツさんと夫の公一さんは、使われなくなった段々畑をひとつずつ閉じて山に還していく。これまでの感謝の気持ちを込めながら、花や木を丁寧に植える。その数1万本以上になった。自分たちがいなくなった後でも咲き続ける花を選んでいる。「いつか山にきた人が花が咲いているのを見たらどんなに嬉しかろう」と。2002年のテレビ番組が好評を博してシリーズとなり、このほど映画化された。

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テレビ番組は見ていなかったので、この作品で初めてムツさんに会いました。なんとも可愛らしい声と笑顔のおばあちゃんです。小柄な身体でずいぶんな急斜面をひょいひょいと歩き、農作業を続けます。山とそこに生きる全てに愛情を注いでいるような人でした。夫の公一さんは言葉少ないですが、明るく屈託のないムツさんとお似合いのご夫婦です。黙々と苗木を植え、一休みできるようにとベンチを作り…高齢の二人にはいつしか別れのときが近づいていました。
観た後、自分の祖父母や両親の姿が浮かびました。真面目に働き、子や孫を育て、静かに人生の幕を閉じていきました(母はムツさんと同い年で元気です)。大きな仕事を成したり名を上げたりしなくとも、私にはかけがえのない人たちです。昔話をしてくれた声や手料理の美味しさを久しぶりに思い出しました。
楢尾集落は自分の故郷ではありませんが、なんだかもう一つ故郷を持てたような気がしました。いつか訪ねていってムツさんの花々に会いたいものです。百崎満晴監督と伊藤純プロデューサーにお話を伺いました。本誌に2p掲載済みです。取材ブログにも掲載しています。(白)


年をとって畑仕事を続けられなくなったと「花をさかせてふるさとを山に還したい」という心意気で耕さなくなった畑に花を植え続ける秩父のご夫婦の話。NHKが18年撮影を続けてきた映像を映画化したというのだけれど、このご夫婦の話として番組があったのかどうかはわからない。たぶん「小さな旅」とか、そういう番組で放映されていたのかな? 秩父という名前が出てくると番組を見ていたから、その中にこの夫婦の話もあったのかもしれない。この映画でムツさんたちが畑に花を植え続ける姿に涙がでました。
『ふたりの桃源郷』『人生フルーツ』とも通じるような作品だと思いました。
秩父へは何度も行っているのだけれどムツさんたちが住んでいた下久保ダム上流の秩父市吉田太田部地区というところは行ったことがないのですが、いつか機会があったらぜひ行ってみたいです。桜の花がきれいな4月初め頃がよさそうです(暁)。


☆テレビ番組「秩父山中 花のあとさき・最終章~ムツばあさんの歳月~」(NHK BS プレミアム/2019 年 5 月放送)が、このたび第 35 回農業ジャーナリスト賞を受賞しました。

2020 年/日本/112 分/16:9/カラー/ドキュメンタリー
©NHK
配給:NHKエンタープライズ、新日本映画社
宣伝配給協力:ウッキー・プロダクション
https://hana-ato.jp/
★2020年6月1日(月)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開 
posted by shiraishi at 20:23| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月24日

ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語   原題:Little Women

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監督・脚本:グレタ・ガーウィグ(『レディ・バード』) 
原案:ルイザ・メイ・オルコット
出演:シアーシャ・ローナン、ティモシー・シャラメ、フローレンス・ピュー、エリザ・スカンレン、エマ・ワトソン、ローラ・ダーン、メリル・ストリープ

南北戦争(1861~65年)の時代。アメリカ北部で暮らすマーチ家。戦争で父が不在の中、母は温かく4姉妹を見守っている。次女ジョーは、想像力が豊かで情熱的。小説家を目指して執筆に勤しむ日々。美しい姉のメグには女優の才能があると思っているが、メグが望むのは幸せな結婚。三女のベスは病を抱えた繊細で心優しい音楽家。末っ子のエイミーは、いたずら好きで恋愛やお金持ちを夢見ている。そんな4姉妹が親しくしているのが、近くに住む威勢のいい青年ローリー。ある日、ジョーはローリーから求婚されるが断ってしまう・・・

原作は、世界中で愛されているルイーザ・メイ・オルコットの小説「若草物語」(1868年)。私が小学生の頃に読んだのは、児童向けに簡略したもの。そも、まだ恋も知らない時に、どうしてあんなに夢中になったのでしょう・・・ ちゃんと原作を読んでみたくなりました。
グレタ・ガーウィグ監督も、子供の頃から何度も読み、特にジョーの個性に惹きつけられ、彼女のようになりたいと思っていたそうです。ジョー役には、『レディ・バード』でタッグを組んだシアーシャ・ローナンを再び起用。共演したティモシー・シャラメが、本作でもローリー役で出ています。
今よりも不自由で不平等だったオルコットが生きた時代に、4姉妹はそれぞれ自己を持って前に進んでいきます。中でも、ジョーは野心があって、性別を越えた人生を歩みたいと願っています。それでも、オルコットは出版社に「ジョーは結婚しなくてはいけない」と言われ、結婚させています。映画の中で、ジョーが出版社に「ヒロインは結婚させて」と言われて反論する原作にない場面を入れたのは、監督のオルコットへの敬意の表れなのです。
グレタ・ガーウィグ監督といえば、女優としても活躍していて、ノア・バームバック監督の『フランシス・ハ』(2012年/アメリカ)では、フランシスの自由な生き様を伸び伸びと演じて笑わせてくれました。2019年3月に、ノア・バームバックとの第一子である男児を出産したとのこと。今後の活躍も楽しみです。(咲)


第92回アカデミー賞衣装デザイン賞受賞

2019年/アメリカ/135分/G
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
公式サイト:https://www.storyofmylife.jp/
★2020年6月12日(金)より全国順次ロードショー



posted by sakiko at 15:08| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月22日

映画『もったいないキッチン』緊急オンライン先行公開!


8月にシネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開となる映画『もったいないキッチン』が一週間限定オンライン先行公開!

『もったいないキッチン』は、日本が大切にしてきた「もったいない」精神に魅せられオーストリアからやってきた映画監督のダーヴィド・グロスが、日本各地を旅して食品ロス解決の糸口を探すドキュメンタリー映画。
廃棄食材などを美味しい料理に変身させる『もったいないキッチン』には、今こそ必要なアイデアが詰まっています。また外出自粛、イベント中止、学校臨時休校などによって新たな食品ロスも発生しており、この映画がお役に立ちそうです。
急遽一週間限定でオンライン先行公開が決定。
上映開始前より、予約注文受付中!

期間:5月25日(月)0:00から5月31日(日)24:00
料金:一般1,800円/人
特別料金1,260円/人 ←食材活用の料理など、もったいないアイデアを指定ハッシュタグ付きでSNS発信した方
配信方法:Vimeoにて24時間レンタル。日本語字幕版の配信です。
Vimeo手数料10%を除いた売上の50%を封切館のシネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺に分配します。
詳細はこちら!

監督・脚本:ダーヴィド・グロス
出演:ダーヴィド・グロス、塚本ニキ、井出留美 他
プロデューサー:関根健次
2020年/日本/日本語・英語・ドイツ語/95分/カラー/16:9/
制作・配給:ユナイテッドピープル/
配給協力・宣伝:クレストインターナショナル/
提供:クックパッド株式会社
https://www.mottainai-kitchen.net
★8月、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺他全国順次ロードショー!
posted by shiraishi at 14:23| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月17日

ホドロフスキーのサイコマジック (原題:Psychomagie, un art pour guerir) 

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監督・脚本:アレハンドロ・ホドロフスキー
出演:アレハンドロ・ホドロフスキー、アルチュール・アッシュほか

「サイコマジック」とはホドロフスキーが考案した心理療法。自身をフロイトと対置した上で、「サイコマジック」は科学が基礎とされる精神分析的なセラピーではなく、アートとしてのアプローチから生まれたセラピーであると語る。
実際にホドロフスキーのもとに悩み相談で訪れた10 組の人々が出演し、「サイコマジック」がどのように実践され、作用しているのかを映し出す。長年にわたり個人のトラウマに応答する一方、作品後半で社会的な実践「ソーシャル・サイコマジック」を展開した。

衝撃的な映像でスタートするので、ホドロフスキーの作品が初めての人は作品を間違えたのかと驚くかもしれません。しかし、それもセラピーの1つ。
登場する患者たちが抱えている問題はみな違うけれど、根本にあるのは抑圧し過ぎた感情。精神科を受診するのは心が弱いからではなく、むしろ心が強くて我慢し過ぎた結果なのかもしれません。ホドロフスキー患者の心に寄り添い、大胆に開放していきます。これなら自分にもできるかもしれないと思うセラピーもありました。
また、ホドロフスキーのこれまでの作品での映像表現が挟み込まれ、それらの根底には「サイコマジック」があったことが分かりました。実はホドロフスキーのこれまでの作品は分かりにくくて苦手に思っていましたが、今なら理解できるかもしれません。過去作が見てみたくなりました。(堀)


2019年/フランス/104分/フランス語、スペイン語、英語/1:1.85/5.1ch
配給:アップリンク
©SATORI FILMS FRANCE 2019 ©Pascal Montandon-Jodorowsky
公式サイト:https://www.uplink.co.jp/psychomagic/ ★2020年4月24日(金)、アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺、新宿シネマカリテほか全国順次公開
posted by ほりきみき at 17:43| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月15日

ケヴィン・オークイン:美の哲学 (原題:Larger Than Life: The Kevyn Aucoin Story)

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監督:ティファニー・バルトーク
字幕翻訳:額賀深雪
出演:ケイト・モス、リンダ・エヴァンジェリスタ、ナオミ・キャンベル、シェール、イザベラ・ロッセリーニ、ブルック・シールズほか

1980~90年代のあらゆるスーパーモデルやセレブたちを虜にした早世の天才メイクアップ・アーティスト、ケヴィン・オークイン。資生堂のブランドINOUIの全盛期のクリエイターとして活躍したことでも知られる。
幼い頃から絵を描くことと化粧をすることで自己表現をしていたケヴィンはルイジアナ州ラファイエットの小さな町からニューヨークにやってきて、どんな人にも「自分はうつくしい」と思わせるメイク哲学で、あっというまにトップに躍り出る。
細眉、リップライナーを流行らせ、光と影を駆使して立体感を出す「コントゥアリング」を広めた。しかし人気絶頂の2002年、ケヴィンは突然の死を遂げる。
ケヴィンに何があったのか。家族、かつての恋人、友人らのインタビューや、過去の映像からケヴィンの人生を浮かび上がらせていく。

ケヴィン・オークインが何者かも知らずに見始めましたが、日本にも実は大きな影響を与えていたメイクアップ・アーティストでした。
見かけは人なつっこい男の子で、誰の心の中にもすっと入り込んだのでしょう、次から次へと友人や関係者が出てきて、彼について語ります。
しかし、内面は複雑だったよう。養子であること、ゲイということ。この2つが重荷だったのか、メイクの世界では天才と呼ばれていたにも関わらず、彼の自己肯定感は低く、結果として他人を信じ切れないことが後から分かってきます。天才も人の子なのね、と思うとぐっと親近感が湧いてきました。
彼にメイクをしてもらったらどんな顔になっていたかしら?と無理は承知で思いをはせてしまいます。(堀)


2017年/アメリカ/102分
配給:アップリンク
公式サイト:https://www.uplink.co.jp/aucoin/
配信期間:5月15日(金)〜6月11日(木)/価格:1900円(税込み)/視聴期間:2日間
★オンライン配信にて緊急公開中
2020年アップリンク渋谷、吉祥寺ほか全国劇場にて公開予定


posted by ほりきみき at 11:52| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月13日

ハウス・イン・ザ・フィールズ(原題: TIGM N IGREN)

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監督・撮影:タラ・ハディド
字幕翻訳:松岡葉子
出演:カディジャ・エルグナド、ファティマ・エルグナドほか

秋、収穫の季節には畑仕事をして、森でイチヂクを摘む。冬、厳しい寒さの中、火の周りで身を寄せ合う。春、アーモンドやりんごの花が咲き、世界がふたたび色づく。夏、緑と太陽の光あふれる美しい季節の中、ラマダンが明け、盛大な宴が始まる
弁護士を夢見る少女カディジャとその姉のファティマは、モロッコの山奥で暮らすアマジグ族の姉妹。自然の恩恵を受け、数百年もの間ほとんど変わらない生活を送っている。そんな日々の中、ファティマが学校を辞め、結婚することになる。カディジャは、大好きな姉と離ればなれになってしまう寂しさ、そして自分も姉のように学校を卒業できないかもしれないという不安を募らせていく。

本作は、アトラス山脈の四季折々の自然風景と、彼女たちの慎ましくも美しい日々の営みをありのままに記録したドキュメンタリー。第67回ベルリン国際映画祭フォーラム部門最優秀ドキュメンタリー賞にノミネート他、世界の映画祭に出品され話題を呼んだ。
監督は、世界的建築家ザハ・ハディドを叔母に持ち、写真家としても活躍するタラ・ハディド。本作の製作にあたり、5年にわたって現地に通いアマジグ族と寝食をともにしている。被写体に寄り添った親密な映像は、なくなりつつある生活様式や文化を記録しながら、人々の内なる想いをも紡いでいく。

作品冒頭でカディジャは「母親が家族の中でいちばん早く起きて家事をする」と紹介する。どこの国も朝の風景は変わらないらしい。自然が息づく環境で、昔ながらの生活。家事労働は大変だろう。一方の父親はかつてフランスやドイツに出稼ぎに行っていたようだが、いろいろ苦労した末に帰国し、もう30年以上、国外に出たことはないという。作品の中ではいつもどっしり座って何もしない。
しかし、確実に変化は生じている。姉は親の決めた相手と結婚するため学校をやめた。女に教育はいらないということか。「夏になったら女になる」とつぶやく姉から未知の世界への不安が伝わってくる。それでも結婚したら、彼の村には住まず、カサブランカへ行って働きたいと語る。妹は男女平等で、女も法律で仕事をすることが認められているといい、学校に通って弁護士を目指す。姉に古い価値観からの過渡期を感じ、妹はその先にある新しい文化の象徴に見えた。嫁いだ姉を想い、残された寂しさに震える妹が切ない。(堀)


アマジグ族というとピンとこないかもしれませんが、蔑称で、ベルベルと呼ばれてきた人たちのこと。フェニキアやローマやアラブが北アフリカに侵攻する前から、暮らしていた人たち。
映画では、冒頭からティフィナグ文字で書かれたアマジグ語を目にすることができます。
会話の中で、国王令で男女同権をうたっていることが語られます。姉は「結婚は義務だから」と、親の決めた結婚を受け入れます。(クルアーンに結婚はすべきものと書かれています) 一方で、結婚したら夫と共に都会で暮らして働きたいと妹に語ります。 「男が変化をいやがって反対デモをしたニュースを見た」という言葉もあって、国王が男女同権を進めようとしても、なかなかそうはいかない現実も垣間見られます。
なお、アマジグ語や、モロッコの現国王のことなどについて、スタッフ日記に書きました。
http://cinemajournal.seesaa.net/article/475143091.html
味わい深いドキュメンタリー、ぜひいち早くオンラインでどうぞ! (咲)



2017年/モロッコ、カタール/アマジグ語/1:1.85/86分
配給:アップリンク
公式サイト:https://www.uplink.co.jp/fields/
配信期間:5月1日(金)〜5月28日(木)/価格:1900円(税込み)/視聴期間:2日間
★オンライン配信にて緊急公開中
2020年アップリンク渋谷、吉祥寺ほか全国劇場にて公開予定



posted by ほりきみき at 11:49| Comment(0) | モロッコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月02日

仮設の映画館

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先週のスタッフ日記にも書きましたが、こちらにも。

休館している映画館にも収入の道があります。自宅にいながら新作を観ることができます。
『選挙』『精神』などのドキュメンタリーで知られる想田和弘監督の『精神0』は、5月2日から全国30館以上のミニシアターで公開予定でした。
そこへこのコロナ禍です。
配給会社「東風」と想田和弘監督が始めたこの試みは、通常の興行収入と同様の仕組みをオンラインで行うというものです。

●観客は、「仮設の映画館」サイトにあるミニシアターを選び、ストリーミングで鑑賞します。
 動画共有サイトVimeoが対応している以下のブラウザで再生可能です。
 ・Chrome ・Firefox ・Internet Explorer ・Microsoft Edge ・Safari
●料金は劇場の一般的な当日料金と同じ1800円。
●売上は劇場と配給会社で折半、さらに配給と製作者が分けます。

サイトには4月25日からの『春を告げる町』
5月2日から鑑賞できる作品の入り口があります。
『精神0』今日はYouTubeで想田和弘監督と柏木規与子プロデューサーのご挨拶が生配信されていました。
『巡礼の約束』
『タレンタイム~優しい歌』
『グリーン・ライ 〜エコの嘘〜』
『どこへ出しても恥かしい人』
『だってしょうがないじゃない』
5月8日から
『島にて』
ほか『タゴール・ソングス』『プリズン・サークル』『タッチ・ミー・ノット~ローラと秘密のカウンセリング~』が待機中です。
作品によって公開期間や条件が異なるようですので、その都度お確かめください。

いつ終わるともしれないこの状況が好転するまで、「仮設の映画館」は運営されるそうです。(白)
posted by shiraishi at 18:38| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ブリリアショートショートシアター 5月は日替わり配信

自粛要請のため、試写も映画上映もなくなり、いつ再開できるのか残念ながら予測もできません。

ネットで鑑賞できる作品もありますので、こちらにご紹介していきます。
ショートフィルムはいかがでしょうか?
これまで毎週1回新作がアップされていましたが、5月は毎日日替わりです!
33作品のラインナップがあがっていましたので、どうぞ~。
アクセスはこちらから

Twitter   https://twitter.com/short_theater
Facebook https://www.facebook.com/Brillia.SHORTSHORTS.THEATER/
inastagram https://www.instagram.com/sst_online/

posted by shiraishi at 18:26| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする