2020年02月23日

娘は戦場で生まれた  英題:FOR SAMA 

musumewa.jpg


監督:ワアド・アルカティーブ、エドワード・ワッツ
出演:ワアド・アルカティーブ、サマ・アルカティーブ、ハムザ・アルカティーブほか

2012年3月、シリア、アレッポ。
マーケティングを学ぶ18歳の女子学生ワアドは、デモに参加したことをきっかけに、スマホで動画を撮りはじめる。アラブの春に触発され、民主化を求める平和的な運動だったが、やがてアサド政権をはじめ様々な勢力が台頭し、第二次世界大戦後、最大の人道危機とも言われる内戦状態になる。
そんな中、ワアドは医師を志す青年ハムザと出会い恋に落ちる。ハムザたちが設営した病院でプロポーズされ結婚。2016年1月1日、ワアドはパパの病院で娘を産み「サマ」と名付ける。アラビア語で空という意味だ。
ワアドは、サマのために、どんな街でサマを産み、どれだけ彼女を愛しているかを伝えるために動画を撮り続ける。だが、サマが生まれた時には、2016年がアレッポ陥落の年として記録されることになるとは思いもよらなかった・・・

アサド政権やロシア軍が、病院を爆撃するという蛮行を繰り返していることに憤りを感じます。地図に載っていない建物を探して、病院を設営しても、また破壊されてしまいます。人々の行き場がない絶望的な状況は想像を絶します。
ワアドがトルコに避難している義父のお見舞いに行った折、義父からサマを預るといわれるのですが、ワアドはアレッポにサマを連れ帰ります。例え、危険はあっても家族一緒にいたいという思い。
『アレッポ 最後の男たち』でも、トルコに逃れることもできるのに、アレッポに残って町を救おうと闘う人たちが描かれていました。故郷アレッポを愛する思いに涙です。

2016年12月にワアドが一家でアレッポから避難したとき、映像も無事持ち出し、アレッポの市民が蒙った生々しい様子をこうして世に出すことができたのです。
今はロンドンに住むワアド一家ですが、いつの日か故郷に帰りたいという思いは、やむをえず国を出た多くの人たちも同じでしょう。
美しい町並みは破壊されてしまいましたが、建築家になって町をなおすという少年や、燃えたバスに色を塗る子どもたちの姿に、人々が安心して暮らせる町が再建されることを願うばかりです。(咲)


泥沼化する戦地シリアで、戦争と人間を赤裸々に映しだした緊迫のドキュメンタリー
内戦の続くシリア、アレッポ。2012年から撮り始め、アレッポ陥落の2016年まで、この状況を撮影したのがこの映像。本当の戦争状態の記録である。ジャーナリストを目指す女学生ワアド・アルカティーブは、アサド独裁政権反対デモへの参加をきっかけにスマホでの撮影を始めた。しかし、平和を願う人々の思いはかなわず、内戦は激化するばかり。美しかった都市は破壊されていった。 
そんな中でワアドは、医師を目指し仲間たちと廃墟の中に病院を設けたハムザと出会い結婚。女の子が生まれ、自由と平和への願いを込めて、アラビアで「空」を意味する「サマ」と名付けた。サマはこんな状況の中でも無邪気。それがいっそう涙を誘う。
幸せもつかの間、独裁政権側の攻撃は激しさを増し、ハムザたちの病院は街で最後の医療機関となってしまった。明日をも知れぬ身で母となったワアドは、家族や愛する人々の生きた証を映像として残すことを心に誓い撮影を続けた。これは、若き母親ワアドの目を通して記録された戦争の現実。
脱出成功したワアドが、無差別空爆で無残に失われていく命、祖国を愛する人々の悲しみを死と隣り合わせの中でとらえた映像は、世界中を驚愕させた。ワアドは「私にとってこれは、私の人生そのもの。母親のワアド、活動家のワアド、市民ジャーナリストのワアド、そして映画監督のワアド。これらすべての私が物語を具体化し導いてくれました」と語っている(暁)。


☆シアター・イメージフォーラムでは、初日2月29日(土)14:35の回上映後、ワアド・アルカティーブ監督と、夫のハムザ医師がスカイプで登壇しQ&Aを開催


2019年/イギリス、シリア/アラビア語/100分
日本語字幕:岩辺いずみ/字幕監修:ナジーブ・エルカシュ
© Channel 4 Television Corporation MMXIX
配給:トランスフォーマー
公式サイト:http://www.transformer.co.jp/m/forsama/
★2020年2月29日(土)よりシアターイメージフォーラムほか全国順次公開





posted by sakiko at 19:43| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

架空OL日記

kakuu.jpg

監督:住田崇
原作:バカリズム「架空OL日記」小学館文庫
脚本:バカリズム
撮影:早坂伸
主題歌:「月曜日戦争」吉澤嘉代子
出演:バカリズム(私)、夏帆(藤川真紀)、臼田あさ美(小峰智子)、佐藤玲(五十嵐紗英)、山田真歩、三浦透子(真壁香里)、シム・ウンギョン(ソヨン)、石橋菜津美、志田未来(リエ)、坂井真紀(小野寺課長)

私は入行6年目の26才OL。月曜日は憂鬱だ。眠いしだるいし満員電車に揺られて、職場の最寄り駅で同期のマキと一緒になり、激しく不毛な会話ながら盛り上がっているうちに到着。更衣室でまたひとしきりおしゃべりをする。上司の悪口や会社の設備の文句を言ったり、女子会で美味しいものを食べたり、カラオケに行ったり、ジムでゆるく走ったり。土日はあっというまに過ぎてまた月曜日になる…。

2017年に連続ドラマで好評を博していたとは全然知らず、バカリズムさんも今回やっと顔と名前が一致(テレビほとんど見ないので)。ぼそぼそ、淡々とした語り、なんにも気負わない(そう見える)バカリズムさんがあまりにも自然にOLになっていました。女優陣に交じって違和感がない!
バカリズムさんがこっそりOLになりきって、3年も綴っていたブログが元と知ってまた驚きました。現役OLの方々にはあるある感満載でしょう。大きな事件などないけれど、そうそう、あるあると平凡な毎日を味わいました。(白)


2019年/日本/カラー/100分
配給:ポニーキャニオン、読売テレビ
(C)2020「架空OL日記」製作委員会
https://www.kaku-ol.jp/
★2020年2月28日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 19:37| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

黒い司法 0%からの奇跡(原題:Just Mercy)

kuroi-shiho.jpg
 
監督:デスティン・ダニエル・クレットン
脚本:デスティン・ダニエル・クレットン、アンドリュー・ランハム
原作:ブライアン・スティーブンソン著「黒い司法 黒人死刑大国アメリカの冤罪と闘う」(亜紀書房刊)
出演:マイケル・B・ジョーダン、ジェイミー・フォックス、 ブリー・ラーソン、オシェア・ジャクソン・Jr.

黒人への差別が根強い1980年代アラバマ州、犯してもいない罪で死刑宣告された黒人の被告人ウォルター(ジェイミー・フォックス)を助けるため、新人弁護士ブライアン(マイケル・B・ジョーダン)は無罪を勝ち取るべく立ち上がる。しかし、仕組まれた証言、白人の陪審員たち、証人や弁護士たちへの脅迫など、数々の差別と不正がブライアンの前に立ちはだかる。果たしてブライアンは、最後の希望となり、彼らを救うことができるのか。

弱者のために働きたい。ハーバード出身の黒人弁護士ブライアン・スティーブンソンの奮闘を殺人容疑で捕まった黒人男性ウォルターの無実立証を中心に描いています。
ブライアン・スティーブンソンとはどんな人なのでしょう。公式サイトには、このように説明されています。

Who is ブライアン・スティーブンソン?
アメリカの弁護士、社会正義活動家。アラバマ州モンゴメリーを拠点とする司法の校正構想(イコール・ジャスティス・イニシアチブ)の事務局長も務める。
アメリカでは「黒人男性の3分の1が刑務所に入ったことがある」という問題を抱えるなか、多くの死刑囚の救済措置を勝ち取る。貧困者や黒人に対する偏見に立ち向かうその姿勢は高く評価されている。マッカーサー財団の“天才”賞ほか受賞歴多数。

日本ではあまり知られていませんが、アメリカでは有名な弁護士のようです。
ブライアンが接見を求めると、弁護士であるにもかかわらず下着まで脱ぐ身体検査を求められました。ここにまで差別があるのか! 組織を超えて蔓延る負の一体感に勝つには正義感だけでは足りない。強い信念が不可欠だとひしひしと感じます。しかし、ブライアンの正義感と信念が個々の心を動かしていく。
「この人までがこんな風に変わるんだ」とうれしい驚きも映し出していました。時間はかかっても未来に希望があると作品から伝わってきます(堀)



1988年のアラバマ州...、映画の主題、地理的な面からも、名作『アラバマ物語』を想起させる。’62年製作の’30年代を設定としていた先の作品以降も、米国の状況が変わらないという事実に慄然とする!

矛盾と義憤、犠牲の象徴である被告人に扮するジェイミー・フォックスの演技には震えを覚えた。登場時には絶望、諦念、シニカルさ、長年の拘禁反応によると思われる顔筋の弛緩が見て取れる。が、弁護士ブライアンの強靭な意思と努力、周囲の支援により、微かな希望が湧いてきた時に生じる眼光の変化にご注目頂きたい。終盤には大きなカタルシスが待ち受けている。

『ショート・ターム』『ガラスの城の約束』のデスティン・ダニエル・クレットン監督のストレートな話法、監督とは3回目のタッグであるブリー・ラーソンの自然体演技は本当に相性が良いようだ。(幸)


2020年/137分/G/アメリカ
配給:ワーナー・ブラザース映画
© 2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/kuroi-shiho/index.html
★ 2020年2月28日(金)ロードショー
posted by ほりきみき at 17:31| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

スキャンダル   原題:Bombshell

schandal.jpg

監督: ジェイ・ローチ
出演: シャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビー、ジョン・リスゴー

2016年、アメリカ最大のニュース放送局「FOXニュース」を震撼させた女性キャスターによるセクハラ提訴の実話に基づいた物語。

ベテランキャスターのグレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)は、2年前に朝のニュースから昼の番組に降格された上に、局から一方的にクビを言い渡される。降格もクビも、CEOのロジャー・エイルズ(ジョン・リスゴー)から迫られた性的関係を拒絶したせいだとして、ロジャーをセクハラ告訴する。
騒然とする局内で、看板番組の人気キャスターのメーガン・ケリー(シャーリーズ・セロン)は、大統領候補の一人であるトランプの女性蔑視発言を追及したことで、トランプの執拗な罵倒ツイートに振り回されていた。
一方、スターキャスターを目指す若手のケイラ・ポスピシル(マーゴット・ロビー)は、グレッチェンの下で働いていたが、内緒で副社長にお願いし、局で最高視聴率の番組に抜擢されるが、初日から番組トップから否定されてしまう。出世を諦めないケイラはCEOのロジャーに直談判するが、彼の返事は「服を持ち上げ、脚を見せろ」だった・・・

グレッチェン・カールソンのセクハラ提訴という一大スキャンダル劇は、2017年にロジャーが急死し、グレッチェンがFOXニュース側と過去の詳細には口を閉ざすという契約のもと和解。突然幕を閉じたこの事件を風化させてはならないと、脚本家チャールズ・ランドルフ(『マネー・ショート 華麗なる大逆転』でアカデミー賞受賞)が関係者への綿密な取材を重ねてシナリオを書き上げ、プロデューサーとしても活躍する女優シャーリーズ・セロンに届けたことにより製作が実現。
セクハラ、パワハラ、トランプ政権の裏側までも見せるスキャンダル満載の一作。
この事件は、Me Too運動より前に起こったものですが、まさにこれまでに世界の各地で女性が蒙ってきたセクハラ問題の氷山の一角。華やかに見えるテレビの世界だけでなく、どんな業種でも起こってきたこと。Me Too運動のお陰で、男性も自己規制するようになってきたとはいえ、完全に消え去る問題ではなさそうです。
アカデミー賞では、有名女優3人を当事者本人そっくりに仕上げたKazu Hiroさんが注目を集めましたが、映画の内容にもっと注目してほしいところ。(咲)


☆第92回アカデミー賞 メイクアップ&ヘアスタイリング賞受賞:Kazu Hiro(辻一弘)他

2019年/カナダ・アメリカ/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/109分
配給:ギャガ
公式サイト:http://gaga.ne.jp/scandal
★2020年2月21日(金)TOHO シネマズ 日比谷ほか全国ロードショー




posted by sakiko at 16:48| Comment(0) | カナダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

PMC:ザ・バンカー(原題:PMC: 더 벙커)

pmcthebunker.jpg

監督・脚本:キム・ビョンウ
出演:ハ・ジョンウ、イ・ソンギュン
日本語字幕:橋本裕充

韓国特殊部隊の元兵士エイハブ(ハ・ジョンウ)は民間軍事会社(Private Military Company=PMC)の傭兵で、作戦成功率100%とCIAから絶大な信頼を受けていた。
今回のミッションは韓国と北朝鮮の軍事境界線の地下30メートルに広がる巨大バンカーで捕らえた北朝鮮要人の安全な場所への護送だ。しかし、CIAの密かな策謀、仲間の裏切り、国家間の政治的な駆け引きによって孤立し、バンカー内で絶体絶命の窮地に陥る。暗殺者の汚名まで着せられたエイハブが死地を脱する唯一の道は、迫りくる敵の包囲網を突破し、捕獲した北朝鮮最高指導者“キング”を地上へと連れ出すこと。北朝鮮のエリート医師ユン(イ・ソンギュン)の協力を得たエイハブは、瀕死の重傷を負ったキングの蘇生に成功するが、すでに八方塞がりの彼らの行く手にはさらなる過酷な運命が待っていた。

「PMCって何? ザ・バンカーって銀行モノ? でもハ・ジョンウの服装はどう見ても戦闘服だよね?」と見るまで頭の中は?でいっぱいでしたが、作品が始まると物語に一気に引き込まれます。ちなみにあらすじにも書きましたが、PMCとは民間軍事会社(Private Military Company)のこと。ハ・ジョンウはここに属する傭兵なのです。そして、バンカーは「Banker」と「Bunker」の2種類あり、ここでのバンカーは「Bunker」でコンクリート製の防御建造物、避難用のシェルターのこと。「Banker」が銀行員でした。
ただ、これがわかっていなくても、まったく問題ありません。
北朝鮮を巡るアメリカと中国の覇権争い。アメリカに雇われた傭兵たちが保護するはずの北朝鮮有力者を誘拐・殺害したとして追い詰められていくのですが、緊張感が半端ない。仲間の命をどこまで優先するか。葛藤するリーダーにハ・ジョンウ。『神と共に』シリーズでスタイリッシュなアクションを見せましたが、本作では過去のミッションのため右足が義足で、派手なアクションはこなせない設定。しかし、苦悩をにじませた表情と決断がドラマ性を高めます。
そして、北朝鮮のエリート医師ユンの指示を仰ぎ、瀕死の重傷を負ったキングの蘇生に挑むのですが、戦闘シーンとは違う緊張感にハラハラドキドキ。このエリート医師を演じたのがイ・ソンギュン。話題作『パラサイト 半地下の家族』でIT企業の社長に扮しています。細面な顔立ちは確かに、ハ・ジョンウよりもエリート感があるかも。(堀)


軍事境界線の地下要塞で激務に就く傭兵たちの出自は様々。皆それぞれに事情を抱えています。中には前科者もいます。エイハブは不法移民で、任務を遂行する見返りにアメリカの居住権を得て、生まれてくる我が子と暮らすことを心の支えにしています。でも、雇った側にとって傭兵は使い捨て。命を落とそうと知ったことじゃないのです。
極限状態の中で何とか生き延びようという、北の医師ユンとの間で生まれる一体感には、ほろりとさせられます。
エイハブ役のハ・ジョンウは、アメリカに1ヶ月以上滞在してスラング混じりの英語をマスター。一方、北のエリート医師役のイ・ソンギュンは、ソウル標準語混じりの北朝鮮方言を身につけて撮影に臨んだそうです。二人の言語対決も見所です。
地下要塞で繰り広げられる死闘の背景には、北朝鮮の非核化を実現して大統領再選を有利にしようとする米国大統領や、北朝鮮を裏で操ろうとする中国民間軍事企業の思惑が見え隠れします。「自分のことしか考えない奴らが戦争を起こす」という言葉に、まさにそうだ!と感じ入りました。(咲)


2018年/韓国/125分/ビスタ/5.1chデジタル
ⓒ 2018 CJ ENM CORPORATION, PERFECT STORM FILM ALL RIGHTS RESERVED
配給:ツイン
公式サイト:http://pmcthebunker.com/
★2020年 2月28日(金)シネマート新宿 ほか全国順次ロードショー




posted by ほりきみき at 15:43| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

レ・ミゼラブル(原題:Les miserables)

re.jpg

監督:ラジ・リ
脚本:ラジ・リ、ジョルダーノ・ジェデルリーニ アレクシス・マネンティ
撮影:ジュリアン・プパール
音楽:ピンク・ノイズ
出演:ダミアン・ボナール(ステファン)、アレクシス・マネンティ(クリス)、ジェブリル・ゾンガ(グワダ)、イッサ・ペリカ()、ジャンヌ・バリバール(警察署長)

パリ郊外のモンフェルメイユ。ヴィクトル・ユゴーの小説「レ・ミゼラブル」の舞台でもあるこの街は、いまや移民や低所得者が多く住む危険な犯罪地域と化していた。犯罪防止班に新しく加わることになった警官のステファンは、仲間と共にパトロールをするうちに、複数のグループ同士が緊張関係にあることを察知する。親も手を焼くやんちゃな少年イッサが、ちょっとした悪戯心から事件をおこしてしまった。些細な出来事をきっかけに対立するグループを巻き込み、野火が広がるように大騒動となってしまった。事件解決へステファンたちも奮闘するのだが。

新鋭ラジ・リ監督は映画の舞台となったこのモンフェルメイユ出身で、現在も住んでいます。「本作で描かれているすべてが実際に起きたことに基づいています」とのことです。そうなのか。しかし、事件の大小を問わなければ日本で起きていてもおかしくありません。それほど世界中どこも、誰もが分断されて、憎しみの火種を抱えているのではと危惧してしまいます。
全く環境の違うところから転任してきたステファンは、権力をかさにいばりちらすクリスに閉口します。役職と自分の力を混同してしまっている危険人物です。警察の上司(女性の署長)になんとかしてほしいです。若いグワダもクリスに従っていますが、家で迎える母は、先ほど横柄に対応した住民と同じ民族衣装姿でした。
登場人物の外と内の顔を見せながら進んでいくストーリーは、徐々に緊迫していき、暗いエネルギーが爆発するラストは、息をするのも忘れるほどでした。殺傷能力がないからとゴム弾が威嚇に使われていましたが、ひどいです。自分が撃たれてみろってんだ、と思わず文句。ああ胸が痛かった…。
2019年の第72回カンヌ国際映画祭ではポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』とともにパルムドールを競い、審査員賞を受賞。前者のようなひねりなしの直球映画ですが、アカデミー賞ではこちらに一つ分けてほしかったなぁ。(白)


少年の軽はずみな行為が対立する大人の派閥や警察まで巻き込み一大事になってしまう。もしかすると少年にしてみたら、自分は被害者なのかもしれない。直接的には関係のない大人たちの解決を当事者の少年はどう捉えたのか。安直に丸く収めるのではなく、見る者の不安を掻き立てる。衝撃的なラストこそリアルな現実。このままじゃいけない。大人は子供に何を見せたらいいのだろうか。(堀)

少年イッサが街に来ていたサーカスからライオンの子を連れだしたことからギャングどうしの間でひと悶着。衝突を避けようと警察が介入した時に、誤ってイッサに発砲したのをドローンで撮影されていたことがわかり、警察は動画の流出を止めようと躍起になります。
ライオンの子を連れだしたのがイッサだと判明したのもSNSに投稿された写真。SNSにドローンといったツールが問題を起こしていくのも、今の社会を映し出しています。
「イスラームではライオンは強さの象徴。檻に入れてはいけない」と、モスクでイマームが発言をした場面があって、民族や宗教で考え方の違いがあることを感じさせてくれます。
冒頭、様々な顔の人たちが、フランス国旗を背負って、国歌ラ・マルセイエーズを歌いながら歓喜する姿が映し出されます。サッカーワールドカップ優勝の折の場面。移民や移民2世3世も、フランス人として一体感が持てる唯一の場面を最初に掲げたことに、ほかの時にもフランス人としてみてほしいという監督の思いを見て取りました。
黒人のベテラン警官グワダ、人種差別主義者の白人警官クリス、郊外を初めて担当するステファン、そして女性の警察署長。それぞれを体現した役者たちが素晴らしく、見応えのある作品。(咲)

2019年/フランス/カラー/シネスコ/104分
配給:東北新社、STAR CHANNEL MOVIES
(C)SRAB FILMS LYLY FILMS RECTANGLE PRODUCTIONS
http://lesmiserables-movie.com/
★2020年2月28日(金)ロードショー




posted by shiraishi at 15:23| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

スケアリーストーリーズ 怖い本(原題:Scary Stories to tell in the dark)

Scary Stories.jpg

監督:アンドレ・ウーヴレダル
ストーリー原案・製作:ギレルモ・デル・トロ
原作:アルビン・シュワルツ「スケアリーストーリーズ 怖い本」シリーズ(岩崎書店)
脚本:ダン・ハーゲマン ケビン・ハーゲマン
出演:ゾーイ・コレッティ(ステラ)、マイケル・ガーザ(ラモン)、ガブリエル・ラッシュ(オギー)、オースティン・エイブラムズ(トミー)、ディーン・ノリス(ロイ)、ギル・ベローズ(警察署長)、ロレイン・トゥーサント

ハロウィンの夜。怖いもの好きなステラは、ラモンやオギーたち友人を誘って郊外の幽霊屋敷に出かけた。奥まった部屋で見つけた古びた本をこっそり持ち帰って、読み始めるステラ。そこには噂通りの怖い話がつづられていた。翌日から一緒に屋敷に出かけた仲間たちが一人、また一人と消えていく。そしてあの”怖い本”には彼らを主人公にした話がひとりでに増えていたのだった。呪われた本に次に書かれる物語は何なのか?その主人公は誰なのか?呪いを解くことはできるのか?

どうして人は怖いものに惹かれるのでしょう?日常が安穏としているからでしょうか。ほんとに怖い目に逢っていたり、緊張状態にいたりしたら、わざわざ惹かれませんよね。
気が小さい私は目を半分あけて観ました(?)。目の前にある本に、つるつると文字が書かれていったら怖いです。その文章が、よく知っている人がひどい目に遭って死ぬお話だったら、もっと怖いです。誰がなんのために書いているのかわからないまま、ストーリーが目の前で展開していったらどうしましょ?自分の番はいつ?
クリーチャー大好きなギレルモ・デル・トロが原案・製作にあたっていますが、いやいや実際撮影現場に行ったり、工房であれこれ指示したに違いない。アンドレ・ウーヴレダル監督はノルウェー出身で『トロールハンター』(2012)『ジェーン・ドウの解剖』(2017)を世に出して注目されていたそうです。ホラー避けている私はどっちも観ていません。気になった方は探してみてね。
「スケアリーストーリーズ 怖い本 ギレルモ・デル・トロ&アンドレ・ウーヴレダルの世界」 (日本語)限定生産: 2,000部。映画製作のために描かれたイラストや資料と共に、シナリオを読み解く貴重なビジュアルノベライズが発刊されています。少し高めですが、クリーチャー好きの方にも貴重。https://diskunion.net/dubooks/ct/detail/DUBK270 
(白)


2019年/アメリカ/カラー/シネスコ/108分
配給:クロックワークス
c2020 CBS FILMS INC. ALL RIGHTS RESERVED.
ラナ・デル・レイアーティスト写真クレジット:Photo: Pamela Cochrane
公式ツイッター&インスタグラム:@scarystoriesjp
https://scarystories.jp/
★2020年2月28日(金)新宿バルト9ほか全国公開
posted by shiraishi at 14:32| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

スウィング・キッズ(原題:Swing Kids)

swing kids.jpg

監督・脚本:カン・ヒョンチョル
出演:D.O.(ロ・ギス)、ジャレッド・グライムス(ジャクソン)、パク・ヘス(ヤン・パンネ)、オ・ジョンセ(カン・ビョンサム)、キム・ミノ(シャオパン)

朝鮮戦争当時、米軍が設置した最大規模の巨済(コジェ)捕虜収容所には、北朝鮮と中国軍の捕虜が収容されていた。
米軍兵士の中に、元ブロードウェイのタップダンサー ジャクソンを認めた新しい所長は、収容所の対外的イメージアップのため、捕虜たちによるダンスチームを作れと言う。ジャクソンは命令に逆らえず、希望者を集めて有望そうな人材をさがした。
集まった中から残ったのは収容所で一番のトラブルメーカーのロ・ギス、生き別れた愛妻を捜すために有名になりたいカン・ビョンサム、見た目と違って栄養失調で虚弱なシャオパン。収容所の外から参加したのは、4か国語を話せるとアピールした無認可の通訳士 紅一点のヤン・パンネ。彼女は家族のために必死に働いていた。ジャクソンはしぶしぶ寄せ集めチームのリーダーとなった。チーム名は”スウィング・キッズ”所内でのデビュー公演を目前に彼らは猛練習を始める…。

捕虜収容所でダンス!それもフレッド・アステアばりのタップダンス!これはカン・ヒョンチョル監督のオリジナル・ストーリーのようです。K-POPグループ「EXO」のD.O.(エクソのディオ)が北朝鮮の英雄の弟という主人公ロ・ギス。縦横無尽にやんちゃしています。ブロードウェイのスターでありながら、外国の映画で演技にも挑戦するジャレッド・グライムス、役のジャクソンが重なります。妻を想うカン・ビョンサムのオ・ジョンセにぐっときて、何ヶ国語もあやつり、歌もダンスもいけるパク・ヘスさんに感心。
撮影の半年も前から特訓した俳優陣のようすは、公式HPのメイキング動画でご覧あれ。俳優さんって本当に大変なお仕事です。血のにじむような努力も、みな自分の血肉となって結果を出すわけです。満場の拍手を浴びたならやめられませんね。彼らの様子をいろいろな方向から見せるカメラワークも楽しみながら、戦時中の話が甘い結末を迎えるわけがない、何かあるぞと勘ぐってしまう私の悲しい性(さが)を許して。(白)


2018年/韓国/カラー/シネスコ/133分
配給:クロックワークス
(C)2018 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & ANNAPURNA FILMS. All Rights Reserved.
http://klockworx-asia.com/swingkids/
★2020年2月21日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 14:29| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする