2020年02月15日

プロジェクト・グーテンベルク 贋札王 (原題:無雙 Project Gutenberg)

sansatsuou.jpg

監督:フェリックス・チョン
出演:チョウ・ユンファ、アーロン・クォック、チャン・ジンチュー

タイの刑務所から香港警察に身柄を引き渡されたレイ・マン(アーロン・クォック)は世界を震撼させた国際的偽札製造集団のメンバーだった。4つの事件に関する容疑で取り調べを受けるが、そこにレイの友人を名乗る国宝級の女性画家ユン・マン(チャン・ジンチュー)が現れる。
レイの保釈を求める彼女に対し、捜査の指揮を執るホー警部補(キャサリン・チャウ)は今も行方不明となっているチームの首領“画家”(チョウ・ユンファ)について話すことを要求。レイは冷酷無比な“画家”の報復に怯えながら、自身の“過去”を語り始めた。
舞台は、1990年代のカナダへと転じる。貧しい画家だったレイは恋人と将来に希望を託すが、なかなか認められない。こっそり絵画の偽造に着手すると、“画家”と名乗る男に贋作の腕を認められ、彼が運営する偽札組織にスカウトされる。
数奇な物語がレイの口から語られたとき、“画家”がふたたび姿を現し、衝撃の真実が明らかになる。

贋札とは偽札のこと。前半はそのテクニックを余すところなく披露。フェリックス・チョン監督はこんなに危ない知識をどうやって調べたのか、作品の本筋ではないところまで気になってしまいました。
中盤からはガンアクションが炸裂。この辺りはシネジャの他の方々がお詳しいので、私からは迫力満点とのみお伝えします。
そして、クライマックスの謎解きでは「えぇぇぇ~!」を何度叫んだことでしょう。張り巡らされた伏線にここで初めて気がつき、それが一気に回収させた監督の脚本家としての手腕に脱帽です。実は1回、見ただけではすべてを理解できず、いろんな方々と作品について語り合いました。映画を見て楽しむだけでなく、誰かと共有する楽しみもある作品です。
香港と中国でメガヒットとなり、第38回香港電影金像奨(香港アカデミー賞)で最多となる計17部門にノミネートされ、最優秀作品賞・監督賞・脚本賞・撮影賞・編集賞・美術デザイン・衣装デザインの計7部門を受賞。すでに韓国でのリメイクが決定しています。
日本では2018年の東京国際映画祭「ワールド・フォーカス」部門で上映されたが、チケットはすぐに完売。チョウ・ユンファ、そして“舞王(ダンス王)”の異名を持ち、アンディ・ラウ、ジャッキー・チュン、レオン・ライとともに“香港四大天王”と呼ばれるアーロン・クォックの人気のほどがうかがえますね。(堀)


IMG_6884.jpg
フェリックス・チョン監督

2018年のTIFFで観ました。久々にユンファが戻ってきた!と大喜びしました。それも監督がまだキャスティングに悩んでいるときに、アーロンがユンファの名前をあげて、すぐに連絡を取ってくれたと聞いて嬉しさ倍増でした(2018年10月26日のスタッフ日記)。『男たちの挽歌』(1986)のマークが、『狼 男たちの挽歌・最終章』(1990)のジェフリーが年月を経て現れたかのような姿に、懐かしさでいっぱいになったのは私だけではないでしょう。アクションシーンもほぼ自らこなし、替身(スタント)は1シーンのみだったとか。怪我が心配だからもっと替わってもらって良かったのに…無事でよかった。
映画はペンのアップで始まります。青いインクが描いていく図案が美しく、じっくり見入ってしまいました。目をこらしても下書きが見えません。偽札作りの工程が詳しくて、『ヒトラーの贋札』(2006)を思い出しました。ナチスがユダヤ人強制収容所でイギリスのポンド紙幣を贋造した史実「ベルンハルト作戦」を事細かに描いたものです。手間暇かけた割に儲からないのが常とは限らず、戦争で混乱していた上、その確かな技術で流通した5ポンド札の1割を占めていたとか。日本でも実際にあった事件を元にした木村祐一の初監督作品『ニセ札』(2009)があります。
タイトルのグーテンベルクは15世紀半ばに活版印刷技術を発明したドイツ人。金属の活字を作って自ら印刷や出版をしましたが、紙幣は作っていません(1661年ストックホルム銀行が発行したのが世界初だそうです)。印刷技術が優れているということで名付けたの?(白)


2018年/香港・中国/広東語、北京語/カラー/130分/PG-12
配給:東映ビデオ 
©2018 Bona Entertainment Company Limited
公式サイト:http://www.gansatsuou.com/
★2020年2月7日(金)より新宿武蔵野館などを皮切りに全国順次公開
posted by ほりきみき at 13:05| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

山中静夫氏の尊厳死

songenshi.jpg


監督・脚本:村橋明郎
原作:南木佳士
撮影:高間賢治
音楽:加藤武雄
出演:中村梅雀、津田寛治、田中美里、高畑淳子、浅田美代子、石丸謙二郎

自宅がある静岡の病院からの紹介で、信州の病院にやって来て、「私は肺癌なのです」と語る山中静夫(中村梅雀)。
紹介されてきた資料によれば、山中は腰の骨と肝臓に転移のある肺癌で、明らかに末期の状態だった。医師である今井(津田寛治)付き添う家族の負担を考え、今井は山中に今まで通り静岡の病院での治療を勧めた。「どうせ死ぬんだったら生まれ育った信州の山を見ながら楽に死にたい。生まれた村でやっておきたいことがあるのです」。それが余命を宣告された山中の最期の願いだった。
今井は山中を受け入れ、決して無理はせず、夕食までには必ず戻るという条件付きで外出許可を出す。
そんな中、長年呼吸器内科を担当し、多くの死んでいく人間を診すぎたために、今井はうつ病になってしまう。それでも山中の希望を叶えようと立ち向かうのだった。

『しあわせになろうね』『育子からの手紙』などの村橋明郎監督が、現役の医師でもある南木佳士の同名小説を原作にし、脚本を書いてメガホンをとりました。主題歌は癌闘病の経験もある小椋佳の書きおろし。中村梅雀が末期がん患者、津田寛治が見守る医師を演じ、限られた人生をどう生き、どう死ぬかを、未来への希望とともに描いています。
中村さんが演じた山中静夫は入院した病院を抜け出して墓石を建てていました。婿に入った家の墓ではなく、故郷で眠りたいと願ったのです。私の父も婿養子でしたが、「死んだら別に墓を建てくれ」と弟に懇願していたので、山中が父に重なって見えました。
婿に入るということは墓を守ることを期待されていたはずだと非難する人がいるかもしれません。しかし、長い人生ずっとその家に尽くしてきたら、最期くらい好きなようにさせてほしいと願ってもいいんじゃないか。本作の本筋ではありませんが、そんなことを思いました。
2年くらい前に津田さんにインタビューをしました。「次はどんな役を演じますか」とうかがったところ、「主演で医師役です」ときっぱり。恐らく、この作品のことだったのでしょう。やり甲斐のある役とのことで、津田さんの本作に掛ける思いがひしひしと伝わってきました。それ以来、津田さんが医師を演じた作品を見るのを楽しみにしていたのですが、待った甲斐のある作品でした。(堀)


中村梅雀さん撮影に入る前に6kg減量したそうです。肺腺癌は進行が速くて健康体に見えていていいらしいですが、まだまだ血色がよくて、末期癌の患者に見えるのは仕事熱心な医師の津田寛治さんの方でした。もともと細身なのに、次第に鬱状態になってやつれていく役です。医師と患者、二人を気遣うそれぞれの家族のドラマが佐久の風景の中で進んでいきます。
この作品を観ながら、山中静夫さんと同じ肺癌で亡くなった実父を思い出していました。もう30年近く前なので、本人への告知も一般的ではありませんでしたが、こんな風に本人の望むことを優先してやれば良かったと後悔しきりです。残った時間でやりたいことがきっとあったはず。それこそ最後の「思いやり」になります。試写室でも涙ぐんでいる人が多かったようです。お二人の演技に、自分の体験も重なったのかもしれません。
病院は病気を治療するところですが、より良い最期を迎える手助けをするのも加えてもらえないでしょうか?お医者さんも自分が患者になってみて初めて知ることがあった、とよく聞きます。人は皆死んでいきます。自宅にしろ、病院にしろ、最期は「いい人生だった」と息をひきとることができたらいいなぁと思うこのごろ。(白)


2019/日本/カラー/DCP/シネスコ/5.1ch/107分
配給・宣伝:マジックアワー、スーパービジョン
© 2019映画『山中静夫氏の尊厳死』製作委員会
公式サイト:https://songenshi-movie.com/
★2020年2月14日(金)より シネスイッチ銀座ほか 全国順次ロードショー
posted by ほりきみき at 12:37| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする