2020年01月25日

嘘八百 京町ロワイヤル

uso800-2.jpg

監督:武正晴
脚本:井雅子 足立紳
撮影:西村博光
音楽:富貴晴美
出演:中井貴一、佐々木蔵之介、広末涼子、友近、森川葵、山田裕貴、坂田利夫、前野朋哉、木下ほうか、塚地武雅、竜雷太、加藤雅也

かつて、大阪・堺で幻の利休の茶器で大勝負を仕掛けた古物商の則夫(中井貴一)と陶芸家の佐輔(佐々木蔵之介)。二人はそれぞれの人生を送っていたが、ひょんなことからお宝眠る古都・京都で再会を果たす。そこで出会ったのは、着物美人の志野(広末涼子)。彼女のけなげな想いにほだされて、二人は利休の茶の湯を継承し「天下一」と称された武将茶人“古田織部”の幻の茶器にまつわる人助けに乗り出すが・・・。それは、有名古美術店(加藤雅也)や大御所鑑定家(竜雷太)、陶芸王子(山田裕貴)、テレビ番組をも巻き込む大騒動に――。

古田織部の幻の茶器“はたかけ”を巡るコンゲーム。今回も仲間たちがそれぞれの特技で腕を振るい、悪徳古美術商と鑑定家を懲らしめる。
広末涼子が演じる美しい依頼人のしたたかぶりに翻弄されたかと思いきや、古物商の則夫が一枚上手で大団円に。ルパンと峰不二子を見ているような気分になった。彼と陶芸家の佐輔の友情関係もいい。こちらはルパンと次元か。第三作もぜひ!‬(堀)


2年ぶりの『嘘八百』の続編。志野が登場して、彼女を挟んだ則夫と佐輔、二人の鼻の下はどっちが長かったか?佐輔の妻康子も心穏やかならず。広末涼子さんは上映中の『太陽の家』でも棟梁(長渕剛)の過剰な親切に預かっています。ほんとにもう男って(以下自粛)。
監督・脚本の手堅さ、主演・助演の俳優さんのうまさはもちろんですが、女優さんの見せ場があると面白さ倍増、次回も二人を向こうに回して遜色のない方をぜひ登場させてください。(白)


2020年/日本/カラー/106分
配給:ギャガ
©2020「嘘八百 京町ロワイヤル」製作委員会
公式サイト:https://gaga.ne.jp/uso800-2/
★2020年1月31日(金)TOHOシネマズ 日比谷 他 全国ロードショー
posted by ほりきみき at 19:56| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

愛国者に気をつけろ!鈴木邦男

kuniosuzuki.jpg

製作・監督・撮影・編集:中村真夕
出演:鈴木邦男、雨宮処凛、蓮池透、足立正生、木村三浩、松本麗華、上祐史浩他。

生長の家の信者の家に育ち、早稲田大学では左翼と闘った生粋の右翼活動家・鈴木邦男。17歳の時、愛国党党員だった山口二矢が、当時の社会党党首を刺殺する映像に衝撃を受け、「愛国」に身を捧げることに目覚めた。大学時代には、今の日本会議の前身となる全国学協の代表にまで登りつめるが、まもなく失墜する。
その後、自らが右翼運動に引き入れた早稲田大学の後輩、森田必勝が25歳の若さで三島由紀夫と自決したことに衝撃を受け、政治団体・一水会を立ち上げる。政治的・思想的な挫折と葛藤を繰り返す中で見えてきたのは、自らが訴えてきた「愛と正義」、「愛国心」でさえも疑い、そして異なる意見や価値観を持つ人たちの言葉に耳を傾けることだった。数奇な運命を生き抜いてきた鈴木邦男の素顔に密着したドキュメンタリー映画。

愛国を掲げる政治活動家が挫折と葛藤を経て、考え方を大きく変える。その思想の変遷から集団で正義を主張することの危うさに気付き、他者の声に耳を傾けるようになった。基盤になる考え方に共感するかどうかはすぐに答えは出せないが、この姿勢は共感できる。
作家の雨宮処凛、元「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」副代表の蓮池透、元日本赤軍メンバーで映画監督の足立正生、元オウム真理教教祖・麻原彰晃の三女である松本麗華、元オウムの上祐史浩といった人たちとも価値観の違いを超えて交流し、彼らが鈴木の印象を語る。懐の深さに慕う者も多いというが、分かる気がした。独身を貫いた理由に納得するものの、老いを迎えた、これからの鈴木の生活が心配になってしまう。‬(堀)


中村真夕監督は、ニューヨーク大学大学院で映画を学び、2006年、『ハリヨの夏』(主演:高良健吾、於保佐代子、柄本明、風吹ジュン)で監督デビュー。ドキュメンタリー映画『ナオトひとりっきり』(2015年)のトークゲストとして鈴木邦男さんに登壇してもらったことをきっかけに、彼に興味を持ち、2年間にわたって密着取材して作り上げたのが本作。長年右翼として活動してきた鈴木邦男さんが、右翼左翼問わず様々な人たちと親交のある稀有な人物であることを映し出している。
安保闘争で熱く闘った60年代70年代、右翼として活動していた鈴木邦男さん。よもや対決していた左翼の人たちと親しくすることになろうなどと想像してなかったのではないだろうか。
先日、大学の同窓会でお会いした70年代の学生運動を経験した方から、今でも当時考え方が違った人たちとはわだかまりがあって、同期全体の集まりは成立しないと聞いたばかり。世の中、政治的信条や宗教を越えて様々な人と交流する鈴木邦男さんのような人ばかりならと、ふと思う。(咲)


ドキュメンタリー映画が好きでよく観るけど、沖縄のこととか原発のこととか、社会派の作品で、時々鈴木邦男さんが映画プログラムに書いていたり、トークゲストだったりすることがあるのをみかけて、最初のころ「なぜ?」と不思議な感じがしたし違和感を感じていた。社会派で左翼系の作品に右翼の人がなぜ?協力しているんだろうと思った。でも考えてみれば、左翼も右翼も日本の今の政治を憂い、日本を少しでもよい方向に持って行きたいという思いは同じ。方法や考え方が違うだけともいえる。反発しあっていては、世の中変えていく力になっていかないという考え方から参加しているのかもしれない。今や鈴木邦男さんがそういう作品のトークとか参加するというのを見ても違和感を感じなくなった。そして、こういう人がいるというのにちょっと救いを感じる。しかし、このドキュメンタリーに出てきた若い女性たちのことは名前は知っているけど、どういう活動をしている人たちなのかよく知らず、鈴木邦男さんとの交流に興味を持った(暁)。

78分/HD/カラー/2019年
配給:オンファロスピクチャーズ
©オンファロスピクチャーズ
公式サイト:http://kuniosuzuki.com/
★2020年2月1日(土)ポレポレ東中野ほか全国順次公開

<ポレポレ東中野での上映後トーク予定>
2/1(土)  武田砂鉄 (ライター) 中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)
2/2(日)  白井聡 (政治学者) 中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)
2/3(月)  雨宮処凛(作家・活動家) 中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)
2/5(水)  瀬々敬久(映画監督) 中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)
2/6(木)  寺脇研 (元官僚・映画活動家)中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)
2/7(金) 栗原康(政治学者) 中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)
2/8(土)  香山リカ (精神科医) 中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)
2/9(日) 金平茂紀 (TVジャーナリスト) 中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)
2/10(月)  松本麗華 (カウンセラー) 中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)
2/11(火)  内田樹(神戸女学院大学名誉教授・凱風館館長) 中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)
2/12(水)  ジャン・ユンカーマン(映画監督) 中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)
2/13(木)  足立正生(映画監督) 中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)
2/14(金)  上祐史浩(ひかりの輪代表) 中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)

※鈴木邦男さんの登壇に関して
現在、鈴木さんは病気療養中の為、本映画のトークイベントへの登壇はすべて予定となっています。
参加の可否は病状の推移をみて判断し、公式HP、SNS等で告知されます。
また、鈴木さんが出席できなくとも、中村真夕監督とゲストでトークは行います。その点、予めご了承おきください。

posted by ほりきみき at 19:39| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

風の電話

kazenodenwa.jpg

監督:諏訪敦彦
出演:モトーラ世理奈、西島秀俊、西田敏行、三浦友和

17歳の高校生ハル(モトーラ世理奈)は岩手県大槌町出身。9歳の時、東日本大震災の津波で家族を失い、広島に住む叔母の広子(渡辺真起子)と暮らしている。ある日、叔母が倒れ病院に運ばれる。ショックのあまり道端で気を失ったところを、軽トラックで通りかかった公平(三浦友和)に助けられる。公平の家で、公平の母親から原爆の経験など広島で起きたことを聞かされる。久しぶりに故郷を訪れたくなったハルはヒッチハイクしながら岩手をめざす。
夜の街で不良たちに囲まれ、危ない目に遭いそうになったのを、福島から来た森尾(西島秀俊)に助けられる。かつて福島第一原発で働いていた森尾も、津波で家族を失っていた。大槌町まで車で連れていってくれることになる。道中、大槌町に「風の電話」という亡くなった人と話すことができる電話があることを知る・・・

2011年、大槌町在住のガーデンデザイナー・佐々木格さんが死別した従兄弟ともう一度話したいという思いから自宅の庭に設置した「風の電話」。東日本大震災後、亡くなった人と話したいと多くの人が訪れていることを知り、心を動かされて本作を企画・プロデュースした泉英次が諏訪敦彦監督に依頼し映画化したもの。
ハルは道中、妊婦の友香(山本未來)から元気を貰ったり、森尾がかつて住んでいた家の近くで今も暮らす友人・今田(西田敏行)から震災前の美しい景色を思いながら歌う地元の民謡を聞かされたりします。
中でも、森尾が震災の折、ボランティアで来て助けてくれたクルド人を探しに埼玉県蕨に寄る場面に、私はぐっと惹きつけられました。トルコで差別を受け、日本に逃げてきて難民申請するも認められないクルドの人たち。「国はなくてもいいけど、自分の文化で生活したい」というアリさんの言葉は本物。震災で故郷を失い、自分たちの文化を失った被災者の人たちの思いとも重なりました。クルドの人たちが被災地に支援に駆けつけたのも、痛みがわかる人たちだからこそだと思います。このエピソードを入れたことで、映画がぐっと引き締まったと感じました。東日本大震災の折には、私の知り合いのパキスタンやイランの人も被災地に何度も支援に行っているので、そんなことも思い起こさせてくれました。ただ、現実には難民申請していると、県外に出るには許可が必要なので、このクルドの人たちにはボランティアということで法務省もすんなり許可したのかなぁと、ふと思いました。 
あと、ちょっと気になったのが、ハルが世話になった年上の人たちに「ありがとうございます」でなく「ありがとう」と言っている点。なんとなくぶっきらぼうな感じがしました。モトーラ世理奈さんは『恋恋豆花』では、「ありがとうございます」と丁寧に言っているので、あきらかに演出なのですが、そのことで彼女のイメージが私には「素っ気ない女の子」になってしまったのは否めません。(咲)


『おいしい家族』、『ブラック校則』、そして本作の後には『恋恋豆花』と昨年秋からモトーラ世理奈の快進撃が続く。ぶっきらぼうな役が多く、その印象があるせいか、個人的には彼女の良さがイマイチ分からないのだが、若い子には人気があるらしい。ただ、本作にはその印象がうまくマッチした感がある。
西島秀俊、西田敏行、三浦友和の3人は控え目だが、人の温かさを感じさせ、印象に残る演技を見せてくれた。(堀)


2019年/日本/139分/G
配給:ブロードメディア・スタジオ
(C) 2020映画「風の電話」製作委員会
公式サイト:http://kazenodenwa.com/
★2020年1月24日(金)全国公開
posted by sakiko at 10:04| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする