2020年01月06日

イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり(原題:The Aeronauts)

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監督:トム・ハーパー
脚本:ジャック・ソーン
音楽:スティーヴン・プライス
主題歌:シグリッド
出演:フェリシティ・ジョーンズ(アメリア)、エディ・レッドメイン(ジェームズ)、ヒメーシュ・パテル、トム・コートネイ

1862年のロンドン。気象学者のジェームズは気象予測を実現するために気球で空へと上がり、経過の記録をしたいと願っていた。周囲は荒唐無稽と笑い、賛同者も得られない。一方、気球操縦士のアメリアは夫を亡くした後、生きる気力も失っていたが、もう一度気球に乗ることで立ち直ろうとしていた。世界記録に挑戦する一大ショーとして、多くの観客の声援を受けて気球は飛び立つ。そこにはアメリアに頼み込んで、同乗できることになったジェームズもいた。初めて目にする空からの眺めに驚きながらジェームズはさっそく調査を開始する。

実際にこういう気球での調査があったのだそうですが、映像はどうやって撮影したの?という驚きと美しさにあふれています。CGも駆使しているのでしょうが、生身で風を感じているような爽快さがあります。と同時に、突風が吹いたり思わぬ変動に直面したときの恐怖も感じますので、高いところの苦手な人(私!)はご注意ください。
研究熱心、頭で考えるジェームズと、自由奔放で自分の経験と身体能力に裏打ちされた実践型のアメリア。対極にいる二人が協力して大事を成すまでの過程はドキドキです。これはぜひ大きな画面で。(白)


「博士と彼女のセオリー」のフェリシティ・ジョーンズとエディ・レッドメインが再び共演するとは! それだけで作品への興味が高まります。
実話を基にしているものの、エンタメ性を高めるような、あっと驚くシーンが随所に挟み込まれ、かなりアレンジがされています。ファンタジーに近いかもしれません。
とはいえ、実話は気象が学問になったきっかけのチャレンジ。天気予報を見るたびに、この作品を思い出してしまいそうです。(堀)


2019年/イギリス、アメリカ/カラー/シネスコ/110分
配給:ギャガ
(C)2019 AMAZON CONTENT SERVICES LLC.
https://gaga.ne.jp/intothesky/
★2020年1月17日(金)全国ロードショー
posted by shiraishi at 17:08| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

盗まれたカラヴァッジョ(原題:Una storia senza nome)

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監督:ロベルト・アンドー
脚本:ロベルト・アンドーほか
撮影:マウリツィオ・カルページ
音楽:マルコ・ベッタ
出演:ミカエラ・ラマッツォッティ(ヴァレリア)、アレッサンドロ・ガスマン(アレッサンドロ)、レナート・カルペンティエリ(ラック)、ラウラ・モランテ(アマリア)、イエジー・スコリモフスキ(クンツェ)

ヴァレリアは映画プロデューサーの秘書をつとめながら、人気脚本家アレッサンドロのゴーストライターもしている。すっかりヴァレリアに頼り切りのアレッサンドロを憎みきれず、かといってネタ切れで筆は進まず悩み中。そんなときにリックという男性から「未解決のカラヴァッジョの名画盗難事件はマフィアの仕業」と知らされる。リックにヴァレリアは心当たりがなかったが、こちらの情報はなぜかよく知られていた。
リックから聞いたストーリーをアレッサンドロ作のプロットと偽って提出すると、その面白さに興奮したプロデューサーは引退していた伝説の巨匠監督まで引っ張り出し、映画化の話が進んでいく。
ところが、恋人と旅行を楽しんでいたアレッサンドロがマフィアに誘拐されてしまった。

ロベルト・アンドー監督の作品中、日本で上映されたのは『そして、デブノーの森へ』(04)、『ローマに消えた男』(13)『修道士は沈黙する』(16)。どれもサスペンス、ミステリー風味ですね。
1969年にパレルモのサン・ロレンツォ礼拝堂から盗まれた名画はその後も発見されていません。この未解決事件をもとに脚色された本作が解決への糸口になるとすごいのですが、50年進展がないとはね。教会のために描かれた絵を盗むなんて、神様はぜひ真犯人にお仕置きを。
ラック役のレナート・カルペンティエリとヴァレリア役のミカエラ・ラマッツォッティの2人は『ナポリの隣人』(17)で実子よりも深い絆を結ぶ隣人を演じて深い印象を残していました。母アマリア役は『息子の部屋』(01)のラウラ・モランテ。アレッサンドロ・ガスマンとは『神様の思し召し』(15)で共演しています。うーむ、名優ぞろいです。50年前の未解決事件を下敷きに、映画界の裏側や男女の愛憎、家族の事情まで盛り込んで破綻なくエンタメに仕上げる脚本・監督の勝利。(白)


2018年/イタリア・フランス合作/カラー/シネスコ/110分
配給:サンリス
(C)2018 Bibi Film - Agat Film & Cie
https://senlis.co.jp/caravaggio/
★2020年1月17日(金)YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開ロードショー
posted by shiraishi at 17:00| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

太陽の家

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監督:権野元
脚本:江良至
撮影:葛井孝洋
音楽:遠藤浩二
主題歌:長渕剛
出演:長渕剛(川崎信吾)、飯島直子(美沙希)、山口まゆ(柑奈)、瑛太(河井高史)、広末涼子(池田芽衣)、潤浩(池田龍生)

大工の棟梁信吾は腕も良ければ気もいい、人情にあつい男。そんな夫をしっかり者の妻美沙希が支え、一人娘の柑奈は熱すぎる父親をクールに見つめている。保険会社の営業ウーマンの池田芽衣に出会った信吾は、彼女が女手一つで息子の龍生を育てていると知ると放っておけなくなった。父親を知らない龍生を「俺が男にしてやる!」と肩入れし始める。一番弟子の高史は自分の家庭そっちのけの棟梁に、思わず口出しするが全く意に介さない。そんなときに龍生の父親だと名乗る男が現れた。

この棟梁のキャラはまんま長渕さんでは?と思うほど似合いでした。家まで建てようというのはやりすぎだろ、と思いますが。これと思うと突っ走ってしまうのは、薩摩の「ぼっけもん」気質であるのでしょうか?あ、映画では江戸っ子なのかしら。観終わってほっこりする人情ドラマ。
長髪で弾き語りをしていた長渕さんを知っている世代なので、ヒット曲「巡恋歌」や「順子」の歌詞がいまだに浮かびます。ドラマ「家族ゲーム」も見ていたので、共演した志穂美悦子さんと結婚したときは納得でした。アクションファンには女神の悦ちゃんの出演作がもっと観たかったので、もったいない気もした…けれども、やんちゃな長渕さんを内助の功で支えてきたことに拍手。ますます映画のキャラがかぶります。映画のキックオフイベントでライブを観たときのスタッフ日記はこちら。(白)


2019年にデビュー40年を迎える長渕剛が20年ぶりに主演。困った人を放っておけない大工の棟梁が好みのタイプのシングルマザー親子のために一肌脱ぐ話です。
長渕剛ってこんなにマッチョだとは思ってもみませんでした。ムキムキの体をスクリーンにばーんと晒す。そのたくましさがまさしく親分肌の棟梁。妻と高校生の娘を足に載せてぎったんばったん(と子どもが小さい時にわが家では呼んでいました)ができるなんて! 
そんな長渕剛が演じる棟梁の信吾はきれいな女性には目がなくて、ついついいいところを見せようとしてしまう。器が大きいんだか、小さいんだかわかりません。有無を言わせない強引な行動に子どもたちは腹を立てつつ、母の取り成しで何とか仲直り。飯島直子が演じた妻の美沙希の方がいろんな意味で人間として大きい気がします。「半端なことをするんじゃないよ」と夫を叱咤する姿は同性から見てもカッコいい!自分の夫が信吾みたいな人物だったら…。私にはとても支えきれません。
広末涼子は最近、すっかりお母さん役が板についてきました。今回もシングルマザーでがんばっています。(堀)


2019年/日本/カラー/シネスコ/123分
配給:REGENTS
(C)2019映画「太陽の家」製作委員会
https://taiyonoie-movie.jp/
★2020年1月17日(金)全国公開
posted by shiraishi at 16:47| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

マザーレス・ブルックリン(原題:Motherless Brooklyn)

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監督:エドワード・ノートン
原作:ジョナサン・レセム
脚本:エドワード・ノートン
音楽:ダニエル・ペンバートン
出演:エドワード・ノートン(ライオネル)、ブルース・ウィリス(フランク)、アレック・ボールドウィン(モーゼス)、ウィレム・デフォー(ポール)、ググ・バサ=ロー(ローラ)

孤児のライオネルには障がいがあり、その場と関係ない言葉が突然口から出てしまう。自分ではコントロールできないため、周囲からは変わり者扱いされてきた。フランクはそんなライオネルを施設から連れ出し、探偵の仕事を教え、居場所を与えてくれた身内のような存在。ライオネルには並外れた記憶力というほかの人間にはない能力があった。障がいの発作に耐えながら、その能力を駆使してフランクの役に立とうとするが、何者かがフランクを襲う。ライオネルは1人で調査を続けるが、真実に近づくほど彼に危険も迫って来るのだった。

原作にほれ込んだエドワード・ノートンが早くに映画化権を獲得、長い時間をかけて脚本を執筆。このほど監督・脚本・主演として力を注いだ作品が完成しました。芸達者な俳優たちが見せる表情、思わぬ50年代の音楽とタバコと酒の香りがしてきそうなバーのたたずまい。懐かしい雰囲気のノワール作品の中で、エドワード・ノートン演じる異色の探偵が活躍します。障がいのためにコントロールできないという言葉が、ときどきおかしいほど鋭いのは原作どおりなのでしょうか。思わず笑ってしまいました。
ググ・バサ=ロー演じるローラは、原作にない映画オリジナルの役柄。殺伐とした金権がらみの殺し合いの中で、ライオネルの障がいもさらりと受け止めるローラがライオネルの希望になります。彼女の空色のコートがくすんだ街に映えて美しく、彼女の存在が作品に色をそえて観客をストーリーへと案内してくれました。(白)


本作はなんと、エドワード・ノートンが主演だけでなく、監督と脚本、製作までこなしています。しかも脚本は初めてで、監督は20年ぶり。ノートン渾身の作といえるでしょう。
時代設定を原作の1999年から1957年へと変更したことで、ジャズと当時の風景がより調和したような気がします。ニューヨークの土地再開発における利権絡みの殺人事件というのも50年代らしいですね。
主人公のライオネルはトゥーレット症候群を抱えていますが、トゥーレット症候群は文字で読むより役者が演じた方がうまく伝わります。もちろんエドワード・ノートンの演技が素晴らしいこともありますけれど。最初は少し驚いてしまいましたが、物語が進むにつれて、彼の人柄が伝わってきて、次第に病気を抱える彼に寄り添ってあげたくなりました。
意外だったのが、ブルース・ウィリス。孤児を育てる善良な紳士かと思いきや、意外とお金にがめついところがある。これまでのブルース・ウィリスの印象が覆されました。こんな役も演じられるんですね。そのブルース・ウィリス演じるミナはライオネルのことを「マザーレス・ブルックリン」と呼びます。母親はいないけれど、父親代わりの俺はいるぞというメッセージのように思えました。(堀)


2019年/アメリカ/カラー/シネスコ/144分
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights eserved
http://wwws.warnerbros.co.jp/motherlessbrooklyn/
★2019年1月10日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 15:00| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする