2020年01月04日
ティーンスピリット 原題:Teen Spirit
監督・脚本:マックス・ミンゲラ
エグゼクティブ音楽プロデューサー・作曲:マリウス・デ・ヴリーズ
音楽スーパーバイザー: スティーヴン・キジッキ
撮影監督: オータム・ドゥラルド・アルカパウ
出演:エル・ファニング、ズラッコ・ブリッチ、レベッカ・ホール、アグニェシュカ・グロホフスカ
シングルマザーに育てられた移民のヴァイオレット・ヴァレンスキ(エル・ファニング)は、イギリスの片田舎のワイト島で暮らしていた。引っ込み思案で心の支えは音楽だけの彼女はある日、世界的なオーディション番組「ティーンスピリット」の出演者を決める予選がワイト島で開催されることを知る。ヴァイオレットは歌手になる夢をかなえるため、オーディションに参加する。
てっきり「アメリカン・アイドル」的な”スモールタウンガール・エスケープもの(勝手にジャンル分け(笑))”と決めつけて試写へ臨んだところ、冒頭からクオリティの高さに驚かされる!舞台は英国ワイト島。重く垂れ込めた空、暗い海、荒涼とした自然を背景に佇む孤独な少女。
母(アグニエシュカ・グロホウスカが好演)と2人暮らしの質素な屋内を逆光スモークに照らし出す陰影に富むカメラワーク。ワイト島に於けるポーランドの移民文化もさり気なく紹介しつつ、少女の成育歴を説明する仕掛けだ。
巧い!”『ラ・ラ・ランド』のスタッフが再結集した青春音楽映画”との惹句が踊っているため、挿入楽曲を期待していたら、透明感溢れるオータム・ドゥラルドの自然光撮影にすっかり魅せられた。
もちろん、吹替なしで挑んだエル・ファニングの力強い歌声、ケイティ・ペリーやアリアナ・グランデらの楽曲を欧風に編曲した構成は見応え、聴き応えがある。が、やはり音響設計面でもクロアチア移民として、少女の能力を見出すズラッコ・ブリッチの味わい深い名演、居住宅のクロアチア文化に惹き付けられてしまう。
これは、ワイト島で生まれ、イタリアにルーツを持つ名匠の父アンソニー・ミンゲラへ向けた息子からのオマージュのような気がする。俳優としても知られるマックス・ミンゲラの長編監督デビュー作。また楽しみな才能に出逢えた。
尚、『リトル・ダンサー』『ロケットマン』などの俳優ジェイミー・ベルが製作に名を連ねている点にもご注目を。(幸)
2019年製作/94分/PG12/イギリス・アメリカ合作/カラー
配給:KADOKAWA
(C) 2018 VIOLET DREAMS LIMITED
公式サイト:https://teenspirit.jp/
★2020年1月10日(金)より、角川シネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国で公開★
ダウントン・アビー 原題:DOWNTON ABBEY
監督:マイケル・エングラー
脚本・製作: ジュリアン・フェロウズ
撮影:ベン・スミサード
衣装デザイン:アンナ・メアリー・スコット・ロビンス
出演:ヒュー・ボネヴィル、ジム・カーター、ミシェル・ドッカリー、エリザベス・マクガヴァン、 マギー・スミス、イメルダ・スタウントン、ペネロープ・ウィルトン
国王夫妻が訪れることになった大邸宅ダウントン・アビー。グランサム伯爵家の長女メアリー(ミシェル・ドッカリー)は、パレードや晩さん会の準備のために引退していた元執事のカーソン(ジム・カーター)を呼び戻すが、国王夫妻の従者たちは、自分たちが夫妻の世話や給仕をやると告げる。一方、先代伯爵夫人バイオレット(マギー・スミス)の従妹モード・バッグショー(イメルダ・スタウントン)は、自分の遺産をメイドに譲ろうと考えていた。
テレビ版からのファンには、懐かしい家族に出逢えたような歓びとトキメキ、興奮を覚えるだろう。あのテーマ曲がピアノの調べと共に響き、汽車が導線となって観客の視線を誘う。意識と楽曲がシンクロし、クライマックスに達したところで…♪
冒頭から、ファンは十分過ぎる至福を感じるはずだ。
では、映画版が初見の人は?何しろ主要人物だけで18人も登場する。その辺りも本編ではソツなく整理した上で紹介され、理解しやすくなっている。更に、各人それぞれのドラマや見せ場も漏らさず用意した脚本は手練れのジュリアン・フェロウズならではだ。巧みに張られた伏線もお見逃しなきよう。
貴族たちの頻繁な衣装替え、それに合わせたヘアメイク。使用人はじめ庶民たちの装いも綿密な時代考証に基いたものだということが大画面により一層鮮明になる。
加えて名優たちの演技合戦は最大の見どころ!巧いなぁ〜と唸りつつ、どれだけ笑わされたことか。練られた台詞の一つ一つに、深い含蓄と普遍性が感じられる。1920年代と現在は地続きなのだ。
年初に相応しい華やかなラスト。誰しもが幸せになる。安易なハッピーエンドではなく、観客が納得する解決によりカタルシスを得られるに違いない。(幸)
2019年製作/122分/G/イギリス・アメリカ合作/シネマスコープ/ドルビーデジタル
配給:東宝東和
(C) 2019 Focus Features LLC and Perfect Universe Investment Inc.
公式サイト:https://downtonabbey-movie.jp/
★2020年1月10日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開★