2019年12月19日

「アニエス・ヴァルダをもっと知るための3本の映画」『アニエスによるヴァルダ』『ラ・ポワント・クールト』『ダゲール街の人々』

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2019年3月29日、フランスが誇る女性監督アニエス・ヴァルダがパリの自宅で息を引き取った。享年90歳と10ヶ月。2月にベルリン国際映画祭で最新作『アニエスによるヴァルダ』がプレミア上映され、舞台挨拶で元気な姿を見せた直後の訃報だった。
遺作となった『アニエスによるヴァルダ』と併せ、1954年に製作された長編劇映画デビュー作『ラ・ポワント・クールト』、事務所兼自宅を構えるパリ14区の商店街の人々の暮らしを点描した1975年の傑作ドキュメンタリー『ダゲール街の人々』の2作品も、この度、劇場初公開されます。

「アニエス・ヴァルダをもっと知るための3本の映画」
公式サイト:http://www.zaziefilms.com/agnesvarda/
配給:ザジフィルムズ
★2019年12月21日(土)シアターイメージフォーラム他全国順次公開


◆『アニエスによるヴァルダ』 原題:Varda par Agnès  英題:Varda by Agnes
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監督:アニエス・ヴァルダ
製作:ロザリー・ヴァルダ
アソシエイト・プロデューサー:ダニー・ブーン

1955年製作の長編劇映画デビュー作「ラ・ポワント・クールト」から、数々の映画賞に輝いた前作「顔たち、ところどころ」まで、バルダ監督が自身の半世紀以上にわたる創作活動を情熱とユーモアあふれる口調で語り尽くし、貴重な映像とともに振り返った集大成的セルフポートレイト。

ヴァルダは冒頭で「マスタークラスのようだ」と言っていたが、舞台の上から聴衆に向かって自身の映画作りの基本を語った後に個々の作品を通して具体的に手法を解説するなどする。ワンカットで長回しにする意味には「なるほど!」と納得した。ほかの監督の作品を見ていてもワンカットの長回しがあるとヴァルダの言葉を思い出す。
身近な題材を取り上げてきた理由も家族との生活を大事にしていたからと知り、女性が仕事と家庭を両立させることの難しさを改めて感じるとともに、それを逆手にとって映画を撮っていた発想の柔軟さに驚いた。
また、カメラなどの技術は進化するが、怖じ気づかずに使いこなしていく。片手で持てる小型カメラで人懐っこく被写体の懐に入り込めるのもヴァルダの人徳のなせる業。これからも、もっともっとヴァルダの作品が見たかった。(堀)


2019年/フランス/フランス語/119分/カラー/5.1ch/1:1.85


◆『ラ・ポワント・クールト』原題:La pointe courte
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監督・脚本:アニエス・ヴァルダ
編集:アラン・レネ
出演:フィリップ・ノワレ、シルヴィア・モンフォール

ゴダールの『勝手にしやがれ』よりも5年、トリュフォーの『大人は判ってくれない』よりも4年も早く製作された、「ヌーヴェルヴァーグはここから始まった」と言っても過言ではない伝説的作品。
ラ・ポワント・クールト南仏の小さな海辺の村を舞台に、生まれ故郷に戻ってきた夫と、彼を追ってパリからやってきた妻。終止符を打とうとしている一組の夫婦の姿を描く。

描かれているのは結婚4年目を迎え、ちょっと倦怠期になっている若い夫婦の非日常と、ポワント・クルートの人々の日常。まったく関係ない2つを交互に映し出し、縦糸と横糸がポワント・クルートという布を織りあげていく。
この作品はぜひ、『アニエスによるヴァルダ』鑑賞後に見てほしい。編集によって通常とは違う音声の聞こえ方にしている箇所の説明や本作ならではのエピソードが語られているのだ。(堀)


1954年/フランス/フランス語/80分/モノクロ/モノラル/スタンダード


◆『ダゲール街の人々』 原題:Daguerréotypes
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監督:アニエス・ヴァルダ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキー、ヌーリス・アヴィヴ

自身が50年以上居を構えていたパリ14区、モンパルナスの一角にあるダゲール通り。“銀板写真”を発明した19世紀の発明家の名を冠した通りには肉屋、香水屋…、様々な商店が立ち並ぶ。その下町の風景をこよなく愛したヴァルダがダゲール街の人々75年に完成させたドキュメンタリー作家としての代表作。人間に対する温かな眼差しと冷徹な観察眼を併せ持ったヴァルダの真骨頂。

2歳の息子を抱えたヴァルダが自宅から遠くに行けない状況を作品に反映させ、ご近所を捉えたドキュメンタリー。
肉屋、パン屋、美容院などにカメラを持ち込み、客とのやりとりを映し出す合間に、店の主人夫婦のなれそめなどを聞きだす。見ているうちにすっかりその町の事情通に。自分もそこで生活しているかのような気持ちになる。
多くの店が夫婦で営業しているようだが、香水屋の夫婦が印象に残る。妻は恐らく認知症なのだろう。商売に関わることはなく、顔の表情は乏しいが、夫を強く信頼している気持ちは伝わってきた。最近でこそ老々介護生活は描いた作品はいくつもあるが、この作品が撮られた1975年当時は珍しかったのではないだろうか。(堀)


1975年/フランス/フランス語/79分/カラー/モノラル/スタンダード




posted by sakiko at 22:24| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

THE UPSIDE 最強のふたり   原題:The Upside

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監督:ニール・バーガー
出演:ケヴィン・ハート、ブライアン・クランストン、ニコール・キッドマン、ゴルシフテ・ファラハニ

スラム街出身で出所間もないデルは、元妻や息子から見放され、住むところもない。保護観察官から翌日までに求職証明書に3か所からサインをもらってくるよう言われ、仕方なく面接に行く。3つ目に訪ねたのは豪華マンションのペントハウス。サインさえ貰えばいいと思っていたのに、ハングライダーの事故で首から下が動かなくなった大富豪フィリップに気に入られ、住み込みの介護人として働くことになる。教養もなく調子のいいデルに秘書のイヴォンヌはじめ周りは厳しい目を向ける。だが、物おじせず、思うことを口にするデルに、フィリップはだんだん心を開いていく。一方、デルも教養があり上流社会で暮らすフィリップを最初はうらやましく思うが、彼なりに悩みがあることを知る。そんな或る日、二人を揺るがす出来事が起きてしまう・・・

世界で大ヒットしたフランス映画『最強のふたり』(2011年)のハリウッド版リメイク。
それなりの工夫をして、違いを見せているので、あまりに有名なオリジナル版と比べないで観るのがいいかもしれません。

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私にとっては、今や国外で活躍するイランの女優ゴルシフテ・ファラハニが出演しているので、どんな役で出ているのかが楽しみでした。もしかして、文通相手の女性?と思っていたら、オリジナル版には出てこない理学療法士という役柄でした。デルをちょっぴりこらしめたりして、なかなかカッコいいのです。ぜひ、ご注目を! (咲)


2019年/アメリカ/カラー/5.1ch/ビスタ/125分
配給:ショウゲート
公式サイト:http://upside-movie.jp/
★2019年12月20日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町他 全国ロードショー





posted by sakiko at 21:45| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする