2019年12月15日

ブレッドウィナー  原題:The Breadwinner

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監督:ノラ・トゥーミー
脚本:アニータ・ドロン
原作:デボラ・エリス 「生きのびるために」(さ・え・ら書房)
エグゼクティブ・プロデューサー:アンジェリーナ・ジョリー

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件後のアフガニスタン、カーブル。11歳のパヴァーナは、教師だった父、作家の母、姉と幼い弟と、小さなアパートの一部屋で暮らしている。父が語る物語を聞きながら育ったパヴァーナは、ダリー語とパシュトゥー語の読み書きの出来る少女。路上で父と一緒に物を売りながら、人々に手紙を読み書きして生計を立てるのを手伝っている。ある日、父親が突然タリバンに連行されてしまう。タリバンは、女性が男性を伴わずに家を出ることを禁じていて、一家は水を汲みに行くことも、食料を買いに行くこともできなくなってしまう。家族を支えるため、パヴァーナは髪を切り“少年”として働き始める。やはり少年になりすました同級生に出会い、彼女に励まされながら父を刑務所から救い出そうと奔走する・・・

女性が外で働くことどころか、男性の同伴なしに外出することさえ禁じたタリバン。男手を失った家族は生きていくことができません。髪を切って男になりすまして一家の稼ぎ手(ブレッドウィナー)として健気に働くパヴァーナの姿に心が痛みます。アフガニスタンで、どれだけの女性が、こんな思いをしたのでしょう。
タリバン政権の時代が去っても、中村医師が狙い撃ちされて殺されてしまうようなアフガニスタン。男性とて、落ち着いた暮らしはできない社会です。
父親がパヴァーナに、かつてアフガニスタンにも平和な時代があったことを語ります。
11歳の少女がダリー語とパシュトゥー語の両方の読み書きが出来るのはすごい!と思ったのですが、かつて平和な時代には、二つの国語をそれぞれの民族が両方とも学校で習ったことを思い出しました。教育に力を入れ、女性も、もちろん学校に通っていた時代があるのです。
過酷な状況をアニメーションで描くことにより、目を背けさせることなく、人々の心に深く伝わってきます。過酷な運命の中でも、物語を語ることを忘れないパヴァーナの姿に涙が出ます。
パヴァーナは、はたして無事父に会えるのか・・・とハラハラしながら物語の行方を追いました。 (咲)


★注:ヒロインの名前は、「パヴァーナ」と片仮名表記されていますが、ダリ―語の発音では、パルヴァーナ もしくは パルワーナが近いです。英文字表記Parvanaをカタカナにする時に、rが長母音になったり、抜けてしまうのは、よくあることです。ちょっと気になりながら、この作品紹介の中では、公式サイトに従いました。ちなみに、Parvanaは、蝶のこと。蝶のように軽やかに飛び回ってほしいものだと願うばかりです。

12/22(日)サヘル・ローズさんトーク (映画上映13:00~14:50の上映終了後25分程度)

2017年/アイルランド・カナダ・ルクセンブルク合作/94分/G
配給:チャイルド・フィルム、ミラクルヴォイス
後援:アイルランド大使館 カナダ大使館
公式サイト:https://child-film.com/breadwinner/
★2019年12月20日(土)からYEBISU GARDEN CINEMAほか、全国順次公開




posted by sakiko at 20:25| Comment(0) | アイルランド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

サイゴン・クチュール(原題:Co Ba Sai Gon)

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監督:グエン・ケイ
脚本:グエン・ケイ、エー・タイプ・マシン
製作:ゴ・タイン・バン、チャン・ビュー・ロック、トゥイ・グエン
衣裳:トゥイ・グエン
出演:ニン・ズーン・ラン・ゴック(ニュイ)、ゴ・タイン・バン(ニュイの母)、ホン・ヴァン(アン・カイン)、ジェム・ミー 9x(ヘレン)、オアン・キエウ(タン・ロアン)、ジェム・ミー(タン・ロアン)、S.T 365(トアン)

1969年のサイゴン。9代続いたアオザイ仕立て屋の娘ニュイは、60年代の新しいファッションに夢中で、アオザイを仕立てる母と対立していた。自分のスタイルとセンスに自信満々でいたのに、打ち砕かれる経験をする。母が仕立てた美しいアオザイをこっそり身にまとってみたら、なぜか現代にタイムスリップしていた。ニュイはすっかり年取った自分と寂れた店の姿に愕然とする。母が急逝して継ぐ者のいない店は倒産、この家も人手に渡るところまで追い込まれていた。ニュイは自分の《人生》を変えようと奔走する。幸いトアンという青年が協力してくれた。ニュイは、現代のファッション業界に潜り込み、厳しかった母の本当の想いとアオザイの魅力に気づいていく。

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昔懐かしい60年代ファッションとベトナムの最新ファッションが見られます。父親がいない家庭だからか、母と娘の絆は強そう。仕事優先の母に寂しい思いをしてきたニュイの反抗もわかります。わがままで幼い感じのニュイが、タイムスリップしてからいろいろな試練を経て大人になっていく、国も年代も問わない王道ストーリー。タイムスリップして自分に会ってしまい、しかも協力して店の再建に励むというところはこれまでにない展開です。好青年のトアンは、60年代ではまだ生まれてもいないので、ロマンスに発展しないのがちょっと残念。ベトナムの有名女優さんたちが出演してとても華やかです。
ベトナム映画祭2018や第13回大阪アジアン映画祭などでは『仕立て屋 サイゴンを生きる』のタイトルで上映されました。(白)


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家業に反発するアオザイ仕立て屋の娘がタイムスリップで未来に行き、アオザイの良さに気づく。1960年代、現代のファッションをポップに扱い、見ていて楽しい。古いセンスを今に活かし、伝統に今を加える。柔軟な発想が大事と改めて思う。
お嬢様気質の主人公は成し遂げたことが自分だけの力ではないことに気づき、それが周りの気持ちにも影響を及ぼしていく。見る人を元気にするお仕事ムービー。(堀)


1969年は高校3年生でしたがべ平連に参加し、「ベトナムに平和を!」とデモに何回も出かけていた年でした。特に1969年の夏休み以降、毎週のようにあったデモに学生服のまま月3,4回は参加していた記憶があります。そんな経験から、ベトナムは私にとってとても気になる国です。なのでベトナム映画やベトナムのことを描いた映画をたくさん観てきました。ベトナム戦争を描いたものやベトナム戦争関係(枯葉剤など)のものがほとんどだったのですが、この4,5年、日本で上映されるベトナム映画に、少しづづ変化が見られるようになったと感じていました。そんな中、第13回大阪アジアン映画祭2018で『仕立て屋 サイゴンを生きる』を観ました。サイゴンのアオザイの仕立て屋を軸に、1969年から2017年にタイムスリップするという、ポップでキュートでおしゃれなアオザイがたくさん出てくる作品でした。ベトナムにもとうとうこういう作品が出てきたと、この映画祭で一番好きな作品でした。その作品が『サイゴン・クチュール』というタイトルで、日本公開されることになって、「やった~」と思いました。グェン・ケイ監督に取材できるというので、Sさんと一緒に取材に行ってきました。まだ若い監督でした。頼もしい。1作目のこの作品がベトナムでヒットし、すでに3作目まで作る予定があるとのこと(暁)。

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グェン・ケイ監督 インタビュー時 撮影:宮崎暁美
 

2017年/日本/カラー/シネスコ/100分
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
(C)STUDIO68
http://saigoncouture.com/
★2019年12月21日(土)より新宿K’sシネマほか全国順次公開


来日イヴェント記事はこちら
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/472375942.html

インタビュー記事はこちら
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/472376828.html
posted by shiraishi at 18:21| Comment(0) | ベトナム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする