2019年12月08日

ある女優の不在 原題:Se rokh 英題: 3 faces

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監督:ジャファル・パナヒ
出演:ベーナズ・ジャファリ、ジャファル・パナヒ、マルズィエ・レザイ

人気女優ベーナズ・ジャファリのもとに、見知らぬ少女から悲痛な動画メッセージがパナヒ監督経由で届く。女優を志して芸術大学に合格したのに家族に反対され自殺を図るというのだ。ベーナズはパナヒ監督の運転する車で、少女マルズィエの住む北西部アゼルバイジャン州のサラン村を目指す。山間のじぐざぐ道で結婚式に出会い、誰かが自殺した気配はない。マルズィエの家を探しあてるが、3日前から家に戻らないと母親が困り果てていた。芸人に対する偏見が根強い村で、弟も姉が女優になることに猛反対で荒れ狂っている。
やがて、マルズィエが町外れで暮らす革命前に活躍した女優シャールザードのところに身を寄せているのを知る・・・

2010年に、20年間の映画製作禁止を命じられたパナヒ監督。屈せず、『これは映画ではない』(2011)、『閉ざされたカーテン』(2013)、『人生タクシー』(2015)と映画を作り続け、今回もまた、ユーモアに溢れる作品を放ってくれました。そこには、自身の置かれた立場や、3人の女性たちに立ちはだかる問題もくっきり。
東京フィルメックスで特別招待作品として上映され、主演のベーナズ・ジャファリさんが審査員として来日。インタビューの機会をいただきました。
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村へのロードムービーは、どこかドキュメンタリーのような趣もありますが、ベーナズさんがオファーを受けた段階で、脚本はすべて書かれていたとのこと。助監督の名前で撮影許可を取り、パナヒ監督の生まれ故郷で短期間で撮影。カンヌ国際映画祭に出品された折、国外に出られないパナヒ監督に代わり、カンヌに行ったベーナズさん。帰国後、当局に呼び出され、製作禁止の監督の作品に出たことを咎められたけれど、「私は女優として尊敬する監督の作品に出ただけ」ときっぱり答えて帰ってきたそうです。(インタビュー詳細は後日お届けします。)
まさにパナヒの映画としかいいようのない映画。ぜひ劇場でお楽しみください。(咲)


2018年 カンヌ国際映画祭 コンペティション部門 脚本賞受賞

2018年/イラン/ペルシア語・トルコ語/カラー/ビスタ/5.1ch/100分
配給:キノフィルムズ
公式サイトhttp://3faces.jp/
★2019年12月13日(金) ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開




posted by sakiko at 22:09| Comment(0) | イラン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

スピード・スクワッド ひき逃げ専門捜査班 原題:Hit-and-Run Squad

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監督:ハン・ジュニ(『コインロッカーの女』)
武術監督:ホ・ミョンヘン(『新感染 ファイナル・エクスプレス』『神と共に 第二章:因と縁』)
出演:コン・ヒョジン(『ドアロック』)、リュ・ジュンヨル(『毒戦 BELIEVER』)、チョ・ジョンソク(『EXIT』)、ヨム・ジョンア(『完璧な他人』)、チョン・ヘジン(『名もなき野良犬の輪舞』)、イ・ソンミン(『工作 黒金星と呼ばれた男』)、キム・キボム(KEY)、ソン・ソック(「最高の離婚 ~Sweet Love~」)

警察庁内部調査課のシヨン(コン・ヒョジン)は、巨大企業JCモータースの若き会長を務める元F1レーサーのチョン・ジェチョル(チョ・ジョンソク)と警察庁長官との収賄事件を捜査していた。しかし、長官の圧力でシヨンは捜査半ばで交通課のひき逃げ専門捜査班に異動させられてしまう。捜査班は、妊婦のウ係長と、頼りない巡査のミンジェ(リュ・ジュンヨル)だけ。吹き溜まりのような部署で、3ヶ月前の未解決ひき逃げ事件を捜査するうち、有力容疑者がチョン・ジェチョルだと知る・・・

これまでドラマでも映画でも、好青年を演じてきたチョ・ジョンソクが、スピード狂で、私欲のためなら脱税、横領、賄賂など、なんでもやってしまうという悪を、実に楽しそうに演じてます。対するコン・ヒョジンも、左遷させられながらも実力発揮する警官役がかっこいいです。
チョ・ジョンソクとコン・ヒョジンの共演といえば、テレビドラマ「嫉妬の化身」を思い出します。男ながら乳癌に罹ってしまったチョ・ジョンソク演じる人気キャスターが、コン・ヒョジン演じる気象キャスターと同じ病室に・・・というラブコメ。あのほんわかしたドラマと違って、本作では二人が本気で闘ってます。イ・ソンミン、リュ・ジュンヨルといった実力派俳優の確かな演技もみどころ。(咲)

2019年/韓国/133分/G
配給:アルバトロス・フィルム
公式:サイト:https://speed-squad.com/
★2019年12 月 13 日(金)よりシネマート新宿・心斎橋他全国順次ロードショー




posted by sakiko at 21:29| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

パリの恋人たち(原題:L' HOMME FIDELE) 

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監督:ルイ・ガレル
出演:ルイ・ガレル、レティシア・カスタ、リリー=ローズ・デップ、ジョゼフ・エンゲル

ジャーナリストの青年アベル(ルイ・ガレル)は、3年間同棲したマリアンヌ(レティシア・カスタ)から妊娠を告げられ喜ぶが、それもつかの間、父親は友人のポールであることから別れを切り出される。数年後、ポールの葬儀でアベルはマリアンヌと再会。同時にポールの妹エヴ(リリー=ローズ・デップ)からも思いを告白される。

2018年の東京国際映画祭で『ある誠実な男』として上映された作品。モテモテのアベルだが、主導権を握っているのはアベルではなく女性たち。マリアンヌにもエヴにも誠実に向き合うがゆえに戸惑い、翻弄される。
リリー=ローズ・デップの一途さはここまでくるとストーカーだが、それに余りある可愛らしさに許してしまいたくなる。そんな一歩間違えれば狂気さえ感じる思いより、経験を重ねたマリアンヌの読みが一枚上手。あっぱれ!といいたくなるのだが、実はマリアンヌさえも息子に踊らされていたのだから驚く。この息子が超美形!!!将来が楽しみである。(堀)


2018年/フランス/フランス語/カラー/75分
配給:サンリス
©2018 Why Not Production
http://senlis.co.jp/parikoi/
★2019年12月13日(金)ロードショー
posted by ほりきみき at 02:00| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

エッシャー 視覚の魔術師 (原題:M.C. Escher - Het oneindige zoeken)

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監督・撮影・製作:ロビン・ルッツ
脚本:ロビン・ルッツ、マラインケ・デ・ヨンケ
ナレーション:スティーヴン・フライ
登場人物:グラハム・ナッシュ(クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング)、ジョージ・エッシャー、ヤン・エッシャー、リーベス・エッシャー

「トリックアート(だまし絵)」で知られるオランダ人版画家・画家のマウリッツ・コルネリス・エッシャー(1898年~1972年)の人生を日記、1000を超える書簡、家族へのインタビュー、収集家の証言などを手掛かりに、創作の足跡を丹念に辿り、その創造力の源泉を探る。さらに、3Dアニメーションを用いて、エッシャーがどのようにして漠然としたアイデアを視覚化し、作品を生み出していったのか、その思考のプロセスを明らかにした。

エッシャーは日本でも人気がある。昨年、「生誕120年イスラエル博物館所蔵 ミラクル エッシャー展」が開催され、上野の森美術館だけでも20万人の動員があったという。
本作では、まずは初期に描いた風景作品を実物と照らし合わせて紹介。版画でここまで表現できるとは。トリックアートしか知らなかったので、ちょっと驚いた。
同じモチーフをぎっしり組み合わせる作風のきっかけは旅先で見たムーア人のタイル壁とのこと。有名になった故の弊害を訴える。
エンドロールに3Dで見せるだまし絵の可視化が面白い。(堀)


エッシャーというとトリックアートというおぼろげな知識しかなかったのですが、資料に「1935年ごろスペイン、グラナダのアルハンブラ宮殿のタイルに魅了される」とあり、オランダ人のエッシャーがどういう経緯でイスラームの無限に広がる幾何学模様に出会ったのか興味津々。
スペインに行った動機がなんとも面白い。イタリアで結婚し息子をもうけたのですが、思春期を迎えた息子がムッソリーニに傾倒しそうになり、スペインに逃れようと決意。それも観光船の会社に掛けあって、乗船中、絵を描くことで、一家の船賃を無料にしてもらったのです。スペインに渡ったエッシャーが出会ったのが、アルハンブラ宮殿のタイルという次第。
試写を拝見した直後に、東京ジャーミィ(モスク)での「ジャーミイの模様の幾何学 ~美しいものには理由がある~」と題した講演会で、エッシャーの絵が引き合いに出されました。講師は数学の専門家。幾何学の世界でエッシャーが有名なのを知りました。
この講演会については、エッシャーの絵の写真入りでスタッフ日記に書いていますので、下記をご覧ください。 (咲)

イスラームの幾何学模様とエッシャー
 

追記: 「ジャーミイの模様の幾何学 ~美しいものには理由がある~」の講師である谷克彦様から、映画をご覧になった感想をいただきました。一部抜粋してお届けします。(咲)

uplinkでエッシャーを見ました。数学者エッシャーは良く知られていますが、どんな生活をした人物かはあまり気にしたことがありませんでした。人物像のわかる良い映画でした。
私はエッシャーのファンで多くの方がこの映画を見ると良いと思います。
最後の方でエッシャーが国際結晶学会の講演に呼ばれていくところがありましたが、私の専門も結晶学で、結晶学会では昔からエッシャーのperiodic patternを教材に使い馴染んでいます。
アルハンブラのモザイクには平面群の17種のすべてがあるという説と1種類かけているという説があります。
さらにペンローズもアルハンブラのタイルからペンローズ・タイルのヒントを得たとも聞きます。
映画では,エッシャーの息子たちへの取材が面白かったです.
作品がまとまるときのエピソード(1955年の表皮から1956年の婚姻のきづなへ)などよくわかりました.
エンドロールに流れるスナップの一つに大道絵師が写りましたが、たまたま昨夏,ニューカッスルの通りで見かけた道にエッシャー作品を描いていた大道絵師の光景のようです。良い映画をお教えくださり有難うございました。



2018年/オランダ/カラー/80分
配給:パンドラ
(C) All M.C. Escher works (C) the M.C. Escher Company B.V.- Baarn – the Netherlands
公式サイト:http://pan-dora.co.jp/escher/
★2019年12月14日よりアップリンク渋谷・アップリンク吉祥寺にてロードショー

posted by ほりきみき at 00:48| Comment(0) | オランダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

リンドグレーン (原題:Unga Astrid)

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監督:ペアニレ・フィシャー・クリステンセン
脚本:キム・フォッブス・オーカソン
出演:アルバ・アウグスト、マリア・ボネヴィー、マグヌス・クレッペル、ヘンリク・ラファエルセン
トリーネ・ディアホム

兄弟姉妹とスモーランド地方の自然の中で伸び伸びと育ったアストリッドは、思春期を迎え、より広い世界や社会へ目が向きはじめる。教会の土地で農業を営む信仰に厚い家庭で育ちながら、“率直で自由奔放”な彼女は、次第に教会の教えや倫理観、保守的な田舎のしきたりや男女の扱いの違いに、息苦しさを覚え始めていた。そんな折、文才を見込まれ、地方新聞社で働き始めた彼女は、才能を開花させはじめる。しかしその矢先、アストリッドの人生は、予期せぬ方向へと進んでいく――。

「長くつ下のピッピ」「ロッタちゃん」「やかまし村の子どもたち」シリーズで有名なリンドグレーン。作家としての素地はどう育まれたのか。厳格なクリスチャン家庭に育つが、期せずして未婚の母になる。子どもを手放すしかなかった葛藤、やっと一緒に暮らし始めれば、ワンオペ育児で苦労の連続。もがきながらも妥協せずに生きる彼女の生き様は現代の女性にも通じるだろう。
アストリッド役を演じたのは、巨匠ビレ・アウグスト監督の娘アルバ・アウグスト。本作の演技が高く評価され、ヨーロピアン・フィルム・プロモーション審査員賞の新人賞にノミネートされた。(堀)


2018年/スウェーデン=デンマーク/123分/スウェーデン語、デンマーク語/シネスコ/カラー
配給:ミモザフィルムズ
(C) Nordisk Film Production AB / Avanti Film AB. All rights reserved.
公式サイト:http://lindgren-movie.com/
★2019年12月7日(土)より岩波ホールほか全国順次公開
posted by ほりきみき at 00:14| Comment(0) | スウェーデン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする