2019年12月29日

エクストリーム・ジョブ   原題:極限職業   英題:Extreme Job

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監督:イ・ビョンホン(『二十歳』)
出演:リュ・スンリョン(『7番房の奇跡』『王になった男』)、イ・ハニ(『私は王である!』)、チン・ソンギュ(『犯罪都市』)、イ・ドンフィ(『ベテラン』)、コンミョン<5urprise>(「ハベクの新婦」)、シン・ハギュン、オ・ジョンセ

コ班長(リュ・スンリョン)率いる麻薬捜査班5人組。昼夜駆けずり回って容疑者を追うが検挙にいたらず、解散の危機にあった。そんな折り、国際犯罪組織のアジトを突き止め、その真向かいにあるチキン店に張り込み、24時間体制で監視を始める。チキン店が営業不振で身売りすることを知った捜査班は、店を買い取りチキン店を偽装営業しながら監視を続けることに。厨房長となったマ刑事(チン・ソンギュ)の思わぬ絶対味覚で、カルビソース味のチキンは大ヒット。紅一点のチャン刑事(イ・ハニ)はホールマネージャーとして店を切り盛りし、若手ジェフン(コンミョン)は厨房捕、尾行係ヨンホ(イ・ドンフィ)は運転手として配達係、コ班長ならぬコ店長も自ら配膳を手伝い大忙し。そんなある日、麻薬密搬入情報を入手する・・・

張り込みの隠れ蓑のはずのチキン店が、SNSで話題を呼び、長蛇の列ができるほどに。犯人を挙げないといけないのに、チキンを揚げないといけないという本末転倒に大笑い。
映画を観る前に、第40回青龍映画賞で人気スター賞を受賞したイ・ハニの華麗なドレス姿をテレビで観たのですが、映画の中では、化粧っ気もなく、ぶっきらぼうに悪態をつき、強力なパンチを食らわすという役柄でびっくり。ソウル大学校大学院国楽科修士で伽耶琴(かやぐむ)の名手。2006年にはミス・コリア優勝という才色兼備なイ・ハニですが、その片鱗もみせず、ちょっとずっこけた熱血刑事ぶりがカッコよかったです。
国際犯罪組織の無慈悲なボスとして、シン・ハギュンが登場するのも見どころ。 
韓国で観客動員1600万人を突破。青龍映画賞最多観客賞を受賞したのも納得です。
それにしても、韓国の人たち、いつ頃からこんなにチキン好きになったのでしょう・・・(咲)


2019年/韓国/111分/シネマスコープ/5.1ch
配給:クロックワークス
公式サイト:http://klockworx-asia.com/extremejob/
★2020年1月3日(金)シネマート新宿ほか全国ロードショー
posted by sakiko at 17:40| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月27日

ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!(原題:Hevi reissu / Heavy Trip)

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監督:ユーソ・ラーティオ、ユッカ・ヴィドゥグレン
脚本:ユーソ・ラーティオ、ユッカ・ヴィドゥグレン、アレクシ・プラネン、ヤリ・ランタラ
主演:ヨハンネス・ホロパイネン、ミンカ・クーストネン、ヴィッレ・ティーホネン、マックス・オヴァスカ、マッティ・シュルヤ、ルーン・タムティ 他

フィンランドの田舎町で退屈な日々を送るトゥロは仲間3人とヘヴィ・メタルバンドを組み、ボーカルを担当している。ライブはしない単なるコピーバンドだが、本人たちは満足していた。ある日、ひょんなことからノルウェーの巨大メタルフェス出演のチャンスを掴み、バンド名も“インペイルド・レクタム"(直訳すると直腸陥没)に決定する。せっかくつかんだチャンスだったが、地元ライブで緊張したトゥロが大嘔吐する前代未聞の惨劇を起こしてしまい解散する。さらに仲間でハイウェイを走行中、トナカイを避けたドラマーが事故死してしまう。トゥロは盗んだバンに亡き友の棺桶を乗せ、精神病院から新ドラマーを誘拐し、バンドを再結成して一路ノルウェーに向かう。フィンランド、ノルウェー両国の警察に追われながらも、亡き友、仲間、そして自分のために夢のフェスを目指す。

この作品の主人公たちはご近所で “ダメダメなやつら”扱いされているけれど、ちゃんと仕事をし、社会人として果たすべきことをして生きている。バンドとして分不相応のことを望むのではなく、仲間と演奏できればそれで十分に楽しい。決して人が嫌がることはしない。
若者がバンドやラップでビッグになることを夢見る映画は多いけれど、大抵の作品は社会人として果たすべき責任を放棄していることが多く、共感ができない。それに比べて、この作品の主人公たちはなんてきちんとしているのだろう。見始めてすぐに彼らを応援したくなった。
ちょっと要領が悪いから、いろいろトラブルが起こり、笑いも生まれる。それもこの作品の魅力の1つ。彼らが無事、夢のフェスに参加できるよう、ぜひ一緒に応援してください。(堀)


今40代の息子が高校生のときに、バンドにはまっていました。スプレーで髪を立てたり、顔にペイントしたり。やたらにやかましい音楽はメタル系だったのだと思います。なんと言っているのかわからない(笑)。この作品でもそんな懐かしい日々を思い出しました。
コピーバンドでも名前くらい真っ先につけそうな気がするし、コピーばかりでなくオリジナルももっと早く作りたくなるのでは、と気の短いおばさんは思うのですが、そのへんの欲が全然ありません。それがあれよあれよというまにフェスに行くことになってしまい、その珍道中がおかしいです。ゆるいのか過激なのか判然としませんが、どっちも「あり」で、なんだかおもしろかった作品。(白)


フィンランドのバンドというと、思い出すのが、アキ・カウリスマキ監督の『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』(1989)に出て来た奇抜な頭をしたバンド。彼らも相当可笑しかったけど、本作の「インペイルド・レクタム(直腸陥没)」もかなり狂ってます。そも、名前から変!
フィンランドには、人口10万人あたり53.2のメタルバンドが存在するそうで、総人口が約550万人なので、約3,000のメタルバンドがあるという次第。
私はメタルは苦手なのですが、この映画はとにかく笑えました! 呆れました! ヘヴィメタ苦手という方も、ぜひご覧ください。(咲)


2018年/フィンランド+ノルウェー/フィンランド語、ノルウェー語、英語/92分/カラー/シネマスコープ(2.35 : 1)/5.1ch/DCP/R15+
配給:SPACE SHOWER FILMS
© Making Movies, Filmcamp, Umedia, Mutant Koala Pictures 2018
公式サイト:http://heavy-trip-movie.com/
★2019年12月27日(金)よりシネマート新宿&心斎橋ほかにてロードショー!

posted by ほりきみき at 11:49| Comment(0) | フィンランド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月22日

パラサイト 半地下の家族   原題:Gisaengchung(寄生虫) 英題:Parasite

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監督: ポン・ジュノ (『殺人の追憶』『グエムル-漢江の怪物-』)
出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン

環境劣悪な半地下の部屋で暮らす貧しいキム一家。何度も事業に失敗しながらも楽天的な父キム・ギテク。そんな夫に強くあたる元ハンマー投げ選手の母チュンスク。息子ギウは何年も大学受験に失敗、娘ギジョンも美大を目指すが予備校に通うお金もない。一家4人でピザの箱を組み立てる内職に勤しむ日々だ。
そんなある日、ギウの友人で名門大学生のミニョクが、自分の留学中、女子高生ダヘの家庭教師を代わりに引き受けてくれないかとやってくる。
ダヘの住む高台の瀟洒な大豪邸を訪ねるギウ。ダヘの父はIT企業の社長パク・ドンイク。若く美しい妻ヨンギョは、ギウの偽造した大学在学証明書に目も通さす、授業の様子を見せてくださいとダヘの部屋に案内する。無事、家庭教師の仕事に就くギウ。さらにギウは、ダヘの弟ダソンにお絵描きの家庭教師として妹ギジョンを推薦する・・・

日本ではほとんど見かけない半地下の部屋。韓国では、半地下と屋上に増築された屋根部屋は、家賃が安く、低所得者層や学生の間借りの定番。
道に撒かれた消毒剤が部屋に入ってきそうになって、窓を締めなければとあわてる姿に、まずは笑わせられます。ソン・ガンホ、情けない役が絶品です。一方、IT企業の社長役のイ・ソンギュンは、若い妻を愛撫する姿が生々しくて、ドキッとします。
社会の底辺の家族と、成功し豪邸に住む家族との対比を見事に見せながら進む物語の行方に、ハラハラドキドキ。
ある場面で、もう50年以上前によく聴いていたジャンニ・モランディが歌っていたイタリア語の曲が流れてきて、なんとも懐かしかったです。高揚感がぴったり! 1960年代当時のオリジナルのものなのか、その後のカバーなのか気になるところ。(咲)


映画野郎の小川さんが調べてくださって、1964年のヒット曲「Inginocchio da te(あなたにひざまづいて)」と判明しました。(ぴったりの場面で流れるのですが、ネタバレになるので、どんな場面とここには書けません)
従姉に感化されて、初めて買ったシングルレコードでした。家探ししたけど見つけられず・・・
下記のyoutubeにジャケット写真がありました! 当時の若い時のジャンニ・モランディが歌う姿も!

=貴方にひざまづいて、In Ginocchio Da Te=ジャンニモランディ、 Gianni Morandi
https://www.youtube.com/watch?v=VVQ142u6XbE
しばらく本気でイタリア語学ぼうと思ったのでした。

私は、歌だけしか知らなかったのですが、『貴方にひざまづいて』の邦題で1966年1月8日に公開された映画の主題歌なのでした。



ポン・ジュノ監督に主演ソン・ガンホときたら、絶対おもしろい!と期待満々で試写へ。そのストーリーの転がり方がすごかった。富豪と庶民の生活の差に驚いているうちに、じわじわとパク家に寄生していくキム一家。文字通り鍵を握る家付きの家政婦の反撃、そうくるか、というラストに唖然としました。紹介を書くときにラストが思い出せないことがよくあるのですが、これは忘れられません。
ポン・ジュノ監督が『ほえる犬は噛まない』(2000年の長編デビュー作)で2003年7月に来日したときに(咲)さんと記者会見に出席しました。俳優さんよりオーラのある方でした。記事はこちら。同年11月の東京国際映画祭では韓国で大ヒットした『殺人の追憶』が上映されました。最優秀監督賞を受賞しています。以後の活躍はご存知のとおり。(白)


第72回カンヌ国際映画祭パルムドール
第92回アカデミー賞®国際長編映画賞韓国代表

2019年/韓国/132分/PG12/2.35:1
配給:ビターズ・エンド
公式サイト:http://www.parasite-mv.jp/
★2019年12月27日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
posted by sakiko at 09:07| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

燃えよスーリヤ!!    原題:Mard Ko Dard Nahi Hota

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監督: ヴァーサン・バーラー
出演: アビマニュ・ダサーニー、ラーディカ―・マダン、グルシャン・デーヴァイヤー、マヘーシュ・マーンジュレーカル

スーリヤは生まれつき痛みを感じない特異な体質。そのため、いじめっ子たちの標的にされていた。彼を守ってくれるのは幼なじみの女の子スプリだけだ。そんなスーリヤに、祖父はたくさんのアクション映画のVHSを渡す。スーリヤはその中で、「空手マン」と呼ばれる片足の男マニの“百人組手”の映像に衝撃を受け、カンフーマスターになることを誓う。
大人になったスーリヤは、カンフーの特訓を積み、痛み知らずの身体を武器に、街の悪党たちと日々戦っていた。そんなある日、チンピラたちに誘拐されそうになる女性を助けようとしたところに、幼い日に離ればなれになってしまったスプリが現われる。彼女は空手マンに弟子入りし、道場を経営していた。伝説の空手マン・マニに会えたスーリヤ。しかし、彼から、双子の弟ジミーが街を牛耳る悪党になってしまい、大切な師匠の形見を奪われ、スプリも危険にさらされていると聞く。スーリヤは空手マンと愛するスプリのため、悪の組織に立ち向かう・・・

なんとも泥臭くおどろおどろしいポスターに、ちょっと引いてしまったのですが、思いのほかスタイリッシュな作風。スローモーションや静止画、はたまた早送りと映像に工夫を凝らしています。香港映画の影響を受けたそうですが、模倣ではなく独自のスタイル。くどそうだと毛嫌いしないで、まずは観てください。なかなか心温まる物語です。
思えば、『燃えよスーリヤ!!』の邦題は、ブルース・リー主演の名作『燃えよドラゴン』(1973) からきているのですね。(原題は、痛みを感じない男) 私が引いてしまったポスターも『燃えよドラゴン』のポスターのパクリ(いやいや、オマージュ!)だったとわかりました。 松岡環さんのアジア映画巡礼に詳しく出ていますので、ぜひご覧ください。(咲)


監督はブルース・リーのファンであり、それ以上にアクションが好きで好きでたまらないよう。主人公は古いDVDでアクションを独習するが、映し出される作品から監督の好みが伝わってきた。
ハイスピードカメラで撮影したスローモーションを多用し、アクションを細やかに見せる。ヒロインは小柄ながら、しなやかな動きで男性と互角に戦う。見ていて惚れ惚れ!主人公よりカッコいいかも。(堀)


2018年/インド/カラー/アメリカンビスタ/ヒンディー語・英語/138分
配給:ショウゲート
公式サイト:http://moeyo-surya.jp/
★2019年12月27日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
posted by sakiko at 09:05| Comment(0) | インド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月19日

「アニエス・ヴァルダをもっと知るための3本の映画」『アニエスによるヴァルダ』『ラ・ポワント・クールト』『ダゲール街の人々』

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2019年3月29日、フランスが誇る女性監督アニエス・ヴァルダがパリの自宅で息を引き取った。享年90歳と10ヶ月。2月にベルリン国際映画祭で最新作『アニエスによるヴァルダ』がプレミア上映され、舞台挨拶で元気な姿を見せた直後の訃報だった。
遺作となった『アニエスによるヴァルダ』と併せ、1954年に製作された長編劇映画デビュー作『ラ・ポワント・クールト』、事務所兼自宅を構えるパリ14区の商店街の人々の暮らしを点描した1975年の傑作ドキュメンタリー『ダゲール街の人々』の2作品も、この度、劇場初公開されます。

「アニエス・ヴァルダをもっと知るための3本の映画」
公式サイト:http://www.zaziefilms.com/agnesvarda/
配給:ザジフィルムズ
★2019年12月21日(土)シアターイメージフォーラム他全国順次公開


◆『アニエスによるヴァルダ』 原題:Varda par Agnès  英題:Varda by Agnes
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監督:アニエス・ヴァルダ
製作:ロザリー・ヴァルダ
アソシエイト・プロデューサー:ダニー・ブーン

1955年製作の長編劇映画デビュー作「ラ・ポワント・クールト」から、数々の映画賞に輝いた前作「顔たち、ところどころ」まで、バルダ監督が自身の半世紀以上にわたる創作活動を情熱とユーモアあふれる口調で語り尽くし、貴重な映像とともに振り返った集大成的セルフポートレイト。

ヴァルダは冒頭で「マスタークラスのようだ」と言っていたが、舞台の上から聴衆に向かって自身の映画作りの基本を語った後に個々の作品を通して具体的に手法を解説するなどする。ワンカットで長回しにする意味には「なるほど!」と納得した。ほかの監督の作品を見ていてもワンカットの長回しがあるとヴァルダの言葉を思い出す。
身近な題材を取り上げてきた理由も家族との生活を大事にしていたからと知り、女性が仕事と家庭を両立させることの難しさを改めて感じるとともに、それを逆手にとって映画を撮っていた発想の柔軟さに驚いた。
また、カメラなどの技術は進化するが、怖じ気づかずに使いこなしていく。片手で持てる小型カメラで人懐っこく被写体の懐に入り込めるのもヴァルダの人徳のなせる業。これからも、もっともっとヴァルダの作品が見たかった。(堀)


2019年/フランス/フランス語/119分/カラー/5.1ch/1:1.85


◆『ラ・ポワント・クールト』原題:La pointe courte
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監督・脚本:アニエス・ヴァルダ
編集:アラン・レネ
出演:フィリップ・ノワレ、シルヴィア・モンフォール

ゴダールの『勝手にしやがれ』よりも5年、トリュフォーの『大人は判ってくれない』よりも4年も早く製作された、「ヌーヴェルヴァーグはここから始まった」と言っても過言ではない伝説的作品。
ラ・ポワント・クールト南仏の小さな海辺の村を舞台に、生まれ故郷に戻ってきた夫と、彼を追ってパリからやってきた妻。終止符を打とうとしている一組の夫婦の姿を描く。

描かれているのは結婚4年目を迎え、ちょっと倦怠期になっている若い夫婦の非日常と、ポワント・クルートの人々の日常。まったく関係ない2つを交互に映し出し、縦糸と横糸がポワント・クルートという布を織りあげていく。
この作品はぜひ、『アニエスによるヴァルダ』鑑賞後に見てほしい。編集によって通常とは違う音声の聞こえ方にしている箇所の説明や本作ならではのエピソードが語られているのだ。(堀)


1954年/フランス/フランス語/80分/モノクロ/モノラル/スタンダード


◆『ダゲール街の人々』 原題:Daguerréotypes
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監督:アニエス・ヴァルダ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキー、ヌーリス・アヴィヴ

自身が50年以上居を構えていたパリ14区、モンパルナスの一角にあるダゲール通り。“銀板写真”を発明した19世紀の発明家の名を冠した通りには肉屋、香水屋…、様々な商店が立ち並ぶ。その下町の風景をこよなく愛したヴァルダがダゲール街の人々75年に完成させたドキュメンタリー作家としての代表作。人間に対する温かな眼差しと冷徹な観察眼を併せ持ったヴァルダの真骨頂。

2歳の息子を抱えたヴァルダが自宅から遠くに行けない状況を作品に反映させ、ご近所を捉えたドキュメンタリー。
肉屋、パン屋、美容院などにカメラを持ち込み、客とのやりとりを映し出す合間に、店の主人夫婦のなれそめなどを聞きだす。見ているうちにすっかりその町の事情通に。自分もそこで生活しているかのような気持ちになる。
多くの店が夫婦で営業しているようだが、香水屋の夫婦が印象に残る。妻は恐らく認知症なのだろう。商売に関わることはなく、顔の表情は乏しいが、夫を強く信頼している気持ちは伝わってきた。最近でこそ老々介護生活は描いた作品はいくつもあるが、この作品が撮られた1975年当時は珍しかったのではないだろうか。(堀)


1975年/フランス/フランス語/79分/カラー/モノラル/スタンダード




posted by sakiko at 22:24| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

THE UPSIDE 最強のふたり   原題:The Upside

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監督:ニール・バーガー
出演:ケヴィン・ハート、ブライアン・クランストン、ニコール・キッドマン、ゴルシフテ・ファラハニ

スラム街出身で出所間もないデルは、元妻や息子から見放され、住むところもない。保護観察官から翌日までに求職証明書に3か所からサインをもらってくるよう言われ、仕方なく面接に行く。3つ目に訪ねたのは豪華マンションのペントハウス。サインさえ貰えばいいと思っていたのに、ハングライダーの事故で首から下が動かなくなった大富豪フィリップに気に入られ、住み込みの介護人として働くことになる。教養もなく調子のいいデルに秘書のイヴォンヌはじめ周りは厳しい目を向ける。だが、物おじせず、思うことを口にするデルに、フィリップはだんだん心を開いていく。一方、デルも教養があり上流社会で暮らすフィリップを最初はうらやましく思うが、彼なりに悩みがあることを知る。そんな或る日、二人を揺るがす出来事が起きてしまう・・・

世界で大ヒットしたフランス映画『最強のふたり』(2011年)のハリウッド版リメイク。
それなりの工夫をして、違いを見せているので、あまりに有名なオリジナル版と比べないで観るのがいいかもしれません。

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(C)2019 STX Financing, LLC. All Rights Reserved.

私にとっては、今や国外で活躍するイランの女優ゴルシフテ・ファラハニが出演しているので、どんな役で出ているのかが楽しみでした。もしかして、文通相手の女性?と思っていたら、オリジナル版には出てこない理学療法士という役柄でした。デルをちょっぴりこらしめたりして、なかなかカッコいいのです。ぜひ、ご注目を! (咲)


2019年/アメリカ/カラー/5.1ch/ビスタ/125分
配給:ショウゲート
公式サイト:http://upside-movie.jp/
★2019年12月20日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町他 全国ロードショー





posted by sakiko at 21:45| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月17日

だれもが愛しいチャンピオン(原題:Campeones)

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監督:ハビエル・フェセル
脚本:ダビド・マルケス、 ハビエル・フェセル
撮影:チェチュ・グラフ
音楽:ラファ・アルナウ
出演:ハビエル・グティエレス(マルコ)、アテネ・マタ(ソニア)、フアン・マルガージョ(フリオ)、ヘスス・ビダル(マリン)、ホセ・デ・ルナ(フアン・マ)フラン・フエンテス(パキート)、セルヒオ・オルモス(セルヒオ)、アルベルト・ニエト(ベニート9、グロリア・ラモス(コジャンテス)、ヘスス・ラゴ・ソリス(ヘスス)、ステファン・ロペス(マヌエル)、フリオ・フェルナンデス(ファビアン)、ロベルト・チンチージャ(ロマン)

プロのバスケットボールチームのコーチのマルコは負けるのが大嫌い。手腕はあっても短気な性格が災いして、よく問題を起こした。妻とうまくいかず別居状態のマルコは、飲酒運転で車に追突、逮捕されてしまった。判事は社会奉仕活動を命じ、障がい者のバスケットボールチーム”アミーゴス”の指導を任されることになった。
コーチが長くいたためしのない”アミーゴス”のメンバーはてんでんばらばら。これまでと違いすぎる状況に頭を抱えるマルコ。しかし、彼らの純粋さ、自由さに目を開かされていく。

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勝つことにだけとらわれていたプロチームのコーチがその対極にあるチームに入ったら…こうなります。メンバーはみんなとびきり楽しくて自由、たくまざるユーモアにそこかしこで笑わされてしまいます。これが600人の中から選ばれた唯一無二の人たちで、脚本をあて書きにして全部書き直したというほど個性的。技術はともかく情熱だけはあるメンバーに、強力な助っ人が加わって、マルコの期待も高まります。ええっ!というラストに胸が熱くなるでしょう。笑ったり、ほろりとしたり、スペインで興行成績1位というのが納得の作品。ハビエル・フェセル監督インタビューはこちらです。(白)

負けず嫌いで短気な主人公マルコが知的障害者のバスケチームのコーチに。他人からの評価を気にせず、自由奔放な彼らの言動に戸惑う。私も似ている部分があるので、マルコの気持ちはよくわかる。そんなマルコが新たな価値観に気づいていく。試合も人生も楽しむことが大事なのだ。主人公の人生観が変わる作品はよくあるが、この作品が他とは違うのはラスト。えっと驚いたが、これこそ新たな価値観。うまくいかなくたって楽しければいいじゃないかと笑い飛ばせるくらいがちょうどいい。(堀)

マルコの姿はなんだか自己中心的で、最初は、こういう人いるよなあ「こういう人嫌いだ」と思い、飲酒運転の罪滅ぼしに知的障害者のチームを教えることになった時の態度も、ほんとに嫌な男というイメージだったけど自分の思い通りにいかない障害者チームのコーチをするうち、そういう嫌なところがだんだんに変わっていく。それにしてもチームの面々の自由奔放さ、マイペースぶり、どんくささがおかしい。思わずクスッというシーンもいっぱい。以前だったら、障害者のそういう姿を出したら、障害者団体からクレームがきそうなシーンもいっぱい出てくる。でもすべて含めてその人の姿、個性なのだから、ありのままで出せるようになったのが嬉しい。日本でもクレームは出ないと思うけど、NHKの「バリバラ」みたいな番組もあるし。それに最近は障害者スポーツが、以前に比べたらTVなどで紹介されだいぶ認識されてきた。昔はあまりTVで紹介されることもなかった。
私は障害者が始めた会社に15年勤めたけど、車いすの人や杖をついて通っている方もたくさんいた。そしてテニスやバスケットなどもやっていて、障害者スポーツの試合も何度か見に行った。7年前にリタイアしたけど、ちょうど長野オリンピックの時には在職していて、社員の両足切断の方がパラリンピックのアイスレッジホッケーに出場して、だいぶ会社でも盛り上がった。その時はTVや新聞でも大きく取り上げられ、社会的にも障害者スポーツが認識されてきたなと思った記憶がある。でもパラリンピックが始まったのは1964年の東京オリンピックの時からだったということは知らず、そのことを知ったのは最近だった。その年、中一だった私は、学校からオリンピック会場に行ける人の抽選に当たって、体操競技を見に行くことができ、目の前でチャスラフスカのウルトラCを見ることができた。そんな経験もあるので障害者スポーツにも興味があり、この作品で「彼ら障害者スポーツ」の姿を楽しんで観てもらえたら嬉しい。
私は若いころ軟式テニスをやったり、スキー、登山などをしていて、自分はスポーツウーマンだと思って生きてきたけど、4年前心臓手術をして障害者1級になってしまった。今ゆっくりしか歩けないし、カートが荷物入れと杖代わり。階段の上り下りも苦手になってしまってスポーツどころではない状態。そんなこともあり、障害者のスポーツ人口が増えているのは嬉しい(暁)。

2018年/スペイン/カラー/シネスコ/118分
配給:シンカ 宣伝:太秦
(C)Rey de Babia AIE, Peliculas Pendelton SA, Morena Films SL, Telefonica Audiovisual Digital SLU, RTVE
http://synca.jp/champions/
★2019年12月27日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 10:39| Comment(0) | スペイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月15日

ブレッドウィナー  原題:The Breadwinner

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監督:ノラ・トゥーミー
脚本:アニータ・ドロン
原作:デボラ・エリス 「生きのびるために」(さ・え・ら書房)
エグゼクティブ・プロデューサー:アンジェリーナ・ジョリー

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件後のアフガニスタン、カーブル。11歳のパヴァーナは、教師だった父、作家の母、姉と幼い弟と、小さなアパートの一部屋で暮らしている。父が語る物語を聞きながら育ったパヴァーナは、ダリー語とパシュトゥー語の読み書きの出来る少女。路上で父と一緒に物を売りながら、人々に手紙を読み書きして生計を立てるのを手伝っている。ある日、父親が突然タリバンに連行されてしまう。タリバンは、女性が男性を伴わずに家を出ることを禁じていて、一家は水を汲みに行くことも、食料を買いに行くこともできなくなってしまう。家族を支えるため、パヴァーナは髪を切り“少年”として働き始める。やはり少年になりすました同級生に出会い、彼女に励まされながら父を刑務所から救い出そうと奔走する・・・

女性が外で働くことどころか、男性の同伴なしに外出することさえ禁じたタリバン。男手を失った家族は生きていくことができません。髪を切って男になりすまして一家の稼ぎ手(ブレッドウィナー)として健気に働くパヴァーナの姿に心が痛みます。アフガニスタンで、どれだけの女性が、こんな思いをしたのでしょう。
タリバン政権の時代が去っても、中村医師が狙い撃ちされて殺されてしまうようなアフガニスタン。男性とて、落ち着いた暮らしはできない社会です。
父親がパヴァーナに、かつてアフガニスタンにも平和な時代があったことを語ります。
11歳の少女がダリー語とパシュトゥー語の両方の読み書きが出来るのはすごい!と思ったのですが、かつて平和な時代には、二つの国語をそれぞれの民族が両方とも学校で習ったことを思い出しました。教育に力を入れ、女性も、もちろん学校に通っていた時代があるのです。
過酷な状況をアニメーションで描くことにより、目を背けさせることなく、人々の心に深く伝わってきます。過酷な運命の中でも、物語を語ることを忘れないパヴァーナの姿に涙が出ます。
パヴァーナは、はたして無事父に会えるのか・・・とハラハラしながら物語の行方を追いました。 (咲)


★注:ヒロインの名前は、「パヴァーナ」と片仮名表記されていますが、ダリ―語の発音では、パルヴァーナ もしくは パルワーナが近いです。英文字表記Parvanaをカタカナにする時に、rが長母音になったり、抜けてしまうのは、よくあることです。ちょっと気になりながら、この作品紹介の中では、公式サイトに従いました。ちなみに、Parvanaは、蝶のこと。蝶のように軽やかに飛び回ってほしいものだと願うばかりです。

12/22(日)サヘル・ローズさんトーク (映画上映13:00~14:50の上映終了後25分程度)

2017年/アイルランド・カナダ・ルクセンブルク合作/94分/G
配給:チャイルド・フィルム、ミラクルヴォイス
後援:アイルランド大使館 カナダ大使館
公式サイト:https://child-film.com/breadwinner/
★2019年12月20日(土)からYEBISU GARDEN CINEMAほか、全国順次公開




posted by sakiko at 20:25| Comment(0) | アイルランド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

サイゴン・クチュール(原題:Co Ba Sai Gon)

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監督:グエン・ケイ
脚本:グエン・ケイ、エー・タイプ・マシン
製作:ゴ・タイン・バン、チャン・ビュー・ロック、トゥイ・グエン
衣裳:トゥイ・グエン
出演:ニン・ズーン・ラン・ゴック(ニュイ)、ゴ・タイン・バン(ニュイの母)、ホン・ヴァン(アン・カイン)、ジェム・ミー 9x(ヘレン)、オアン・キエウ(タン・ロアン)、ジェム・ミー(タン・ロアン)、S.T 365(トアン)

1969年のサイゴン。9代続いたアオザイ仕立て屋の娘ニュイは、60年代の新しいファッションに夢中で、アオザイを仕立てる母と対立していた。自分のスタイルとセンスに自信満々でいたのに、打ち砕かれる経験をする。母が仕立てた美しいアオザイをこっそり身にまとってみたら、なぜか現代にタイムスリップしていた。ニュイはすっかり年取った自分と寂れた店の姿に愕然とする。母が急逝して継ぐ者のいない店は倒産、この家も人手に渡るところまで追い込まれていた。ニュイは自分の《人生》を変えようと奔走する。幸いトアンという青年が協力してくれた。ニュイは、現代のファッション業界に潜り込み、厳しかった母の本当の想いとアオザイの魅力に気づいていく。

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昔懐かしい60年代ファッションとベトナムの最新ファッションが見られます。父親がいない家庭だからか、母と娘の絆は強そう。仕事優先の母に寂しい思いをしてきたニュイの反抗もわかります。わがままで幼い感じのニュイが、タイムスリップしてからいろいろな試練を経て大人になっていく、国も年代も問わない王道ストーリー。タイムスリップして自分に会ってしまい、しかも協力して店の再建に励むというところはこれまでにない展開です。好青年のトアンは、60年代ではまだ生まれてもいないので、ロマンスに発展しないのがちょっと残念。ベトナムの有名女優さんたちが出演してとても華やかです。
ベトナム映画祭2018や第13回大阪アジアン映画祭などでは『仕立て屋 サイゴンを生きる』のタイトルで上映されました。(白)


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家業に反発するアオザイ仕立て屋の娘がタイムスリップで未来に行き、アオザイの良さに気づく。1960年代、現代のファッションをポップに扱い、見ていて楽しい。古いセンスを今に活かし、伝統に今を加える。柔軟な発想が大事と改めて思う。
お嬢様気質の主人公は成し遂げたことが自分だけの力ではないことに気づき、それが周りの気持ちにも影響を及ぼしていく。見る人を元気にするお仕事ムービー。(堀)


1969年は高校3年生でしたがべ平連に参加し、「ベトナムに平和を!」とデモに何回も出かけていた年でした。特に1969年の夏休み以降、毎週のようにあったデモに学生服のまま月3,4回は参加していた記憶があります。そんな経験から、ベトナムは私にとってとても気になる国です。なのでベトナム映画やベトナムのことを描いた映画をたくさん観てきました。ベトナム戦争を描いたものやベトナム戦争関係(枯葉剤など)のものがほとんどだったのですが、この4,5年、日本で上映されるベトナム映画に、少しづづ変化が見られるようになったと感じていました。そんな中、第13回大阪アジアン映画祭2018で『仕立て屋 サイゴンを生きる』を観ました。サイゴンのアオザイの仕立て屋を軸に、1969年から2017年にタイムスリップするという、ポップでキュートでおしゃれなアオザイがたくさん出てくる作品でした。ベトナムにもとうとうこういう作品が出てきたと、この映画祭で一番好きな作品でした。その作品が『サイゴン・クチュール』というタイトルで、日本公開されることになって、「やった~」と思いました。グェン・ケイ監督に取材できるというので、Sさんと一緒に取材に行ってきました。まだ若い監督でした。頼もしい。1作目のこの作品がベトナムでヒットし、すでに3作目まで作る予定があるとのこと(暁)。

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グェン・ケイ監督 インタビュー時 撮影:宮崎暁美
 

2017年/日本/カラー/シネスコ/100分
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
(C)STUDIO68
http://saigoncouture.com/
★2019年12月21日(土)より新宿K’sシネマほか全国順次公開


来日イヴェント記事はこちら
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/472375942.html

インタビュー記事はこちら
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/472376828.html
posted by shiraishi at 18:21| Comment(0) | ベトナム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月14日

この世界の(さらにいくつもの)片隅に 

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監督・脚本:片渕須直 
原作:こうの史代「この世界の片隅に」(双葉社刊) 
キャラクターデザイン・作画監督:松原秀典 
美術監督:林孝輔
音楽:コトリンゴ 
声の出演:のん 細谷佳正 稲葉菜月 尾身美詞 小野大輔 潘めぐみ 岩井七世 牛山茂 新谷真弓/花澤香菜/ 澁谷天外(特別出演)

広島県呉に嫁いだすずは、夫・周作とその家族に囲まれて、新たな生活を始める。昭和19(1944)年、日本が戦争のただ中にあった頃だ。戦況が悪化し、生活は困難を極めるが、すずは工夫を重ね日々の暮らしを紡いでいく。ある日、迷い込んだ遊郭でリンと出会う。境遇は異なるが呉で初めて出会った同世代の女性に心通わせていくすず。しかしその中で、夫・周作とリンとのつながりを感じてしまう。昭和20(1945)年3月、軍港のあった呉は大規模な空襲に見舞われる。その日から空襲はたび重なり、すずも大切なものを失ってしまう。そして昭和20年の夏がやってくる。

タイトルからてっきり大ヒット作のスピンオフ作品で、すずではない人物を主人公に据え、違った側面から戦争を見つめるのかと思っていた。しかし、今回も主人公はあくまでもすず。新しい人物を登場させ、結婚前の周作を浮かび上がらせる。そこにすずの女としての葛藤が生まれ、これまでもあったシーンにもより深い意味が加わった。聞けない疑いと言えない不安。すずや周作が抱える気持ちの揺れが伝わってくる。
また、戦争の爪痕をより具体的に見せる。実写だったら辛くて見られなかったかもしれない。アニメだからこそできた表現だったと思う。1回見た作品だからと言わず、ぜひ多くの人に見てほしい。(堀)


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11月4日の舞台挨拶@TIFF (撮影:白)

2019年/日本/カラー/168分
配給:東京テアトル
©2018こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
公式サイト:https://ikutsumono-katasumini.jp/
★2019年12月20日テアトル新宿・ユーロスペース他全国公開
posted by ほりきみき at 19:03| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢(原題:L'Incroyable histoire du Facteur Cheval)

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監督: ニルス・タヴェルニエ
原案:ファニー・デマレ
脚本:ファニー・デマレ、ニルス・タヴェルニエ、ロラン・ベルトーニ
出演:ジャック・ガンブラン、レティシア・カスタ、ベルナール・ル・コク、フロランス・トマサン

19世紀末、フランス南東部の村オートリ―ヴ。日々、村から村へと手紙を配り歩く郵便配達員シュヴァル(ジャック・ガンブラン)は、新しい配達先で未亡人フィロメーヌ(レティシア・カスタ)と運命の出会いを果たす。結婚したふたりの間には娘が誕生したが、寡黙で人付き合いの苦手な彼は、その幼い生命とどう接したらいいのか戸惑っていた。
ある日、配達の途中で石につまずいた彼は、その石の奇妙な形に心奪われ、石を積み上げて壮大な宮殿を作り上げるという奇想天外な挑戦を思いつく。そしてそれは同時に、不器用な彼なりの、娘アリスへの愛情表現でもあった。村人たちに変人扱いを受けながらも、作りかけの宮殿を遊び場に育っていくアリスとともに、シュヴァルの幸せな生活は続いて行くかに見えた。しかし、過酷な運命が容赦なく彼に襲い掛かるのであった。

この作品を見るまでシュヴァルの理想宮のことを知らなかった。建築や石工の知識を持たない郵便配達員が独学で方法を考え、雑誌や絵はがきを参考に、拾い集めた石で築き上げたという。フランス南東部ドローム県のオートリ―ヴ村に現存し、高さが8~10mで、東西26m 、北 14m、南 12m の建物は1879~1912の33年間で、9万3000時間を費やして完成した。ピカソはシュヴァルの理想宮をモチーフにした素描も残している。1969年にフランス政府の重要建造物に指定され、現在では世界中から観光客が訪れる一大観光スポットである。 

シュヴァルがこの建物を作り始めたきっかけは娘への愛情の示し方がわからなかったから。娘を喜ばせたくて石を積む。その娘は15歳で天に召されたが、それでもシュヴァルは石を積むのを止めなかった。黙々と取り組むシュヴァルの悲しみはいかばかりか。シュヴァルを演じたジャック・ガンブランの顔に深く刻まれた皺から悲しみがにじみ出る。
しかし、できあがった建造物は独創的で素晴らしいと思うものの、家族は幸せだったのだろうか。特に妻は女として愛されている実感を得ていたとは思えない。妻を演じたレティシア・カスタの表情が寂しげに見えてならなかった。そういえば、レティシア・カスタは13日に公開された『パリの恋人たち』にも出演している。そちらはパートナーでもあるルイ・ガレルが監督と主演を兼ねるが、レティシアが演じた役は自分の気持ちをはっきり示し、主人公を翻弄させる。こちらの妻とは対照的である。
理想宮の完成時、シュヴァルは76歳。その2年後に妻が亡くなると、妻と自分が眠るための“終わりなき静寂と休息の墓”を共同墓地に築き始め、8年かけて完成させた。もし、私がシュヴァルの妻だったら、「お墓ぐらい別にしてほしい」と思ったかもしれない。(堀)


100年以上も前の、実際にあったお話がもと。郵便配達の男は何通かの手紙のために、はるばる山をも越えていきます。お城作りに使う手頃な石を持ち帰るのだから、帰りのカバンは行きより重いでしょう。「口数少なく不器用な」とは、ひと昔前の日本の男にも通じます。こつこつと地味な仕事を続けたお父さんの、一人娘への愛の具現化と思えば許してあげたい。日々の生活に頭を悩ましている妻にしてみたら、困った人ではあるけれど。
映画では、すでに完成している建物をブルーシートで覆って、次第に出来上がるように見せる工夫をしているそうです。
『山の郵便配達』(1999/中国)、『イル・ポスティーノ』(1994/イタリア)という郵便配達の映画がありました。現代ではメールやライン、画面で顔を見て話すことさえできるようになりました。ドラマも様変わりしますね。(白)


試写で観た時に、シュヴァルの理想宮について、似たような話を観たことがあると思ったら、似たようなでなく、この映画そのものでした。(情けない・・・)
「フランス映画祭2019横浜」(2019年6月20~23日)で、『アイディアル・パレス シュヴァルの理想宮(仮題)』のタイトルで上映された映画でした。
ニルス・タヴェルニエ監督のQ&Aレポートを是非ご覧ください。

以下、ポイントを抜粋しておきます。
「彼のすごいところは、33年もかけて子どものための遊び場を作っていたこと」
「自分の自由さを貫き通した結果、生きているうちに国際的な評価を享受できたという意味では、非常に稀有な人物」
「シュヴァルが「アニミズム的な信仰があること」や「マルチカルチャーを独学で吸収した人物でもあった」こと、そして「アートセラピーというものが、まだ存在しない時代から、それに近いものを自ら編み出していた人物でもある」

シュヴァルが、自分の愛情表現をうまくできなくて、ちょっと変わり者だったことを俳優ジャック・ガンブランが体現しています。
それにしても、娘の遊び場のために、こんな宮殿を作ってしまうなんて! (咲)


2018年/フランス/フランス語/カラー/ビスタ/5.1ch/105分
配給:KADOKAWA
(C) 2017 Fechner Films - Fechner BE - SND - Groupe M6 - FINACCURATE - Auvergne-Rhone-Alpes Cinema
公式サイト:https://cheval-movie.com/
★2019年12月13日(金)全国公開



posted by ほりきみき at 18:36| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月12日

冬時間のパリ (原題:Doubles vies 英題:NON-FICTION)

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監督・脚本:オリビエ・アサイヤス
撮影監督:ヨリック・ル・ソー
製作:シャルル・ジリベール
製作総指揮:シルビー・バルト
出演:ギョーム・カネ、ジュリエット・ビノシュ、バンサン・マケーニュ、ノラ・ハムザウ、パスカル・グレゴリー

電子書籍ブームに乗り遅れまいとしている編集者のアラン(ギヨーム・カネ)は、作家のレオナール(ヴァンサン・マケーニュ)から不倫をテーマにした新作について相談される。アランは友人でもあるレオナールの作風を時代遅れだと感じていたが、女優の妻セレナ(ジュリエット・ビノシュ)は評価している。実はアランはアシスタントと不倫中で、セレナもレオナールとひそかに関係を結んでいた。

パトリス・シェローやオリビエ・アサイヤスといった仏文化に根付く映画を撮る監督の新作には、堪らなく映画ココロをそそられる。好きではない人にはピンと来ないかもしれないが、杉綾織のように人物も物語も系譜のように連なっているからだ。
本作も、エリック・ロメール監督作『木と市長と文化会館 または七つの偶然』にインスパイアされて脚本を書いたという。ヒントを得るのも先達・同僚・後輩の作品から。続けて観ている仏映画ファンも含め、家族のような感覚になってくるのだから不思議なものだ。大所帯でシステマチックな製作手法を採るハリウッド映画と異なり、スタッフ、出演者とも気心知れた小さな「ワンチーム」感が伝わるせいだろうか。

冬のパリ、海辺の別荘(素敵!)を舞台に、2組の夫婦とそれに纏わる人々の織り成すタペストリーがもつれて行く様をパリの渇いた空気、海辺の光線を背景に描かれる。ギョーム・カネやジュリエット・ビノシュら仏を代表する俳優陣が、喋る喋る、飲むわ食べるわで、仏版ウディ・アレンを思わせる楽しさだ。洗練されたユーモアと今日性を盛り込んだ展開に観入っていると観客もパリを覗いたような気分にさせてくれる。
個人的にはパスカル・グレゴリーの変わらぬ姿に再会できたことが嬉しかった。(幸)


配給:トランスフォーマー
2018年製作/107分/G/フランス
後援:在日フランス大使館、アンスティチュ・フランセ日本
(C)CG CINEMA / ARTE FRANCE CINEMA / VORTEX SUTRA / PLAYTIME
公式サイト:http://www.transformer.co.jp/m/Fuyujikan_Paris/
★2019年12月20日(金)よりBunkamuraル・シネマほか全国公開
posted by yukie at 13:12| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

テッド・バンディ (原題:EXTREMELY WICKED, SHOCKINGLY EVIL AND VILE)

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脚本・製作総指揮:マイケル・ワーウィー
原作:エリザベス・クレプファー
監督:ジョー・バーリンジャー
製作総指揮:ザック・エフロン、ジョナサン・デクター、ジェイソン・バレット
出演:ザック・エフロン、リリー・コリンズ、カヤ・スコデラーリオ、ジェフリー・ドノヴァン、ディラン・ベイカー、ジョン・マルコヴィッチ

1969年、ワシントン州シアトル。シングルマザーのリズ(リリー・コリンズ)は、バーでテッド・バンディ(ザック・エフロン)と出会う。やがて彼女はテッドと暮らすようになり幸せをかみしめていたが、誘拐未遂事件の容疑でテッドが逮捕されてしまう。突然の出来事に戸惑うリズは、別の誘拐事件でテッドの愛車フォルクスワーゲンらしき車が目撃されていたことを知る。テッドは誤解だと説明するが、数々の事件への彼の関与が判明する。

”シリアル・キラー”の語源ともなった稀代の連続殺人氾。米国の犯罪史はテッド・バンディ”以前”と”以降”に分けられるという。’70年代はDNA鑑定やプロファイリング操作も行われていず、州を跨ぎ、殺害方法も都度異なる事件の解決に、警察は長けていなかったのだ。法廷の生中継も初の出来事だった。
何より、テッド・バンディのようにハンサムな白人で且つ学歴もあり、熱心な共和党支持者の好青年が女性(100人を超えると言われる)をレイプした上、殺人を犯すことなど、当時の米国民は考えもしなかったのだろう。

そのバンディが唯一、手にかけなかった恋人のノンフィクションを原作としているため、本作は殺害場面が描かれない異色の犯罪映画となっている。終始、恋人の視点から描かれるバンディは、シングルマザーである恋人や子どもに何処までも優しい。周囲の人からも好かれる理想的な男だ。演ずるザック・エフロンは正に適役!来日時に取材した際も、スター擦れしていない素朴な田舎の青年という印象だった。

疑心暗鬼になる恋人へ幾度となく無実を主張する様子には一定の合理性があり、バンディに愛情を持つ者なら難なく説得されてしまうだろう。人は如何に見た目で判断するか…、感情と倫理の危うい境目を観客はいつしか恋人と一体になって揺れ動いていることに気付く。
監督のジョー・バリンジャーは、バンディのドキュメンタリーを製作している。当該事件を徹底調査し、分析し尽くした監督ならでは描出でき得た犯罪ドラマと言える。(幸)


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提供・配給:ファントム・フィルム
提供:ポニーキャニオン
2019年製作/109分/R15+/アメリカ
(C) 2018 Wicked Nevada,LLC
公式サイト:http://www.phantom-film.com/tedbundy/
★2019年12月20日(金)よりTOHOシネマズシャンテ他にてロードショー
posted by yukie at 11:23| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月10日

ジュマンジ/ネクスト・レベル(原題:Jumanji: The Next Level)

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監督:ジェイク・カスダン
原作:クリス・バン・オールズバーグ
脚本:ジェイク・カスダン ジェフ・ピンクナー スコット・ローゼンバーグ
撮影:ギュラ・パドス
出演:ドウェイン・ジョンソン(スモルダー・ブレイブストーン博士)=ダニー・デヴィート(エディおじいちゃん)
ジャック・ブラック(シェリー・オベロン教授)=サーダリウス・ブレイン(フリッジ)
ケビン・ハート(ムース・フィンバー)=ダニー・グローヴァー(マイロ・ウォーカー)
カレン・ギラン(ルビー・ラウンドハウス)=モーガン・ターナー(マーサ)
ニック・ジョナス(シープレーン)=コリン・ハンクス(アレックス))
馬=マディソン・アイスマン(ベサニー)
オークワフィナ(フリートフット)=アレックス・ウルフ(スペンサー)

前作から時がたち、スペンサー、マーサ、フリッジ、ベサニーは大学生になった。すっかり壊れたはずのジュマンジ=ゲーム機を直しはじめたスペンサー、あっというまに吸い込まれてしまった。残された3人はスペンサーを救出しようと、ログインするが修理が完了していなかったからか、お爺ちゃんたちまで一緒に吸い込まれてしまう。ジュマンジの中はバグり、フィールドはジャングルだけではなく、砂漠まで拡がって敵も半端なく増えていた。前回より増えた分キャラが入り乱れ、人間ではないものにまで変身してしまった彼らはスペンサーを救いだせるのか?

ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(2017年/日本公開は2018年4月)の続編。主要キャラにお爺ちゃん二人が加わりました。かといって年齢に容赦なく、猛スピードでゲームは進行するので、あれよあれよというまに難関にぶち当たってしまいます。無理ゲーを可視化×体感すればこうなるよね<なりません。これまでと違ってお爺ちゃんが加わったことでおきる認識のズレと、スローさ、くどさに思わず自分を振り返ってしまったのでした。若い人には笑えるツボです。
字幕を気にせずに没入して中身を堪能したい方は、吹き替え版がおすすめです。日本語吹き替え版で、加山雄三さん、ファーストサマーウイカさんが声優デビュー。(白)


ゲームの世界に入り込んでしまった主人公たちはゲームを攻略しないと現実世界に戻れない。しかし、そのゲームはいわゆるピコピコとするゲームではなく、体力勝負のアドベンチャー。主人公たちは身をもって経験することで、人間的にも成長するところがこの作品の魅力でもある。前作でスペンサーとマーサは恋人同士になったのだが、すき間風が吹き始めたところから本作はスタート。すれ違った気持ちは元に戻れるのか。
また、今回はスペンサーの祖父と彼の親友マイロも加わる。どうも過去に何か因縁があるらしい。仲直りしたいマイロと頑なな祖父。果たしてこの2人の関係はどうなるのか。恋物語もいいが、やはりこの親友の話の方が身近に感じられる。マイロが心情を吐露する場面はぐっときた。私もマイロのように思える人生が送りたい。(堀)


2019年/アメリカ/カラー/シネスコ/123分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
©2019 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved

公式サイト:http://jumanji.jp
公式Twitter:https://twitter.com/JumanjiJP
公式Facebook:https://www.facebook.com/JumanjiJP/ #ジュマンジhttps://www.jumanji.jp

★2019年12月13日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 23:00| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月08日

ある女優の不在 原題:Se rokh 英題: 3 faces

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監督:ジャファル・パナヒ
出演:ベーナズ・ジャファリ、ジャファル・パナヒ、マルズィエ・レザイ

人気女優ベーナズ・ジャファリのもとに、見知らぬ少女から悲痛な動画メッセージがパナヒ監督経由で届く。女優を志して芸術大学に合格したのに家族に反対され自殺を図るというのだ。ベーナズはパナヒ監督の運転する車で、少女マルズィエの住む北西部アゼルバイジャン州のサラン村を目指す。山間のじぐざぐ道で結婚式に出会い、誰かが自殺した気配はない。マルズィエの家を探しあてるが、3日前から家に戻らないと母親が困り果てていた。芸人に対する偏見が根強い村で、弟も姉が女優になることに猛反対で荒れ狂っている。
やがて、マルズィエが町外れで暮らす革命前に活躍した女優シャールザードのところに身を寄せているのを知る・・・

2010年に、20年間の映画製作禁止を命じられたパナヒ監督。屈せず、『これは映画ではない』(2011)、『閉ざされたカーテン』(2013)、『人生タクシー』(2015)と映画を作り続け、今回もまた、ユーモアに溢れる作品を放ってくれました。そこには、自身の置かれた立場や、3人の女性たちに立ちはだかる問題もくっきり。
東京フィルメックスで特別招待作品として上映され、主演のベーナズ・ジャファリさんが審査員として来日。インタビューの機会をいただきました。
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村へのロードムービーは、どこかドキュメンタリーのような趣もありますが、ベーナズさんがオファーを受けた段階で、脚本はすべて書かれていたとのこと。助監督の名前で撮影許可を取り、パナヒ監督の生まれ故郷で短期間で撮影。カンヌ国際映画祭に出品された折、国外に出られないパナヒ監督に代わり、カンヌに行ったベーナズさん。帰国後、当局に呼び出され、製作禁止の監督の作品に出たことを咎められたけれど、「私は女優として尊敬する監督の作品に出ただけ」ときっぱり答えて帰ってきたそうです。(インタビュー詳細は後日お届けします。)
まさにパナヒの映画としかいいようのない映画。ぜひ劇場でお楽しみください。(咲)


2018年 カンヌ国際映画祭 コンペティション部門 脚本賞受賞

2018年/イラン/ペルシア語・トルコ語/カラー/ビスタ/5.1ch/100分
配給:キノフィルムズ
公式サイトhttp://3faces.jp/
★2019年12月13日(金) ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開




posted by sakiko at 22:09| Comment(0) | イラン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

スピード・スクワッド ひき逃げ専門捜査班 原題:Hit-and-Run Squad

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監督:ハン・ジュニ(『コインロッカーの女』)
武術監督:ホ・ミョンヘン(『新感染 ファイナル・エクスプレス』『神と共に 第二章:因と縁』)
出演:コン・ヒョジン(『ドアロック』)、リュ・ジュンヨル(『毒戦 BELIEVER』)、チョ・ジョンソク(『EXIT』)、ヨム・ジョンア(『完璧な他人』)、チョン・ヘジン(『名もなき野良犬の輪舞』)、イ・ソンミン(『工作 黒金星と呼ばれた男』)、キム・キボム(KEY)、ソン・ソック(「最高の離婚 ~Sweet Love~」)

警察庁内部調査課のシヨン(コン・ヒョジン)は、巨大企業JCモータースの若き会長を務める元F1レーサーのチョン・ジェチョル(チョ・ジョンソク)と警察庁長官との収賄事件を捜査していた。しかし、長官の圧力でシヨンは捜査半ばで交通課のひき逃げ専門捜査班に異動させられてしまう。捜査班は、妊婦のウ係長と、頼りない巡査のミンジェ(リュ・ジュンヨル)だけ。吹き溜まりのような部署で、3ヶ月前の未解決ひき逃げ事件を捜査するうち、有力容疑者がチョン・ジェチョルだと知る・・・

これまでドラマでも映画でも、好青年を演じてきたチョ・ジョンソクが、スピード狂で、私欲のためなら脱税、横領、賄賂など、なんでもやってしまうという悪を、実に楽しそうに演じてます。対するコン・ヒョジンも、左遷させられながらも実力発揮する警官役がかっこいいです。
チョ・ジョンソクとコン・ヒョジンの共演といえば、テレビドラマ「嫉妬の化身」を思い出します。男ながら乳癌に罹ってしまったチョ・ジョンソク演じる人気キャスターが、コン・ヒョジン演じる気象キャスターと同じ病室に・・・というラブコメ。あのほんわかしたドラマと違って、本作では二人が本気で闘ってます。イ・ソンミン、リュ・ジュンヨルといった実力派俳優の確かな演技もみどころ。(咲)

2019年/韓国/133分/G
配給:アルバトロス・フィルム
公式:サイト:https://speed-squad.com/
★2019年12 月 13 日(金)よりシネマート新宿・心斎橋他全国順次ロードショー




posted by sakiko at 21:29| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

パリの恋人たち(原題:L' HOMME FIDELE) 

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監督:ルイ・ガレル
出演:ルイ・ガレル、レティシア・カスタ、リリー=ローズ・デップ、ジョゼフ・エンゲル

ジャーナリストの青年アベル(ルイ・ガレル)は、3年間同棲したマリアンヌ(レティシア・カスタ)から妊娠を告げられ喜ぶが、それもつかの間、父親は友人のポールであることから別れを切り出される。数年後、ポールの葬儀でアベルはマリアンヌと再会。同時にポールの妹エヴ(リリー=ローズ・デップ)からも思いを告白される。

2018年の東京国際映画祭で『ある誠実な男』として上映された作品。モテモテのアベルだが、主導権を握っているのはアベルではなく女性たち。マリアンヌにもエヴにも誠実に向き合うがゆえに戸惑い、翻弄される。
リリー=ローズ・デップの一途さはここまでくるとストーカーだが、それに余りある可愛らしさに許してしまいたくなる。そんな一歩間違えれば狂気さえ感じる思いより、経験を重ねたマリアンヌの読みが一枚上手。あっぱれ!といいたくなるのだが、実はマリアンヌさえも息子に踊らされていたのだから驚く。この息子が超美形!!!将来が楽しみである。(堀)


2018年/フランス/フランス語/カラー/75分
配給:サンリス
©2018 Why Not Production
http://senlis.co.jp/parikoi/
★2019年12月13日(金)ロードショー
posted by ほりきみき at 02:00| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

エッシャー 視覚の魔術師 (原題:M.C. Escher - Het oneindige zoeken)

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監督・撮影・製作:ロビン・ルッツ
脚本:ロビン・ルッツ、マラインケ・デ・ヨンケ
ナレーション:スティーヴン・フライ
登場人物:グラハム・ナッシュ(クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング)、ジョージ・エッシャー、ヤン・エッシャー、リーベス・エッシャー

「トリックアート(だまし絵)」で知られるオランダ人版画家・画家のマウリッツ・コルネリス・エッシャー(1898年~1972年)の人生を日記、1000を超える書簡、家族へのインタビュー、収集家の証言などを手掛かりに、創作の足跡を丹念に辿り、その創造力の源泉を探る。さらに、3Dアニメーションを用いて、エッシャーがどのようにして漠然としたアイデアを視覚化し、作品を生み出していったのか、その思考のプロセスを明らかにした。

エッシャーは日本でも人気がある。昨年、「生誕120年イスラエル博物館所蔵 ミラクル エッシャー展」が開催され、上野の森美術館だけでも20万人の動員があったという。
本作では、まずは初期に描いた風景作品を実物と照らし合わせて紹介。版画でここまで表現できるとは。トリックアートしか知らなかったので、ちょっと驚いた。
同じモチーフをぎっしり組み合わせる作風のきっかけは旅先で見たムーア人のタイル壁とのこと。有名になった故の弊害を訴える。
エンドロールに3Dで見せるだまし絵の可視化が面白い。(堀)


エッシャーというとトリックアートというおぼろげな知識しかなかったのですが、資料に「1935年ごろスペイン、グラナダのアルハンブラ宮殿のタイルに魅了される」とあり、オランダ人のエッシャーがどういう経緯でイスラームの無限に広がる幾何学模様に出会ったのか興味津々。
スペインに行った動機がなんとも面白い。イタリアで結婚し息子をもうけたのですが、思春期を迎えた息子がムッソリーニに傾倒しそうになり、スペインに逃れようと決意。それも観光船の会社に掛けあって、乗船中、絵を描くことで、一家の船賃を無料にしてもらったのです。スペインに渡ったエッシャーが出会ったのが、アルハンブラ宮殿のタイルという次第。
試写を拝見した直後に、東京ジャーミィ(モスク)での「ジャーミイの模様の幾何学 ~美しいものには理由がある~」と題した講演会で、エッシャーの絵が引き合いに出されました。講師は数学の専門家。幾何学の世界でエッシャーが有名なのを知りました。
この講演会については、エッシャーの絵の写真入りでスタッフ日記に書いていますので、下記をご覧ください。 (咲)

イスラームの幾何学模様とエッシャー
 

追記: 「ジャーミイの模様の幾何学 ~美しいものには理由がある~」の講師である谷克彦様から、映画をご覧になった感想をいただきました。一部抜粋してお届けします。(咲)

uplinkでエッシャーを見ました。数学者エッシャーは良く知られていますが、どんな生活をした人物かはあまり気にしたことがありませんでした。人物像のわかる良い映画でした。
私はエッシャーのファンで多くの方がこの映画を見ると良いと思います。
最後の方でエッシャーが国際結晶学会の講演に呼ばれていくところがありましたが、私の専門も結晶学で、結晶学会では昔からエッシャーのperiodic patternを教材に使い馴染んでいます。
アルハンブラのモザイクには平面群の17種のすべてがあるという説と1種類かけているという説があります。
さらにペンローズもアルハンブラのタイルからペンローズ・タイルのヒントを得たとも聞きます。
映画では,エッシャーの息子たちへの取材が面白かったです.
作品がまとまるときのエピソード(1955年の表皮から1956年の婚姻のきづなへ)などよくわかりました.
エンドロールに流れるスナップの一つに大道絵師が写りましたが、たまたま昨夏,ニューカッスルの通りで見かけた道にエッシャー作品を描いていた大道絵師の光景のようです。良い映画をお教えくださり有難うございました。



2018年/オランダ/カラー/80分
配給:パンドラ
(C) All M.C. Escher works (C) the M.C. Escher Company B.V.- Baarn – the Netherlands
公式サイト:http://pan-dora.co.jp/escher/
★2019年12月14日よりアップリンク渋谷・アップリンク吉祥寺にてロードショー

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リンドグレーン (原題:Unga Astrid)

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監督:ペアニレ・フィシャー・クリステンセン
脚本:キム・フォッブス・オーカソン
出演:アルバ・アウグスト、マリア・ボネヴィー、マグヌス・クレッペル、ヘンリク・ラファエルセン
トリーネ・ディアホム

兄弟姉妹とスモーランド地方の自然の中で伸び伸びと育ったアストリッドは、思春期を迎え、より広い世界や社会へ目が向きはじめる。教会の土地で農業を営む信仰に厚い家庭で育ちながら、“率直で自由奔放”な彼女は、次第に教会の教えや倫理観、保守的な田舎のしきたりや男女の扱いの違いに、息苦しさを覚え始めていた。そんな折、文才を見込まれ、地方新聞社で働き始めた彼女は、才能を開花させはじめる。しかしその矢先、アストリッドの人生は、予期せぬ方向へと進んでいく――。

「長くつ下のピッピ」「ロッタちゃん」「やかまし村の子どもたち」シリーズで有名なリンドグレーン。作家としての素地はどう育まれたのか。厳格なクリスチャン家庭に育つが、期せずして未婚の母になる。子どもを手放すしかなかった葛藤、やっと一緒に暮らし始めれば、ワンオペ育児で苦労の連続。もがきながらも妥協せずに生きる彼女の生き様は現代の女性にも通じるだろう。
アストリッド役を演じたのは、巨匠ビレ・アウグスト監督の娘アルバ・アウグスト。本作の演技が高く評価され、ヨーロピアン・フィルム・プロモーション審査員賞の新人賞にノミネートされた。(堀)


2018年/スウェーデン=デンマーク/123分/スウェーデン語、デンマーク語/シネスコ/カラー
配給:ミモザフィルムズ
(C) Nordisk Film Production AB / Avanti Film AB. All rights reserved.
公式サイト:http://lindgren-movie.com/
★2019年12月7日(土)より岩波ホールほか全国順次公開
posted by ほりきみき at 00:14| Comment(0) | スウェーデン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月07日

映画 ひつじのショーン UFOフィーバー! (原題:Shaun the Sheep Movie: Farmageddon)

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監督:リチャード・フェラン、ウィル・ベッカー
脚本:ジョン・ブラウン、マーク・バートン

ショーンが仲間たちと暮らす牧場のある田舎町の外れにUFOが不時着した。乗っていたのは宇宙人の女の子ルーラ。ひょんなことから牧場に迷い込んだルーラと知り合ったショーンは意気投合。ショーンの仲間たちもルーラに魅了される。
一方、宇宙人探知省のエージェント・レッドが調査に来たことで、田舎町はUFOフィーバーに。牧場主はフィーバーに乗じて、UFOのテーマパーク“ファーマゲドン”を作り、一儲けをしようと企む。
やがて事情を知ったショーンたちはルーラを家に帰してあげようと奔走するが、エージェント・レッドに見つかり、捕らえられてしまう。ショーンたちはルーラを無事、故郷に帰してあげることができるのか。

セリフはないが話はわかる。よく練られた脚本とクレイ・アニメーションの細かい作業をこなした制作チームのがんばりは絶賛モノ。
今回はショーンたちが暮らす町にUFOが不時着。帰れなくなった幼い宇宙人を助けようと奮闘する。いつもながらショーンたちの見事なコンビネーションには笑ってしまう。
子供は何をしでかすかわからない。目が離せないのはどこの星でも同じよう。ルーラの父母の苦労や心配に共感。一方で、秘密組織の女性がトラウマを克服する場面にほろっとした。(堀)


2019年/イギリス・フランス/アニメーション/英語/カラー/シネスコ/5.1ch/86分
配給:東北新社、STAR CHANNEL MOVIES
©2019 Aardman Animations Ltd and Studiocanal SAS. All Rights Reserved.
公式サイト:https://www.aardman-jp.com/shaun-movie/
★2019年12月13 日(金)全国ロードショー
posted by ほりきみき at 23:33| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ルパン三世 THE FIRST 

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監督・脚本:山崎貴
原作:モンキー・パンチ
音楽:大野雄二
声の出演:栗田貫一 小林清志 浪川大輔 沢城みゆき 山寺宏一 広瀬すず 吉田鋼太郎 藤原竜也

「ブレッソン・ダイアリーを戴きに参上します ルパン三世」
その謎を解き明かしたものは莫大な財宝を手にするとされ、かのアルセーヌ・ルパンが唯一盗むことに失敗したといわれている秘宝・ブレッソン・ダイアリー。
そんな伝説のターゲットを狙うルパン(栗田貫一)は考古学を愛する少女レティシア(広瀬すず)と出会い、2人で協力して謎を解くことに。しかし、ブレッソン・ダイアリーを狙う秘密組織の研究者ランベール(吉田鋼太郎)と、組織を操る謎の男ゲラルト(藤原竜也)が2人の前に立ちはだかる。

不朽の名作『カリオストロの城』から40年。今年4月にこの世を去った原作者モンキー・パンチの悲願だった3DCGアニメーションによる劇場版を山崎貴監督が完成させた。「ルパン三世」シリーズとしては23年ぶりの劇場版でもある。
オープニング曲が流れるだけでワクワクし、サスペンスタッチで物語が始まると気持ちがスクリーンに引き寄せられる。今回のヒロインは考古学を愛する少女レティシア。雰囲気が何だかクラリスに似ている。ルパンが張り切るのも当然だろう。随所に『カリオストロの城』へのオマージュが感じられ、うれしさで涙が止まらない。
ストーリー展開は大風呂敷を広げてしまった感もあるが、最後は何とかうまくまとめた。さすが山崎監督!
3DCGのルパンはいつもと違うので、最初、ちょっと違和感があったが、次第に慣れてくる。ルパンの赤いジャケットの質感まで伝わってきたのだが、まさかレザージャケットだったとは!40年以上ルパンを見てきて初めて知った事実だった。(堀)


2015年の東京アニメアワードで『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』上映後、モンキー・パンチ氏と小池健監督、浄園祐プロデューサーのトークを聞きました。
以下モンキー・パンチ氏の言葉のみ。
「駆け出しの漫画家だったので1967年に連載の話がきたとき、冗談かと思った。アニメになってこんなに長く続くとは」
「原作では小物についてこだわりはなかった。週刊誌に20~25ページ書くのでワルサーP38 とかベンツとかに限定してしまうと、どこから見てもそう描かなくてはいけないから。その点についてはアニメの方々が凝ってくれたんです」
「見た人が朗らかになってほしいと描いていました。不可能なことに挑戦して成功する。必ず20何ページかで完結する。それ以外は創作の幅を狭くするのできっちり決めていませんでした。ルパンの年齢も見ている人が決めていいんです。アニメについてはまかせっきりでした。3Dのルパンが観たいですね」
やっとお目見えしたこの3DCGのルパン、モンキー・パンチさんもどこかできっと観て喜んでくださっているでしょう。(白)


2019年/日本/93分
配給:東宝
(C) モンキー・パンチ/2019映画「ルパン三世」製作委員会
公式サイト:https://lupin-3rd-movie.com/
★2019年12月6日(金)全国東宝系にてロードショー
posted by ほりきみき at 22:41| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

午前0時、キスしに来てよ 

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監督:新城毅彦      
脚本:大北はるか  
音楽:林イグネル小百合  
主題歌:「One in a Million -奇跡の夜に-」GENERATIONS from EXILE TRIBE
出演:片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)、 橋本環奈、眞栄田郷敦、八木アリサ、岡崎紗絵、鈴木勝大、酒井若菜、遠藤憲一 

優等生の花澤日奈々(橋本環奈)は、まじめすぎる性格で周りから一目置かれる存在だが、本当は王子様と恋に落ちるおとぎ話のような恋愛にあこがれる夢見がちな女子高生だった。ある日、日奈々の高校に国民的人気スターの綾瀬楓(片寄涼太)が映画の撮影でやってきた。エキストラとして参加することになった日奈々は、楓の飾らない素顔とやさしさに魅せられ、楓も日奈々の裏表のない実直さに次第にひかれるようになり、芸能人と一般人の誰にも知られてはいけない秘密の恋がスタートする。思いもよらぬ障害が2人に降りかかる中、日奈々をひそかに思い続けてきた幼なじみの浜辺彰(眞栄田郷敦)が楓に宣戦を布告してくる。

スーパースターに見初められ、幼馴染にも告白される。その上でスーパースターと相思相愛に。完璧すぎるシチュエーションにときめかない女の子はいないだろう。王道ラブストーリーだ。しかも、演じているのが片寄涼太と眞栄田郷敦。どちらもカッコいい!片寄涼太はすでにいくつもの映画に出演しているが、眞栄田郷敦は新田真剣佑の弟で、5月に公開された『小さな恋のうた』でデビュー。TBSのドラマ「ノーサイド」にも出ていたが、これからブレイクまちがいなし。(堀)

2019年/115分/G/日本
配給:松竹        
ⓒ2019映画『午前0時、キスしに来てよ』製作委員会
公式サイト:https://0kiss.jp/
★2019年12月6日(金)全国公開
posted by ほりきみき at 02:56| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

つつんで、ひらいて 

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監督・編集・撮影:広瀬奈々子
出演:菊地信義、水戸部功、古井由吉
音楽:biobiopatata
エンディング曲:鈴木常吉

菊地信義は40年以上にわたり日本のブックデザイン界をリードしてきた稀代の装幀家。空前のベストセラーとなった俵万智「サラダ記念日」をはじめ大江健三郎、古井由吉、浅田次郎、平野啓一郎、金原ひとみら1万5千冊以上もの本を手掛けてきた。菊地が手作業で一冊ずつデザインする指先から、本の印刷、製本に至る工程までを丁寧に綴り、ものづくりの原点を探る。
第20回東京フィルメックスのコンペティション部門でスペシャル・メンションを受賞。

装幀家・菊地信義を追ったドキュメンタリー。
まずは製本の様子から。さまざまな機械がリズミカルに動き、流れるようにいくつもの工程を経て本が出来上がっていく。バックに流れる音楽が機械の動きにぴったり。まるで小人が機械を動かしているかのよう。見ていて楽しい。広瀬奈々子監督のセンスの良さを感じた。さすが是枝裕和監督の秘蔵っ子!
菊地は紙質、色、文字のタイプとサイズ、配置などを内容に合わせてトータルでデザインする。ピンセットを使っての細やかな作業。1ミリ、1%の違いに拘る。丁寧な仕事ぶりを丁寧に映し出す。これまで装幀した本の数は1万5000冊を超えた。長い付き合いの古井由吉が「作家は自己模倣を危惧するが、装幀も同じでは」と思いやる。最近は本を手にすることはなかったが、久しぶりに書店に行きたくなった。(堀)


高校生の3年間、図書局員で過ごしました。新聞・放送・図書は部活と違っていつでもいられる局室があったので、居心地が良くて。傷んだ本の修復をする製本の仕事もありました。ここにいる間に乱読して、読む本の分野が広がったかも。だからか、いまだに紙の本が好きで、デジタル図書は落ち着きません。書店には今もよく行って、棚や平台の本がずれているとつい直してしまいますし、どんな本が並んでいるのか見るだけでも楽しいものです。
そこでまず眼に入るのはやはり装幀。色と形とロゴのデザイン、手触り、厚さ、重さも重要です。著者を知らなくても、おお~という本に出会うとつくづく見入ってしまいます。これまで何度も出会った菊池信義さんの本がどうやって生まれてきたのか、この映画で細部まで見ることができました。本好きのみなさま必見です。(白)


東京フィルメックス2019でスペシャル・メンション受賞(2019.11.30) 撮影:宮崎
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2019年/日本/カラー/HD/16:9/ステレオ/94分
配給:マジックアワー
©2019「つつんで、ひらいて」製作委員会
公式サイト:https://www.magichour.co.jp/tsutsunde/
★2019年12月14日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
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2019年12月05日

家族を想うとき 原題:Sorry We Missed You

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監督:ケン・ローチ『わたしは、ダニエル・ブレイク』『ジミー、野を駆ける伝説』
脚本:ポール・ラヴァティ『わたしは、ダニエル・ブレイク』『ジミー、野を駆ける伝説』
出演:クリス・ヒッチェン、デビー・ハニーウッド、リス・ストーン、ケイティ・プロクター

マイホームを持ちたいと考えている父のリッキーは、フランチャイズの宅配ドライバーとして独立する。母のアビーは、介護士として働いていた。夫婦は家族の幸せのために働く一方で子供たちと一緒に居る時間は少なくなり、高校生のセブと小学生のライザ・ジェーンはさみしさを募らせていた。ある日、リッキーが事件に巻き込まれる。

今年の洋画暫定1位(12月だからほぼ決定?)の秀作をご紹介できることが嬉しくて堪らない。前作『わたしは、ダニエル・ブレイク』から3年。監督ケン・ローチはブレない。社会的構造悪を指摘し、その中で生きるしかない市井の人々に差し向ける視線。今、目の前で起きている出来事であり、俳優が演じていることを忘れさせるほどのリアルな演出。
労働者階級の世界を描かせたら世界でも右に出る監督はいないだろう。カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドール2冠の巨匠になっても、スター俳優や商業主義とは無縁のようだ。ローチの優しさと温かな精神がある限り、この世は未だ救いがある、と確信してしまう。

英国ニューカッスルに住む主人公のささやかな夢は家族ためのマイホーム。個人事業主の宅配ドライバーになり、トラックのローンが生計を苦しめる構造は日本と同じだ。長時間労働により家族との関係は軋む。そんな中でも笑える場面が多いのはローチの演出意図か、英国のユーモアを欠かさない国民体質からか。深刻さを全面に押し出しても辛くなるだけ。労働者階級が好むスポーツ・サッカーファンの口論対決の件には爆笑させられる。

社会派ヒューマンドラマをここまで泣かせ、大いに笑ってエンターテイメントの至上極みまで高め且つ深度を達せられる監督はローチだけ。滅多に出会えない秀作をお見逃しなく!ちなみに、原題の「Sorry We Missed You」は宅配不在票の定型文と、会えない家族への思いを伝えるダブルミーニングだろう。(幸)


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この作品の俳優さん、みな好演ですが誰一人これまで知りませんでした。そのせいもあってか、ドキュメンタリーを見るようでした。経済破綻は庶民の生活を直撃しました。借金を返し家を手に入れようと、真面目に働けば働くほど夫婦には疲れがたまり、子どもたちのためだったはずなのに、裏腹になってしまう悲しさ。小さなエピソードの積み重ねを見るうちに、この家族に思い入れしてしまいます。
宅配はこんなに過酷な仕事だったのか!?と唖然。日本の現状はどうなっているのでしょう。誰かのこんな犠牲で便利に暮らしていたなら、ネット通販でなく、店舗で買おうと殊勝な決心をするほど気の毒になってしまいました。明日届かなくても困らないもの。
妻のアビーと同じような訪問介護の仕事をした経験があるので、彼女が相手の身になった良いケアをしているのがわかります。そちらも、びっしりと詰まったスケジュールに縛られて、しわ寄せは息子や娘に。でもうんと小さいわけじゃない、もっと親の手助けができるはず。ところどころで笑わされながら、何をどうすればこの人たちが幸せになれるのか、宿題をもらった気分です。(白)


父が始めたフランチャイズ契約の宅配ドライバーのブラックさ。コンビニエンスストアの24時間営業にフランチャイズ契約のオーナーが苦しんでいる話を思い出す。
作品では妻が介護の仕事の移動で車を使っているのに、夫はそれを売って、宅配用の車を購入していた。男の仕事がメインで、女の仕事はサブなのか。この点でも日本における男尊女卑と同じものを感じてしまった。家事は妻が担っているのだから、妻こそ優遇されるべきなのに。
家族のために働いているはずなのに、仕事は子どもと過ごす時間を奪い、寂しさが子どもを不安定にしていく。どうすればいいのか。ケン・ローチ監督は答えを出さず、見る者に問いかける。
ところで、これは本筋からは外れるかもしれないが、息子は親への不満を仲間との悪戯書きアートで発散させる。しかも、ペイント道具を万引きしていた。不満な気持ちはわかる。しかし、他人に迷惑をかけてまですることか。息子の年齢ならアルバイトもできるはず。金銭的苦労は親だけが背負い込まず、子どもとも共有すべきだったのかもしれない。(堀)


2019年/イギリス・フランス・ベルギー/英語/100分/アメリカンビスタ/カラー/5.1ch/
提供:バップ、ロングライド 
配給:ロングライド
photo: Joss Barratt, Sixteen Films 2019
© Sixteen SWMY Limited, Why Not Productions, Les Films du Fleuve, British Broadcasting Corporation, France 2 Cinéma and The British Film Institute 2019
公式サイト:https://longride.jp/kazoku/
★12月13日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開★
posted by yukie at 13:49| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

カツベン!

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監督:周防正行
脚本・監督補:片島章三
音楽:周防義和

出演:成田凌、 黒島結菜、永瀬正敏、 高良健吾、 音尾琢真、徳井 優、 田口浩正、正名僕蔵、 成河、 森田甘路、 酒井美紀、 シャーロット・ケイト・フォックス、上白石萌音、 城田優、 草刈民代、 山本耕史、 池松壮亮、 竹中直人、 渡辺えり、 井上真央、 小日向文世、 竹野内 豊

偽の活動弁士として泥棒一味の片棒を担ぐ生活にウンザリしていた染谷俊太郎(成田凌)は一味から逃亡し、とある町の映画館にたどり着く。そこで働くことになった染谷は、今度こそ本当の活動弁士になることができるとワクワクするが、そこは館主夫妻(竹中直人、渡辺えり)をはじめ、スターを気取る弁士の茂木貴之(高良健吾)や酒好き弁士の山岡秋聲(永瀬正敏)などくせ者ばかりだった。

「活動写真」という言葉には、単なる懐かしさを超えた、日本人のメンタリティを顕在化させる温かな響きがある。故・淀川長治氏の名調子解説を聞いて育った世代のせいだろうか…。大正時代、スクリーンに見入り、活動弁士に聴き入る観客たちがいる場所は、映画をポケットに入れられる現代の映画ファンとは確実に異なる、熱く濃密な空間が漂っていたに違いない。
活動弁士は、日本独自で発展した世界にも稀な映画文化の象徴である。
周防監督と共同脚本であり発案者の片島章三が映画愛を詰め込んだ本作。全体にスラップスティックコメディの要素を詰め込み、楽しませる。実際にはサイレント映画の撮影現場がこれほど無茶振りだったとは思えないが、創り手のサービス精神が垣間見えて愛おしい活劇調となっている。

熾烈なオーディションを勝ち抜いて主役を射止めた成田凌、相手役の黒島結菜とも適役の好演が光るが、特筆すべきは永瀬正敏だろう。登場場面では本物のカツベン士だと思ってしまったほど、声の張り、色艶、間合い…どこを取っても堂々たるカツベン士の様相を呈す。人気カツベン士から酒に身を持ち崩すやさぐれ男まで、人物の内心が透けて見えるほどに演じ切っており、若手俳優とは一日の長を示した。

エンディングに流れる無声映画の傑作『雄呂血』の映像、「ジョージア行進曲」をもじった「カツベン節」を歌う奥田民生の節回しも、映画の余韻を残す上手い演出だ。(幸)


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楽屋荒らしから活動弁士になる染谷俊太郎を演じた成田凌さん、駆け出しから人気弁士になるまで順撮りだったのでしょうか?半年以上特訓したとのこと。ちゃんとだんだん上達してプロの弁士らしくなっていました。夢は弁士だったという子ども時代の子役さんもうまかったです。
劇中の無声映画は既存の作品『椿姫』や『金色夜叉』などを参考に新しく製作されたもの。完全オリジナルの作品にも誰が出演しているのかお楽しみに。
実は無声映画観賞会に何年か通って弁士の解説つきの無声映画を楽しんでいました。この作品の監修の澤登翠さんをはじめ、俳優さんの指導を担った片岡一郎さん、坂本頼光さんの解説を毎回すぐ近くで聞くという贅沢。今でも毎月例会があるんですよ。映画を観て気になった方は、ぜひ一度でも生で見て聞いてくださいませー。(白)


配給:東映
2019年製作/日本/127分/G/
©2019「カツベン!」製作委員会
公式サイト:http://www.katsuben.jp/
◆12月13日(金)丸の内TOEI他全国順次ロードショー◆
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2019年12月02日

ラスト・クリスマス 原題:Last Christmas

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監督:ポール・フェイグ
原案:エマ・トンプソン、グレッグ・ワイズ
脚本:エマ・トンプソン、ブライオニー・キミングス
出演:エミリア・クラーク、ヘンリー・ゴールディング、ミシェル・ヨー、エマ・トンプソン

ケイト(エミリア・クラーク)は、ロンドンのクリスマスショップで働いているが、なかなか仕事に集中できず生活も荒れ気味だった。そんなとき突如現れた謎の青年トム(ヘンリー・ゴールディング)が、たちまち彼女の抱えるさまざまな問題点を洗い出し、解決に導く。ケイトは彼に好意を抱くが二人の仲は進展せず、やがて彼女はある真実にたどり着く。

一斉を風靡した英国のポップデュオ「ワム!」のクリスマス定番曲「ラスト・クリスマス」にインスパイアされたオリジナルラブストーリーである。そういえば、ジョージ・マイケルが天国へと旅立ったのも2年前のクリスマス…。英国のみならず世界中の”ソウル・ソング”とも言えるこの名曲は、キュンとする思い、クリスマスの高揚感、キラキラな想い出、恋の予感、家族の幸せ…などなどを胸いっぱいに詰め込んだメロディ宝石箱のようだ。

プレゼントの中身は??ネタばれするのでお伝えできないが、とにかく観て!としか言いようがない。きっと誰もがハッピーで華やいだ気持ちになること請け合いの映画。同じくクリスマスの”愛され映画”として根強い人気を誇る『ラブ・アクチュアリー』に出演した女優エマ・トンプソンが原案・脚本・出演(主演エミリア・クラークの母)を果たしている。ロンドンのクリスマスシーズンを知り尽くした人だけに、ちゃんとツボを押さえた構成だ。
単なるロマコメに留まらず、移民問題、格差社会、LGBTや家族の絆といった現代社会を見据える視点も欠かさない。

近年はドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」で人気だが、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』『世界一キライなあなたに』など映画での活躍も目覚ましいエミリア・クラークのコメディエンヌぶり、伸びやかな歌声は映画を明るい兆しへと導く。
彼女が恋をする謎のイケメン、ヘンリー・ゴールディングは動き、表情ともしなやかで本当に魅力的だ。ミシェル・ヨーとの『クレイジー・リッチ!』親子共演も楽しい。

「ワム!」の「恋のかけひき」「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ」などの楽曲と、懐かしいPV映像まで映し出される場面には胸が熱くなった。少しも陳腐化しない名曲群が映画となり、ファンを楽しませてくれる。ジョージ・マイケルからの贈り物を受取ったようだった。(幸)


試写状をいただきながら見逃してしまったので、きのう劇場で観てきました。エミリア・クラーク可愛い!ヘンリー・ゴールディング素敵(若いころのチョウ・ユンファを思い出す)!とミーハーな感想でごめんなさい。クリスマスのデート映画にぴったりな楽しくて、キュンとする映画でした。ポーっと観ていても、ちゃんとはりめぐらされていた伏線をエンドロールでもう一度確かめられます。サンタことミシェル・ヨーが経営するクリスマス・ショップの楽しいこと!路地まで飾られたロンドンのクリスマスが堪能できます。

バスの中で若い男性が外国人夫婦にぶつける心無い言葉に、車内が凍り付いてしまった中ケイトが一言声をかけてくれてホッとしました。しかし、あの男性は失業して不幸せだったのかも、誰かに当たらずにいられなかったのかもしれません。
イギリスの移民の数は10年前の約2倍とか、8人に1人は外国から来た人です。日本の受け入れは遅々として進んでいませんが。ケイト一家も東欧から逃れてきて父はキャリアを生かせません。
楽しい中にいろいろな問題がちりばめてある映画です。日本にもたくさんの問題があって、すぐにどうこうできないけれど、自分を振り返っても自分のことだけで人生終えてしまいそうだけれど。現実に理想を引き下ろすんじゃなく、現実がこうだから上を見なくちゃね。トムが何度も言っています。「上を見てごらん」って。別の視点を持ったら気づきが増えて、人生は少し違ったものになります。そしてケイトのように、ちょっと大変な人の手助けができたらいいな。(白)


英国のポップデュオ「ワム!」のクリスマス定番曲「ラスト・クリスマス」と言われて、ピンと来なくても、曲を聴けば、あ~この曲! と、まさに、クリスマスシーズンには必ずどこかから聴こえくるお馴染みの曲。
メルヘンチックに描がきながら、英国が抱えている移民や格差社会などの問題を観る人にしっかり届けてくれます。
『クレイジー・リッチ!』のミシェル・ヨーとヘンリー・ゴールディングの再度の共演もあって、アジア映画ファンにも見逃せない映画です。ヘンリー・ゴールディング、確かにチョウ・ユンファの若い頃を思い出させてくれるかも~!(咲)



2019年製作/103分/G/イギリス
配給:パルコ ユニバーサル映画
© Universal Pictures
©2019 UNIVERSAL STUDIOS
公式サイト:https://lastchristmas-movie.jp/
★12月6日(金) TOHOシネマズ シャンテほか全国公開 ★



posted by yukie at 22:33| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする