2019年09月29日
エンテベ空港の7日間 原題:7 Days in Entebbe
監督: ジョゼ・パジーリャ
出演: ダニエル・ブリュール、ロザムンド・パイク、エディ・マーサン、リオル・アシュケナージ、ベン・シュネッツァー、ドゥニ・メノーシェ
1976年6月27日、テルアビブから約240名の乗客を乗せパリへ向かうエールフランス機が、4人のハイジャック犯に乗っ取られる。ハイジャック犯のうち二人は、パレスチナ解放人民戦線のパレスチナ人。あとの男女二人は、革命を志すドイツ左翼急進派メンバー。
ハイジャック機は、悪名高き独裁者イディ・アミン大統領のいるウガンダのエンテベ空港に着陸させられる。乗客たちは空港の旧ターミナルで武装犯の監視下に置かれる。犯人たちの要求は500万ドルと、世界各地に収監されている50人以上の親パレスチナ過激派の解放。
ハイジャック犯と交渉の道を探るイスラエル首相イツハク・ラビンと、交渉せず秘密裏に軍事的解決をすべきと進言する国防大臣シモン・ペレス。
3日目、人質がイスラエル人と非イスラエル人に分けられ、イスラエル人を一部屋に集め、爆発物で取り囲む。ますます窮地に立たされるイスラエル政府。ハイジャック犯に交渉すると歩み寄ったところで、ついに7日目、エンテベ空港奇襲作戦(別名:サンダーボルト作戦)を実行する・・・
46年前に実際に起こったハイジャック事件。
当事者のエールフランス機の乗務員や乗客、ハイジャック犯と対峙するイスラエル政府、そしてハイジャック犯。それぞれの目線で日を追って事件が語られる。
映画の冒頭で、事件の半年前にパレスチナ解放人民戦線(PFLP)とドイツ左翼急進派メンバーが出会うところが描かれる。なぜハイジャック事件を起こすのかの動機を示す大事な部分だ。 それには、イスラエル建国に至った歴史にも触れないといけないところだが、そこは周知の事実として描いていないのだろう。今なお絶えないテロの起こる原因を、この映画を通じて再び考えてほしい。
現在公開中の『プライベート・ウォー』で、勇気ある戦場カメラマンを演じているロザムンド・パイクが、本作ではドイツ左翼急進派の闘士を演じている。どちらも強い女。素敵だ。(咲)
このハイジャック事件はこれまで「エンテベの勝利」「特攻サンダーボルト作戦」「サンダーボルト救出作戦」と3度映画化されてきた。どれもイスラエル政府の視点から描かれていたが、本作では4人のハイジャック犯のうち、革命を志すドイツ左翼急進派メンバーの男女、人質、イスラエル軍の兵士の視点も加えられ、多角的に捉えた。
ドイツ左翼急進派メンバーはパレスチナ解放人民戦線のパレスチナ人とは違い、次第にハイジャックが正しい方法だったのかと苦悩し始める。しかし、男は参加したことを後悔し、女はここまできたからにはやるしかないと腹をくくる。この向き合い方の違いに、(本来は男だから、女だからと決めつけてはいけないのだが)「そうそう男っていざとなるとダメなのよね」と思わず納得してしまう。
またイスラエルの兵士と恋人の会話からは、政府の望むことと末端の兵士の望んでいることの違いが浮き彫りになる。恋人は群舞に参加するダンサーなのだが、その群舞はちょっと不気味で、不安を煽るような狂気さえ感じた。これがハイジャック事件の合間に挟み込まれ、人質たちの不安と同期する。巧みな演出だ。特に最後の制圧場面はどきどきする気持ちが最高潮に達するだろう。(堀)
2018年/イギリス・アメリカ/107分/G
配給:キノフィルムズ
公式サイト:http://entebbe.jp/
★2019年10月4日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開