2019年09月19日

パリに見出されたピアニスト 原題:Au bout des doigts 英題:In Your Hands

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監督:ルドビク・バーナード
脚本:ルドビク・バーナード ジョアン・ベルナール
出演: ランベール・ウィルソン、クリスティン・スコット・トーマス、ジュール・ベンシェトリ、カリジャ・トゥーレ、エルザ・ルポワーヴル

パリ郊外で家族と裕福ではない暮らしをしているマチュー(ジュール・ベンシェトリ)はピアノが大好きな青年で、表向きはクラシックを否定しながら、ひそかに練習し続けていた。ある日、パリの北駅に置かれたピアノを弾いていると、偶然通りかかったパリ国立高等音楽院のディレクター、ピエール(ランベール・ウィルソン)から声を掛けられる。その後警察に捕まったマチューは実刑を免れるため、公益奉仕を命じられた音楽院でピアノのレッスンを受けることになる。

「ご自由に演奏を!」そう書かれたピアノが駅に設置してある光景は、パリ市民にとって珍しいことではないそうだ。さすがは文化が日常化したお国柄。監督が本作の着想を得たのも、 パリのベルシー駅でピアノを弾く青年を見かけたことがきっかけとなっている。

始まりはバッハの「平均律クラヴィーア曲集」の1曲が流れるパリ、北駅。弾いているのは革ジャンにパーカー、ジーンズ、スニーカーを履いた少年だ。注視する中年の男‥。
少年はある出来事からコンセルヴァトワール(パリ国立高等学院)で、“女伯爵”と呼ばれるピアノ教師の猛特訓を受ける成り行きに‥。そしてクライマックスのコンクール課題曲、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調」に取組むまでに様々なドラマが展開される。

バッハ、ショパン、リスト、 ラフマニノフなどクラシックの名曲が全編を覆う本作は、クラシック音楽好きには堪らない魅力だ。
驚くことに、主役を演じたジュール・ベンシェトリはピアノの経験が全くなかったそう!やはり、名優ジャン=ルイ・トランティニャンを祖父に、父は著名な映画監督兼俳優、母は夭折したマリー・トランティニャンという遺伝子の為せる技か。日本公開作では、イザベル・ユペール主演『アスファルト』での演技が印象に残っている人も多いだろう。いくぶん、生硬さを感じさせるが、思春期の少年特有の反骨心と繊細さを身体で表現している。

彼を支えるのは、仏や英語圏でも活躍するベテラン俳優ランベール・ウィルソンとクリスティン・スコット・トーマスの2人が、映画に安定感を齎せている。

セーヌ川中洲に建設されたラ・セーヌ・ミュージカル、音楽の殿堂サル・ガヴォー 、ノートルダム大聖堂やサン・マルタン運河などパリのロケ地が軽やかにスクリーンを彩って行く。(幸)


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ストリートピアノは日本国内でも設置しているところが増えているようです。都庁の展望台には草間彌生さん監修の黄色に黒の水玉模様のグランドピアノがあり、動画サイトにいろんな方が弾いているところがアップされています。映画のマチューのように通って弾いている天才少年少女が出てきたら面白いですよね。
映画では家族が生活に追われて、マチューの才能に気づいたり後押ししたりという余裕は全くありません。たまたま演奏を聞いたピエールが音楽関係の人間だったことが、マチューの運と才能を開かせていきます。天賦の才能も努力とチャンスが必要なこと、紆余曲折ありながらも報われる日がくるストーリーはありがちですが、俳優の好演でラストまで引っ張っていきます。(白)


2018年製作/106分/G/フランス・ベルギー合作
配給:東京テアトル
(C)Recifilms - TF1 Droits Audiovisuels - Everest Films - France 2 Cinema - Nexus Factory - Umedia 2018
https://paris-piano.jp/
★2019年9月27日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国で順次公開★
posted by yukie at 12:23| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする