2019年09月14日

乱反射 

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監督:石井裕也
脚本:成瀬活雄・石井裕也
原作:貫井徳郎「乱反射」(朝日新聞出版/ 朝日文庫)
出演:妻夫木聡、井上真央、萩原聖人、北村有起哉、光石研、三浦貴大、芹澤興人、相楽樹、筒井真理子、梅沢昌代、田山涼成、鶴見辰吾

幸せな家庭を築く新聞記者・加山聡(妻夫木聡)とその妻・光恵(井上真央)。 聡の父親が倒れて入院し、光恵は息子・翔太を連れて見舞いに行った。その帰り、強風によって倒れた街路樹がベビーカーに乗っていた翔太を直撃。幼い命は助からなかった。事故の真相を追う聡が突き止めたのは、「誰にでも心当たりのある」小さな罪の連鎖だった。
誰も謝罪をせず、誰もが人のせいにし、自分の責任を認めない。追い込まれた父親と母親は、幼い息子を失った悲しみと怒りの矛先を、自分自身に向けていくことを余儀無くされる。

2018年9月にメ~テレ開局55周年記念作品としてテレビ朝日系列にて放送されたが、2019年6月に開催された第22回上海国際映画祭より公式招待を受け、異例のインターナショナル・プレミア上映が行われた。香港での劇場公開が決定するなど海外でも劇場公開が決定している。日本でも9月21日(土)よりユーロスペースにて1週間限定の特別上映が緊急決定。
テレビ版ではなく劇場用ディレクターズカット版が上映される。

<石井裕也監督コメント>
『乱反射』が劇場で公開されることは悲願でした。製作時から、キャスト・スタッフの方々と共に劇場公開を目指していました。同時に、海外へもどんどん展開していこうという野望を持っていました。それらが現実となり、とても嬉しく思います。撮影したのは2017年の7月ですが、「責任の所在がハッキリしない日本社会の縮図」でもあるこの作品は、全く色褪せていません。テレビで一度ご覧になった方も、よりダイナミックになった映画版『乱反射』を楽しんでいただけると思います。

街路樹が倒れる瞬間にそのそばを通っていたという不運なタイミングの一致だけがこの事故の原因ではない。街路樹は定期的に点検が行われるが、その木だけ点検が行われていなかった。それはその木の根元に犬の糞がたくさんあったため、極度の潔癖症の造園業者は点検ができなかったのだ。なぜ、その木の根元だけ糞がたくさんあったのか。それは愛犬と散歩をする老人が腰を屈めるのが辛いという理由でいつもその木の根元に放置していたから。
聡は新聞記者という仕事柄、いろいろ調べ上げていく。すると、このほかにも様々な偶然が重なった結果、事故が起こったことが明らかになる。これらはどれも「このくらい大丈夫」というちょっとした公共心の欠如。だから誰も自分のせいだとは思わない。散歩する老人は事故のニュースを見たとき、自分の愛犬が下敷きにならなくてよかったと胸をなでおろす。演じた田山涼成のしれっとした顔は見ていて怒りを覚えるほど。しかし、老人に怒りを感じた自分も実は意識せずに公共心の欠ける行動をしているかもしれない。被害者の聡も別のところで公共心に欠ける行動を取っていたのだから。(堀)


【トークショー情報】
9月22日(日) ゲスト:石井裕也監督、妻夫木聡さん
9月23日(月) ゲスト:石井裕也監督、北村有起哉さん
9月24日(火) 英語字幕付き上映 ゲスト:未定
9月25日(水) ゲスト:芹澤興人さん、前野朋哉さん

2018年/日本/カラー/5.1ch/94分
配給:フリーストーン
©メ~テレ2018
公式サイト:https://www.nagoyatv.com/ranhansya/special/
★2019年9月21日(土)よりユーロスペースにて1週間限定の特別上映
posted by ほりきみき at 13:05| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

王宮の夜鬼(原題:창궐/英題:RAMPANT) 

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監督:キム・ソンフン
脚本:ファン・ジョユン
撮影:イ・ソンジェ
出演:ヒョンビン、チャン・ドンゴン、チョ・ウジン、チョン・マンシク、イ・ソンビン、キム・ウィソン

咬まれると白目になり牙が生え、人の生き血を求める“夜鬼”へと豹変する謎の感染爆発が蔓延する朝鮮時代。存亡の危機に陥った朝鮮に帰還した王子イ・チョンは、至る所にはびこる夜鬼の群れと戦う朝鮮随一の武官 パク従事官らと出会い、成り行きで彼らと行動を共にすることになる。一方、国を掌握しようと企む国王の側近である絶対悪キム・ジャジュンは、国家転覆を謀り、夜鬼を利用して最終手段に打って出るが…。

清から呼び戻された第2王子にヒョンビン。国家の転覆を狙う重臣にチャン・ドンゴン。そこに夜鬼(ゾンビ)が絡んでくる。朝鮮はこのまま夜鬼に滅ぼされるのか。即位に興味のなかった王子が国のあるべき姿に気づいていく。それとともにヒョンビンが次第に精悍な顔立ちになっていくのが見ていてうれしい。チャン・ドンゴンは凄みのあるアクションに惹きつけられた。(堀)

2018年/韓国/カラー/シネスコ/5.1ch/121分
配給:クロックワークス
(C) 2018 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & LEEYANG FILM & REAR WINDOW. All Rights Reserved.
公式サイト:http://klockworx-asia.com/rampant/
★2019年9月20日(金)シネマート新宿ほか全国ロードショー

posted by ほりきみき at 12:50| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

レディ・マエストロ(原題:De dirigen)

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監督・脚本:マリア・ペーテレス
音楽監督:ステフ・コリニョン
出演:クリスタン・デ・ブラーン、ベンジャミン・ウェインライト、スコット・ターナー・スコフィールド

世界中どこを探しても女性のプロの指揮者は一人もいない時代。音楽への情熱だけは誰にも負けないアントニアは、ナイトクラブでピアノを弾いて稼いだ学費で、音楽学校に通い始める。だが、ある“事件”から退学を余儀なくされ、引き留める恋人を置いて、アムステルダムからベルリンへと渡る。そこでアントニアは女性に指揮を教えてくれる師と巡り合う。しかし、憑かれたようにレッスンに没頭するアントニアに、出生の秘密、恋人の裏切り、女性指揮者への激しいバッシングなど、次々とアクシデントが襲い掛かる。

【登場する主な楽曲】
マーラー「交響曲第4番」
ドヴォルザーク「ロマンス」
バッハ「オルガン・コーラル」
ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第32番」
ビゼー「オペラ《カルメン》~ハバネラ」
ドビュッシー「夢」
ストラヴィンスキー「火の鳥」
ガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー」

女性指揮者アントニオ・ブリコの若き日を描く。1920年代後半、女性指揮者なんてありえないない時代。それでも指揮を学びたいと巨匠に直談判。
男性たちが「女は結婚して子どもを産んでこそ幸せ」としか考えていないことがガンガンに伝わってくる。それは「女性は底辺」と言い切る下衆な恩師だけでなく、著名な指揮者や愛する男性からも。いや、男性だけでない。愛する人の母親も恐らく同じ。そこに幸せを感じる人もいる。ただ、それが全てではないことを理解してほしいと主人公を通じて作品は訴える。
愛よりも音楽を選んだ代償は大きかったが得たものも大きい。「どうせ批判されるなら心の赴くままに」。大統領夫人の言葉は現代にも響くだろう。しかし、エンドロールに書かれた音楽界の現状にまだまだ男性上位の世界であることを強く感じた。(堀)


2019年/オランダ/英語・オランダ語/カラー/シネスコ/5.1ch/139分
配給:アルバトロス・フィルム
(C) Shooting Star Filmcompany 2018
公式サイト:http://ladymaestro.com/
★2019年9月20日(金)からBunkamura ル・シネマほか全国で公開

posted by ほりきみき at 12:40| Comment(0) | オランダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アイネクライネナハトムジーク

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監督:今泉力哉
原作:伊坂幸太郎「アイネクライネナハトムジーク」(幻冬舎文庫)
主題歌:⻫藤和義「⼩さな夜」
出演:三浦春馬、多部未華⼦、⽮本悠⾺、森絵梨佳、恒松祐⾥、萩原利久、成田瑛基、⼋⽊優希、こだまたいち、MEGUMI、柳憂怜、濱⽥マリ、藤原季節、中川翼、祷キララ、伊達みきお、 富澤たけし、貫地⾕しほり、原田泰造

仙台駅前。大型ビジョンを望むペデストリアンデッキでは、日本人初の世界ヘビー級王座を賭けたタイトルマッチに人々が沸いていた。そんな中、訳あって街頭アンケートに立つ会社員・佐藤(三浦春馬)の耳に、ふとギターの弾き語りが響く。歌に聴き入るリクルートスーツ姿の本間紗季(多部未華子)と目が合い、思いきって声をかけると、快くアンケートに応えてくれた。紗季の手には手書きで「シャンプー」の文字。思わず「シャンプー」と声に出す佐藤に紗季は微笑む。
元々劇的な〈出会い〉を待つだけだった佐藤に、大学時代からの友人・織田一真(矢本悠馬)は上から目線で〈出会い〉の極意を説く。彼は同級生の由美(森絵梨佳)と結婚し、2人の子供たちと幸せな家庭を築いている。変わり者ながらも分不相応な美人妻と出会えた一真には不思議な説得力がある。佐藤は職場の上司・藤間(原田泰造)にも〈出会い〉について相談してみるが、藤間は愛する妻と娘に出て行かれたばかりで、途方にくれていた。一方、佐藤と同じく〈出会い〉のない毎日を送っていた由美の友人・美奈子(貫地谷しほり)は、美容室の常連客・香澄(MEGUMI)から紹介された、声しか知らない男に恋心を抱き始めていた。
10年後―。織田家の長女・美緒(恒松祐里)は高校生になり、同級生の和人(萩原利久)や亜美子(八木優希)と共にいつもの毎日を送っている。そして佐藤は、付き合い始めて10年になる紗季に、意を決してプロポーズをするが…。 果たして佐藤と紗季の〈出会い〉は幸せな結末にたどり着けるのか。美奈子の恋は、藤間の人生は―。思いがけない絆で佐藤とつながっていく人々が、愛と勇気と幸福感に満ちた奇跡を呼び起こす。

出会いを待つサラリーマン、きっかけを与えられた美容師。2つの恋を中心に、一歩を踏み出せない人たちにエールを送る。
原作は伊坂幸太郎の同名小説。シンガーソングライター斉藤和義のファンを公言している伊坂が斉藤に作詞を頼まれたが「詞は書けないけど、小説なら」と書いた短編が連作短編集となったもの。
一人一人のできることは小さいかもしれない。しかし、それが誰かに勇気を与え、幸せに導くこともある。どんなことでもいい。行動を起こせば何かが変わるはず。(堀)


2019年/日本/カラー/119分
配給:ギャガ
©2019「アイネクライネナハトムジーク」製作委員会
公式サイト:https://gaga.ne.jp/EinekleineNachtmusik/
★2019年9月20日(金)ロードショー

posted by ほりきみき at 12:24| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ(原題:EIGHTH GRADE) 

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監督・脚本:ボー・バーナム
音楽:アンナ・メレディス
出演:エルシー・フィッシャー、ジョシュ・ハミルトン、エミリー・ロビンソンほか

中学校生活の最後の一週間を迎えたケイラは、「学年で最も無口な子」に選ばれてしまう。不器用な自分を変えようと、SNSを駆使してクラスメイト達と繋がろうとする彼女だったが、いくつもの壁が立ちはだかる。人気者のケネディは冷たいし、好きな男の子にもどうやってアプローチして良いか分からない。お節介ばかりしてくるパパはウザイし、待ち受ける高校生活も不安でいっぱいだ。中学卒業を前に、憧れの男子や、クラスで人気者の女子たちに近づこうと頑張るが…。

内気で人付き合いの苦手な女子中学生が高校入学を前に殻を破ろうと奮闘する。背伸びしすぎて危ないこともあり、見ていてハラハラ。いろいろ経験した後での、身の丈のあった彼との自宅デートは微笑ましい。目に見えないけれど、確実に成長しているのを感じた。
娘がパーティーに誘われたものの参加を渋ると奮い立たせて参加させ、先輩に誘われて遊びに出掛ければ心配のあまり隠れてついて行き、後ろからそっと見守る。心配症なシングルファーザーの父親の行動は他人事ではない。
それにしても子供達がみんなスマホ漬け。いいのか、これで。せめて夕飯時はぜったいにスマホ禁止にすべきと思わずにはいられなかった。(堀)


2018年/アメリカ/英語/カラー/ 5.1ch / 93分
配給:トランスフォーマー 
© 2018 A24 DISTRIBUTION, LLC
公式サイト:http://www.transformer.co.jp/m/eighthgrade/
★2019年9月20日(金)ロードショー
posted by ほりきみき at 12:14| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする