劇場公開日 2019年9月6日
監督:エリザベス・チャイ・バサルヘリィ ジミー・チン
製作:エリザベス・チャイ・バサルヘリィ ジミー・チン エバン・ヘイズ シャノン・ディル
製作総指揮:ウォルター・パークス ローリー・マクドナルド ティム・ポス トレ マット・レナー
撮影:ジミー・チン クレア・ポプキン マイキー・シェイファー
編集:ボブ・アイゼンハルト
音楽:マルコ・ベルトラミ
音楽監修:トレイシー・マクナイト
主題歌:ティム・マッグロウ
出演
アレックス・オノルド
トミー・コールドウェル
ジミー・チン
サンニ・マッカンドレス
人類史上最大の挑戦と呼ばれる前人未踏のクライミング、
その驚異の全貌に世界中が息をのんだ傑作ドキュメンタリー!
身体を支えるロープや安全装置を一切使わずに山や絶壁を登るという、最もシンプルで、最も危険な究極のクライミング・スタイル“フリーソロ”。そのスタイルで岸壁を登ることで知られるスーパーロッククライマー、アレックス・オノルド。彼には壮大な夢があった。それはカリフォルニア州中央部のヨセミテ国立公園にそびえ立つ断崖絶壁エル・キャピタンにフリーソロで登ること。この世界屈指の危険な断崖絶壁は世界のロッククライマーたちの憧れの岸壁だが、まだフリーソロで登りきった者がいないフリーライダーと呼ばれる約975メートルのルートを登りたいと思っていた。
この作品は、彼がその前人未到の壁に挑戦する、緊迫感迫るクライミングに密着したドキュメンタリーである。ほぼ垂直に近いような岩壁をロープなしで登るということは、一歩間違えれば墜落死を免れない。何度も何度も試登を繰り返し、失敗も経験。いろいろなところに出かけては登攀訓練を重ねる。
このルートを攻略するには「正確な地図」が必要と考え、憧れの存在であるベテランのプロクライマー、トミー・コールドウェルとともに、現地でのトレーニングを開始した。危険ヶ所のイメージをつかむため、ロープを使って登攀を試みたが、途中で足を痛めてしまった。それでも諦めず訓練を続ける。入念に準備を重ねたアレックスは、2017年6月3日、ついにエル・キャピタンへの挑戦を開始。そして、アレックス・オノルドはついに登頂に成功した。
アレックスの登攀を臨場感あふれる映像に収めたのは、自身も高い登攀技術を持ち、ヒマラヤ山脈メルー中央峰にそびえる岩壁“シャークスフィン”攻略にも参加したジミー・チンと仲間たち。撮影者も高い登攀技術がなければ、こんな映像は撮れなかった。共同監督はジミーのパートナーであるエリザベス・チャイ・バサルヘリィ。『フリーソロ』は、第91回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞したが、エリザベス・チャイ・バサルヘリィ&ジミー・チンの前作『MERU/メルー』(2015)も高い評価を得ている。
『MERU メルー』HP
アレックスの葛藤だけでなく、映像チームの葛藤も描かれる。撮影チームがいるために、彼の集中力がそがれるのではないかという会話も出てくる。彼の登攀の邪魔にならないようなアングルを考えたりという工夫も描かれる。こんなすごい登攀を描こうと思ったら、上下から狙うだけでなく、いろいろなアングルからの撮影が必要だが、「登攀の邪魔にならないように」というのが鉄則。
このナショナル ジオグラフィック ドキュメンタリー フィルムズ製作による映画『フリーソロ』は世界各国で大反響を巻き起こし、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどでドキュメンタリーとしては異例の爆発的ヒットを記録したそう。
生と死が隣り合わせの登攀現場、人間離れしたアクロバチックな登攀光景の連続で、観るものは、手に汗握る。アクシデントが起こるのではないかとヒヤヒヤしながら観ていた。
そして、ヨセミテの素晴らしい絶景。これを観たらぜひ行ってみたいと思わずにはいられない。写真をやっているものなら、アンセル・アダムスのヨセミテのハーフドームの写真に魅了された人が多いと思うけど、ロッククライマーはそのそばにある、このエル・キャピタンに憧れをいだいていると知った。
トミー・コールドウェル、アレックス・オノルドのペアは、その後、2018年6月6日、に、エル・キャピタンのThe Noseを1時間58分7秒で登り、2時間切りを達成したそう。この記録はまだ敗れられていないらしい。
ちなみにジミー・チンはエベレストからスキー滑降した唯一のアメリカ人らしい。こういう人が、写真や映像の技術を身に着けたから、これまでより、すごい山岳映画がどんどん出てきているのかも(暁)。
フリーソロとは命綱など一切使わず、丸腰で岸壁を登るスタイル。ほんの少しの窪みに指先やつま先で体を預け、それをカメラが捉える。世界屈指の危険な断崖絶壁に挑む男性だけでなく、カメラに収めるスタッフも危険と隣り合わせ。ピリピリとした空気の中、緊張感が走る。本人の緻密な準備とクライマーの精神的負担にならないようにというスタッフの配慮。成功に向かってすべてを1つに。臨場感たっぷりで息遣いまで伝わってくる。自然の美しさも違って見えた。(堀)
2018年製作/100分/G/アメリカ
配給:アルバトロス・フィルム
『フリーソロ』公式HP
●シネマジャーナルでは、本誌83号と91号で山に関する映画特集をしています。
興味がある方がいましたら、ぜひ購買ください。また、HPでも山の映画に関する記事がいくつかありますので、良かったらアクセスしてみてください。
【シネマジャーナル本誌】
☆シネマジャーナル83号 2011 秋冬
*女たちの映画評
山好きから観た山岳映画
『劔岳 点の記』『岳 ―ガク―』『アイガー北壁』『127時間』『ヒマラヤ 運命の山』
☆シネマジャーナル No. 91 2014 夏
*今年、続々公開される山岳映画 古典~最新作まで
・『K2 初登頂の真実』 『春を背負って』 『クライマー パタゴニアの彼方へ』 『アンナプルナ南壁 7400mの男たち』 『ビヨンド・ザ・エッジ 歴史を変えたエベレスト初登頂』
1920年代に製作されたレニ・リーフェンシュタールの出演作『死の銀嶺』『モンブランの嵐』
・女性世界初エベレスト登頂者田部井淳子さんとヒラリー卿の子息ピーター・ヒラリーさんのトークショー
【シネマジャーナルHP】特別記事
☆『ビヨンド・ザ・エッジ 歴史を変えたエベレスト初登頂』公開記念
女性世界初エベレスト登頂者 田部井淳子 &エドモンド・ヒラリーの子息ピーター・ヒラリー トークショー
2014年5月16日
http://www.cinemajournal.net/special/2014/bte/
☆『クライマー パタゴニアの彼方へ』デビッド・ラマ インタビュー
2014年8月28日
http://www.cinemajournal.net/special/2014/climber/index.html
☆『エヴェレスト 神々の山嶺』完成報告会見
2015年12月14日
http://www.cinemajournal.net/special/2016/everest/index.html
☆『ヒマラヤ~地上8,000メートルの絆~』
対談≪韓国の伝説的登山家オム・ホンギル × 野口健
2016年6月14日
http://www.cinemajournal.net/special/2016/himalaya/index.html
☆『クレイジー・フォー・マウンテン』ジェニファー・ピードン監督インタビュー
2018年07月20日
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/460612615.html
2019年09月01日
影に抱かれて眠れ
監督:和泉聖治
脚本:小澤和義
プロデューサー:中野英雄
出演:加藤雅也
中村ゆり、松本利夫、カトウシンスケ、熊切あさ美、若旦那
余貴美子、火野正平/AK-69
原作:北方謙三「抱影」(講談社文庫刊)
主題歌:クレイジーケンバンド「場末の天使」
(ダブルジョイ インターナショナル / ユニバーサル シグマ)
横浜、野毛。抽象画家・硲(はざま)冬樹は、夜になると自身が営む2軒の酒場を巡るのが日課だ。独身を貫く冬樹は、絵を描き、酒を呑む、気ままな暮らし。そんなある日、冬樹を父のように慕う岩井信治が傷を負って冬樹のもとに転がり込んでくる。信治は、NPOの慈善団体「碧(みどり)の会」の一員として、横浜の街の闇に飲み込まれた未青年の少女を救い出そうとしていた。手を貸した冬樹もまた抗争に巻き込まれていく。
一方、冬樹が10年以上純愛を貫く人妻・永井響子から余命宣告を受けたと聞かされる。冬樹は響子への愛を絵にしたいと思い立つ・・・
高校生の時、ピアノの先生のお宅が野毛山にあって、行くときは明るいからいいけれど、帰りは日が暮れて、まさに夜の町の野毛はちょっと怖かった。実に、夜が似合う町。そんな町を舞台に描かれる男気たっぷりの物語。加藤雅也演じる硲冬樹の後姿に哀愁が漂う。『二階堂家物語』の後継ぎ問題を憂う父親役も新鮮だったけど、加藤雅也には、こういう渋い役がよく似合う。(咲)
北方謙三のハードボイルド小説の映画化。主人公には飲食店経営収入があり、趣味の延長で絵を描く。個展を勧められても、なかなかその気にならない。慕ってくれる若者や適度な距離感(と自分は思っている)セフレ女性がいる。純愛する女性は人妻で、求められればすべてを投げうってでも全面的に支える。男の夢とロマンが詰まっているというのはこういうことなのだろう。ラストは何もいうまい。(堀)
呑み屋を経営し、経済的にもアート業界的にも余裕のある画家・・・ 私の周りは必死に制作活動しているアーティスト達ばかりなので、まず「そんな画家が存在するんですか」と原作を読みたくなって図書館へ駆け込んだ私です(貸し出し中でした・・・) 舞台はヨコハマ野毛。クレイジーケンバンドの音楽がしっくりきます(ステキ!!) 恋愛と友情と芸術に生きる、ひとりの男の物語。 (千)
初日舞台挨拶が、9月7日(土)丸の内TOEI2で行われました。
冒頭のキャッチボールのシーン。松本利夫さんが、「僕、やったことがなかったんです」と言えば、加藤雅也さんもカトウシスケさんも「僕も」と。経験のない3人のキャッチボールだったのでした。
「現場で皆さんの会話聞いていると、小学生みたいですごい可愛いかった」と中村ゆりさん。ハードボイルドな映画の撮影現場は、実はとても楽しそうした。
原作の北方謙三氏も登壇。「普通、原作者はこういうところに出ないものですけど、私、映画に出演してるんです」 特に台詞はなくて、熊切あさ美さんと雑談していたら、それいいねと映画に入れられたのだとか。「観てみたら、ただのエロじじい」と笑わせてくださいました。
2019年/日本/108分/PG12
製作 BUGSY、ドリームエンタテインメント
配給 BS-TBS 配給協力:トリプルアップ
(c)BUGSY
公式サイト:http://kagedaka.jp/
★2019年9月6日(金)、丸の内TOEI2・横浜ブルク13他全国順次公開