2019年08月21日

トールキン 旅のはじまり 原題:TOLKIEN

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監督:ドメ・カルコスキ『トム・オブ・フィンランド』
キャスト:ニコラス・ホルト、リリー・コリンズ、デレク・ジャコビ、トム・グリン=カーニー

3歳の時に父を亡くしたトールキンは、イギリスの田園で母と弟と暮らしていたが、母の急死で12歳にして無一文の孤児になってしまう。その身を案じた母の友人のモーガン神父が後見人となり、名門キング・エドワード校に入学したトールキンは、そこで初めて心を許せる3人の野心溢れる少年たちと出会い、「芸術で世界を変えよう」と誓い合う。やがて、16歳になったトールキンは、生涯を共にしたいと願う女性、エディスと出会うが、神父に交際を厳しく禁じられる。さらに、世界大戦の勃発が大切な仲間との絆さえも奪っていくのだった─。

英国エドワード朝時代を舞台にした映画やドラマは何故こうも魅力的なのだろう!第一次世界大戦開戦前の僅かな光明、モノトーンの冬に備えた紅葉の色鮮やかさ…。大人になる哀しみ、苦さを思い知る以前の活気に満ちた青春期のような時代だからか。
当時の面影を残すロケ地は少なく、主な撮影はリバプールやマンチェスターで行われたという。そしてオックスフォード大学はもちろん本場で!やはり建築物の質感、空気感が齎らす高揚感は本作を格別なものに仕立てている。

『ロード・オブ・ザ・リング』の原作「指輪物語」を著したトールキンの伝記映画、と一言で片付けるには惜しい輝きを放つ本作。特にスクリーンが活き活きと躍動するのは少年時代だ。トールキンが入学した名門パブリック・スクールで出会う3人の友だちとの固い絆。これが「指輪物語」第1巻である"旅の仲間"に直結する。
生涯の友情を育んだ”仲間”たち。恩師との交友、清らかな初恋物語、欠かせない宗教的価値観、貧しい生い立ちによる苦学の道。トールキンが向き合うもの全てが、「指輪物語」のキャラクターに繋がって行くのだ。

「ワーグナーの楽劇?指輪の話だけで6時間なんて退屈さ!」というパブリック・スクール時代の友だちとの会話が、「指輪物語」の源泉となった点が興味深い。思春期の瑞々しく萌えるような逸話の合間に戦争の悲惨さ、葛藤、死を前にした地獄絵を挟み込む構成も巧みである。
紡がれた物語の全てが愛おしく感じてしまう112分。『ロード・オブ・ザ・リング』や『ホビット』を観たことのない人、「指輪物語」を読んでいなくても楽しめる佳作である。(幸)

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全米公開:5月10日(英公開5月3日)
配給:20世紀フォックス映画
(C)2019Twentieth Century Fox
2019年製作/112分/PG12/アメリカ
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/tolkienmovie/
8月30日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
posted by yukie at 19:56| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする