2019年07月25日

風をつかまえた少年 原題:The Boy Who Harnessed the Wind

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監督・脚本・出演:キウェテル・イジョフォー
出演:マックスウェル・シンバ、アイサ・マイガ
原作:「風をつかまえた少年」ウィリアム・カムクワンバ、ブライアン・ミーラー著(文藝春秋刊)

14歳のウィリアムは、2001年にアフリカのマラウイを襲った干ばつのために学費を払えず、学校に行けなくなってしまう。彼は図書館で見つけたある本から、独学で発電のできる風車を作り畑に水を引くことを思いつくが、雨乞いの祈祷をする村でウィリアムを理解する者はいなかった。だが、家族を助けたいという彼の思いが、徐々に周囲を動かしていく。

浅薄ながら、小国とはいえアフリカのマウアイ国についての知識は殆どなかった。電気を使えるのは総人口の僅か2%!21世紀になってもそのような生活を送る人々がいたことを本作で初めて知った。正に映画は「世界を開く窓」である。

主人公の父親として出演し、脚本、監督も手がけた英国の名優キウェテル・イジョフォーは監督デビュー作とは思えない洗練と成熟を見せている。長雨や日照りが続いても、族長と祈りを捧げ、超自然的な力にすがるしかない村人。生活に追われる大人たちは子どもに教育よりも働くことを優先するのが当然という風潮だ。
イジョフォー監督は最貧困国の厳しい現状を家族の動向、学費が払えない程の生計といった日常を丹念に描出することにより、映画の主訴を明らかにして行く。

終盤、樹々のさやぎや雲の流れから”風”を表現する映像の喚起力の素晴らしさに涙した。撮影監督はマイク・リー作品で知られるディック・ポープだと知り、納得。イジョフォー監督はスタッフ、出演者選びにも抜かりない眼力を示している。こういった地味な低予算の良作こそヒットしてほしいと願う。(幸)


ウィリアム・カムクワンバ氏が自身の体験を綴った原作に基づく映画。
飢饉から村を救おうと風力発電を考え出したのが、14歳の時だったということに何より驚いた。しかも、学費が払えなくて学校に通えなくなり、図書館で本を読み漁って考え出したのだ。
公開を前に来日されたウィリアム・カムクワンバ氏の姿をテレビで拝見した。現在、31歳。日本の中学生と交流。まさしく風力発電を考え出した時の年頃の中学生たち。自身の物語が映画化され、遠く日本でも上映されることに、感慨深げな表情だった。
日本の中学生たちも、彼から多大な影響を受けたことと思う。

商社に勤務していた時、その大半の24年間、経済協力部門で世界各国への政府開発援助(ODA)を利用した案件に携わってきた。サハラ以南のアフリカ諸国では、特に地下水開発や灌漑施設といった生活や農業に裨益する案件が目立った。一般市民の自立を促すのがODAの理念だが、国の末端まで行き渡るような援助は、果たしてできているのだろうか。権力を持つ者が結局潤っているのではないかと、つい危惧してしまう。願わくば、ウィリアム氏に続く人材が活躍できる社会になってほしい。(咲)


2018年/イギリス、マラウイ/英語、チェワ語/113分/シネマスコープ/カラー/5.1ch
© 2018 BOY WHO LTD / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE / PARTICIPANT MEDIA, LLC© 2018 BOY WHO LTD / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE / PARTICIPANT MEDIA, LLC
提供:アスミック・エース、ロングライド 配給:ロングライド
公式サイト:https://longride.jp/kaze/
2019年8月2日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。



posted by yukie at 10:53| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年07月20日

隣の影(原題:Under the Tree) 

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監督・脚本:ハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン
撮影:モニカ・レンチェフスカ 
編集:クリスティアン・ロズムフィヨルド
音楽:ダニエル・ビヤルナソン 
出演:ステインソウル・フロアル・ステインソウルソン、エッダ・ビヨルグウ゛ィンズドッテル、シグルヅール・シーグルヨンソン、ラウル・ヨハナ・ヨンズドッテル

郊外の住宅地に居を構えるインガ(エッダ・ビヨルグヴィンズドッテル)とバルドウィン(シグルズール・シーグルヨンソン)夫婦に隣人のエイビョルグ(セルマ・ビヨルンズドッテル)とコンラウズ(ソウルステイン・バックマン)夫婦がクレームをつけてきた。インガたちの家の庭に生えている木が大きくなり過ぎ、エイビョルグたちの庭に影を落としているという。バルドウィンは、庭師を呼んで木の手入れをしようとしたが、妻インガは「あの木には触らせない」と反対。日光浴やサイクリングで自分磨きに余念がないエイビョルグに犬のフンを投げつける。翌日、バルドウィンが外出しようとすると、車の4つのタイヤすべてが何者かによってパンクさせられていた。インガは隣人夫婦の仕業だと言い放つ。こうして両家の対立はじわじわと深刻化していった。やがて、情緒不安定になったインガは隣人への怒りを募らせ、ある信じがたい行動に出る。それは新たな憎悪を呼び、取り返しのつかない災いを招き寄せた。

隣家とのトラブルは些細なことも不信感に繋がり、しこりになりやすい。庭木が落とす影をキッカケに2組の夫婦でいがみ合いがエスカレート。常軌を逸していく。ブラックなホームドラマを不気味な劇伴が煽り、驚愕のラストへ。背筋が凍りそうな物語だが日本で起こりうるのでは。(堀)

2017年/アイスランド・デンマーク・ポーランド・ドイツ/氷語/カラー/89分/DCP
配給:ブロードウェイ
2017🄫Netop Films. Profile Pictures. Madants
公式サイト:https://rinjin-movie.net-broadway.com
★2019年7月27日(土)よりユーロスペースほか全国順次ロードショー
posted by ほりきみき at 12:41| Comment(0) | ポーランド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アルキメデスの大戦 

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監督 脚本 VFX:山崎貴  
原作:三田紀房「アルキメデスの大戦」(講談社「ヤングマガジン」連載)
出演:菅田将暉、柄本佑、浜辺美波、笑福亭鶴瓶、國村隼、橋爪功、田中泯、舘ひろし

1933年(昭和8年)。欧米列強との対立を深め、軍拡路線を歩み始めた日本。海軍省は、世界最大の戦艦を建造する計画を秘密裏に進めていた。しかし、「今後の海戦は航空機が主流で空母を作るべき」という自論を持つ海軍少将・山本五十六(舘ひろし)は、巨大戦艦の建造費用を算出し、いかに国家予算の無駄遣いかを明らかにしようと考えた。しかし戦艦に関する一切の情報は、建造推進派の者たちが秘匿していた。そこで山本は100年に一人の天才と言われる元帝国大学の数学者・櫂直(菅田将暉)に目を付けた。ところが櫂は数学を偏愛し、大の軍隊嫌い。頑なに協力を拒む櫂に、山本は「巨大戦艦を建造すれば、その力を過信した日本は、必ず戦争を始める」と衝撃の一言を叩きつける。この言葉に意を決した櫂は、同調圧力と妨害工作のなか、巨大戦艦の秘密に迫っていく。山本から櫂の付き人を命じられた田中(柄本佑)も最初は軍の規律や慣例に従わない櫂に嫌悪感を持つが、やがて櫂の能力と理念に敬意を示すようになる。

巨大で優美な戦艦を作ることが戦争を推し進めると考えた数学者が安く見積もられた建造費を根拠に計画を阻止しようと奔走する。
軍規とプライドが数学者を阻む。しかし天才的能力とひらめきで思いもよらぬ方法から計算を進めていく。数学者は建造計画を覆せるのか。ハラハラの連続。神懸かりな行動を取る人物を演じさせたら右に出るものはいない菅田将暉がぐいぐいと観客の意識を引き寄せる。
その一方、最初から心の奥に疼く疑問。大和は作られたはず。数学者は勝てないのか?
巨大戦艦の建造計画の裏に秘められた担当者の思いが明らかになったとき、その疑問が驚きと納得に変わる。立場は違えど日本を思う気持ちは同じだったのだ。
数学者は架空の人物だが、作品には実在の人物も多く登場。様々な思惑が入り乱れ、立場が同じだからといって思いが同じとは限らない。その逆も然り。戦争を繰り返してはいけないという制作者たちの思いが凝縮されたラストにこの作品を多くの人に勧めたいと思う。(堀)


2019年/日本/カラー/130分
配給:東宝
(C)2019「アルキメデスの大戦」製作委員会
(C)三田紀房/講談社
公式サイト:http://archimedes-movie.jp/
★2019年7月26日(金)全国東宝系にてロードショー

posted by ほりきみき at 12:39| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ヒョンジェ〜釜山港の兄弟〜(原題:Brothers in heaven) 

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監督:パク・ヒジュン
出演:ソンフン、チョ・ハンソン、ユン・ソイ、パク・チョルミン、コン・ジョンファン、ソン・ビョンホ、イ・イクジュン、シン・セフィ、

二卵性双子として生まれたテジュ(兄)とテソン(弟)は幼くして両親を亡くし、施設で育つ。テジュは優等生、テソンは不良として青少年期を過ごす中、園長の娘、チャンミに心を寄せていた。
20年後、兄のテジュ(チョ・ハンソン)はソウルの江南警察署の警官になり、弟のテソン(ソンフン)は釜山最大の密輸組織「マリカーン」の後継者として、それぞれの人生を歩んでいた。釜山で起きた遺物密輸の事件を捜査していたテジュは釜山に戻り、マリカーンの後継者である弟のテソンとチャンミ(ユン・ソイ)と再会する。組織の後継者の座と施設の移転問題で、テソンは組織と衝突することになり、この隙にテソンのライバルであるサンドゥがマリカーンを乗っ取ろうとする。サンドゥは邪魔であるテソンとテジュを消そうと画策し、チャンミを人質に取る。そして3人の前でサンドゥは、テソンが秘密にしていたチャンミの不幸な事件の真相を暴露するのだった。

端正な顔立ちと抜群のスタイル。ソンフンをこの作品で初めて知ったのだが、あまりの美しさに驚いた。特に立ち姿のお尻が完璧すぎて、目が吸い寄せられる。これまでは「じれったいロマンス」「高潔な君」などのドラマに出演し、韓国ではツンデレ王子として人気を博しているという。そんなソンフンが役者としての新境地を切り開く。大切な人と恩義のある人の間で苦悩する。良かれと思った行動が相手に伝わらない。ファンにとっては切なさマックスだろう。そしてハードなアクションも披露。ソンフンにとって、俳優としての分岐点となる作品である。(堀)

冒頭、チョウ・ユンファの物真似をする少年が出てきて、おっ~と思っていたら、成長した兄弟が、兄は警官、弟はマフィアと、これってまさに香港映画『男たちの挽歌』(1986)のティ・ロンとレスリー・チャンの関係! 黒社会にいるのが兄、レスリー演じる弟が警官ですが。
もっとも物語はまったく『男たちの挽歌』とは別物だが、韓国ではリメイクも作られている位、伝説の映画なのだなぁ~と思わせられた次第。
原題『釜山港に帰れ』は、日本人にもお馴染みのチョ・ヨンピルのヒット曲。生き別れた兄弟の、なんとも切ない運命。(咲)



2017年/韓国/カラー/114分
配給:ブロードウェイ
©️2018 CION Pictures All rights reserved  
公式サイト:https://hyonje.net-broadway.com/
★2019年7月26日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋他全国順次ロードショー
posted by ほりきみき at 12:37| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

よこがお 

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監督・脚本:深田晃司 
撮影:根岸憲一
音楽:小野川浩幸
出演:筒井真理子、市川実日子、池松壮亮、須藤蓮、小川未祐、吹越満

リサ(筒井真理子)と名乗るその女は、和道(池松壮亮)の前に突然現れた。美容師と客として、リサと接していた和道だったが、やがて彼女の不思議な魅力に惹かれていく。リサの本当の名前は市子。かつては優秀な訪問看護師だった。基子(市川実日子)という訪問先の娘で、市子に憧れ以上の感情を頂く者もいた。ところがある日、基子の妹サキ(小川未祐)が失踪する。事件への関与を疑われた市子は、ねじまげられた真実により、築き上げた幸せのすべてを失う。市子は、“リサ”となって、ある危険な復讐を計画していた。

深田晃司監督が筒井真理子の横顔の美しさにインスパイアされて作られた作品。やりがいのある仕事、結婚を控えた恋人を一瞬にして失ったとき、女は何を考えるのか。現在と過去、現実と妄想をカットバックで見せ、狂気を炙り出す。果たして女は望みを遂げたのか。ラストの緊迫感がざらざらと心に残る。(堀)

2019年/日本=フランス/5.1ch/ヨーロピアンビスタ/カラー/111分
配給:KADOKAWA
(C) 2019 YOKOGAO FILM PARTNERS & COMME DES CINEMAS
公式サイト:http://yokogao-movie.jp 
★2019年7月26日(金)より角川シネマ有楽町、テアトル新宿他全国公開
posted by ほりきみき at 12:35| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする