2019年07月28日
藍色少年少女
監督・ 脚本:倉田健次
撮影:菅野宏彰
音楽:加藤久貴
挿入歌:(作詞・作曲)遠藤芳晴、遠藤幸恵
制作:溝本行彦
出演:遠藤史人、三宅花乃、広澤草、結城貴史、野田幸子、前川正行
かつては子供だった
すべての少年少女に捧げるー
青い鳥を追い求める心の旅の物語
里山で元気に走り回っている少年テツオ。今年も福島から「保養」のために子どもたちがやってきた。向こうでは普段外で遊べないんだそうだ。ここなら遊ぶところはいっぱいある。そうそう、遊んでばかりはいられない。今年は「青い鳥」の劇をすることになったんだ。青い鳥ってどこにいるんだ? いろんな大人に聞いてみるけれど、答えが違う。
相模原市の自然豊かな藤野。芸術家も集まるこの地では、東日本大震災の2年後から夏休みに福島の子どもたちを受け入れています。「保養」のため招かれた子どもたちと、地元の子どもたちの交流がこんな形で行われているのを初めて知りました。ちょっとスナフキンを思わせる帽子の男性や、訳ありそうなガラス作家の女性も子どもたちに関わります。「青い鳥」の物語は、最後に探し求めていた青い鳥が自分の身近にいたと結ばれますが、さてこの作品は?
テツオくんとシチカちゃんが子役としてでなく、そこで生きていました。白黒作品であるせいか、現代でなく自分の子どもの頃もおもいだすような、なつかしさのある作品です。(白)
2016年/日本/モノクロ/130分
配給:アルミード
(C)藍色少年少女製作委員会
http://fujino-kidstheater.net/aiiro/
★2019年7月26日(金)より夏休みロードショー2018年/日本/カラー/シネスコ/110分
2019年07月27日
北の果ての小さな村で(原題:Une annee polaire)
監督・脚本・撮影:サミュエル・コラルデ
脚本:カトリーヌ・パイエ
音楽:エルワン・シャンドン
出演:アンダース・ヴィーデゴー、アサー・ボアセン、ガーティとトマシーネ、ジュリアス
グリーンランド東部に人口80人の小さな村チニツキラークがある。村の小学校にデンマークから28歳の青年教師アンダースが赴任してきた。アンダースは7代も続いた農家の一人息子だった。親の希望は後を継ぐことと知ってはいたが、ほかの仕事を経験したくてわざわざ不便なこの村での生活を選んだのだ。
しかし、やんちゃな子どもたちは新米教師の言うことを聞いてくれない。自然は想像以上に厳しく、自分の予想が甘かったことを早々に思い知る。土地の言葉を学ばずにやってきたアンダースは、村でもなかなか受け入れてもらえない。ある日、連絡なしに学校を休んだアサーの家を訪問したアンダースは、苦言を呈するつもりだったが、逆に狩猟で暮らす少年の祖父母からさまざまなことを教わることとなる。
アンダースが教師の希望を出したとき、役所の担当者に「デンマーク語を教えるのだから土地の言葉は覚えなくてよい」と言われます。外国語の授業でその国の言葉を使わない、というのは聞きますが、暮らしていく上で土地の言葉を身につけるのは必須でしょう?かつてはデンマークの植民地だったこと(1979年より自治政府)が影響しているのか、なんだか見下しているように見えます。
家業を素直に継げないアンダース、両親は後継者がとぎれるのが不安、どちらの気持ちもわかります。これは世界中普遍の悩みですね。
この大きな身体の優しそうなアンダースと村の人々は俳優ではなく、全て本人。ドキュメンタリーは今そこにあるものを映していますが、これは本人たちに少し前の自分たちを再現してもらっているようです。サミュエル・コラルデ監督はいつもこの手法を使うそうで、どんな風に演出しているか覗いてみたくなります。
普段見る地図は上下が広がっているメルカトル図法ですが、地球は丸くて極地からアラスカはすぐ近く。住民の顔立ちはヨーロッパとは違って親近感があります。北極圏のグリーンランドは日本の5倍の面積ですが、ほとんどが凍土で中央部には人が住めません。島の周囲に5万7千人(!)ほどが住んでいるそうです。厳寒期でないとき一度行ってみたいものです。(白)
「郷に入っては郷に従え」ということわざがあります。これはまさにそのことを伝える作品でした。
最初、自分の価値観を押し付けようとしたアンダースでしたが、ここの自然と、人々の知恵、暮らしぶりに触れ、溶け込もうとする姿がとても良かった。彼らと生活していく中で、ここの文化、歴史、言葉、狩りの方法などを知っていく。厳しくも美しい自然の中で、イヌイットたちは分け合って生活するという知恵を身に着けて生きてきた。
アンダースは故国デンマークから逃げるようにこの地にやってきて、自分の価値観が打ち砕かれたけど、かわりにこのグリーンランドの地で、新しい価値観と出会い、その中で生きていく道を選んだ。きっとデンマークに帰ってからも、ここで培ったことが生きていく糧になっていくのでしょう(暁)。
2018年/フランス/カラー/シネスコ/94分
配給:ザジフィルムズ
(C)2018 Geko Films and France 3 Cinema
http://www.zaziefilms.com/kitanomura/
★2019年7月27日(土)ロードショー
ブレス あの波の向こうへ(原題:Breath)
監督:サイモン・ベイカー
脚本:ジェラルド・リー、サイモン・ベイカー、ティム・ウィントン
原作:ティム・ウィントン
出演:サイモン・ベイカー(サンドー)、エリザベス・デビッキ(イーヴァ)、サムソン・コールター(パイクレット)、ベン・スペンス(ルーニー)、リチャード・ロクスバーグ(パイク氏)、レイチェル・ブレイク(パイク夫人)
70年代のオーストラリアの海辺の町。内気な少年のパイクレットと好奇心でいっぱいのルーニーは正反対の性格ながら、毎日一緒に楽しく過ごしていた。ある日サーファーのサンド―と知り合い、二人はサーフィンを教わることになった。サンド―の家に通うようになって、彼が有名なサーファーだったことを知る。これまでと違って二人には「あの波に乗りたい」というはっきりした目標ができた。自分のボードを手に入れるために働き、技術を覚え、と、二人の毎日は充実していく。
俳優のサイモン・ベイカーが、オーストラリアで権威ある文学賞を得たティム・ウィントンの原作をもとに初監督・脚本・出演もした青春映画。主演の少年たちが初々しいですが、それもそのはず。サーフィンを一から覚えるより、演技をするほうが楽、とサーファーの少年たちからパイクレットとルーニー役を選んだのだそうです。
人生を変えてしまうような大人との出会い、つるんで遊んでいれば楽しかった友人に感じ始めるライバル心。サーフィンだけでなく、日々変化し成長していく自分。青春に不可欠な要素が詰まっていて『スタンド・バイ・ミー』を思い出します。
エリザベス・デビッキがサンド―の妻イーヴァ役。こういう美しくて謎めいた大人の女性に会えるのは少年の夢かもね、と思ってしまいました。(白)
2017年/オーストラリア/カラー/ビスタ/115分
配給:アンプラグド
(C)2017 Screen Australia, Screenwest and Breath Productions Pty Ltd
http://breath-movie.com/
★2019年7月27日(土)新宿シネマカリテほか全国順次公開
2019年07月25日
あなたの名前を呼べたなら 原題:Sir
監督:ロヘナ・ゲラ
出演:ティロートマ・ショーム、ヴィヴェーク・ゴーンバル、ギーターンジャリ・クルカルニー
インドの大都市ムンバイで住み込みの家政婦をしているラトナ。
高原の村に里帰りしていたラトナは、突然雇い主に呼び戻される。仕える建設会社の御曹司アシュヴィンの結婚式が婚約者の浮気で直前にキャンセルになったのだ。
傷心の旦那様アシュヴィンに気遣いながら世話をする日々。広いマンションだが、それほど家事に時間もかからないので、午後のひと時、仕立ての勉強をしに行きたいと旦那様にお願いする。それをきっかけに、アシュヴィンはラトナの夢がデザイナーになることだと知る。さらに、結婚して4か月後の19歳のときに夫に先立たれ、「未亡人になったら人生終わり」というラトナに、「誰でも夢を持っていい」と励ます。実はアシュヴィン自身、アメリカでライターとして働いていて、作家になるのが夢だったが、兄が急逝し、家業を継がなければならなくなったのだ。アシュヴィンはラトナの夢が叶うようにと、何かと配慮して優しくする・・・
まだまだカーストや階級が社会規範になっているインドで、身分の違いを越えて心を通わす二人、そしてデザイナーとして自立したいと願う女性の姿を、しっとり味わい深く描いた物語。
なにより、家政婦に人間らしく優しく接する旦那様アシュヴィンに心惹かれました。演じたヴィヴェーク・ゴーンバルは、アートハウス系の映画製作会社ズー・エンターテインメントの創設者で、同社が手掛けた『裁き』(チャイタニヤ・タームハネー監督)ではプロデューサーだけでなく熱血弁護士として出演もしています。
(C)2017 Inkpot Films Private Limited,India
本作では、物静かで知的な旦那様なのですが、映画祭で賞を受けて喜びのスピーチをしている姿は、とても陽気な感じでちょっとイメージが違いました。演技者としての彼自身の力もありますが、ロヘナ・ゲラ監督の演出の賜物でしょう。
そして、ラトナを演じたティロートマ・ショームもデビュー作の『モンスーン・ウェディング』や、これから日本で公開される『ヒンディー・ミディアム』でのお受験コンサルタントとしてのテキパキした女性とは全く違う雰囲気。ラトナの出身地の言葉であるマラーティー語を学んで本作に臨んだそうです。
身分違いの恋は、まだまだインドでは受け入れられないこと。タブーに果敢に挑戦したロヘナ・ゲラ監督にエールをおくりたいです。(咲)
『あなたの名前を呼べたなら』ロヘナ・ゲラ監督インタビュー
©mitsuhiro YOSHIDA/color field
2018年/インド,フランス/インド、フランス/ヒンディー語、英語、マラーティー語/99分
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
公式サイト:http://anatanonamae-movie.com
★2019年8月2日(金) Bunkamuraル・シネマ他全国順次公開
グッド・ヴァイブレーションズ 原題:GOOD VIBRATIONS
監督 リサ・バロス・ディーサ、グレン・レイバーン
脚本 コリン・カーベリー、グレン・パターソン
出演 リチャード・ドーマー、ジョディ・ウィッテカー、マイケル・コーガン、カール・ジョンソン、リーアム・カニンガム、エイドリアン・ダンバー、ディラン・モーラン
1970年代、北アイルランドに住むテリー・フーリーは、ルースという女性と出会い結婚を決意する。生計を立てるためレコード店「GOOD VIBRATIONS」を開店した後、パンクロックに夢中な若者たちが集うライブハウスを訪ね、理不尽な権力にパンクで立ち向かう若者たちの姿に衝撃を受ける。
まさか!北アイルランドのベルファスト・パンク映画が観られるとは思わなかった。製作から7年の時を経て日本公開…。少数派の(?)パンクファンにとっては想定外の喜びに踊り出したくなってしまう♪
U2の名曲「Sunday Bloody Sunday」をこよなく愛する身としては、'72年、北アイルランドのロンドンデリーで起きた虐殺事件については知っているつもりでいた。加えてベルファストが紛争地帯だということも…。当時のニュース映像が流されはするが、本作は政治的な映画ではない。
「爆弾横丁」(!)と呼ばれる通りに、1人の音楽好きの男がレコード店を開くところから発展する実話。ハンク・ウィリアムズのカントリー音楽(パンクと真逆でしょ(笑))など聴いていた男が、パンクロックに啓示を受けたように触発され、インディーズ・レーベルまで立ち上げてしまうのだ。
日本ではマイナーなバンドや楽曲群が次々とスクリーンから飛び出さんばかりに現出してくる。その熱量たるや、まるで当時のクラブシーンや紛争の最中(さなか)へ送り込まれたような臨場感がある。ベルファスト・パンクを知らない人でも十分に楽しめる映画だ。それは製作スタッフ、2人の監督・脚本家、出演者に至るまで、心の底から音楽を映画を愛している純粋な想いが伝わるからだろう。
北アイルランド、パンク、ブリティッシュロックのファンは必見!ジョー・ストラマーの言葉で締めくくられるラストには胸熱だ。(幸)
2012年 イギリス・アイルランド合作/103分/PG12/カラー/シネマスコープ/DCP
配給 SPACE SHOWER FILMS
(C) Canderblinks (Vibes) Limited / Treasure Entertainment Limited 2012
公式サイト:http://good-vibrations-film.com/
8月3日(土)より新宿シネマカリテほかにて公開
風をつかまえた少年 原題:The Boy Who Harnessed the Wind
監督・脚本・出演:キウェテル・イジョフォー
出演:マックスウェル・シンバ、アイサ・マイガ
原作:「風をつかまえた少年」ウィリアム・カムクワンバ、ブライアン・ミーラー著(文藝春秋刊)
14歳のウィリアムは、2001年にアフリカのマラウイを襲った干ばつのために学費を払えず、学校に行けなくなってしまう。彼は図書館で見つけたある本から、独学で発電のできる風車を作り畑に水を引くことを思いつくが、雨乞いの祈祷をする村でウィリアムを理解する者はいなかった。だが、家族を助けたいという彼の思いが、徐々に周囲を動かしていく。
浅薄ながら、小国とはいえアフリカのマウアイ国についての知識は殆どなかった。電気を使えるのは総人口の僅か2%!21世紀になってもそのような生活を送る人々がいたことを本作で初めて知った。正に映画は「世界を開く窓」である。
主人公の父親として出演し、脚本、監督も手がけた英国の名優キウェテル・イジョフォーは監督デビュー作とは思えない洗練と成熟を見せている。長雨や日照りが続いても、族長と祈りを捧げ、超自然的な力にすがるしかない村人。生活に追われる大人たちは子どもに教育よりも働くことを優先するのが当然という風潮だ。
イジョフォー監督は最貧困国の厳しい現状を家族の動向、学費が払えない程の生計といった日常を丹念に描出することにより、映画の主訴を明らかにして行く。
終盤、樹々のさやぎや雲の流れから”風”を表現する映像の喚起力の素晴らしさに涙した。撮影監督はマイク・リー作品で知られるディック・ポープだと知り、納得。イジョフォー監督はスタッフ、出演者選びにも抜かりない眼力を示している。こういった地味な低予算の良作こそヒットしてほしいと願う。(幸)
ウィリアム・カムクワンバ氏が自身の体験を綴った原作に基づく映画。
飢饉から村を救おうと風力発電を考え出したのが、14歳の時だったということに何より驚いた。しかも、学費が払えなくて学校に通えなくなり、図書館で本を読み漁って考え出したのだ。
公開を前に来日されたウィリアム・カムクワンバ氏の姿をテレビで拝見した。現在、31歳。日本の中学生と交流。まさしく風力発電を考え出した時の年頃の中学生たち。自身の物語が映画化され、遠く日本でも上映されることに、感慨深げな表情だった。
日本の中学生たちも、彼から多大な影響を受けたことと思う。
商社に勤務していた時、その大半の24年間、経済協力部門で世界各国への政府開発援助(ODA)を利用した案件に携わってきた。サハラ以南のアフリカ諸国では、特に地下水開発や灌漑施設といった生活や農業に裨益する案件が目立った。一般市民の自立を促すのがODAの理念だが、国の末端まで行き渡るような援助は、果たしてできているのだろうか。権力を持つ者が結局潤っているのではないかと、つい危惧してしまう。願わくば、ウィリアム氏に続く人材が活躍できる社会になってほしい。(咲)
2018年/イギリス、マラウイ/英語、チェワ語/113分/シネマスコープ/カラー/5.1ch
© 2018 BOY WHO LTD / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE / PARTICIPANT MEDIA, LLC© 2018 BOY WHO LTD / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE / PARTICIPANT MEDIA, LLC
提供:アスミック・エース、ロングライド 配給:ロングライド
公式サイト:https://longride.jp/kaze/
2019年8月2日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。
2019年07月20日
隣の影(原題:Under the Tree)
監督・脚本:ハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン
撮影:モニカ・レンチェフスカ
編集:クリスティアン・ロズムフィヨルド
音楽:ダニエル・ビヤルナソン
出演:ステインソウル・フロアル・ステインソウルソン、エッダ・ビヨルグウ゛ィンズドッテル、シグルヅール・シーグルヨンソン、ラウル・ヨハナ・ヨンズドッテル
郊外の住宅地に居を構えるインガ(エッダ・ビヨルグヴィンズドッテル)とバルドウィン(シグルズール・シーグルヨンソン)夫婦に隣人のエイビョルグ(セルマ・ビヨルンズドッテル)とコンラウズ(ソウルステイン・バックマン)夫婦がクレームをつけてきた。インガたちの家の庭に生えている木が大きくなり過ぎ、エイビョルグたちの庭に影を落としているという。バルドウィンは、庭師を呼んで木の手入れをしようとしたが、妻インガは「あの木には触らせない」と反対。日光浴やサイクリングで自分磨きに余念がないエイビョルグに犬のフンを投げつける。翌日、バルドウィンが外出しようとすると、車の4つのタイヤすべてが何者かによってパンクさせられていた。インガは隣人夫婦の仕業だと言い放つ。こうして両家の対立はじわじわと深刻化していった。やがて、情緒不安定になったインガは隣人への怒りを募らせ、ある信じがたい行動に出る。それは新たな憎悪を呼び、取り返しのつかない災いを招き寄せた。
隣家とのトラブルは些細なことも不信感に繋がり、しこりになりやすい。庭木が落とす影をキッカケに2組の夫婦でいがみ合いがエスカレート。常軌を逸していく。ブラックなホームドラマを不気味な劇伴が煽り、驚愕のラストへ。背筋が凍りそうな物語だが日本で起こりうるのでは。(堀)
2017年/アイスランド・デンマーク・ポーランド・ドイツ/氷語/カラー/89分/DCP
配給:ブロードウェイ
2017🄫Netop Films. Profile Pictures. Madants
公式サイト:https://rinjin-movie.net-broadway.com
★2019年7月27日(土)よりユーロスペースほか全国順次ロードショー
アルキメデスの大戦
監督 脚本 VFX:山崎貴
原作:三田紀房「アルキメデスの大戦」(講談社「ヤングマガジン」連載)
出演:菅田将暉、柄本佑、浜辺美波、笑福亭鶴瓶、國村隼、橋爪功、田中泯、舘ひろし
1933年(昭和8年)。欧米列強との対立を深め、軍拡路線を歩み始めた日本。海軍省は、世界最大の戦艦を建造する計画を秘密裏に進めていた。しかし、「今後の海戦は航空機が主流で空母を作るべき」という自論を持つ海軍少将・山本五十六(舘ひろし)は、巨大戦艦の建造費用を算出し、いかに国家予算の無駄遣いかを明らかにしようと考えた。しかし戦艦に関する一切の情報は、建造推進派の者たちが秘匿していた。そこで山本は100年に一人の天才と言われる元帝国大学の数学者・櫂直(菅田将暉)に目を付けた。ところが櫂は数学を偏愛し、大の軍隊嫌い。頑なに協力を拒む櫂に、山本は「巨大戦艦を建造すれば、その力を過信した日本は、必ず戦争を始める」と衝撃の一言を叩きつける。この言葉に意を決した櫂は、同調圧力と妨害工作のなか、巨大戦艦の秘密に迫っていく。山本から櫂の付き人を命じられた田中(柄本佑)も最初は軍の規律や慣例に従わない櫂に嫌悪感を持つが、やがて櫂の能力と理念に敬意を示すようになる。
巨大で優美な戦艦を作ることが戦争を推し進めると考えた数学者が安く見積もられた建造費を根拠に計画を阻止しようと奔走する。
軍規とプライドが数学者を阻む。しかし天才的能力とひらめきで思いもよらぬ方法から計算を進めていく。数学者は建造計画を覆せるのか。ハラハラの連続。神懸かりな行動を取る人物を演じさせたら右に出るものはいない菅田将暉がぐいぐいと観客の意識を引き寄せる。
その一方、最初から心の奥に疼く疑問。大和は作られたはず。数学者は勝てないのか?
巨大戦艦の建造計画の裏に秘められた担当者の思いが明らかになったとき、その疑問が驚きと納得に変わる。立場は違えど日本を思う気持ちは同じだったのだ。
数学者は架空の人物だが、作品には実在の人物も多く登場。様々な思惑が入り乱れ、立場が同じだからといって思いが同じとは限らない。その逆も然り。戦争を繰り返してはいけないという制作者たちの思いが凝縮されたラストにこの作品を多くの人に勧めたいと思う。(堀)
2019年/日本/カラー/130分
配給:東宝
(C)2019「アルキメデスの大戦」製作委員会
(C)三田紀房/講談社
公式サイト:http://archimedes-movie.jp/
★2019年7月26日(金)全国東宝系にてロードショー
ヒョンジェ〜釜山港の兄弟〜(原題:Brothers in heaven)
監督:パク・ヒジュン
出演:ソンフン、チョ・ハンソン、ユン・ソイ、パク・チョルミン、コン・ジョンファン、ソン・ビョンホ、イ・イクジュン、シン・セフィ、
二卵性双子として生まれたテジュ(兄)とテソン(弟)は幼くして両親を亡くし、施設で育つ。テジュは優等生、テソンは不良として青少年期を過ごす中、園長の娘、チャンミに心を寄せていた。
20年後、兄のテジュ(チョ・ハンソン)はソウルの江南警察署の警官になり、弟のテソン(ソンフン)は釜山最大の密輸組織「マリカーン」の後継者として、それぞれの人生を歩んでいた。釜山で起きた遺物密輸の事件を捜査していたテジュは釜山に戻り、マリカーンの後継者である弟のテソンとチャンミ(ユン・ソイ)と再会する。組織の後継者の座と施設の移転問題で、テソンは組織と衝突することになり、この隙にテソンのライバルであるサンドゥがマリカーンを乗っ取ろうとする。サンドゥは邪魔であるテソンとテジュを消そうと画策し、チャンミを人質に取る。そして3人の前でサンドゥは、テソンが秘密にしていたチャンミの不幸な事件の真相を暴露するのだった。
端正な顔立ちと抜群のスタイル。ソンフンをこの作品で初めて知ったのだが、あまりの美しさに驚いた。特に立ち姿のお尻が完璧すぎて、目が吸い寄せられる。これまでは「じれったいロマンス」「高潔な君」などのドラマに出演し、韓国ではツンデレ王子として人気を博しているという。そんなソンフンが役者としての新境地を切り開く。大切な人と恩義のある人の間で苦悩する。良かれと思った行動が相手に伝わらない。ファンにとっては切なさマックスだろう。そしてハードなアクションも披露。ソンフンにとって、俳優としての分岐点となる作品である。(堀)
冒頭、チョウ・ユンファの物真似をする少年が出てきて、おっ~と思っていたら、成長した兄弟が、兄は警官、弟はマフィアと、これってまさに香港映画『男たちの挽歌』(1986)のティ・ロンとレスリー・チャンの関係! 黒社会にいるのが兄、レスリー演じる弟が警官ですが。
もっとも物語はまったく『男たちの挽歌』とは別物だが、韓国ではリメイクも作られている位、伝説の映画なのだなぁ~と思わせられた次第。
原題『釜山港に帰れ』は、日本人にもお馴染みのチョ・ヨンピルのヒット曲。生き別れた兄弟の、なんとも切ない運命。(咲)
2017年/韓国/カラー/114分
配給:ブロードウェイ
©️2018 CION Pictures All rights reserved
公式サイト:https://hyonje.net-broadway.com/
★2019年7月26日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋他全国順次ロードショー
よこがお
監督・脚本:深田晃司
撮影:根岸憲一
音楽:小野川浩幸
出演:筒井真理子、市川実日子、池松壮亮、須藤蓮、小川未祐、吹越満
リサ(筒井真理子)と名乗るその女は、和道(池松壮亮)の前に突然現れた。美容師と客として、リサと接していた和道だったが、やがて彼女の不思議な魅力に惹かれていく。リサの本当の名前は市子。かつては優秀な訪問看護師だった。基子(市川実日子)という訪問先の娘で、市子に憧れ以上の感情を頂く者もいた。ところがある日、基子の妹サキ(小川未祐)が失踪する。事件への関与を疑われた市子は、ねじまげられた真実により、築き上げた幸せのすべてを失う。市子は、“リサ”となって、ある危険な復讐を計画していた。
深田晃司監督が筒井真理子の横顔の美しさにインスパイアされて作られた作品。やりがいのある仕事、結婚を控えた恋人を一瞬にして失ったとき、女は何を考えるのか。現在と過去、現実と妄想をカットバックで見せ、狂気を炙り出す。果たして女は望みを遂げたのか。ラストの緊迫感がざらざらと心に残る。(堀)
2019年/日本=フランス/5.1ch/ヨーロピアンビスタ/カラー/111分
配給:KADOKAWA
(C) 2019 YOKOGAO FILM PARTNERS & COMME DES CINEMAS
公式サイト:http://yokogao-movie.jp
★2019年7月26日(金)より角川シネマ有楽町、テアトル新宿他全国公開
2019年07月19日
マーウェン(原題:Welcome To Marwen)
監督:ロバート・ゼメキス
脚本:ロバート・ゼメキス、キャロライン・トンプソン
撮影:C・キム・マイルズ
音楽:アラン・シルヴェストリ
出演:スティーヴ・カレル(マーク・ホーガンキャンプ/ホーギー大尉)、レスリー・マン(ニコル/ニコル)、ダイアン・クルーガー(デジャ・ソリス/ベルギーの魔女)、メリット・ウェヴァー(ロバータ/ロバータ)、ジャネール・モネイ(ジュリーG.I.ジュリー)、エイザ・ゴンザレス(カラーラ/カラーラ)、グウェンドリン・クリスティー(アナ/アナ)、レスリー・ゼメキス(シュゼット)、ニール・ジャクソン(カート/SS将官クルト・マイヤー)
ヘイトクライムにより5人の男に暴行を受け、昏睡状態に陥ったマーク・ホーガンキャンプ。9日後目覚めたものの記憶は飛び、脳に障害が残って日常生活もおぼつかなくなった。襲撃の後遺症(PDSD)に悩みつつ、セラピー代わりにカメラを手にする。自宅にフィギュアのための「マーウェン」村を作り、G.Iジョーのホーギー大尉と5人のバービー人形を住人とした。彼らはマークの想像の世界で日々ナチスの親衛隊と闘い、マークはそれを撮影する。近隣の理解と協力のもと、マークの写真は世に出ていく。
もとは実話で、2010年ジェフ・マルムバーグ監督のドキュメンタリー『マーウェンコル』をフィクションとして映画化したもの。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズや『フォレスト・ガンプ』など多くの作品で楽しませてくれたロバート・ゼメキス監督、ティム・バートン作品の脚本家として知られるキャロライン・トンプソンと組んでこの作品を送り出しました。
マークはスティーヴ・カレル。ほんとにもうなんにでもなれる俳優です。マークは想像の世界でホーギー大尉になり、マークに関わる美女たちはバービー人形のキャラとして活躍します。このCGすごいですよ!!俳優と人形を見比べてみてください。
ダイアン・クルーガー演じる魔女(人形)も登場して、ファンタジー色たっぷりです。あの家とフィギュアをじっくり見たい。が、マークはヘイトクライムの被害者。裁判に事件の証人として立つまでの重い重い足跡も描いています。(白)
2018年/アメリカ/カラー/シネスコ/116分
配給:PALCO
(c)2018 UNIVERSAL STUDIOS
https://www.marwen-movie.jp/
★2019年7月19日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
東京喰種 トーキョーグール【S】
監督:川崎拓也、平牧和彦
原作:石田スイ
脚本:御笠ノ忠次
撮影:唐沢悟
出演:窪田正孝(金木研)、松田翔太(月山習)、山本舞香(霧嶋董香)、鈴木伸之(亜門鋼太朗)、小笠原海(永近英良)、白石隼也(西尾錦)、村井國夫(芳村功善)
東京には人間を捕食する「喰種(グール)」という種族が、人間にまぎれて密かに住んでいる。見た目は普通の人間と変わらないが、唯一の食糧が人間であるため狩りが必要だ。他のものを口に入れるととてつもなく不味く、飢餓状態は激しく辛い。金木(カネキ)は不本意にも半喰種となってしまったが、芳村の営む喫茶店あんていくに居場所を見つけた。そこは人間を狩れない喰種のための隠れ家の役目も果たしている。来店した喰種の月山は、本好きな金木に接近し、すっかり打ち解ける。月山の招待を受けて訪ねた「秘密のレストラン」では、人間が食物として屠られていた。喰種の中で美食家として知られる月山は、半喰種の金木の香りに魅せられていたのだった。
第1作の『東京喰種 トーキョーグール』(2017)を、この試写の前に見直しました。未見の方も本編の冒頭、これまでのエピソードを2分半ほど見せてくれるので、始まりがざっくりわかります。蒼井優さんがポイント。
食物連鎖の最高位が「人間」ですが、それを食べる種族が喰種という設定です。食物が1種類しかない、という生物は実際にはどのくらいいるものでしょう?生きづらいからきっと強いはずです。
飢餓に耐え葛藤する窪田正孝さん=金木(カネキ)に同情。なんとかしてあげたくなりますが、水とコーヒーは受けつけるようです。金木に執着する月山役の松田翔太さん、お兄さんの龍平さんに負けず劣らず妖しく美しかった。いつか競演してほしいものです。
CGを駆使した戦闘場面では、喰種特有の器官が現れ、いきなりアクションゲーム感覚になります。ネットで調べたら「赫子(かぐね)」というそうで、羽やら尾やら触手のようなものやら、個体差があります。董香(トウカ)役の山本舞香さんがなんだか違う~と思っていたら空手を習っていたのだとか。細マッチョな窪田さん、本作でもよく動いています。
人間の何倍も強靭で再生能力も高い喰種、ほんとに存在していたら最強。グロイ場面も多いですが、ドラマ部分が面白いうえイケメンくん揃っていますので原作ファンもそうでない人もどうぞ。(白)
前作は人vs喰種の戦いだったが、今作は喰種同士の戦いを描く。まずはグルメな喰種の耽美な世界観が炸裂。演じた松田翔太の冷たい横顔が観客を突き刺す。カネキの純粋さがより際立った。クライマックスは赫子を使ってのアクション。まさかの手段で苦境を挽回。カネキ喰種化には秘密があるか?(堀)
2018年/日本/カラー/シネスコ/101分/R15+
配給:松竹
(c)石田スイ/集英社 (c)2019「東京喰種【S】」製作委員会
http://tokyoghoul.jp/
★2019年7月19日(金)ロードショー
アンダー・ユア・ベッド
監督・脚本:安里麻里
原作:大石圭「アンダー・ユア・ベッド」(角川ホラー文庫刊)
撮影:鎌苅洋一
出演:高良健吾(三井直人)、西川可奈子(佐々木千尋/浜崎千尋)、安部賢一(浜崎健太郎)
三井直人は、家でも学校でも目立たず親にも存在を忘れられるような子どもだった。成長してもそれは変わらず、大学で「三井くん」と名前を呼んでくれたのは佐々木千尋一人だった。彼女と一緒にコーヒーを飲み、好きな熱帯魚の話をした11年前の思い出をずっと大切にしていた。
もう一度名前を呼ばれたい。すでに結婚していた千尋を探し出し、近所に熱帯魚店を開く。しかし、千尋はキラキラと輝いていたあの面影はなく、疲れて魂の抜けたような表情をして三井にも気づかなかった。思いつめた三井は合鍵を作って千尋の留守に侵入し、盗聴器をしかける。
「名前を呼ばれたいだけ」とは、なんとささやかな欲望でしょう。その孤独の深さを想像します。思うだけなら切なく純な片思いですむところが、思いが募って実力行使に出てしまいました。原作は恋愛小説でなく、ホラー文庫なんですね。ちょっと「人間椅子」を思い出しました。高良健吾さんがいくら前髪を伸ばしてお顔を半分隠しても、美男っぷりが漏れてきます。清潔感のあるこの人だから変な気持ち悪さがなく、純な印象のほうが勝つのでしょう。
エリートらしき夫は『ガチ星』のダメ父ちゃんの安部賢一さんではありませんか。シュッとスリムな体型に戻っていて、最初見違えました。今作ではDV夫役と、またもやダメ男路線ですが、監督によれば千尋のオーディションの時から夫役だったそうです。そのまま本番の役になったんですね。
夫の激しい暴力を受ける千尋を『私は絶対許さない』の西川可奈子さん。試写にいらしていましたが、あまりに細くて可憐な人だったので、帰り際「こんなに酷い目にあう役で、引きずって辛くなかったですか」と思わず聞いてしまいました。「辛かったけれど監督や出演者とよく話し合い、納得の上挑んだ」とのお答えでした。あざだらけになったそうで、なんとも根性のある女優さんです。激しい描写もありますが「あれも愛、たぶん愛、きっと愛」なんだと思いました(これ歌の文句にあります。古っ)。(白)
高良健吾さん演じる直人は、合鍵で千尋の部屋に忍び込んで、ベッドの下でじっと待機するのです。「え? おトイレ大丈夫?」と、トイレが近い私は心配してしまいました。でも、万全の態勢で臨むのです。その場面、一瞬ですのでどうぞお見逃しなく!高良健吾さんのそんな姿も可愛い♪(咲)
2018年/日本/カラー/シネスコ/98分/R-18
配給:KADOKAWA
(c)2019 映画「アンダー・ユア・ベッド」製作委員会
http://underyourbed.jp/
★2019年7月19日(金)テアトル新宿ほか全国ロードショー
2019年07月14日
存在のない子供たち 原題:Capharnaum
監督・脚本: ナディーン・ラバキー
プロデューサー・音楽:ハーレド・ムザンナル
出演: ナディーン・ラバキー、ゼイン・アル=ラフィーア、ヨルダノス・シフェラウ、ボルワティフ・トレジャー・バンコレ
推定12歳の少年ゼイン。法廷で両親を訴える。裁判官から、「どんな罪で?」と聞かれ、「自分を産んだ罪」と、まっすぐに裁判官を見つめて答える。
ゼインは、両親が出生届けを出さなかった為に学校にも行けず、路上で水タンクを運んだり、ティッシュを売って日銭を稼ぐ日々を過ごしている。唯一の心の支えだった妹のサハルが11歳で無理やり結婚させられてしまい、怒りと悲しみから家を飛び出してしまう。行く当てのないゼインを助けてくれたのは、赤ちゃんと二人暮らしのエチオピア移民のラヒル。彼女も不法滞在で、いつも不安な気持ちを抱えていた・・・
原題:Capharnaumは、アラビア語でナフーム村。フランス語では新約聖書のエピソードから転じて、混沌・修羅場の意味合いで使われる。
レバノンのスラムや刑務所など、3年に及ぶ調査の膨大な資料の中から、貧困、児童婚、難民、移民など、様々な問題を凝縮して入れ込んだ渾身の作品。
主人公の少年は、長くレバノンに暮らすパレスチナ難民でもなく、最近流入してきたシリア難民でもない、レバノン人の両親の間に生まれた子。だからこそ、どこの国でもありえる普遍的な物語として捉えることができました。
誇り高いレバノンの人たちの多くは、レバノンの家族にはあり得ないと信じない人も多かったそうです。だからこそ、リアルにこだわり、3年もの調査を重ねたのです。そんなナディーンを支えたのは、『キャラメル』で音楽を担当し、その後、夫となったハーレド・ムザンナル。ナディーンが思うように映画を作れるようにと、本作ではプロデューサーも引き受けています。『存在のない子供たち』は、まさに、二人で作りあげた子供。今回、日本での公開を前に、10歳の息子ワリード君、3歳の娘メイリーンちゃん、そしてご両親も一緒に来日。家族ぐるみで作った映画であるのを感じさせてくれました。
監督が危惧するのは、このように愛情を受けない子供たちが大人になった時のこと。自分の子供たちに同じことをしてしまう可能性が高く,
犯罪に走る可能性も高いという次第。,今、社会がなんとかしなければという思い。それに応えたいと思うのですが、私には、この映画を観てくださいということくらいしかできないのが悲しい。(咲)
『存在のない子供たち』 ナディーン・ラバキ―監督インタビューは、こちらで!
2018年/レバノン・フランス/カラー/アラビア語/125分/シネマスコープ/5.1ch/PG12
配給: キノフィルムズ
(C)2018MoozFilms
★2019年7月20日(土)よりシネスイッチ銀座、ヒューマントラスト渋谷、新宿武蔵野館ほか全国公開
アポロ11 完全版 原題:APOLLO11
監督・編集・プロデューサー:トッド・ダグラス・ミラー
出演:ニール・アームストロング、バズ、・オルドリン、ジャネット・アームストロング、マイケル・コリンズ、ジャック・ベニー 他
月面着陸50周年記念ドキュメンタリー
1969年7月16日、アポロ11号はニール・アームストロング船長、マイケル・コリンズ、バズ・オルドリンの3人の宇宙飛行士を乗せ、大勢が見守る中、月に向かって飛び立つ。7月20日、人類史上初の月面着陸を成し遂げる。月面を歩き、星条旗を立てるアームストロング船長。その後、7月24日に地球へ無事生還。
人類が初めて月面に到達して50年。本作は、アメリカ公文書記録管理局(NARA)とNASAにより新たに発掘された、70mmフィルムのアーカイブ映像や11,000時間以上もの音声データを基に制作された。これまでに作られたドキュメンタリーでも使用された素材もあるが、それは70mmの素材を35mmにカットしたものだった。圧倒的な映像が迫ってくる本作。ぜひ劇場で観てほしい。
打ち上げから帰還までの9日間に密着。
打ち上げ前の緊張高まるケネディ宇宙センター。3人の宇宙飛行士が宇宙服に着替える姿と共に、彼ら3人の赤ちゃんの頃から結婚式や家族との写真が映し出される。いよいよ乗り組み、秒読み開始。沿岸には、発射するアポロ11号を見届けようと鈴なりの人、人、人。推定百万人。まさに私たちも、その一人となれる。
米ソが冷戦下にあった1961年、ジョン・F・ケネディ大統領が、10年以内に人類を月に到達させると力強く演説する姿が映し出された。そのケネディ大統領は、1963年11月にダラスで銃弾に倒れ、ソ連に先駆け人類が月面着陸した快挙を知ることがなかったことに思わず涙。でも、このケネディ大統領暗殺が月面着陸をなんとしても成し遂げなければという引き金になったということを知り、これまた歴史の皮肉と唸った。
冷戦という状況の中で進められた宇宙開発競争。月に降り立ったこと自体、驚くべきことだけど、遠く離れた月に到達した映像が届くのも、声が届くのも、思えば不思議。人間の叡智は凄い。
50年前、宇宙飛行士が月面を歩く姿を観た時には、まだ10代だった私。その凄さに実は気がついてなかったような気がする。この50年、科学技術はますます進んでいる。でも、何か忘れてないかと、ふと思う。(咲)
2019年/アメリカ/英語/93分/G
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
COPYRIGHT © 2019 MOON COLLECTORS LLC
公式サイト:http://apollo11-movie.jp
★2019年月19日(金)より、109シネマズ 二子玉川ほか全国ロードショー
2019年07月13日
チャイルド・プレイ(原題:CHILD’S PLAY)
監督:ラース・クレヴバーグ
脚本:タイラー・バートン・スミス
出演:オーブリー・プラザ、ガブリエル・ベイトマン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、マーク・ハミル(声の出演)
最先端テクノロジー企業・カスラン社の期待の新商品、“バディ人形”。引っ越しをして友達がいない少年アンディは、誕生日に音声認識やセンサー付きカメラ、高解像度画像認識などの機能が付いた高性能人形を母親からプレゼントされる。自らを“チャッキー”と名乗る人形だが、実は欠陥品だと判明。的外れな受け答えに最初はあきれるアンディだが、「君が一番の親友だよ」と話すチャッキーに次第に夢中になる。その後、“彼”が豹変することなど知らずに――。
きっかけは言葉にした心の不快感。故意に改悪されたプログラム内蔵のAI人形が本音と建前の使い分けや心のひだが理解できず、額面通りに受け取ってしまい暴走。人々を恐怖に陥れる。家電も連携して襲ってくるので、どこでどう襲われるのかが予測もつかない。さらに情報操作により、精神的苦痛も与える。これまでの作品のように怨念によるものではないので、現実に起こりえるかもという不安が恐怖を煽る。また、AI人形でなくても、想像力に欠け、相手の言葉を悪面通りにしか理解できない人が犯罪を起こすかもしれないと恐怖は留まるところを知らない。かなりグロいシーンもあるので自衛が必要。(堀)
2019年/アメリカ/カラー/90分
配給:東和ピクチャーズ
© 2019 Orion Releasing LLC. All Rights Reserved.
CHILD’S PLAY is a trademark of Orion Pictures Corporation. All Rights Reserved.
公式サイト:https://childsplay.jp
★2019年7月19日(金)全国ロードショー
暁闇
監督・脚本・編集:阿部はりか
音楽:LOWPOPLTD
出演:中尾有伽、青木柚、越後はる香、若杉凩、加藤才紀子、小泉紗希、新井秀幸、折笠慎也、卯ノ原圭吾、石本径代、芦原健介、水橋研二
何に対しても無気力な少年・コウ(青木柚)、学校が終わると見知らぬ男たちとつかのまの関係を持っているユウカ(中尾有伽)、不器用にすれ違う両親の狭間で行き場のない悲しさを抱えるサキ(越後はる香)。誰とも繋がれない寂しさと疎外感を抱えながら、ふとしたきっかけで音楽を通じて出会いを果たした3人。中学生最後の夏休み、都会の片隅にある廃ビルの屋上に集まっては、足りない何かを埋めるように、届かない何かを求めるように、静かに魂を重ね合わせてゆく――。
MOOSIC LABは2012年から始まった新進気鋭の映画監督とアーティストの掛け合わせによる映画制作企画を具現化する音楽×映画プロジェクト。企画段階から映画作家とミュージシャンによる映画と音楽の化学反応を映画に反映して制作し、コンペ形式・対バン形式で上映する異色の映画祭である。本作は2018年の長編部門で準グランプリに輝き、韓国・全州映画祭にてインターナショナル・プレミア上映された。また、青木柚が男優賞を受賞している。
家庭に心落ち着ける場がなく、孤独感と閉塞感に押しつぶされそうになる若者3人が音楽を通じて知り合い、時間を共有する。セリフは少ないが、映像で心情を伝える。3人で見に行った花火大会。煌めく花火の美しさに思わす息を呑む。
自分から繋がろうとすることで居場所は見つかるのだ。まず一歩。踏み出していく彼らを見守っていきたい。(堀)
2018年/日本/カラー/57分
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
©2018 Harika Abe/MOOSIC LAB
公式サイト:https://moonlessdawn.com/
★2019年7月20日(土)渋谷ユーロスペース他順次全国公開
工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男(原題:The Spy Gone North)
監督:ユン・ジョンビン
脚本:クォン・ソンフィ、ユン・ジョンビン
撮影:チェ・チャンミン
音楽:チョ・ヨンウク
出演:ファン・ジョンミン、イ・ソンミン、チョ・ジヌン、チュ・ジフン
1993年、北朝鮮の核開発をめぐって韓半島の危機が高まった。
情報社の出身で国家安全企割部(現在の国家情報院)にスカウトされたパク・ソギョン(ファン・ジョンミン)は“黒金星”(ブラックヴィーナス)というコードネームで北朝鮮の実態を把握するために北の上層部に潜入せよという指令を受ける。
国家安全企割部(通称:安企部(アンギブ)) 海外室長チェ・ハクソン(チョ・ジヌン)と大統領以外には家族すらも彼の実態を知らない中、対北事業化に偽装し、北京駐在 北朝鮮の高位幹部リ・ミョンウン(イ・ソンミン)に近づく黒金星。彼は数年にわたった工作活動の末、リ・ミョンウンの信頼を得て、リを通じて北朝鮮の権力層の信頼を得ることに成功した。
しかし、1997年、韓国の大統領選挙の直前、黒金星は南と北の首脳部の間の隠密な取引を感知する。
祖国のために固い信念で全てをかけて工作活動を遂行していた黒金星は、どうしようもない葛藤に苛まれるのだったが…
韓国人スパイが北朝鮮に潜入するが、大統領選が絡み、立場が危うくなる。展開が早く、政治的な駆け引きも多いので全てを理解するのは難しい。しかし、細かいことがわからなくても大筋はつかめるよう、エンタメ感たっぷりに作られているので問題ない。
作品当時はIT機器などなかった。音声の録音には小型のカセットデッキを使う。テープが反転するときの音で録音に気づかれるのではとハラハラする。カセットテープでの録音経験がない若い世代には、この気持ちが理解できなかっただろう。歳を重ねていることがちょっとうれしくなってしまう。
ところで、作品内で「車やたばこをメイド・イン・ノースコリアにする」という話が出てくる。これは1990年に制定された「南北交流協力に関する法律」によって、北朝鮮産の物品の搬入は「輸入」ではなく「内部交流」とみなし、関税をかけないものとされたことがベースにある。この制度が悪用され、中国産やロシア産のものを北朝鮮産と偽って韓国に持ち込み、関税を逃れていた商社が摘発される事件が起こったのである。このことを知っておくとストーリーがわかりやすいかもしれない。(堀)
韓国のスパイ史上、最も成功した対北工作員として知られる実在の人物をモデルに描いた物語。
国からの「工作員になれ」というひと言で、将校だった身分も、家族も捨てて、事業家として北に潜入する黒金星。3年の時を経て北朝鮮で信頼も得るが、その間に祖国の状況が変わってしまう。そんな悲哀をファン・ジョンミンが体現している。それでも、工作目的で近づいたリ・ミョンウンと心を通わせた一面も見せてくれて、ちょっと嬉しい。
北朝鮮の国家安全保衛部の真面目なエリート課長を演じるチュ・ジフンが、クラブで見よう見真似で踊る場面もなぜだか忘れられない。北朝鮮の人たちも、普通の人たちなのだと思わせてくれる。国家体制で、考え方がちょっと違ってるだけだと。
先日、テレビに黒金星のモデルになった男性が出ていた。敏腕スパイだったとは思えない温厚な方。国家への恨みつらみもあると思うのに、そんなことは口にしない。今は平穏な人生を送られているようだが心中どうなのだろう・・・(咲)
2018年/韓国/カラー/137分
配給:ツイン
ⓒ 2018 CJ ENM CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト:http://kosaku-movie.com/
★2019年7月19日(金)シネマート新宿ほか全国ロードショー
五億円のじんせい
監督:文晟豪(ムン・ソンホ)
脚本:蛭田直美
主題歌:「みらい」ZAO
撮影:田島茂
照明:山田和弥
録音:齋藤泰陽
音楽:谷口尚久
出演:望月歩、山田杏奈、森岡龍、松尾諭、芦那すみれ、吉岡睦雄、兵頭功海、小林ひかり、水澤紳吾、諏訪太朗、江本純子、坂口涼太郎、平田満、西田尚美
幼い頃に、善意の募金の五億円により心臓手術に成功し、命を救われた17歳の少年、高月望来(たかつきみらい)。健康に成長した望来は、五億円にふさわしい自分であろうとして周囲からの期待を引き受け、マスコミに晒されるという、窮屈な青春を送っていた。
ある日、とある出来事をきっかけに、SNSで自殺を宣言したところ、”キヨ丸“という見知らぬアカウントから「死ぬなら五億円返してから死ね」というメッセージが届く。望来は家を飛び出し、五億円の”借金“を返して自由になるための旅に出る。自分を押し殺して生きてきた少年が初めて自分で見つけたやりたいこと、それが「五億円返して死ぬ」ということだった。
計算したところ、高校生でもできる時給1000円のアルバイトをした場合、1日8時間365日働いても五億円が貯まるまでに171年もかかる。漫画喫茶も、ビジネスホテルも、17歳の望来を泊めてくれない。未成年の自分は一人でも何もできない…。はたして望来は五億円を稼ぐことができるのか?そして五億円を手にしたとき、本当に死を選んでしまうのか?
GYAOとアミューズがこれからの時代を担う新たな才能の発掘を目指して、オリジナル映画の企画、出演者、ミュージシャンのオーディションを開催し、オリジナル映画を作り上げるプロジェクト「NEW CINEMA PROJECT」を企画した。そして343本の応募から見事、第1回グランプリに選ばれたのが本作である。
五億円という金額は大きなインパクトを与えるが、監督が描きたかったのは、見知らぬ人を含めた周囲の期待に息苦しさを感じているかもしれない人への励まし。本作のように募金で手術を受けたり、また、多数の人がなくなった事故で奇跡的に助かったりした子には「自分が助けてもらったように、今度は自分が誰かを助けたい」と難関国立大医学部に進学して医者を目指すといったことを勝手に期待してしまう部分があった。この作品を見るまで考えが至らなかったが、それは押し付けに過ぎないと恥ずかしくなる。
主人公を演じたのは映画『ソロモンの偽証』で転落死する中学生・柏木卓也役を演じた望月歩。あの頃の幼さがなくなり、すっきりした面立ちで、すらっと背が高くなっていた。今後が楽しみである。(堀)
冒頭で望来(みらい)くんが語りかけます。人が一生で稼ぐのは約2億円…。そしてほぼ同じだけ消費しているそうです。
え、そんなに?と思いましたか?もちろん日本中の平均値、年収が億単位の人もいれば生活に汲々とする人もあり。それにしても短期間で稼ぐのは無理でしょ。もう人生黄昏時の私は残りの人生全部かけても無理です。望来くんはいったいどうするんだ?とハラハラしつつ見守りました。
さまざまな仕事をする(それは18禁では?!)。
これまで出会うはずもなかった人に出会う(この配役が良い!)。
それぞれから思いや言葉を贈られる(金言!)。
紆余曲折ありながら望来くんは成長したようです(良かった…涙)。
文監督と主演の望月歩さんお二人そろってのインタビューができました。すぐ後の会見にも参加しましたが、Q&Aがかなり被っていました。聞きたいことはみな一緒ですね。
インタビューにはなかった望月歩さんへの「役を演じるにあたって、ためらいや心配は?」という質問に「母がすごく厳しいので、そこを見られることだけがすごく心配でした」と答えて、会場が笑いに包まれました。ついに公開されましたので、お母さまの反応がどうだったか気になります。(白)
2019年/日本/112分/カラー/シネスコ/5.1chデジタル
配給:NEW CINEMA PROJECT
©2019 『五億円のじんせい』NEW CINEMA PROJECT
公式サイト:https://gyao.yahoo.co.jp/special/5oku/
★2019年7月20日(土)全国公開
2019年07月11日
さらば愛しきアウトロー 原題:THE OLD MAN &THE GUN
監督、脚本:デヴィッド・ロウリー
原作:デイヴィッド・グラン
出演:ロバート・レッドフォード、ケイシー・アフレック、シシー・スペイセク、ダニー・グローヴァー、トム・ウェイツ、チカ・サンプター、キース・キャラダイン
1980年代初頭からアメリカ各地で多発した銀行強盗事件の犯人であるフォレスト・タッカーは、15歳で初めて投獄されて以来、逮捕、脱獄を繰り返していた。彼は発砲もしなければ暴力も振るわないという風変わりなスタイルを貫き、粗暴な強盗のイメージとはほど遠い礼儀正しい老人だった。
ロバート・レッドフォード、アラン・ドロン…。欧米を代表する2枚目スターが時を同じくして引退を表明したことは、オールドファンとして考え深いものがある。演技以前の存在感(下手という意味ではなく)、スター・オーラ、スクリーンとの親和性や安定感に於いて、この2人を凌ぐ存在は今後しばらくは登場しないだろう。
レッドフォード、御歳83歳。本編のような快作で60年あまりの俳優人生の終止符を打つとは、なんと潔い幕切れか。花道を飾る送り出しびとは、自らが主催する「サンダンス映画祭」で見出され、『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』を監督して脚光を浴びたデビッド・ロウリー。相手役にシシー・スペイセクを配したことが成功の要因ではないか。温かく自然なもの腰、人懐こい笑顔、イノセントな瞳、市井の女を演じさせたら右に出る女優はいないだろう。レッドフォードとの絶妙な相性を見せてくれる。
銀行強盗仲間には、味わい深いトム・ウェイツとダニー・グローバー、レッドフォードを追い詰める刑事役を若手実力派のケイシー・アフレック、そしてキース・キャラダインまでカメオ出演させる粋な計らいが憎い。キャラダインの場面は是非お見逃しないように…。
終盤、銀行強盗や脱獄の履歴を過去の出演作と重ねる場面には胸が熱くなる。若かったレッドフォード…。この人の映画を観ていた”あの頃この頃”の想い出が否が応でもフラッシュバックする。かといって、決して感傷に溺れず、淡々とした描出に終止するロウリー監督の手腕により、余韻の残るエンドロールとなった。
アメリカン・ニューシネマでアンチ・ヒーローを演じてきたレッドフォードが、発砲もせず笑顔の似合う83歳になったのだ。幸せな気持ちになること請け合いの佳作である。(幸)
2018年/アメリカ/英語/93分/シネマスコープ/カラー/
Photo by Eric Zachanowich. © 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All
提供:バップ、ロングライド
配給:ロングライド
公式サイト:longride.jp/saraba/
★2019年7月12日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー
2019年07月10日
アイアン・スカイ 第三帝国の逆襲 原題:Iron Sky: The Coming Race
監督: ティモ・ヴオレンソラ
出演: ララ・ロッシ、ウラジミル・ブラコフ、キット・デイル、トム・グリーン、ユリア・ディーツェ、ウド・キア
前作『アイアン・スカイ』(2012年公開)では、ナチスが月の裏側に秘密基地を建設し、人類を侵略。人類は月面ナチスとの戦いに勝利したが、核戦争で自滅。地球は荒廃してしまった。
それから30年、人々はナチスの月面基地で生き延びていたがエネルギーが枯渇し、滅亡の危機を迎える。人々が苦しむ姿に機関士のオビは心を痛めていた。
そんなある日、宇宙船が地球から飛来してくる。そこにはロシア人の乗組員のほか、死んだはずの月面ナチス総統ウォルフガング・コーツフライシュも密かに同乗していた。何の企みかウォルフガングはオビに人類を救う手段を打ち明ける。
地球の深部に未開のエネルギー源があり、それを集約する聖杯を持ち帰れば、人類を救えるというのだ。オビは仲間たちと共に前人未到の<ロスト・ワールド>へと旅立つ・・・
ヒトラーをはじめとして、ビン・ラーディン、チンギス・ハーン、ローマ法王、サッチャー、スティーブ・ジョブズなどなど、歴史上の偉人・有名人がぞくぞく出てきて、恐竜ティラノサウルスと一緒に大暴れするという、まさに前代未聞の映像が展開!
悪ふざけもここまできたらお見事! (咲)
2019年/フィンランド・ドイツ・ベルギー/英語・ドイツ語/カラー/デジタル/93分
配給:ツイン
公式サイト:http://ironsky-gyakushu.jp/
★2019年7月12日(金)、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
2019年07月07日
カニバ パリ人肉事件38年目の真実 原題:Caniba
監督・撮影・編集・製作:ルーシァン・キャステーヌ=テイラー、ヴェレナ・パラヴェル(『リヴァイアサン』)
出演:佐川一政、佐川純(弟)、里見瑶子
1981年6月、パリ第3大学の博士課程に在籍していた当時32歳の佐川一政が、同級生のオランダ女性を殺害し、屍姦し、さらにその肉を食べたというニュースが世界を駆け巡った。
本作は、その佐川一政に2015年6月から約1ヵ月間密着したドキュメンタリー。
ハーバード大学感覚民族誌研究所のディレクターでもある人類学者で映像作家のルーシァン・キャステーヌ=テイラーと同研究所所属の映像作家ヴェレナ・パラヴェルの二人が、「カニバリズム」の意味を問う意図で製作したものだ。
カニバリズムとは、人間が人間の肉を食べる行動、あるいは習慣。
このおぞましい事件のことは、今でも鮮明に覚えている。あれからもう38年も経ったのかと思うほどだ。テレビで生い立ちや家庭環境なども詳細に報道された。父親は大手企業の社長。それなりに育ちのいい青年。両親はどんな思いだろうとも心配した。
そして、時を経て、このドキュメンタリー。その後の彼を知り、事件を知った当時よりもさらに驚愕した。あれだけ世界を震撼させた男が、罪に問われることなく、自由人としてのうのうと暮らしてきたというのだ。それも、自身の犯罪をネタに漫画や随筆など数多くの執筆をし、アダルトビデオ出演作の中では犯罪の状況を再演をしているものもあるのだ。佐川が人の肉を食べたいという欲求は、病床にある今も健在のようで、さらに驚かされた。
密着取材した映像のほかに、神戸で暮らした幼い頃の8ミリのホームムービーも織り込まれている。弟と二人、まるで双子のように仲良くはしゃぐ姿が映されているのだが、私の眼は後ろの山にくぎ付けに。私の住んでいた神戸の家の裏山にそっくりだった。もしかして近所に住んでいたのだろうか・・・ (咲)
留学先のパリで恋する人を殺して食べてしまった佐川一政は2013年に脳梗塞で倒れ、以来、弟の介護を受けて生きている。カメラは本人と弟を超至近距離で捉え、暑苦しいくらいにスクリーンから迫ってきた。見えてくる事件の本質。弟は「相談してくれれば回避する方法もあったのに」という。しかし、弟が語る方法は本当に回避したことになるのか。事件について本人が描いたコミックやかつて出演したAVなども映し出す。とんでもないと驚いたが、後半にはそれを超えると感じる事実が判明。その辺りから主人公は佐川一政本人ではなく、弟になってくる。世の中、いろいろな人がいるのは分かっているが、自分との違いに恐ろしくなった。(堀)
ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門審査員特別賞
シネマ・アイ・オナーズ賞で佐川一政がアンフォゲッタブルズ賞受賞
2017年/フランス・アメリカ/90分
配給:TOCANA
公式サイト:http://caniba-movie.com/
★2019年7月12日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
出演:佐川一政、佐川純(弟)、里見瑶子
1981年6月、パリ第3大学の博士課程に在籍していた当時32歳の佐川一政が、同級生のオランダ女性を殺害し、屍姦し、さらにその肉を食べたというニュースが世界を駆け巡った。
本作は、その佐川一政に2015年6月から約1ヵ月間密着したドキュメンタリー。
ハーバード大学感覚民族誌研究所のディレクターでもある人類学者で映像作家のルーシァン・キャステーヌ=テイラーと同研究所所属の映像作家ヴェレナ・パラヴェルの二人が、「カニバリズム」の意味を問う意図で製作したものだ。
カニバリズムとは、人間が人間の肉を食べる行動、あるいは習慣。
このおぞましい事件のことは、今でも鮮明に覚えている。あれからもう38年も経ったのかと思うほどだ。テレビで生い立ちや家庭環境なども詳細に報道された。父親は大手企業の社長。それなりに育ちのいい青年。両親はどんな思いだろうとも心配した。
そして、時を経て、このドキュメンタリー。その後の彼を知り、事件を知った当時よりもさらに驚愕した。あれだけ世界を震撼させた男が、罪に問われることなく、自由人としてのうのうと暮らしてきたというのだ。それも、自身の犯罪をネタに漫画や随筆など数多くの執筆をし、アダルトビデオ出演作の中では犯罪の状況を再演をしているものもあるのだ。佐川が人の肉を食べたいという欲求は、病床にある今も健在のようで、さらに驚かされた。
密着取材した映像のほかに、神戸で暮らした幼い頃の8ミリのホームムービーも織り込まれている。弟と二人、まるで双子のように仲良くはしゃぐ姿が映されているのだが、私の眼は後ろの山にくぎ付けに。私の住んでいた神戸の家の裏山にそっくりだった。もしかして近所に住んでいたのだろうか・・・ (咲)
留学先のパリで恋する人を殺して食べてしまった佐川一政は2013年に脳梗塞で倒れ、以来、弟の介護を受けて生きている。カメラは本人と弟を超至近距離で捉え、暑苦しいくらいにスクリーンから迫ってきた。見えてくる事件の本質。弟は「相談してくれれば回避する方法もあったのに」という。しかし、弟が語る方法は本当に回避したことになるのか。事件について本人が描いたコミックやかつて出演したAVなども映し出す。とんでもないと驚いたが、後半にはそれを超えると感じる事実が判明。その辺りから主人公は佐川一政本人ではなく、弟になってくる。世の中、いろいろな人がいるのは分かっているが、自分との違いに恐ろしくなった。(堀)
ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門審査員特別賞
シネマ・アイ・オナーズ賞で佐川一政がアンフォゲッタブルズ賞受賞
2017年/フランス・アメリカ/90分
配給:TOCANA
公式サイト:http://caniba-movie.com/
★2019年7月12日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
ハッパGoGo 大統領極秘指令(原題:Get the Weed)
監督:デニー・ブレックナー、アルフォンソ・ゲレロ、マルコス・ヘッチ
原案:デニー・ブレックナー
脚本:デニー・ブレックナー、アルフォンソ・ゲレロ、マルコス・ヘッチ
撮影:アルフォンソ・ゲレロ、マルコス・ヘッチ
出演:デニー・ブレックナー、タルマ・フリードレル、グスタポ・オルモス、イグナシオ・ロケ、ペペ・ムヒカ(友情出演)
南米のウルグアイ政府が世界で初めてマリファナを合法化される。当時のホセ・ムヒカ大統領は「麻薬密輸業者(ナルコス)と戦うための大いなる実験だ」と法案に署名し、国が栽培と販売を統括し、薬局において1グラム1ドルで売ると発表した。
薬局を営むアルフレド(デニー・ブレックナー)は、苦しい経営状況を打開するために、早速、試験販売として、ブラウニーにマリファナを混ぜて売り始める。噂が噂を呼び、薬局には長蛇の列。テレビが取材に訪れるまでになったが、実は、密売業者からマリファナを入手していたことがバレて、逮捕され、独房に入れられる。
一方、法案成立から数ヶ月たっても、栽培が始まらず、人々は徐々に不満をつのらせ、議会に押し寄せるようになっていた。任期満了を控えた大統領は、国外の供給ルートを探ることにし、独房にいたアルフレドに釈放と引き替えに、歴史的なオバマ大統領との会談までに米国でマリファナ50トンを手に入れろ!と極秘指令を出す。
母タルマ(タルマ・フリードレル)と共に米国に渡るアルフレド。「ウルグアイ合法大麻会議所」をねつ造し、コロラド州デンバーで行われる「420ラリー」や「カンナビス・カップ」を通して、米国マリファナ業界に潜入する。垣間見える米マリファナ業界の事実。ウルグアイからの助っ人警察官タトと共に、果たして大統領のからの指令を遂行することができるのか?
大麻を合法化したのに売るべき大麻がない! ウルグアイの大統領から密命を受け、アメリカに販売ルートを開拓しに行った息子と母、警察官の珍道中をドキュメンタリータッチで描く。監督が主演し、実母が母役で出演。母は素人とは思えない大胆な振る舞いで作品を牽引する。麻薬密輸組織の温床と言われるラテンアメリカの国から大麻を輸入させてくれと言われたときのアメリカ人の反応は興味深い。アメリカで知り合う麻薬の関連団体の関係者たちは本物? 駐米ウルグアイ大使は? どこまでが事実? すべてが気になってしまう。(堀)
2017年/ウルグアイ=米国/カラー/75分
配給:Action Inc.+Smoke
© 2019 Action Inc.All rights reserved
公式サイト:https://www.8855movie.com/
★2019年7月13日(土)ロードショー
ミュウツーの逆襲 EVOLUTION
原案:田尻 智
監督:湯山邦彦・榊原幹典
脚本:首藤剛志
声の出演
サトシ/松本梨香 ピカチュウ/大谷育江
ムサシ/林原めぐみ コジロウ/三木眞一郎 ニャース/犬山イヌコ
ナレーション/石塚運昇
特別出演/市村正親 小林幸子 山寺宏一
「清らかな心と、会いたいと強く願う気持ち」その二つをもつ冒険者の前にだけ姿を現すという幻のポケモン・ミュウ。全てのポケモンの“はじまり”と言われ、世界中のポケモン研究者が行方を追うなか、ついに一人の科学者がミュウの化石を発見する。それを元に最強のポケモン・ミュウツーが作られた。存在する理由も分からないまま、最強の兵器としての実験を繰り返されるミュウツーは、その心の中に、自分を生み出した人間に対する憎悪の念を宿していく。
1998年に公開された記念すべきポケモン映画シリーズ1作目となる「劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲」。アニメーション映画として1998年の年間興行収入ランキング1位に輝き、全米においては日本映画興行収入歴代1位の記録を未だに保持している。ポケモン映画シリーズの原点にして頂点と言われている伝説の映画がフル3DCGとなった。子どもと一緒に赤・緑に夢中になった世代としては懐かしい。
人工的に作られたポケモンが自らの存在意義を問う。第1作目でこの深遠なテーマはかなりチャレンジだった。「ここはどこだ…。わたしは誰だ…」VCの市村正親の声が心に響く。なんと、本作でも市村正親が声をあてた。全然変わっていない気がする。ボイジャーさんの小林幸子はさすがに少し老けた感があるけれど。
♪いつもいつでもうまくいくなんて、保証はどこにもないけど(そりゃそうじゃ)、いつでもいつも本気で生きてる、こいつたちがいる~♪
この松本梨香の「めざせポケモンマスター」はいつ聴いても元気がもらえる! 何度、育児の辛さを助けられたか。本作でもしっかり流れてきて、思わず涙が出てきた。(堀)
2019年/日本/100分
配給:東宝
©Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku ©Pokémon ©2019 ピカチュウプロジェクト
公式サイト:https://www.pokemon-movie.jp/
★2019年7月12日(金)全国東宝系にてロードショー
シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢(原題Le grand bain、英題SINK OR SWIM)
監督:ジル・ルルーシュ
脚本・脚色:ジル・ルルーシュ、アメッド・アミディ、ジュリアン・ランブロスキーニ
出演:マチュー・アマルリック、ギョーム・カネ、ブノワ・ポールヴールド、ジャン=ユーグ・アングラード
2年前からうつ病を患い、会社を退職して引きこもりがちな生活を送っているベルトラン(マチュー・アマルリック)。子供たちからは軽蔑され、義姉夫婦からも嫌味を言われる日々をどうにかしたいと思っていたある日、地元の公営プールで「男子シンクロナイズド・スイミング※」のメンバー募集を目にする。途端に惹きつけられたベルトランはチーム入りを決意するが、そのメンバーは、妻と母親に捨てられた怒りっぽいロラン(ギョーム・カネ)、事業に失敗し自己嫌悪に陥るマルキュス(ブノワ・ポールヴールド)、内気で女性経験のないティエリー(フィリップ・カトリーヌ)、ミュージシャンになる夢を捨てられないシモン(ジャン=ユーグ・アングラード)など皆、家庭・仕事・将来になにかしらの不安を抱え、ミッドライフ・クライシス真っただ中の悩めるおじさん集団だった。
元シンクロ選手のコーチ、デルフィーヌ(ヴィルジニー・エフィラ)のもと、あらゆるトラブルに見舞われながらもトレーニングに励むおじさんたち。そして無謀にも、世界選手権で金メダルを目指すことになる。
※ 2017年7月22日、国際水泳連盟が種目名を「シンクロナイズド・スイミング」から「アーティスティックスイミング」に変更すると発表。伴い、日本水泳連盟も2018年4月1日から種目名等を「アーティスティックスイミング」に一斉に変更した。
男子のシンクロナイズド・スイミングといえば、『ウォーターボーイズ』(2001年)を思い出すだろう。妻夫木聡や玉木宏といったイケメン俳優が出演して評判になり、2003年にはテレビドラマにもなった。こちらには山田孝之、森山未來、瑛太、田中圭らが出演。引き締まった若い体のイケメンの宝庫だった。
ところが、本作ではヨーロッパを代表する演技派俳優たちがぽてぽてのお腹を揺らしながら振付の練習をする。自分の姿を棚に上げ、つい笑ってしまう。本作は原題『Le grand bain』が「大浴場」を、英題『SINK OR SWIM』が「いちかばちか」を意味するように、人生の折り返し地点を過ぎ、家庭や仕事、将来に惑う8人の中年男性が大浴場(プール)を舞台に、いちかばちかの再起に挑む姿を描いたヒューマン・コメディである。
練習しても技が決まらず、こんな調子ではフランスを代表して参加した大会で失態を見せてしまうのではとこちらまでハラハラ。現地入りすれば、ライバルたちの引き締まったお尻に経験の差を感じる。本番はどうなるのか? 若者にはない、大人の経験と貫禄が抜群の照明効果と相まって、彼らの演技と思いを魅せる。思わず立ち上がって拍手がしたくなる作品だった。(堀)
2018/フランス/スコープサイズ/カラー/フランス語/DCP/5.1ch/PG-12/122分
配給:キノフィルムズ/木下グループ
©2018 -Tresor Films-Chi-Fou-Mi Productions-Cool industrie-Studiocanal-Tf1 Films Production-Artemis Productions
公式サイト:http://sinkorswim.jp/
★2019年7月12日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷他ロードショー
2019年07月04日
ハッピー・デス・デイ 2U 原題:Happy Death Day 2U
監督:クリストファー・ランドン
製作:ジェイソン・ブラム
脚本:クリストファー・ランドン
出演:ジェシカ・ロース、イズラエル・ブルサード
何者かに殺される誕生日を繰り返すタイムループから抜け出したツリーは、恋人のカーターと楽しく過ごすつもりだった。ところが彼のルームメイトのライアンが殺人鬼に狙われるタイムループに陥り、理工学部で学ぶライアンたちが開発した量子冷却装置(SISSY)が原因だと判明する。彼らは研究室に行き、そこで装置から放たれたビームをツリーが浴びてしまう。
2017年製作だった前作は6月28日から、本作は7月12日と連続公開される興行形式は正解。1作目を観たら続編も観たくなる”誘導戦略”が巧みに仕掛けられているからだ。
卑近な例で恐縮だが、まさか自分の誕生日にこの試写を観ることになるとは!(笑)夢の中で何度も殺されるのだろうか…と眠りにつくのが怖かったほど、本作はトラウマになってしまった。
大方の評は、「ホラーというよりコメディ」「爆笑しつつ…」などと書かれているが、誕生日当事者にとっては笑えない場面が続く。だが、ビッチなヒロインが苦闘する姿や、パラレルワールドタイムループ、母娘の情愛なども挟みつつ、物語に緩急があり、面白く飽きさせない。
タイムループものとして根強い人気を持つ、『恋はデジャ・ブ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』へのオマージュも感じさせ、楽しめる。
やはり、娯楽作の醍醐味を知り尽くすクリストファー・ランドン監督、ジェイソン・ブラム・プロデューサー(共に『パラノーマル・アクティビティ』シリーズ)の”安定印”付き映画ということなのだろう。3作目も期待できそうな予感がする。(幸)
前作『ハッピー・デス・デイ』はこちらです。
2019年/アメリカ/カラー/100分
配給 東宝東和
(C) Universal Pictures
公式サイト https://www.universalpictures.jp/micro/happydeathday
7月12日(金)全国公開
2019年07月01日
ワイルドライフ(原題:Wildlife)
監督:ポール・ダノ
脚本:ポール・ダノ、ゾーイ・カザン
音楽:デヴィッド・ラング
出演:キャリー・マリガン、ジェイク・ギレンホール、エド・オクセンボールド、ビル・キャンプ
物語の舞台は、1960年代、カナダとの国境にほど近いモンタナ州の田舎町。14歳のジョー(エド・オクセンボールド)は、ゴルフ場で働く父ジェリー(ジェイク・ギレンホール)と,家庭を守る母ジャネット(キャリー・マリガン)の1人息子だ。新天地での生活がようやく軌道に乗り、睦まじい夫婦の姿を息子が安堵の面持ちで眺めていたのもつかの間、ジェリーが職場から解雇されてしまう。さらに、ジェリーは命の危険も顧みず、山火事を食い止める出稼ぎ仕事に旅立ってゆく。残されたジャネットとジョーは働くことを余儀なくされ、母はスイミングプール、息子は写真館での職を見つけるが、生活が安定するはずもない。やがてジョーは、優しかった母が不安と孤独にさいなまれ、生きるためにもがく姿を目の当たりにすることになる。
夫の失業をきっかけに夫と妻の気持ちがすれ違い始める。妻が望まぬ仕事で夫は長期間家を空け、妻に男の影がチラつく。心の寂しさが体の寂しさを引き寄せたのか。それを悲しげに見つめる息子。カメラは息子の悲しげな表情を捉えた後、一呼吸置いて、視線の先をスクリーンに映す。この間にさまざまなことを考えてしまい、切なさが募る。豊かではないものの、幸せに暮らしていた家族が崩壊していく。
幸せな頃、息子の気持ちを聞かずに、夫はアメフトを、妻は勉強を求めていた。自分の考えを押し付けるところがあった2人は遠からず、すれ違いが起きたはず。互いに愛し合いながら、なす術もなく壊れてゆく夫婦。元に戻らないのか。愛について見つめ直し、歩き出した2人を見つめる息子の柔和な顔が心に残る。(堀)
2018年/アメリカ/カラー/アメリカンビスタ/PG-12/105分
配給:キノフィルムズ
(C)2018 WILDLIFE 2016,LLC.
公式サイト:http://wildlife-movie.jp/
★2019年7月5日(金)より、YEBISU GARDEN CINEMA、新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開