2019年06月22日
ニューヨーク 最高の訳あり物件(原題:Forget About Nick)
監督:マルガレーテ・フォン・トロッタ
出演:イングリッド・ボルゾ・ベルダル、カッチャ・リーマン、ハルク・ビルギナー
マンハッタンの超高級アパートメントで暮らすモデルのジェイド(イングリッド・ボルゾ・ベルダル)は、デザイナーとしての華々しいデビューを企画していた。ところが、スポンサーでもある夫のニック(ハルク・ビルギナー)から一方的に離婚を告げられた。傷心の中、さらに夫の前妻のマリア(カッチャ・リーマン)が転がり込み、部屋の所有権の半分は自分の物だと主張し居座り始める。同じ男と結婚したこと以外は、ファッションもライフスタイルも性格も、すべてが正反対のジェイドとマリアはぶつかり合ってばかり。そんな折、ジェイドのブランド経営が暗礁に乗り上げる。ジェイドは部屋を売って資金に充てようとするが、マリアの返事はもちろんノー。争いはますますヒートアップしていく。だが、積年の想いをぶつけ合う二人は、自分たちの特殊だけれど特別な絆に気付き始めるのだった。
第30回東京国際映画祭(2017年)コンペティション部門上映作品で、映画祭上映時は『さようなら、ニック』と違うタイトルだったので、同じ作品とは思わず、見てしまった。
略奪婚したジェイドが略奪されたところからのスタート。ジェイドは結婚しても体型維持のために努力と我慢を厭わず、仕事も家事も完璧。いろいろな意味での美に対して気を抜くことがない。それは略奪婚した以上、いつかはされる側になるかもしれない不安があったからではないか。東京国際映画祭で見たときは、「自業自得よね」とジェイドに何の共感もできなかったが、不倫の責任は女性ではなく男性が問われることなのかもしれないと思えてくる。もちろん、不倫は絶対に許せないのだが。
しかし、本作は現妻と元妻のどろどろの争いを描くのではなく、元妻のジェイドと元々妻マリアのぶつかり合いをコミカルに取り上げながら、男のクズっぷりを浮かび上がらせる。マルガレーテ・フォン・トロッタ監督の着眼点は興味深い。
ところで、タイトルの「ニューヨーク 最高の訳あり物件」はジェイドが売り出した、自らが住むマンハッタンの超高級アパートメントのことだが、ジェイドもある意味、“ニューヨーク 最高の訳あり物件”かもしれない。(堀)
2017年/ドイツ/カラー/スコープ/5.1ch/110分
配給:ギャガ
© 2017 Heimatfilm GmbH + Co KG
公式サイト:https://gaga.ne.jp/NYwakeari/
★2019年6月29日(土)、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
ペトラは静かに対峙する(原題:Petra)
監督・脚本:ハイメ・ロサレス
撮影監督:エレーヌ・ルヴァール
出演:バルバラ・レニー、アレックス・ブレンデミュール、ジョアン・ボテイ、マリサ・パレデス
カタルーニャ州ジローナにある著名な彫刻家・ジャウメ(ジョアン・ボテイ)の邸宅に、画家のペトラ(バルバラ・レニー)がやってくる。ジャウメの妻・マリサ(マリサ・パレデス)に「アトリエでジャウメと作品制作をする」と挨拶するペトラだが、彼女の本当の目的はジャウメが自らの実の父親かどうか確かめることだった。創作活動のかたわら、マリサや、ジャウメの息子で写真家のルカス(アレックス・ブレンデミュール)、ジャウメ一家の家政婦・テレサとその家族など、ジャウメの周囲の人間と親交を深めていくペトラ。そのうちに、彼が権力を振りかざす、冷酷な人物であることが浮き彫りになってくる。ある日、テレサが謎の自殺を遂げる。皆が悲しみに暮れるなか、テレサの死に関係する、父ジャウメの非道な秘密を知ってしまったルカスは家族のもとから去っていく。やがてペトラは一家の悲劇の連鎖に巻き込まれていくのだった。
父を知らずに育った女性画家が高名彫刻家を父ではないかと探る。そこで起きた悲劇の連鎖。血の繋がりは無意識に気がつくものなのか。時系列を崩した構成が何気ないことを伏線のように際立たせ、物語を盛り上げる。この手法、噂話に似ていないだろうか。印象に残ったところをまず語り、後からそこに至る過程を説明する。監督は噂話をするときの人の心理がよくわかっているのを感じた。
主演のバルバラ・レニーは『マジカル・ガール』(2014年)でゴヤ賞主演女優賞を獲得し、本作でヨーロッパ映画賞最優秀女優賞にノミネートされた。彫刻家の妻役を演じたマリサ・パレデスは2018年に名誉ゴヤ賞を受賞したスペインの大女優。その2人に引けを取らない演技で彫刻家の驚くような下衆ぶりを表現したのがジョアン・ボテイ。元々はエンジニアで、77 歳にして本作で演技デビューしたという。このリアリティのある存在感は新人とは思えない。(堀)
2018 年/スペイン、フランス、デンマーク/スペイン語、カタルーニャ語/カラー/シネマスコープ/5.1ch/107 分
配給:サンリス
©2018 FRESDEVAL FILMS, WANDA VISIÓN, OBERON CINEMATOGRÀFICA, LES PRODUCTIONS BALTHAZAR, SNOWGLOBE
公式サイト:http://www.senlis.co.jp/petra/
★2019年6月29日(土)より新宿武蔵野館、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
ハッピー・デス・デイ(原題:Happy Death Day)
監督:クリストファー・ランドン
製作:ジェイソン・ブラム
脚本:スコット・ロブデル
撮影:トビー・オリバー
編集:グレゴリー・プロトキン
音楽:ベアー・マクレアリー
出演:ジェシカ・ロース、イズラエル・ブルサード ほか
女子寮に暮らす女子大生のツリー(ジェシカ・ロース)は誕生日の朝、昨晩を共にしたのであろう男子学生カーター(イズラエル・ブルサード)のベッドで頭痛とともに目を覚ます。しかし、その日はいつもと違っていた。慌ただしくルーティンをこなし、夜になってパーティに繰り出す道すがら、マスクをかぶった殺人鬼に刺し殺される。しかし我に返ると、再び誕生日の朝で、カーターの部屋で目を覚ますのであった。
ビッチな女子大生ツリーが殺されるが、タイムループに入り込み、何度も最後の日を繰り返す。人の気持ちを思いやることのなかったツリーが繰り返しの中で犯人を探しつつ、自身も変わっていく。嫌悪感がいつのまにか共感に変わり、応援していた。主演のジェシカ・ロースの振り切った演技が素晴らしい。殺されたときの恐怖を引き継いで目覚めるのだが、苦痛に満ちた変顔は毎回強烈である。(堀)
時間は過ぎていくばかり。戻したくとも戻せません。だからタイムマシンやタイムループのストーリーが大好きです。しかーし、毎回毎回殺されるのでは、楽しみどころか悪夢のループ。これは勘弁!と腰が引けますが、主人公の女子大生ツリーは思いがけない反撃にうって出ます。このジェシカ・ロース、ウエーブかかった金髪に下着同然のトップス、思い切り短いボトムスと、絵に描いたような遊び人。この人『ラ・ラ・ランド』でエマ・ストーンと並んで踊ってた美人の一人でしたね。1987年生まれだそうですが女子大生役、でもアップになってもすっぴんでも綺麗です。
本作は、絶叫系ですが、笑える箇所がたくさん。とにかく繰り返すので、こちらもセリフと手順が刷り込まれます(笑)。本作がスマッシュヒットを放ち、『ハッピー・デス・デイU2』ができました。続いて公開されるので、最初のこちらをしっかり見ておいてくださいね。
試写室を出たらベビーマスク(仮名)に襲われました!(爆)(白)
2017年/アメリカ/カラー/96分
配給:東宝東和
(C) Universal Pictures
公式サイト:https://www.universalpictures.jp/micro/happydeathday
★2019年6月28日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
無双の鉄拳(原題:Unstoppable)
監督・脚本:キム・ミンホ
武術監督:ホ・ミョンヘン
出演:マ・ドンソク、ソン・ジヒョ、キム・ミンジェ、パク・ジファン
一度キレたら誰にも止められない“雄牛”という異名で恐れられた男ドンチョル(マ・ドンソク)。今では市場で働きながら、愛する妻ジス(ソン・ジヒョ)と慎ましやかに暮らしている。一途なジスの存在が、荒んだ生活を送っていたドンチョルを闇の世界から戻してくれた。ある夜、些細な諍いでジスを怒らせてしまったドンチョルは急いで自宅に戻るが、そこにジスの姿は無く部屋が荒らされていた。そして、ドンチョルの携帯に何者かから電話が入る。電話の主はジスを誘拐したと言うが、ドンチョルに身代金を要求するのではなく、逆に金を渡すからジスの事は忘れろと提案してくる。誘拐犯の目的は一体何なのか。警察の捜査はままならず、怒りに震えるドンチョルはジスを救うために独自で動き出すが―。
無敵の拳を封印していた荒くれ者が誘拐された、愛する妻奪還のため全てをなぎ倒していく。闇社会では「雄牛」の異名で恐れられたが、妻には頭が上がらない役どころをがっしりしたマ・ドンソクが体をすぼめてコミカルに魅せ、緩急ある展開に。どんでん返しのラストでみんながハッピーになるのがうれしい。(堀)
2018年/韓国/カラー/シネマスコープ/51.ch/116分
配給:アルバトロス・フィルム
(C) 2018 SHOWBOX, PLUSMEDIA ENTERTAINMENT AND B.A. ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:http://musou-tekken.com/
★2019年6月28日(金)よりシネマート新宿・心斎橋他全国順次ロードショー
今日も嫌がらせ弁当
監督・脚本:塚本連平
原作:「今日も嫌がらせ弁当」ttkk(Kaori)(三才ブックス刊)
主題歌:フレンズ「楽しもう」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
出演:篠原涼子、芳根京子、松井玲奈、佐藤寛太、佐藤隆太
シングルマザーのかおり(篠原涼子)は、自然と人情が豊かな八丈島で、次女の双葉(芳根京子)と暮らしている。可愛い娘が高校生となり反抗期に突入、話しかけても返事すらしない。かおりは娘の嫌がる“キャラ弁”を作り続けて逆襲するが、娘もまた「ウザい」とぼやきながらも、何かを受け取るように一口も残さず食べ続ける。やがてそのお弁当は、母から娘への大切なメッセージへと変わっていく。
原作の「今日も嫌がらせ弁当」ttkk(Kaori)(三才ブックス刊)はttkkさんの人気ブログ「ttkkの嫌がらせのためだけのお弁当ブログ」を書籍化したもの。原作に惚れ込んだ塚本連平監督が自ら脚本を書き、映画化権を獲得したという。私も同じ年頃の娘のためにお弁当を作っていたので、リアルタイムにブログを知っていた。卒業式のお弁当は朝日新聞に写真付きで取り上げられていたのを覚えている。作品ではフードコーディネーターがお弁当を作っているのだが、原作者が作り方を教え、撮影がまきになったときは手伝いに入ったそう。あのお弁当が見事に再現されていた。
ストーリーとしてはさまざまな年代の女性にリサーチを重ね、1年半かけて脚本を完成。リアリティにあふれた母と娘の物語となった。そこに、シングルファーザーの奮闘ぶりも加え、女性だけでなく男性目線でも楽しめる。嫌がらせという言葉とは裏腹に母の愛情たっぷりの物語を自分のことを振り返りながら余韻を楽しんでほしい。(堀)
2019年/日本/カラー/106分
配給:ショウゲート
©2019「今日も嫌がらせ弁当」製作委員会
公式サイト:http://www.iyaben-movie.com/
★2019年6月28日(金)全国ロードショー
モデル 雅子 を追う旅 (原題:Masako, mon ange.)
監督・プロデューサー:大岡大介
出演:雅子
インタビュー出演(登場順):遠藤真理、安珠、富川淳子、今井恵、佐藤史子、田村翔子、藤井かほり、樋上公実子、畠中鈴子、吉田佳代、髙嶋政宏、神林茂典、柴岡秀和、中田秀夫、高橋ヒデキ、吉川陽子、油川ヨウコ、栗坂直子、矢田部吉彦、片江佳葉子、田中正子、石井たまよ、三好和美、竹中直人、石田博雄、井下香苗、岡本敬子、安田晴美、一戸みずの、小暮美奈子、高野緑、荒井博子、中村のん、伊久美亜紀、永塚克美、櫻井尚子、木村東吉
2015年1月29日の夜明け前、モデル「雅子」は稀少がん闘病の末に旅立った。そのとき、夫である大岡大介は「夫婦として共に生きながら、モデルとしての雅子をほとんど知らないまま」だったことに気づく。「モデル・雅子」の半生を追い、映画にして伝えてゆくことを決意する。
自宅に積まれたままの「雅子」が登場した雑誌やビデオなどを片っ端から調べ、衝動のままに「雅子」を知る人々に、監督としてインタビューを重ねてゆく。
肌の調子をベストにするため、仕事の前日は夜遊びしない。注意一秒、シミ一生と言い、日が当たるところに出たら日傘を差す。プロフェッショナルなモデルとして貫き通した姿勢が関係者へのインタビューから浮かび上がってくる。
その一方で、大好きなチョコレートには目がない。フランスと映画も好き。ナチュラルな生き方が普通の女性の一面ものぞかせる。
作品では夫である大岡大介が知らなかったモデルとしても雅子を追う。しかし、見ている側としては妻としての雅子が見たくなってくるもの。そんな思いに大岡は最後にそっと応えてくれた。(堀)
2019年/日本/カラー/16:9/ステレオ/88分
配給:フリーストーン
©︎2019 Masako, mon ange.
公式サイト:http://www.masakomonange.com/
★2019年7月26日(金)から8月1日(日)(UPLINK吉祥寺にて1週間限定公開)/全国順次公開
新聞記者
監督:藤井道人
原案:望月衣塑子「新聞記者」(角川新書刊)河村光庸
脚本:詩森ろば 高石明彦 藤井道人
音楽:岩代太郎
出演:シム・ウンギョン、松坂桃李、本田翼、 岡山天音、西田尚美、高橋和也、北村有起哉、田中哲司
東都新聞記者・吉岡(シム・ウンギョン)のもとに、大学新設計画に関する極秘情報が匿名FAXで届いた。日本人の父と韓国人の母のもとアメリカで育ち、ある思いを秘めて日本の新聞社で働いている彼女は、真相を究明すべく調査をはじめる。一方、内閣情報調査室官僚・杉原(松坂桃李)は葛藤していた。 「国民に尽くす」という信念とは裏腹に、与えられた任務は現政権に不都合なニュースのコントロール。愛する妻の出産が迫ったある日彼は、久々に尊敬する昔の上司・神崎と再会するのだが、その数日後、神崎はビルの屋上から身を投げてしまう。真実に迫ろうともがく若き新聞記者。「闇」の存在に気付き、選択を迫られるエリート官僚。二人の人生が交差するとき、衝撃の事実が明らかになる!
©2019『新聞記者』フィルムパートナーズ
特別なプロジェクト遂行のため国家は情報操作も辞さない。苦悩する官僚と政治の闇に立ち向かう記者。私たちの見えないところで何が行われているのか不安になる。後半はサスペンスタッチが加速。緊張感で息をつく間もない。正義と家族で揺れる官僚を松坂桃李。5月に公開された『居眠り磐音』ではつねに穏やかな表情だったが、本作では打って変わって、どうすべきかを悩み苦しむ役どころを熱演。最後のあの表情は何を意味するのか! 作品が終わっても余韻が続く。2019年に『孤狼の血』でアカデミー賞最優秀助演男優賞に輝いたが、来年は本作と『居眠り磐音』で主演男優賞を狙えるのではないだろうか。官僚の冷徹な上司を田中哲司、記者の理解ある上司を北村有起哉。どちらも適役感たっぷり。(堀)
日本でもやっとこういう映画が作られました。アメリカでも韓国でも国が隠蔽した真実を記者が追い、白日のもとにさらす映画がいくつも作られています。それなのに日本ではできないの?と歯がゆい思いでしたが、ようやくです。苔の生えるような過去の話ではなく、現代であり現在。劇映画ですが、どれもこれもこれまであったこと、おこりつつあることが脳内に浮かぶでしょう。新聞もテレビもなんだかなぁの今、こんな映画を作って送り出してくれて感謝です。と書きつつ、製作のみなさま大丈夫?と思ってしまう私もかなり現状に侵食されています。
『サニー 永遠の仲間たち』(2011)『怪しい彼女』(2014)の可愛いシム・ウンギョンが笑顔を封印、権力の闇に向かい邁進する日韓ハーフの女性記者吉岡役。日本語のセリフに苦労しながらもクールで熱い役どころを演じています。松坂桃李さん『居眠り磐音』に続いて良い作品が巡ってきました。秋には『蜜蜂と遠雷』公開も控えています。充実した日々ですねぇ。
この作品を観終わったら、選挙に行かなくちゃと思いますよ。数少ない直接参加の機会を逃さないで。(白)
©2019『新聞記者』フィルムパートナーズ
原案は東京新聞の望月衣塑子記者。政権がひた隠しする権力中枢の闇に迫る一人の新聞記者の行動を通し、報道メディアは権力にどう対峙するべきかを問いかける。
一方、理想に燃え公務員になった若手官僚・杉原(松坂桃李)は以前外務省で働いていたが、今は内閣情報調査室で働き、「国民に尽くす」という信念とは裏腹に、与えられた任務は現政権に不都合なニュースのコントロール。「これも国を守る大事な仕事」と不本意な命令を下され葛藤する。
大学新設計画に関する極秘情報を軸に、真実に迫ろうとFAXを送ってきた情報提供者を探す吉岡と、内閣情報調査室の「闇」の存在に気付き、そのまま任務を遂行し「国民を裏切る」のか選択を迫られる杉原。
真実について「権力とメディアの攻防」が、緊迫した状況で描かれるが、「疑惑の大学誘致」「レイプ事件の被害者会見」など、近年マスコミを騒がせた事件を連想させる内容で、「国家による情報操作や情報隠し」について考えさせられる作品になっている。
それにしても、「政府にたてつく人を不利にするようなでっち上げを作り上げるような機関」があるのかもと思わせる内容で、戦前と同じような社会が来なければいいがと思ってしまった。
この映画は、報道は政府のスポークスマンであってはならないと警鐘を鳴らしている。冷徹な上司を演じた田中哲司が言う「この国の民主主義は形だけでいい」というセリフに、怒りを感じ戦慄が走った。
この作品、よく映画化にこぎつけられたなと、関係者の勇気にエールを送りたい。ぜひぜひ皆さん観てほしい。最近、日本の商業映画で社会派的な作品はあまりなかったけど、久々に骨太の作品。かつては今井正、山本薩夫、小林正樹、新藤兼人、熊井啓などの監督が社会派的な作品を作ってきた。今後、この映画に影響を受けて、そういう作品が多く出てきてほしい(暁)。
「この国の民主主義は形だけでいい」という言葉にはっとさせられた。
民主主義の社会で暮らしていると思いこまされていたけれど、実は違うのではと疑わずにいられない。
香港では、返還前を知らない若い人たちも問題意識を持ってデモに参加している。今の日本人、骨抜きにされてしまって、何が問題かも気づかないように操作されているのではとさえ思ってしまう。
メディアの役割は重要だ。決して政府の提灯持ちであってはならないことを、『新聞記者』は思い起こさせてくれる。
官僚も然り。国民の税金を貰って働いていることを忘れないでほしい。
議員、官僚、メディア関係者の方々に本作をご覧いただき、自分たちの使命を胸に刻んでほしい。(咲)
2019年/日本/カラー/スコープサイズ/5.1ch/113分
配給:スターサンズ/イオンエンターテイメント
©2019『新聞記者』フィルムパートナーズ
公式サイト:https://shimbunkisha.jp/
★2019年6月28日(金)新宿ピカデリー、イオンシネマほか 全国ロードショー!
神と共に 第二章:因と縁(原題: Along with the Gods: The Last 49 Days)
監督:キム・ヨンファ
出演:ハ・ジョンウ、チュ・ジフン、キム・ヒャンギ、チャ・テヒョン、D.O.、マ・ドンソクほか
千年間で48人の死者を転生させた、カンニム(ハ・ジョンウ)ヘウォンメク(チュ・ジフン)、ドクチュン(キム・ヒャンギ)の3人の使者はあと1人を転生させたら、彼らも新しい生を得ることができる。カンニムは怨霊だったジャホン(チャ・テヒョン)の弟スホン(キム・ドンウク)を最後の裁判を受ける貴人に決める。本来、怨霊は消滅させなければならないが、閻魔大王(イ・ジョンジェ)は3人の使者に条件を出しカンニムの提案を受け入れる。条件はソンジュ神(マ・ドンソク)に守られ訪れ、使者をことごとく追い払う老人、チュンサム(ナム・イル)をスホンの裁判が終わるまでに冥界に連れてくること。下界に降りたヘウォンメクとドクチュンは、偶然、ソンジュ神が千年前に2人を冥界に連れて行った使者だったことを知る。彼らは、ソンジュ神により驚愕の真実を知ることになる。
第一章では裁判を受ける消防士ジャホンの人生を振り返る内容だったが、その合間にカンニムの前世を何気なく挟み込んだ。第二章ではジャホンの弟スホンの裁判を描くように思わせて、カンニムの前世、そしてヘウォンメクやドクチュンとの因縁を描く。第二章を見ると、第一章は壮大なるプロローグにすぎなかった気がしてきた。
過去に怯えるカンニムは前世でいったい何をしたのか。少しずつ明らかになっていくにつれ、カンニムの人間らしい葛藤が前面に押し出される。第一章では見事なアクションを披露したハ・ジョンウが第二章では演技派らしさを発揮。物語を引っ張っていく。すべてが判明した後、カンニムの知らないところで彼を見守る父の愛を観客のみ知ることになる。親の愛はこんなにも大きいものなのかと驚く。
ところで。ハングル文字は記号のような24文字を組み合わせて一文字にするのだが、上下を逆さまにしても別の音で読める。それが本作ではちょっとしたキーワードになっている。ハングル文字が読める人にとっては頭の体操的な楽しみ方もできるといるだろう。
(堀)
2018年/韓国/カラー/シネスコ/5.1ch/日本語/141分
配給:ツイン
© 2019 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS All Rights Reserved.
公式サイト:http://kimitotomoni.com/
★2019年6月28日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー