2019年06月09日

慶州(キョンジュ) ヒョンとユニ 原題: Gyeongju

kyonnju.jpg

監督:チャン・リュル
出演:パク・ヘイル、シン・ミナ、ユン・ジンソ

北京の大学で教鞭をとるチェ・ヒョンは、先輩チャンヒが亡くなった知らせを受け、テグ(大邱)に帰ってきた。7年前、一緒に慶州(キョンジュ)に行った時に撮った写真が遺影になっていて、茶屋で観た春画を思い出す。その春画を確認したくて、チェ・ヒョンは慶州に向かう。
中国煙草を手にしていると、黄色いスカートの少女が「吸っちゃ駄目」と声をかけてくる。「匂いを嗅いでいるだけ」とチェ・ヒョン。妙に印象に残る少女。
観光案内所の若い職員の女性が、中国語で話しかけてくる。つい、韓国人と言いそこね、中国語で答えてしまう。職員のたどたどしい中国語が初々しい。
茶屋に行くが、春画があった壁は壁紙で覆われている。一度は立ち去ったが、再び訪れ、美しい茶屋の主人ユニに、春画がなぜこの店にあるのか前のオーナーから聞いてないか尋ねる。「昼間にいらした時には、変態かと思った」というユニ。
ユニの仲間たちとカラオケに行った後、丸いお墓の山に登る。「死んだらここに入りたい」とつぶやくユニ。彼女の夫は数年前に鬱病で自殺していた。「顔は似てないのに、耳がそっくり。さわらせてください」と、チェ・ヒョンの耳をさわる。
一方、チェ・ヒョンは過去の恋人ヨジュンに会いたいと連絡する。今は人妻となったヨジュンが慶州にやってくる・・・

古都・慶州への不思議な1泊2日の旅。
2014年のアジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映された折に拝見。なんともいえない余韻が蘇ります。
ゲストルームで他の作品の監督インタビューの為に待機していたら、パク・ヘイルさんが現われました。お昼を食べる時間がなかったらしく、コンビニで買ってきた袋入りのパンを大急ぎで召し上がっていました。すぐに舞台挨拶のために劇場に向かわれたのですが、とても自然体で親しみの持てる素敵な方でした。
映画の中のチェ・ヒョンは、パク・ヘイルさんそのままのような人物。落ち着いた雰囲気の古都・慶州を舞台にした味わい深い一作です。(咲)


2014年/韓国/145分
配給:A PEOPLE CINEMA
公式サイト:http://apeople.world/gyeongju/
★2019年6月8日(土)よりユーロスペース(渋谷)ほか全国順次公開




posted by sakiko at 15:02| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

99歳 母と暮らせば

99sai.jpg

監督・撮影・編集・ナレーション:谷光章
出演:谷光千江子、谷光賢、谷光育子、谷光章

71歳の谷光監督の母千江子さんは99歳。認知症が進んで目が離せなくなってきた。谷光監督は仕事の場を実家へ移し、同居して介護を始めた。料理を作り、下の世話をし、デイケアへ送り出し、と気負うことなくこなしている。千江子さんは、物忘れはあっても食欲旺盛、社交的で明るい。
蝣エ髱「蜀咏悄・医Γ繧、繝ウ繝サ繧オ繝輔y・・hahato_sub06.jpg

母と息子の関西弁の会話は漫才のようで、思わず笑ってしまいます。老々介護を1年間淡々と映して、編集した作品。谷光監督は初めての介護体験ながら、大変だと愚痴ることもなく体調の良しあしの波もうまくやり過ごしています。お二人手をつないで桜を愛でる表情の晴れやかなこと。2年後の今も変わりなくお元気だそうです。この穏やかな日々が続きますように。(白)
蝣エ髱「蜀咏悄・医Γ繧、繝ウ繝サ繧オ繝輔y・・hahato_sub01.jpg


千江子さんの言葉や行動が、なんとも可愛らしくて、ほのぼのとさせられました。
とはいえ、老々介護が大変だなぁ~ということも、ずっしり伝わってきました。
その大変さを気持ちの持ちようで載り切る術を教わったような気がします。
8年前に亡くなった母のことも思い出しました。
最後の1年は認知症が進んでちょっと大変でした。
知らない間に、物を買ってしまうということもよくあって、まさに「あるある」と。
一方、96歳になる私の父はまだまだ元気で、これから千江子さんのようになっていくのかなと。
誰もがたどる道、介護と、自分の老い・・・明るく乗り切りたいと思わせてくれる映画です。(咲)

老いた母親を介護する作品はこれまでにも『毎日がアルツハイマー』や『ほけますから、よろしくお願いします。』など、いくつも見てきたが、この作品ほどほのぼのとしたものはなかった。何が違うのか。ふと考えてみたら、視点が娘ではなく、息子なのだ。
以前、仲間内で“母親が認知症になったとき、娘はすぐに受け入れ、介護認定を取ることなど先々のことを考えるが、息子は母親がぼけたことを受け入れられず、認知症を認めない傾向がある”ということが話題になった。「娘は冷めた目で見てしまいがちだよね」という結論に落ち着いた覚えがあるが、この作品がほのぼのしているのも、それが影響しているのではないだろうか。
もちろん、介護の本当にしんどい部分はカットしたのかもしれないが、それでも今なお、年老いた息子が前向きに介護を続けていけるのは、母親への意識の違いが大きいのだろう。親の介護は娘や嫁がするべきという固定概念を捨て、息子が中心にやっていくのがいい。この作品を見ているとそんな気持ちになってくる。(堀)


P1290287 99sai 320.JPG
谷光監督インタビューはこちら
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/466507574.html

2018年/日本/カラー/92分
配給:イメージ・テン、ムービー・アクト・プロジェクト
(C)Image Ten.
http://99haha.net/
★2019年6月8日(土)より新宿K's cinemaほか全国順次公開
posted by shiraishi at 10:10| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

氷上の王、ジョン・カリー(原題:The Ice King)

john.jpg

監督・脚本:ジェームズ・エルスキン
ナレーション:フレディ・フォックス
音楽監督:スチュアート・ハンコック
出演:ジョン・カリー、ディック・バトン、ロビン・カズンズ、ジョニー・ウィアー、イアン・ロレッロ

アイススケートをメジャースポーツへと押し上げ、さらに芸術の領域にまで昇華させた伝説の英国人スケーター、ジョン・カリー。彼はバレエのメソッドを取り入れた演技で、1976年インスブルック冬季五輪フィギュアスケート男子シングルの金メダルを獲得する。しかし、マスコミが真っ先に伝えたのは、表に出るはずのなかった彼のセクシュアリティだった。同性愛が公的にも差別されていた時代に、ゲイであることが公表されたメダリストの存在は、世界中を驚かせ論争を巻き起こす。しかし、彼は華麗な滑りで多くの人を魅了し続け、現在の日本人スケーターにも影響を与えている。(公式サイトより)

フィギュアスケートは、次々と登場する美しいアスリートたちのおかげですっかりメジャーになりました。私もかたずをのんで見守っています。ここまでくるには先達の努力があったはず、と思いつつこの映画を観るまでジョン・カリーのことは知らずにいました。
栄光の背後には血のにじむ努力と、孤独な日々があると想像に難くありません。動画でも一枚の写真でも、彼の影を伴った美しさが見て取れます。同性愛が忌むべきもの、病気として治療すべきものとされていたことは、多くの映画でも描かれていますが、ジョン・カリーも父親から「人間として根本的なところがおかしい」と非難され続けたとか。一番味方でいてほしい家族から受け入れられなかった彼の孤独は、どれほど深かったことやら。
彼の完璧なパフォーマンスと、さらに高みを目指し続けた姿勢は、現代のスケーターにも憧れをもって見つめられています。どうぞ大きな画面でご覧ください。(白)


2018年/イギリス/カラー/89分
配給:アップリンク
(C)New Black Films Skating Limited 2018
http://www.uplink.co.jp/iceking/
予告編はこちら
★2019年5月31日(金)新宿ピカデリー、東劇、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 09:58| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする