2019年06月08日

さよなら、退屈なレオニー(原題:The Fireflies Are Gone)

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監督:セバスチャン・ピロット
出演:カレル・トレンブレイ、ピエール=リュック・ブリラント

カナダ・ケベックの海辺の街で暮らす17歳の少女、レオニー(カレル・トレンブレイ)。高校卒業を一ヶ月後に控えながら、どこかイライラした毎日を送っていた。退屈な街を飛び出したくて仕方ないけれど、自分が何をしたいかわからない。口うるさい母親も気に入らないが、それ以上に母親の再婚相手のことが大嫌い。レオニーが唯一、頼りにしているのは離れて暮らす実の父親だけだった。 そんなある日、レオニーは街のダイナーで年上のミュージシャン、スティーヴ(ピエール=リュック・ブリラント)と出会う。どこか街になじまない雰囲気を纏うスティーヴに興味を持ったレオニーは、なんとなく彼にギターを習うことに…。夏が過ぎていくなか、あいかわらず、口論が絶えない家庭、どこか浮いている学校生活、黙々とこなす野球場のアルバイト、それから、暇つぶしで始めたギター…毎日はつまらないことだらけだが、レオニーのなかで少しずつ何かが変わり始めていた。

主人公は高校卒業を目前に控えた、こじらせ系女子。仲間とつるむのも、親との関係もうざい。「将来は?」と尋ねられても答えられない。決断や責任から逃げてばかり。レオニーを演じるカレル・トレンブレイからイライラする気持ちが手に取るように伝わってきた。
さて、これからどうするのか。人を非難するのは簡単。自ら行動することが大事と気付いてほしい。(堀)


主演のカレル・トレンブレイは第31回東京国際映画祭2018でジェムストーン賞(新人賞)を受賞した。(『さよなら、退屈なレオニー』の映画祭でのタイトルは『蛍はいなくなった』)
参照 第31回東京国際映画祭2018 授賞式レポート

カレル・トレンブレイ.jpg
撮影 宮崎暁美

2019年/カナダ/カラー/96分
配給:ブロードメディア・スタジオ
©CORPORATION ACPAV INC. 2018
公式サイト:http://sayonara-leonie.com/
★2019年6月15日より新宿武蔵野館ほか全国にて公開
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女の機嫌の直し方 

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監督:有田駿介 
脚本:蛭田直美    
脚本協力:横澤夏子  
音楽:吉川慶出演:

大学でAIの研究をしているリケジョの真島愛(早見あかり)は、「男女脳の違いによる女の機嫌の直し方」をテーマに卒業論文を執筆中。データ収集のために、“男女トラブルの宝庫”結婚式場でアルバイトをすることにした。
その初日。上司となったウェディングプランナー・青柳誠司(平岡祐太)とともに、新婦・北澤茉莉(松井玲奈)と新郎・悠(佐伯大地)の結婚式を担当することに。ところが挙式直前に茉莉のウェディングドレスがワインで汚れてしまう。青柳と悠が式に間に合わせようと代わりのドレスを探しに動き出すが、茉莉はそのドレスにこだわる。困り果てた悠と青柳に、愛は男女脳の違いを説きながら、茉莉の不機嫌の理由を紐解く。愛のアドバイスを実行した悠は、茉莉の機嫌を見事に直すことに成功する。
その後も式のあらゆる場面で、男女トラブルが発生。そのたびに愛が「女の機嫌の直し方」を授けて、問題を次々と解決。結婚式はなんとか無事、お開きに向かうと思われたが、最後に、とんでもない大トラブルが発生する。

黒川伊保子の同名書籍が原案。結婚式を舞台に男女のトラブルを女性脳と男性脳の違いで修復する。あるあるのトラブル連発につい引き込まれ、笑って泣いた。彼女が「仕事と私のどっちが大事?」と選択を迫ったときは、「君が大事」と女性を選ぶのは間違いというアドバイスには思わず膝を打つ。
女性からすれば「そうなのよ〜」ばかりだが、男性にはどう見えるのか。そもそも問題点に気がつかないのかもしれない。(堀)


2019年/日本/カラー/ビスタサイズ/ステレオ/ 107分
配給:よしもとクリエイティブ・エージェンシー
(C) 2019「女の機嫌の直し方」製作委員会
公式サイト:http://kigen-movie.official-movie.com/
★2019年6月15日(土)より全国順次公開

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柴公園

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監督:綾部真弥 
企画・脚本:永森裕二
撮影:伊藤麻樹 
照明:藤森玄一郎 
主題歌:「カンタンアイテラス」(AMG MUSIC) 
出演:渋川清彦、大西信満、ドロンズ石本、桜井ユキ、水野勝、松本若菜、寺田農、山下真司、佐藤二朗

ある街の公園。柴犬を連れてやって来る3人のおっさん、あたるパパ(渋川清彦)、じっちゃんパパ(大西信満)、さちこパパ(ドロンズ石本)は、日々壮大な無駄話を繰り広げていた。ある日、3人の中で唯一独身のあたるパパに恋の予感が。相手は真っ白な柴犬・ポチを連れたポチママ(桜井ユキ)!? もどかしいふたりを応援するじっちゃんパパとさちこパパだったが、あたるパパが謎のイケメン(水野勝)と密会しているのを目撃。イケメンの正体を探るべく、聞き込み調査をするふたりだが、さっぱり要領を得ない。一方、豆柴の一郎をあたるパパに預けていた中年ニートの芝二郎(佐藤二朗)が、そろそろ一郎を返して欲しいとあたるパパに連絡をしてくる。

人間関係を築くことが苦手な主人公の恋の顛末。柴犬を飼う男3人が同じ公園に集う。リア充には縁がない感じで、互いにペットの名前で呼び合う関係。適度な距離感が心地よさそう。しかし、主人公に恋が芽生えてからその距離感も変わってくる。
俳優以上?!の抜群な演技を見せる犬たち。見ているだけでも心が癒される。(堀)


2019年/日本/カラー/99分
企画・配給:AMGエンタテインメント
(C) 2019「柴公園」製作委員会
公式サイト:https://shiba-park.com/
★2019年6月14日(金)より全国のイオンシネマ・シネマート新宿ほか公開
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旅のおわり世界のはじまり 

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監督・脚本:黒沢 清
出演:前田敦子、加瀬 亮、染谷将太、柄本時生、アディズ・ラジャボフ

テレビ番組のリポーターを務める葉子(前田敦子)は巨大な湖に棲む“幻の怪魚”を探すため、番組クルーと共に、かつてシルクロードの中心地として栄えたこの地を訪れた。夢は、歌うこと。その情熱を胸に秘め、目の前の仕事をこなしている。
収録を重ねるが、約束どおりにはいかない異国でのロケで、いらだちを募らせるスタッフ。ある日の撮影が終わり、ひとり街に出た彼女は、聞こえてきた微かな歌声に誘われ美しい装飾の施された劇場に迷い込む。
そして扉の先で、夢と現実が交差する不思議な経験をする──。彼女が、旅の果てで出会ったものとは……?

テレビリポーターの仕事は過酷だ。いちばん驚いたのは、ウズベキスタンの遊園地でレポートした絶叫マシン。ディレクターがやれといえばやるしかない。葉子は文句も言わず、淡々とこなす。演じている前田敦子本人もAKB48時代もこんな風に仕事をしていたのかもしれない。そういえば、最近、出産したはず。撮影のときに妊娠していたりしなかっただろうか。思わず、心配になってしまった。
そんな葉子がオフになるといきなり自由になる。その差は歴然。風船のようにふわふわした感じ。これがまた心配になって、作品に引き込まれる。案の定、いろいろとあり、観客ははらはらする。しかし、そこでの出会いが葉子を成長させた。
本作はウズベキスタンで全編ロケ撮影されたという。美しい風景に心を癒されるのは葉子だけではない。(堀)


黒沢清監督が全編ウズベキスタンで映画を撮ったと、中央アジア好きの人たちの間でかなり前から話題になっていて、気になっていた作品。
私がウズベキスタンを訪れたのは、1986年。チェルノブイリ原発事故のあった年の秋。無理矢理ソ連という印象だった。人々はほかのイスラーム地域と同様、それなりに人懐っこいし、民族衣装も健在だった。でも、ホテルや空港の店はいかにものソ連式。無愛想で効率も悪かった。1991年に独立して、早や30年近く。あれ以来訪れていないので、どんなに変わったのかを映画を通じて観るのも楽しみだった。レギスタン広場やシャーヒー・ジンダなどのペルシア風の青いタイルの建築群のほか、活気溢れる市場や土の香りのする旧市街も映していて嬉しかった。
何より注目したのは、戦後、抑留された日本兵たちによって建設されたナボイ劇場の内部の小部屋が映し出されたこと。外観や舞台はよく紹介されるが、あのような素晴らしい装飾を施した小部屋がいくつもあることを知らなかった。この場面を観るためにだけでも、もう一度観たいくらいだ。

前田敦子演じる葉子がオフの時間に住宅街を散策していた時に、狭いところに囲われている山羊を見かけ、そこから救いたいと奔走する。自由にはばたけてない自分自身のように思えたのだろう。ずっと憂鬱そうな葉子に少しいらついたのだが、彼女の心情がわかる行為で、ほっとさせられた。
ディレクターが視聴者の求めているような画が撮れないと、ぼやく場面がある。奇をてらった映像を視聴者も求めているという制作者の思いあがりを皮肉ったのだろうか。撮影の都合で、まだちゃんと炊けてないプロフを美味しそうに食べなければいけないという場面もあった。こんなこともバラエティ番組の取材では、ままありそう!
ウズベキスタンでもウィグルでも人参がたっぷり入ったプロフをよく食べた。民族によって発音が違うが、ピラフの語源。
映画公開を記念して、祖師ヶ谷大蔵のカフェ ジョルジュで「ウズベキスタンフェア」が開催され、恐らく本場のプロフも食すことができるはず。映画撮影風景などの写真展示も! 

「ウズベキスタンフェア」
6月8日から16日まで
場所:デトックス・カフェ&ギャラリー  ジョルジュ
世田谷区祖師谷3ー36ー72
小田急線祖師ケ谷大蔵駅北口4分
(とんかつサボテンが1階のビル2F奥です)
電話:03-6411-4333
https://www.facebook.com/gallerycafegeorge/

ジョルジュでキルギスのイベントを何度か開いている元JICAキルギス隊員の酒庭伊織さんが、この期間中、キッチンに立ち、「伊織食堂」をオープンさせるとのこと。是非、葉子の気分でプロフをどうぞ!
「食の宝庫キルギス」出版記念ランチ会の様子は、こちらで! (咲)


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『旅のおわり世界のはじまり』青木崇高さんのウズベキスタン弾丸ツアー!スペシャル映像上映付き加瀬亮さんとのトークイベント(6/21)
こちらで!

スタッフ日記 映画『旅のおわり世界のはじまり』青木崇高さんのウズベキスタン弾丸ツアー (咲)
こちらで!

2019年/日本・ウズベキスタン・カタール/5.1ch/シネスコ/カラー/デジタル/120分
配給:東京テアトル
©2019「旅のおわり世界のはじまり」製作委員会/UZBEKKINO
公式サイト:https://tabisekamovie.com/
★2019年6 月 14 日(金)全国ロードショー



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劇場版 誰ガ為のアルケミスト

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総監督・ストーリー構成:河森正治
原作:今泉潤・FgG 
監督:高橋正典 
脚本:根元歳三
キャラクターデザイン:嘉手苅睦 
撮影監督:若林優(T2studio) 
声の出演:水瀬いのり、逢坂良太、降幡愛、花江夏樹、石川界人、堀江由衣、生天目仁美、内田雄馬、今井麻美、早見沙織、江口拓也、Lynn、福山潤

自分に自信の持てない女子高生カスミ(水瀬いのり)は、ある日、不思議な声に導かれて異世界バベル大陸へと召喚される。そこは、伝説の存在・暗黒竜デストルークにより、錬金術も魔法も封じられ、“闇の魔人”が跋扈する世界だった。カスミは、彼女を召喚した魔法使いのリズ(降幡愛)、そしてガンナーのエドガー(逢坂良太)と出会う。リズは「闇を封じる幻影兵」を召喚したつもりだったが、カスミはそのような力を持っていなかった。あてがはずれたことに落胆するリズとエドガーだが、カスミを放っていくこともできず、一緒にレジスタンスの村へと向かった。そこでカスミは熱を出して倒れてしまう。カスミはバベル大陸でもまったく無力のままだった。
魔の手は瞬く間に拡がり村を襲撃する“闇の魔人”たち。そこには闇に堕ちた幻影兵と化したザイン(内田雄馬)、セツナ(今井麻美)、メラ(Lynn)とニクス(福山潤)姉弟の姿もあった。彼らはデストルークに召喚され、村を襲撃してきたのだった。絶望を目前にしたカスミの脳裏に、意外なビジョンがふと浮かび上がる。それは、カスミの中に眠る彼女の“本当の強さ”が目覚めようとしている兆しだった―

本作のベースになっているのはスマートフォン向けアプリ「誰ガ為のアルケミスト」。そこに劇場版オリジナルキャラクターとして、女子高生のカスミをヒロインとして登場させ、彼女がゲーム内にある異世界・バベル大陸へ召喚され、ゲームのキャラクターたちと接することで成長する姿を描いている。
何も知らないカスミが異世界に入っていくという構造を取ることで、ゲームを知らない人が見ても楽しめるように作ってある。ストーリー構成を務めたのは、総監督でもある河森正治。河森総監督は『マクロス』シリーズや『アクエリオン』シリーズなどで広く知られているが,本作は自身にとって初となるゲーム原作の映画化という。
カスミが現実の世界で何に悩み、苦しんでいたのか。そんなカスミが異世界を経験することでどう成長したのか。その結果、現実世界に戻ったときにどんな行動を取ったのか。同世代にとっては共感する点が多いはず。また、親世代にとっては、カスミ世代の子どもたちの言動の裏にはどんな気持ちが隠されているのかを知ることができるだろう。(堀)


「河森正治EXPO」
原作、監督、脚本、絵コンテ、メカデザインまでこなす河森正治のプロデビュー40周年を記念した企画。これまで携わった作品のデザイン画、絵コンテ、アイデアノートなどを数百点以上展示。河森ならではの独創的な新作映像なども見ることができる。
会場:東京ドームシティ Gallery AaMo(ギャラリーアーモ)
開催日程:2019年5月31日(金)~6月23日(日)
https://kawamoriexpo.jp/s/ex01/?ima=2248

2019年/日本/カラー/118分
配給:アスミック・エース
(C) 2019 FgG・gumi / Shoji Kawamori, Satelight
公式サイト:https://tagatame-movie.jp/
★2019年6 月 14 日(金)ロードショー

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泣くな赤鬼

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監督:兼重 淳
原作:重松 清 『せんせい。』所収 「泣くな赤鬼」(新潮文庫刊)
脚本:上平 満 兼重 淳
主題歌: 竹原ピストル「おーい!おーい!!」(ビクターエンタテインメント)
出演:堤 真一 、柳楽優弥、川栄李奈、竜星 涼、キムラ緑子、麻生祐未

城南工業高校野球部で顧問をしていた小渕 隆(堤 真一)は陽に焼けた赤い顔と、鬼の熱血指導から“赤鬼先生”と呼ばれていた。甲子園出場を目指していたが、決勝戦で破れて甲子園に行けなかった。
それから10年。県立西高校野球部で監督をする今は野球への情熱が衰えかけていた。ある日、ゴルゴと呼ばれていた、かつての教え子・斎藤(柳楽優弥)と再会する。野球の素質を持ちながらも、挫折して高校を中退したが、今は病に侵され、余命が宣告されていた。厳しさでしか教え子に向き合えなかったあの頃の後悔。小渕は、ゴルゴのために最後に何ができるのか―。

手が届きそうで届かなかった甲子園。これがいちばん辛い。いっそ遥か彼方の夢だった方が気は楽だっただろう。期待の重さに疲れたのか、次の赴任校の野球部では、おざなりな指導しかしていない。精悍な顔つきで熱心に指導する10年前と部員に請われても応えない、冷めた様子の今。主演の堤真一が著しい落差を自然に醸し出す。
一方、教え子を演じるのは柳楽優弥。いつもの狂気でぎらぎらした目は封印し、死期が迫りながらも野球がしたい、愛する家族ともっと生きたいという思いを切々と伝えてきた。
死を前に、私だったら何を思うのか。考えてしまった。(堀)


2019年/日本/カラー/111分
配給:KADOKAWA
©2019「泣くな赤鬼」製作委員会
公式サイト:https://akaoni-movie.jp/
★2019年6 月 14 日(金)全国公開
posted by ほりきみき at 01:16| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする